○有村治子君 自由民主党の有村治子です。
昨日の片山幹事長に続き、自由民主党を代表し、
総理並びに
関係大臣に質問をさせていただきます。
九月六日、秋篠宮家に親王殿下が御誕生になりました。連綿と受け継がれる命と国柄の中で、
国民とともに歩まれる御皇室の幾久しいいやさかと、
悠仁様の健やかな御成長を心よりお祈り申し上げております。
世界でトップレベルの
経済的な豊かさを手にし、生物としての寿命をどの国よりも長く全うできる長寿国となった
日本が今後進むべき方向性を模索する中で、このたび、安倍新
総理が「美しい国、
日本」として目指すべき国家理念を具体的に語り始められたことは、意義深い第一歩だと存じます。
初当選をさせていただいてからの五年間、私は、しっかりとした国家観と地に足の付いた
生活観を併せ持って
課題解決を図ることを志し、命の重み、家族のきずな、国家の尊厳という掛け替えのない価値を守ることを念頭に活動してまいりました。
そこで、今日は、
総理の掲げられた美しい国づくり内閣で、このような根本的な価値がどのように守られ、具体的
施策として実現していくのか、また、
総理が私
たち国民にどんな行動を期待されるのか、
少子化対策、
教育問題、
公共事業、領土に関する外交問題についてお伺いいたします。
まず、世論の八割が
懸念を示している少子化について伺います。
近年、政府は、
少子化対策を相次いで策定され、三年前からは少子化担当特命
大臣職まで設置して活動されてきたことは理解しております。しかしながら、現在の
社会保障費
予算を見ますと、圧倒的な割合で
高齢者に
予算が配分されており、次代を担う
子供たちに使われている
予算は極めて低い水準にとどまっています。
内閣府の少子化
社会白書によると、
平成十五年度の
社会保障費における
高齢者予算は全体の七〇%を超えているのに対し、育児や
少子化対策としての家族
支援は
社会保障費全体のたった四%にすぎません。
高齢者関係の給付金と比較すると、約十九分の一というすさまじく低い水準にあります。この極端に偏った
予算配分が是正されない限り、
少子化対策の
政策提言でどれだけ美しい言葉を並べてみても、目に見える
効果は極めて限定的です。
総理並びに少子化担当
大臣は、
社会保障費に占める
高齢者・
少子化対策のいびつなほどの
予算配分をどう
認識していらっしゃいますか。また、この
現状を直視し、その偏向を是正するという
社会保障費の本丸に手を付けていただく覚悟がおありかどうか、お答えください。
そして、
予算の配分を改善していただけるとすれば、
高齢者対策と
少子化対策の
予算配分は何対何くらいの割合がふさわしいとお
考えなのか、具体的にお示しいただきたいと存じます。
高齢者と
子供に関する
社会福祉の圧倒的な
格差の是正に取り組み、バランスの取れた
世代間互助の精神と
制度を打ち立てていくことこそ、国家の根幹にかかわる
政治課題です。
これと並んで、マタニティマークの普及、促進を図っていただきたいと思います。
私自身も三年前に出産し母親となりました。妊娠して最もつらいのは、大きなおなかになった安定期ではなく、むしろおなかの膨らみがまだ見えない、つわりが続く妊娠初期なのだと身をもって学びました。通勤電車などでは、本当は助けてほしい、でも妊娠していることを大げさにはしたくないというジレンマを多くの女性が感じています。数々の女性とひざを交えての話合いを重ねる中で、マタニティマークを
制定すること、そしてそのマークが
社会的に認知され、市民権を得ることが重要だと痛感し、活動してまいりました。
そして、今年三月、母子愛育会の皆さんによる作品が、妊婦の声を代弁する
全国統一のマタニティマークとして決定したことを本当にうれしく思っています。厚生労働省も最後までよく頑張ってくれました。一人でも多くの
国民の
皆様にこのマークを知っていただきたく、現在私は妊娠しておりませんが、今日はあえて胸にマタニティマークを付けております。
