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国務大臣(
長勢甚遠君)
横山北斗議員にお答えを申し上げます。
被害者参加の
制度と
裁判員制度が同時期に
導入されるということに関連いたしまして、この
制度が
裁判員の
心証形成に与える影響等についてお尋ねがありました。
裁判員制度は、広く国民の感覚を
裁判の
内容に反映させることにより、司法に対する国民の理解や支持を深めるために
導入されるものであり、
裁判員の感覚を
刑事裁判に適切に反映することこそが適正な
裁判の実現につながるものと
考えております。
そして、
被害者参加の
制度においては、
被害者等の方々の発言が不適切なものとならないような
措置が講じられております。また、証拠とはならない
質問や
意見の陳述と証拠とを峻別して
裁判を行うべきことについては、評議等の場で
裁判官が
裁判員に十分
説明して理解していただくことになりますので、
審理、判断の適正を確保することは十分できるものと
考えております。
同時期に両方の
制度を
導入することになりますが、この
被害者参加の
制度は、
犯罪被害者等基本法に基づき策定された
犯罪被害者等基本計画において、二年以内に
施策を
検討して実施することが求められているものであります。
また、今申しましたように、
被害者の方々が
刑事裁判に
参加する場合にも、
裁判員が
参加する
裁判の
審理、判断の適正を確保することはできるものと
考えておりますので、本
法律案が成立した場合には、万が一にも
裁判員制度の円滑な運用が阻害されることのないよう、
被害者参加の
制度の施行に向けて十分な準備を行ってまいりたいと
考えております。
次に、
被害者参加の
制度が
被告人の
防御の負担に及ぼす影響等についてお尋ねがありました。
本
制度のもとにおいても、審判の
対象は
検察官が設定した訴因であり、その訴因をめぐって攻撃、
防御が行われることになりますから、
争点が拡大をすることとはならないと
考えられます。
また、
被告人には、
弁護人の援助のもと、黙秘権が認められ、みずからの主張を述べる機会も十分に与えられております。
したがって、本
制度により、
被告人の
防御権が害されることはないものと
考えております。
次に、
公判前
整理手続等への
被害者の方々の出席の可否等についてのお尋ねがありました。
公判前
整理手続や
期日間整理手続は、基本的には、
法律の
専門家である
裁判官、
検察官及び
弁護人による率直な
意見交換を通じて
争点を整理し、
審理計画を策定する場であり、
公判前
整理手続等への
被害者の方々の出席を認める
制度とはいたしておりません。なお、検察においては、
被害者の方々に対して、
公判前
整理手続等の具体的な
内容についても、事案の
内容も踏まえつつ、誠実に
説明を行うなどの取り組みを始めているものと承知をしております。
次に、
被害者参加の
制度が
刑事裁判の
審理に及ぼす影響についてお尋ねがありました。
まず、現在の
刑事訴訟においても、
被害者が
証人として証言したり、心情を中心とする
意見を陳述することがありますが、そのような際に、いたずらに感情的な言動がなされたり、
訴訟手続に混乱が生じたりしているわけではないと承知しております。
その上で、本
制度においては、万が一にもそのような弊害が生ずることがないよう、例えば、法廷の秩序を乱すおそれがあるような場合には、そもそも、
裁判所が
参加を許可しないこととするなどの
措置を講じております。
したがって、本
制度が
導入されても、冷静な事実
審理や適正で公平な量刑が困難となったり、
刑事裁判が復讐
裁判と化すおそれはないものと
考えております。
次に、
被害者参加の
制度においては、
被害者は専ら応報感情を満足させるための存在として登場することにならざるを得ないというような御指摘がありました。
被害者の方々は、例えば、法廷の中で、
刑事裁判の
審理の推移等を直接見定めたいとのお気持ちや、
被告人等に直接
質問したいとのお気持ちを有しておられると承知をしております。このような
被害者の方々のお気持ちは十分に尊重されるべきであり、また、これを尊重することが、
犯罪被害者等基本法の精神にも合致すると
考えられます。また、
被害者の方々が
刑事裁判に適切に
関与することは、その名誉の回復や立ち直りにも資するものと
考えられます。
そこで、本
法律案においては、
被害者の方々が、
一定の
要件のもと、
裁判所の許可を得て
公判期日に出席するとともに、
一定の訴訟活動をみずから直接行うという
仕組みを
刑事訴訟法上の
制度として設けることとしたものであり、お尋ねのような御指摘は当たらないものと
考えております。
次に、
被害者参加の
制度の
対象とならない
被害者の方々の
刑事手続への
関与の拡大に向けた取り組みや、
被害者の方々に対する認識についてお尋ねがありました。
被害者参加の
対象とならない
被害者の方々についても、その心情や要望が尊重されるべきことは当然のことであると
考えております。この点、現在でも、検察においては、必要に応じて
被害者の方々に
刑事裁判の推移や結果等の
説明を行うなどしているものと承知をしており、引き続き、このような取り組みを進めていく必要があると
考えております。
また、本
制度のもとにおいて、
参加の
対象とならない
被害者の方々の処罰感情等についても、
検察官が
被害者の方々からその心情や
意見を伺うことによりこれを十分に把握し、現行の
意見陳述
制度の利用等を含め、これらが適切に
裁判に反映されるよう努めることとなるものと
考えております。
また、
被害者参加の
制度について、実際には限られた
被害者しか
参加できないのではないかとのお尋ねがありました。
本
制度においては、
刑事裁判への
参加を望む
被害者の方々の精神状態などにも配慮をして、
被害者の方々の不安や緊張を緩和するのに適当な者を付き添わせることや、
