○小沢鋭仁君
民主党の小沢鋭仁です。
私は、
民主党・
無所属クラブ、
国民新党・そうぞう・
無所属の会を
代表いたしまして、ただいま
議題となりました
安倍内閣不信任決議案に対し、賛成の立場から
討論を申し上げます。(
拍手)
本論に先立ち、昨日お亡くなりになりました
宮沢喜一元
総理大臣の御冥福を心からお祈り申し上げます。
私にとって、
宮沢先生の
政権政策、
生活大国構想の作業に加えていただいたことは、忘れることのできない生涯の思い出であります。
宮沢先生からは、かつて、
政治は覇道ではいけない、王道を歩むべしと教えていただきました。その教訓を胸に、
討論をさせていただきます。
私が
安倍内閣の
不信任決議案に賛成する
理由は、数え上げれば切りがありません。
年金問題に対する余りにも鈍感な
対応、
国民の暮らしを追い詰める増税と、それをごまかそうとする
政府広報の不誠実さ、我々
国会に身を置く者として最も大事にしなければならないはずの言論の府での
暴挙の数々、
国民の
政治への
信頼を損なう、
政治と金の問題に対する
対応の鈍さ、
天下りを一くくりして合法的に行う
天下りバンクをつくることを公務員
改革と言い張るにせものの
改革、憲法改正を参院選の争点にすると言いながら、一方で、最も重要な論点の一つである集団的自衛権の問題を解釈改憲でやっていこうとする支離滅裂さ、発足当初、主張する
外交と宣言しながら、靖国神社への参拝問題については、行くか行かないか、行ったか行かなかったかについては言わないとする言行不一致等々、本日、私に与えられた時間では到底語り尽くせない多くの
理由があることをまず申し上げておきたいと思います。
次に、今議場にいる皆様、特に
与党の皆様にお願いしたいと思います。
内閣不信任決議案は、言うまでもなく
国会の議案の中でも突出して重要なものであって、これまでの
我が国の
政治の大きな転換点の契機となってきたことは御
承知のとおりであります。
与党の中においても、今の
安倍内閣に対する不満は相当大きいものがあると私は聞いておりますが、本日この場で御賛同をいただくか、あるいは、この場で御賛同いただかなくても、来る参院選で
国民の投票によって退陣いただくか、結果は、いずれにしても余り変わらないのではないかと思います。善は急げとのことわざもあります。どうぞ、私の申し上げることを聞いていただき、よくお考えいただきたいとお願いを申し上げます。
もちろん、
安倍総理、
総理にもみずからの決断で決定的な
対応ができることは論をまちません。殿、御乱心という時代劇のせりふがありますが、御乱心かどうかはともかくとして、ここまで党内の
反対を押し切り、突っ張ってきたのですから、思い切って解散をしてみるのも一法かと思います。どうぞ、
総理もよくお考えいただきたいと思います。
さて、数々の論点の中で共通する安倍
政治の特徴の一つは、底の浅いメディア
対応型の
政治だというものです。
典型的な例は、昨日新聞に載っていたカメラ目線についての記事であります。このところ、
総理は、急落した支持率を何とか挽回しようとして、次々と有名なパーソナリティーの司会番組に出ています。記事では、テリー伊藤さんからカメラ目線もほどほどにと助言され、何度もうなずいたと書いてあります。
私には、
総理のカメラ目線は、残念ながら、ただうつろに目が宙を舞っているとしか見えないのですが、そもそも、何を語るかという
中身ではなく、どう見えるかに重点を置いているのが安倍
政治の特徴です。
政治に対する、深く本質的な分析に裏打ちされた
政策を打ち出すのではなく、どうしたら
国民に受けるかという視点だけでやろうとするから、底の浅い薄っぺらな
政治になるのです。支持率の低下に浮き足立って右往左往、メディアを追い求める姿は、人気の落ちた芸能人を連想させ、一国の
総理としての品格と資質を疑わざるを得ません。
年金時効特例法案をわずか四時間の
審議で
強行採決し、
対策をやったやったと言っているのは、まさにごまかし
政治の典型です。我が党は、長
妻議員を筆頭に、少なくとも、昨年から、
国民にとって切実な消えた
年金を問題として、
政府に
対応を迫ってまいりました。
総理も、本当はかなり早い段階から知っていたはずであります。
ですから、この問題の本質をわかっていたら、とっくの昔に時効をなくすことくらいやれたのは
国民はわかっているのです。支持率が下がったことで驚いて、泥縄仕事をするのを見て、支持率はさらに下がり続けたのです。
最後の最後に出してきて、会期延長の直接的きっかけとなった人材バンク
法案も、底の浅い
法案の典型例です。呼び名を
公務員制度改革法案とすれば
国民から受けるだろうと思うのも、余りにも幼稚です。
人材バンクは
天下り推進合法化バンクであることを
国民は見抜いています。
天下りは、なくなるどころか合法化されるのです。
年金問題では分が悪いから、この
法案を推進することで、小泉郵政
選挙の再来を期し、逆転勝利を目指すという
官邸の戦略は、余りにもお粗末、陳腐であります。
そんな
中身のある
法案じゃないんだよな、衆議院でとめておくべきだったという
参議院自民党幹部のぼやきは私の耳にまで聞こえてきておりましたが、本当にこの
中身で勝負できると
総理はお思いになっているのでしょうか。
定率減税の廃止による
国民負担の増大は、家計を直撃しています。
さらに重大な欺瞞が、
定率減税の廃止による税
負担をごまかそうとする工作です。
定率減税の廃止によって
国民負担が大幅にアップしたことは、多くの
国民が六月の
給与明細書を見て驚き知ったと思います。特に、
