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2006-12-05 第165回国会 参議院 法務委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
平成十八年十二月五日(火曜日) 午前十時開会 ─────────────
委員
の
異動
十二月四日
辞任
補欠選任
千葉
景子
君
松下
新平
君
前川
清成
君
富岡由紀夫
君 十二月五日
辞任
補欠選任
松下
新平
君
千葉
景子
君 ─────────────
出席者
は左のとおり。
委員長
山下
栄一
君 理 事 岡田 広君 簗瀬 進君
木庭健太郎
君 委 員 青木 幹雄君 陣内 孝雄君 関谷
勝嗣君
谷川 秀善君 江田 五月君
富岡由紀夫
君 松岡 徹君
松下
新平
君
浜四津敏子
君
仁比
聡平君 近藤 正道君
事務局側
常任委員会専門
員 田中 英明君
参考人
一橋大学大学院
法学研究科教授
中田
裕康
君
日本弁護士連合
会信託法
及び信
託業法改正対応
チーム座長
深山
雅也
君
社団法人信託協
会副
会長
みずほ信託銀行
株式会社取締役
社長
池田
輝彦
君 ───────────── 本日の会議に付した案件 ○
信託法案
(第百六十四回
国会内閣提出
、第百六 十五回
国会衆議院送付
) ○
信託法
の
施行
に伴う
関係法律
の
整備等
に関する
法律案
(第百六十四回
国会内閣提出
、第百六十 五回
国会衆議院送付
) ─────────────
山下栄一
1
○
委員長
(
山下栄一
君) ただいまから
法務委員会
を開会いたします。
委員
の
異動
について御報告いたします。 昨四日、
千葉景子
君及び
前川清成
君が
委員
を
辞任
され、その
補欠
として
松下新平
君及び
富岡由紀夫
君が選任されました。 ─────────────
山下栄一
2
○
委員長
(
山下栄一
君)
信託法案
及び
信託法
の
施行
に伴う
関係法律
の
整備等
に関する
法律案
の両案を一括して議題といたします。 本日は、両案の
審査
のため、三名の
参考人
から御
意見
を伺います。 御
出席
いただいております
参考人
は、
一橋大学大学院法学研究科教授中田裕康
君、
日本弁護士連合会信託法
及び
信託業法改正対応チーム座長深山雅也
君及び
社団法人信託協会
副
会長
・
みずほ信託銀行株式会社取締役社長池田輝彦
君でございます。 この際、
参考人
の
方々
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用のところ本
委員会
に御
出席
いただきまして、誠にありがとうございます。
参考人
の
皆様方
から忌憚のない御
意見
をお述べいただき、今後の
審査
の
参考
にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 議事の進め方について申し上げます。まず、
中田参考人
、
深山参考人
、
池田参考人
の順に、お一人十五分
程度
で順次御
意見
をお述べいただきまして、その後、各
委員
からの
質疑
にお答えいただきたいと存じます。 なお、
意見
の
陳述
、
質疑
及び
答弁
のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、
委員長
の許可を得ることとなっております。また、各
委員
の
質疑
時間が限られておりますので、御
答弁
は
簡潔
にお願いしたいと存じます。 それでは、
中田参考人
からお願いいたします。
中田参考人
。
中田裕康
3
○
参考人
(
中田裕康
君) おはようございます。
中田
でございます。 私は、
一橋大学
で
民法
を担当しています。
信託法
については、十数年前から
研究
を始め、現在に至っております。今回の
信託法改正
に関しましては、
法制審議会信託法部会
に参加したり、若干の文章を書いたりしたということもありまして、本日
意見
を申し上げる
機会
をちょうだいしたものと思います。どうもありがとうございます。もちろん、これから申し上げる
意見
はすべて
個人
としてのものでございます。 私の
意見
は三つの
部分
から構成されます。 第一は、今回の
改正
の
背景
についての私の認識です。第二は、今回の
信託法案
を
二つ
の
観点
から吟味するものです。これが
中心
になります。そして、第三は
結論
です。 まず、
改正
の
背景
について申し上げます。 現在の
信託法
は、一九二二年に制定されたものですが、その
内容
は、以来八十四年間、ほぼ変わっていません。それは、
信託法
が完璧な
法律
だったからというわけではなく、むしろ
信託法
が
一般
には余り
利用
されてこなかったからではないかと思います。
一般
の人々はもちろん、
法律家
や法学部の学生にとっても
信託法
はなじみが薄く、
信託
は専ら
信託銀行
が行う特殊なものだという
イメージ
が強かったような気がしています。 これについては、現在の
信託法
が制定された当時の
事情
の影響がありそうです。
日本
で
信託制度
が本格的に導入されたのは
日露戦争
の直後、一九〇五年の
担保付社債信託法
以来のことですが、それから数年たった
大正初期
には、
信託
という概念は
濫用ぎみ
に用いられていたようです。そこで、一九二二年に
信託法
と
信託業法
がセットで制定されますが、とりわけ業界を規制しようとする
信託業法
に重点があったと言われています。その後、第二次大戦中の一九四三年に
兼営法
ができ、
信託業
を
経営基盤
の弱い
信託会社
ではなく
銀行
にさせる方向が示され、戦後は専ら
信託銀行
が
信託業務
を行うことになりました。 こうして、
信託
とは厳しい
業法規制
の下で
信託銀行
が行うものであり、
一般
の会社や
個人
とは縁遠いものだという
イメージ
が浸透したようです。さらに、
ヨーロッパ大陸法
を基本とする
日本
の
私法体系
の中で
英米法
に由来する
信託
が特殊なものだという印象を与えたという
事情
もあったのかもしれません。 これに対し、近年新しい
動き
が出てきました。まず、
学界
の
状況
を申し上げます。
学界
では、かねてから優れた学者が
信託法
の
研究
をしていましたが、それは一部にとどまっていました。しかし、一九八〇年代半ばに
信託法研究者
のグループが
信託法改正案
を提示したこともあり、
研究者
のすそ野が広がってきました。特に、一九九〇年代以降、
信託
に関する
研究書
や
体系書
が次々に現れます。現在では
若手研究者
の
本格的研究
も登場しています。 このような
動き
の
背景
には、次のような
問題意識
があるように思います。すなわち、
信託
を
業法規制
の下での特殊な
法律関係
に押し込めるのではなく、より
一般
的な
法制度
として私法全体の中に位置付けたい、そうすることによって
社会
が
信託
という
制度
のメリットを活用できるようになればよいということです。 これはアカデミックな
問題意識
ですが、もちろん現実の
社会
において
信託制度
に対する
需要
が高まっていることを反映するものでもあります。例えば、
金融商品
としての
信託
が発達するだけでなく、企業が多様な手段で資金を調達するために
信託
を活用したいという
需要
が高まっています。
民事信託
でも、
高齢社会
を迎え、
高齢者
が
自分
の
財産
を
信託
し、
自分
の老後や家族のために活用するという
需要
があります。その際、市町村や
弁護士
などを
受託者
にしたいという例は少なくないようです。
弁護士会
も積極的に応じようと考えておられるようです。しかし、従来の
信託法
はこれらの
需要
に十分に
対応
できないという問題があります。 こうして、
信託
がより有効に活用されるようにしたいと、そのためには
信託法
の
現代化
が必要だということになります。目を海外に転じますと、
信託制度
を生んだ
英米法
においても、近年、
信託法
の
現代化
がなされています。このような国内外の潮流の中で、二〇〇四年に
信託業法
が
改正
されました。
信託業者
が受託できる
財産
に
知的財産権
を含めるなど、受託可能な
財産
の範囲が拡大し、また
信託業
の担い手も拡大しました。そこで、いよいよ
信託法自体
の
改正
をということになります。このような
背景
で登場したのが今回の
信託法案
であると認識しています。 次に、
信託法案
の
内容
と評価に進みます。私は、今回の
信託法案
の
特徴
は
二つ
あると思います。
一つ
は、現在
社会
における
信託
の
利用可能性
を高めるものであること、もう
一つ
は
信託
の
信頼性
を確保するものであることです。以下、この
二つ
の
観点
から申し上げます。 まず、
利用可能性
の
向上
ですが、これは柔軟で精緻な
規律
によって図られています。
規律
の柔軟さというのはこうです。 第一に、
信託
における
当事者
の自治を高めています。まず、
信託
が多様な態様で成立することを認めています。次に、多くの
規律
を
任意規定
としています。また、
裁判所
の
監督
を廃止しています。 第二に、
受託者
が効率的に
事務処理
をすることを可能にしています。特に、
受託者
が
事務処理
を
第三者
に
委託
することを広く認めたことが重要です。現在、
受託者
は
自己執行義務
を負っていますが、
分業化
、
専門化
を
背景
に
第三者
に委任することを
原則
として認めました。 第三に、
信託設定
後の
状況
に機動的に
対応
できるようにしています。例えば、
第三者
への
委託
、
信託
の
変更
、
併合
、
分割
などです。 次に、
規律
