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2007-05-16 第166回国会 参議院 厚生労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年五月十六日(水曜日)    午後三時二分開会     ─────────────    委員異動  五月十五日     辞任         補欠選任      円 より子君     山本 孝史君  五月十六日     辞任         補欠選任      林 久美子君     森 ゆうこ君      山本 孝史君     尾立 源幸君      吉川 春子君     小池  晃君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鶴保 庸介君     理 事                 阿部 正俊君                 中村 博彦君                 足立 信也君                 津田弥太郎君                 浮島とも子君     委 員                 岸  宏一君                 坂本由紀子君                 清水嘉与子君                 武見 敬三君                 中島 眞人君                 中原  爽君                 西島 英利君                 藤井 基之君                 尾立 源幸君                 櫻井  充君                 島田智哉子君                 下田 敦子君                 森 ゆうこ君                 柳澤 光美君                 山本  保君                 小池  晃君                 福島みずほ君    事務局側        常任委員会専門        員        松田 茂敬君    参考人        法政大学キャリ        アデザイン学部        教授       武石恵美子君        日本労働組合総        連合会総合人権        ・男女平等局総        合局長      龍井 葉二君        元社団法人全国        生活衛生同業組        合中央会理事長  白木 信平君        弁護士      坂本 福子君        全国コミュニテ        ィ・ユニオン連        合会会長     鴨  桃代君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○短時間労働者雇用管理改善等に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     ─────────────
  2. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日までに、円より子君、吉川春子君及び林久美子君が委員辞任され、その補欠として尾立源幸君、小池晃君及び森ゆうこ君が選任されました。     ─────────────
  3. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) 短時間労働者雇用管理改善等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、五名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席いただいております参考人方々を御紹介申し上げます。  法政大学キャリアデザイン学部教授武石恵美子参考人でございます。  日本労働組合総連合会総合人権男女平等局総合局長龍井葉参考人でございます。  元社団法人全国生活衛生同業組合中央会理事長白木信平参考人でございます。  弁護士坂本福子参考人でございます。  全国コミュニティユニオン連合会会長鴨桃代参考人でございます。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げたいと思います。  本日は、御多忙のところ、当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  参考人皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案審査参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。本日はどうもありがとうございました。  次に、議事の進め方でございますが、まず、参考人皆様からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  なお、参考人質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず武石参考人お願いをいたします。武石参考人
  4. 武石恵美子

    参考人武石恵美子君) 御紹介いただきました武石でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。  本日は、参考人としてこの重要な法案の審議で発言する機会をいただき、大変ありがとうございます。  私は、働く人のキャリアにつきまして、人事管理、それから国の制度とのかかわりの中で研究をしているということで、そういう専門でございます。平成十四年に厚生労働省パートタイム労働研究会においてパートタイム労働対応方向性についての議論をまとめましたが、そのときの議論にも参加させていただきました。基本的に、今回の法案はそのときの議論をたたき台にしながら、その後指針の改正があり、そして今回の法案へという流れだというふうに認識しておりますので、基本的に私はその研究会議論をしたものがベースになっているかなということで発言をさせていただきます。  今回の法案は様々な内容が含まれているわけですけれども、私は、時間の制約もございますので、特に均衡処遇考え方について主にコメントをさせていただくということにさせていただきます。  また、法律の技術的なことにつきましては私の専門外となりますので、十分意見を申し上げることができないかと存じます。その点、あらかじめお断りさせていただきます。  まず最初に、パートタイム労働者の今回の処遇改善必要性がどうして起こってきたかという背景について、私の認識を申し上げたいと思います。  まず、我が国労働市場において、パートタイム労働者の位置付けが非常にあいまいであったという現状があると思います。パートタイム労働者といわゆる正社員というのは何が違うのかというのを考えたときに、労働時間が違う、契約期間が違うという部分もあるんですが、それだけでは説明し切れない非常に複雑な要素が絡み合ってパートタイム労働者労働市場に位置付けられているという、こういう実態があると思います。その際、パートだから正社員処遇が違っても構わないんだという通念でこれまで雇用管理が行われてきたという、そういう実態があるのではないかということです。  そこで、近年の労働市場を見ますと、パートタイム労働者が非常に量的に増えてきました。それと同時に、質的な変化と申しますか、正社員と同じような仕事に就く、いわゆる基幹的なパートタイム労働者というのが増えてきているということでございます。正社員と同じ仕事に就くパートタイム労働者が増えてきている、ただしその一方で正社員と全く異なる職務に就くパートタイム労働者というのも大勢存在している、非常に多様化しているということがあると思います。特に、その基幹的な仕事を担っているパートタイム労働者につきましては、正社員との処遇格差というものが非常に大きな問題になってきているということだろうということです。  そこで何が起こっているかということですが、パートタイム労働者がもちろん処遇が違うので不満が募ってきていると。パートタイム労働者が納得できない処遇の下で働かざるを得ないという大きな問題が生じているわけです。そして、パートタイム労働者不満を持っているということは、パートタイム労働者を雇っている企業にとっても問題でありますし、ひいては社会全体の問題ということで、今回のパートタイム労働者処遇改善必要性ということが重要な課題になってきたのではないかというのが私の認識でございます。  そこで、パートタイム労働者に対して適切な処遇在り方を考えるというのが今回の法案の主要な柱であろうということです。そのときに、パートタイム労働者に対する適切な処遇というのはどういうふうにルール化するのがいいんだろうかということで、均衡処遇という考え方が提案されているのだというふうに理解しております。  まず、処遇在り方ルール化という点につきましては、今申し上げましたように、パートタイム労働者の中に非常に不満が増大してきていると。正社員パートは違ってもしようがないんだというような風潮の下で雇用管理が行われてきた実態がある中で、このパートタイム労働者基幹労働力化によってそこの問題が非常に大きくなってきたということです。  その際、パートタイム労働者のそれでは処遇在り方をどういうふうに考えていくことがいいのかという問題がまずあると思います。今回のテーマですと、つまり、パートタイム労働者正社員処遇が異なることで問題になってきているわけなので、やはり正社員と比較して、どういう取扱いをするのが適当かということを考える必要があるんだろうということです。そのどういう取扱いをするか、あるいはパートタイム労働者正社員のどの面に着目して働き方が同じとか異なるということをいうのかということが今回のルール化内容であろうということです。  つまり、正社員と違うのはなぜかということを改めて問い直す。その違うことに合理性がなければ正社員と同じにすべきであるし、その違う理由合理性があるのであれば処遇の違いというのは許容されるのだろうということです。そして、その際、パートタイム労働者、働く人の中で、パートタイム労働者はもちろんですが、正社員もやはり納得できるような形での処遇在り方というのが追求されるべきではないかということです。  それと、法案前提として、先ほども申しましたように、パートタイム労働者が非常に多様化しているということ。もちろん、正社員の方も多様化しております。そういった多様な人が働く社会において、適用可能な合理的なルールというものも決めていく必要があるということ。例えば、基幹化している一部のパートタイム労働者だけに当てはまるようなルールではなくて、非常に多様なパートタイム労働者を全体として救っていくようなルールが必要ではないかということです。  ということで、今回の法案、そのルールを示しているということ、つまりパートタイム労働者正社員の働き方のどこに着目するのか、それからどのようにバランスを図るのか、この大きく二点について基準を示したということではないかと思います。ですから、この基準が適切かどうかということが重要な検討のポイントになってくるのではないかということです。  そこで、パートタイム労働者正社員処遇格差をなくす、あるいはバランスを取る、今回は均衡処遇と言っているわけですが、バランスを取るという場合に何を考えなくてはいけないかということですが、やはり働く現場における就労実態から遊離したものでは実効性が期待できないということで、その就労実態を踏まえた在り方というのが検討されるべきではないかということです。  それでは、就労実態というのはどういうことかということなんですが、主として正社員に対する雇用システムということで特徴を申し上げますと、一つ我が国労働市場雇用システム特徴的と言えるかもしれませんが、能力ベースにした処遇が一般的であるということです。能力というのは必ずしも顕在能力、発揮された能力だけではなくて、潜在的なポテンシャルまで含めた能力、そこを見て処遇が決まっていくというケースが一般的であるということです。その仕事とか責任の程度といった職務ベースにした処遇の決まり方を実施している企業がないとは言いませんが、非常に少ない。多くはやはり能力というものが重視されているということが一点です。  それから、正社員雇用実態ということでいいますと、通常は長期的な雇用というものを前提にして様々な処遇制度が成立しているということです。長期的に見たキャリア形成という時間軸の中で育成ですとか処遇システムというのが構築されているということ、これが正社員特徴としての二点目だと思います。  それから、先ほどパートタイム労働者多様化ということを申し上げましたが、正社員の中でも多様な働き方があって、必ずしも正社員だからといって同じ処遇の下で働いているわけではないということです。勤続とか能力とか様々な要素を勘案しながら処遇が決定されているのが現状ではないかということです。例えば、総合職一般職という正社員の中に二つの区分があった場合に、そこでの処遇というのは違って、複線型の処遇が行われてくるということで、正社員も必ずしも一枚岩ではないということでございます。  そこで、こういった現状雇用システムを踏まえて、パートタイム労働者処遇というのをどういうふうに考えていくべきかということについて意見を申し上げたいと思いますけれども、基本的には労働時間が短いとか、正社員ではなくパートタイム労働者として雇用されているからというような、そういう理由だけで処遇格差があるというのは、それは合理性がないということで是正すべきであるというふうに考えます。その上で、パートタイム労働者処遇というのがそれでは働き方が正社員と違うという場合にどう考えるかということではないか、そのときの今回のルールバランス均衡という考え方だというふうに考えております。正社員職務が同じ、でも働き方が違う、あるいは正社員職務も違うという、いろいろなパートタイム労働者の方がいらっしゃるわけですが、そういうパートタイム労働者全体に当てはめるルールということで均衡処遇というものが出てきたのではないかということです。  つまり、同じものは同じに処遇しなくてはいけないんですが、違うものは違うなりに処遇するということまで含んだ非常に幅のあるバランス考え方というのが提示されているということです。そして、その場合に、その処遇の違いについて合理性があるかないかということが判断されるということであって、これは我が国雇用システム現状に照らして現実的な法案内容ではないかなというふうに私は考えております。  そこで、パートタイム労働者正社員処遇均衡を検討する際に、じゃ両者のどの面に注目して同じとか違うということを決めるのかということでございます。今回の法案では三つ指標が提示されておりまして、一つ職務、それから二つ目人材活用仕組み三つ目として契約期間、この三つ指標が提示されております。  このうち、職務に関しては大筋は皆様共通理解を得られているのではないか、あるいは諸外国の例を見ても職務一つ指標にするということには妥当性があるということについては余り議論がないのではないかというふうに思っております。  いろんな御意見が出ているのが人材活用仕組み、それから契約期間、この二つ正社員との比較の際の指標にすることが果たして妥当であるかということだと思います。  この人材活用仕組み契約期間という二つの要件があるわけですが、私は、これは実はかなり近い概念ではないかなというふうに思っております。つまり、人材活用仕組み人事異動の有無ですとかその幅が正社員と同じということは、その時点正社員と同じような長期のキャリア形成を予定して育成が行われているということが想定されますので、人材活用仕組み正社員と同じであるということは、契約期間についてもほぼ同じような対応が行われているとみなしてもいいのかなというふうに思います。  その意味で、パートタイム労働者正社員の違いを、合理性を判断する際に、その契約期間というのを独立に取り上げることがどれほど重要かなというのは、私はちょっと疑問に思う点もございます。  そして、この人材活用仕組み契約期間に関しては、先ほども申しましたように、正社員雇用システムの大きな特徴であります長期的な視点人材育成処遇が行われているという、そういったバランス正社員特徴とのバランスを考慮する上では、やはり現状においてパートタイム正社員の違いを見る上での指標として重要な視点ではないのかなというふうに思います。  キャリアのある断面というか、ある時点を取って職務正社員と同じというケースは比較的多く見られます。ベテランのパートタイム労働者が比較的若い正社員と同じ仕事を担当するというようなケースというのはそれほど少なくないと思います。ただ、正社員については、その後、職場仕事内容が変わっていく、あるいは転勤が発生するということで、異動の幅ですとかその頻度がパートタイム労働者とは全く違うシステムということもまたケースとしてはたくさんあるわけでございまして、その場合にパートタイム労働者正社員を同じと考えていいのかどうかということではないかと思います。  その職務のみで正社員との差別を禁止するという考え方もあるわけですけれども、それが果たして現状雇用実態と照らし合わせたときに、パートタイム労働者はもちろんですけれども、正社員も納得できるものと言えるのかというふうに考えると、職務のみでの判断というのはその意味では難しいのではないか。正社員とのキャリア形成とかそういう人材活用仕組みに違いがある場合に、そこをどうするかという視点は非常に重要なポイントではないかなというふうに思います。  ですから、今回の三つ指標ありますが、私は、二と三はほとんど近い概念ではないかと申しましたが、この指標というのはまあ妥当性があるというふうに考えております。  そこで、働き方の実態に合わせて、今の三つ指標を踏まえて同じか違うかということを判断するわけですが、じゃどうやって均衡を図るのかという問題で考えますと、今回は正社員と同視すべきパートタイム労働者については差別的取扱いが禁止され、それ以外の職務が同じであるとか職務が異なるという場合にはそれぞれの段階に応じて正社員との均衡バランスの取れた処遇在り方というのが案として示されているということではないか。  こういった均衡処遇在り方に関しましては、今まで申しましたように、職務人材活用仕組み、そういったものを踏まえて、現状に照らして、一律だれかがこうしなさいという基準を決めるというよりは、やはりそこの労使職場労使が話合いの中で個別に決めていかざるを得ない部分というのが現状あるだろうということで、これも妥当なことではないかというふうに思います。  それで、おおむね私はこの法案については妥当だと思うんですが、幾つかの課題もあると思うわけでございまして、一つは、今回のその職務とか人材活用仕組みが同じか違うかというのを具体的に判断していく場面。それから、それでは、じゃ何を均衡と、どの条件バランスを取るのか、何をもってバランスというのかというようなことについては、必ずしも十分今の段階で明らかになっているわけではありません。特に職務とか人材活用仕組みのどこに着目して何をもって同じというのか、違うというのかという辺りは、今後の指針等の策定の中で議論されることだとは思いますが、現場の混乱がないような指針作りというのをお願いしたいということでございます。  最後に、こういった法律が通った後の働き方のイメージということで申し上げたいと思うんですが、やはりパートタイム労働者正社員がこれまでは全く別のルール処遇されていてもしようがないというふうに考えられていたわけですが、その両者処遇連続性を持っていく時代へと変化するのだろうと思います。二極化した働き方から働き方の多様化へという方向の中で、今回の均衡処遇というものが一つのきっかけになることを強く期待するということでございます。特に今、足下では労働市場が非常にタイトになっておりまして、パートタイム労働者を含め、働く人の労働条件改善する状況というのが出てきていると思います。こういう時期にこういった法律が提案され成立になっていけば、非常に意義のあることではないかなというふうに考えております。  以上でございます。ありがとうございました。
  5. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) ありがとうございました。  次に、龍井参考人お願いをいたします。龍井参考人
  6. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 御紹介いただきました連合本部龍井でございます。  私は、雇用均等分科会の一委員としてこの前段の議論に参加をしてまいりましたので、そこでの披瀝をさせていただいた論点も御紹介しながら討論に参加してまいりたいと思っております。  お手元資料をお配りをしておりますが、最後の五ページで、昨年末の分科会の報告がまとまる時点、答申の時点での労働側委員としての意見書を出させていただきましたので、これが一番ベースになっておりまして、特に二ポツの項目の中で、賃金について職務関連に限定された、もっと具体的に言えば、例えば通勤手当などが除外されたこと、あるいは福利厚生の中で慶弔休暇、見舞いが除外されたことの問題点指摘、さらに、最後項目では、すべてのパートタイム労働者を対象とした均等待遇法制化が必要だという、そういう意見最後まで主張してまいりました。  今回の、今日の討議に当たりまして、実は昨日の一連の討論を伺っておりましてかなり痛感するところが多かったのは、あるいは共感するところが多かったのは、やはりこの問題はパート労働法だけで打開できない非常に大きな問題が背景にあるということはやはり基本認識として押さえておく必要があるのではないかということで、お手元資料の一ページで、この間の雇用システム地殻変動というふうに私どもは申し上げておりますけれども、いわゆるそれまで進んできた多様化とは違う大きな変動が起きたんではないか。背景には、当然、短期利益シフトの経営、あるいは規制緩和市場重視の私は政策運営、とりわけ総合規制改革会議を始めとする政策決定在り方にも大変大きな問題があるという認識を持っております。今も御指摘になりました働き方の二極化、これがワーキングプア、過労死、さらに急速な少子化人材育成の危機といった、一言で言えば個別企業の問題を超えた社会全体の危機的な状況を生んでいるという認識を持っております。  パート問題に即して申し上げますと、これも今、武石さんから御説明がございましたように、いわゆる補助的なパートと、ですから二つの面ですね、つまり家計補助的であり、しかも男女の固定的な役割分業前提にした働き方になれば仕事もまた補助的にならざるを得ないという、そういう両面からの補助的なパートがかつては中心だったわけでございますけれども、やはり九七年以降、とりわけやっぱり二〇〇〇年、二〇〇一年以降顕著になった、正社員が絶対数で減少し続けた、それに、その下でのパートタイマーの増大というのは、量的、質的に大きく変わったという認識を持っています。  今の補助的ということの整理で、物すごく、図式化して申し上げますと、要するに男性稼ぎ手が減少するということになりますので、当然これはカップルであればパートタイマーの働き方も生計費重視になってまいりますし、また経済的要因での離婚等々も増えることによっての、昨日も討議に、討論で出てまいりました、母子家庭を始めとする単身パートあるいは新卒パートという、そういう新しい、今までは想定していなかった働き方、あるいは、これは今正に御指摘になられた基幹的パート正社員パートに代替するわけですから、量的にも質的にも、職場によってはパートタイマー基幹あるいは典型労働者であると、そういう働き方が非常に増えていると、これはとても、この間の、わずか数年間の大きな変化。  右側にございますように、これで良しとするわけじゃありませんけれども、補助的パートであったときには何となくもう賃金最低賃金プラスアルファ前提だし、国年、国保が当たり前だし、就労調整もするし、いつでも使い捨て可能だし、もっと言えば身分差別、女性差別ということが根強い働き方であった。率直に申し上げて、そこに本当に実効性がある法律であったかというと極めて疑問というこの状況が、今この段階でどういうふうなルール作りが求められているのかというのが、正に制定以来の今回の一番大きな課題だろうと。  今、武石さんからもございましたように、全体をカバーするルールというのが一つのキーワードになってくると思います。もちろん、括弧書きで書いていますように、特にパートタイマーが典型的な職場では、一部の企業ではございますけれども、例えば同じ人事処遇制度を適用するという動きがないわけではありませんが、残念ながら極めて一部というのが実態だと思います。  二ページ目に、その二極化、これは時間も限りがございますのでキーワードだけでお話をさせていただくと、昨日も複数の委員指摘をされていましたように、結局、長時間労働か、極端に言えばいわゆる不安定雇用、非正規かと、間の中間の選択肢がどんどん減っている、あるいはなくなっているというのがその格差とは違う二極化という状況だと思います。  多様化と言われていますけど、実際はこの縦軸になっています男性正社員の働き方モデルはむしろ画一化、固定化していて、主要に女性の就業形態が多様化しているにすぎないのではないかと。したがって、この二極化の中で今の、今回の問題が起きているわけですから、片方の軸だけを直そうとしても難しい。このトータルのゆがみを是正しなくてはいけない、これまたいわゆる格差是正とは違うことが求められているのだろうと思います。  私どもの考えを端的に申し上げますと、この両軸、つまり長時間といわゆる非正規、不安定雇用の間に、やっぱりきちんと働き方の選択肢をまずつくる、増やす、ここに九時―五時労働と書いてありますが、これが当たり前にならなくちゃいけませんし、また育児・介護休業なども、残念ながら、制度ではありますし、取得はありますけれども、取得自体がやっぱりマイナス評価になるような状況が生まれています。  やはり、これをまずそういうことが当たり前になるような選択肢を増やす、同時に、②にございますように、この両軸をやっぱりずらさないといけないんですね。ただ選択肢が増やすだけではなくて、九時―五時が当たり前になり、育児・介護休業取得がマイナスにならない、そして短時間正社員の働き方も当たり前になっていく、長時間労働も例外になり規制されていくという、要するに働き方の基準そのものをずらすと。その上で、いろんな法整備あるいはルールで働く側の選択が可能になっていくと、その先にはワーク・ライフ・バランス社会があるという、そういうやはり大きな道筋の中でこのパートの問題をどうするかというのが問われているのだろうと思っております。  ですから、昨日も出ておりましたように、それぞれの今回の労働国会の中で部品は出されています、出されているように見えます。でも、部品を合わせた結果、今申し上げたようなこういう働き方がトータルに変わっていくのかいかないのか、結果的に何ら変わらないまま部品らしきものが何かちらちらと見えている、これではとても今回の一連の労働国会で求められているものとは大きく食い違うのではないか、むしろ絶望感だけが残るのではないかという心配を実は持っております。  それで、これから実は本題なんですけれども、三ページ。これも今、武石さんの方から御説明ございましたように、今回のパート法改正、実は制定以来初めてになるわけですけれども、途中で、制定十年近くで二〇〇二年に研究会報告が出され、この中では均等、均衡在り方議論をされ、法制化も含めた検討というのが打ち出されていたわけですけれども、残念ながら、端的に申し上げて法制化は挫折をしたわけです。その結果として、指針の改正ということで、今回の基になっております現行指針がその時点で改正されて、そして今回、法改正の中で、言ってみればその指針が格上げされたというのが実態ではないかと思っております。  つまり、先ほど申し上げました大きな変化がこの間に起きているわけですけれども、果たして二〇〇二年の研究会報告で議論されていたことで十分対応できるかどうか、あるいは指針の格上げということで本当に十分だったかどうなのかというのが実は内心じくじたるものがございます。審議会の中でも本当はそもそも論の議論をしたかったわけです。  どういう政治的背景があったか分かりませんけれども、昨年のちょうど今ごろ、均等法の議論をしているときに、附帯決議の中でこのパート均衡処遇が慌ただしく、入ったことは大いに歓迎なんですが、法制化のことが示され、そしてあっという間にその年の年末にもう建議ということで、とにかく指針の格上げという非常に限られた課題の中で今回の審議をせざるを得なかったという状況があったということが今回のやっぱり一つ問題点になっているのではないかと思っております。  と申しますのは、本来ならこの種の議論というのは、つぶさに実態把握をして、先ほど申し上げたような大きな変化がどの程度起きているのか、あるいは現行指針がどの程度機能しているのか、どんな相談事例来ているのかということがきちんと実態把握がされ、分析がされて、その上であるべき法改正の方向を探るというのが本筋だったと思うんですが、今申し上げた限られた制約の中で、実態分析というのがほとんど実はされなかった。  指針についても、周知などの、職業財団等々の調査が出されましたけど、それはあくまで現時点での法改正を念頭に置いた調査ではない、むしろ附属的な調査が紹介されたということが実態だったと思いますし、それから現行の指針が、実は行政の指導、助言等々の在り方として、これも今お話がありましたように、パートタイマーを四つの類型に分けて対応したわけです。じゃ、この四つの類型そのものが果たして、言ってみれば妥当なのか、あるいはそれ自体が法律の規定になじむことなのかといったことが実はそもそも論の議論ではあるわけです。  四ページ見ていただきます。これは、それぞれの現行指針が定めています四類型を、これは審議会資料から持ってきたものですけれども、一つ一つの説明はいたしませんけれども、一番下の注釈のところで、そのうちの今回の差別禁止につながる、所定労働時間が通常とほとんど同じであり、同様の就業実態にある短時間労働者については、通常の労働者としてふさわしい処遇にするということも含めて、それぞれが指針で指導していたわけですが、これが果たして、じゃ、どの程度この実効、ふさわしい処遇に結び付いたかどうかといったことも、実は今回は十分なデータがないまま格上げしたというのが実態でございます。  したがいまして、今、武石さんの方からそうした在り方についての妥当性についての御意見もございましたけど、私どもは、それぞれの類型ごとにそれぞれの比較をし、定めるということ自体はあり得ると思っています。ただ、類型ごとに一方は均等で、片方は均衡ということが本当にいいのかどうなのか、なぜ類型ごとでそれぞれ均等にならないのかどうかといった、要するに論点ですね、そういう問題があります。  したがって、我々は、これも昨日の議論に出ておりましたように、差別禁止規定が入ったことを私は法律論としては評価をしております。ただ、それが差別禁止の差別化にならないような手当てが、担保が今回されるかどうかというのはとても重要だと思っております。  それからもう一つ、もうこれも昨日の議論で、やっぱり総合的な施策、ビジョン、その中でこの短時間、これも有期のその制約とルール作りと正に表裏の関係にあるわけですけれども、やっぱりそこが十分に見えてこない。これは私ども今後の希望としては、せっかくある労働政策審議会のような場できちんと今回盛り上がった議論が引き続き議論され次の施策にもうすぐに結び付いていくような、そういう論議の仕方をこの際お願いをしておきたいと思っております。  あと残された時間で間に合う範囲で各論ですけれども、今回入った差別禁止規定、これは幾つか衆議院の段階でも大分議論が出ておりましたように、ある意味、形式だけで門前払いになってはいけないし、それから経営者の一方的な恣意にゆだねられても困るわけなので、これはやはり何らかの判断基準的なものが明示され、同時にそれが幅を持った弾力的運用になるような措置をできる限り講じていただくような道筋を今回の議論の中でもお願いしたいと思っておりますし、実は大多数のパート労働者にとっては均衡努力義務が適用されることになるわけです。だとしたら、今回の改正で何が変わるのか、これが本当に分かるように、法律の周知徹底にとどまらず、相談、指導、助言の抜本強化を是非求める、そういう道筋も示していただきたい。  もう一つ誤解をされがちなのは、新しい先ほど触れましたような基幹パートあるいは稼ぎ手パートが増えてはきていますけれども、ベースにある身分差別や女性差別としてのパート問題というのは実はまだなくなっていないわけです。ですから、ここが前回、一年前ここで議論していただいたときに、これを、間接差別の問題で議論をしていただいたときに、厚労省の局長は、まあ男性もいるじゃないかと、したがって、これは性差別じゃないんだ、雇用形態の差別なんだというふうにまとめられましたけど、本当にそうなのかどうなのか。やっぱりそこは引き続き間接差別視点を含めた検討というのは極めて重要だろうと思っております。  それから、これも今回の法律の対象では確かにないんですけれども、契約労働、フルタイムパートの問題、これは実は八〇年代の末の高梨さんが座長をやられていたパート研究会の中では、実は疑似パート問題から優先的にやろうじゃないかというのが合意だったわけです。今回というか指針の中では、その重要性はそのとおりだと、でも短時間法なのでその中に取り込む、したがって、八時間パートは対象にならないんだけど、限りなく近い人をふさわしい処遇にしようということで、大分御苦労されてさっきの米印の項目が入ってきたんだろうと私は推測をしておりますけれども、いずれにしろ、ここで八時間パート、ここはフルタイムパートが一番優先的にやろうと言っていた問題はまだ宙に浮いたままなわけです。この間の政府側の御答弁の中でも、いや、それはそれで別なところでやっていまして、ただまとまりませんで。これだけ重要な課題が、片方でまとまって片方でまとまらないからって、そういうような議論の仕方ではなかなか整合性が取れていかないんじゃないか。これは引き続きそういう総合的な視点での議論お願いしたいと思いますし、それから今回もう一つ法律の改正の中で雇用保険三事業見直しに伴って若干のサービス低下がちょっと心配されるわけです。  これだけ大きな課題が、しかもフルタイムパート問題まで含めて相談に持ち込まれるとなると、やっぱり専門家の配置を含めて、あるいは東京だったら労政事務所で今手当てをしているような手当ての、あるいは相談員も含めて機能が低下しないような、是非そうした道筋も付けていただきたいと思っています。  それから最後に、これも武石さんから問題提起のあったことと重なると思いますけれども、これが本当に私どもが求めておりますような均等処遇が全面化していくというその第一歩とするためには、やはりその比較のための物差しづくりというものがいろんな場面で検討され、つくられていく。私はこれは以前のような物差し研のようなやり方ではなくて、例えばその業界同士、パートタイマーの非常に比重が高いところの業界の労使が、特にこれは正社員の方とパートの方を同一処遇制度でやっている実例なんかも多々あるわけですから、そういうことをベースにしてやっていくことであれば、そんなに観念的なものにならないのではないかと思っていますので、職務分析手法なんかも大いに活用しながらそういう道筋を付けていきたい。  そういう意味で、残された議論に期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  7. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) ありがとうございました。  次に、白木参考人お願いいたします。白木参考人
  8. 白木信平

