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参考人(
松田茂樹君) 第一生
命経済研究所の
松田と申します。このような場で報告をさせていただきます機会を与えてくださったことに大変感謝いたします。
それでは、
スライドを使いまして報告いたします。(
資料映写)
私の報告は、「
企業の両立
支援拡充のための五つの優先
課題」というタイトルです。
ワーク・
ライフ・
バランスの
施策はかなり広く多様なものが求められます。しかしながら、優先的なものは何かということを本日は話したいと思います。
私のバックグラウンドは
社会学になります。
社会学の観点から、
仕事と
子育ての両立及び父親の
子育てへのかかわりについて研究してきております。
私
生活ですけれ
ども、四歳と八か月の
子供がおりまして、日々
子育てに悩む父親です。これが終わりましたら
保育園に早速お迎えに行くことになっております。
本日は、別途配付しました三つの論文、これを踏まえまして報告いたします。お手元にも同じ
スライドがありますので、御参照ください。
まず、図一ですけれ
ども、
社会で
子育てを支える、これがやはり
我が国には必要だろうということです。改めて申し上げることもないかもしれませんが、昨今の少子化、この
背景、やはり
仕事と家庭
生活の両立が難しいということがあります。
もちろん、
子育ては、第一には父親あるいは母親が行うべきものです。しかしながら、図にありますように、それを支える仕組みが不可欠であると。
一つ目が各種保育施設やサービス、あるいは学校な
どもあります。つまり、これは主に行政的な面からの支えです。もう
一つが、
企業における
仕事と
子育ての両立
支援です。この両者がなければ
仕事と家庭の両立というのは難しいだろうということです。
本日は、この左の方ですね、
仕事と
子育ての両立
支援、
企業における、この点について御報告申し上げます。
まず、要点でございますけれ
ども、これから申し上げます両立
支援に関する
現状の
認識です。これは、
我が国では、
育児休業制度を始め、これまで数多くの両立
支援策がなされてきたと私は思います。しかしながら、その内容は主に、休むこと、産休、育休、休業中心であったと。もう
一つは、対象が女性に限定されているわけではないですけれ
ども、
実態として女性対象、中でも正
社員である女性対象になされてきたということがあります。
優先的な
課題としましては、五つあります。これはあくまでも
企業における両立
支援策ですけれ
ども、一点目が、日常的な両立
支援と申しました。休業ではなく、日々
仕事をし、
子育てをする、ここを両立させる仕組みが必要であると。二点目は、男性仕様の両立
支援ということですね、が挙げられます。三点目は、パートの問題です。四点目は、
中小企業及び中堅
企業への両立
支援策の普及の問題です。最後に、復職
支援を取り上げます。
なお、あらかじめお断りしておきますが、本日申し上げる内容はすべて立法で解決すべきものではないと思います。それは御承知おきください。
それでは、ここは簡単に話しますが、
企業の両立
支援が求められる
背景ですね。
仕事と家庭
生活の両立難が少子化になっていると。そして、法律による後押しを
我が国は行ってきました。
育児休業制度、そして近年では次
世代育成
支援対策推進法が実施されてきていると。こうした中で、
企業の両立
支援は徐々に普及してきております。しかしながら、少子化傾向が止まらない
現状を見ますと、やはりまだ不足だろうということです。両立
支援の更なる充実が必要です。これがまず
背景です。
それでは、何が優先
課題かということですけれ
ども、まず
一つ目の話です。日常的な両立
支援と申し上げました。
両立
支援といいますと、真っ先に思い浮かばれるのが
育児休業あるいは産休ということですけれ
ども、実はこの制度、
日本は諸
外国と比べて見劣りしないと私は思います。それはスウェーデンや北欧諸国と比べますとまだまだと言われる面がありますけれ
ども、アメリカ、イギリス及びその国以外の国々広く見まして、その休業期間及びその給付水準ですね、所得の、これに関しては決して
我が国は見劣りするものではないと思います。しかしながら、両立
支援が難しいということは、その休業の後ですね、復帰した後にどうも問題がありそうだということです。
日常的な両立
支援と申しましたが、表現がいいものがないのですけれ