の精緻さというのはこうです。 第一に、
一般
的な
場面
における
規律
を具体化しています。まず、
受託者
の
忠実義務
について、
規律
を具体化した上で、違反に対する効果を
規定
しています。また、
信託財産
に対して強制執行できるのはどのような
権利
なのかを列挙しています。そのほか、
受益権
や
受益債権
の
内容
、
受益債権
や
損失てん補責任
の
期間制限
などを明確化しています。 第二に、複雑な
場面
における
規律
を明確にしています。
受益者
が多数いる
信託
について
意思決定
の
方法
を明確化しています。先ほど申し上げました
信託
の
変更
、
併合
、
分割
や
信託財産
の
破産制度
もそうです。 第三に、多様な
類型
の
信託
を創設し、あるいは許容しています。
受益証券発行信託
、
限定責任信託
、
受益者
の
定め
のない
信託
、
自己信託
などです。 以上が
信託
の
利用可能性
の
向上
です。これに対しては、柔軟さはともかく、精緻さは
信託
にそぐわないという
意見
もあるかもしれません。
規定
はできるだけ簡潔にし、紛争が起きれば
裁判所
が衡平の
観点
から解決するのがよいという考え方です。確かにその方が伝統的な
信託
の
イメージ
に近いのかもしれません。しかし、そのようにすると、
信託
は
予測可能性
が低く、かえって使いにくい
制度
になりそうです。
信託
によって、どのような
権利
、
義務
、
責任
が生じるのかがはっきりしないと
利用
がちゅうちょされます。といって、
信託法
は簡潔にし、
信託業法
で厳しく規制するということですと、現在と似たようなことになってしまいます。今回の
信託法案
は、
規律
の
透明性
を高めることによって
信託
を
利用
しやすいものとしたと評価できると思います。 しかし、
利用可能性
を高めた結果、弊害が生じるということでは困ります。そこで、新しい
信託法
の第二の
特徴
である
信託
の
信頼性
の確保が問題となります。そのためには、
受益者
の
利益
の
保護
と
社会
の
利益
の
保護
が図られる必要があります。 まず、
受益者
の
利益
の
保護
です。
信託
の
柔軟性
だけを追求していると
受益者
に
不利益
を及ぼすおそれも生じます。そこで、
信託法案
は、様々な
方法
で
受益者
の
利益
の
保護
を図っています。 第一に、
受託者
の様々な
義務
を明文で
規定
するとともに、それが
実効性
を持つような措置を講じています。
受託者
の
注意義務
、
忠実義務
、
公平義務
、
分別管理義務
などが
規定
されています。
受託者
が
忠実義務
に違反する
行為
をした場合について
類型ごと
の措置が講じられており、また
受益者
の損失を推定する
規定
が置かれています。 第二に、
受益者
の
利益
を
保護
するための
機関
を整備しています。
信託監督人
、
受益者代理人
という新たな
機関
を置き、また、
信託管理人
、
信託財産管理者
という従来からある
機関
を整備しています。 第三に
受益者
の
権利
を拡充しています。新たな
権利
として、
受託者等
の
行為
の
差止め請求権
、
信託
の重要な
変更
に際して多数決で敗れた
受益者
の
利益
を
保護
するための
受益権取得請求権
があります。また、
信託事務
や
信託財産
に関する
情報開示請求権
のように、既存の
権利
も整備されています。さらに、
信託行為
をもってしても
受益者
の
権利行使
を制限できない強行性ある
規定
も明確にされています。 第四に、
受益者
に対する
費用償還請求権
及び
報酬支払請求権
は
個別合意
のある場合に限って生じることとされている点も重要です。 このように、
受益者保護
について様々の工夫が凝らされています。 最後に、
社会
の
利益
の
保護
が必要です。これがないと
信託
という
制度自体
の
信頼性
も揺らぎます。
信託法案
は、
信託
の新しい
類型
や新しい
利用方法
を認めています。これらの
信託
によって
社会
の
利益
が害されてはいけません。ここでは三種類の問題があります。 第一は、
信託
の
当事者
以外の
第三者
、例えば
債権者
の
利益
の
保護
を図る必要があります。これは、
制度
の濫用的な使用が抑えられよう、様々な
対応
が考えられています。 第二は、新しい
信託法自体
が他の
法制度
の
規律
を損なう言わばバイパスとなるおそれがないかです。もしそうだとすると、
信託
はうさん臭い
制度
になってしまいます。例えば、
民事法
との
関係
では、
信託法案
には、
物権法
、
担保物権法
、
相続法
、
法人法
、
執行法
、
倒産法
などと交錯する領域があります。これらについて、本
法案
では慎重な
検討
と対処がなされています。本
法案
により、むしろ他の
法制度
の法理がより深められ、その機能を活性化することが期待されます。 第三に、より根本的なこととして、今回の
信託法案
は
信託そのもの
の本質を損なうのではないかという
意見
もあるかもしれません。しかし、私は、
信託法案
においても、
受託者
に対する
信頼
を中核とする
信託
の本質が変わることはないと考えています。伝統的な
信託
の周辺に新たな
信託
の諸
類型
が配置されていますが、これは伝統的な
信託
を補完するものであり、それを傷付けるものではないと思います。 最後に
結論
を申し上げます。私が参加させていただいた
法制審議会信託法部会
は、一年四か月の間に三十回開催され、一回が六時間に及ぶこともあるという密度の濃いものでした。その間、様々な
立場
の
方々
がそれぞれの
意見
を出し合い、ぎりぎりまで詰めた
議論
をしたと思います。私自身の
意見
でも、通ったものと通らなかったものがありますが、全体として見ますと、
信託
の
利用可能性
の
向上
と
信頼性
の確保がそれぞれ具体化され、よく調和していると思います。 そういうわけですので、この
信託法案
は
現代社会
の多様な要請にこたえるものとなっていると思います。その成立を期待する次第でございます。 以上が私の
意見
です。御清聴ありがとうございました。
山下栄一
4
○
委員長
(
山下栄一
君) ありがとうございました。 次に、
深山参考人
にお願いいたします。
深山参考人
。
深山雅也
5
○
参考人
(
深山雅也
君) 私は、
日本弁護士連合会
におきまして、
信託法
及び
信託業法改正対応チーム
という
委員会
の
座長
を務めておる者ですが、本日は、そのような
立場
にいることから
意見陳述
の機会を与えられたものと存じます。
日弁連
におきましては、
民事法
の
基本法
の
一つ
に数えられる
信託法
の
改正
に対しまして、
法律実務家
の
立場
から重大な関心を寄せてまいりました。
法制審
の
信託法部会
に三名の
弁護士
が
委員
ないし幹事として参加しておりましたが、
日弁連
におきまして
バックアップチーム
と称する
委員会
を設置し、
法制審
の
信託法部会
の開催に合わせて会合を重ね、
検討課題
について
議論
をしてまいりました。 私は、この
バックアップチーム
の
座長
も務めておりましたが、この
バックアップチーム
というのは、
日弁連
の
各種
の
委員会
、例えば
消費者問題対策委員会
、
高齢者
・
障害者
の
権利
に関する
委員会
、
知的財産制度委員会
、
債権回収会社
に関する
委員会
、
倒産法制検討委員会
、
司法制度調査会
などといった
各種
の
委員会
から選出された
委員
によって構成されておりました。 このように、
各種
の
分野
の実務に精通した
弁護士
が、様々な角度から
法制審
に出席をしていた
弁護士
をバックアップするとともに、
弁護士
の
立場
からの
意見
を
立法過程
の
議論
に反映していただくということを目指してまいったわけであります。 また、昨年七月に公表されました
信託法改正要綱試案
に対する
パブリックコメント
の手続におきましても、この
バックアップチーム
から
日弁連
の
各種
の
委員会
に対して
意見照会
をするとともに、全国の都道府県の
弁護士会
に対しましても
意見照会
をし、全国的な
意見集約
を行い、それを取りまとめて
日弁連
の
意見
として法務省に提出した次第であります。 したがいまして、今回審議されております
信託法案
は、様々な角度から十分な
議論
が尽くされた上で作成されたものであり、全般的に見て基本的に
日弁連
の
意見
にも合致するものであるというふうに認識しているところであります。 そこで、時間も限られておりますので、
弁護士会内部
において強い関心の寄せられたところを中心に、何点か各論的な
意見
を申し述べたいと存じます。 まず、今回の
改正
の基本的な視点についてでありますが、今回の
改正
においては、金融、融資、
資産流動化
といったいわゆる
商事信託
の
分野
のほかに、
高齢者
や
障害者
の
財産管理
などといった、いわゆる
福祉目的
の活用が考えられる
民事信託分野
、さらには
公益信託
の
分野
といった様々な
信託
の
活用場面
を視野に入れて、現在及び将来の幅広い
社会
的あるいは
経済的ニーズ
に柔軟かつ的確に対応できる
法制度
の実現が目指されたものであると存じます。それゆえ、様々な
目的
に活用できるよう、極力柔軟な
制度
にすることが今回の
改正
において最も重視されたものと言えると思いますが、この点については高く評価しているところであります。
日弁連
の内部において
議論
を始めた当初においては、
資産流動化
に代表されるような、いわゆる
商事信託分野
における
経済的ニーズ
を重視した
改正論
であり、
福祉型信託
といった
民事信託分野
における