    参考人白木信平君) 白木信平です。  本日の参考人の中で業界からというのは私だけでありますので、私ども業界のことを一言申し上げ、ちょっと考えを申し上げたいと思います。  何度もこういうような問題が提起されるたびごとにいつも考えますことは、それぞれの産業の実態がよく把握されていない、ですから画一的にばくっと物を言って今まで過ぎてきて、何か法律なり規制ができてしまうという立場でありますが、私どものこの業者の立場からいいますと、もう少し業の実態というのを精査していただきたい、そして実際に合ったような規制とかあるいは法律あるいはいろんな指導をしていただきたい、これが実感であります。  一言私どもの所属しておる団体のことを申しますと、生活衛生同業組合というのが、昭和三十二年六月に環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律が成立し、その法に基づいて、理容、美容、クリーニング、浴場、氷雪、食肉、食鳥、飲食六業態等の十六組合が結成されました。この十六業種の事業所は国民の日常生活に極めて密着した業種で、一日一回はこの十六業種のどこかの事業所と関係があると言っても過言ではありません。国民生活の長年の慣習から欠くことのできない立場になっているこれらの事業所は、小事業所で経営基盤も弱く、存立させるためには何らかの法的支援も必要であるとの趣旨で環衛法という法律が成立をいたしました。平成十二年に法律の題名を環境衛生から生活衛生に変更、同時に法律の目的規定に生活衛生関係の振興を追加、国及び地方公共団体は生活衛生同業組合に対する援助の努力規定を追加をいたしました。  このように、一部法律の面では生衛業が国民生活に必要として振興をうたっていますが、このところ生衛業も次々に廃業、組合員も毎年減少をしてまいります。これは多様化している今日の産業の実態が十分理解されず、画一的な扱いをされていることにあります。  一言申し上げますが、我が国の産業は大別して二つに分かれておると思います。第一は、ハイテクを駆使し、従来の人手の作業をロボットに置き換え極度な合理化によって生産性を高め得る産業で、マーケットは世界市場であります。自動車産業はその主たる例でございます。第二には、主として伝統的な国内産業、職人や技能者を数年掛かって養成し、一部機械化による改革もありますが、それは極めて限定的で、最後まで人の手に掛かる産業であります。文化と称するものは大半この種の産業がかかわってまいりました。  第一の産業と第二の産業と比べると、やや極端な言い方かもしれませんが、そこに働く人の意識が違います。第一の産業の作業は比較的単純な作業が多く、したがって働く人も作業自身には余り興味はありません。必然的に能率化による作業時間の短縮、すなわち作業時間がいかに少なくて賃金が高いかが一番の関心事になります。  第二の産業に働く人は、その人自身が物づくり、又は文化的な仕事にかかわる産業に興味を持つ人が職場に集まってきます。もちろん、時短や高賃金に関心がないわけではありませんが、自分は生涯、職人として、技能者として仕事をしたい、自分の製品に誇りを持ち、それを生涯の生きがいとしますから、見習に入ってくる者は一日も早く一人前の職人となりたいと思い、教わっている途中で時間を気にして切り上げたいと思う者はおりません。  今、日本で一番大事なことは、大別した二つの産業がバランスよく存在していくことであると思います。資源のない日本は、単一民族、高い平均教育を生かして、ハイテク産業においても世界一になり、世界市場で活躍し、富をつかまなければなりません。一方、単一民族として長い歴史を持つ日本は、その固有の文化を培ってきた伝統産業を軽視してはなりません。  私は長らく業界の労働問題にかかわってきましたが、六、七年前でしたか、我々生衛業に配慮された法定労働時間の特例を、連合の方がここにおいでになりますのでちょっと恐縮ではございますが、連合は廃止せよと労働省に迫りました。私は、今日の文明社会はいろいろな業種があり、労働も多種多様であり、労働内容も考慮せず、時間ばかりを労働の尺度にする一律の考えは一考してもらいたいと迫りましたが、老若男女、職業を問わず一律であるべきだと一歩も譲りませんでした。当時、渡延賃金課長でしたが、わざわざ名古屋までお越しをいただき、労働省としては特例はあくまで認める、ただし六時間の差を二時間短縮して繰り上げろと言われ、妥協をいたしました。  連合のこの考え方は今日も同じであろうかと思っておりますが、今回はパートタイム労働法の一部改正において、就業形態の多様化の進展に対応した共通の職場ルールを確立するとありますが、パートタイムといっても、種類も違う、多種多様ですから、あるものは共通したものもありますが、私どもには当てはまらないのもございます。  第一の労働条件の文書交付、説明義務、これなどは現在も行っておりますし、またこれは当然のことであろうかと思います。二のような問題は、均衡の取れた待遇の確保の促進、働き、貢献に見合った公正な待遇の決定ルールの整備、通常の労働者との均衡の取れた待遇の確保措置の義務化、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止、このようなことは小事業所の我々の業界にはほとんどないことであります。  例えば飲食界を例に取りますと、ほとんどが家族的経営でございまして、そして職人以外はほとんど家庭の主婦とか学生がパートをしております。でありますから、均衡の取れた確保の促進といいましても、内容は余り私どもの方のパートタイムにつきましては、ちょっとどういうことがやっていくことができるのか考え付かないところでございます。  三の通常の労働者への転換の推進、これは実は飲食、理容師もそうですけれども、大体、職人、技能者を数年掛かって養成して、そして技術者と調理師、あるいは技能者とするわけでありますが、それがパートタイムから一般の社員に転換するというようなことは実はありません。始めからそういう人は、先ほど申し上げましたように、一生その仕事でやっていきたいといってこの道に入って修行をし、一人前の職人になり、あるいは独立して事業をするというのが目的で参ります。ただ、飲食業におきまして、食堂のホールなどのウエーター、ウエートレスにつきましては、家庭の主婦が子供が小学校へ行っている間に勤めたいと、あるいは夜からは学生がその後パートタイムに来るというようなことで、この方々も何年も継続して修行するということはあり得ません。  したがいまして、ちょっとこの点につきましても、正社員というもの自身がほとんどが技能者、あるいは調理師等のそういう技術者を除いてはありませんので、ほとんど私どもの業界、この小事業所の業界としては余り関心のないところであります。  それから、苦情処理、紛争解決の解決援助。大体が、こういう国内産業の伝統的なそういう家族産業的なものは、一つの家族のような形でやってまいりましたので、めったに紛争とかそういうようなことは、小事業所でもありますから起きませんけれども、あれば積極的に行政の調整等の整備を行いまして、そういうところで解決することは結構であろうと思います。  五番目の事業主等支援の整備、短時間労働援助センターの事業などは、ちょっと私はどういうものか分かりませんので言及はできません。いずれにいたしましても、多種多様な産業をもう少し実態を精査した上で業界と話し合っていただき、実行できるような案を出していただきたいと思います。  いずれにいたしましても、今度の一部改正の法律案につきましては、私どもの業界として別に反対する理由もありません。理由もありません。ですから、雇用の整備ができて、それで円満にいければ別にそれにこしたことはございません。異議はございません。  いずれにいたしましても、日本は自由主義経済の国でありますから、政府の干渉は、事人権に関する等、大所高所からの規制にとどめ、その他のことは、業界、事業内の伝統的なしきたり、あるいは習慣、自発的な運営に任せてもらいたいと思います。  小人数で、少人数でやっております第二の事業所は事務員を置くほどの余裕もありません。年々多くなってくる役所の事務処理だけで大変なわけであります。いずれにいたしましても、もう少し実情を精査した上で、私どもの業界と話し合って、実行できる法案をこれからも提出していただきたいと思います。  なお、先般の厚生年金等のパートタイムの拡大適用、また二十一日の日経に出ておりましたような超過勤務の二五%から五〇%の引上げということになりますと、私どもへの、先ほど申し上げましたような職能の技術者あるいは調理師等の技能者を養成していくには五年も六年も掛かるわけでありますが、それが親方に教わっておる間にどんどんどんどん時間が過ぎて、これはすべて超過勤務である、五〇%払えということになりますと、それだけの経費を負担することは到底できなくなり、いわゆる私どもの職業は存立し得ないことになりますので、その点もよく業界の実情を精査していただきまして、今後とも何かと御指導をちょうだいしたいと思っております。  最後に申し上げますが、事業所の大小を決めるのに、今、従業員何名という尺度をもってほとんど決められております。ところが、このようにパートタイマーのまた働き方が多種多様になってきましてパートタイムが増加してまいりますと、一体、従業員一人というのは何をもって一人と数えるのか。これは非常に私ども難しい問題である。殊に、最近は末端の消費者を相手にします事業所は非常に営業時間が長い。  一例を申し上げますと、イオンなんかのようなところで飲食店をやっておる人は、朝十時から夜十一時まで営業時間。もういわゆる三部制にしないとやっていかれない、そういうことであります。そうしますと、従業員は一人なのか三人なのかということになります。  ですから、そういう点で、二百名以下、三百名以下と言われても何をもって一人と数えるのかということが、事業所の大小を決める尺度を従業員数では今後決めにくいという問題が起こってまいりまして、私も在任中、厚生省へ何度もそのことについて何とか決めてもらいたいと言ってまいりましたが、まだ返事をいただいておりません。こういう点につきましても、ひとつ今後課題として審議をしていっていただければ幸いと思います。  以上であります。
  9. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) ありがとうございました。  次に、坂本参考人お願いをいたします。坂本参考人
  10. 坂本福子

