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穂坂公述人 御紹介いただきました
穂坂邦夫です。
限られた時間でありますので、五点にわたって、
教育三法に対する私ども
現場の実態、こういうことから申し上げたいというふうに思っております。
まず一点目でありますが、公立校の優位性というのは、私も市長をやっておりましたときに痛切に感じました。異質な集団の集まりのために、悪いところもたくさんありますが、生きる力を大変一生懸命はぐくむことができる、こんなふうに思っております。
さらに、私学に比較し、公立の場合には
地域というバックボーンがある、このことも大きな優位性ではないか、こんなふうに
考えております。
三点目でありますが、異質なゆえに、御承知のように、連続するいじめ、不登校、学級崩壊、そういうものが起きる。ですから、ある
意味では、私学以上に公立は
教育現場の自主性や創造性、柔軟性が求められる。
機械部品をつくるのではなくて、まさに人間をつくる、こういうことで、公立校の特性、こういうものを踏まえた上で申し上げたわけであります。
二点目でありますが、
義務教育における
現場の
役割と現状であります。
まず一点は、私どもが
義務教育に求める、こうあってほしいなということを申し上げたいと思います。
まず一点でありますが、国と都道府県と市町村の明確な
役割分担、これに基づいて職責を遂行したい、そんなふうに思っておりました。当然、分権とのかかわりもありますが、分権というのは、何でもやっていいということではないと思うんです。国は国の
役割をしっかりやっていただく、そして
地方は
地方で自己
責任に基づいてしっかりやる、こういうことだというふうに思っております。
その関連からいえば、国の関与ができれば、権能に基づいたチェック機能、事後検証といいますか、そういうものを厳しくやってもいいのではないか、私はこんなふうに思っておりました。
さらに、
義務教育の場合には、御承知のように、公
教育を支えるのは先ほど申し上げましたように
地域社会との連携でもありますので、特にまた
地方行政というのは、
教育行政と他の行政、
地方行政がまさに混然一体化しておりまして、決してなかなか分かれるものではないということであります。
二番目でありますが、
義務教育における
現場の実態について若干申し上げたいというふうに思っております。さまざまなねじれ現象ができているということ、さらに、住民に理解できない、そういう複雑な
仕組みであるということを指摘申し上げたいと思います。
まず一点でありますが、
指導助言の実態であります。
教育にかかわる方々というのは非常にまじめな方々でありまして、
教育長なんかも非常に、市町村でいえば都道府県、都道府県でいえば文科省、しっかり言われたことをやろうという
意識が余りにも強い、そういうことで、
指導助言の実態というのは上意下達、そういうものが慣習化している、私はこんなふうに思っております。簡単に言えば、命令と言ってもいいかもしれません。
さらに、
教育委員会の独立性に対する
首長の関与でありますが、これは実態的には予算権と
教育委員の指名権を持っておりますので、実体的支配をしている。私も市長としてそんなふうに実感しました。全国で初めて二十五人学級を、いい悪いは別でありますが、実行したわけでありますが、本来ですと
教育委員会がやるべきだと思っておりましたが、なかなか難しい。どうしても
首長の実態的な支配、そういうものが存在をしているということも指摘をしておきたいと思います。
さらに、御承知のように、
中立性を担保するために
教育委員会は
合議制になっておりますので、
責任者は一体だれだと言われて、住民から質問されたときに、だれもいない。だれだと言われたら、
教育委員会という機関だというふうにいつも答えておりました。
教育委員長さんは座長でありますし、
教育長は
事務局長でありますし、予算権と指名権を持っている市長は、まさに独立をしているために、これは何ら
関係ない、こういう
制度になっておりますので、この辺も実態からは乖離しているのではないか、こんなふうに思っております。
四番目でありますが、
教育委員会の
制度のうち大きなものとして、県費負担
教職員
制度があります。これは良質な
教員の
確保と広域人事の有意性を
目的としておりますが、あくまでもそれは
一つの補完
制度でありまして、本来原則的には、
実施主体が
教員を採用し、そして任命権を持つことが当たり前でありますが、この原則主義が補完
制度と逆転をしているという実態もあります。
特に
教員資質の
確保につきましては、これが大きな障害になっていると言っても言い過ぎではない、こう思っております
教員の一括採用があります。私は都道府県の県議会
議員、県議
会議長もやりましたけれども、都道府県が一括採用して派遣をするわけでありますから、言ってみれば、市町村は上級官庁からの派遣を受ける、こういうことになっております。学力主義じゃなくて、もっと
教員の
資質というものを
考えて採用したらどうだ、こういうことも県会
議員のときによく言ったわけでありますが、一括採用で、みずからがやる仕事ではありませんので、なかなか難しい。疑われるのが嫌なものだから、どうしても学力偏重で採用してしまう。
さらに、
研修でありますが、財源の乏しい市町村から
考えますと、あすどこかへ行っちゃうかわからない
教員に、意義はわかっていましても、なかなか
教員研修ができない。ことし
教員研修が終わったら来年はどこかへ行ってしまう、そういうような不合理もございます。
さらに、内申権と具申権というのが
