○笹木竜三君
民主党の笹木竜三です。
いわゆる在日米軍
再編特措
法案への
反対討論を行います。(
拍手)
いやあ、本当に驚きました。この手抜き
法案と
与党の
説明責任の放棄、審議のすっ飛ばし。もともと私は、肉弾戦、物理的抵抗などは絶対に好きじゃありませんが、きのうはさすがにその誘惑に何度か駆られました。
この
法案が日米安全保障条約にかかわる最重要
法案であるにもかかわらず、
採決の当日まで外務大臣を答弁者として出席させない、御本人は答弁がそうお嫌いとも思えないんですが、そうしたすっ飛ばしの
委員会審議。ここまでむちゃくちゃをやってでもアメリカの大統領への御機嫌がとりたいのか、それだけがそんなに大事か。いわゆるお土産なしでは今の日本の
総理大臣は訪米することもできないのか。
この
法案は、在日米軍
再編に伴って新たな財政支出を始めるという
法律です。その財政支出に使われる税金を払うのは、アメリカの政府でもない、アメリカの
国民でもない、もちろん日本
国民です。であれば、その財政支出についての必要性や根拠については、当然のこと、日本
国民に丁寧にされなければなりません。
まず、この
法案の根本的な問題は、
国民への
説明という姿勢が完全に欠落していることです。
そもそも、アメリカの軍隊が、外国に駐留をしていた、この場合日本、その軍隊がアメリカ本土に戻るに当たって、駐留地だった外
国政府が、この場合日本、経費をアメリカに拠出するという例がほかの国で
歴史上あったか。答えは、全くない。
では、この日本において、そのような経費を負担する法的な根拠はあるのか。答えは、全くない。
政府の答弁によれば、経費について我が国が分担するということを明示的に禁ずる
法律の
規定はないと
認識している。まあ、へ理屈、かなり無理をしてでも分担するという。では、なぜその経費を分担しなければならないのか。沖縄にいる海兵隊とその家族一万七千人がグアムに移転してくれることで日本の基地負担が軽減するからだと答弁。
では、その一万七千人という数字、沖縄にいる海兵隊とその家族の実数からはかなり怪しいんじゃないかと聞けば、わからないが、アメリカ政府が言うから信じるしかないと答える。
費用の見積もりが最大百二・七億ドルというが、その根拠は何か。米軍の家族住宅一軒当たり七千万円、八千万円。どうしてこんなにグアムはコストがかかるの、アメリカ本土の四倍もコストが高いのか、そう聞けば、アメリカ政府がそう言うからだと答弁。
では、その金額枠の根拠についてアメリカからの資料を見せるべきだと言えば、アメリカ政府の許可がないと見せられないと政府答弁。
日本が負担した経費が、つまり約束した、沖縄からグアムに移転した海兵隊と家族とは
関係のないことで使われないという保証はあるのかと聞けば、会計検査院はチェックができるのかと聞けば、チェックできるとは言い切れないとの答え。何の覚書もない。
グアムへの移転経費だけではありません。自治体への
再編交付金。最初の年度の
平成十九年度五十一億円という見積もりはあっても、その積算根拠も示されない。来年度以降については全く金額が明らかにされず、
平成二十八年度に在日米軍
再編が終了するまでには一体どのぐらいの経費が総額として、どのくらいでいいから、必要なのか。これも皆目明らかにされない。答えのとおり、やってみないとわからないという答弁が事実だとしたら、財政規律のかけらもないことになる。
さらに、
説明を回避するための、別途政令で定めるの乱発。「政令で定めるものに要する経費に充てるため政令で定める交付金を交付する場合においては、政令で定めるところにより、」「
規定を
適用」云々といったわけのわからない条文の乱発。