社会的ニーズ
に対する配慮が乏しいのではないかといった懸念する
意見
もございましたが、様々な
改正項目
の
議論
が深まる中で、
福祉型信託
を含む
民事信託分野
に関しましても柔軟かつ的確に対応できる
法制度
が目指されているということが理解されてまいりました。 次に、
信託法案
の特徴的な
改正点
が幾つか挙げられると思いますが、まず第一点目として、
信託法規
の多くが
任意規定
であるということを明示した点を挙げることができます。この
信託法案
には
善管注意義務
、
忠実義務
、あるいは
公平義務
、
分別管理義務
、
自己執行義務
といった
各種
の
受託者
の
義務
が明確かつ具体的に
規定
されております。 他方、こうした
義務
の大部分について、
信託行為
に別段の定めがある場合にはその定めに従うというものとされ、これらの
規定
の多くは
任意法規化
されております。この点については、例えば
善管注意義務
が明文化された点はよいが
信託行為
で削除されてしまうのではないかであるとか、あるいは、
忠実義務
の
具体的内容
として
利益相反行為
を列記したことはよいことだけれども
信託行為
で許容されてしまうのではないかといった
議論
もありました。 しかし、そもそも
信託
という
制度
は、一定の
目的
に従って
財産
の
管理処分等
を行うことが前提になっておる
制度
ですので、その
信託目的
に反することや、
信託目的
の達成の支障となるようなことはいずれにしても許されないわけであります。そして、
受託者
の
義務
の
内容
や程度についても、
信託目的
の達成の見地から個別的に定められるべき面がありまして、これを一律に
規定
することはかえって多様な
信託
に対応した柔軟な
信託設計
を阻害することにもなりかねません。
受託者
にどのような
義務
を課すべきかについて、
信託行為
を行おうとする
委託者
の意思にゆだねるということは、
民事法
の大原則である
私的自治
の原則の見地からも尊重されるべきであろうと存じます。 もっとも、
信託
を業として行う者について、
受託者
の
義務
の軽減を制限すべきかどうかといったことについては、全く別個の問題であろうと考えております。そうした点については、
信託業法
その他の
取締法規
によって適正に
規律
すべきことでありますが、
実体法
としての
信託法
における
受託者
の
義務
については、以上のように考える次第であります。 また、
任意法規化
に関しては、
受託者
の
義務
のみならず、例えば
委託者
の
権利
についても、
信託法
上の
権利
の全部又は一部を有しないというふうに定めることもできる一方で、
受託者
の監視・
監督権能
を果たす
受益者
の諸
権利
を
委託者
にも与えるといったことを認めるなど、これを一律化することなく
信託行為
において柔軟に定められるというふうになっております。こうした
委託者
の
権利
についても、
任意法規化
も
信託目的
に対応した
信託設計
について
委託者
の意思を尊重するというものであり、妥当な
規律
であると存じます。 次に、
信託法
の特徴的な
改正点
の二点目として、新しい
信託類型
を容認し、多様な
信託
を認めることにしたということが挙げられます。 具体的には、
受益証券発行信託
、
限定責任信託
、
自己信託
、
目的信託
といった新しい
信託
の
類型
が創設されました。
受益証券発行信託
は、従来、
貸付信託
や
投資信託
などに限定して認められていた
受益権
の
有価証券化
を一般的に認め、
受益権
の
流通性
を高めるものでありますが、
受益証券
の
発行
により
受益権
に対する投資が活性化されるというふうに見込まれるところであります。 他方、
投資家
の
保護
というものも問題になりますが、この点については、
受益原簿
の作成が
義務
付けられ、その備置きや閲覧の
制度等
が用意されており、そのことによって
情報開示
が図られる、あるいは
善管注意義務
の軽減が禁止されるといった
投資家保護
の見地からの
手当て
もなされております。これらの
信託法
上の
手当て
に加えて、
信託業法
あるいは
金融商品取引法
による規制によって
信託
の
投資家
の
保護
が適正に図られるものと考えております。 また、
限定責任信託
については、
信託財産
をもって履行の
責任
を負う債務について、引き当てとなる
財産
を
信託財産
に限定し
受託者
の
固有財産
には及ぼさないとする
信託類型
でありますが、
受託者
の
引受手
を確保し、
信託制度
を広く利用するというために有用な
制度
であると存じます。 もっとも、
信託実務
においては
責任限定特約
という形で個別の契約において既に行われているところであります。それを
信託法
上の
制度
として
類型
化したという面もありますが、これを
一つ
の
信託類型
として容認した上で
法律
上の
規律
を設けるということは、
受益者
や
取引関係者
の
保護
の
観点
からも有意義であろうと考えられます。 すなわち、
限定責任信託
というものは、
信託行為
においてその旨を定め、かつ一定の事項を登記することが
効力要件
とされておりますし、名称中に
限定責任信託
という文字を使うことなど、
受益者
に不測の損害や
不利益
を生じさせないような配慮がなされております。 今後、事業の
信託等
が健全に発展していく上では
限定責任信託
は有用な
制度
であると考えられますし、他方、
福祉型信託
の
場面
におきましても、
受託者
に過度の
リスク負担
が生じるおそれがありますと、
受託者
の
引受手
が確保できない、その結果、
福祉型信託
の発展が阻害されるということにもなりかねませんので、
福祉型信託
を含む
民事信託
の
場面
でも
限定責任信託
は有用な
制度
であると考えております。 次に、
自己信託
でありますが、
自己信託
についてはこれまで種々
議論
なされたことと存じますが、
日弁連
としては一定の要件の下に
自己信託
という
信託類型
を容認することについて賛成しているところであります。
自己信託
の容認に反対する見解の最大の理由は、
委託者
の
債権者
において執行不能となる
財産
を容易に作り出し得るという
執行免
脱
行為
に対する懸念であります。しかしながら、
委託者
の
債権者
を害する
信託
は
詐害信託
にほかならず、民法四百二十四条一項の詐害
行為
取消しの対象となるものであります。しかも、
信託法案
におきましては、
詐害信託
である場合には
債権者
は詐害
行為
取消し訴訟を経ることなく
信託財産
に対する強制執行等を行うことができるものとされております。 また、
自己信託
は、公正証書その他の書面で作成されることが成立要件とされ、公正証書以外の書面で作成された場合には、確定日付ある証書によって
信託
の
内容
が
受益者
に通知されることが
効力要件
となっておりますから、
自己信託
がなされたこと、あるいはその
内容
というものは明確にされ、後日その設定時をさかのぼらせるということもできない仕組みとなっております。 そこで、
執行免
脱
行為
あるいはその他の脱法的な
行為
に対するこのような
手当て
がなされていることを踏まえて、多様な
信託類型
を容認する見地から、
自己信託
の創設についても賛成しているところであります。 最後に、
目的信託
でありますが、特定の
受益者
のためでなくても、
信託財産
からの
利益
を享受すべき一定の者を想定した
信託
というものも必ずしも否定されるべきではありませんし、
公益信託
に該当しないものであっても、一定の公共的な
目的
のために
信託
という
制度
を活用することを否定すべきでもないと考えられることから、
受益者
を定めない
信託
についても一定の有用性があると考えられます。 そこで、
受託者
の監視・監督機能を果たす
受益者
の諸
権利
を
委託者
に認めるとした上で、存続期間を二十年に限定するといった
手当て
がなされていることを踏まえて、
日弁連
としては
目的信託
の創設にも賛成しているところであります。 さらに、
信託法案
の特徴的な
改正点
として、
受益者
の
権利行使
の
実効性
を確保するという見地から、
受益者保護
のための様々な
制度
が導入されたということが挙げられます。具体的には、
受託者
の任務違反
行為
に対する
差止め請求権
を認める、これによって任務違反
行為
の事前防止を可能とするという点、あるいは、検査役の選任を
受益者
の権限と明記した上で
規定
を充実させて、
信託事務
に関する不正な
行為
の発見する手だてを施している点、あるいは
信託監督人
という
制度
を設ける、このような
手当て
がなされております。 今後、
信託
という
制度
が広く国民に利用されるようになるだろうというふうに見込まれることに照らしますと、このような
受益者保護
のための様々な
制度
が導入されたことは
信託
という
制度
の健全な発展のために極めて重要なことであり、この点についても
信託法案
を高く評価しているところであります。 ところで、今般設立される
受託者
監督人には
弁護士
などが選任されていくことが見込まれていると聞いておりますが、そもそも
受益者
のために信頼できる者に
財産
の管理処分を託するという
信託制度
の本質に照らし、我々
弁護士
には
信託
の
受託者
としてその担い手となることが求められていると存じます。
民事信託
、とりわけ
福祉型信託
におきましては、
委託者
や
受益者
が十分な監視監督能力を有しないことが想定されますことから、
受託者
に対する高度の信頼関係が必要とされるところ、
社会
的な信頼を有し、なおかつ
弁護士
倫理や懲戒
制度
によって自律的に
規律
されている
