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園田(康)
委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、
内閣提出の
雇用対策法及び
地域雇用開発促進法の一部を改正する
法律案に反対、民主党
提出の
雇用基本法案、
若年者の
職業の安定を図るための
特別措置等に関する
法律案に賛成の立場から討論を行います。
我が国では、経済産業の構造改革を経て旧来型の雇用モデルが崩れたことを受け、不安定な雇用がふえ、長時間労働や労働
条件の低下といった問題が働く人たちの生活を直撃しています。しかし、政府案はこうした状況を打破するには甚だ不十分であり、以下の
理由により反対するものであります。
第一に、政府案は、人口減少
社会の到来を見据え、新たな雇用モデルを構築する基盤となっていない点です。
本来、
雇用対策法は、国の雇用のあり方、目指すべき方向性を示し、それに到達するための施策を定めるべきでございます。しかし、政府はその時々の雇用情勢に応じて
雇用対策法を対症療法的に継ぎはぎすることに終始してきました。今回の法改正もその延長線上での手直しにすぎません。
それに対し、民主党の
雇用基本法案は、すべての
労働者が、公正な労働
条件のもと、人としての尊厳を重んじられ、安心して働くことができる環境を整備すること、適切な
職業能力の開発等の
機会を与えられ、その有する能力を有効に発揮し、充実した
職業生活を送ることができるようにするという雇用のあるべき姿を基本理念として明確に定めています。
そして、雇用に関する施策は、長期の安定した雇用を基本として、
労働者が安心して働き、その有する能力を有効に発揮することができるようにするとともに、
労働者が人生の各段階において、その働き方を多様な就労形態の中から主体的に選択することができるようにすることを旨として講ぜられなければならないこと、雇用に関する施策を講ずるに当たっては、
労働者の
職業選択の自由を尊重しなければならず、また、事業主の雇用の管理についての自主性を尊重するよう配慮しなければならないものとすることを定めています。
第二に、政府案は、雇用対策基本計画に関する
規定を削除している点です。
国が雇用政策に責任を持つとの観点から、基本計画を閣議決定し、政府が一丸となって対策に当たるべきです。民主党案では、雇用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、労働政策審議会の意見を聴取した上で雇用基本計画を策定し、閣議決定を求めることとしています。
第三に、政府案にはワークライフバランスの観点が欠如している点です。
労働力人口が不足すると言われる中で、働く意欲のある人が、その能力を十分に発揮し、安心して働き続ける環境を整えることが大きな課題です。そのために、民主党案では、基本的施策として、仕事と育児や介護の両立支援はさることながら、修学、
社会的活動への参加等の
社会生活との適切な調和を保てるよう、労働
条件の改善、就業環境の整備を位置づけています。政府案は、ワークライフバランスの実現を明文化していない点で、
社会の要請にこたえていません。
第四に、政府案では、
募集、
採用に係る
年齢制限を
禁止している
規定の適用範囲が不明確で、
公務員を
適用除外にしている点でございます。
本来、
労働者の
募集、
採用は、その人の能力を十分に吟味するべきであり、
年齢や性別を
限定して、能力のある若者、高齢者や女性たちが労働市場から追い出されることがあってはなりません。民主党案は、そうした
差別を解消し、多くの人々に就業の
機会を保障する観点から、
公務員の
募集、
採用についても
年齢差別を
禁止することとしています。
それに対し、政府案は、
年齢制限禁止の対象を省令で定めることとしており、
適用除外が広くなり、
募集、
採用の
機会がどの程度広がるか明確ではありません。また、
公務員を
年齢制限禁止の
適用除外としています。
公務員の
募集、
採用は
年齢差別が残ったままで、民間の事業主に
義務を課すだけでは、法の実効性が問われ、安倍政権が掲げる再チャレンジに値しないことは明らかです。
第五に、政府案の
若年者就労支援策は、従来の施策を踏襲するだけで、実効性に疑問があります。
政府は、青少年の応募
機会の拡大等を再チャレンジの目玉として掲げていますが、全国二十カ所で展開されてきた
若年者就労支援のためのジョブカフェ事業は、モデル事業終了に伴い、予算が大幅に削減されました。財政状況が厳しい自治体では、事業を縮小せざるを得ないことも
考えられます。政府が本気で
若年者雇用問題に取り組んでいるとは到底言えません。
いわゆる就職氷河期に
社会に出られた方々は、今もなお正規雇用として
採用されないなど、厳しい雇用状況が続いています。こうした状況を受け、民主党案では、十五歳から四十歳未満の対象
若年者等に対して、
若年者等
職業カウンセラーが若年対象者等の適性や希望をよく把握した上で、個別就業支援計画を作成し、段階を踏みながら必要に応じて
職業指導、さらに
職業訓練を受けるなど、安定した職につけるよう、きめ細かな指導を行います。五年を目安とする期間で集中的に
若年者向けの就業支援を行うに当たって、国が財政的な支援を行うこととしています。
第六に、政府案で導入する外国人の雇用状況の情報を法務省に提供する制度に関する問題点です。
政府案では、事業主に特別永住者を除くすべての外国人の就職、離職の都度、その氏名、在留資格の有無及び在留資格があるときはその名称及び在留
期限、国籍等を
厚生労働大臣に
報告する
義務が課され、違反したときは罰則の対象となります。また、本
報告制度によって
厚生労働省が取得した情報は、法務省に提供されることになります。
労働者本人が、使用者が国に
報告される自己情報について
確認する方法が不明確なため、プライバシー権、自己情報コントロール権等の人権侵害のおそれがあります。
以上、申し上げたとおり、従来の政策を踏襲し、問題点の多い政府案よりも、我が国が将来にわたって目指す雇用のあり方に関する明確な方針と施策を講ずる責任を
法律で定める民主党案の方がすぐれているということは明らかでございます。また、
若年者就労支援については、就職氷河期に
社会に出られた世代の方々を対象として集中的に支援を実施することにより、
職業の安定が図られると
考えています。
皆様におかれましては、民主党案の趣旨への御理解、御賛同をお願いし、私の討論といたします。(拍手)