    参考人坂本福子君) ただいま御紹介にあずかりました、弁護士をしております坂本です。  私の方は、長年弁護士として働く女性の問題に携わってまいりました。この観点から、本日、このパート法の改正案について意見を述べさせていただきたいと存じます。  パート法が一九九三年成立いたしました。それによって本当にパートで働く女性たちが、いや、今は男性もかなり出ております。そのパート労働者たちが本当に権利が平等になっていっているんだろうか、それが私たちいろいろと相談を受ける中で、やっぱりこのパートさんたちを何とか平等に取り扱われるようにしたいということの思いで、パート法の改正ということに大きく期待を持ってきました。十四年たって今回パート法の改正案が出されました。  しかし、私たちはこれを見ながら、私なんかでも本当にがっくりきたんですね。なぜというと、この禁止規定に係るパート労働者と、それからそうでないパート労働者を分け、しかも禁止規定に、要するに通常の労働者と同様に取り扱わなければならないという労働者はどういう者かという枠をはめております。  それは、問題になっておりますように三つの要件を言われております。政府案は、三つの要件というのは、まず一つが業務内容と責任程度が同一であること。それから、雇用期間の定めがないこと。それから三番目に、全雇用期間において職務内容及び配置の変更の範囲が同一と見込まれること。この要件を満たす者は政府案見てもわずかパートの中の四、五%と言われているにすぎません。  では、じゃ九五、六%のパートは一体どうなんだろうか。なぜこの三要件が不当なのかというふうに、非常に今のパートにとってはこれは満たしにくいものかということをごく簡単にまず説明さしていただきます。  業務内容と責任範囲、これは職務内容と言っておりますけれども、これはだれが決めるのか、責任の範囲はだれが決めるのか。これはまさしく職場では事業主が決めます。事業主の全く恣意的な判断です。そして、それを争おうと思えば、これは公的機関あるいは裁判所、そういうところに申し出なければ争えません。パート労働者というのは、御存じのように非常にわずかな賃金と、そして家事労働の補充というような形で、その合間に働いております。そのために、そんな公的機関まで申し出る、いや、その時間があったら私は百円でも稼ぎたいわと、百円、二百円でももらいたいわという方が非常に多いんですね。とすると、弁護士のところに相談に来ても、いや、そこまではという二の足を踏むというのがほとんどです。とすれば、業務内容と責任範囲、いや、私は通常の労働者と同じようにやっているのよといっても、結局そこでの嘆きの止まりという形になってきています。これがどのような判断でどういうふうにそれをできるのか、これは全く不明です。  それから二番目に、雇用期間の定めです。これも八割が今雇用期間の定めがあるというふうに言われています。雇用期間の定め、そこが来たらぽいよということであるんならば、一体八割の労働者はほとんど救われないわけです。パートというのは救われないわけです。もっとも、八条の二項ですか、そこの中で、やっぱり契約の繰り返し更新が行われた場合、これは有期であっても期間の更新がなかったものとみなすというふうに定めています。しかし、社会通念上認められる契約の更新というのは一体何をいうのか。これは衆議院での議事録を拝見さしていただきましたけれども、全く政府答弁はあいまいになっております。私たち裁判所でもこれは幾つかの事例やって、その事例事例に伴って、いや、これは契約の更新があって通常の正規労働者とみなすというような判決が出ております。しかし、そこまで持っていくのはこれまたなかなか大変でございます。  私は、やっぱり一つ、既に東芝臨時工を廃止したあの最高裁の判決、これは臨時工の最初のはしりの事件です。  これは、東芝の場合で申し上げれば、期間は二か月。二か月、二か月、二か月の更新で、そして何年かたったときには契約の更新打ち止め。これが不満ということで、労働者たちが相談し、そして本当に乏しいわずかな財政の中から、一生懸命になってとにかく自分たちの権利をみんなで頑張ろうじゃないかということで立ち上がりました。これは、最初に立ち上がった原告の人たちが七名、そのうちの最も更新回数の短かった人は五回ですね、すなわち十か月。それから、最も長かった人が三年八か月、二十三回という形になります。裁判所はどう言ったかというと、いずれも数回ないし数十回の更新、要するに数回更新しても数十回更新しても、そこのところで打ち止めはできないよと。これは通常の労働者とみなさなければならないんだということで、臨時工が高裁、最高裁と争って勝訴しました。  しかし、一審判決後、日本の場合の裁判所は、高裁に行き、そして最高裁、その間に何年掛かったことでしょう。それもやっと獲得して、しかしその後にやっぱり臨時工が廃止されたというのは非常に大きかったと思います。しかし、そんな現場現場の問題じゃなくて、やっぱりきちっと、期間があってもやっぱりずっと通常の労働者とみなされるんだということが法律で規定されていればという思いでした。  契約更新の場合に打ち切られて、それで争える場合はいいんですけど、泣き寝入りということがほとんどです。しかも、元々パートというのは、私たちがはっきり、パート法、パートタイマーが増えてきたころからよく言っていますが、パートというのは、パーツということなんだから、要するに期間の定めがあるということじゃないんだよと、通常の労働者よりも短い時間なんだと、だから契約を切るというのはそれはパート臨時じゃないかと。今、臨時工というのは、労基法で三年以上雇用された場合には通常の労働者ということになりますけれども、当時は一年。やっぱりそれはパート臨時、あんたはパートじゃないよという話なんかをよくやったもんだというふうに思っています。やっぱり、ここのところの契約期間の問題は、パートタイム、短時間雇用労働者法の改善ということであれば、期間を問題にすること自身がおかしいんだというふうに思っています。  それから、三番目の、全雇用期間にわたって配置変更範囲が同じと。これは、先ほど期待可能性の問題も出ていました。しかし、日本の言う同一価値労働同一賃金は、ILOの百号条約を批准しております。ということならば、労基法四条においても、やはり同一価値労働同一賃金、同じ仕事をやっていればその期間は同じ賃金を払わねばならないよというのがこれは法律上の解釈だと思います。それが将来の期待可能性でもって、同じ仕事をしていながら半分以下というようなことがあって、それはしかるべきなんだろうか、本当に合理性があるんだろうかということで、この点についても、このような条件が非常に不合理であるというふうに私どもは考えております。  それからもう一つ、やっぱり配転、転勤の問題は配転まで含むと言っているんですね。これは、配転については、元々通常の労働者も私はひどいと思います。やっぱり、ILOの百五十六号条約を批准して、百六十五号勧告の中でははっきり、配転に当たっては配偶者の勤務地、子供の教育の考慮ということを規定しております。だとすれば、パート労働者が何のために働いているの、何でパートとして働くのといったときに、介護、それから子供の教育、そういうものと併せて、自分が働きたいから、短時間働きたいからという答えが非常に多く出ております。とするならば、ここに配転までも一緒にというようなことがなぜ行われなければ、入れられなければならないのか。  しかも、そうした三要件を満たさないパートタイマーについては均衡待遇、まあバランスということなんでしょうけれども、この均衡待遇というのは、何で均等待遇にして悪いんだろうかと。しかも、この均衡待遇に当たるほとんどの、九五%ぐらいのパート労働者は一体どうなるんだろう。ここについて見れば、賃金について言うと、退職金、通勤手当等を除くとありますけれども、まさしく退職金、通勤手当、これは賃金だと思います。それを除いて均衡にという配慮義務。また、教育訓練についても、単に職務内容とかそういうものについてのやっぱり教育をするようという、これも配慮義務。それだとすれば、パートの、要するに自分の能力を生かしたい、そこをまさしく伸ばすものではないと思っております。  それから三番目に、私はやっぱり最もひどいと思うのは福利厚生施設の利用です。福利厚生施設であれば、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省が定めるものについてはパートにも利用の機会を与えるよう努めなければならないと、これは一体何だろう。  私たち、ちょっと弁護士の中でも話していたんですけれども、一体これはパートだから、少なくとも入口でシャットアウトです。何で食堂がパートだから使えない。それは、あんたは女に生まれたから駄目だよと言われるのと、女人禁制と、そういうことと全く同じことなんです。少なくとも、こういうことでもって福利厚生施設の利用についてパートタイマーに、要するに、均衡に取り扱うよう努力しなければならないという規定は、これはやっぱり禁止規定にしていただかなければまさしく人権侵害ということだと思います。本当に差別は人権侵害だし、パートの人たちが、正社員の方はあそこの食堂を使えるけれども、また食費の負担が違うけれどもと言われたときに、私たちも、それはひどいわねという相談、それは幾つもの相談であるんです、そういう中で出てくるのが。それがまたそれを認めるという法律になってきます。  なぜ、私がやはりここでもう一つ弁護士として言いたいのは、配慮義務規定と禁止規定、これは決定的に法律的に違います。すべてそれを禁止しているその三要件を満たすパート以外は、均衡処遇するよう努力義務です。  実は均等法ができるときに、最初の均等法、八五年の均等法は、いわゆる募集、採用、配置、昇進、これについては努力義務規定でした。女性たちの間から努力義務規定では駄目だと、ちゃんとそういう差別は禁止規定にしてくれということを何回も要請し、そして多くの当時の野党議員からはかなりな質問が出されております。ところが、政府はどう言ったかというと、それは、この均等法は男女差別的取扱いをしないことの努力義務にとどめており、要するにそういうものだと言うんです。努力義務であってもこれは公序に反するものではないという答弁が、これは時の坂本三十次労働大臣及び赤松良子婦人労働局長からかなり答弁が何回か繰り返されております。  しかし、弁護士として私はこれは本当に苦い苦い汁を味わいました。一つはやっぱりコース別雇用の中で男女差別が、要するに総合職は男性、事務職あるいは一般職というんですか、それは女性という振り分け方、これは均等法違反だということで訴えを提起した裁判で、その裁判所はどう言ったかというと、旧均等法が制定、施行された、八五年ですね、といっても努力義務規定にとどまっている、いわゆる配置、昇進が努力義務規定だというんですね、とどめており、旧均等法が制定、施行されたからといって被告会社の男女のコース別処遇が公序に反し無効と言うことはできないと、はっきりこう言われているんです。そして、九七年に改正された禁止の均等法で九九年から施行になったと。それからは、その後は違法という、はっきりこれは出ております。  今日たまたま私の資料のところを見ましたら、岡谷鋼機の裁判のことがちょっと載って、今日配られて、これは全く知らなかったんですけれども、雇用管理改善参考人の関連資料、論文ということで書いております。一つは、これは私がその苦い経験を味わったのは岡谷鋼機という、これは名古屋の商社の事件ですけれども、十年掛かっております。その段階でこのような形の判決が出されました。一人は九七年前に辞めていた場合に、これは全く救済の余地がありませんでした。政府がそのように言いつつ、その国会答弁は見事裏切られたのです。やはりそれから有名なあの野村証券事件、これも同じく、これと同じ理論で九七年以前の労働者たちには公序に反しないということで負けております。九九年以降が勝っているという状況です。  本当にこのような均衡な配慮義務という規定では、一体この法律でどれだけ救われるんだろうか、パート労働者が苦しんでいるときにどうなるんであろうかということが、ひとつどうしてもやっぱりここを改めていただきたいなというのが切なる希望です。  恐らく、パートの需要は今後ますます増大していくことになると思います。日本は批准しておりませんが、ILOの百七十五号条約、既にここではフルタイム労働者、いわゆる通常の労働者と同じように扱わなければならない、単に時間が短いということだけで、それは全労働条件においての要するに均等扱いということをうたっております。  さらに、判決でも、やはりパート労働者について最も新しい判決、これは丸子警報器といって、正規女性とパートの女性とが賃金差別を争った事件です。仕事内容は全く一緒。このうちの判決の中で言っているのは、要するに労基法三条、四条のような差別禁止規定は直接的には身分や性による差別を禁止したものである。要するに労基法四条というのは性差別禁止ですから、要するに、男性と比較する場合は別として、女性同士のパートと正規、この場合には適用にならないわけです。しかし、そういうものであるけれども、その根底には、およそ人はその労働に対しひとしく報われなければならないという均等待遇の理念が存在し、労働に対してひとしく対価として報われなければならないんだと。その理念は、人格の価値を平等と見る市民法の原理と考えていいんだと。すなわち、人格の平等、価値、そしてそれを見るはそれは市民法の原理だということを言っております。これで、パート労働者パートだからということで、満額とは言いませんですから八割、そして高裁に行って九割という形まで来ております。  本当に、そういう意味ではやっぱり差別ということは人権の侵害。パートといえば単に労働時間が短いだけだと。その働いている労働時間に対する対価、それ以外は人間の価値としては同じなんだということを申し上げたいと思います。  最後に、私はやっぱり、くどいようですけれども、弁護士としてつくづく感ずるのは、やっぱりパートが裁判を起こすというのがどんなにか大変かということです。先ほどの丸子警報器の事件でも、これは組合があったからこそそれは裁判まで行ったんです。しかし、今のパートの組合組織率は実に四・三%。その中で、本当に私たちがやっぱり、パートが取り組む、正規の通常の労働者よりも余りにも賃金が低いじゃないか、あるいはその他の労働条件も悪いじゃないかということでどこまで取り組めるかということです。  法律として立法されることについては、私は以下のような法律を望んでおります。  第一に、均等待遇の明記です。パート労働時間が短いということの合理的取扱いを除き、均等待遇であること。  二番目に、賃金です。これはやっぱり同一の業務を行う正規と同一の賃金率、昇給率で、労働時間に比例して払うべきものだと。やっぱり諸手当とか退職金、これは明らかに賃金規定に、賃金の中にちゃんと含まれるものですから、これは賃金として考えてもらいたい。  それから、福利厚生施設、先ほども言われましたように、まさしくこれは人権侵害だと思います。福利厚生施設の利用ぐらいについては全部差別的取扱いを禁止してほしいと。  それから四番目に、正規労働者の希望の場合は、外部労働者に優先して応募する権利があっていいんじゃないか。  最後に、私は、有期の場合に、有期については、やっぱり業務の必要性から有期で、どうしてもこの仕事はこの期間だけでいいんだよという場合に限っていただきたいということが希望です。  以上、私のこれらの希望を述べさせていただきました。  ありがとうございます。
  11. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) ありがとうございました。  次に、鴨参考人お願いをいたします。鴨参考人
  12. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) 全国ユニオンの鴨といいます。  私は、一九八八年から今に至る十九年間にわたって、どちらかといえば労働組合がない人たち、それから企業の規模でいえば中小の企業、そういったところで働いているパートの方とか派遣の方とか、そして正社員の方も含めて相談を受けてきています。  そういった中で、今回のパート労働法に対しては、労働組合があるなしにかかわらず、そして企業の規模にかかわらず、パートという雇用で働いている人たちが本当にこのパート法ができてよかったというふうに実感できるような、そういった法律ができることを切に願っています。  今私たちの全国ユニオンの中での相談の中から、まず現状で少しお話をしたいと思います。  皆様のお手元に、資料ということでパート相談事例というのが行っていると思います。これは、昨年の二月二、三、四日に全国ユニオンが行いました非正規労働者ホットラインに寄せられた相談事例です。  この相談事例を見ていただければお分かりになると思いますが、例えば相談一の方、パートの方です。女性で五十六歳、お仕事はガソリンスタンド。週五日、フルタイムのパートで二十年間働いている、有期契約ではない。正社員と同じ仕事をしているのに社員と格差があるということで、その格差の中身として、時給が八百五十円である、低いということと、それから、ボーナスの格差が一番頭にくるということで、勤続五、六年の二十八歳の正社員の年末のボーナスが二十六万、それに比べて二十年勤務してきた自分はたったの三万五千円である。しかも、危険物手当というのが付いていて、これは私は本当に身分差別そのものだなと思いますけれども、危険に対して雇用形態はかかわりないはずなのに、正社員は五千円、パートは三千円というふうに、こういったものにも格差が付けられているという相談です。相談二の方も同じように、勤続十五年、フルタイムで働いている。この方の場合も、本当に退職金制度も何もない、有休も認めてくれないというようなことで。  今パートの方たちの、相談で寄せられてきている方たちは、この相談一、相談二の方にあるように、本当に労働時間もそして仕事の中身も正社員と同じであると、しかし、賃金、ボーナスそして労働条件において、そういったものにおいてすべてにおいて格差があることに対して大変怒りを持っている、不満を持っている、何とか正社員にしてほしいという形で、今全国ユニオンの方には相談が寄せられてきております。  今回のパート労働法パート法の改正の中で私はまず問題にしたいと思っているのは、今回のパート労働法の対象というのは通常の労働者より労働時間が短い労働者であるというふうになっています。この通常の労働者より短い労働者ということで、もっと正確に言えば、三十九・九時間の労働時間までのパートが対象であるということです。この相談事例にありますように、フルタイムパートと言われている人たち、それからさらに、この上残業もしているパートと言われている人たちがいるわけですね、現実。しかし、こういった人たちは今回のパート法の対象にはならないということです。  資料の中で、二〇〇二年の七月に厚生労働省の方から出されましたパートタイム労働研究会最終報告というものが出されておりました。  このときに、この中では、「パート労働現状問題点」ということで、統計的な概念として、勤め先の呼称がパートである者というとらえ方があると。これらの中には短時間労働者でない者も相当数含まれている。一般的にパートという概念が短時間労働者という意味だけではなく、正社員でない者という意味で用いられている実態があることを示している。パート労働問題を考える上で、この現実を無視することはできないので、こうしたとらえ方についても視野に入れて検討することとするというふうに入っているわけです。  さらに、その下の方に、増加の実態という中においては、呼称パートは一千百二十九万人で非正社員の八割強を占めているがということで、最後に、呼称パートについては、短時間労働者でない者も含まれているけれども、ここ数年、週四十時間以上の長時間労働者が大幅に増えていますということを二〇〇二年の研究会報告においては問題提起がされているわけです。  これを具体的な図表で表したものが資料の四にあります短時間労働者と呼称パートの関係という図です。それから、その資料の五に示してありますのは、四十時間を超えているパート労働者が増えているということを示した図であります。  こういったように、二〇〇二年のパートタイム労働研究会の最終報告においても、いわゆる通常の労働者よりも短い労働者だけではなくて、いわゆる呼称パートと言われている人たちが実際問題としているということの存在を認識しなければいけない、この人たちのことも視野に入れたこれからのパートの問題を考えていかなければいけないというような提案がされているわけです。それにもかかわらず、今回のパート労働法の中では対象にはならないというふうになっているということについて、二〇〇二年のこの報告よりも更に、今回のパート労働法が、パート法が内容が後退しているというふうに見えるということについて、私はすごく問題であるというふうに思っています。  現実、今のパート労働者の働き方の中で本来存在しないようなフルタイムパートとか疑似パートとか言われる人たちが、実際問題このように相談を寄せているという現実があるわけですから、四十時間、そして四十時間以上働いている、なおかつパートと呼ばれている、そういう人たちをきちんとこのパート労働法パート法の中で対象としていくべきではないだろうかというふうに思います。  そして、どうしても対象外であるというふうに言うんであれば、こういう人たちをどうするのかということを今回のパート法の中でも、この人たちの対応について、対象外だが例えば配慮されるべきである等含めてきちんと明記をしていただきたいというふうに考えております。そういったことがないと、現実問題として、四十時間を超えたパートパートなのか正社員なのかよく分からないような中で、四十時間を超えてパートという名称で、今までどおり低賃金であって当たり前というようなそういった扱いがされかねないということをすごく危惧するということです。  それから二つ目に、私は、今回のこの改正の中で、先ほど来出ております三つ条件を満たすパートについては差別禁止の対象となるというふうになったわけです。この三条件というのは、先ほど来出ておりますけれども、一つ正社員と同じ仕事の中身、二つ目正社員並みの配置転換や転勤、それから三つ目がいわゆる期間の定めがない雇用という、この三つの要件を満たすパートについて差別を禁止するということです。  それで、これも資料で六で出しましたけれども、二〇〇二年の七月に出されたものです。これは、残業等の拘束性や責任の重さ等も含めて同じ仕事をしているパートの割合というふうになっております。この割合として出されている数字が五%という数字が出ているわけです。  ところが、今回のその三つ条件を満たす差別禁止の対象となるパート労働者というのは、一体どのくらいの割でいるんでしょうか。数字的には五%という声も聞いております。中には一%ぐらいではないかというふうな声も聞いております。私たちの目から見ますと、どこにいるのかというのが見えてこないんです。  それで、このときにでも五%であるということからすると、さらにこの上、雇用期間ありなしとか、それから異動、配転のありなしということを更に要件として付け加えているということからしたら、当然のごとく五%もいないんじゃないかという数字の方が今の現実の数字として浮かび上がってきてしまうんですよ。その一%もいない、そういう中身がパート均等待遇実現に向けて実効性がある内容であるとは、何かとても言い難いというふうに思います。  私自身は、先ほど参考人龍井さんの方からもお話がありましたように、今回のそもそものこの差別禁止に向けてのベースになっていたところが、やっぱり指針内容ベースになっていたわけです。この指針内容というのは、日本型均衡処遇ルールというふうに言われていた中身だったと思います。私自身は、やっぱり、これだけパート労働者が全体の雇用労働者の中で三〇%も超えている、しかも女性労働者の中では五二・五%にもなっているという現実を考えたときに、この日本型均衡処遇ルールというのは何を比較、どこを比較にしているのかといえば、今の正社員の働き方、どちらかといえば、やっぱり男性の正社員の働き方、そういったものを比較対象として、そしてパート労働者の働き方に対して格差合理性があるかないかという測り方であるわけです。  こういった考え方均衡処遇を図るという考え方そのものが、私自身からいえば、パート均等待遇を進めていかないということだけではなくて、正社員の働き方そのものも、ますます正社員らしくということでいえば、長時間労働であって当たり前、異動、配転当たり前、それこそ、そういった拘束性が高い働き方というのが正社員の働き方で当たり前というふうにこの考え方からいったらされていくんではないだろうかというふうに思います。そういうことからいえば、これからの本当に働き方ということをきちっと、ワーク・ライフ・バランスということを一方では言っているわけですから、考えていく時期に来ているんではないかというふうに思います。  そもそも、パート労働者は人間です、そして労働者です。そういった立場に立って、人間らしい働き方をどうルール化していくのかということが均衡処遇ルールということの中身でそもそも求められているんではないだろうかというふうに思います。ILOでは二十一世紀の働き方としてディーセントワークということを言っております。私は、やっぱり人間らしい働き方ということからいえば、パートという働き方をしても生活ができる、それから雇用が安定している、仕事に誇りが持てる、そういった働き方をきちっとつくっていくということが、今このパート法の改正の中でそもそも求められていることだったんではないだろうかというふうに考えているところです。  そういうことからしましたら、これからの働き方ということからいえば、パートの働き方は、女性である、中高年女性であるということだけでは今全然なくなってきております。それこそ、私たちの娘や息子がパートで働いているという時代です。我が家においても、二十三歳の息子が五年間アルバイトで八百五十円という時給で働いております。そういった娘や息子がこれからの社会をつくっていくわけです。  そういった意味においても、きちんと人間らしい働き方、パート労働がそもそも人間らしい働き方であると言えるような働き方をつくるための法改正をすべきではないだろうかというふうに思っています。  以上です。
  13. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 中原爽