弁護士
は、そうした
受託者
として最もふさわしい存在であると言えます。そして、従来より
弁護士
は
法律
業務を行う中で
高齢者
等の
財産管理
や
財産
、証券に関与しております。また、各
弁護士会
においても、
高齢者
等の
財産管理
センターを設立し、既にそうした役割の一部を担っているとも言えます。 ところで、今般
信託法改正
に伴う
関係法律
の
整備等
に関する
法律案
において、
信託業法
の一部
改正
がなされ、
信託業
の定義を定める二条を
改正
し、
信託業法
の適用が排除される業務が政令により明記されるとのことですが、以上のような
弁護士
に期待される役割に照らし、
弁護士
が
法律
業務に伴い、あるいは
法律
業務の一環として
信託
の引受けを行う場合については、
信託業
の適用が除外されるという業務に該当することを
法律
又は政令において明記していただきたいと考えているところであります。 最後に、今般の
信託法改正
の
議論
全般に対する
意見
を申し述べます。
信託法
はその成立以来八十年以上にわたって実質
改正
がなされないまま経過したわけでありますが、今般その抜本的
改正
がなされ、
現代社会
の様々なニーズにこたえる
制度
として生まれ変わろうとしております。したがって、様々な角度からの検討が必要であることは当然のことでありますし、積極的な面、肯定的な面ばかりでなく、否定的な面や言わば病理的な側面というものも見過ごすわけにはいきません。 我々
弁護士
は万一の事態を想定してリスクヘッジをするということを日常の業務において行っておりますが、今般の
信託法改正
を考える上でも
信託
という
制度
が正常に機能しない
場面
あるいは濫用的に利用される
場面
ということも念頭に置いて
議論
してまいりました。 しかしながら、
信託制度
の濫用的な利用を警戒する余り、過度に消極的になったりあるいは懐疑的になったりしてしまうと、
制度
本来の意義や有用性を見失うことにもなりかねません。濫用を過度に意識して、その防止策によって
信託制度
の有用性や利便性を失わせてしまっては本末転倒であると言わざるを得ません。
日弁連
としては、様々な角度から
法案
作成に向けて
議論
を尽くしてこられた多くの方々の御努力と英知に敬意を表するとともに、新しい
信託法
の下での新しい
信託制度
が一日も早く、幅広く国民に活用されることを願っているところであります。 以上であります。
山下栄一
6
○
委員長
(
山下栄一
君) ありがとうございました。 次に、
池田参考人
にお願いいたします。
池田参考人
。
池田輝彦
7
○
参考人
(
池田
輝彦
君) 私は、
信託
協会副
会長
をしております、
みずほ信託銀行
の
池田
でございます。 本日は、
信託法案
の御審議に当たり
意見
を述べさせていただく
機会
をちょうだいし、厚く御礼を申し上げます。 本日はちょうだいしましたお時間の中で、第一に
信託制度
の現状と長所、第二に
信託法案
に対する私どもの
基本
認識、第三に
信託制度
に対する
信頼
の
確保
の三点について申し上げ、皆様の御理解を賜れば有り難いと考えております。 まず初めに、
信託制度
の現状と
制度
に関する長所の御説明をさせていただきたいと存じます。 御高承のとおり、
信託制度
は、
財産
の管理運用を主な
目的
とする
制度
でございまして、我が国に
信託
の概念が導入されて以来ほぼ一世紀が経過いたしております。その間、
社会
のニーズの高まりや、それに
対応
した
信託
関連法の
改正
などを経まして我が国の経済及び国民生活に欠かせない重要なインフラとなりつつあることを実感しているところでございます。
信託制度
の担い手としましては、かつてはいわゆる専業
信託銀行
だけという時代が長く続きました。その後、外資系
信託銀行
の参入や、都市
銀行
や証券
会社
の子
会社
による参入、そして地方
銀行
本体や都市
銀行
本体による参入が進められてきました。さらに、平成十六年十二月
施行
の
改正
信託業法
により、
信託会社
参入のための
規律
が整い、専門性を生かした特色ある
信託会社
も登場してまいりました。
信託
契約代理店や
信託
受益権
販売業者といった
信託
の
利用
者の窓口が拡大する仕組みの整備と併せまして、
信託
の担い手は飛躍的に拡大しております。
信託制度
を
活用
した商品という意味では、
貸付信託
といった預金類似商品を
中心
とする時代から、高度成長期以降はより高度な
財産管理
運用の機能を発揮して年金
信託
や有価証券の管理運用を
目的
とする
信託
などが導入されております。 近年では、企業の財務改善や資金調達を
目的
とする
資産流動化
の
分野
で重要な役割を果たすなど、
信託制度
はその
活用
の幅を広げてまいりました。
信託
の担い手の拡大と商品の拡大の相乗効果により
信託財産
の残高は平成十八年三月末現在でおよそ六百五十兆円に達しております。 次に、
信託制度
の長所でございますが、私どもが長年
信託業務
に携わってまいりまして常に感じておりますのは、手前みそではございますが、
信託制度
は非常に優れた
制度
であり、
社会
のお役に立てる
制度
であるということであります。それは、
信託
の持つ機能が
財産管理
の仕組みとして
社会
のニーズにマッチしていることと、
信託
が法的な安定性と
制度
としての
柔軟性
を併せ持っていることの
二つ
に由来しているからであると考えております。 初めの理由であります
信託
が果たしている機能については、大きく次の三つに分けられます。
一つ
目は
信託
の
財産管理
機能でありまして、
財産
の管理処分権が
受託者
に与えられているということであります。
二つ
目は転換機能でありまして、
信託財産
が
信託
受益権
という
権利
に転換され、
信託
の
目的
に応じた形で
利用
できるということであります。三つ目は倒産隔離機能でありまして、
委託者
あるいは
受託者
が倒産しても
信託財産
は影響を受けないということであります。 もう
一つ
の理由である、
信託
が法的な安定性と
制度
としての
柔軟性
を併せ持っているという点について簡単に御説明します。 法的な安定性という
観点
から一番重要なことは、
受益者
、つまり
利用
者の
保護
を図ることでありますが、
法律
上、
信託
の担い手である
受託者
に対して
忠実義務
や
善管注意義務
、
分別管理義務
等々の
責任
が明確に
定め
られています。また、
受託者
は
受益者
の
利益
のために行動するという大
原則
が根幹にありまして、これも大事な要素であります。
制度
としての
柔軟性
と申しますのは、
信託そのもの
は伸縮自在な器であり、その中にいろいろな
財産
を入れて管理運用したり、あるいは証券化することができるという使い勝手の良さを表しております。 この法的な安定性と
制度
としての
柔軟性
は車の両輪のようなものでして、どちらが欠けても不安定な
制度
になってしまいます。使い勝手が良くても
受益者
の
保護
が不十分であれば問題が生じますし、逆に
受益者
の
保護
が十分に図られましても使い勝手が良くなければ
社会
のお役には立ちにくいということになります。 このように三つの機能と
二つ
の長所を併せ持った
制度
である
信託
を更に世の中に広めていきたい、そのためにはこれらの機能と長所を更に維持強化していきたいというのが私どもの願いであります。 第二の点の
信託法案
に対する私どもの考え方を端的に申し上げますと、
法案
に賛成しており、早期成立を希望しているということでございます。
信託法
は、大正十一年に制定されて以来、八十年以上にわたりまして実質的な
改正
がなされないまま現在に至っております。この間、
社会
経済活動の多様化に伴いまして
信託
を
利用
した
金融商品
が幅広く定着しております。また、資産の流動化
目的
の
信託
など、
信託法
が制定された当時には想定しなかった形態での
信託
の
活用
が図られるようになっております。このような変化に
対応
するためにも、
信託法
を抜本的に見直す必要が生じております。 今回の抜本
改正
の
内容
を一言で申し上げるとすれば、
社会
経済情勢の変化や
財産管理
方法
の変化に的確に
対応
するために
現代化
を図るということでございますが、私どもといたしましては、これを次のように理解しております。 まず第一は、過度に
規制
的なルールの見直しを図り、
受託者
の
義務
に関する
規律
を明確化することであります。例えば、
分業化
、
専門化
が進んだ
現代社会
に適合するように、
信託事務
を外部の専門家などに
委託
しやすくしますと、
受益者
のために、より高度かつ多様な
信託
サービスが提供しやすくなります。 第二に、
受益者
の
権利行使
のための
意思決定
ルールが合理化、明確化されることであります。例えば、
受益者
が多数の場合に多数決で
意思決定
することが認められますと、お客様のニーズへの機動的な
対応
が可能になります。 第三は、多様な
信託
の
利用
形態に
対応
するための
制度
の整備を図ることであります。例えば、既に
社会
的インフラとして定着している
投資信託
や年金などのファンドを統合したり
分割
したりすることができるよう、
信託
の
併合
、
分割
の
制度
を創設することが挙げられます。また、
信託
受益権
の
有価証券化
や担保権を
信託
により一括して管理する仕組みであります、いわゆるセキュリティートラストの導入といった新しい仕組みの導入もあります。つまり、
信託法
の
現代化
とは、
規律
の明確化と
実務
に即した合理化が図られることであると認識しております。この点は、正に先ほど申し上げました、
信託