ども、これが非常に弱いです。育休から復帰した後、ここが
仕事と
子育ての両立のハードルが高いために
継続就業できないという
状況になっております。ニーズが高い
支援策を先に申し上げておきますと、短時間勤務制度、そして看護休暇、
子供のですね、この辺りが挙げられます。
先に
データをお見せいたします。これは私が実施しました
調査の結果です。
スライドは小さいですので、お手元の図を御参照いただければと思います。
これは、
従業員数三百一人以上の上場
企業を対象に行った
調査です。回答が少なく、あいにく百十三社の回答にとどまります。もう
一つは、当社が持っています
生活調査モニター、この中から
子育て期の男女のニーズを調べたものです。ここでは、正
社員女性が求めている両立
支援策と
企業が実際に実施している
施策の割合を取っております。図でいきますと、横軸に
従業員が望んでいる割合、正
社員女性です。縦軸に
企業が実施している割合です。ちょうどこの斜め四十五度線に乗りますとニーズとシーズが一致していると、ハッピーな状態なわけです。この乖離が大きい
施策は何か、そこが問題になります。なお、ここでは法定で定められた制度以上のものを導入していると、希望していると、これについて調べております。
これを見ますと、実は
育児休業制度といいますのは希望している割合が高いです。
育児休業制度を更に期間を延長してください、更に賃金の保障をする割合を上げてくださいと希望している割合が高いですけれ
ども、実は
企業でも
育児休業制度の延長など踏み切っているところが多うございまして、実施している割合も高いですので、余り乖離がないです。乖離が大きいのはどこかといいますと、三歳以上、
子供が三歳を過ぎた後のフレックスタイム、あるいは始業時間や終業時間の繰上げ、繰下げ、さらに看護休暇というものです。
現在の
育児休業制度では、育休から復職した
社員に対しましては、
子供が三歳になるまでは短時間勤務、フレックスタイムなどの措置を講じることが義務付けられています。しかしながら、その年齢を超えますと努力義務なんですね。ですけれ
ども、そこが実はニーズが高いわけです。三歳以上というところです。
そして看護休暇。現在の法制度ですと五日まで、年間ですね、無給でということになりますが、確保されているわけですけれ
ども、
子供が風邪を引くと五日では足りないんですね。私も先日、インフルエンザで
子供とともに休みまして、あっという間に三日、四日寝込んでしまうという状態ですので、五日よりも長い
子供の看護休暇を希望する割合が高いです。
前の
スライドに戻りますと、何を申し上げたいかといいますと、育休から復職し、そして日々両立していくと、ここを支えるための看護休暇あるいは短時間、ここを拡充することが今求められています。
課題の二です。男性仕様の両立
支援と申しました。男性仕様という少し強い表現をしておりますが、誤解がないように申し上げておきますが、男性限定の両立
支援策を導入する必要があるということを申しているわけではありません。制度はあくまでも男性と女性で中立であるべきです。しかしながら、既存の制度は、中立的でありながら、どうも女性が使いやすい、男性が使いにくいという面がどうもありそうだということですね。ですから、男性が使いやすいということを
意識して何かこうした両立
支援を設計していくことが必要ではないかという点です。
男性にももちろん両立問題はあります。男性の
育児参加というものは極めて少ないです。そして、男性の両立
支援ニーズも実は高くなっております。本日、別途配付しました私の論文ですけれ
ども、男性が求めている両立
支援策は実は女性と大差がないという結果になっています。ただし、ニーズは若干異なります。
現状ですと、家事・
育児時間、男性ですが、一日平均三十分弱、これは
社会生活基本
調査の結果でございます。育休の取得率、男性に関して見ていきますと平成十七年で〇・五%、これはその前の年よりも下がりました。
求められている男性向けといいますか、男性の両立
支援をしやすくするための制度は何かということですが、二点申し上げます。
一点目は、これは各種の両立
支援制度以前の問題になりますけれ
ども、長時間労働の問題が挙げられます。この図をごらんください。図三ですけれ
ども、これは二〇〇一年と二〇〇五年で、男性
社員です、二十代から六十代まで一日十時間以上働いている男性の割合になります。ごらんいただきますと分かるとおり、〇一年から〇五年にかけて労働時間は延びている。中でも延びたのはどこかといいますと三十代なんですね。私も三十代でありますけれ