    ○中原爽君 自由民主党の中原でございます。  私の持ち時間二十分ということでございますので、お尋ねして御説明いただく、往復で二十分以内に収めろということでございます。よろしくお願いしたいと思います。  したがいまして、五人の皆様にそれぞれ御意見を伺うという時間がないと思いますので、テーマを絞りまして、お二人の方にお願いしようと思います。  まず、武石参考人とそれから龍井参考人、お二人にお願いしようと思います。  武石参考人は、インタビューの昨年の記事でこうおっしゃっておられます。人事院は、国家公務員に育児のための短時間勤務制度の導入を提言したと、それで、こうした動きに、民間企業も短時間正社員の導入が検討されてもよいと思うと、それで、しかし入社してから定年までずっと短時間正社員という働き方も理論的にはあり得るかもしれないけれども、余り現実的ではないだろうと、こういう御意見をおっしゃっておられました。  今回のパート法の改正につきまして、短時間労働者正社員、通常労働者への転換の推進というのがポイントでありますけれども、この事例については三例ほど説明されているんですけれども、今の申し上げております短時間正社員制度ということについては触れておりません。  しかし、一方、この短時間労働者の均等処遇の推進助成金制度というのがありまして、この助成金を出しているところが財団法人の二十一世紀職業財団というところでありますが、この財団は既に十九年度の予算組みをしまして、こう言っております。短時間正社員制度を設けた上で、実際に短時間正社員が一名以上出た場合に、その事業主に対して三十万円の助成金を交付すると、こうなっているわけですね。ですから、別の組織、機構では既に短時間正社員制度を考えているということであります。  今回、このパート労働法が成立いたしました後に、やはりこの短時間正社員、通常労働者という制度在り方が問題になるんじゃないかと思いますので、再度この点についてどうお考えになるか、武石参考人にお尋ねしたいと思います。  それと同じことですが、龍井参考人に、労働時間別にいわゆる二極化について御説明いただいているわけなんでありますけれども、正社員が長時間労働しかなくて、それができない人は短時間の仕事しかないと、極端にこの二極化が進んでいると。  それと別の雑誌の記事でも、働き方の二極化が進んで、超長時間労働正社員か不安定雇用賃金の非正規かという選択しかないという状況になっていると、二極化を前提とした均衡あるいは均等という考え方を進めるのはおかしいと。私も確かにそのとおりだと思います。八時間労働正社員ということではなくて、六時間労働正社員というような働き方の選択肢を増やしてもいいのではないかと、こういう記事になっておりますので、それを見ました。  確かに、六時間ということになりますと、現在四分の三時間に相当するということになるわけですが、やはり短時間労働者正社員化ということにつながっていきますので、武石参考人と同じことでありますけれども、今後、この法案が成立しました後に、やはりこの短時間労働者正社員化ということを、本当にどうこの在り方をとらえたらいいのかということについて再度御意見を伺いたいと思います。  もう一点、龍井参考人資料で、国会審議の焦点ということでありまして、雇用管理区分というものの御説明がありました。箱を増やせば増やすほど、箱が違えば同じ職務でも格差が歴然として残ってしまうと、こういう御説明がございました。このとおりでありまして、このことについては先週九日の参議院の本会議で、柳澤大臣から新しいこの改正の法案の趣旨説明がございました。  そのときに、私どもの西島英利議員がこのことについて質疑をされました。長くなりますから省略いたしますけれども、正社員職務、転勤の有無の人材活用仕組み、それから契約期間が同じと見ることのできるパート労働者には、賃金、教育訓練、福利厚生の待遇面において差別的な取扱いが禁止されたと、このように法律上極めてきめ細かい規定となっていることは妥当であると考えるけれども、しかし非常に分かりにくいということの御質疑をされました。ですから、これは一応、龍井参考人が申されております国会審議の焦点ということについて報告だけ申し上げておきたいと思います。  以上でございますので、ただいまのお二人の参考人の方に、このパート法改正が成立いたしました後にこの短時間正社員制度在り方はどう考えたらいいのか、再度この点について御意見を伺いたいと思います。
  15. 武石恵美子

