○
福島分科員 大変御苦労さまでございます。
本日は、日本の
医療の将来ビジョンについてということでお尋ねいたしたいと思っております。
現在、日本は急速な人口構造の変化の中にございます。今後、後期高齢者の増加、またそれに伴う認知症の増加が予定されておりますし、また、生活習慣病を中心といたしまして、疾病構造も大きく変化をしております。要介護者数の増加、また
死亡者数の増加も今後の強いトレンドとなっております。
こうした中で、一方では経済自体が低成長経済に
移行している、また財政再建もこれは進めなきゃいけない。非常に財政的な制約の中で、こうした人口構造の大きな変化がもたらす
医療ニーズの増大また変化というものに対して
対応していかなければいけない、これが我々の直面する課題であるというふうに思います。
この数年間、
医療制度改革、
医療保険
制度改革を推し進めてまいりました。それは、こうした変化に
対応ができるように、社会保障
制度としての
医療の持続可能性を確保していくと同時に、その質的な転換を図る、こういったことが主眼であったことは間違いございません。
しかしながら、こうした改革によりまして、一方では
医療費の抑制政策によって
医療の崩壊がもたらされているのではないか、日本の
医療はまさに崩壊の危機にあるんじゃないか、こういう
指摘があることも事実であります。
それは、例えば小児科でありますとか産婦人科でありますとか、そうした科目ごとの
医師不足、そしてまた、地方における
医師不足、こうした問題に顕著にあらわれてきている。また、地方だけではなく、都市部におきましても
病院等の勤務医が不足しつつある、こういう
指摘もあるわけであります。
私
どもは、
医療が危機的
状態にあるんじゃないか、こういう
認識も同時に持ちながら、そしてまた、人口構造の変化や財政的な制約、こういうものに対してどうこたえていくのか、大変難しい問題を解決していかなきゃいけない、こういうところにあるんではないかと思います。
そしてまた、今までの
医療では十分に注意が払われていなかったといいますか、光が当たっていなかった、例えば
患者の権利をいかに強化していくのか、エンパワーメントの問題もございますし、また、質と安全といったものについて今まで以上に配慮していかなきゃいけない、こういった要素についても、日本の今後の
医療ビジョンを
考えるときに、同時に注意しなければいけない大事な点だと思っております。
先般、日本
医師会は、グランドデザイン二〇〇七ということで、三月に、日本の
医療の将来ビジョンについて取りまとめをいたしました。この点について、これは必ずしも
政府の
考えている将来ビジョンと合致するわけではありません。さまざまな違いが
指摘できると言った方がいいわけであります。私は、こうした違いについても客観的に、できるだけ事実に基づいて分析をしていく、こういう議論が国会の場において積み重ねられることが必要ではないかというふうに思っております。
今まで、
医療費の抑制が必要だ、こういう話があったわけであります。これは、ある意味で
医療保険という財政的な制約からの議論ばかりでありまして、果たしてそうしたことによって日本の
医療がどうなっているのか、そしてまた日本の
医療を
一定の水準に支えていくためにはどの
程度の
医療費が必要なのか、そういうことについて、客観的な事実に基づいて、合理的な推計の積み重ねの上に議論をされてきたわけでは必ずしもないんじゃないか、こういう思いがいたしております。
私は、率直に申しまして、日本の
医療費の水準というものは、より高い水準にあってしかるべきだというふうに思います。逆に、日本の
医療費の水準というのは、諸外国から比べると甚だ低い水準にとどめおかれている。
今までは、
医療費をふやすべきだ、こういう議論をいたしますと、非常に政治的な話にしかすぎないんじゃないか、こういうふうに思われていたわけでありますけれ
ども、
医療の崩壊、こういうことが
指摘される中で、なぜ日本の
医療費は低い水準にとどめおかれてきたのか、それについての客観的な分析をするということが必要だと思います。
そしてまた、日本の
医療を望ましい水準に維持していくためには果たしてどれだけの
