○清水(清)
分科員 ありがとうございます。
少子化が進展し、高齢者がピークに達する二〇二五年には、約六百万人の
方々が介護のサービスを受け、一年間で十七兆円にも上る負担を国民全体でしていかなければならないわけでありますが、この額を、大げさに言えばですが二割方軽減する方法があるとすれば、
政府は絶対採用する必要があると思いますが、いかがでしょうかという、この
質問には答えられないということでございますので、このための施策を提案したいと存じます。
別紙を皆様方のお手元に配ってございますので、御参照の上、この制度を全国へ普及するための、
政府、地方自治体一体となった事業を御説明申し上げます。
今、仮に、ある
地域で、年齢差により
運動能力などに差のある民間人が、ある約束事を互いに履行することを中心概念として組織をつくるとします。その中心概念とは、介護を必要とする構成員Aと介護サービスを提供する構成員Bとの間で、BがAの介護を週に二回、二時間ずつ実行したとします。Bは、この組織に四時間、二回掛ける二時間の時間を預託したこととし、Bみずからまたは配偶者その他の者が介護が必要になったときに、当該集団の別のメンバーから四時間分の同種の介護サービスを返していただけるという権利を持つということでございます。この場合、Bの時間預託は、介護サービスを提供した一時間分を一ポイントとして積み立てることになります。この例では四ポイントということになります。
皆様御案内のとおり、これは時間預託とかタイムダラーなどの類似の制度でございます。実は私は、
平成五年、ワシントンのエドガー・カーン博士の自宅で、この制度につきましてお話をお伺いしてまいりました。カーン博士は、アメリカでこのタイムダラー制の特許をとった方でございますが、博士が申しますのに、介護の問題は、アメリカ合衆国といえども、国がすべてこれを行うとすれば、財政破綻をしてしまうでしょうと言われました。また、相身互いの観念の残る
日本でこそ成功するでしょうと言われました。
私は、その後、自分に返る福祉、自分のために積み立てる介護というキャッチフレーズで、
選挙の公約として訴えてまいりました。ところが、現実に組織をつくろうとすると、大きな経済的な支障があります。
ここからが私のオリジナルになるわけでございますが、この概要を一言で言えば、カーン博士のタイムダラー制度の修正版でございます。
具体的には、先ほどの例で、Aは公的介護の一般的単価の半額、例えば、身体介護をした場合に一時間未満で四千二十円のところを二千円でということになります。ですから、Aは二千円を当該集団に支弁する。当該集団は、Bの将来の給付要求の担保として、このお金を基金として設立します。そして、生活支援などの場合は一時間につき千円といたします。この基金の運用はしないこととします。
介護の現場においては、介護度の高い高齢者は専門的技術を持つ看護師や介護施設に任せることとし、要介護一から三程度の
方々を対象とすることによって一般の人が参加しやすくし、そのことによって将来のマンパワーの不足をある程度補うことになると思います。
加えて、介護度五の方でも、私の経験では実は寝たきりの人などは介護がしやすいものですから、ボランティアの方でも可能となります。この場合には介護保険からの支給を受け、時間を倍にして使う。つまり、四千二十円をいただいてBは二時間お手伝いをする。四千円をいただいて二時間ですから、二千円ずつの四千円ということになります。つまりは倍に使うことが可能になるわけでございます。
もちろん、こういった現金を支弁する例は、介護の受給者が前もってポイントをためていない場合でありまして、ポイントを持つ
方々は、このポイントを消費することにより、無料で介護サービスを受けることができます。イメージは多分皆さんもお持ちだと思います。
この時間預託のポイントは、一ポイントを千円とし、当該サービス提供者の名義で積み立てられ、これは自由に引き出すことができます。ただし、引き出しは原則として、介護または介助のサービスとして、他のサービス提供会員によって提供されるサービスとして受け取ります。ここが、自分のために積み立てる、自分に返ってくる介護たるゆえんでございます。
つまり、Aが五十代半ばから七十五まで二十年間、約四千時間、週に二回、二時間として、五十二週の二十年間、介護のお手伝いをした場合、そして自分が七十五歳で要介護の状態に至ったと仮定いたします。介護保険で受けられる介護に加えて、十年間で毎年四百時間ずつ、ただで受けられる介護がそこに出てくるわけでございます。
もちろん、御自身が健康で使う必要がない場合には、配偶者または親のために、あるいは兄弟や子供のためにも使えるということになります。ただし、相続はできないということにいたします。基本が助け合いの目的なので、基金もそのまま当該組織の財産となります。
次に、まだまだ問題があります。