この八月からは、東京メトロ、JR、東急電鉄などの鉄道会社十六社が協力し合って、首都圏の各駅において妊婦さんに無料でこのマークを配布してくださるようになりました。官民が連携して困難を乗り越え、やっと実現したこの
取組を誇りに思うとともに、私
たち一人一人が持っている善意が広がっていることに
希望を抱きます。
このマタニティマークは、現在、厚生労働省のホームページからダウンロードし、だれもが自由に活用できるようになっていますが、まだまだ
国民全般への認知度は高まっていません。命をはぐくむことを温かく見守り応援する
日本社会を実現するためのシンボルとして、例えば母子手帳の交付の際にマタニティマークを添える、おなかの大きな妊婦さんのイラストになっている電車の優先席の表示をマタニティマークに変え、おなかは出ていないけれども一番つらくて流産のリスクも高い妊娠初期の女性も心置きなく優先席に座ることができるようにするなど、命をはぐくもうとする女性が温かく見守られていることが実感できるような啓発を実施していただきたいと思います。
厚生労働大臣、
いかがでしょうか。
最近、本当に不名誉なことですが、出産難民という先進国にあるまじき言葉が残念ながら定着しつつあります。これは離島やへき地だけの問題ではなく、出産数が毎年六百以上あった市民
病院でさえ、
医師の
不足によって産婦人科の閉鎖を余儀なくされた埼玉県草加市の例もあります。町の産婦人科が閉鎖され、産気付いても、一時間以上掛けて隣町へ車を走らせ、やむを得ずタクシーの中で出産を覚悟したという報道もなされています。
総理は、所信
演説の中で産婦人科等の
医師不足対策の
推進に言及され、厚生労働省と文部科学省が連携する動きが出始めましたが、産婦人科の拠点集約化を唱えるだけでは、毎年誕生する百万人以上の掛け替えのない小さな命の安全と、その
地域、家族の安心を守り切ることはできません。小手先の対処法や、目に見える
効果が十年後というのでは困ります。
総理には、いつまでにどのような
施策を実施することによって出産難民を解決するお
考えなのか、説得力のある具体策を
是非お示しください。
次に、バリアフリーに関する
公共事業について伺います。
総理が掲げられる美しい国をつくっていくためには、
国民それぞれが抱く夢を実現しようとする志やハートに火を付けてその先頭に立っていただくと同時に、
国民各々が
社会に参画し、持っている力を最大限発揮できる土壌や基盤を整えることが重要になってまいります。
選挙区である
全国で出張を続け、車いすや
介護が必要な
方々とともに移動する経験の中で痛感をしたことがあります。町中で意味のない段差が
いかに多いことか。健常者にとってはさほど気にならないたった数センチの段差であっても、その地点で立ち往生し、文字どおり行く手を阻まれる方が今この瞬間も
全国にいらっしゃいます。この数センチの段差は、実は車いすやつえを使用する方、足腰の弱った
方々のみならず自転車に乗る健常者にも危険をはらんでおり、ベビーカーを押す
子育て世代、車輪の付いたキャリーで荷物を運ぶ人々も難儀しています。
どの国よりも速いスピードで刻一刻と忍び寄っている少子高齢
社会において、
社会に参画する意思があるにもかかわらず、段差に不便を感じ続けることが苦痛になり家から出なくなる層が多くなっていくことを強く案じます。
そこで提案です。
安倍政権では、
全国の不要な段差を解消していただき、
国民一人一人が持てる力を存分に発揮する、そういう志と気概が生かされる
日本社会なんだという参画型の
地域のきずなを
支援する政府の意思と哲学をお示しいただきたいと存じます。
総理が信念を持って
国民に呼び掛けられた美しい国の美しい
町づくりが実践され、
安倍政権だからこそ無駄な段差、凸凹がない美しい町並みが再生されたと後世の
歴史の評価に堪え得る
政策努力を
是非御検討いただきたく、
全国段差解消プロジェクトに着手していただく意思がおありになるかどうか、お
考えを伺います。
総理は、
教育基本法の成立を今国会最大の
課題と明言されました。
教育は
国民性をつくる礎、各人が主体的に自らの人生を切り開いていくための力をはぐくむ人格形成の土台です。国際
