○魚住裕一郎君 私は、公明党、
自由民主党を代表して、ただいま議題となりました
貸金業法等の
改正案に関し、
総理並びに
関係大臣に
質問いたします。
本来、金融の
在り方、特に庶民向け金融は、その国の経済、
社会、文化の
在り方に深く根差したものであります。イスラム教圏においては、
金利の概念が否定されながら、その教義にかなったイスラム金融が発達してきております。ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏のグラミン
銀行などに代表されるマイクロクレジットは、途上国の貧困層向けの無
担保融資として、生活の向上、発展に大きな役割を果たしております。
我が国について振り返りますと、かつて庶民金融の代表といえば質屋でありました。質ぐさを
担保に短期、少額の融資を行い、やむを得ない場合には質流れをさせるというこの
制度は、消費者に対する信用供与
制度が未発達な中で、消費者にとって安全かつ簡便な借入手段として
社会に定着しておりました。かえって、信用借りできる
資金需要者は、上場
企業や中央官庁に勤めている者など、一部のエリートに限られていたのであります。
しかし、今や、消費者向けの信用供与は大きく伸び、そして、その主役は
貸金業者や信販
業者に取って代わり、
貸金業者による消費者向けの融資は、無
担保融資だけでも十七兆
余りに上る
状況に至っております。昨今の消費者信用の増大、
消費者金融業の隆盛がいかなる
社会的、文化的な背景を持っているのか研究に値するものと考えますが、まず、今回の
法改正の
前提として、我が国においてここまで
多重債務問題が深刻化してしまった
社会的、文化的な背景をどのように考えておられるのか、
総理の御
所見を伺いたいと思います。
さて、今回の
改正は、二百数十万と言われる
多重債務者の問題に対応するため、
貸金業規制や
金利規制の
在り方を見直し、と同時に、
貸金業制度の抜本的改革をなすものであり、かつて弁護士業務に従事していたころクレ・サラ問題に対処してきた私としても高く評価するものであります。また、議論の経過の中での特例
金利の
設定見送りや
利息制限法の元本区分の変更見送りなど、敬意を表するものであります。
そこで、まず
金利規制の見直しについてお伺いいたします。
今回の
改正では、
出資法上の
上限金利を二〇%に引き下げ、
利息制限法違反の
金利による貸出しに対し
罰則あるいは行政処分を科することで、これまで容認されてきた高
金利貸
付けを是正することとしております。いわゆる
グレーゾーン金利による貸出しについては、本年一月の最高裁判決により、実際上、みなし
弁済規定の効力は失われることとなりました。また、
貸金業界においても、大手主要
業者を中心に貸付
金利を引き下げる動きが見られるようになってきております。
金利引下げは、
多重債務者や
借り手の負担軽減に直結するものでありますが、立法
措置に先立つこれらの動きを踏まえ、今回の
金利規制の見直しを行う
趣旨をまず
総理にお伺いいたします。
あわせて、今回の
改正で保証料の問題や
金利の概念についても見直しが行われております。
出資法と
利息制限法で範囲の異なるこれまでの
金利概念を整理し、また債務者にとって
金利負担と同様の負担となる保証料負担についても
規制を行うこととしております。これらの
措置が
借り手の負担軽減にどのようにつながるのか、その見直しの効果について
金融担当大臣の
所見をお伺いいたします。
次に、新たに導入される
指定信用情報機関制度についてお伺いいたします。
過剰貸付
規制、貸付
総量規制の導入は、今後の
多重債務問題
解決のための切り札であります。その
規制の裏
付けとなる
指定信用情報機関による
信用情報の信頼性の確保、向上が極めて重要なものとなってまいります。
これまでの
信用情報機関を見ると、
情報の更新が月一回に限られているところがほとんどで、リアルタイム更新を行っている
機関は限られているなど、
現状の体制を
前提にしたままではその信頼性を疑わざるを得ません。過剰貸付
規制に対する
実効性確保のために、
信用情報機関に対し具体的にどのような
規制を課す必要があると考えておられるのか、
金融担当大臣の
見解を伺います。
また、これらの
措置を講ずるに当たっては、十分な
準備期間が必要であろうと考えております。過剰貸付
規制については、できるだけ早い導入が望まれるものの、体制
整備が不十分なまま拙速な導入は避けなければならないと考えますが、体制
整備のための
準備期間の確保について担当大臣の
所見をお伺いいたします。
あわせて、
個人信用情報の目的外使用や
情報漏えいの
防止等、
個人信用情報の管理体制に今まで以上に万全を期す必要が出てまいります。今回の
改正で、
指定信用情報機関等における
個人信用情報の取扱いについてどのように対処される
おつもりなのか、
金融担当大臣にお伺いをいたします。
次に、
カウンセリング体制の
整備についてお伺いいたします。
多重債務問題の解消のためには、
金利規制、貸付
規制に加え、
借り手側の意識向上が極めて重要であり、
カウンセリングの重要性が
指摘されております。今回の
改正においても、
貸金業者に対して
カウンセリング機関を紹介する努力義務が課せられるなど、
所要の
措置が講じられております。
このような
カウンセリング制度の
整備に当たっては、周知を図るとともに、アクセスしやすく、
状況に応じて適切な助言を受けられることが肝要だと考えております。そのためには、
貸金業者からのアクセスを確保するだけでなく、信販
業者やあるいは警察、さらには日本司法支援センターといったように複線化したアクセスルートを確保し、各
機関が連携して対処していく必要があると考えますが、このようなアクセスルートの確保や
関係機関の連携の
在り方についてどのように考えておられるか、
金融担当大臣のお考えをお伺いいたします。
次に、今回の
改正が
多重債務問題
解決、
借り手保護に資するものであることは論をまちませんが、その一方で、信用収縮により、
資金を真に必要としている
利用者が
与信を受けられなくなることへの懸念も
指摘されております。そうした懸念にこたえるためにも、
個人や
中小企業の切迫した
資金需要に対応できるような金融・信用供与システムを、
貸金業界のみならず、
銀行を始めとする金融
機関や信販業界なども含めた我が国の金融システム全体を見渡して
整備することが必要であると考えております。
新しい我が国の金融の
在り方の中で、健全な
貸金業者がその一翼を担うというビジョンを
国民に提示すべきだと考えますが、
総理の御
所見をお伺いいたします。
また、現在でも
個人向けの生活福祉
資金貸付
制度や
中小企業向けのセーフティーネット保証・貸付
制度などが設けられておりますが、
政策金融
機関改革との整合性なども考慮しつつ、健全なニーズ、
資金需要に適切に対応するセーフティーネットの充実
強化が必要だと考えております。
一方、民間、公的
機関を問わず、融資に係る
担保主義や
個人保証主義からの脱却が求められているところでありますが、民間金融
機関、公的金融
機関のセーフティーネットの
在り方と、
担保・保証主義からの脱却について、
金融担当大臣及び財務大臣の御
所見をお伺いをいたします。
以上、今回の
法案の重要課題について確認してまいりましたが、
多重債務問題の
解決のためには、このほかにも、
やみ金融の厳正な取締りや金融経済教育の充実等、対応すべき課題は山積しております。
政府は、今回の
改正を踏まえ、
多重債務者対策本部を設置し、
関係省庁相互の連絡
強化により総合的かつ効果的な
多重債務問題
解決策を講ずることとしておりますが、この
対策本部における今後の取組が非常に重要であります。二百数十万とも言われる
多重債務者の救済に向け、具体的にどのように実効ある
対策を立てていくのか、
総理の決意をお伺いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