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尾身国務大臣 日本のこれからの
経済、
財政の基本的な方向についての
お話でございまして、大変大事な話だと思っております。
この「
進路と
戦略」についての
数字は、おっしゃるとおりの
数字が出ているわけでございます。国の
一般会計のバランスは先ほどのとおりなんでありますけれ
ども、実は、考えなければならない要因が
三つございます。
一つは、高齢化社会の到来ということでございまして、もう御存じのとおり、現在ただいまは三人の働き手で一人の高齢者を支えている、二十年後、二〇二五年には一・八人で一人を支えるようになる、五十年後の二〇五五年には一・二人で一人を支えるような人口構成になるという予想がなされているわけでございまして、それに伴いまして、社会保障支出の大幅な
増加が予想されているわけでございます。
二つ目は人口の問題でありますけれ
ども、人口問題研究所の推計によりますと、今後何の対策も講じなければ、人口は、五十年後は、二〇五五年に九千万人を切る、百年後には四千五百万人になるというような推計がなされているわけでございますが、これを本当に現実のものにするわけにはまいりません。したがいまして、人口
増加対策、
少子化対策というものを強力に進めていかなければならない。そのためには、何といってもお金がかかるという
現状もあると思っております。
それから
三つ目は、基礎年金の国庫負担の割合を二〇二一年度までに三分の一から二分の一に引き上げる、これだけでも二兆五千億円の
財源が必要であるわけでございまして、高齢化の進展、
少子化対策の充実、それから、基礎年金の国庫負担の問題などなどの要因を考慮しなければなりません。そういうわけで、決して今後の
財政事情、楽観を許さないものであるというふうに考えております。
この
状況を踏まえて、子供たちや孫たちの世代に負担を先送りしないためにも、
成長なくして
財政再建なしという理念のもとに、安定的な
経済成長を維持しつつ、今後引き続き、歳出歳入一体
改革に取り組んでいかなければならないと考えているわけでございます。
先ほどの
プライマリーバランスの
数字でございますが、一番その削減効果もあり、政策がうまくいって三%台半ばという、現在は二%でございますから、これを三%台半ばに上げるということは、
政府としてはその意欲を持ってやるにしても、なかなか難しいシナリオであると考えております。
そういう中で、その場合に国と地方合計の
プライマリーバランスが一・四兆円の黒字になるということが見込まれているわけでございますが、しかし、
世界経済が必ずしも良好ではないという
状況のもとでは、
名目成長率は、二・二%と現在
程度の水準が続くであるということの見通しももう
一つのシナリオとしてあるわけでございまして、その場合における
プライマリーバランスは
赤字になるということでございます。
それから、この
プライマリーバランスというのは、国と地方の合計でございますが、実際を見ると、実は国が
赤字で地方が黒字という
状況になっているわけでございまして、国だけの場合でとってみますと、非常に条件がいい場合でも、
プライマリーバランスは二〇一一年度も
現状のままでは
赤字になるという
数字になっているわけでございまして、国だけの
プライマリーバランスも黒字化していかなければならないと私
ども考えております。
しかし、さはさりながら、この非効率な歳出をそのまま放置しておいて負担増を求めるということでは
国民の皆様の理解と納得を得ることが困難でございまして、今後とも、
国民負担の最小化を第一の目標に、歳出
改革に引き続き全力で取り組んでいく必要があると考えております。
ただ、今後とも
増加する先ほどの社会保障の費用やあるいは
少子化対策などに
対応するためには、
国民が広く公平に負担を分かち合う観点に留意しつつ、先ほどの基礎年金の国庫負担割合の引き上げのための
財源も含めまして、安定的な
財源を確保して将来世代への負担の先送りを行わないようにすることは必要であるというふうに思っております。
このような考え方のもとに、七月ごろに判明をいたします十八年度の
決算の
状況、あるいは医療制度
改革を受けた社会保障給付の実績等を踏まえまして、本年の秋以降、税制
改革の本格的、具体的な議論を行い、与党税制改正大綱に沿って、二〇〇七年度を目途に、
消費税を含む税体系の抜本的な
改革を実現させるべく取り組んでいきたいと考えている次第でございます。