社会の中でも堂々と渡り合うことのできるたくましい
子供たちをはぐくむため、
教育基本法改正を含む
教育再生は一刻の猶予も許さない喫緊の
政治課題です。
文部科学省では、入学式、卒業式での国旗掲揚率、国歌斉唱率が問われ、これが例年のように
政治問題化していますが、率直なところ、私はこのことをいつも残念に思っています。右だ左だのイデオロギー論争において国旗・国歌が論じられると、どんな立場を取るにせよ、警戒感が広がり、緊張が走ります。
教育現場における国旗掲揚率という現象面を追求するだけが本来の目標ではないはずです。
トリノ・オリンピックで金メダリストとなった荒川静香さんが世界一優雅で強いアスリートとしての称賛を受け、思わず日の丸を身にまとって銀盤を美しく舞った姿や、イチロー、松井選手など世界で活躍する
日本人の粘り強さに、私
たち国民の多くは同じ
日本人として率直な喜びと感動を覚えます。
学校教育においても、国旗・国歌が
政治思想の対立の中で論争の具にされるのではなく、
日本の国柄を自然な
環境の中で慈しみ、誇りが持てるよう、
子供たちが心を揺り動かされるような感動や達成感を味わう場面において、気が付けばいつもそこには国旗がたなびいていたというような機会を
いかにたくさん設けてあげられるかこそ、私
たち大人が日々の
生活の中で努めて
いかなければならない
国民の
教育であり、その
教育をつかさどる文部科学省、政府の重要な姿勢だと
認識いたします。
戦後体制からの脱却を掲げられた
安倍総理、緑の自然に培われた風土で国柄を慈しみ、誇りに思う
教育を実際にはどのような
教育施策によって実践されようとお
考えなのか、
総理の御所見を伺います。
格差を
固定化しないという観点からも、何人であれ平等のアクセスを持つ義務
教育の教科書無償
制度について伺います。
今年度も三百九十五億円の国家
予算が費やされ、この春には約一千百万人の
児童生徒が新しい教科書を手にしました。例えば、中
学校一年生一人当たり約七千円の教科書代が掛かっています。しかし、
学校や
地域、家庭
教育において、この教科書無償
制度に込められた思いが十分に語られてこなかったことに私は
危機感を覚えています。この
指摘を受け、共感してくださった教科書会社各社が自発的な意思で、この教科書は、これからの
日本を担う皆さんへの期待を込め、
国民の税金によって無償で支給されています、大切に使いましょうという文言を、小
学校では来年度後半の教科書から、また中
学校教科書は
平成二十年度から、義務
教育における全教科書において掲載してくださるようになったことは画期的なことだと喜んでおります。
終戦直後、焦土と化した国土において、食べるものにも窮した
時代から、
日本の将来を切り開く
教育にこそ投資をと、正に米百俵の精神で始まった教科書無償
制度。
日本人が生きる知恵としてつないできた
世代間互助の精神が息づく教科書無償制の堅持とその意義の周知について、文部科学
大臣の御所見を伺います。
総理は、所信
演説の中で、主張する外交への転換を提唱されました。日米同盟を基軸に友好的なアジア外交を宣言され、近いうちに中国、韓国とのトップ会談が実現されることに期待をつなぎます。また、隣国ロシアについても、首相就任の第一声で領土
問題解決に向けて言及をされたことに非常に勇気付けられました。
第二次世界大戦後に、武装したソ連兵によって不法に占拠された北方の四島、この領土を追われた旧島民の
方々の平均年齢も七十三歳を超えました。戦後六十一年待ちました、あと何年待てば先祖が眠る島に帰れるのでしょうか、私の目の黒いうちに島に帰らせてください、どうか助けてくださいと、しわを深く刻み、腰の曲がった体を震わせながら渾身の思いで訴えられる旧島民の姿は、刻一刻と迫りくる御自身の寿命を意識した上での極めて切実な訴えです。これまでどれだけの苦悩と望郷の思いを背負って生きてこられたのだろうかと思うと、私自身、いたたまれない気持ちになります。
独立国家を成す要件は、私
たち国民が存在すること、そして
国民が住む領土が存在すること、そして