の機能や、
信託
が持つ法的な安定性と
制度
としての
柔軟性
という
二つ
の長所を更に強化するものでございます。 このような点からも、私どもとしましては、
信託法案
の成立に大変期待をしているところでございます。 平成十六年十二月の
信託業法
の全面
改正
によりまして、
信託
サービスの担い手や対象
財産
の種類が拡大いたしました。これに加え、今般の
信託法改正
により、創意工夫を凝らした新しいタイプの
信託
スキームの開発と
利用
が一層進むことが期待され、
社会
のニーズに適合するとともに、国民経済の持続的な成長、発展に寄与するものと考えているところでございます。
最後
に、
信託制度
に対する
信頼
の
確保
について申し上げます。 今日、
信託制度
が
社会
的に
一定
の
信頼
を得ておりますのは、私ども
信託銀行
が、これまで長年にわたり
信託法
や
信託業法
等の
規律
にのっとり、
信託
の担い手としての
責任
や
義務
を果たすことに積極的に努力してまいった結果ではないかと自負しているところでございます。 したがいまして、今般、
信託法
が抜本的に
改正
され
信託制度
の
活用
範囲が拡大したといたしましても、これまで培ってまいりました
信託制度
に対する
社会
的な
信頼
が損なわれないこと、言い換えれば、
信託制度
が健全な形で発展することを切に願っております。 今般の
信託法
の
改正
によりまして、
制度
の自由度が増すことになりますが、自由の裏には必ず
規律
というものが必要と考えます。特に
信託
は、
受益者
のために
財産
をお預かりして管理運用する
制度
ですから、
受託者
に対してしっかりとした
規律
が求められるのは当然のことであります。究極の信用
制度
と言われる
信託制度
に対する
社会
的な
信頼
が損なわれることがないよう切に願っておりますとともに、私どもといたしましても、
制度
に対する
信頼
を高めるよう、更に努力を重ねてまいりたいと考えております。 以上、私なりの
意見
を述べさせていただきましたが、
信託
協会といたしましても、同様の考え方から
法案
の早期の成立を希望しているところでございます。是非、私どもの考えを御理解いただき、
法案
の御審議をいただければ有り難いと考えております。 御清聴いただきまして、ありがとうございました。
山下栄一
8
○
委員長
(
山下栄一
君) ありがとうございました。 以上で
参考人
の
意見陳述
は終わりました。 これより
参考人
に対する
質疑
を行います。
質疑
のある方は順次御発言願います。
岡田広
9
○岡田広君 自由民主党の岡田広です。 今日は、三人の
参考人
の皆さん、大変お忙しいところ、ありがとうございました。 何点かそれぞれお尋ねをしたいと思いますが、まず、今回の
信託法案
は、現代
信託法
の
規律
を抜本的に
検討
し
信託法
制を
現代社会
に適合する
内容
に改めたという、
参考人
の皆さんからもその御発言がありました。大変この意義は、私は極めて大きいものと考えています。この
信託法案
の趣旨説明によりますと、
改正
の要点は大きく
二つ
に分けられると思います。第一のポイントが
受託者
の
義務
、
受益者
の
権利
等に関する
規定
の整備であると思います。 そこで、まず
信託法案
において、この
受託者
の
義務
の
内容
が合理化されたことの意義について、これは
中田参考人
にお尋ねをしたいと思います。
中田裕康
10
○
参考人
(
中田裕康
君)
受託者
の
義務
につきましては、従来から抽象的、
一般
的な
規律
、理念ということがあったわけでございます。しかしながら、そうしますと、そのどの範囲で
義務
があるのか、あるいはないのかということが明確ではない、また
義務
に違反した場合についても様々な
議論
があり得るわけです。その点を今回の
信託法案
は正面からきっちりと
法律
で
規定
したと。しかも、単にその理念を掲げるだけではなく、その理念に裏付けられた具体的な
要件
、効果を整備したということでございます。そのような意義があると考えます。
岡田広
11
○岡田広君 ありがとうございました。 この
受託者
の
義務
の
内容
が
改正
されたことは、
信託
の
実務
への影響も少なくないと思っています。
受託者
の
義務
が合理化されたことによって、この
信託実務
にはどのような影響があって、
信託銀行
としてこの
受託者
の
義務
の
改正
についてどのような評価をしているのか。これは
信託
協会の
池田参考人
にお尋ねをしたいと思います。
池田輝彦
12
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。 私ども
信託銀行
につきましては、
信託法
に加えまして、
信託業法
や
兼営法
の
規律
に従って
実務
を行っていく必要がございます。本
改正
におきましても、
信託業法
や
兼営法
におきましては、
原則
として
受託者
の
義務
を強行
規定
とするという、これまでの枠組みが維持されております。一方で、
現代社会
に適合するように合理化を図り、
受託者
の
義務
に関する
規律
を明確化するという
信託法
の
現代化
の趣旨を踏まえまして、
実務
上、不都合の生じている
部分
について、
受益者保護
に問題のない範囲で個別に見直される方向であると理解しております。
信託法
における合理化及び
規律
の明確化と、
信託業法
における
実務
の円滑化の要請への
対応
により、お客様の個々のニーズに応じた、よりきめ細かい
信託
サービスを提供できるようになると考えているところでございます。
岡田広
13
○岡田広君 是非、
利用
者にきめ細かいサービスの提供ということをよろしくお願いをしたいと思っています。 この過度に厳格な
受託者
の
義務
を合理化することについては賛成でありますが、これによって
受益者
が
不利益
を被ることがないように
手当て
をしなければならないと思います。 この点については、違法
行為
の差止め請求の
制度
の創設などによって
受益者
の
権利行使
の
実効性
、機動性を高めているということでありますが、この
受益者
の
権利行使
について
定め
る
信託法案
の
規律
は、
受益者保護
の
観点
から十分なものと言えるのかどうかについて、これは
弁護士
の
立場
からどのように考えているのか、
深山参考人
にお尋ねをしたいと思います。
深山雅也
14
○
参考人
(
深山雅也
君) ただいまお尋ねの点ですが、今御質問の中にもありましたように、今回、
受益者保護
の
観点
から
差止め請求権
、
受託者
が任務に反した
行為
をしようとしているときに、事前に差止めをするという
制度
が導入されました。従来より、そういった
行為
が行われた際に、原状回復ですとか後日取り消すというようなこと、あるいは損害をてん補させるといった事後的な救済
措置
は既にあったわけですが、これを事前にチェックできる仕組みを作ったということは非常に大きな意義があると考えております。 それから、これも従来から検査役を
裁判所
に選任してもらうという
制度
がありましたが、これについても
受益者
の
権利
であるということを明文化して、細かい
規定
を設けております。検査の結果が十分に
受益者
に周知されるような
手当て
をしているところであります。 こういったことは、今後
受益者
が多数発生をする、あるいは様々なタイプの
受益者
が発生するということを考えますと、非常に重要なことであると考えております。すなわち、
受益者
を
一つ
の
投資家
というふうに見たときに
投資家
の
保護
ということが重要になりますが、そうした
観点
からも、
情報開示
が図られるような仕組みというのが非常に重要であり、そういうことを踏まえて賛成をしているところでございます。
岡田広
15
○岡田広君 ありがとうございました。 それでは、この
信託法案
の第二のポイントであります
信託制度
について多様な
信託
の
利用
形態に
対応
するための新たな諸
制度
を導入するということであります。 具体的には、
信託法案
では
自己信託
あるいは
受託者
の
定め
のない
信託
などを創設していますが、この
信託法案
が新しい
信託
の
類型
を創設していることの意義について、これは
中田参考人
と
深山参考人
にお尋ねしたいと思いますが、新しい
類型
の
信託
の民事的な
活用
の可能性について、
信託
の
受託者
としての役割を期待されていることにつきましても、これは
深山参考人
にお尋ねしたいと思っています。
山下栄一
16
○
委員長
(
山下栄一
君) それでは、
中田
、
深山
、それぞれの
参考人
から順次御発言願いたいと思います。
中田参考人
。
中田裕康
17
○
参考人
(
中田裕康
君) 新しい
信託
の諸
類型
を置いているというのは、正にそれぞれの
需要
にこたえるものとして考えられております。 具体的な
利用方法
については、後ほど他の
参考人
からお話があるかと存じますけれども、
一般
的な
規律
ですと明確ではない、あるいはそれぞれ固有の要請があるという
信託類型
について
規律
を置いている、それによってより
利用可能性
が高まるということでございます。もちろん、それぞれの
類型
においてはそれぞれ固有の問題があるわけでございますので、それぞれの固有の問題についてもきっちりと詰めた上で
制度
をつくっている、そういうものだと理解しております。 以上です。
深山雅也
18
○
参考人
(
深山雅也
君) 様々な
信託類型
は、正に様々なニーズに
対応
して提案されているものと存じますが、例えば最も
議論
が多いと承知しております
自己信託
について申し上げますと、一方では、債権流動化等の