被告人から
被害者の方々が見えないようにするための
措置をとることもできるなどの
措置を講じておるところであります。
また、
参加が困難な
被害者の方々の処罰感情と量刑の関係についてお尋ねがありました。
刑事裁判に
参加するか否かは
被害者の方々の自由な意思によりますが、
参加をしない
被害者の方々についても、
検察官が、
参加できない事情を含め、その心情を十分に把握して、これが適切に
裁判に反映されるよう努めることとなりますので、
参加をしないことにより
被害感情が過小に評価されるということにはならないものと
考えております。
また、現時点では
検察官に対する
質問・
意見表明
制度の
導入を図るべきとの
意見についてのお尋ねがありました。
被害者参加の
制度は、
犯罪被害者等基本法に基づき、
犯罪被害者等が
刑事裁判に直接
関与することのできる
制度を
導入することを定めた
犯罪被害者等基本計画に従い、また、
被害者の方々の御要望や法制審議会での慎重かつ活発な審議の結果を踏まえ、創設しようとしているものであります。
なお、本
法案においては、
被害者参加人等が
検察官に
意見を述べたり、
検察官から
説明を受けることができる旨の
規定も設けておるところであります。
次に、
損害賠償命令
制度の
導入により
刑事裁判が長期化するのではないかとのお尋ねがありました。
本
制度においては、
刑事裁判中は民事に関する
審理を一切行わないこととしておりますので、
刑事に関する
審理においては、
刑事の観点から必要なもののみが
審理の
対象となり、民事に関する争いが持ち込まれることはないものと
考えております。
また、本
制度においては、
刑事判決に法的拘束力を認めておらず、民事上の
争点については、
損害賠償命令
事件の
審理等において十分に主張、立証をしていくことが可能であります。
したがって、本
制度が
導入されることによって、迅速な
刑事裁判が阻害されることはないものと
考えております。
また、
損害賠償命令
制度が
被告人等の
防御活動に及ぼす影響についてのお尋ねがありました。
損害賠償命令の
制度においては、その
申し立てがなされても、
刑事裁判中は民事に関する
審理を一切行わないこととしており、
刑事事件の有罪判決の言い渡しがあるまでは、
被告人が
申し立てに対する態度を明らかにすることも予定されておりません。
したがって、本
制度の
導入によって、
被告人や
弁護人の
防御活動に重大な影響を及ぼしかねないとの批判は当たらないものと
考えております。
また、加害者が無資力の場合に
被害者の負担が報われないのではないか、また、
損害賠償の立てかえ払いをする
仕組みを創設したらどうかというお尋ねがありました。
損害賠償命令
制度は、
犯罪被害者等による
損害賠償請求に係る紛争を
刑事手続の
成果を利用して簡易迅速に解決するために設けることとしたものであり、その回復を容易にする手段を提供するものとして重要な意義を有する
制度であると
考えております。
加害者が無資力であるような場合には
経済的支援が必要でありますが、そのような
経済的支援
制度については、本
制度の
検討とは別に、現在、内閣府に設けられた
経済的支援に関する
検討会において、さまざまな角度から
検討が進められておるものと承知をいたしております。
立てかえ払い
制度の
導入についても、
犯罪被害者等に対するさらなる
経済的支援
制度のあり方の一つとして、
検討が進められるものと承知をいたしております。
また、行刑施設における作業報奨金を引き上げて
損害賠償に充てさせることはどうかというお尋ねがありました。
刑務作業は、懲役刑を科せられた者に義務として行わせるものであり、作業報奨金は刑務作業に対する報酬ではないので、これを労働に見合う対価にまで引き上げることは適当でないこと、また、
被害者への賠償のために作業報奨金の額を引き上げることとすると、公平の観点から、
被害者がいない
犯罪を犯した受刑者についても作業報奨金の額を引き上げることが必要になると思われますが、これは国民感情からしても難しいこと等の問題点があり得るところでございます。
しかしながら、受刑者が作業報奨金から
被害者に賠償したい旨を願い出た場合、在所中でも作業報奨金を
被害者に送金することができることとしております。
被害者の損害を補てんすることは重要であり、受刑者に対する指導等によってこのような
制度を利用させるなど、
被害者の損害の補てんが図られるよう努めてまいりたいと
考えております。
また、
被害者参加制度について
犯罪被害者団体の一部から批判の声が出ていることについてお尋ねがございました。
本
法律案は、
犯罪被害者等基本法や
犯罪被害者等基本計画に基づいて立案をしたものでありますが、その成立、策定の過程においては、
被害者の方々の
刑事裁判への
関与のあり方を含め、幅広い
意見を伺った上で、慎重な議論、
検討が行われたものとしておりますし、また、本
法律案を立案するに当たりましては、法務省においても、
被害者関係団体からヒアリングを行うとともにパブリックコメントを実施しており、これらの結果をも参考にしつつ、法制審議会において慎重かつ活発な審議が行われた結果、答申が取りまとめられたものでございます。
御指摘のように、今回の
法整備について、一部の
被害者の方々から本
制度についての懸念が表明されていることは承知をしております。しかしながら、今回創設しようとしておる
被害者参加の
制度は、御指摘を受けている点も含めまして、今申し上げましたような慎重な議論が積み重ねられてきたところでございますので、このような結果を踏まえたものでございますので、ぜひとも御理解を賜りたいと
考えております。
以上、真摯に答弁したつもりではございますが、十分なお答えになっていない点がございましたら、さらに
委員会で御
質問いただいた際にお答えを申し上げたいと存じます。よろしくお願いします。(
拍手)