説明が一向になされないのは、財政支出のこと以外についても同様です。なぜ普天間の代替施設に千八百メートルの滑走路が必要なのか。ジェット戦闘機は運用しないと言うが、ヘリコプターなら千八百メートルは必要ない。アメリカが明らかにしているオスプレー、垂直離着陸可能な新タイプの輸送機、日本政府はそれさえも認めていませんが、それが五機並んだとしても、滑走路三百メートルで済む。一体どうして千八百メートルの滑走路が二本も必要なのか、さっぱり
説明されない。
あるいは、ミサイル防衛。日米の一体的な共同運用の必要性は認めますが、肝心な独立国家としての日本の主体性は確保されているのかどうか。ある国から二発の弾道ミサイルが飛んできて、一発は横田基地に、もう一発はある都市に落ちそうだ。高い確率性を持った予測がアメリカ側にしかできないで、日本に伝えられる情報に優先順位がつけられるとしたら、悪意はなくても、結果としての情報操作の
可能性はないんですか。このような不安に対して、政府は、日本
国民に納得してもらう努力を全く行っていないのである。
総理は、よく自由、
民主主義などの価値ということに言及をされますが、自由や民主的な社会の発展にとって何が最も必要だとお
考えになりますか。
我が国で最も自由と
民主主義を大切にした
政治家の一人、斎藤隆夫氏は、「比較
国会論」の中で、立憲政治の究極の目的は
国民の共同意識をもって政治の原動力となすにありて、
憲法及び
国会はこの目的を達する機械、マシーンにすぎないと
主張しています。
国民の共同意識というのは、現在的に言えば、
国民の参加意識あるいは
国民のコンセンサスという
意味で使われていますが、要するに、
国民の参加意識を原動力にして、
国民のコンセンサスによって政治を行うのが立憲政治だというわけです。そして、健全な
国民の共同意識はどうやって育つのか。政治的な無知、知識がない状態を脱していないと育つことはないと続けています。
国の安全保障にとっても、
国民の共同意識は最も根源的な基盤です。肝心かなめとも言える
部分をひた隠しにしている今回の手抜き
法案と
与党の
説明責任の放棄、そして審議すっ飛ばしの態度は、
国民を無知な状態のままにしようとすることであって、わけのわからないままお金を支出せよというのは、国の政治や防衛の基盤を掘り崩すことをみずからしていると言わざるを得ません。
それにしても、今回の米軍
再編というのは、日本にとって、日米
関係をつくり直す、半世紀に一度あるかないかのチャンスでした。
この
再編によって、米軍は、世界じゅうのどこにでも、臨機応変に、速いスピードで部隊展開できる体制へ変革されていきます。だとすれば、在日の米軍も、中東だろうとどこであれ、極東以外に、極東の安全のためでなくても、直接活動
範囲を広めていく
可能性はますます高くなる。結局、日米安保条約の極東
条項、その概念と現実のギャップはますます
検討せざるを得なくなっている。
そして同時に、日本が意図しない形でいつの間にか米軍と一体化させられることを避けるためには、事前
協議。敗戦後の先輩たちが獲得した事前
協議という権利、現在まで放棄し続けているような状態ですが、それを実質的なものにしていく。さらに、独立の主権国家としては非常に問題の多い日米地位協定の改定。
今回の米軍
再編という千載一遇のチャンスを得てもなお受け身の姿勢に終始している政府がこれらの課題に取り組む
意思を持たなかったのは、
歴史に対する怠慢としか言いようがありません。
ただただ受け身で、ただただアメリカの言いなりで、
法案を早く通さないと日米
関係が大変だなどと言っている方に言いたい。SACO
合意は十年以上実行されていないが、それで日米
関係が崩壊しましたか。大切なことは、
平成二十八年度まで続く在日米軍
再編のこのスタート時点で、時代にふさわしいスタートを切ることだと思います。
この手抜き
法案、
与党の
説明責任の放棄、そして
法案審議すっ飛ばしを許してしまったことは、つくづく痛恨のきわみです。一刻も早く時代錯誤の安倍
政権を終わらせることをお誓いして、私の
反対討論とします。(
拍手)