○長島昭久君
民主党の長島昭久です。
私は、ただいま
議題となりました
駐留軍再編の円滑な
実施に関する
特別措置法案につきまして、外務
大臣、防衛
大臣、財務
大臣並びに官房長官に対し、
民主党・
無所属クラブを代表して
質問いたします。(
拍手)
今から五十五年前の春、一九五二年四月二十八日、サンフランシスコ講和条約が発効し、六年九カ月にわたる占領に終止符が打たれ、
我が国は晴れて主権を回復いたしました。その二日前、連合軍最高司令官マシュー・リッジウェー米陸軍大将が、「
独立する
日本国民諸君へ」と題する祝福のメッセージを発表しております。その中で、リッジウェー大将は、アジア太平洋
地域の平和維持が
日米両国にとっての最重要課題である旨指摘した上で、次のように述べております。
この平和維持という目標に従って
日米両国の間には
安全保障条約が結ばれ、これにより、
日本とその周辺にある米陸海空軍の配置が取り決められた。これらの
米軍が
日本に駐留するのはたった一つの目的、すなわち、
日本が外部からの武力攻撃に対し固有の自衛権を行使するための有効な手段を持たぬ期間、
日本を防衛するための暫定的な取り決めをしようというのである。だから、
日本が直接及び間接の侵略に対して自己を防衛する力ができたとの自信を持つようなときが来れば、米
駐留軍が撤退することも期待できるわけである。私は、その日が余り遠くないことを望んでいる。
米国は、海外のどこであれ、不必要に長くその軍隊の駐留を引き延ばすことを欲してはいない、そのことは確かである。
リッジウェー大将は、
米軍の駐留が、あくまでも
日本が自衛力を
整備するまでの暫定的な取り決めであると明言していたのであります。
ところが、現実はどうでありましょうか。半世紀余りを経た今日にあってもなお、四万三千人の
米軍が、三百九平方キロという広大な
日本の国土に排他的使用権を有する八十五カ所に上る
基地施設を置き、ホスト・ネーション・サポートとして
国民の税金から毎年二千億円以上もの予算が投入されているのであります。そして、このたび、
米軍再編によって、総額二兆円になんなんとするさらなる
財政負担が取りざたされているのであります。
大戦終結から六十年が
経過した今なお、
米軍による占領の残滓がこれほどまでに鮮明にしるされた国は、世界で
我が国以外に見当たりません。
日本の政治家として、この異常な事態を何としても克服しなければならない、そういう思いは与野党を超えて議場の皆さんに共通だと私は信じております。今回の
米軍再編に対しまして、
日本国
政府としての姿勢の原点は、まさにこの
問題意識にこそ求められるべきだと思いますが、外務
大臣そして防衛
大臣、お二人の御所見を承りたいと存じます。
私は、何もこの議場で、ヤンキー・ゴー・ホームを叫ぶつもりはありません。
日米同盟が
我が国外交の基軸だということにも異論はありません。
米軍の前方プレゼンスがアジア太平洋
地域の平和と安定を支える国際公共財であり、その基盤を提供する戦略的な価値がまさしく
我が国外交の貴重なアセットであります。しかし、その価値ある資産を
日本外交が生かし切れていないばかりか、
米軍再編をめぐる対米交渉の中で
我が国の主体性が全く見えなかったことに多くの
国民がいら立っているのでございます。
日米同盟の特異性は、有事のリスクはアメリカ、平時のコストは
日本という役割分担の非対称性にあります。この非対称性こそが、
日米同盟を揺るがす最大のアキレス腱であります。有事に当たっては
米国の兵力に依存する
日本、そのかわりに背負わされた平時の
負担は、今や
国民の皆さんの受忍限度をはるかに超えるレベルに達しようとしております。
我が国の自助努力が決定的に足りないことが最大の原因だと
考えますが、外務
大臣、いかがでしょうか。
大臣の率直な御見解を承りたいと思います。
そして、今回の世界的な
米軍再編という千載一遇のチャンスに当たってもなお、
政府は、このゆがんだ同盟の基本構造に一切手をつけようとはしませんでした。すなわち、有事のリスクを
我が国も引き受け、
日米が相互補完的な役割を分担し合うように同盟そのものを
再編することによって平時の
基地負担を減らそうという正当な努力を怠ったのであります。その結果、相変わらず膨大な
基地受け入れを含む平時のコストが残ったのであります。外務
大臣、なぜ、かくも無気力な対米交渉に終始してしまったのでしょうか。戦後レジームからの脱却というのであれば、まず対米関係から実行に移していただきたい。明快な御答弁をよろしくお願いいたします。
ところで、
政府は、
米軍再編に当たり、
負担の
軽減と
抑止力の維持という
二つの基本原則を繰り返し強調してまいりました。海兵隊の
グアム移転で、普天間
基地を初め
沖縄の
負担はある程度
軽減されることになりますが、逆に、岩国や座間のように
負担がふえる
自治体もあることを忘れてはなりません。
問題は、もう一つの柱である
抑止力の維持に
我が国がどう取り組もうとしているのかが全く見えないことであります。まさか、
負担の
軽減も、
抑止力の維持も、米側から
日本へ提供されるべきものと
考えているわけではないでしょう。それは余りにも虫がよ過ぎる話で、同盟国として、いや、
独立国として、甚だ無責任であると言わざるを得ません。防衛
大臣、
抑止力の維持、すなわち有事のリスクに対する
我が国の役割は一体何なんでしょうか。
国民の安全をつかさどる責任
大臣としての明確な御答弁を承りたいと思います。
抑止力の維持については、別の疑問もわいてまいります。すなわち、
沖縄駐留の海兵隊部隊が八千人規模で
グアムへ