医療費が必要なのか、こういうことについても、政治的な駆け引きという話ではなくて、客観的な事実に基づいて国民に理解をしていただく、こういうことが私は必要なんじゃないかというふうに思っております。そうした
観点から、きょうはお尋ねをしたいと思います。
お手元に、こういうたぐいの話ですから余り抽象的な話をしてはいけませんので、日医のグランドデザイン二〇〇七に盛り込まれた、さまざまな数値的なグラフでありますとか表を資料としてお配りさせていただきました。
まず初めに、日本の
医療費の水準をどう
考えるか。この問題でございます。
世界的に見て、日本の
医療費の水準はどのような
状態にあるのか、どのような位置づけができるのか。そしてもう一つは、今後、
医療費の変化にどのような推計がなされるべきであるか。こういう二つの論点があると思います。
我が国の
医療費の水準、国際的に比較する場合にいろいろと問題になりますのは、
医療制度自体が国ごとによって異なっているという
指摘があります。一概に
医療費の高低によって
医療の水準を推定することは私も適切ではないというふうに思いますけれ
ども、一般的に、
医療経済的な研究で共通に確認されていることは、経済成長によって
医療費が増加する、これが一番
基本的なファクターだ。そして、その国の
医療費の水準というのは、その国の経済規模、こういうものに一番相関している、こういう話があるというふうに思います。
これは、言ってみれば、その社会がどの
程度医療に資源を配分することができるのか、それは経済の規模に直結する、こういう話なんだろうと私は想像いたしておりますけれ
ども、こういうことが言われている。
ただ、それだけではありませんで、疾病の発生
状況でありますとか、そしてまた疾病構造、こういうものが
医療費に影響を与えるということも容易に想像できるわけであります。衛生環境でありますとか、栄養環境でありますとか、自然環境、また人口構造、疾病予防の
取り組み、こういう複数の要素が同時にまた
医療費に影響を与えるだろうというふうに私は思います。
しかし、先進諸国において、衛生環境でありますとか栄養環境、自然環境、こういった点については、恐らくもう大きな差異がないんではないかと私は個人的に思っておりますけれ
ども、そのように
考えれば、国際的な枠組みの中で
医療費を比較する、特に先進国の中で
医療費を比較するというのは、そこに差異があった場合に、
医療制度そのものの何か課題がそこから抽出されるという意味で大事ではないかというふうに思っております。
まず一番目の、これは日本の
医療費の対GDP比に占める比率を示したものでございますが、これは、左側の表ですと九五年、これはOECDの統計でありますけれ
ども、二十九カ国中二十三番目が日本の水準でございます。六・八%。右側が、これは二〇〇三年、八年たってからのものでございますが、高齢化もこの間進行いたしましたけれ
ども、それでも日本は十八位にとどまっている。こうした低い水準にあるということが言える。平均よりも低いということが具体的な、客観的な事実だと思います。
また、右の2の方へ行っていただきますと、一人当たりGDPと一人当たり総
医療費支出、この相関をとった資料でございます。
真ん中に直線が引いてありますけれ
ども、その直線を引いた意義というのは、一人当たりGDPが平均を超えている国において、一人当たりの
医療費が平均以下の国というのは一体どのくらいかということで、日本とそれからイギリス、そしてまたフィンランド、イタリア、この四カ国にとどまりますよ、こういう
指摘なんであります。
また、三番目のグラフを見ていただきますと、一人当たりGDPと一床当たりの総
医療費の支出でございますけれ
ども、日本は病床数が非常に過剰だ、こういうふうに
指摘されております。そしてまた、そのことが
医療費の高い水準に直結するとも言われているわけですが、一床当たりの総
医療費の支出を見ると十五・八万ドル、これは、一人当たりGDPが二万米ドル未満のグループと同等の水準にとどまっている。非常に低いところにあるというのは一目瞭然だというふうに思います。
こうした数値を見ますと、日本の
医療費というのは諸外国と比べると非常に低い水準にある、こういうことを
指摘する、そしてまた、そのように言明することは正しいのではないかと私は思いますけれ
ども、
政府としては、これをどのように受けとめておられますでしょうか。