法律上明記されておりますが、これらについては、実態的には、御承知のように、どこかの悪い
学校に、まあ比較的程度の低いと言ったら失礼でありますが、そういう、どうもよくないなという
先生を一カ所に集めるわけにいきませんから、例えば志木市が一人この
先生をどこかへ出してほしいというと同じような
先生をいただく、そういうようなトレード方式になっております。これはやむを得ない現実です。ですから、そういうことも、玉突き人事と私ども呼んでおりましたが、この辺もやはり
考える必要があるのではないか、こういうふうに思っております。
三番目でありますが、このことによってさまざまなねじれ現象が出ております。やはり、一般的なねじれ現象というのは、私は避けるべきだというふうに思っております。
一つは、
教育委員会がこれらのために受動的機能に特化しているということ。
首長の
責任回避、隠れた支配があること。
教育委員がそのために、
地域である一定の力のある人たちを、
教育よりもむしろほかの面で指名をしてもらうということがどうしてもあります。さらに、
教育行政には
責任者がいないということを先ほど申し上げましたが、どうしても前例主義に陥りやすい、このこともあります。
受動的機能の現象としましては、御承知のように、自殺ゼロ報告がありましたが、どうしてもマニュアル化をしてしまう。間違いないようにがどんどんどんどん高じて、マニュアル化で
一つの
指導、伝達をする、あるいは報告するという欠点があります。さらに、
指導官庁にどうしても
教育委員会は目が向きますから、
現場の住民の皆さんに対する視点がどうしても
低下をしてしまう、こういうことがあります。
さらに、
教員の
資質の
低下もどうしても指摘せざるを得ない、こう思っております。
学校の管理職もそうでありますが、この管理職は、御承知のように、これも市町村が登用するのではなくて、都道府県がすべて登用いたします。
現場が関与しません。だから、そういう形も、管理職の
低下になると思いますし、管理職も
教員も、言ってみれば派遣職員ですから、どちらも遠慮しがちでもあります。そういう
意味では、
学校管理機能の弱体化、一体性の
低下も、これも大きな問題でもあります。特に問題となりますのは、
地域住民と
学校との乖離が見られる、このことも大きな問題点の
一つでもあります。
四番目でありますが、新たな
法律案がそれぞれ出ておりますが、でき得れば、今後、現行
制度の骨格、これの骨格がどう機能しているのか、どんなふうに実態と理想、
制度、そのものが動いているのか、こういうことを見ていただければありがたい、こう思っております。
特に、理想論、私はいつも、神様たちの
運営だったらこのやり方でもいいなと思っておりましたが、やはり
現場の視点からの再検証をもう一回してほしい。さらに、現行
制度のうまくいっているところというのはありますね。これは人の力だといいますが、やはり普遍的な形で全国の
義務教育の
制度が有効に機能しなくちゃいけない、こういう視点からも再検証をお願いできれば、こういうふうに思っております。
最後になりますけれども、新たな
制度に
現場からの提案でありますが、
一つは、国庫補助金はぜひ堅持をしてもらいたい。さらに、事後
評価システム。今度は学力テストがありましたが、私は決して反対ではありません。そういう事後検証をしっかりやってもらって、ペナルティーもつけてもいい、そのぐらいの強さでやはり事後
評価システムを
確立すべきではないか、こう思っております。そのかわりに、
実施主体における自己決定と自己
責任、これらをやはり付与していただければというふうに思っております。もちろん、さっき冒頭で申し上げたことも事実でありますので、よろしくお願いいたします。
私は、新たな
教育委員会制度、今の三人とか五人ではなくて、
中教審のように、
地方教育審議会、十人から二十人の
設置をし、そして、現行の
教育委員会を抜本的に改めて、よりよい、新たな
教育委員会制度をつくってほしい、こういうことをずっとお願いしてまいりました。当然その
審議会は、国のそれぞれ決められたものに対してはしっかり守っていく、このことも大事な仕事の
一つでもあります。
さらに、
首長が隠れた支配をする、隠れた関与があるというのはよくないんですね。やはり、もっともっと明らかにして、そして
首長の
責任も問う。当然予算を持っちゃっているわけですから、その辺についても、ぜひ
首長の関与の
明確化もお願いをできれば。ただし、私は、例えば
首長が
現場の指揮権を持つというのは反対であります。これらについては、それをきちっと整理する、そういう法
制度も必要なのではないか。
さらに、
教育長は実態的に
責任者です。しかし、
最後に問われると
事務局長になってしまいますので、この辺もやはり、
教育行政の直接の
現場の
責任者、これは
教育長が任命されてもいいのではないか。しかし、専横に陥ると困りますので、先ほど言った
教育審議会に
首長や
教育長の監視機能や牽制機能を与える。もちろん議会というのは最高の議決機能を持っておりますので、これは別に競合しない、こう思っております。
特に、
最後になりますが、都道府県における
義務教育、私は、ワンクッション入れる必要はない、しかし、小さいところはなかなか無理ですから、それは補完機能をしっかりしていただければいいのではないか。都道府県というのは、私も長い間おりましたけれども、補完機能をする広域
地方団体、こんなふうに
意識しておりますので、この辺も踏まえた上で、それぞれ御理解をいただければありがたい。
大変ありがとうございました。(
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