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長島(昭)
委員 民主党の
長島昭久です。
海洋基本法のいよいよ大詰めになりました。たった一日だけしか議論ができないのは残念でありますが、今質疑に立たれた
細野議員とは、我が党の
海洋二
法案、もともとは三
法案で出発したんですけれ
ども、
海洋法案の取りまとめをかれこれ三年以上やってきた者として、今回、こういう形で
我が国初めての
海洋基本法が
制定をされる運びになったということは、大変喜ばしいことだというふうに思っております。
また、先ほど質疑に立たれた
大口議員とは、昨年の四月から、
海洋政策研究財団というところがバックアップをしていただきましたけれ
ども、有識者の皆さんと、また超党派の議員の皆さんと、
海洋基本法をつくろうということで研究会をずっとやってまいりましたので、そういう
意味では、ついにここまで来たか、こういう気がいたします。
私、
海洋国家と考えたときにすぐ思い浮かぶのが、高坂正堯京都大学の教授で、もう亡くなられてから十年ぐらいたちますが、あの方が一九六四年に、「
海洋国家日本の構想」、こういう著作を上梓されました。六四年ですから、私がちょうど二歳のころでありますが、それを私が大学時代に読みまして、非常に感銘を受けて、それ以来、
国際政治に非常に
関心を持つようになったんです。それから四十三年の月日が流れて、ようやく
国際国家
日本としての、まさに国家の意思としてこういう
法律をつくるということになり、また私は国
会議員としてこの
法律の
制定に携わる、かかわることができたというのは、大変感慨深いものがあります。
先ほど来、
委員の皆さんから
お話がありますように、古来、
我が国は、海による文明というものをはぐくんでまいりました。海からのさまざまな
恩恵を受け、また海に守られ、
海洋との深いかかわりの中で、政治、
経済、文化というものを築いて国を
発展させてまいりました。戦中、戦前のほんの一時期、大陸国家と
海洋国家、両方、二兎を追って国家が破滅的な
状況に陥った、そんな不幸な一時期もありましたけれ
ども、高坂教授の言葉どおり、戦後も引き続き
海洋国家として我々は歩みを進めてきたわけです。
ただ、振り返って考えるに、私たちが、戦後特にそうですけれ
ども、みずからが本当に
海洋国家であるということを国家の意思として標榜して、具体的な
施策にまで反映させてきた、こういうことは余りなかったんじゃないだろうか。そういう
意味で、この
海洋基本法の
制定というのは非常に
意義深いというふうに思います。
私は、この研究会に出ていて、一つ非常に印象深い言葉に出会ったんですが、それはこういう言葉なんですね。海に守られた
日本から海を守る
日本へ、こういうスローガンをおっしゃった方がおられました。私は、まさにこれがきょう
制定をされる
海洋基本法の基本精神なんだろうというふうに思うんです。
つまり、先ほど来、
細野議員を初め
お話がありましたように、領海、そこから二百海里のEEZ、そして、二〇〇九年に申請することになりますけれ
ども、大陸棚も延長されるということで、これを全部ひっくるめると五百万平方キロになんなんとする、そういうエリアを我々
日本という国が管轄することになるわけです。このエリアの中の主権的権利を我々はどう守っていくか、こういう国益にかかわる問題意識が必要だというのが一点。
それ以上に私が重要だと思ったのは、この広大な海域における資源や環境、あるいはシーレーンの
安全確保、こういった海域のマネジメント、管理と言っていますけれ
ども、海域のマネジメントに対する
国際的な責務。これは我々のテリトリーだ、そこの主権的権利を主張する、そういう話ではなくて、それをさらに超えた広い国益といいますか、そういうものをきちんと管理していくことが
我が国の
国際的な責務である、こういう自覚が出発点にあって必要だというふうに私は思うんです。それがまさに海の憲法と言われている
国連海洋法条約の基本的な考え方だというふうに思います。
一九九四年の十一月に発効して、
日本も批准をしたわけですけれ
ども、この
国連海洋法条約がどうしてつくられるようになったかというのは、それまでは
海洋の自由というのが原則でした。
海洋というのは基本的には自由に各国が使っていいんだ、こういうことでありましたけれ
ども、そういう中で海域の囲い込みをめぐる各国の競争や対立が非常に激化してまいりました。それから
海洋資源の乱獲あるいは
海洋環境汚染の深刻化、そういう事態を招いてきた。そういう反省に立って、
国際社会の協調による、
海洋の自由ではなくて
海洋の管理という考え方が出てきた。
この中身なんですけれ
ども、これがこれからの本題に入っていくわけですけれ
ども、基本的には通商における航行の自由というものを認める。しかし、その一方で、
沿岸国に対して排他的
経済水域、EEZ及び大陸棚というものを認めた上で、資源、環境などに関する管理の責任と権利、この二つを認めた。こういう
意味で、私は、この
海洋法条約というものを
我が国が国内法において具体化していく作業というのは非常に重要だというふうに思うんです。
そこで、
大臣に一つ概括的な
お尋ねを申し上げたいんです。
私は、この
国連海洋法条約というものには二つの
意義があると。一つは、今申し上げた国益上の
意義です。それからもう一つは、実は理念的な
意義があるんだろうと思うんです。
これはもう釈迦に説法でありますが、
海洋というのは
国際空間でありまして、それをある種取り締まったり監督したりする単一の
国際組織というものはないですね。統治機構というものは、もちろん
世界政府がありませんから、ない。そうなると、二十世紀の前半までずっとそうでしたけれ
ども、力のある者、軍事力を持っている者、シーパワーというものがあるそういう国が結局、最終的には決着をつけてきたという歴史があったわけです。
ところが、この
海洋法条約というものが
制定される過程で、今や百五十三カ国が加盟をしているわけですけれ
ども、ようやく
世界の大半の国がまさに理性的な議論を積み重ねて
海洋の法的秩序というものを
確立した。これは、いわば力による支配からまさに法による支配、こういう流れができたわけです。これはまさに
我が国の憲法の理念に合致していると私は思うわけです。
そういう
意味では、
我が国は、
海洋の平和的あるいは積極的な
開発や利用、
海洋環境の保全、そういうものに対して、持ち前の
経済力あるいは科学技術力というものを生かして
海洋秩序形成のまさにリーダーシップを発揮する、それにふさわしい国だというふうに思うんです。
さっき
細野議員から、国交
大臣が
海洋担当
大臣になるのはいかがなものかという話がありましたが、しかし、初代の
海洋担当
大臣になり得るそういう
大臣ですから、今申し上げた憲法の理念と、これから力の支配から法の支配に変わっていく、
海洋の秩序形成について
我が国がどういうリーダーシップを発揮されていこうとしているのか、一言決意と、また構想を述べていただければありがたいと思います。