    参考人武石恵美子君) 短時間正社員につきまして、私の考えを述べさせていただきます。  まず、今回のパート法案は通常の労働者パートタイム労働者、その労働時間の違いに着目して、そこの両者の均等なり均衡を図るということでございます。そうなると、短時間正社員が事業所の中にいた場合に、パートタイム労働者といわゆる正社員が同じ労働時間という場合があり得るわけで、これは結構、法技術的に難しくなっていくのかなという気がいたします。ちょっとそこら辺は私も専門ではないので分からないんですが、その辺の難しさがあるだろうなということ。  それで、御質問がありましたように、短時間正社員在り方といいますか、今後についてということでございますが、先ほど私の意見最後に申し上げましたが、このパートタイム労働法というのは、一つパートタイム労働者の中で正社員ともうほとんどというか全く同じあるいは非常に近い人たちについて、正社員と同じような、あるいはそれとバランスを取った処遇を取るということで、パートタイム労働者の多様性に応じた処遇在り方というものをきちんとルール化しようということだろうと思います。  そして、短時間正社員というのは、一方の正社員の方が、先ほど何人かの方がおっしゃっていましたが、じゃ、正社員の働き方が果たして今のままでいいのかという問題だと思うんです。正社員といったらフルタイムで残業もあって転勤もあって、それが正社員ですという現状があるわけですが、それで果たしていいのかというと、正社員でも短時間で働く人があってもいいし、転勤をしない正社員があってもいいし、正社員の中も多様な選択肢があっていいだろうということになると、短時間正社員というのは正にその労働時間に着目して正社員の多様性を進めるということになってまいりますので、今回の法律パートタイム処遇改善すると、それから短時間正社員のような正社員多様化を進めることによって正社員多様化してくる、そして将来的な像としては、多分、今回のような法律は今の現状に照らして労働時間に着目した区分をしているわけですが、もしかするとそういうのが定着するとまた違った視点で社員の、パートとか正社員とか言わずに事業所内の社員の納得ができる処遇在り方というのが問題になってくるのかもしれません。  そういう意味で、ちょっと直接のお答えになったかどうか分からないんですが、短時間正社員というのは正社員側の多様化を進めるという意味では非常に重要なオプションだと思いますので、是非、それも一緒に進める中で、パートタイム正社員が分断がない労働市場というものを目指していただきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  16. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 二、三コメントをさせていただきたいと思います。  一つは、実は衆議院の議論の中で同じような議論ございまして、いわゆる短時間正社員は通常の労働者に含まれるのかという質問に対して、含まれるという考えが示されています。  ちょっとこれややこしい議論になって恐縮なんですが、実は、通常の労働者という定義は、厚生労働省の解釈通達では、いわゆる正規型であって、さっきおっしゃられたような長期型の人事処遇制度が適用される者というのが実は説明になっておりまして、通常の労働者の定義に時間概念は入っていないんです。ですから、八時間という規定は厚労省の解釈通達で出ていません。是非それは確認していただきたいんです。  というのは、先ほどちょっと四つの類型のチャートをお示しをしたときに、一番下の「所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じであり、」というのは、実はこれは古い、古いというかな、前の研究会報告を意識して、つまり疑似パートを意識しているので、ここは多分八時間を想定しているんですよ。ところが、実際のパート法の定義の中には、通常の労働者には時間規定がないんです。ちょっとそういう意味では通常の労働者の解釈をめぐって混乱が一部あるわけです。  したがって、話を元に戻しますと、通常労働者には五時間、六時間社員もそういう定義が当てはまれば入るということに衆議院段階ではなっておりますので、御指摘の通常の労働者への転換という場合には、六時間パートから、六時間有期から六時間正社員になることも通常の労働者への転換に入るというふうに私は答弁から解釈をしております。  したがって、もう一つの問題は、さっき選択肢を増やしていただいてずらすというお話を申し上げたのは、やっぱり、今も御指摘武石さんも言われたことなんですが、基準がいつまでたってもこの長時間タイプあるいは転勤も含めたものが軸で、ほかの選択肢があるんじゃなくて、それが当たり前になるというふうになったときの均等、均衡在り方というのはおのずから私は変わってくると思う。したがって、この先ほどの図でいえば、短時間正社員と同じ時間、同じ時間じゃなくてもいいんですね、同じ仕事をしているパートさんも含めて、パートの方も含めて均等、均衡どうあるべきかという、そういう議論に多分なっていくと思います。  そういうことでいうと、御指摘のように、短時間正社員への転換の問題にしてもそれから短時間正社員との比較の問題にしても、十分に今回の通常労働者の中に含まれるというふうに私は解釈をしております。
  17. 中原爽

    ○中原爽君 ありがとうございました。  私も残業が当たり前になるということがどうかということを一つ考えますし、それと、この短時間という意味合いが、例えば、武石先生言っておられるんですけれども、育児期間あるいは介護の期間ということで絞って考えるのであれば、フレックスタイムという形を取ればいいだけの話になるかということも考えて御意見申し上げたわけでございます。  まだ私の持ち時間五十一分までという紙が回ってまいりましたけど、早く終わる分には構わないそうでございますので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  18. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 民主党・新緑風会の森ゆうこでございます。  今日は、五人の参考人の先生、大変ありがとうございます。大変貴重な御意見でございますが。  まず、武石参考人にお聞きしたいんですけれども、事前にいただいた資料の中で、正社員処遇が下方硬直的であるために格差がなかなか縮まっていかないのが現状ですというような御指摘がございます。先ほど来お話がありました二極化の問題、これを解決するために非正規と正規はリンクしているということで、正規労働者労働の仕方を変えない限り又はその処遇を変えない限り非正規との格差は縮められないのだというような御趣旨だというふうに思うんですけれども、先ほど余りお触れにならなかったので、このことについて少し分かりやすく、具体的にで結構でございますけれども、先生の方でこれを解消するために何かこのような具体的な方策を講じればよいのだという御主張があるのかどうか、まず御質問させていただきたいと思います。
  19. 武石恵美子

    参考人武石恵美子君) お答えさせていただきます。  パートタイム労働者正社員の、いわゆる正社員均衡処遇というのを考えるときに、私は均衡処遇というものを認めているわけなんですが、そのバランスというのを考えるときに、いろんなバランスがあるんだろうと思います。  それで、正社員パートタイム労働者を同じにしようというときには、今多くの場合は正社員の方が労働条件がいいわけですから、そこにパートタイム労働者条件を引き上げて同じにするというやり方がある。これはもちろんそれができればいいことだと思います。ただ一方で、これも正社員が、それでは今の、それは先ほど来皆さんがおっしゃっているように、正社員の働き方、今の働き方を前提にした均等なり均衡在り方だと思うんです。  ところが、正社員の中にもパートタイム労働者と同じように非常に多様なニーズとか働き方への希望というのがあって、そのときに必ずしもみんなパートタイム労働者正社員に合わせるのではなくて、むしろ正社員の中でも転勤をしたくないとか残業をしたくないという人がいれば、その人たちのそういうニーズに応じた処遇在り方というものが考えられていいのではないかということでございます。  それで、今転勤をしない正社員、例えば転勤がある会社で転勤をしたくないと言えば、極端な話、じゃ、パートになりなさいというようなこともあるかもしれないわけですが、そうではなくて、転勤をしたくない、転勤をしたくないというのは、例えばそこの事業所を閉鎖するというときには雇用保障が、その転勤をする正社員よりは雇用保障が薄くなるかもしれないんですが、それでも構わないという人がいれば、そういう正社員在り方というのも検討していくべきだろうというふうに考えるわけです。  ですから、正社員の働き方の処遇を今までどおりのまま、従前どおりのままで均等処遇均衡処遇というのは非常にやっぱり硬直的な考え方であって、やっぱり問われるのは、正社員の働き方の多様性をどうやって認めていくか。そのときにそれは処遇とリンクするものであって、正社員処遇を変えずに働き方だけ変えていくというのはやっぱり難しくて、そのときに正社員の中の納得のできる処遇在り方というのも一緒に考えるということがパートタイム労働者の均等、均衡を考える上では重要ではないかなということでございます。  以上でよろしいでしょうか。
  20. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 ありがとうございました。ソフトな表現ではないかなというふうに私は思いました。  それで、先ほど職務重視、どういう形で均衡ルールを作っていくのかということで、職務重視というところをもっと今後考えるべきではないかというふうな御指摘があったんですけれども。先ほど来それぞれの参考人の先生からいろんな御指摘がある中で私感じたんですけれども、ヨーロッパ的な同一価値労働同一賃金、均等処遇ということを考えるときには、じゃ、ヨーロッパの中の職務重視の仕事の仕方というのはどういうものなのかというのを具体的に見る必要があると思うんですけれども。  私の家族の一人が外資系、フランスの会社なんですけれども、フランス系のサービス業の会社に一時期勤務していたことがありまして、ヨーロッパ型の職務重視の働き方そしてその処遇というのはこういうものなのかということで、私非常に驚いた経験があるんですね。一つの部署、一つ職務を与えられた人はもう絶対それ以外はやらないんです。やっちゃいけないんです。やることも求められていないし、やってもいけない。非常に、何というんでしょうか、そういう意味ではある意味合理的なんですけれども、これは日本の仕事の仕方に合わないなと、日本的な労働の長所をなくさない限りこういう働き方はできないな、非常に難しいなと思ったんですが、武石先生はどのようにお考えでしょうか。  また、この点について、龍井参考人にも、本当の意味での同一価値労働同一賃金といったときには、やはり武石先生がおっしゃったように、私は職務というものをかなり厳しく厳密に切り分けないと難しいと思うんですけれども、これはなかなか日本的な雇用、働き方、また日本の経営というんでしょうか、企業体質、そして日本の企業の良さというところから結構矛盾するところが出てくると思うんですけど、それについて少しお考えがあればお願いいたします。
  21. 武石恵美子

    参考人武石恵美子君) 私は余り職務のみに注目するということを述べたつもりはなかったんですが、もしそのように誤解を与えていたとしたら、ちょっと言い方が足りなかったかもしれません。私は、むしろ職務のみに注目した同一労働同一賃金、これは一つの理想、理想というか方向性としては大変理解できるものですが、現状、日本でそれができるかというと、大変難しいのではないか。  ですから、この法案三つの要件ですね、職務プラスキャリア人材育成仕組みと、契約期間というのは私は人材育成仕組みにかなりかぶってくる部分だと思いますが、そういうものを加味して、総合的に正社員パートタイム労働者の同じ、違うというところを判断する必要があるということを申しております。その意味では、やはり職務が同じか違うかというところを判断するのは大変難しいという点につきましては、森先生がおっしゃることと私も同感でございます。  ですから、職務のみに注目した均等、均衡処遇というのは現実には難しいのではないか。ヨーロッパのように職務ベース賃金になっていれば、同一労働同一賃金、あるいは同一価値労働同一賃金というのは非常に受け入れられやすいんですが、日本では難しいだろうということを申し上げたつもりでございます。この点に関しましては多分委員のおっしゃることと私の申し上げていることは余り変わらないのではないかなというふうに思います。その点確認させていただきました。
  22. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 私も簡単に申し上げたいと思います。  今御指摘のように、全くジョブを決めただけのある意味ではドライな契約関係と、今いい面とおっしゃいましたけど、確かに情報が共有され、手伝ったり、チームワークがあったり、あるいは先輩から後輩へ仕事が教えられたり、これはいい面だし、私はこれからも多分残っていく、残すべき課題だと思いますが、片方で、やはりよく言われていますように、就職ではなくて就社であると。  つまり、その企業という組織のメンバーシップとして、正規のメンバーとして何でもありということですと、正にそうでない者に対する、これは非正規問題も含めて、差別だったり部外者扱いする。あるいは、そこで正に組織の言ってみれば忠誠みたいなことが何か仕事の評価基準に化けていってしまうような、それは大変私はマイナス面があると思っていまして、それはやっぱり今の均等、均衡ルールの中でも私は見直していくべきだろうという、見直すべき面が多々あるだろうと思っています。それこそ、つまり拘束性という言い方が何か組織の忠誠度を測るようなものが物差しになっていくのは決して望ましくない。  先ほどヨーロッパの例が出されましたのであえて申し上げますと、さすがにヨーロッパ、大ざっぱに言いますとですよ、今までがかなりそういう狭いジョブだったところが、いわゆる属人的な評価とか、さっき言われた能力評価とかというふうにだんだんやっぱりシフトしてきている。日本の方も、言わば組織中心、属人的だったものから、もうちょっと仕事の中身、職務に着目しようよというふうに、両方の角度が寄ってきている状態だと思うんですよね。  ですから、私が先ほど物差しづくりについて検討してほしいと言ったのは、必ずしも欧米型ということではなくて、かといって今までの日本型ではなくて、やっぱり歩み寄りのところで十分にあり得るのではないかという、その期待を含めて申し上げたいと思います。
  23. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 鴨参考人一つ質問をさせていただきたいと思います。  先ほど様々な相談事例を挙げられました。私も超党派のパート議連に所属しておりまして、かなり濃密に先生方から様々な事例を聞かせていただいたり研究をさせていただいたということで、まだまだこういう相談がむしろ増えているんだということは非常に大変問題だというふうに思っております。  それで、こういった方々先ほど今回の法改正では対象とされないという御指摘があったわけですが、その対象とするための具体的な方法、つまり、例えば短時間労働者というものについての定義をもっとしっかり法文の中に書き込むべきであるとか、そのような具体的な何か提案がございますでしょうか。
  24. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) このような方が対象とされないという意味で言ったのは、今この事例で挙げている方たちは皆さんフルタイムパートと言われている方たちです。今回のパート法の中では、いわゆる四十時間を超えたパートはこの対象とされないというふうになっているということの意味で、この方たちの処遇改善されないというふうに思いますということです。  その意味からいいましたら、いわゆる今の現状に合わせてパートの定義というところについて、通常の労働者よりも短いパート労働者というふうに現状はなっております。しかし、実態的にはパートという名称でいろんな形でこのような身分差別が横行しているわけですから、いわゆるパートというふうに名称で呼ばれている労働者についても、今回の法改正が適用されるというふうにきちっと明記をしていただきたいということです。
  25. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 ありがとうございました。  龍井参考人白木参考人に伺いたいんですが、労働生産性の向上についてお聞きしたいと思います。  今回のこのパート労働法のこの改正が、労働生産性といっても、大企業とそれから中小企業、中小零細企業とでは随分異なるわけですけれども、それぞれに与える影響、特に労働生産性というものに着目して、どのような影響を与えるとお考えになるか、それぞれの御意見を伺いたいと思います。
  26. 白木信平

