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松岡国務大臣 これは、篠原
先生もお詳しいんだと思うんですが、我々もずっと今日まで
農政に携わってまいりまして、この歴史につきましては承知をいたしております。
ヨーロッパにあっては、私もちょうど今から三十年ぐらい前に企画室におりまして、企画室の係長だったんですが、その当時は、フランスなんかでは
格差補償制度、こういったようなことで、条件が不利なところ、それから平場との
格差を
補償する。当時は、山岳地帯で生産をするということは非常に条件が悪い、生産性が悪い。しかし、やはりそこで住んで生産がなされることによって、その
地域が管理され維持される。したがって、それは大変大きな役割を果たしておる、その役割に対して
格差分の
補償を払う、こういう概念だった、こう思っております。しかし、もっともっと、それ以前からこれはあったと思いますが、大体一九五〇年代から、やはりヨーロッパの方にありましてはそういったようなことがなされておった。
そして、六二年に至ってCAPが導入をされた。このときは市場介入による価格支持、だから、価格でもって農家を守ろう、こういう考え方であります。
ところが、一方で、農産物の生産がそれによって過剰になってくる。また、それに伴って財政的な負担が過大になってくる。こういったようなことから、八二年に至りましてCAP改革が開始をする、支持価格の引き下げだ、こういったようなことになってくるわけであります。そして、ウルグアイ・ラウンド
交渉が八六年から始まる。それで九三年になって一定の整理がつく。
そういう
状況の中で、これはもう価格支持では、やはりこれはいろいろな
観点があったと思います、価格支持ということになると財政負担も大きいということもあったと思いますし、何よりもやはり
消費者の
理解が得られない、価格を押しつけられるわけですから。そういったような
意味で、価格支持から直接支払いへ、こういうようなことで、大体この十年前後前ですよね。
それから、私
どももウルグアイ・ラウンド
交渉に携わってきて、ウルグアイ・ラウンド
交渉が終わって、そして
平成十年に、新
農業基本法ということで、私は当時、自民党の
農業基本
政策委員長でありますが、ひとつ新しい
農業基本法をつくらなければならないということで、
平成十年に私
どもは大々的な
議論を開始するわけであります。その前後といいますから、大体十年ごろですよね。ほぼ十年前、そのころから、今の新しい
農業基本法におきましても、私
どもは、価格支持から所得
政策へ、こういう言葉を、これは私も使うわけです、価格
政策から所得
政策へと。
したがって、EUでは、九二年にマクシャリー改革、こういうことで支持価格を引き下げる、その代償として直接支払いの導入、一方で生産調整の義務づけ、だから、このときはまだ青なんだよね、今でいうブルー
政策。だから、EUは最初青で始めた。
それからずっと進んでまいりまして、アジェンダ二〇〇〇というのがあった。アジェンダ二〇〇〇、ここでまたさらなる改革をやるわけですよ。それで直接支払いを引き上げる、こういうことをやる。
そして、二〇〇三年からいわゆるまたCAP改革というのをやって、これをデカップリングしていく、そういうような形でありまして、そして二〇〇三年からは、いよいよ現在の緑の直接固定支払い、こういうものに移ってくる、これがEUのいきさつでありました。
当然、篠原
先生はそれを知った上で私にお聞きになっておる、こういうことでございますけれ
ども、そういういきさつでございます。
そういう中で、
WTO農政というのは価格
政策から直接支払いという所得
政策に移っていっている。したがって、我々としては、あれは
平成十二年からでしたか、その第一弾として中
山間の
所得補償、いわゆるヨーロッパでいうところの条件不利
地域への支払い、こういったようなことで、中
山間の
所得補償というものに十二年から取り組んでいる。
それはいろいろ
議論はあったんですよ。こういうことは
名前は出しませんが、北海道の
先生方から、北海道は中
山間がないんじゃないか、こういう話をしながらも、いや、やはりそれはあるし、必要だというようなことで、大変な大激論、大
議論の結果、あの中
山間の
所得補償政策というものも私
どもは導入してきた。
私は、当時、そのときよく使いました、もうこれはヨーロッパでは随分早くから進んでいる
政策なんだ、したがって、車でいうと、ヨーロッパではもう随分乗った車なんだけれ
ども、まだ
日本では初めてだと。したがって、そういう
意味で、初めて所得
政策というものを中
山間の
所得補償ということで導入をしてきた、それは中
山間だけですから。
それから、当時、私もずっとヨーロッパへ行っていて思っておりましたのは、オーストリアに環境に立脚した支払いがあったんですよ。これを勉強いたしまして、それともう一つは、やはりシラク大統領が非常に
農政通の人です。大体欧米というのはそういう人が多いわけですが、シラク大統領がまた新しい
農業基本法をつくって、平場の
農業もやはりそういう対象にしていくということで、あらゆる
地域のあらゆる
農業という言葉をフランスは当時使った、そして、それを対象にしていく。もちろん一定の条件があるわけです。一定の条件をしない限りはその対象にならない、国との契約ということにならない。一定の条件が常にあるわけであります。
そんなような形で今日に至って、我々も、そういう世界の大きな流れ、こういったことを背景としながら、
WTO体制という中でまた
交渉がどんどん進んでいきます。すると、どうしても途上国というのはお金が、財源がない。したがって、先進国だけ国内的な助成をして、それによって生産がなされて、そのことが自分たちの農産物との競争において不利な条件を与えている、平等じゃない、したがって、補助金をなくせというのが今や途上国の大合唱になっておる。
それで今、アメリカは黄色の
政策の六割を切るという提案を昨年しましたけれ
ども、そんなものじゃだめだといって、まだそんなものでは認められないといって、大きな反発を受けている。これ以上は切れないというので去年は決裂、こういう
状況になっているわけですよ。
そういう
状況の中で、私
どもといたしましても、国際的には緑にしていく必要がある、そして国内的には大きく
農業構造を強固にしていく必要がある。
こういう国際的、国内的
観点から、国際的な規律にも合い、そしてまた、国内の
農業の総合力を最大限にしていくためにも改革に踏み切ろうということでやったのが、まず、品目横断という言葉がありますが、それは中身の話でありまして、
経営所得安定
対策、その中に品目横断というものもある。そして、品目で横断していますから、
WTO上、直接支払いをするときは、品目を固定、品目というか特定の生産にかかわっちゃだめなんだ、もうそれは篠原
先生御存じのとおりだ。したがって、そういう
意味で我々は品目横断ということにもいたしまして、これは今回こういう
政策を打ち出した、こういうことであります。