国民自身が国の在り方を自由に決定できる主権が存在することだと
認識しています。平時において領土に思いを致す
国民を一人でも多くしておくことが、コストが掛からず、銃も血も必要ない最も大切な安全保障
政策であり、平和を守り切るための大事な基盤だと
考えます。それゆえに、教科書における領土と主権の記述には、引き続きその正常化、
充実を求めます。
過日、北方領土海域で
日本漁船が拿捕され、乗組員がロシア当局に拘束されました。根室納沙布岬から四キロも離れておらず、百五十一年前の日露通好条約締結以来、一貫して我が国固有の領土であり続けた歯舞諸島において、なぜ自
国民が命を落とさなければならなかったのか。これは、漁業問題という産業の一側面にとどまらず、れっきとした領海侵犯、主権にかかわる外交問題です。
昨日午後、ロシア当局からやっと船長が解放されましたが、今回、船長らが拘束されていた
施設は私
たち日本国民の貴重な税金によって建設された日ロ友好の家であったというのは、極めて皮肉な外交的屈辱です。ビザなし
交流も含め、今まで莫大な
費用と知恵と友情を費やしてきたはずの北方領土返還に向けての日ロ友好は一体何だったのでしょうか。無念です。
領土の一部を失って黙っている
国民は領土のすべてを失う危険を負う、ドイツの法哲学者イエーリングの言葉です。北方四島を始めとする領土問題に向き合わなければ、竹島などにおいても犠牲者が生じる
懸念がぬぐえません。そう遠くない将来、エネルギーや食料の世界的な争奪が激しさを増す中、海洋国家
日本の領土、領海を守る啓発の在り方及び海洋資源の確保、保全に対する戦略をお聞かせください。
北方四島に関しては、私
たち自由民主党、
公明党、民主党、共産党、社民党という主要な政党がすべて、毎年二月七日、北方領土の日に行われる返還要求大会に党首クラスの幹部を出席させ、領土返還に向けて、与野党の域を超え、全力で努力をすることを誓い合っています。事この北方領土に関しては、国内における右、左のイデオロギー論争は一切なく、独立国家
日本の正に主権を懸けた悲願であるはずです。
歴代の政権では、北方領土返還に御尽力いただいたものの、外交的な進展は見られませんでした。
安倍総理は、現在までの
日本政府の
対応に何が足りなかったと
認識されていらっしゃいますか。また、この教訓を受けて、今後
いかなるリーダーシップを発揮し、ロシア外交に臨まれる御予定でしょうか。日ロ平和条約の締結のめども含め、主張する外交への転換を打ち出された
安倍総理の領土
問題解決に向けての戦略を明確にお示しくださいませ。
有村君、我々自由民主党の
政治家は、自民党を支持してくださる
方々を大事にするだけでなく、政権を担う政党として、たとえ野党を支持される方であっても、また支持政党を持たない無党派層や赤ちゃん、
子供たちも含めて、一億二千七百万余の
日本人の生命、財産を守る
責任を負っているんだ、どんなにつらいときも、その気概と
責任をしっかりと心に刻みつつ日々任に当たっていこうじゃな
いか。初当選させていただいた五年前、尊敬する先輩
議員に真顔で教えていただいた行動哲学です。厳しい与野党対立を迫られる政党
政治にあっても、
国民全体への奉仕者であるべき公党の原点を忘れまいと自らに言い聞かせます。
自民党には改善すべき点がまだまだありますが、
歴史や先人に学び、その知恵や教訓を未来に向かって生かそうとする時間軸、
歴史軸をしっかりと保守の軸足に据えて、未来に果敢にチャレンジしていく自由民主党の議会人であることに誇りと
責任をずしりと感じます。
安倍総理には、持ち前の強い覚悟と人情味あふれる温かいリーダーシップで美しい国の主体を成す私
たち国民に粘り強く語り続けてくださいませ。理想を高く掲げ、目標に向かって邁進される安倍内閣の志に共感し、誠心誠意、
日本の将来に
責任を負う国づくりの一線にともに立たせていただきたいという意思と
決意を明確にして、私、自由民主党有村治子の質問を完了いたします。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君登壇、
拍手〕