    参考人白木信平君) 私は、組合の経営講習会なんかにも行くんですけど、我々は一体将来どういうことを目標にして経営していったらいいかということを聞くんですよね。それで、私どもの食品、主として飲食店の場合ですと、やっぱり大企業化していく分類と、それから日本の固有の、昔からの伝統的なそういう六業種の食堂というようなのと二つに分かれていく。  御承知のように、アメリカから来たファストフード、マクドナルドとかスターバックスとか、そういうようなファミリーレストランとかというのは、ある程度二次産業的なシステムを取り上げて、そして非常に人手を省いて、そして合理化をして、ほどほどの味でもって飲食店を進めていこうと、チェーン化していこうという二次産業的手法による一つの飲食業なんですね。それと古来の、先ほど申し上げた、私が所属しておるような生衛業なんというのは、本当に職人を経営者自身が育てて、そしてその人も一生そこで勤めるか、あるいは自分でまた独立して自営していくかと、そういうような人を目的として養成しながらやっていく、そういう職業と二分化今しつつあるわけです。  それで、主として今の、大企業化していく、そういうファストフードなんかのマックやスターバックスとか、そういうようなファミリーレストランなんかは、これもまたちょっと日本人も行き詰まってきまして、やっぱりちょっとその味じゃ満足できないとか、いろいろ注文が出てきている。またやや、手作りの昔ながらのそういう味を主体にした伝統的な飲食店に入りたいというような傾向も出てくるわけなんです。そこで、やはり先ほど申しました第一の産業ぶりとか第二の産業ぶりを一緒に考えたようなシステムというのはなかなか難しい。  そこで、ですから私は、結論を申し上げたように、もう少し、自由主義経済の国だから、大所高所からの人権問題に類するような、そんなことはひとつ国が大いに干渉してもいいんですけれども、ある程度のことは、その企業内、産業内で、従来の長い伝統の、習慣の中で仕組みを考えてきたんで、それを尊重しながらやってもらえないかと、それを新しく規制で持っていかれるとそういう歴史的な基幹産業というのは全く崩れてしまうと、そういうようなことをお願いをしておるところであります。
  27. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 私からも簡単に申し上げますが、今、白木さんの言われたこと、私も全面的に賛成な部分があるのは、やっぱり正に人権問題だと思うんですね、このパート問題というのは。つまり、一緒の職場にいて、同じ人間として、先ほど発言がありましたように、同じ人間として認められて、同じ人間として扱われるか。  ですから、実は差別禁止というのは、実務的にやろうとするとそういうような人材活用仕組みだというふうに出てくるかもしれないけど、基本はまずそこが魂が入っていなければ、こんな法律は全然意味がないと思うわけです。  ですから、それがあれば、今回の法律がそうなるかどうかというのは正にそこが一番問われているところで、どんな働き方、さっきの、これも白木さんが言われた、分類が職人的なやりがいのあるように見える仕事も、あるいは一見単純労働に見える仕事であっても、働いている側からすれば、本当にそれがきちんと一人前として扱ってもらう、よくやったねという評価がされる、承認がされる、不当な差が付けられない、ある意味では単純なことだと私は思っているわけです。ですから、そういう扱われ方がまずされるんだという、本来ならばまずそういう基本的なものが法律でどこか明示されて、具体化するときは、賃金であればこういう基準があって、本来ならそういうふうにしてほしいものなんですね。  ですから、私はそれがベースにあれば、そしてもう一つ加えれば、雇用が少し見通しがあると、つまりデューダ、とらばーゆを見ながら仕事をするんじゃなくて、今のところで少しはやっていけそうだなという、そういう安定感、信頼感が、さっき森さんが御指摘をされた生産性の一番のベースになるんだと私は思います。
  28. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 私の持ち時間もそろそろ終わりでございます。  これから人口減少社会を本格的に、もう始まっているわけで、中長期的に見れば人材不足、労働力の不足ということで、もう既に中小の企業でも将来展望を見据えて、どうやったら優秀な人材を確保できるのか、そのために雇用体系、処遇の面においてそれぞれの会社でのルールを作り始めているところもございます。それを後押しするような形で今回の法改正がそれに資するものであればいいなという私の意見を述べさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  29. 山本保

    山本保君 公明党の山本保でございます。  では、最初に武石参考人にお伺いいたします。  今までの各参考人の御意見、そして委員意見も聞いておりまして、なるほど、なかなかパートというのを単純に、短い時間であるとか、そういうもので切るということは難しいなということをよく分かりました。  それで、先生は、今回の法律では一応難しいんではあるが、職務内容、責任ということと、それから人材活用、またその経歴、キャリアというようなもの、そして契約期間と、こういうふうに分けているわけだけれども、お聞きしておりまして、もっとほかにもう少し加味すべきものがあるというようなことを先生はお考えのようなふうに私お聞きしておりましたので、何か、後でまたお聞きするんですが、正に今、白木参考人龍井参考人の方からは、働く意欲であるとか目的であるとかそういうものも当然入るんだというような今お話があったので、また後でちょっとお聞きしますが、武石先生は、まあ法律でございますから、こういう割と分かりやすいところでまず三つ指標にして分類をしたわけですけれども、もう少し、これからこれを運用する場合にどういうものを加味若しくはその中身として入れていくべきだという何かお知恵がございましたら、教えていただきたいと思っております。
  30. 武石恵美子

    参考人武石恵美子君) 加味してほしいということは特にございませんということをまず申し上げたいと思います。  まず、今、龍井さんもおっしゃったように、不当な差が付かないということをベースにすべきというのは私も全く同意見でございます。不当な差別があってはならないので、そこの何をもって不当とするかということが今回の条件だろうというふうに考えるわけです。その際に、職務が同じ、さらに人材活用仕組み等が同じで長期的な視点から雇用されている、こういうパートタイム労働者がいれば、それはもう正社員と同じというふうにみなして、均等、差別的な取扱いをすべきではないということで、私は、この条件については、ルール考え方としては一つの合理的なものだろうというふうに考えます。  ただ、注文を先ほども申し上げましたが、それでは、職務が同じとか人材活用仕組みが同じというこのルール考え方は分かるんですが、実際に職務が同じというのは何をもって同じとするのかとか、人材活用仕組みが同じ、異動の幅とか範囲とかと言われていますが、例えば正社員の全員が異動するということもあんまりないと思いますので、そういう具体的に職場実態に照らして、このルールは問題ないと思いますけれども、そのルールの適用に当たって現実的な問題というのがたくさん出てくると思います。そういうものが職場の中で混乱があってはやっぱりこのルールがきちんと適用されないわけですから、なるべく混乱のないような形で今後詰めていっていただきたいということが注文でございます。この二つ指標を更に何かということではなく、むしろこの中身を詰めていただきたいということを注文として申し上げたつもりでございました。
  31. 山本保

    山本保君 では、また後でお聞きするかもしれませんが、龍井参考人に同じような質問なんでございますけれども、参考人先ほどのお話の中で、特に、こうなってきますと、この均衡努力義務というような、正に白木参考人が慣行とか文化というようなことをおっしゃった、またその意味もあるんではないか、正にそういうことの中で努力してくださいと。その場合、行政の方からの相談、指導、助言というものの、これは非常に重要な意味があると、今まで以上に強化すべきであるという意味の御発言があったと思います。この辺も含めてもう少し御説明いただけますでしょうか。
  32. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) さっき私が物差しのところで、つまり研究者とか、何か行政とかって、どこかが勝手につくってしまうということになると、先ほど言われたような当事者が加わらないで押し付けられたものというふうになると思います。ですから、私は、そのプロセス自体がむしろ一番重要であろうというふうに思っておりまして、結局、白木さんの業界で可能かどうか分からないので一般論で申し上げますと、やっぱり個別の、まずは個別の企業労使の納得というのは、これまた武石さんおっしゃったように、当事者が納得する以外に何が合理的かというと、やっぱりそのプロセスにみんなが参加して一緒に決めたよねというのが一つ条件だと私は思うんです。  ただし、当然労働組合がほとんどない職場でそれが可能かどうか。これは私どもも力不足で、本来ならばそういうところにかかわっていきたいわけですけれども、実態は、すぐにはじゃできるか。そうなると、個別の企業の中、つまり、はっきり申し上げて、正社員同士でも企業を超えたときの共通ルールは今のところ明確にはないわけですね。  でも、こういう、先ほど森さんがおっしゃったような厳密な仕事じゃなくて、こういう業界のこういうプロフィールの人、あるいは経験年数がこのぐらいの一人前の人だったら大体こうだよね、私は、そのぐらいのまず目標といいますか、ものをつくり上げるんだということで努力をする。さっきお願いをしたのは、そういう努力に対して国としても支援をしていただく、指導をしていただくという、やっぱりそういうことでこの納得性を積み上げていくという、遠回りに見えるかもしれないけど、私はそれが一番近道なのではないかというふうに思っております。
  33. 山本保

    山本保君 それでは、もう少し詳しくちょっとお聞きしたいんでございますが、例えば、一つの案といいますか、出されているので、必ずパートの方と正規社員の方と、そして経営者が同一の土台の上で話し合うようなルールをきちんと詰めなくちゃいけないんだと、そういう民主党さんの案があるなと聞いておるんですけれども、これについては、そうなりますと、もちろんそれがなされれば私も非常によろしいと思うんですけれども、しかしこれをすっと考えましても、正社員パートの方とは利害が反する場合が非常に多いんじゃないかなとか思いますし、又は経営者の方は当然違うからこそ話し合うんだと、こういうことになるかもしれませんが、これは現実的に必ずこういうことができるかどうかというのはどうだろうかなと私などは思うんですけれども、参考人はどうお考えでございますか。
  34. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 当然私も、それは逆に言うと作ればできるというものだとも思っていませんので、そういう努力が積み上げることを促進していただく、そういう雰囲気を正に業界であったり地域であったりでもそういうことがあり得るんだし、できるんだなということを発信してもらうということが私は一番重要だと思っています。  ですから、それは努力義務の形であれ何であれ、とにかくできるところはやっていただくと。おっしゃったように、簡単にまとまらないかもしれない、でも、利害は対立するかもしれないけど、対立するがゆえに、おっしゃったように納得してまとまるというものは大変これは汎用性があるわけですよ、逆に言うと。ですから、お互いにそういうことについて共通の問題として努力をしてみようよという、そういうメッセージをむしろ逆に今回の法案で発していただきたいということですね。
  35. 山本保

    山本保君 私も基本的におっしゃることは分かります。ただ、その場合、三者が一緒にやるというよりは、正にこれは個別交渉などの方が踏み込んでいけるんじゃないかなという気もしますので、そういう意味も含めてということで理解してよろしいでしょうか。
  36. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 実を言うと、我々労働組合の側も遅ればせながらメンバーシップにし、そしてお互いの均等、均衡ルールを一緒に参加して作ろうという動きを、遅々とした歩みではありますけれども、着実に進めて今広がっておりますので、またできれば、私どものそういう取組についても皆さん方にお示しをできるようにしていきたいと思っております。
  37. 山本保

    山本保君 それでは次に、白木参考人にお伺いいたします。  今日は、確かにさっき最初におっしゃいましたように、あと、研究者の方ですとか、またそれについての専門の分野でやっておられる方の中で、ただ一人業界といいますか、そういう代表として来ていただきました、おいでいただきました。  それで、先ほどパートというものの一つ考え方として、その働き方の目的でありますとか、それからその働く階層といいますか、そういうのが違うんだと、それをただ単に時間のようなもので区切るということでは困るというお話があったと思っております。  それで、今回については特に問題はないと思うというふうにおっしゃいましたけれども、その辺をもう少し、必ずやらなければならない、取扱い禁止というものについては非常に限定的なことになっておりますが、そのほかの、中でも、例えば先ほどのお話をかりて言えば、一生懸命将来は職人さんになろうと、こういうことで頑張っている人がいると。しかし、まだ腕はそこまで行っていないのでこれは正規社員にするわけにはいかないと、こういうようなときがあるかと思うんですね。こういうようなときどんなことを、これからこの法律ができて努力されるとして、どういうことが考えられるのか、ちょっとざくっとした質問ですけれども、お考えありますでしょうか。
  38. 白木信平

    参考人白木信平君) ちょっとそこは誤解がありまして、見習のような、将来、五年、六年掛かって一人前の職人になろうというのは、これ実は初めから正社員なんです。パートとしては扱っていません。ほとんどの事業所は扱っているのはありません。ですから、そういうのは初めから将来を見込んで正社員として仕込んでいくわけです。
  39. 山本保

    山本保君 ありがとうございます。  ちょっと私、じゃ勘違いしておりまして、既にもう能力、技能があるという人だけが正社員であるという意味ではないんだと、正に今回の法律でいえば、その人材活用として将来性その他を見て考えていくんだということでございますね。分かりました。  それでは、その後のことをちょっとお聞きしたいんです。最後に少しおっしゃいましたが、なおということでおっしゃったと思ったんですが、今回の法律については我々としても賛成だが、例えばということで、今後、厚生年金などの拡大についてとか、また超過勤務手当の在り方については少し異論なりまた考えるところがあるとおっしゃいました。  これはこれからまたお聞きするわけでありますけれども、せっかくの機会ですので、その辺についてお考えのことがございましたら、もう少し詳しくお話しいただけますか。
  40. 白木信平

