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中原参考人 皆さん、既にお配りしてあります資料をごらんいただきたいと思います。
四月の四日に阿部知子議員から配付されました「F社(製造業・印刷)における
正社員と
パートの
賃金・福利厚生の格差」これに多少加筆いたしまして配付させていただきました。この資料にあります
正社員と
パートの、右側の
パートが私です。そして、
パート社員十三人の現状の表の、下から六番目、製版課、十四年、フルタイムというのが私です。
それでは、私の
意見を述べさせていただきます。
私は、
パート労働法が制定されました一九九三年から、印刷業の
中小企業でフルタイム
パートとして働き、一年契約の更新が十四回となる
パート労働者です。そこで、
パートと
正社員がともに加盟する
労働組合の役員をしております。また、全国一般東京労組という主に中小零細
企業で働く
労働者を組織する
労働組合の役員をしております。
このたび、全国一千二百万人を超える
パート労働者たちの念願であった十四年ぶりの
パート労働法改正に当たり、ここに
意見を述べる
機会を得ましたことに身が引き締まる思いでおります。せっかく得た
機会ですので、
パートの代表として、
パートの仲間たちのみならず、全国千六百万人を超える非正規
労働者の切実な声と、小泉改革により大きく二極化した格差社会
日本の中で、ますます困窮化を深める国民多数の生の叫びを届けなければならないと思っています。
実際、本日の
意見陳述に当たりまして、職場の
パートの仲間たちに聞きましたところ、ほとんどの
パートたちが、新聞報道などで、
パートと
正社員の
差別がなくなる法案が
審議されるらしいよと、期待と不安を半々に持って注目しており、私は、頑張ってこいよと激励をされて送り出されてきました。ただいま、かたずをのんで傍聴している
パートと
正社員の仲間たちもおります。
では、まず、今、国会でなぜ
パート労働法改正の
審議をするのか、その背景について述べてみたいと思います。
我が国は、政治においても国民生活においても、九〇年代半ば以降十数年間に大きく変貌を遂げました。特に、小泉政権の五年余りに及ぶ対米従属外交と改革政治の結果、輸出大
企業を中心とする多国籍
企業だけがひとり繁栄し、国民大多数の生活は窮乏化が進み、我が国社会は二極分解の様相を深めております。
本件
パート労働法改正という形で、政府を初め国会が
対応を迫られております
労働者の三人に一人が非正規で働かざるを得ない非正規
雇用問題も、小泉内閣が当時の経済財政諮問
会議で、財界と一体となり行った
雇用流動化政策の当然の帰結と言えます。
仮にも、政治の
役割が国民の生命、生活と営業を守るというのであるなら、本件
パート労働法改正こそ、この
期間に広がった格差拡大、国民の困窮化の
実態を是正するため、真に
実効性が伴った法案でなければならないということを
最初に述べておきたいと思います。
早速、
パート現場から
パート労働法改正案を見てみたいと思います。
お手元に配付されています資料に、私の
賃金や
労働条件が記載されています。同じ資料に、私と同じ職場で働く
パートの仲間たちの一覧表があります。
パート差別のトップは、何よりも
賃金にあらわれています。私の
賃金の時給は、当初八百二十円から十四年間で百九十円上がり、今は千十円です。勤続が一番長い、二十一年働いた
パートの時給が九百七十五円とわかりましたが、余りの低
賃金に私も驚いています。オペレーター経験者として入り、当初から時給が千五百円と高かったDTP課の
パートは、
正社員より
仕事をこなしながら十五年間働き、たった四十五円しか上がっていません。
資料の
最後に、勤続が一番短い男性
パートが二人います。慶応大学と早稲田大学を卒業した大卒の
パートですが、熟年再就職組と言えます。男性は当初から時給が高いことがわかりますね。
これでも、
労働組合がありまして交渉しているので、何年働いても時給が変わらない
パートたちが多数いる中、手取り十四万円の生活保護と変わらない私の
実態でも恵まれていると言えるのが現状でございます。
次に、今回の
パート労働法改正の
政府案の中で、
均衡処遇が義務化し、
差別が
禁止されるための三つのハードルを、私の職場の現状と照らし合わせて見てみました。
まず、
職務同一短時間
労働者についてです。
私は、
正社員が定年退職した補充として
雇用され、配転も経験しました。配転先の
職務も、退職した
正社員がやっていた
仕事です。現在は、今までの
仕事に加え、部長が担当していた請求伝票記載も任されています。ベテラン
パート社員たちは、生産ラインの中で
正社員たちの間に
配置され、
正社員に
仕事を教え、その
職務も
責任も同一であると言えます。これは
中小企業では当たり前の状態です。しかし、大手では
パートと
正社員の
職務を分けることが可能ですので、このハードルは
パートの
差別化に直結することになるのではないでしょうか。
次に、
期間の
定めのない
労働契約についてです。
資料でおわかりのとおり、一年契約で数年から二十一年間にわたり反復更新され、
期間の
定めのない
労働契約と同視される現状です。
パートたちは、入社面接で長く働くことを期待され、私も、十年以上働いてほしいと言われて入社しました。
労働組合が要求し、一年契約が長年にわたり反復更新されている
実態を会社も認めざるを得ず、六十歳を過ぎた
パートも、
高齢者雇用安定法の対象として再
雇用されております。
このたびの
法改正で、私たちの職場の
パートたちが、
社会通念上
期間の
定めのない
労働者として同視されるという対象とされなければ、一体どこに法の
対象者がいるのでしょうか。有期契約の有無をハードルとすると、ほとんどの
パートが
差別禁止の対象とはならなくなります。この
期間の
定めのない
労働契約をハードルと設けることは、ぜひとも削除する必要があります。