ども、最も
子育て世代の男性が最も働くようになっていると、ここがやはり問題があります。ですから、第一点に考えるべきは、各種両立
支援策拡充の前に
企業は長時間労働、特に
育児期の男性の両立
支援のためには、
育児期の長時間労働、この見直しが必要だと見られます。
二点目ですけれ
ども、男性の育休の問題が挙げられます。男性の育休取得が進まない理由に関しては様々議論されてきています。恐らく、私も、男性の
子育て意識に問題はあるだろうと同じ性として思います。しかしながら、分析していきますと、それ以外にどうも大きな問題があると見られます。それは、
我が国の男性のニーズの多くは、女性型の長期の育休取得ではなく、短期かつ妻をサポートするという形での育休を取りたいというニーズが実は高いんですね。そうなりますと、何かといいますと、現行の制度は実はこれがしにくいという面がございます。
実は、私事ですが、昨年、下の娘が生まれまして、育休を取得しようと考えました。恥ずかしい限りなのですが、ちょうど生まれて妻が産休の間、これは男性、育休取得できますので、そこで計画していたのですけれ
ども、どうも壁にぶつかりました。それがここに挙げた理由を考える
背景にもなったわけですが、何かといいますと、一点目に、分割取得が現行制度ではできません、一回限り。しかしながら、妻の
育児をサポートしていくためには、分割して、例えばこの週は二日、この週は一日と分けていった方が実は
効果的であるという面があるということです。それが現行制度ではできません。
そして二つ目は、専業主婦世帯は産後八週間しか取得できないと。実は、
子供が一歳まで達する方の八割は専業主婦世帯なんですね。その世帯の人は、育休を男性が取るための期間が極めて限定されているという問題があります。その八週間に
仕事が降ってきましたら、男性は取得することはできないと。
三点目に、保障される給与水準はやはり男性の水準から見ますと低いです。世界的には高いと申しましたが、まあ四〇%ということですね。ここをやはり改善していく必要があるだろうということです。
ちなみに、
一つ私案ですけれ
ども、これは笑い飛ばしていただければと思いますが、現行中の所得保障ですね。現在の制度は、育休期間の長さにかかわらず、その休んだ期間の四〇%の賃金が保障されるということになっています。現在の
方向は、これを更に上げようという
方向に行っているわけですね。スウェーデンなどではもっと高いと、上げるということですが、これをどんどんこのまま上げますと、極めて膨大な経費が掛かるわけです。しかも、これで男性が取るとなりますと、恐らく
雇用保険は破綻してしまうのではないかというぐらいのインパクトがあると見られます。
しかしながら、例えばこれをぽこんと斜めにしまして、最初の開始始点を八〇%にする、で、面積は変わらないとしますと、短期の育休を例えば取得したい、これは
現状の男性ではニーズが高いです。女性でもいます。その方は賃金の減少幅が少なく済むということも考えられます。例えば、これは私の私案でございますけれ
ども、この賃金の保障する割合を高くするという措置が何か必要ではないかと見られます。
三点目は、パートへの
対応です。
ここは簡単に、少し時間の
都合上簡単で恐縮ですが、実はパートが利用できる両立
支援は少ないです。今回
調査した
企業ですと、法定を超える育休制度、これは正
社員には付与するけれ
どもパートには付与しないと。法定を超える看護休暇、これもそうですね。そうした
現状があります。
しかしながら、パートといいますと、そもそも
ワーク・
ライフ・
バランスがしやすい働き方ではないかと見られがちですが、実は両立
支援ニーズは非常に高いです。正
社員と変わりません、
調査をしますと。昨今の
雇用の非正規化の流れを踏まえますと、パートへの両立
支援策の拡充というものを
企業は検討すべき時期に来ていると見られます。
課題の四です。これが
中小企業及び中堅
企業への普及です。これが最も難しい問題かもしれません。何かといいますと、どのような
企業で両立
支援策が普及しているだろうかということを考えていきたいと思います。
仮説が二つあります。
一つは必要性です。つまり、両立
支援ニーズの高い
社員が多い
企業が多いと。ですから、それのニーズにこたえて
企業はどんどん導入していくんだと。もう
一つの仮説は、
経営的な
余裕があるから導入するんだということです。どちらかといいますと、私の分析した限り、限定的ではありますが、どうも必要性ではないようだと、
