○阿部知子君 私は、社会
民主党・市民連合を代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
イラクにおける
人道復興支援活動及び
安全確保支援活動の
実施に関する
特別措置法の一部を改正する
法律案について
質問させていただきます。(
拍手)
二〇〇三年三月二十日、
米英による
イラク攻撃の開始から四年以上を経た今日、
イラクの
人々にとっては
治安、経済、
生活のすべてが危機的
状況となり、子供らも住む家を失い、親を失い、
ユーフラテス川に泳ぐこい
のぼりを見るかわりに、ただただ張りめぐらされる鉄条網を茫然と眺めるのみになりました。平和のうちに生存する権利は、今この瞬間にも脅かされております。
冒頭、
安倍総理にお伺いしたいのは、果たしてこの
イラク開戦に本当の
正当性はあったのか否かであります。
総理は、これまで再々、
イラク・
フセイン政権が十二年間にわたって累次の
国連安保理決議に違反し続け、平和的解決の機会を生かそうとせず、
国際社会の真摯な
努力にこたえ
ようとしなかったことをテープレコーダーの
ように繰り返されるだけで、
米英の
イラクへの先制攻撃を
支持するという立場は、一切
内容にわたっての答弁をされていません。
しかし、そもそも
イラクは、一九四五年、国際連合設立当初からの加盟国でありました。そして、
国連憲章第二条及び第七章によって、個別
国家あるいは
国家集団による先制攻撃は禁止され、安全保障理事会にのみ
武力行使が認められるとされています。しかるに、このたびの
米英有志連合による
イラク攻撃は、
武力行使に踏み切る新たな
国連決議もなく、明らかにこれまでの
国連のルールに違反する行為と考えるべきではないでしょうか。改めて
国連憲章との
関係で
お答えください。
また、こうした形での先制攻撃に
米国が打って出た背景には、二〇〇二年九月に発表された
米国の
国家安全保障
戦略があります。そこには明確に、
テロや
大量破壊兵器攻撃に対し、敵が攻撃の意図と能力を持っていると判断した時点での単独での先制自衛権の行使がうたわれていますが、
日本政府は、こうした
米国の先制攻撃容認の立場に同調するものでありましょうか。それは、
国連重視の従来の
我が国の外交方針からも大きく逸脱するものと考えますが、果たして
国民にはどの
ように
説明されるのでしょうか。
さらに、
イラク戦争の
正当性をめぐっては、
開戦後に判明した決定的に重要な問題として、
米国が先制攻撃の
根拠とした
大量破壊兵器も、
テロ組織アルカイダとの
関係も
イラクには存在しなかったという事実があります。このことに関しては、
ブッシュ大統領やイギリスの
ブレア首相も、
大量破壊兵器の
情報の誤りを認めて明確に謝罪をしておられますし、
開戦前に
国連安保理で軍事行動の
必要性を訴えたパウエル前国務長官は、人生
最大の汚点だったとすら回顧しています。
この
大量破壊兵器の存在について、
安倍総理御
自身は、
イラク開戦を
日本政府が
支持することを表明した段階でどう考え、また、
米英の
見解が訂正された今日において、
日本政府もまた当時の
情報と判断の誤りを認められているのかどうか、はっきりさせていただきたいと思います。
これまでの何人かの御
質疑に対して、
安倍総理はこの点を一貫して逃げ、はぐらかしておられると思いますので、この場で明確な御答弁をいただきたいと思います。果たして、
日本は
大量破壊兵器があったと思っていたのか、そして、現在はそのときの判断は誤っていたと思っているのか。これくらいのことを
国民に
説明できずして、
総理たる者の任にあらずと思います。
そして、
アルカイダとの組織的関連もなく、
大量破壊兵器もなかったのなら、そもそも
米国や
日本が
開戦の
根拠として挙げた累次の
国連決議の前提すらも揺らぐはずではありませんか。
サダム・
フセイン体制を専制
国家として、その体制の転覆を図るための攻撃であったとするなら、それはまさしく武力による侵略、
国家転覆であり、
国連憲章第二条に明らかに違反するものです。
総理の
見解を伺います。
また、それゆえ、
米軍を初めとする外国軍隊は、不法占領とも言うべき