    参考人白木信平君) 先ほど申しました、今回の問題ではございませんが、今懸案になっておりますし、また三年の猶予で厚生年金のパートタイムへの拡大適用というのもあります。  これは、私、前回の三年前にこの問題で大分いろんなところで発言をしておりますけれども、いずれにしても、一口に言いますと、厚生年金というのは、私どもが俗に言うサラリーマンの方々を対象にした年金制度であると。したがって、ほとんど定期的にいろんな仕事をこなしていかれる、いわゆる常用といいますか、そういう方々を対象にしておる。したがって、給料から差し引く保険料にしましても、年間給与をまず算定して、そして料率表でもって保険料を算定して毎月の給料から引くわけです。  ところが、私どもの業種のパートタイマーは、先ほど説明しましたようなことで、どういう勤務をするか分からない。今日何時間働くかも分からないし、何週間いるかも分からない、何か月働かれるかも分からない、そういうような方々に、そのときも、ああいうヒアリングのときにも申し上げましたが、それじゃ一体、この適用証を社会保険事務所へ持っていくときに、書く項目がたくさんありますが、これどうやって書くんですかと、それを申し上げましたが、返答はありませんでした。  そのように、ちょっとこれは、やっぱり今の短時間パートタイマー、あるいは非常に断続的な、定期的じゃないような勤務をされるようなそういう人は、別の方法で、厚生年金を入れるにしても別な方法を考えないと、現在の厚生年金のやり方をそのままそちらに移行するということは事務的に不可能だと思いますね。それを申し上げたわけです。  それから、もう一つ先ほどの超過勤務の件でありますが、さっき山本先生からお話ありましたように、とにかく、調理師でも見習である、将来そういう職でやっていこうという人は初めから正社員にするわけです。でありますから、これが正直言ってとても生産性を上げるような働きは初めからしていないわけですね。そういう者も、しかし将来の希望で、私たち事業主も教えたい、せっかくの本人の希望だから一人前にしてやりたいという、そういう伝統的な職業だものですから、そういうことで育てていくわけですね。  そうしますと、六時間になるか八時間が法定労働時間になるか分かりませんけれども、それをぴっちり決められて、それを超過すれば五割増しだということになりますと、これちょっと、養成するなんということとは全く度外視した話になります。そうした場合に、一体、我々の業界というのはどういう仕組みで職人を養成してやればいいのかと、そういう死活問題になってまいりますので、この点をよく実情を精査していただいて業界と意見の交換をして、そして実行可能な方法を考えていただきたい、このように考えております。
  41. 山本保

    山本保君 最後に、ちょっと今後の問題の方に移ってしまったんですが、元へ戻しますけれども、正に今回のパート労働法についても、今三人の先生に私はお聞きしましたが、正に現実状況実態というものをしっかり見た運用をしなければならないということを我々与党についておっしゃったんだと思っております。これからもしっかりその辺は皆様と相談しながら進めていきたいと思っておりますので、これからもよろしくお願いいたします。  じゃ、終わります。
  42. 小池晃

    小池晃君 日本共産党の小池晃です。  時間の関係ですべての方に質問できないかもしれませんが、御容赦ください。  最初に幾つか坂本参考人にお伺いしたいと思っているんですが、この改正案では、正規の、通常の労働者への転換を推進するために事業主に対して一定の措置をとるように義務付けているということですが、非常に中身が不十分であるという指摘がされております。その点について、参考人の方から問題点指摘していただけますでしょうか。
  43. 坂本福子

    参考人坂本福子君) この通常の労働者への転換ということで、法案の方では三つ条件を挙げております。要するに、通常の労働者の募集を行う場合に、その当該事業所で雇用する短時間労働者へ周知する。あるいは、そして二番目に言っているのは、短時間労働者に先に応募の機会を与えると。三番目は、雇用する短時間労働者に、その試験や何かの場合にそれを与えるというようなことを言っております。  しかし、そのうちのどれか一つというのでは、これはやはり、そこで働いているパート労働者がやっぱりもし希望する場合に、それは優先的にやっぱり応募の機会を与えるというふうにしなければ、これまでパート労働者として働いてきたその労働者の権利といいますか、その慣行という、そういうものを先にすべきだというふうに併せて考えております。  やっぱり通常の労働者への転換というのは、パートタイマーであってもやっぱりきちっとした通常の労働者への転換を希望する者が多いわけですから、その意味で、まずその優先権を与えるということと、もう一つ、これは全然ここには触れておりませんけれども、例えば正規労働者の場合でも、私たちが考えますパートは単に労働時間が短いだけということであれば、例えば育児、介護、そういう正規労働者一つパートになる。ヨーロッパなんかでは、私が行ったときにやっぱりうらやましいなと思ったのは、例えば六時間、四時間パートという形で正規として働いている。だから、オランダなんかはもういわゆるパート法というのはないんですね、普通の法律が適用になると。  そういう意味では、やっぱり今度の法案としては非常に、現実に働いているパート労働者を保護すべきものではないというふうに、もう少し、もう一歩先に進んだ改善案、それを考えていただきたいなというふうに思っております。
  44. 小池晃

    小池晃君 それから、今回の、まあ法体系の問題もあるんですが、公務員はこの適用除外になっております。現実には公務員の世界で非常にパート労働が増えているという実態がある中で、先生もそういう裁判にも取り組んでおられると思うんですけれども、公務パート実態とその問題解決に何が必要なのかについて、御意見をお聞かせください。
  45. 坂本福子

    参考人坂本福子君) いわゆる公務労働の場合に、今の段階ですと、国家公務員の場合は基本的には人事院規則、それから地方公務員の場合には地公法という形になってきております。ただ、いわゆる地方公務員の場合には基本的には労働基準法が適用ということでして、殊に非常勤あるいはパート、いわゆる非正規の労働者については、これはほとんどその地公法の適用が、地方公務員法の適用が外というふうに考える。実態には非常に多いんですね。  私も現実に裁判やっております保育士さんというのは、非常勤保育士。これは任用でもって一年契約という形になっております。一年一年任用なされるんですけど、実際にはもう九年から十年、そして十数回。なるべく長く働いてくださいよと言われる形できておりまして、ある日突然、もううちの方の非常勤パートは要らないよという形で解雇されると。  この点についてやっぱり救うべき法律というのがやっぱり今のところ不足しているんではないか。裁判所の判断も非常にまちまちでございます。  やっぱり地方公務員については、とりわけ労基法の適用があるんですから、そういう実態をやっぱり見て、それを救えるような法律をもう一つ作っていただきたいのか、立法政策まで踏み込むのか、あるいは労基法の適用をきちっとうたってもらうのか、単に任用という行為であって、それは民間と違うというふうに切られるのは非常に困るんだということを思っておりまして、是非その辺は、むしろ立法の問題ではないかというふうに考えております。
  46. 小池晃

    小池晃君 これも今度の法律自体の大きな問題点だと私どもも思っております。  それから、ほかの参考人の方からも御指摘があったんですけれども、いわゆるフルタイムパート方々が今度の法律では全く救われないではないかと、この点について御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  47. 坂本福子

    参考人坂本福子君) たしか答弁では、衆議院の答弁を見ましたら、フルタイムパートというのは、まずそのフルタイムパートということ自身がどういうことなのかという問題が一つあります。そして、そのフルタイムパートの場合には適用がないと。実際、私たち弁護士会でもこれはずっと以前から意見書を出しておりまして、やっぱりパートというのはパーツから来ているんであって、単に時間が短いという労働者なんだと、フルタイムパートというのはおかしいではないかと。とするならば、フルタイムパートは何法の適用をもってどう救済されるのかという問題が含まれてきます。  当然、これは私どもは労働基準法その他一般的な法律が適用になるというふうに、正規労働者と変わりないんだというふうに考えておりますけれども、単に呼称でもってフルタイム、じゃ正規労働者と同様の適用がないのかということが、これが非常に現実には大きく問題になってくるのではないだろうかな。やっぱり、きちっとそうした意味では労基法の適用があるということが定められてしかるべきではないかというふうに思っております。
  48. 小池晃

    小池晃君 続いて鴨参考人にお伺いしたいんですけれども、現場実態をお話しいただいたんですが、ちょっといろいろ聞くと、ダブルワークとかマルチプルジョブホルダーの問題というのが非常に深刻になっていると聞くんですね。法の抜け道みたいな形で、非常に長時間労働正社員並みあるいは正社員以上の、これはまあ最低賃金低過ぎるという問題も背景にあると思うんですが、こういうダブルワークあるいはマルチプルジョブホルダーみたいな実態とその問題点について御意見をお聞かせください。
  49. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) 今は本当にダブルワークの人が増えています。パート労働者は、言えば短い短時間労働者であるという定義付けにはなっておりますけれども、結局ダブルワークをしている人たちは、今の時給が余りにも低過ぎるがゆえに、それだけでは生活ができないという中でダブルワークをしている。  そうすると、私たち、二〇〇三年のときだったと思いますけれども、均等待遇アクションということで実態調査をしたときに、ダブルワークで働いている人たちが一日十時間で年間で三千時間近い労働をしている人たちがいたわけです。ところが、ダブルワークをする目的というのは、生活をできるためにということでダブルワークをするわけです。でも、時給が千円に届かないわけですよ。そうすると、パートパートだけのダブルワークでは、三千時間働いたとしても単純に言って年収三百万に届くか届かないかという状況があるわけです。  だから、本当にダブルワークをしている人たちは、ある意味で生活のためにということで大変な中でダブルワークを選択しているわけですけれども、そのダブルワークだけでは生活ができないという現実を考えたときに、やっぱりパート労働者賃金、時給ですね、この時給そのものをもっと底上げしなければ、本当に短時間労働者であるはずの人たちが正に長時間労働で働いているという実態になってしまっているということ。  ダブルワークの人たちは、例えば十時間を働いていても、今の例えば社会保険とか、そういった適用からいえば、一つの営業所の中で四分の三時間以上というふうになっていますから、そうすると二つ働いて十時間を超えていても社会保険適用にならないわけですよね。当然、年金の問題もそこから生まれてくるわけです。残業時間に対しても、本来十時間であるならば残業時間の適用があるはずだけれども、そういったものも労基法の中で適用になるというふうにはなっていますけれども、現実にはあり得ないですということで、そういった問題がかなりあって深刻な問題になっているというふうに思います。
  50. 小池晃

    小池晃君 それと、参考人がお配りいただいた資料で六枚目に、いわゆる三要件を満たすパートがどれだけいるかということで政府が説明している資料がありまして、これを根拠に五%なんだという議論があるわけですよね。昨日もやり取りがあって、柳澤大臣は五%どんぴしゃというわけじゃないんだというようなことも言っていましたが、ちょっとその説明の中で、要するにこれは配転、転勤の頻度が正社員と比べて多いか同じかと聞いたときに、これは有期の人がこの質問に対して丸を付けるわけがないから、この五%というのは、結局有期というのはもうクリアした数字で出てきているからこれは近似値として考えていいんだという、ちょっと私とんでもないんじゃないかなと思うような、そういう説明を政府はしているんですけれども。  この五%、まあほとんどこんなにいないんじゃないかというふうに実態としては思うんですが、この数字の政府解釈についてはどのような感想をお持ちでしょうか。
  51. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) 先ほども言いましたように、この五%という数字がそもそもどういった実態の中で把握されているのかというのがちょっとよく分からないですね。  私たちの本当に相談の中からいいますと、仕事が同じというのは皆さんもうあるわけです。だけど、さらに残業も同じものありますね。そこまでは行きますよね。だけど、この先の異動、配転という問題が入ってきたときに、それも同じパートといったら、どこに実際として存在しているんだろうかというふうに思ってしまうということです。  だから、五%なり一%ではないだろうかというようないろんな数字は飛び交っているんですけれども、現実一%なら一%で、じゃ実際どこに存在しているのかということを教えていただきたいというふうなことの方が実感としてあります。
  52. 小池晃

    小池晃君 龍井参考人坂本参考人にもこの数字についてちょっと御意見をお聞かせ願いたいと思うんですが、この五%という数字のほかに、パート労働者の中で期間の定めのあるという方が八割、だから残りの二割掛ければ、五%掛ける二〇%で一%になるんだと、あるいは一%未満だと、大体そんな人は見たこともないというような、そういう議論があるわけですが、その辺の数字の見方についてどんな御意見をお持ちか、それぞれお聞かせください。
  53. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 実は、そこは詰めなくちゃいけない課題だと思う反面、もう一つ大事な論点があると思っていますのは、暗黙のうちに、通常の労働者と同じというときに、通常の労働者一つのパターンだというふうに暗黙に思っちゃうわけですよ。じゃ、これは今後、これの運用の話とかかわってくるんですけれども、だったら、例えば全国転勤要件だと掲げたとします、正規、通常の労働者が。じゃ、全員がしているかということですよ。  多分、だから、だれと物差しで比較をしていくかというときに、それが一応パターンに思っちゃうんだけれども、全員がしているわけじゃないし、全員が異動しているわけじゃないわけですよ。今はその見込まれるという訳の分からないのが入っていて、それは主意じゃありませんよとなっていますよね。だから、この答え方のときに、これ経営者アンケートの場合も多分御本人、御本人というのはつまりパート労働者の当事者に聞いたって、だれと比較をするかというのが残っているわけです。だから、そこが分からないまま何か勝手なイメージで比較しているとなると、私はこの数字は、実態より少ない可能性もあるんですよ。つまり、全員が、通常の労働者全員が配転しているわけじゃないし、全員が全国転勤の要件をやっているんじゃなかったら、そういう通常の労働者と私は同じだというふうに答えれば、これは広がる余地だってあるわけですよ。  ですから、そこはその数字の厳密性と同時にどう運用していくかということと併せて追及していただきたいと私は思います。
  54. 坂本福子

    参考人坂本福子君) 実は私も五%というのは非常に疑問なんですね。  というのは、数少ない中ですけれども、例えば弁護士パートの相談を受けた中で、じゃこの三要件を満たすパートさんが相談に来ているかといえば、今まで私は当たった例はないんです。何十年間、やっぱり弁護士としてパートさんの相談も受けています。  一体、五%と言ったのは、確かに新聞や何かから、あるいは国会の答弁から引いたのであって、しかも転勤要件というのが通常の労働者で、今、龍井参考人もおっしゃられましたけれども、私たちが男女差別のときに転勤の問題が出てきていても、必ずしも、男性が転勤があるから、だから賃金が高くていいんだという、その転勤でもって言われることがあるんですけれども、でも同期に入った男性でも半数以上は転勤もしていないと、こういう例が結構あるんですね。  だとすると、この数字というのは一体どこからどういうふうにやったらこの五%が出てくるのか、非常に私は疑問に思いつつ、これは実は、私たち一緒にやっている弁護士の仲間でも何人か討論をしたんですけれども、どうも確かにつかめなくて、やっぱりもっときちっとした数字を出してもらいたい。何人是正されるんだろうか、どれだけ是正されるんだろうかと。少なくとも、改善と言うからにはやっぱり改善する方向法案であってほしいなということで、これは是非、議員の方たちにもきちっと調査していただきたいなというふうに思っております。
  55. 小池晃

    小池晃君 安倍政権としては再チャレンジ支援策の目玉みたいな形でこれを出してきている。ところが、実際にその対象になる人がどれだけいるかが極めてあいまいであるというのは、もうこれ大問題ではないかなというふうに思います。  龍井参考人に、そもそもこういう安倍政権が再チャレンジ支援策の目玉として出してきたこの中身について、連合としてそういう観点から見てどのように評価されているか、ちょっと御意見をお聞かせ願えますでしょうか。
  56. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 冒頭の背景のところではしょりましたけど、結局これだけ液状化というかぐしゃぐしゃにしちゃった、その政策の責任がまずあるわけですよ。それをまずじゃ改めますというふうに宣言するのか、いや結局それはもう格差は開いちゃいました、二極化しちゃいました。その上でなおかつ、再チャレと言うと聞こえがいいけど、あれはやっぱり自立型ですよ。自力ではい上がってくる人、つまりそれは安倍さん自身がセーフティーネットじゃないとはっきり言っておられるわけなんで、それはやっぱりそういう二極化のここで言っている底支えをするという発想が私はないんだと思いますよ。  ですから、最賃の引上げも、まあそれは、こういう場ですから変な言い方ですけど、もう参院選前の何か慌ただしくやってきたなというので、繰り返し申し上げますように、トータルな働き方をこうするんだ、部品じゃなくてこうするんだというメッセージがあるんだったら私は真摯に受け止めたいと思いますけど、とてもそういう実態にはなっていないと私は思います。
  57. 小池晃