三つ目は、
人材活用の
仕組み、運用が同じについてです。
就業規則にも契約書にも、
職務の
変更となる配転があることが明記されています。
中小企業のため、スキルを見込まれて配転をしても、担当者は一人だけ、比較対象とする
正社員はいないことが多いです。全国で働く
パートの多くが中小零細
企業に働く
実情に
対応した配慮が必要ではないでしょうか。また、会社は、
正社員と同様の
職務の
変更が将来にわたり見込まれるかと聞かれれば、当然、わからないとかノーとか答えるのではないでしょうか。法で規制しなければ、だれが
判断をするのでしょうか。
労使は決して
企業において対等ではありません。まして、
パートの
立場では、雇いどめや契約途中の解雇などの恐怖が常につきまとっております。
機会さえ与えれば会社に対し対等に自己主張できると考える人がいれば、余りにも現実を知らないと言わざるを得ません。
最後に、
労働時間の問題です。
ごらんのとおり、ほとんどの
パートが
正社員より三十分短い
労働時間で契約しています。しかし、必要があれば
正社員と一緒に残業もしています。
そして、私だけが
正社員と全く同じ時間働くフルタイム
パートです。何人か退職したので、今は一人なんです。私のようなフルタイム
パートは、今回も
パート労働法の対象外となっています。
正社員と同じ時間で二十年も働いても、退職金もなく、親が亡くなっても忌引休暇もない理不尽な
パート差別を、十四年ぶりの
法改正は再び放置するのでしょうか。
このように、
政府案の三つのハードルはそれぞれとても高いと言わざるを得ません。多くの
中小企業で働く
パート労働者の
実態は、今検討した私の職場と同じようである以上、圧倒的多数の
パートが
差別禁止の対象とならない法案であると言えます。それどころか、かえって
パート内の
差別を拡大、固定化することにつながるものとなるでしょう。
柳澤大臣は、私たちの職場のこの資料をごらんになって、「非常にいい資料」、「こういう
方々ですと、」「多分この中のかなりの高い率で今度は
差別禁止の対象になられる
パートの
方々が、非常に目の当たりにすることができまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。」と御答弁されていました。大臣の答弁を私たちはどう
理解すればいいのでしょうか。期待していいのでしょうか。諸般の
事情を
社会通念上
判断すると、やはり
差別禁止の対象ではないとお答えになるのでしょうか。
また、格差の拡大を本当に改めようとするならば、その原因はどこにあるのかはっきりさせなければなりません。
冒頭述べましたように、
正社員が削減され、
パート労働者を初め派遣など非正規
労働者が急速に増大し、これほどの格差社会となり困窮化が進んだのは、自然現象ではありません。トヨタなどの多国籍
企業が世界的
競争に勝ち残るために、大規模な海外展開を
支援し、
国内の下請
中小企業を一段と零落させた経済政策とともに、
雇用の多様化という、安上がりで使い勝手のよい低
賃金の非正規
労働者をふやすための
雇用政策が実行されたことに、一番の原因があるのではないでしょうか。その結果、
中小企業は、多国籍
企業からの犠牲の転嫁が強まる中で、それまでにも増して安上がりの
パート労働者の比重をふやさざるを得なかった経過があります。すべては
国際競争力を強めるためと正当化され、政府はそれを
労働分野の規制緩和として促進してきました。
したがって、本当に格差を是正し、
均等待遇を実現しようとするならば、実効ある
パート労働法改正を行い、
雇用の多様化に規制を加えなければならないと思います。そのためにも、
雇用政策の転換と並行して、多国籍
企業を規制し
中小企業を育成する経済政策が欠かせません。これこそが真の景気回復につながるでしょう。
政府案はもちろんですが、
民主党案もその点があいまいではないでしょうか。
最後に、
パート差別は
労働者の身分
差別であり、女性
差別でありますことをぜひとも話しておきたいと思います。
私は、一九九三年、二十年以上働いた
正社員から
パート労働者となったとき、
賃金、待遇の余りの違いに愕然といたしました。当時、手取り十万そこそこで、三人の子供たちを必死で育てるために九四年から九五年の二年間
パートをかけ持ちする複合就労をして働き、年間三千時間以上働いても年収はたったの三百万。夜のファミリーレストランは、かけ持ちで働く女性たちばかりでした。寝る時間を削り、必死で働いたのに、翌年収入オーバーで母子手当を削られたときは泣いても泣き切れませんでした。
パートで働き始めて、素朴に、このような
労働者の身分
差別があっていいのかと心から怒りがわいています。きょうは、
パートたちの声なき声を届けるためにここに来ています。
私が複合就労してから十二年たちました。どうでしょう、皆さん。
パートのみならず、派遣、契約、非常勤、偽装請負。若者たちは、携帯を命綱として、ワンコールワーカーという日雇い
労働者となり、都会をさまよっています。こんな非正規
労働を蔓延させていることは、政治の
責任ではないでしょうか。
対象となる
パートはほんの少ししかいない、
パート労働者の中に分断を持ち込むような
パート労働法改正はどうぞやめてください。人としての尊厳を傷つけながら働き続ける
パートたちのかすかな期待を裏切り、政治に利用することはぜひやめていただきたいと思います。
労働組合にかかわる者として、決意を込めて締めくくりたいと思います。私のつたない
意見陳述を応援してくれた働く仲間たちに呼びかけたいと思います、
雇用形態を超えた
労働者の団結の力で、
労働者の
差別と分断を現場からはね返していきましょう、改革政治により痛めつけられている国民各層と連携して、国民大多数のための政治を取り戻していきましょうと。
以上で私の
意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)