年金所得で生計を立てているお年寄りからは、悲鳴に近い声が寄せられています。
住民税が二倍近くに増加しているのを見て、驚いて市役所に問い合わせたところ、市役所からは、
定率減税の廃止等によって低所得者ほど増税になっていると言われ、私
たちのところへ、助けてくださいと手紙を書いてきた高齢者の方もいらっしゃいます。まさに、弱いところにしわ寄せが行っている典型ではありませんか。
こうした
負担増についても、
政府は、
住民税の大幅アップは税源移譲によるもので、所得税とのトータルは変わらないという詐欺まがいの説明を
給与明細書の中に入れる広報を行ってまいりました。
安倍政権の
もとには広報の
対策チームというのがあって、そこでこうした
対策が決められていると巷間言われておりますが、そんな物事を糊塗する暇があったら、
中身をもっとまともにする
議論をする方が重要なのではないでしょうか。これも、
中身を見え方でごまかそうとする安倍
政治の典型例であります。
安倍総理が
国民の期待にこたえなかったもう一つの重要
課題が、
政治と金の問題です。
佐田前行革担当大臣の
事務所費問題に始まり、
安倍内閣は常に
政治と金の疑惑に包まれた
内閣でありました。
安倍総理は、この問題でも、率先して事実解明に当たるどころか、事もあろうに、松岡前農水大臣の後任に、同じく緑資源機構から工事を受注する業者の
政治団体、特森懇話会から支援を受けていた農水族の赤城徳彦大臣を任命したのです。小泉前
総理は、
安倍総理に対し、鈍感力が必要だとアドバイスしたそうですが、もう既に堂々たる鈍感力をお持ちだと私は驚いてしまいました。
緑資源機構の疑惑は、一人の個人にかかわる問題ではありません。役人が
天下りをし、その組織に
予算がつけられ、その
もとで談合が行われ、さらにその
予算の中から
政治家へ金が渡るという、
自民党長期
政権の
もとでの腐敗の
構造こそが本質的な問題なのであります。それにもかかわらず、というか、それを
理解せずというか、同機構から支援を受けている赤城大臣を後任に任命したのです。
その赤城大臣は、我が党の
質問に対し、事もあろうに、松岡前大臣が、何とか還元水問題で、法にのっとって処理している旨の
答弁をしたのと全く同様の
答弁をしたのであります。
国民をばかにするのもほどがあります。
これこそ、人がかわっただけで腐敗
構造は何も変わっていない典型例ではないのですか。同じ誤りが二度なされることに、
安倍総理は何とも思わないのでしょうか。この問題で
総理の任命
責任が問われずして、どんな場合、任命
責任が問われるというのでしょうか。この
答弁を聞いた
国民はさすがに
怒り、さらにあきれ果てています。
最後に、
安倍政権の危険性について申し上げます。
発足以降、安倍カラーの発揮として、憲法改正、
教育基本法の改正が唱えられました。この二つのテーマは、
我が国にとって避けることのできない大切なものであることに
異議はありません。しかし、その
対応、扱い方、内容において、そこにタカ派的、国家主義的な色彩を感じるのは私だけでありましょうか。
憲法について、我が党は、主権者である
国民が権力を制限していくための基本法であるととらえていますが、
安倍総理の改正論は、ややもすれば、
国民を統制していくための基本法という面が強くなっているように思えてなりません。
教育についても同様です。道徳の強調に見られるように、いかに子供
たちを、いわゆるいい子という枠にはめ込むかに力点が置かれ過ぎていて、戦後の
日本において最も大切にされてきた自由な精神は二の次になっていると感じるのです。
国会運営においては、強権的以外の
言葉は思い当たりません。今
国会の
強行採決が衆参合わせて十七回に見られるように、今や
国会は言論の府ではなく、ただ単に
採決の府に成り下がってしまいました。
国会の権威も何もあったものではありません。
こうしたタカ派強権
政治に対し、
総理の足元の
自民党の中からも、反論の声が公然と上がり始めているではありませんか。一昨年の
選挙で
与党が圧倒的多数となった状況で、タカ派強権
政治が行われることの危険性を、私は、非常に非常に心配をしております。今必要なのは、タカ派強権
政治ではなく、平和と自由を大切にするハト派
民主政治なのだと私は確信しています。
るる述べてまいりましたが、今思うに、やはり
安倍総理、あなたは
総理を務めるにはまだ若過ぎたのかもしれません。失礼ながら、それは、ただ年齢的なものだけではなく、
政治的に未熟なのだと思います。
かつての
自民党は極めて大人の政党で、酸いも甘いもかみ分けながら戦後
日本を運営してまいりました。そのよしあし、功罪はあると思いますが、少なくとも今の
安倍政権、
安倍自民党は、余りに稚拙で、思い込みのみが強く、強権的で極めて危険だと思います。生徒会
内閣、少年
官邸団などの呼び名は、そうした危惧から生まれたものにほかなりません。
また、小泉、安倍と続いた市場原理主義の
政治の流れを見直すべきという
与党内からの指摘もそのとおりと思います。市場原理をベースにしながらも、市場が解決できない問題も社会には数多く存在し、だからこそ
政治の意味があるのだと私は思っています。危険で、稚拙で、行き過ぎた市場原理主義の
安倍政権に終止符を打つときであります。
どうぞ、議場の皆様、それぞれの党のためでなく、
国民のために御賢察を賜り、この
不信任決議案に賛同を賜りますことを心からお願い申し上げ、私の
討論とさせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)