○平岡秀夫君
民主党の平岡秀夫でございます。
私は、法務
委員会におきましては、
政府提出に係る
犯罪被害者等の
権利利益の保護を図るための
刑事訴訟法等の一部を改正する
法律案に対する
民主党提出に係る修正案に
賛成するとともに、同修正案が万が一否決される場合には、犯罪
被害者の
方々の
権利利益の拡大という基本的方向性が同じであるという観点に立って、数々の
問題点はありますが、
与党提出に係る修正案及び同修正案の修正部分を除く
政府原案に
賛成する
立場から
討論を行いましたが、残念ながら、
民主党修正案は本
会議に上程されていないため、以上申し上げたような
立場に立って、
民主党・
無所属クラブを代表して、
討論を行います。(
拍手)
本論に入る前に、本
法案に関する法務
委員会での
審議の過程で重大な事実が判明したことを皆さんにお伝えしなければなりません。
それは、
松岡農水大臣の関係する事件に関する、二十八日月曜日に行われた
安倍総理の発言の問題です。
その発言は、同日の午後、東京地方検察庁、東京地検が記者に語った発言を引用する形式で行われていますが、東京地検の発言は、
松岡農水大臣及びその親族等関係者に対する取り調べの事実はなく、またその具体的な予定もなかったというものでありました。その発言によれば、取り調べの具体的な予定がなかったにすぎず、明らかに将来の捜査の
可能性、捜査の発展性まで否定しているものではありません。
ところが、同日夕刻、官邸記者の質問に答えて
安倍総理は、御
本人の名誉のために申し上げておきますが、緑資源機構に関しては、捜査当局から松岡大臣や関係者の取り調べを行っていたという事実もないし、これから取り調べを行う予定もないと、このような発言があったということを承知しておりますと発言したのです。
これから取り調べを行う予定もないという発言は、明らかに将来の捜査の
可能性や捜査の発展性を否定するものであります。東京地検が事件の捜査について説明することそのものも、これまでの例からいえば極めて異例なことで問題ですけれども、
安倍総理が、その発言を引用する形式をとりながら、その内容を改ざんして発言するのはさらに大きな問題です。
検察庁法第十四条に定める法務大臣の指揮権発動とまでは言いませんが、実質的に検察当局の捜査に枠をはめ、捜査に介入することとなるおそれが大きいのです。
本日の法務
委員会でも、法務大臣、下村官房副長官に対して、総理の発言を
訂正するように求めましたが、両者からは拒否し続けられています。
安倍総理に対し、速やかに自己の発言を
訂正するとともに、捜査に介入しないことを言明されることを強く求めます。
本論に入ります。
民主党はこれまで、
政府や
与党に先駆けて犯罪
被害者基本
法案を
提出し、
犯罪被害者等基本法制定を主導するなど、犯罪
被害に遭われた
方々あるいはその遺族の
方々の保護、支援に積極的に取り組んでまいりました。
政府案は、基本法に基づいて策定されたものであり、その基本的方向は賛同すべきものと考えております。
しかし、このうち、特に刑事裁判への
被害者参加
制度については、
政府による
被害者の
方々への十分な意見聴取が行われていないとの
批判があるとともに、当事者である犯罪
被害者団体の中で意見が分かれ、また、刑事訴訟法学者の間にも有力な慎重論があることが先日行われた法務
委員会での参考人質疑などでも明らかとなっております。
すなわち、同
制度に
反対する
被害者団体の
方々からは、
政府案の
制度設計では
被害者がかえって傷つくだけであり、参加できるのは一部の
被害者だけだという意見が表明されているんです。
また、慎重論を表明する学者からは、
政府案は職権主義をとるドイツやフランスの
被害者参加
制度とは似て非なるものであり、
被害者は専ら応報感情を満足させる存在として法廷に登場することにならざるを得ず、刑事裁判は復讐裁判と化し、これまでの刑事裁判の構造を崩して機能不全に陥らせる危険を内包しているとの指摘もありました。特に、裁判員裁判
制度がほぼ時期を同じくしてスタートすることを考えますと、
証拠に基づく冷静な事実審理や適正で公平な量刑が果たして可能なのかという疑問には大いに同意せざるを得ません。
また、
被害者団体からは、
被害者の
方々の経済的、精神的苦しみを和らげる
制度や、
被害者の
方々が裁判に参加、関与することをサポートするための国選
被害者弁護人
制度の
導入を初め、
被害者の
方々の実情を踏まえた丁寧な
制度設計を求める声も出ております。こうした点について、
政府案は十分なものとなっているとは言えません。
こうしたことを踏まえて、
民主党は、
政府案の
被害者参加
制度にかえて、
被害者の
方々が法廷のバーの中に入らない形での
被害者関与
制度を
導入し、
被害者の
方々の意見を検察官を通じて適切に刑事裁判に反映させるようにするとともに、資力のない
被害者の
方々等が刑事手続に適切に関与できるための援助の
措置、裁判員の参加する裁判のもとでの
被害者関与のあり方についての裁判員
制度導入三年後の見直し条項、
被害者の
方々への損害賠償の国による立てかえ
制度を含めた、犯罪による
被害の補償に係る
制度についての検討条項などを盛り込む修正案を
提出したのであります。
大変残念ながら、
民主党のこのような修正案については、
与党の
諸君の全面的な賛同をいただける状況にはないのもまた事実と言わざるを得ません。また、さまざまな
問題点の指摘があるにもかかわらず、
与党からは
強行採決をちらつかせての
委員会運営が行われてきたことも事実なんです。この点を指摘してもなお、
政府案の早期成立を求める
被害者の
方々の声にも真摯に耳を傾けるべきとの観点から、
民主党としては、
与党提出に係る修正案に盛り込まれている施行三年後の見直しの中で、実際にあらわれた
問題点などを十分に精査し、必要な
制度改正を行うという条件が付されることになったという状況のもとで、原案に
賛成することといたしました。
参議院においても、以上の懸念を真摯に受けとめた
審議がしっかりと行われることを期待いたしたいと思います。
なお、
被害者の
方々の
権利利益の保護とあわせて被告人の
権利も保障される公正な
制度運用、
被害者団体が求めている
被害者の
方々の経済的支援、
被害回復のための施策の充実、
被害者参加人となれない
被害者の
方々をも含めた
被害者の
方々への検察官からの十分な
情報提供や意思疎通、これらを別途附帯決議で確認させていただきました。
今回の
法案についての見解や
立場の違いにかかわらず、今後もさまざまな犯罪
被害者団体の皆さんの思いや意見に広く耳を傾け、これらを十分に踏まえながら、
犯罪被害者等基本法に定められた
目的の実現に向けてともに力を合わせていくことを願い、私の
討論といたします。(
拍手)