商事信託
の
場面
におきましても
自己信託
の有用性が盛んに説かれております。もちろん、それに対する様々な懸念というものも併せて
議論
されておりますが、
商事信託
の
場面
につきましては、
実体法
としての
信託法
のみならず
信託業法
その他の取締り法規によって濫用の懸念というものが防止される
措置
もありますし、先ほど申し上げました
信託法
の中にもそうした
手当て
がなされております。 そこで、
民事信託
においては、ではその
活用
の可能性があるのかというお尋ねですが、これもあると考えております。例えば、親族間において
自分
の
財産
を配偶者や子供に与える
方法
としてあらかじめその
財産
を
確保
しておきたいと考えた者が、通常の
信託類型
であれば
信頼
できる
第三者
にそれをゆだねるということになるわけですが、そういったファミリー
信託
のようなものを
イメージ
していただきますと、もちろんふさわしい
第三者
がいればその方に託せばいいわけですが、ある意味で最もその
受益者
となるべき者の細かい
事情
や
状況
が分かっているのは
委託者
自身であります。そういう意味では、最もふさわしい
受託者
が
委託者
であるということは少なからず想定されるところであります。元々の
信託
というその
制度
が英米においてそういうところから発生したということもありますが、これは何も昔だけの話ではなくて、今後、超
高齢社会
と言われるような
社会
を迎えるに当たって極めて重要な点で、
活用
の
場面
があるだろうというふうに考えております。
岡田広
19
○岡田広君 ありがとうございました。
制度
をつくる場合にはメリットとデメリットとあるわけですけれども、今回の
信託法案
において新たに設けられた
制度
についても、しっかりとした弊害防止
措置
が講じられていなければならないと考えています。衆議院の
法務委員会
でも、この審議では、
自己信託
や
受益者
の
定め
のない
信託
について弊害のおそれが問題となったものと聞いております。 この弊害防止
措置
が講じられているのかについて、この点につきまして
中田参考人
にお尋ねをしたいと思っています。
中田裕康
20
○
参考人
(
中田裕康
君) まず、
自己信託
でございますけれども、これは今御指摘のありました具体的な弊害をどうやって防止するのかという問題と、それからさらに、理論的に考えてこういうことがあり得るんだろうかという問題と、両方あるかと存じます。 ここではその具体的な弊害について防止策を申し上げますと、例えば公正証書等の書面が必要であるということが
一つ
でありますし、それから
信託
の効力の発生時期が
意思
表示のときではなくて公正証書などの書面を作成したときというふうに明確にしたということがあります。それから、
受益者
の
定め
のない
信託
は
自己信託
によっては設定できないとしたということもあります。それから、先ほども御発言がありましたが、
委託者
の
債権者
は
詐害信託
取消しの手続を経ないでいきなり
信託財産
に対して強制執行をしていくというようになっております。さらに、
一般
的なことといたしまして、公益
確保
の
観点
から、必要があるときは
裁判所
が
信託
の終了を命じることができると、こういうように何層もの
手当て
を講じているわけでございます。 続きまして、
目的信託
でございますけれども、これも理論的な問題点とそれから具体的な弊害防止策ということを併せて考えなければいけないわけでございますけれども、例えば、
目的信託
によって
財産
が固定化しないかとか、
債権者
を害しないかというようなことがあるかと思います。そこで、
詐害信託
の取消しの
制度
、あるいは先ほども申しました公益
確保
のための
信託
終了命令、さらに
委託者
による
監督
、それから二十年という
期間制限
、以上のような
措置
によりまして弊害を防止しているというものだと思います。
岡田広
21
○岡田広君 ありがとうございます。 時間が来ましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
簗瀬進
22
○簗瀬進君 民主党の簗瀬進でございます。 お三人の
参考人
、本当に今日は有益な御指摘、ありがとうございました。 昨年、この
法務委員会
でも
会社
法の
議論
をさせていただいたんですけれども、
会社
法、そして今回の
信託法
と、一連の流れが伝統的な大陸法系の国であった
日本
に
英米法
的な考えを強く、またかなりの速いスピードで導入をしてくると、こういうふうな流れになってくるのかなという、そういう印象を私持っているんですけれども。 そういう
観点
で、例えば、我々の頭はやっぱり所有権概念ということが前提になって物を考えられるように私も大学で学んでまいりましたけれども、例えば今回の
自己信託
等を見ると、所有あるいは支配の離脱等の考え方がかなり柔軟に、また外から見ると分かりづらくなってくると、まあそこに妙味もあるというお考えもあるだろうと思うんですけれども、これは注意しないとかなりの混乱が出るなということで、お三方のそれぞれのお
立場
の中でお考えを聞かせていただければと思うんですけれども。 御案内のとおり、今回の
信託法
の
改正
、三条で
自己信託
が認められるようになった、特に
信託
宣言の場合でございますね。それで、
自己信託
という形になると、
委託者
と
受託者
がイコールの形になる。それから、八条では地位の兼併というようなものが認められるようになりまして、
受託者
と今度は
受益者
が一体でもいいという形になる。そして、長い
日本
の伝統の中で、
委託者
は同時に
受益者
であることの方が多いと。言うならば自益
信託
、自らを
受益者
とする
信託
、そういう形が多いと。ということになりますと、
自己信託
とそれから
受託者
、
受益者
の地位の兼併が行われ、そしてそれが自益
信託
であるという形になりますと、一人の
当事者
の中で三面
関係
が突然出てくる形になるわけでございます。非常にこの辺が所有権概念で物を考えていると分かりづらい
部分
でございまして、そこから次に出てくる問題が、税制上の問題あるいは会計基準の問題、そして様々な受益の
状況
をどういうふうに
社会
的に開示をしていくのかというそういう開示の問題、こういうようなものが全部そこから私は出てくるような感じがいたします。 そういう意味で、先ほど出した正に
委託者
イコール
受託者
イコール
受益者
と、三者が一体になったようなそういう
関係
の中で、支配の離脱というようなものがどういうふうな時点で生じてどういうふうな時点からいわゆる課税対象の事態になるのかというふうなことについてのお考え方を三人の
参考人
の方から聞かせていただきたいと思います。
山下栄一
23
○
委員長
(
山下栄一
君) それでは、順次お願いします。
中田裕康
24
○
参考人
(
中田裕康
君)
英米法
と大陸法との調和ができるかどうかということは、これは
信託
についてかねてから
日本
のみならず外国でも
議論
されてきたことかと存じます。何とか
信託
という
制度
を
日本
法の中にうまく位置付けて、それによって
活用
するということを目指しているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。 ただ、その上で、しかしそうすると所有権は一体どうなるのだろうかということが当然重要な問題として浮かび上がってくるわけでございます。先ほど
自己信託
について理論的な問題もあり得るということを申し上げたのは、正に今御指摘の点でございます。 と申しますのは、人の所有権あるいは人がそれぞれ持っている
財産
というのはその人固有の一個のものではないだろうか、それを勝手に
分割
できるんだろうかというような疑問というのが自然に出てくるわけでございます。そういたしますと、突き詰めて考えると、
信託
という
制度自体
が、実は人は一体としての
一つ
の
財産
を持つ、あるいは一個の所有権を持っているというのと少しずれがある、それを踏まえた上でどうやって
制度
をつくっていくかということだと思います。 その根底には、
受託者
に
財産
を預けるということをどう評価するか、これが後で出てまいります地位の兼併とも
関係
することでございますけれども、
受託者
に対する
信頼
というものを狭く
委託者
が
受託者
に対して持っている
信頼
というように限定しますと、それが兼ねてしまうということはおかしいのではないかという疑問が出てくるかもしれませんが、さらにその
受託者
に対する
信頼
というのをより突き詰めて考えますと、
委託者
の
信頼
だけではなくて、
受益者
の
信頼
、あるいは
受益者
がいない場合も含めて考えますと、
信託
という
制度
が
受託者
に対して求めている機能あるいはそれを実現するため、つまり
信託目的
に従って適切に
事務処理
をするということを
制度
的に期待している、そういう
信頼
を
保護
する
制度
だというふうに考えますと、これはあり得るものではないかというふうに考えます。 しかし、その上で、
自己信託
ということが倒産隔離との
関係
で果たして
自分
の
財産
を切り分けていいのだろうかというようなもう
一つ
のレベルの問題が出てくるかと思いますけれども、それについては、先ほど申し上げました様々な弊害防止策によってカバーされているのではないかと存じます。 それから、三者が全部地位を兼併してしまうとおかしいのではないかという、これも直観的に考えると何か変だなという感じがするかもしれませんが、しかしながら、だからじゃそれを無効にしてしまうという選択肢もあるとは思うんですけれども、むしろそれを暫定的な状態というように理解いたしまして、それで
