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参考人(福井俊彦君)
お答えを申し上げます。
そもそも金利とは何かと、大変私にとりましても難しい御
質問でございます。哲学的には大変深遠な問題を含んでいるというふうに思いますけれども、恐らくお尋ねの趣旨は、我々が直面しております市場
経済の中での
現実的な問題としての金利は何か、ゼロ金利は何か、その問題は何かと、こういうふうなお尋ねであろうかというふうに思って
お答えをさせていただきます。
市場
経済の中におきましては、物に対しては値段がある、物価がある、お金に対してはその値段として金利があると、こういうふうに私ども
現実的に
理解しておりまして、物に対する物価はやっぱり適正な価格水準であり、それが安定しているということであって初めて必要な物が必要とする人の手に渡る。しかし、物を手に入れようと思えばお金が必要ですが、お金は売買ではなくて貸借取引によって流れます。その貸借取引に使われるお金の値段が金利と。したがって、金利水準も、
委員がおっしゃいますとおり、やはり常識的で、言わば中立的な金利であり、先々の見通しについても人々が比較的安定した期待を持っているということであって初めてお金も円滑に流れる。物とお金が両方円滑に流れることによって効率的な資源、資金の配分が行われ、
経済の成長も順調になると、こういうメカニズムになっていると思います。
物価水準と金利水準とはまた非常に密接な関係がありますので、物価の安定を図るために金利
政策を私どもの重要な仕事として負託をしていただいていると、こういうふうに
理解をいたしております。
ところで、ゼロ金利でございますけれども、普通の状態は企業がどんどん前向きの行動ができるということを前提に物価、金利を考えておりますけれども、過去十年ぐらいまでの間は、企業はいわゆるリストラの
負担が大きくて前向きの行動が取れなかったと。そういう
状況での金利というのは、やはり常識的に、あるいは通常考えられる金利の姿ではあり得ない
状況となってしまいました。
したがいまして、
委員は、中立的な金利から考えると異常な、低い水準があるだろうと、それも下限があるだろうとおっしゃいました。恐らく、その下限すら割り込んだ低い金利がゼロ金利であると。
日本銀行は、金利のイールドカーブの一番期間の短い、まあ宵越しの金といいますか、オーバーナイトの、市場のオーバーナイトの金利をゼロというふうにセットいたしました。過去もう実質七年ぐらいにわたってやってきたことでございます。
現実の金利は期間によってプラスの金利が付いていましたけれども、これもすべての金利が常識では考えられない低い水準であると。これは、企業が前向きの行動を取れないときに一刻も早くリストラを促進すると。過剰設備、過剰借入れ、あるいは過剰雇用の調整を一刻も早く進めて前向きの行動が取れるようにするために金融費用を最低限に抑えるという
政策を取らせていただいたためでございます。
最近では企業がようやく前向きの行動を取れるようになり、
経済全体もかなり正常なリズム感を持って成長を続けるというふうになってまいりましたので、量的緩和をやめ、ゼロ金利からも脱却をさせていただいた、金融正常化の第一歩をようやく踏み出させていただいたという
状況でございます。
ゼロ金利にはおっしゃるとおり副作用ございました。何と申しましても、家計の利子収入が著しく減少した、家計に
負担が掛かりました。それから、年金などの機関投資家の
運用難と、年金がパンクしそうだというふうな話、しょっちゅうございます。これは副作用でございます。そのほかに、私ども金融
政策の舞台としております短期金融市場の取引が非常に減少すると、市場機能が著しく後退するというふうなデメリットがありましたし、そのほか世の中もろもろのやっぱり、モラルハザードと
委員がおっしゃいましたけれども、やっぱりあっただろうというふうに思っています。
今、その
状況からようやく抜け出しました。これから先、
経済、物価の水準に見合った望ましい金利水準を目指して、しかし、ようやく困難を脱した
経済でございますので、我々としてはこの
経済の成長ぶりというものをつぶさに点検しながら、あくまで慎重にゆっくりと調整を進めさせていただきたいと、こういうふうに考えております。