○石関貴史君 民主党の石関貴史です。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいまの
更生保護法案の
趣旨説明に対して質問いたします。(
拍手)
近年、保護観察
対象者による重大再犯事件が相次いだことから、更生保護
制度全般についての抜本的な再検討、見直しが法務省内の有識者
会議においてなされ、その
報告も踏まえて、今般の
更生保護法案提出に至ったと承知しております。昨年六月に出された更生保護のあり方を考える有識者
会議報告書を拝見いたしますと、これまでの
我が国の更生保護
制度のあり方に対する厳しい批判、相当思い切った提言などが盛り込まれているように思います。
法案は、この提言も踏まえて、更生保護の機能を充実
強化するために、現行の二法を整理統合した上で各種
措置の
整備充実を図るものであるといいます。その
提出理由については、私たちとしても大いに
賛成であります。しかし、実際に
報告書と
法案とを読んでみると腑に落ちない点も幾つかあります。以下、長勢法務大臣にお尋ねをいたします。
まず、更生保護の主体は一体だれなのかという点です。
仮釈放中の保護観察等の
社会内処遇によって、適切な指導、監督、援護のもとで定職や定住先を得てしっかりと更生を果たしていくことは、満期出所して突然
社会にほうり出される場合に比べて、確かに本人のその後の人生にとっても、また
社会にとっての再犯のリスクを減らす上でも、大いに意義のあることだと思います。また、そのために、
報告書が触れているように、再犯のおそれのあることをある程度受容しながら、犯罪や非行をした人と共生をし、
社会生活を営むという
社会内処遇の意義とリスクを国民の皆様が広く理解することが重要であると思います。
我が国の更生保護
制度の特色は、日常的な保護観察処遇や犯罪予防活動など、その活動の大部分を保護司を初めとする民間ボランティアが担っているという点にあり、世界的にも例のないものです。しかし、
報告書も指摘しているとおり、国民の安全、安心を守るのは国の責任であり、更生保護
制度は国の責任において充実
強化すべきものです。現状は、
制度の歴史的沿革や国の財政事情等に規定された部分もあるとはいえ、保護観察所が保護司に余りにも依存し過ぎており、官と民の役割分担をあいまいにし、法が官に期待している役割が十分に果たされているとは言いがたい
状況にあると言わなくてはなりません。
このことから、
報告書は、改革の方向性として、官の役割を明確化し、更生保護官署の人的、物的体制を
整備することにより実効性の高い官民協働を
実現することを提言しています。長勢法務大臣は、この指摘と改革の方向をどのように受けとめていらっしゃるでしょうか、御質問いたします。
ところが、
法案を見ると、冒頭から首をかしげざるを得ないことが書かれています。すなわち、
法案は第一条で、
法律の目的として、犯罪をした者や非行のある少年に対する
社会内処遇による再犯防止等を掲げた後、第二条で、国、
地方公共団体、国民それぞれの役割を示していますが、その一項では、国の責務は、「前条の目的の
実現に資する活動であって民間の団体又は個人により自発的に行われるものを
促進し、これらの者と連携協力するとともに、更生保護に対する国民の理解を深め、かつ、その協力を得るように努めなければならない。」と書かれています。二項では、
地方公共団体は、民間の自発的活動に必要な協力ができると書かれています。そして三項では、国民は、目的を達成するために、その地位と
能力に応じた寄与をするように努めよと書かれています。つまり、更生保護
制度は国の責任において充実
強化すべきもの、こういった提言とは正反対に、主役は民間で、国の役割はその後押しと広報活動をするだけということなのでしょうか、御
説明をお願いいたします。
もちろん、犯罪をして罪を償った人々に対して、国民の皆様が地位や
能力に応じて更生保護のために寄与すべきだということはそのとおりであります。特に、
就労支援のためには、
企業などの協力が不可欠です。
そこでお尋ねをいたしますが、
就労支援のために、現在、法務省は厚生
労働省などとどのような連携を行い、また、大
企業や経済団体などに対してどのような働きかけを行っているのでしょうか。約六千
事業者にとどまっているという協力
雇用主や、実際に雇い入れられた者の
企業規模別の人数内訳はどうなっているのでしょうか。国の機関は年間どれくらいの人数を受け入れているのでしょうか、お尋ねをいたします。
実際に熱心に協力してくれているのは、飲食店や町工場など中小零細の庶民的経営者ばかりで、ステータスの高い大
企業や国の機関ほど受け入れに冷淡ということがないことを切に願っております。
一方、更生保護における官の役割の
強化という観点からは、特に圧倒的に不足していると言われる保護観察官の大幅な増員が不可欠です。