一定
の期間内にその状態を解消するようにするというようにした方が
制度
としては使いやすいのではないかというふうに思います。 なお、税制、会計につきましては、もちろん重要な点だと思いますが、私専門ではございませんけれども、もちろんその専門の
方々
が慎重に
検討
されて明確化されるものと考えております。
深山雅也
25
○
参考人
(
深山雅也
君)
信託
における
委託者
、
受託者
、
受益者
、三者が場合によっては一体になるということについての御懸念は、言ってみれば
信託
にかかわる
関係
者、とりわけ
委託者
の
債権者
であるとか
受託者
の
債権者
であるとか、そういった人たちから見て、実は
自分
の
権利
を実現する際に引き当てとなるべき
財産
であると思っていたら実はそれがいつの間にか違っていたというような事態になると非常に問題であるというところが最もその三者が一体になることの問題点が浮き彫りになる
場面
かと存じます。 その点につきましては、例えば
委託者
の
債権者
の
立場
を考えますと、先ほども少し
意見
を述べましたように、
詐害信託
という評価が加えられる場合には直接強制執行ができると、詐害
行為
取消し訴訟を経ずにいきなり強制執行ができるという
手当て
がなされております。そういう形で、正に
債権者
を害する形での
自己信託
というものはそこで相当
程度
ブレーキが掛かる仕組みになっております。 もちろん、より端的に
財産
隠匿というようなものであれば、
詐害信託
というまでもなく、言わば脱法
信託
として、そもそも
信託
としては無効であるという評価もあるでしょうし、あるいは
裁判所
の判断で公益的な
見地
からそれが否定されるという
場面
ももちろんあると思いますが、そこまで露骨なものでなくても、詐害性が認定できればそこで防御できるということがあろうかと思います。 また、
受託者
の
債権者
にとりましても、
基本
的にはこういう
受託者
の
固有財産
と
信託財産
というのは観念的に峻別をされて、あるいは物理的にも可能な限り分別をするという仕組みになっておりますが、仮に、そういう中で、実は例えば
信託財産
に属すると思っていたものがそうではなかったとか、その逆であるとかといった
場面
において、相殺の期待を
保護
するという
措置
もなされております。 そういった
手当て
を考えますと、相当
程度
そういった三者が一体になることに伴う混乱といいますか、は避けられるのではないかと。より根本的に言えば、公示という
観点
において、登録のできる
財産
については
信託
の登記がなされます。それを見ればある
程度
内容
が分かるということですし、あるいは
受託者
には様々な報告
義務
もありますので、受託をしているということについてある
程度
情報開示
が図られる仕組みにもなっておりますので、そういったことも通じて混乱というものは避けられると。さらにもう一言言えば、
自己信託
のようなややイレギュラーな
信託
というのは、ある意味では目立ってしまうと思うんですね。ある意味では、そういう疑いの目で見られてしまう要素が当然あるわけです。ですから、そういう意味では、そういったことが事実上、事前のプレッシャーになって違法な
信託行為
がなされるということが牽制されるのではないかというふうに考える次第です。
池田輝彦
26
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。
自己信託
につきましては、私どものような業者におきましても全く新しい領域でありまして、
実務
への
活用
方法
を
中心
に今後
研究
が進むのではないかと考えております。 現時点では、流動化等の
分野
で債権回収を行うサービサー
会社
における回収資金の分別管理や、あるいは保険代理店の預かり保険料の分別管理といった
利用
ニーズがあると聞いておりまして、有用な使い道もあるものと思います。ただし、
自己信託
は使われ方次第によりましては悪用される懸念があるという指摘もございますので、
信託
の健全性を
確保
するため、
規律
の明確化が図られることが望ましいと考えております。なお、衆議院の附帯決議の三におきまして、会計上及び税務上の取扱いその他の事項に関する
検討
、周知その他の所要の
措置
を講ずることとされておりまして、それらについて適切に
措置
がなされるものと理解しております。
簗瀬進
27
○簗瀬進君 お答えが多少長めだったものですから、時間なくなってしまいまして。 それじゃ、
中田
さんと
深山
さんにそれぞれ一問ずつ
最後
に聞かせていただければと思うんですが、いわゆる福祉
信託
の場合に、
高齢者
や
障害者
あるいは老後の家族のため等、新しい福祉
信託
の
類型
を更につくって進めていかなければならないというお話だったと思うんですけれども、そのときの担い手として、
中田参考人
が、
弁護士
あるいは
自治
体というふうな、そういう
二つ
を挙げたと思うんです。ということで、
弁護士
が担い手になる場合の、現行法上どこまでできるのか、あるいはここをこう直すべきだと思っているお考えがあるならば、
深山参考人
にお答えをしていただければと。それから、
自治
体の方で実情がどうなっているのか。やはり同じように現行法上の限界性とか問題点というようなものがあれば、
中田参考人
の方で御指摘をいただきたいなと思います。以上です。
山下栄一
28
○
委員長
(
山下栄一
君) 時間が迫っておりますので、
答弁
は
簡潔
に願います。
中田裕康
29
○
参考人
(
中田裕康
君)
自治
体の方につきましては、現在の
信託法
の下で
高齢者
の
財産管理
について幾つかの工夫をしているわけでございますけれども、何分
規律
が不明確なところがあって不安定さがあると、それを今回の
信託法
によって、より使い勝手が良くなるというふうに期待しております。
深山雅也
30
○
参考人
(
深山雅也
君)
弁護士
が
受託者
としての
信託
の担い手になるということにつきましては、最もふさわしい存在の
一つ
として
弁護士
が考えられてよろしいのではないかと考えておりますが、その理由は、既に
実務
において
福祉型信託
の領域で
弁護士
は活動しているということもありますが、何よりも
弁護士
が
弁護士
自身の下に、
弁護士
倫理あるいは懲戒
制度
といった
制度
の下で、自律的に
規律
をされて
社会
からの
信頼
をいただいているということが
一つ
根拠として挙げられるかと思います。 また、
財産管理
といいましても様々な
法律関係
、
権利
関係
がそこには関与してまいりますので、そうした
法律家
としての判断というものも適正な管理処分の上では必要不可欠ですので、そのような
観点
からも
弁護士
が担い手になるということが求められているものと存じます。この点については業法との
関係
が多少
議論
の余地があろうかと思って、先ほど業法上の適用除外ということについてのお願いをした次第でありますが、この点についても是非併せて御
検討
いただければと思います。
簗瀬進
31
○簗瀬進君 終わります。
浜四津敏子
32
○
浜四津敏子
君 本日は、三名の
参考人
の皆様、大変御多忙の中おいでいただき、貴重な御
意見
を賜りまして、大変ありがとうございます。公明党の浜四津でございます。 今回の
改正
で、
信託
をこれまでの特殊な
法律関係
から
一般
的な
法律関係
に大きく変えることになると言われております。
信託
へのニーズが高まっていると、そのニーズに対しまして現行法では十分に
対応
できないということが
背景
にあるかと思いますが、今回の
改正
によりまして多くの国民の
方々
の
利用
の可能性が広がっていくことが考えられます。中でも、特に
高齢者
や
障害者
の
方々
の
財産管理
を図るための
制度
としても着目されているところでございます。 そこで、私は、
福祉型信託
の
活用
という視点から、お三方に御
意見
を賜りたいと思います。 まず初めに、
池田参考人
にお伺いいたします。 十一月三十日の本
委員会
の
質疑
におきまして、
福祉型信託
として
信託銀行
は特約付き金銭
信託
や特別
障害者
扶養
信託
を受託しているという旨の
答弁
がございました。今後、
高齢者
あるいは
障害者
福祉の
観点
から、これらの
信託
が健全に、有効に
利用
されることが期待されるところでございます。 そこで、特約付き金銭
信託
、また特別
障害者
扶養
信託
というものは現在どの
程度
活用
されて、
利用
されているのか、また
福祉型信託
に対する
信託銀行
の今後の取組について伺いたいと思います。
池田輝彦
33
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。 まず、
信託銀行
が昭和五十年代より取り組んできております特別
障害者
に対する贈与税の非課税に基づく
制度
であります特定贈与
信託
につきましては、平成十八年九月末の受託残高は
信託
協会加盟の社員
会社
全体で千二百十三件、二百七十二億円になっております。また、お客様の多様なニーズに合わせた特約を設定することで、生前贈与やあるいは死後の
財産
分与などにつきオーダーメードの商品設計が可能となる特約付き金銭
信託
につきましては、取り扱う
信託銀行
によって若干商品性が異なりますが、平成十八年九月末の受託残高は
信託
協会加盟の社員
会社
全体で四百九十九件、百九十億円となっております。
信託業
界におきましては、従来から取り組んできております特定贈与
信託
だけでなく、お客様のニーズ等を踏まえまして各社とも福祉型の
信託
について創意工夫しておられるものと思われます。個別
会社