実際にこうした組織を立ち上げるにはまず仲間づくりでございますが、実際はお金集めが必要になります。事務所を借り、そして電話を少なくとも二、三本入れます。車は二、三台借りるか買うかしなければなりません。理想があってもこの
段階で停滞してしまう例が多いのです。
そこで、私は、国の予算を入れて、自治体の人的資源を投入し、三、四年でNPOを立ち上げる自治体の事業、これを国が手助けする方法を提案いたします。十年前に私が提案しましたら、NPOに予算を使うことは憲法上できないと言われましたが、自治体に補助金を出すということであれば、多分、事業として成り立つのではないか、こう思っているわけでございます。
法律は時限立法で五年間、補助は三年間とします。つまりは、補助金を初
年度に受けた自治体は三年目までで終わり、二年目から受けた自治体は四年目まで、三年目から補助金を受けた自治体は五年目で終わるということになります。
設立から丸三年でNPOの
運営を軌道に乗せることを目的とし、当該自治体の職員が、NPO設立のための啓蒙活動から、集会用のパンフレット制作、説明会の開催、会員募集など、
運営が軌道に乗るまでの事業を行い、軌道に乗った後はNPOとして独立し、自治体とは切り離します。また、その間の職員の給料は自治体が負担することとし、なお、この事業は自治体に強制するものではありません。
国の補助金は、次の基準を目安といたします。
人口三万人以下の市町村は、人口一万人当たり一千万円。人口三万人以上五万人未満の市町は、人口一万人当たり八百万円。人口五万人以上十万人未満の市町は、人口一万人当たり六百万円。人口十万人以上二十万人未満の市は、人口一万人当たり五百万円。人口二十万人以上の市は、人口一万人当たり三百万円。なお、政令指定都市は除くものとし、また、立ち上げから寄附金の供与が受けられるように認定をし、かつ寄附金の所得控除または税額控除は初
年度から認める特区または特例をつくるものとします。
NPOの総務的な
役割を果たす人々の給料を捻出する必要がありますので、サービス受給会員は入会時に一万円、年会費一万円、サービス提供会員は月ごとに千円を支払うことといたします。
また、NPOを全国ネットでネットワーク化し、現実にはこれはもう全国ネットができております。ただ、それが普及しないので、私は、普及できるために、国の施策で自治体の事業として進めることを提案しているわけでございます。
ですから、東京でポイントをためた方が、田舎が九州で、田舎に帰ってお父さんの世話をしなきゃいかぬ、そのお父さんの介護のためにこのポイントが使えるという制度にしたいと思っております。
さらに、身体介護にかかわる
方々には、少なくともホームヘルパー二級以上の資格を義務づけることとし、介護サービス提供中の万々一に備えまして、会員は民間保険に入ることといたします。
今まで述べてきたような基準で、全国の千八百十一自治体、現在そうだと思いますが、全自治体が補助金を要求した場合の国の負担額は、年間およそ七百二十億でございます。三年間の合計で見ても二千百億円余りになると試算しておりますが、私の試算では、この効果は兆円単位で出てくるものと考えております。
同時に、団塊の世代以降の
人たちが、定年後、男性の三割、女性の四割がこういった組織に参加したと仮定して、平均十年で四千時間をためたとした場合、どの程度の介護に要する国の負担が軽減されるか、実は
厚生労働省の協力をいただきまして試算をしてみたわけでございますが、そのすべてを身体介護に費やした場合、実は一年間で一・七兆円軽減できます。十年間で十七兆円。また、逆にそのすべてを生活支援に費やした場合、年間で八千八百億円、十年間で八・八兆円、こんな大きな数字に上ることが計算されるわけでございます。もちろん、やる気で国と市町村が始めて、そして
日本人の多くの
方々が協力してこれができるわけでございますけれども、こういった方法だということを申し上げておきます。
その上、このシステムが本当に万全なものとして動き出すと、つまりは受給者と提供者のバランスがとれ出すと、その参加人数の規模の中で、もし大変な数が参加した場合でございますが、この中では無料の介護ということが、あるいは無料に近い介護というものが実現します。
もともと介護は選ぶことのできる福祉でございます。契約による福祉でございます。民間の企業による介護、
社会福祉協議会に代表される官による介護、そして介護保険の二倍のサービス利用が可能なボランティアによる、いわば公による介護、この三つの介護の間に競争が起こってまいります。ここに本当は問題があることはあるんですが、このことが介護の質を保持し、価額の高騰を防ぎ、マンパワーの不足を補います。そして、こうしたメカニズムを通じて公的介護費用の軽減が実現されるわけでございますが、この施策についてどのように
評価されるでしょうか、お伺いをいたします。