○
政府参考人(
寺田逸郎君) まず、
自己信託について御
説明申し上げます。
自己信託は、ただいま
委員も御
指摘のとおり、これまでの
信託法では認められなかったものでございますが、
英米の
信託法ではかつてから認められているところでありまして、基本的には
自分で
管理しながら、しかし
財産を隔離することができるというところに非常な
メリットがあるわけでございます。
具体的な
ニーズといたしましては、例えば、大量の
債権を持っている場合に、その
債権を
自分の下で
自己信託をし、その
受益権を多数の
投資家に販売するという形で
債権の
流動化を行うということが考えられるわけであります。この場合にもちろん
信託子会社を設立するということも考えられるわけでございますが、これには
コストが掛かるわけでございますし、とりわけ
債務者が、借入れをする相手方、
債権者でございますけれども、それが変わってしまうということになりますと、取立てその他の面で
債務者側が非常に御不安を抱かれるというようなことが
債権流動化のネックになっているというところがございます。こういうことを避けられるわけでございます。
それから、
事業の面でいいますと、
事業の一部、これは
特定の、例えばある
会社でありますと、そのうちの半導体の
事業でありますとか、あるいは
自家発電を新たに今度やろうということでその
部分だけですとか、その
部分に関する
財産を
自己信託いたしまして、これを多数の
投資家に
受益権を販売してその
部分に関する
資金調達を行うということが考えられているわけであります。これの
メリットは、
事業自体は従前と同じように
自己の下で行われるわけでございますので、
従業員の地位の
変更その他、そういう問題を避けられるというところに大きな
メリットがあるわけであります。
それからまた、民事的な
場面でございますが、
身体障害あるいは
知的障害をお持ちの方の親御さん等がこれを将来にわたってサポートしていくという場合に、
第三者にこれをゆだねるために
財産を
信託するということももちろん考えられるわけでございますけれども、そのような適当な
第三者というのがなかなか
財産の規模あるいはケアの面で見いだせないという場合に
自己信託をして、
一定の
財産は必ずこの子のために確保するということを実現できると、こういう
メリットがございます。それほど
コストを掛けずにそういう結果が得られるというところに期待が集まっているところでございます。
次に、
目的信託でございますが、これもおっしゃるとおり、これまでの
信託法では
公益信託に関してしか認められなかったところでございますけれども、
英米法ではこれも広く認められているところでございます。特に
英米で古くから言われておりますのは、
自分が死んだ後に
自分の墓を
管理するというような場合に、
特定の
受益者はいないわけでございますけれども、その墓の
管理を
受託者の方ですると、こういうことが言われております。あるいは、
自分が亡くなった後にペットの面倒を見るというようなことも言われているわけでございます。イギリスでは相当盛んなようであります。
特徴は、おっしゃるとおり
公益ではないけれども、しかしある
目的があってそのために支出がされるというわけでございますので、例えばある
大学の卒業生が
財産を
大学に寄附して、しかし
特定のプロジェクトのためにこれを必ず用いてほしいというような場合に、その
目的の
拘束力を強めるためにこの
目的信託をするというようなことが考えられるわけであります。
あるいは、ソフトウエアを開発した方がその
著作権をお持ちなわけでございますけれども、その
著作権者がこれを
目的信託して、だれにでもオープンにこれを使ってもらいたいということを実現したいという場合に、
自分が亡くなった後も
自分の
著作権者の
承継者、
相続人がそういうことを望まないというような場合にそれが実現できなくなるという危険がありますので、必ずオープンにするという場合にはこの
信託というのも
一つの有力な手段だということが言われているわけであります。
あるいは、
経済団体の
会員企業から拠出された金銭を
信託財産といたしまして、以後優秀と認めたアイデアに対しまして
奨励金を出すというような場合にもこれが使えるというように考えられているわけでございます。