状態を早期に終わらせるべく、期限を定めて
撤退すべきであり、それは、
米国内でこの
戦争の終結の道を探るベーカー元国務長官ら超党派の
イラク研究グループの指摘するところでもあります。果たして、
総理はこの指摘についてどの
ようにお考えでしょうか。
次に、
イラクの現状について、その
認識を
麻生外務大臣に伺います。
イラク開戦以降、既に七万人近くの市民が空爆や戦闘の犠牲となり、二百万人近い避難民が生まれております。また、昨年二月以降は、
宗派間、
宗派内抗争が激化し、内戦
状態に近いとも言われており、
米軍の軍事作戦は、事態を力によって押さえ込み、沈静化させるよりは、むしろ対立と混乱を助長している
ように思えます。そもそも、現状は
復興支援という段階よりも、UNHCRやあるいは多くのNGOが緊急アピールをしていることにもあらわれる
ように、緊急人道
支援がまず不可欠な段階にまで後退しているのではないでしょうか。
バグダッド・アダミヤ地域における
米軍のコンクリート壁建設はそのことを如実に物語っております。
一方、
我が国の
イラク復興支援の基本計画では、
イラクに完全な主権が回復され、
イラクの本格的な
復興に向けた新たな局面が切り開かれ、
治安権限移譲プロセスも進行するなど、民主的な
政府のもとで
イラク人自身による自立的な
復興に向けての本格的な第一歩が踏み出されているとしていますが、これは余りにも楽観的であり、
イラクの実情を反映していないと考えますが、どの
ようにお考えか、御答弁をお願いいたします。
また、この間の
イラク戦争で多数のクラスター爆弾や劣化ウラン弾等の非人道的兵器が使われました。その被害は長期にわたって続き、特に
子供たちに今後も集中的にその被害があらわれると懸念されます。
イラク攻撃のこうした実態を
日本ももっとしっかりと調査し、必要な措置や
支援策を講ずることが何より必要だと考えますが、麻生大臣はいかがお考えでありましょうか。
また、こうした非人道的兵器の規制については、国際的な禁止条約づくりの動きも始まっておりますが、残念ながら
日本は極めて消極的な態度に終始しております。原爆による惨禍を
経験した
日本こそ、劣化ウラン弾やクラスター爆弾などの非人道的兵器の規制の最先頭に立つべきと考えます。まして、幼子、将来ある
子供たちがその第一の犠牲者となることを
日本が座視しているということ
自身、既に許されないのだと思います。
空自の
撤退そのほかについても、日々戦闘が拡大、激化する
イラクでは、
米軍支援の
活動を担う
航空自衛隊の行動は、これまでの
ように形だけでも戦闘地域を避けて行うことすら不可能となってくることでしょう。逆に言えば、いつどの
ような事態で
自衛隊が戦闘下に置かれ得るかということをこのままでは
国民も知ることができません。そもそも、戦闘の後方
支援としての
物資輸送に当たることは憲法上も許されないことと考えますが、そうした実態、現状のどの
ような把握がなされ、またそれが
国民にはどの
ように伝えられているのかということは、シビリアンコントロールの
観点からも大きな問題です。
防衛大臣は、この間の
自衛隊の
活動における
情報公開について果たしてどの
ようにお考えでしょうか。今回の
特措法では、さらに
航空自衛隊の
活動を二年間
延長するものとなりましたが、本当にそのことを判断するに足る
根拠を
国民には提示しておるとお考えかどうか、
お答えください。
多
国籍軍、とりわけ
米軍の軍事行動
支援のために
日本の
航空自衛隊がこれ以上
活動することは、
イラク戦争の失われた
大義から見ても、また
日本の本来果たすべき人道
支援、平和貢献の立場から見ても極めて不適切であり、
自衛隊員にも不当な負担をかけるものです。
イラク特措法は即刻廃止し、
自衛隊は即時
撤退すべきです。
イラク、
中東問題の解決を図るための
政治・外交的
枠組みづくりに
日本もまたあらゆる可能性を追求するとともに、医療等を含めた命のための緊急
支援や雇用・
生活インフラ、農業・環境再生にこそ全力を挙げるべきと考え、私は、社会
民主党・市民連合を代表しての代表
質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