移転するわけでありますから、これまでの兵力規模で維持されてきた
米軍による
抑止力がそのまま確保されるとは
考えられません。海兵隊の即応能力を担保してきた前方展開兵力削減の空白を一体何で埋め合わせようとしているのか、防衛
大臣、
国民に対してわかりやすく
説明をしていただきたい。その際、
米軍が大丈夫と言っているから大丈夫だなどという答弁では到底納得いたしません。
米軍再編をめぐり、
日本政府として本来あるべき姿は何だったのでしょう。私は、長年にわたってあいまいにされてきた集団的自衛権の行使を認め、
日米同盟協力の中で
抑止力の維持をめぐる
日本側の任務や役割を拡大することを通じて、自衛隊と
米軍兵力との間で重なり合っている部分を削減していく、そういう
方法がベストであったのではないかと思いますが、皆さん、いかがでしょうか。そうすれば、まさに半世紀前にリッジウェー大将が予告したように、もはや必要のなくなった
米軍兵力を削減するわけですから、その対価として新たな
財政負担を求められることもなく、
米軍の駐留
経費負担は兵力削減とともに自然と減額することができるはずであります。外務
大臣、そして防衛
大臣、今後このような
独立国として当たり前の姿勢を確立するおつもりがおありかどうか、明確な御答弁をお願いいたします。(
拍手)
ところで、総理の公約である集団的自衛権の行使をめぐる事例研究は、一体いつ成果が出るのでしょうか。この程度の研究は、自衛隊の幹部や専門家を集めて三時間ぐらい集中討議をすれば、結論は出るはずです。やる気が全く見られません。官房長官、官邸ではどんな作業が進められているのか、いつまでに成案を得ようとしているのか、
国民に対して
説明責任を果たしていただきたい。
また、この点について、
日米同盟を対等なものに
再編するとの
観点から、防衛
大臣の御所見を承りたいと思います。
次に、
法案の
内容について、二点に絞って伺います。
第一に、膨大な
再編経費はどのように捻出されるおつもりでしょうか。
先ほどの
趣旨説明によりますと、従来からの
米軍施設移転に伴う
経費のみならず、新たに設けられる
再編交付金に加え、
住民生活の利便や
産業など
地域振興策にまで国費を投入するとされていますが、これはすべて防衛省の予算でカバーされるのでしょうか。防衛
大臣及び財務
大臣に伺います。
その際、
米軍再編の
日米合意以前に策定された、防衛計画の大綱に基づく現行の中期防衛力
整備計画の達成が圧迫をされ、下方修正を余儀なくされるようなことはないのかどうか、防衛
大臣に伺います。
現在、
我が国は、北朝鮮の核やミサイルの脅威に加え、ロシアや中国による大規模で急速な軍拡に直面をしております。
米軍再編経費を捻出するかわりに
我が国独自の
抑止力が低下するようでは、まさしく本末転倒ではないでしょうか。
第二に、
グアム移転経費について、財務
大臣に伺います。
本
法案では、
日本側の
負担分のうち、
政府が直接支出をする二十八億ドル以外の三十二・九億ドル分について、
資金の出資、
貸し付け等の
業務を
国際協力銀行が行うことができるとされています。
国際協力銀行の本来的な
業務に関係なく、
グアム移転の
業務を行うための
特例措置が設けられましたが、唐突感を否めません。このような手法は今までも使われてきたのでしょうか、具体的な事例があればお答えください。
本
法案は十年の時限立法にもかかわらず、
資金の返済には
米軍側から支払われる家賃や光熱水費が充てられるため、回収が完了するまでには四、五十年かかるとされています。その間、区分経理を行うため、
駐留軍再編促進に係る金融勘定が設定され続けることになると思いますが、最終的に
資金が回収できなかった場合にどのように責任をとるおつもりか、財務
大臣に
お尋ねいたします。
さらに、
資金が、
施設整備の名目で、海兵隊
施設を超えたインフラ
整備や増強される海空軍
施設などへ目的外使用されるおそれはないのかどうか。
米軍と民間会社が共同出資をする
事業主体への関与のあり方を含め、
資金の使途をチェックするための新たな仕組みが必要だと
考えますが、財務
大臣の見解を承ります。
いずれにいたしましても、本
法案は、
内容以前に、
米軍再編に対する
政府の基本姿勢そのものに重大な欠陥があると指摘せざるを得ません。
明治の啓蒙家、福沢諭吉は、「
独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず」、そう喝破しました。すなわち、
独立心のない者が天下国家を語っていても、それは深刻なものでも切実なものでもない。同じことは国家にも言えるのではないでしょうか。すなわち、
独立の気力なき国家は世界を思うこと深切ならず。
私
たちはそろそろ、自分の国は自分で守るという
独立国としての当たり前の姿勢を確立すべきです。そうでなければ、平和構築に向けた
我が国のいかなる理念や行動も、国際社会から真の意味で信頼を集めることはないでしょう。そのためには、
我が国を取り巻く有事のリスクにも正面から
取り組み、安易な対米依存体質から一日も早く脱却しなければなりません。みずからの足元もおぼつかなくて、インドやオーストラリアとの
安全保障協力をうたったところで、しょせんそれは絵にかいたもちにすぎません。
もし、自公政権では過去のしがらみがあって難しいというのであれば、私
たち民主党がかわって、
独立国家にふさわしい真に対等な
日米同盟関係を築いてまいる覚悟です。そのことを改めてお訴えをして、
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣麻生太郎君
登壇〕