    小池晃君 ありがとうございました。終わります。
  58. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。今日は本当にありがとうございます。  まず、八条についてですが、坂本参考人にお聞きをいたします。  あるパートの人が弁護士のところに相談に来て、これに該当するかどうか実は分からないと思うんですね。つまり、これは第一義的に、坂本参考人がさっきおっしゃったように事業主に判断がゆだねられている。しかも、二項は裁判でも、裁判をやらない限り期間の定めのないものに転化しているかどうかは弁護士としてもその現場では分からないわけです。この八条がやっぱり極めて要件としてどうかという点について、一言お願いいたします。
  59. 坂本福子

    参考人坂本福子君) 私は、やっぱりこの八条は本当にこれはひどいという、これによってむしろ差別を生み出すんじゃないかと。じゃ、その八条によって救われるのは、先ほどから何%かと、少なくとも大臣の方が五%という国会答弁が出てきていると。しかし、実際にはそれはどこまで行けるんだろうかということが一つあって、しかもそれで、そこに救われないパートの人たちには余計その格差、だから逆に言えば事業主は、要するにこういう、あなたは通常労働者と、ちゃんと正規に扱いますよと、労働条件をちゃんと与えますよ。しかし、あなたはそう、この三要件を満たさないから、だからもっと低くったって構わないし、労働条件を向上するように均衡に、比べて均衡にしろということでもないと。で、扱うように努力しなさいと。うちは幾ら努力してもそれは駄目ですよということで、それはまさしくこれは格差を拡大していくんじゃないかというおそれが私は十分あるんではないかというふうに、だから八条の条文が、本当にこれに対するやっぱり何というんですかね、修正案というのか何というのか、そこはきちっと何とかできないのかなという思いがあります。
  60. 福島みずほ

    福島みずほ君 八条、例えば「同一の範囲で変更されると見込まれるもの」というのをどう一体判断するのか、裁判でも起こさない限り分からない。でも、裁判を起こせる人は極めて限られているわけです。  この八条に社民党は反対をして、特に反対をしています。ただ、ですが、どう限定するかという立場で言いますと、昨日厚生労働省は通達を作るというふうに言いました。八条の限定というのは最悪の場合どう可能なのか、龍井参考人、どうお考えでしょうか。
  61. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 通達ですので、多分今までの裁判例等々の実態から作業をおやりになるのかなと思いますけど、少なくとも私は、今御指摘のとおりで、その見込みということについても審議会でも問題にしてきましたけど、少なくともそれが、当然最後は裁判に行くとしても、先ほど申し上げたような相談あるいはあっせん、あるいは今回の入った紛争解決処理の中で、それが少なくとも問題解決が前進するような何らかの客観的な基準が示されていく、あるいは考え方が整理されていくにしても、多分それは私は、まだこれの今の裁判例もそんなに多くあるわけじゃございませんので、完成品にはならないかもしれないけど、結局それを足掛かりに我々もそういう事例を積み重ねてやっていくしか、なかなかルール作りはできないのかなという思いはありますけど、少なくとも何らかの客観的な目安、基準が示されていくということについては私どもなりに期待をしたいというふうに思っております。
  62. 福島みずほ

    福島みずほ君 鴨参考人にお聞きをいたします。  九条は通勤手当、退職手当をわざわざ除外をしております。これについていかがお考えでしょうか。また、慶弔休暇、慶弔に対する手当などについてもどうお考えか、教えてください。
  63. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) この通勤手当のところはかなり審議会の中でも議論になっていたところです。  それで、基本的にはやっぱりパートについては人件費コストを安くしたいというのが、そこが一番企業の側がメリットとしてパート労働者をとらえているということだと思うんですね。だから、そういう意味においては、できるだけいわゆる手当と言われているところについてはパートについては削除していくという方向性なわけです。  ただ、通勤手当について、基本的に一般的に例えば歩いてとか、パートは自転車で通っているとかって、だから通勤手当を払う対象にはならないじゃないかというような言われ方もありますけれども、でも基本的に正社員だってもういろいろな方がいるわけですから、正社員に支払われているものについてはパートにも準ずるという考え方がこのパート法の根底にあっていいんではないでしょうかという意味からいったら、きちんと正社員があるものについてはきちっと付けるべきではないだろうかと。  退職金については議論が余り深く深まらなかったわけですけど、退職金も同じです。パート労働者、二十年以上も働いていても何にもないわけですよ。何にもないということは、やっぱり働き続けるということでいえば、労働者の意欲ということからいったら、かなりパート労働者、なくても一生懸命働いてはいますけれども、やっぱり退職金あったらいいなというのはだれしもが思っていることです。そういったことはきちっとやっていくべきではないでしょうか。  慶弔休暇については、本当にパート労働者が日々の職場の中で一番差別感を感じているところだと思います。どう差別感を感じるのかといったら、やっぱり喜びとか悲しみとかそういったものまでになぜ差別が付けられなければいけないんですかということです。そういったことがこの慶弔休暇が対象にならなかったということからすると大変私は残念であるし、そういった問題までが差別を何というかある意味でまかり通っていくような法律にこの中がなっているということは、やっぱりこの法律そのものが、パート労働者がそもそも、先ほどから言っていますように、人間であるとか労働者であるとかというところがそもそもどうこの中にベースとしてあるのかというところが問われてくる問題でしょうというふうに思います。
  64. 福島みずほ

    福島みずほ君 鴨さんの「非正規労働の向かう先」というブックレットを読みましたところ、実態、様々な差別というものがあると。パートさんと呼ばれるとか制服が違うとか、いろんな差別があって働きづらさがあって、同じ労働者じゃないかということでいえば、この法案が救い切れてないところが余りにあるんじゃないか。そういう実態について是非話をしてください。お願いします。
  65. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) 本当に日々の差別というのは、差別する側は鈍感であるとよく言います。差別される側は敏感であるわけです。  パート労働者の人たちが、相談の中で一番私たちに対して、相談者に対して言いたいことということでよく言われるのは、日々の中で差別されることが一番こたえるんですということです。自分が職場の中で一生懸命働いていて、例えば賃金なんかで時給が低いということは、ある意味においては、入る前のときにあなたはこういう時給ですよということで、そこでいったん致し方ないということで自分の中でも気持ちを整理できますと。だけれども、それこそ同じ働いている者同士で名前で呼ばれないとか、例えば誕生日祝いが自分のところだけ来ないとか、クリスマスケーキが外されてしまうとか、仕事の必要な会議とか研修にも参加させてもらえないという、そういう実態が本当にまかり通っているということについて、パート労働者の人たちは日々これこそパート差別ではないだろうかということを実感しているということです。  その意味においては、本当に私たちは、やっぱりこれからの組合活動としても、きちっと人権ということを柱に据えた組合活動をやっぱりつくっていかなければいけないというふうに思いますし、どんな問題についても、社会的な問題、すべての問題について一番大事なものが何なのかということでいえば、やっぱり人権であるということをきちんとどんなときも貫いていくことが大事なんではないだろうかというふうに思います。
  66. 福島みずほ

    福島みずほ君 転勤のところで再度鴨参考人にお聞きをします。  均等法のときの間接差別の省令の中に転勤要件というのが入っていて、これは結局女性に対する差別を生み出すと言っていたのに、八条の中にどかんと転勤というか、これが入っているというのは、同じ一人の女性労働者が、間接差別で幾ら均等法で頑張っても、このパート法では差別を容認されて結局女性差別が歴然と起きてしまう、これはもう、一人の女性の労働者が、何かどうしてこういう扱いを受けるわけ、受け続けるのだろうかというふうに思うわけですが、転勤や、要するに、さっきおっしゃった拘束性などを問題にしているという点について意見をお聞かせください。
  67. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) 先ほども言いましたけれども、本当に格差を是正するといったときに、転勤問題もしかりです。そして残業時間があるなしもそうです。有期契約であるかないかということもそうです。何というんですかね、私は、多分パート労働者の側からいえば、格差を是正するのにこんなにたくさんの階段を一つ一つ上らなければ格差は是正されないんでしょうかということを言いたくなるような中身が差別禁止の条件として突き付けられているというふうに思います。  本当にこの条件というのは、パート労働者だけではなくて、本当に正社員であってもこういった条件をクリアしなければ、先ほど来言っていますように、この条件パート労働者条件であるというふうになればなるほど、正社員の働き方だってもうますますこの条件をもっともっとクリアしなければいけないという働き方を突き付けられていくのがこの中身だと思いますので、私は、本当にこの転勤条件、そして有期契約の問題も、そして、そういったことをやっぱり、ここまで条件をつくらなければ差別の禁止の対象とならないということ自体が、考え方がそもそも違っているんではないだろうかというか、もっと本当に仕事が同じであればというところをもっと今の日本の中において研究すべき課題であるのではないでしょうかというふうに思っているところです。
  68. 福島みずほ

    福島みずほ君 龍井参考人にお聞きをいたします。  存在しないかもしれないものを差別禁止をし、残りの部分も極めて限定的に努力義務に課していると。ただ、この努力義務というところで配慮しなければならない、努力、努めるものとする、この部分をどう本当に実効あるものにさせていくのかというのも運動なりやっていかなければならないところですが、この部分についての考え方、努力義務というのは、例えば厚生労働省はこうすべきではないかという提言があれば、お聞かせください。
  69. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 二つあると思います。やはりこの問題は、具体的な職務内容であるとか能力であるとかということの要素は示されています。それがそれに基づいて問題化をする、問題化をするというのはおかしいのではないかということが表面化をする、そしてそれが交渉する、それが何らかの形で解決がされるという。我々働く側、特に労働組合からいえば、結局、義務であれ努力義務であれ、そういうことがきちんと法律に明記されたということを足掛かりに、今までできなかったことができるようにするという、これは我々労働組合がこれから真剣にやらなければいけないことだと思います。  それで、法律上というよりも行政の方が、じゃ、これによって何が具体的に変わるのだろうかと。これは是非、逆に言うと、この国会の中でも明らかに皆さん方からしていただきたいと思っているところですけれども、私はこのときに正に相談、指導、助言の抜本強化というふうにしか書いておりません。結局、これが具体的に今申し上げた問題化をし、それがどういう問題が不合理であるかということが明らかになっていくということが、一個一個の案件の中で自己完結してしまうのではなくて、それ自体がやっぱり社会に発信され、共通のルールになっていくという、その手掛かりはやっぱりそれぞれの責任で発信すべきだと思います。  したがって、この相談の事例にしても、あっせんの場合であれ、あるいは場合によったら調停の場合であれ、にしても、あるいは皆さん方、弁護士さん始め法務の実務に携わる方、あるいは社労士の方なんかも含めて、やっぱりそういう問題を明らかにし、共通ルールが作られると。私は、必ずしも裁判の判例ということは、やっぱり皆さん何人かの方が御指摘のように、そこだけに期待することは非常に実際的に困難だと思っています。そういう積み上げをさせていく足掛かりにそれぞれの場が一歩でも二歩でも確実にする。  特にやっぱり、先ほど八五年に均等法の話も出されましたけれども、全く不十分だと私は思いますけれども、やっぱり八五年に均等法ができたことの、今から振り返ると大変不十分だったと均等法のときに申し上げました。ただ、それでも何らかの発信がされたことのインパクトはやっぱりあったわけなので、それを一二〇%使えるようにしていくことが必要だと思っております。
  70. 福島みずほ

    福島みずほ君 八条で極めて限定的なものについてだけ差別禁止をしている。あとのが配慮義務や努力義務になっているし、それも限定付きであると。例えば、十一条の福利厚生施設について、有期契約だろうが、期間の定めがあろうがなかろうが、福利厚生施設を使うなんというのは当たり前のことにすべきだと。あなたは期間の定めがあるからこの食堂は使えませんなんというのはあり得ないと思うんですが、そういうその十一条が福利厚生ではなく福利厚生施設と限定していること、配慮しなければならないとしていることなどについて、鴨参考人、いかがでしょうか。これは、厚生労働省は休憩室と更衣室と食堂というふうに言っているんですが、それで十分なのでしょうか。相談例からも是非意見を言ってください。
  71. 鴨桃代

    参考人(鴨桃代君) ここは施設というふうに限定されたということで、先ほど来のいわゆる福利厚生と言われている慶弔金、慶弔休暇の問題とか、そういったものがここからは除外されてしまったという意味で、すごく狭いところで限定をされたということで大変大きな問題があると思うんです。  それともう一つ、この施設ということの中でもすごく、またもっと中身的には限定をされていて、審議会の中での議論で言えば、休憩室を使うということについては、休憩室を使えるようにすると。だけれども、休憩室の中の例えばロッカーがあるとします。ロッカーが正社員にありますと、だけどパート労働者にはないですという場合がありますよね。そうしたときに、ロッカーをパート労働者にというふうにパート労働者が例えば求めるとします。だけど、この十一条はそこまでやらなくていいという中身だというふうになっているんですよ。だから、休憩室は利用をする機会は与えるけれども、ロッカーまでを同じようにパートのためにも用意しなければいけないという中身ではないというふうにここの中身がなっています。そういうことからすると、やっぱりパート労働者がどこで着替えをするんでしょうかという問題がいろいろ出てきますよね。  そういったことは、私たちの目から見ると、なぜそういうことがクリアされていかないのかということの方がある意味で大きな問題であるというふうに見えるんですよ。そういったことの一つ一つがこの福利厚生なのか、例えば福利厚生施設なのかというところの中に、意味合いの中で含まれてきているということで、その意味からすると、いろんな意味でこのパート労働法というのはいろんなところに限定、限定、限定という形で限定を入れている。  だから、結論的に言えば、やっぱりパート労働者の側に立ってということよりも、そこはかなりの、使用者との綱引きの中で使用者側の立場に立ってということがこのパート法の中にはかなり色濃く出されてきているというふうに残念ながら言わざるを得ない部分ですかねというふうに思います。
  72. 福島みずほ

    福島みずほ君 先ほど龍井参考人がビジョンが見えないというふうにおっしゃいましたが、龍井参考人としては、例えば、今雇用の劣化、悪化に関してどういうふうに、何をなすべきかという点について教えてください。
  73. 龍井葉二

    参考人龍井葉二君) 残り時間で言うのは大変な課題だと思っておりまして、それで、先ほどのお手元にお配りをした二ページで、取りあえず何から手を付けるべきかということで、若干繰り返しになりますけれども、これもキーワードだけ申し上げます。  働き方の何しろ二極化の中で選択肢を増やす、これは法律の支えもありますし、労使あるいは企業でできること。それで、それをずらす、つまり基準が、今の拘束性の話が出てきましたように、すべての評価基準も含めて、例えば長時間はあったとしても、それがベースになるんではないと、それはむしろ例外だし、あるいはプラスアルファで、あったとしても評価すればいいことで、それは九時―五時というか、これはいろんな言い方があると思いますけれども、要するに当たり前の働き方が当たり前の基準になるというふうにずらすということ。これも上限規制も含めて法律でできること、労使でできること。  その上でやっぱり大事なのは、今回、私は先ほど総括的には否定的な表現を申し上げましたけれども、部品は今回いろいろ入っているわけですよ。それぞれについてはやっぱり前向きなものも出始めている。その部品がそういうふうにトータルに変えていくんだということに見えないことに問題があるのであって、ここで申し上げている、今回の均等、我々は均等主張ですけれども、最賃の引上げ、社会保険の全員適用、そして行く行くは税制の改正といった、こういうものを組み合わせることがそういう働き方の軸を多様化してずらすんだという目標に向かってそれぞれが必要な役割を果たすということが当面の課題だというふうに私は思っています。
  74. 福島みずほ

    福島みずほ君 終わります。  ありがとうございました。
  75. 鶴保庸介

    委員長鶴保庸介君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後六時散会