報告書は、「現場の第一線において保護観察事件を担当する保護観察官の数(約六百五十名)を少なくとも倍増させる必要があり、その
実現を国に強く求める」としています。この点については、直接
法案に盛り込む事柄ではないとは思いますが、長勢法務大臣として、これを具体的にどのように取り組んでいくのか、それとも予算や定員の制約を理由にほおかむりをするつもりなのでしょうか、お聞かせをください。
次に、この更生保護
制度の
実施のかなめとしての役割を担うべき地方更生保護
委員会についてお尋ねをいたします。
この
法律に基づいて置かれる地方更生保護
委員会は、仮釈放の
許可や取り消しを行ったり、保護観察所の事務を監督するなどの職務を行う機関です。一九四九年の現行法制定当初、同
委員会の前身である地方成人保護
委員会、地方少年保護
委員会が置かれた際には、いわゆるアメリカ型の行政
委員会として民間からの登用を想定した委員任用規定が設けられていましたが、その後、委員の任命に関する規定は削除され、専ら更生保護官署職員等の公務員がいわば早期退職者の再
就職あっせんのような形で委員についてきました。このような事実認識で間違いないかどうか、法務大臣の認識をお尋ねいたします。
この点、
報告書でも「関係者が、内輪で、国民の目に触れない形で判断していると言われても反論が難しい実情にあり、犯罪被害者等はもとより、一般国民の理解を得られる運用になっていない。」と厳しく批判をされていますが、法務大臣としてどのように受けとめておられるのでしょうか。
昨年、この
委員会委員の定員の
上限を二名引き上げる
法案が
提出された際、民主党はこの問題を指摘し、「委員に民間人、
女性及び専門的知見を有する者を積極的に登用すること」とする
附帯決議を法務
委員会でつけました。そのためもあってか、昨年初めて二人の民間人が委員に就任しました。
法律上の定員増分は全部民間人にしたと誇らしげに
説明していましたが、よくよく聞いてみると、昨年一年間で退任した委員の補充や任期到来で新任、再任された委員は十五人、そのうちたった二人を民間人に割り当てただけでした。公務員出身者の既得権分は死守したということなのでしょうか。
地域社会に
社会的処遇による再犯のリスクを受容せよ、更生保護に寄与せよというからには、地方更生保護
委員会は、その道のプロばかりではなく、民間の声も反映できるような委員構成とすべきではないでしょうか。長勢法務大臣は、
報告書や昨年の
附帯決議に沿ってさらに思い切って民間人を登用する考えはないのか。例えば、三年以内に半数以上を民間人にするというような目標を表明するお気持ちはないのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
次に、仮釈放審理に当たっての被害者等からの
意見聴取制度についてお尋ねをいたします。
法案では、地方
委員会が仮釈放の審理を行うに当たり、被害者等から審理
対象者の仮釈放等に関する
意見及び被害に関する心情を述べたい旨の
申し出があったときは、当該被害に係る事件の性質等の事情を考慮して相当でないと認めるときを除いて、当該
意見等を聴取するものとしています。これによって聴取した
意見は、地方
委員会の審理にどのように反映をされるのでしょうか、お尋ねいたします。
例えば、ストーカー被害や性犯罪に遭われたような被害者は、刑期満了まで仮釈放を認めてほしくない、こういった
意見を述べることも予想されます。また、仮釈放するにしても、決して自分の目の前に姿をあらわさないでもらいたい、同じ町に住まわせないでほしい、こういうことも考えられます。これらの
意見は、一般遵守事項や特別遵守事項によって担保することは可能なのでしょうか、お尋ねをいたします。
一方、仮出所者に目を転じれば、もともと被害者の近くの実家に住んでおり、実家の家業を継ぐ以外に適当な
就労先がない、こういった場合も考えられます。このような場合に、被害者等の
意見と更生保護の要請とを具体的にどのように調整をしていくのか、大変難しい問題を含んでいるように思いますが、いかがでしょうか。
報告書は、「犯罪被害者等が反対する限り一切仮釈放を認めないという運用に向かうことは、公平性も含め刑事政策的に望ましくないと考えられ、聴取した犯罪被害者等の
意見をどのように審理に反映させるのか等については、慎重に検討する必要がある。」このようにしています。長勢法務大臣としては、この点についてどのように慎重に検討され、具体的にどのような運用を行っていくつもりか、お聞かせをください。
以上、時間の制約もあり、多岐にわたる論点のすべてに言及することはできませんが、今後の更生保護の充実
強化に向けてともに建設的な議論を闘わせていくための切り口として幾つか指摘をさせていただきました。実りある議論となるような御答弁をいただければ幸いです。(
拍手)
〔
国務大臣長勢甚遠君
登壇〕