経営的な
余裕ではないかということです。これは本末転倒な話ではありますけれ
ども、残念ながら
我が国はこうなっているようです。
これをごらんください。これは
従業員の数別に見ました両立
支援策の充実度です。これは別途配付しています資料のものですけれ
ども、先ほど申し上げた、
調査した
企業がどのような両立
支援策をしているか、それを百点満点に、最大を百点満点、最小をそれに応じて得点するという形で分類したものです。これを見ますと、
従業員数が少ない
企業の方がやはり大
企業よりもそうした両立
支援策を導入していないという結果になります。ちなみに、この
調査は三百一人以上ですので、三百人以下の
企業は更にこれは少ないです。これは別途
調査があります。
ほかの要因としましては、資本金が大きい
企業ほどやはり導入していると。導入が進んでしかるべきはずである女性
社員が多い
企業、あるいは平均年齢が若く
育児期の
世代の多い
企業、ここでは導入が実は進んでいないんです。
となりますと、それはなぜかということですね。
中小企業、中堅
企業への普及が
課題だろうということです。多くの就労者は実はこちら、大
企業ではなくこちらで働いているわけですね。これに関しましてはやはり、先ほど家本先生も
お話ししましたが、
中小企業の方ですとなかなか体力のないところもあるということですね。やはり
経営的な体力、ここが問題だと見られます。両立
支援制度は生産性に結び付くだろうと見られています。これは先ほど
川口先生の報告でもありましたが、ただしそれは中長期的に見てということなんですね。そこまで待てる
企業というものはやはり
経営的体力の多い
企業であると。現在、マスコミで様々な両立
支援策を導入した
企業が紹介されていますが、ほぼ、一〇〇%ではないですが、ほぼ大
企業です。名のある
企業です。残念ながら、
中小企業、中堅
企業への普及が
課題になっています。
ちなみに、
中小企業白書ですね、昨年のものですけれ
ども、実は
中小企業はこうした制度はなくても配慮しているんだ、だから大丈夫だという報告がなされているわけですが、私は若干危険だと思います。やはり、分析していきますと、制度がなければ両立できないわけです。そうしたものが明確に出ると。ですので、家本先生の
企業は、
会社はそうしたものを明
文化され、導入されていると。やはりこうしたものを
中小企業、中堅
企業に働き掛けていく、これが必要であると思います。
問題となるのが財政や税制
支援ということです。これ、財政的余力がない中、こうしたことを申し上げるのは恐縮ですが、何か必要ではないかと私の立場からは見られます。ただ、その対象は大
企業ではないです。大
企業はもう除外していいと思います。自前でやってくださいと。中堅
企業、
中小企業です。
理由としましては、今スピードが求められていると。両立
支援を今導入しなければ、団塊のジュニアの
世代の出産は恐らくこのまま低いままであろうと。二点目ですけれ
ども、大
企業で両立
支援策がすごい普及しまして、
中小、中堅で普及しないとなると、これはエリート層だけがつまり両立
支援を享受することができ、ますます豊かになり、そこに勤めることができない
中小企業の方、の男性、女性、特に女性だと見られますが、そうした果実を享受できないということが懸念されます。
最後ですけれ
ども、
子育て後の復職の
支援と申しました。これは、簡単で恐縮ですが、実は両立
支援といいますと就業
継続支援に重点が置かれております。しかしながら、
調査結果を見ますと、両立
支援を様々なものを充実させたとしましても、どうも
育児期の
子育てに、
育児期は
子育てに専念しようという女性は多いんです、
我が国では。こうした逆もあります。現在、お子様が一歳未満の方ですと八割近くが専業主婦ですが、現在働いていない女性が再就職したいと考えている年齢を見ますと、
子供が小
学生に入った以降なんですね。ですから、ある時期はやはり
子育てに専念しようとする方いらっしゃいます。これは選択の自由の問題です。
ですので、両立
支援は、当たり前ですが、
継続就業
支援プラス再就職
支援が欠かせないだろうということです。セットでなければ
効果はないと見られます。
以上、簡単ではありますが五点申し上げました。もちろんこれ以外に
課題はありますけれ
ども、
企業の両立
支援ということではこの五点は優先的に解決すべきものであると見られます。
御清聴ありがとうございました。