といたしましても、新しい
信託法
やお客様のニーズ等を踏まえまして、
研究
を重ね、引き続き前向きに
検討
していきたいと、かように思っております。
浜四津敏子
34
○
浜四津敏子
君 ありがとうございます。 次に、
中田参考人
にお伺いいたします。
福祉型信託
を
社会
に根付かせるためには、
信託法
の
改正
だけにとどまらず、関連法規の見直しあるいは
社会
全体の意識を変えることが必要であると思われます。衆議院の
法務委員会
でも、福祉型の
信託
について幅広い
観点
から
検討
を行うことという附帯決議がなされたところでございます。 そこで一点目に、
福祉型信託
の発展を促す
観点
から、
信託法
以外の課題にどのようなものがあるか、御指摘をいただければと思います。 二点目に、英米の国あるいはオーストラリア、ニュージーランドといった国々では
信託
が大変
活用
されていると伺っておりますけれども、これらの国々では
福祉型信託
が十分
活用
されてきたのか、濫用やあるいは弊害というのがなかったのか、何か問題起きているというようなことがないのか、これから我が国の
信託
に
参考
になる点があるのかどうか、この二点についてお伺いいたします。
中田裕康
35
○
参考人
(
中田裕康
君) まず、
福祉型信託
を促すために
信託法
以外の
制度
として何があるのか、そこでの問題点ということでございますが、もちろん成年後見
制度
があるわけでございます。その成年後見
制度
があるから、じゃ
福祉型信託
が要らないかというと、そうではないわけでして、もちろんその両方がそれぞれ、まあ車の二輪と申しますか、あるいはほかの
制度
も含めまして、全体として福祉を充実させていくということになろうかと思います。 それから、外国の国々ではどうかということでございます。 例えば、アメリカで二〇〇〇年に統一
信託法
典というのがございまして、それは単に
商事信託
だけではなくて、
民事信託
についても非常に
配慮
されたものでございます。当然、
信託
というと
柔軟性
があるだけに、逆に濫用されてしまわないか、本来の
目的
とは違って食い物にされないかというような懸念が当然あるわけでございますが、そこを
手当て
していると、そういったものも
参考
にしながら今回の
法案
ができていると理解しております。
浜四津敏子
36
○
浜四津敏子
君 ありがとうございます。 次に、
深山参考人
にお伺いいたします。
弁護士
が
福祉型信託
の
受託者
となることについてどうお考えか。殊に
弁護士
が株式
会社
を設立して
福祉型信託
の
受託者
となるという道もあるという指摘もありますけれども、それについてどうお考えか、お伺いいたします。
深山雅也
37
○
参考人
(
深山雅也
君) 今お尋ねの点ですが、もちろん
弁護士
も株式
会社
を設立をし、その
会社
を通じて活動する自由というものもあろうかと存じます。
信託
に関しましては、これまでは株式
会社
でなければ業としての免許が下りなかったという
事情
もあり、既にそういった
会社
が設立されたという話も聞き及んでいますが、では株式
会社
をつくらないと
弁護士
が関与できないのかというと、決してそういうことではなかろうと考えております。 もちろん、
福祉型信託
の担い手として
弁護士
が活動するのは正にこれからより盛んになる、盛んになるというよりは、より求められてくるという意味では正にこれからが本番というふうには考えておりますが、既に
財産管理
センターといった
弁護士会
主導で
高齢者
あるいは
障害者
の
財産管理
を担っていく、そのお手伝いをする役割を
弁護士
が会を挙げて取り組んでおります。 そこで、今回の
信託法改正
ということになりましたので、これを機に更に
弁護士
が
受託者
として正面に立って
高齢者
の
財産管理
等で
中心
的な役割を担っていくということが正に
社会
のニーズではないかというふうに考えておる次第であります。
浜四津敏子
38
○
浜四津敏子
君 次に、
中田参考人
にお伺いいたします。
福祉型信託
と
関係
するものとして
公益信託
がございます。
公益信託
については
改正
が今
検討
されている
状況
のようですけれども、今後どのような
改正
が行われるべきとお考えか、お伺いいたします。
中田裕康
39
○
参考人
(
中田裕康
君)
公益信託
につきましては、今御指摘のように、百六十四国会で
一般
社団・財団
法人法
とそれから公益認定法ができたわけで、更にそれをどのようにして具体化して実施していくかということを経過期間の間に用意しているということだと思います。それを受けまして、
公益信託
がどのようになされるべきかということが現在の
状況
かと存じます。 公益法人の方で問題となりました主務官庁制に伴う弊害というのをなくして、それで民間の考え方も反映するような公益認定の
機関
をつくっていくということでございますが、それは今後の
公益信託
においてもやはり同じ考え方が妥当するのではないかと存じます。つまり、主務官庁によって
監督
するというのではなくて、より多様な民間の
観点
を入れて
公益信託
を
活用
していくと。 もちろん、その
公益信託
の名の下に弊害があってはいけませんから、それに対する
規律
ということは当然必要でございますけれども、
基本
的には公益法人の方向と同じ方向が
公益信託
にも妥当するのではないかと。その上で、公益法人と
公益信託
との、何と申しますか、その両方が相まってより良い公益
制度
を実現するというふうになればいいと期待しております。
浜四津敏子
40
○
浜四津敏子
君 ありがとうございます。 次に、重ねてで申し訳ありません、
中田参考人
と
深山参考人
にお伺いさせていただきます。 国民の皆様の多くのニーズにこたえるものとして今回新たな
信託
が創設されているわけでございますけれども、その
一つ
の
目的信託
として、例えば災害ボランティアとか、あるいは地域の
高齢者
介護、あるいは子育て支援、防犯対策、町内会の交流などに
活用
したいというお声がたくさんあると伺っております。また、企業の側からは
目的信託
を従業員の福利厚生やあるいは功労者への奨励金支給といった形で
利用
したいと、こういう要望もあると伺っております。 そのほかに、後継ぎ遺贈型
信託
、
受益者
連続型
信託
と、こういうものも今回創設されることとなっておりまして、例えば
委託者
は生存中は自らが
受益者
となって、自らの死亡後は例えば
受益者
を妻に、妻が死亡後は子供にといった形で
財産
を承継させられると、こういう
信託
が創設されているわけでございますけれども、こうした
信託
につきましては、今後問題なく
活用
されることとなるのか。多くの国民の、地域の国民の
方々
もそうですし、企業の
方々
にもそういうニーズがあるということですので、それが問題なく
活用
されることになるのか、あるいは何らかの危惧というものがあるのかどうかについて御
意見
を承れればと思います。
中田裕康
41
○
参考人
(
中田裕康
君)
目的信託
につきましては、今御指摘のとおり、純粋に公益ということは言えないかもしれない、狭い意味の公益ではないかもしれないけれども、より広い意味では世の中の役に立つというようなものを実現するために
目的信託
が使われるということは大いに期待されることかと存じます。 その場合に、それでは弊害がないのかということでございますけれども、これは先ほど
目的信託
についての弊害防止策ということを御紹介申し上げましたようなことで
対応
できるのではないかと考えております。 次に、後継ぎ遺贈型
信託
につきましても御指摘のとおりでございまして、単に家業の維持というだけではなくて、その家族の中にハンディキャップを持っている人がいるという場合にこれが
活用
されるということになると思います。 ただ、この場合についても、当然弊害をあらかじめ考えた上で対処する必要があるわけでございまして、例えば法定相続
制度
との
関係
をどう考えるのか。これについては遺留分
制度
に服するということを前提として考えていると。そのほか幾つかの制約をこの
法案
は全体として考えておりますので、懸念についても
対応
できるのではないかというふうに考えております。
深山雅也
42
○
参考人
(
深山雅也
君)
目的信託
の場合ですと、正にその
信託目的
というものが極めて重要な意味を持ってくると存じます。したがって、例えば
信託
契約において
目的信託
が設定される場合、その契約書にどこまでどのように
目的
を書き込むかということが極めて重要になると思います。 もっとも、新しい
制度
ですので、今まで
実務
的な集積があるという状態ではもちろんございませんので、正にこれからその
実務
の中で
目的信託
における
目的
の
定め
方であるとか、その他
委託者
にどの
程度
その
権利
なり権限を与えるかといったことが積み重ねられてきて、その
制度
の運用を通じて具体化していくんだろうというふうに考えております。 また、
受益者
連続の点につきましても、これも同様でございまして、当然、相続
制度
との
関係
、それとのアンバランスにならないようにという
配慮
が必要になりますが、ではどのような
受益者
連続の
信託
であれば適法なのかということも今後の
実務
の積み重ねで出てくる。当然、
民法
の
相続法
を意識して解釈論が積み重ねられていくというふうに理解しておりますので、正に
実務
での集積が重要というふうに考えております。
浜四津敏子
43
○
浜四津敏子
君 ありがとうございました。終わります。
仁比聡平
44
○
仁比
聡平君
日本
共産党の
仁比
聡平でございます。今日は
参考人
の皆さん、本当にありがとうございました。 私からは、いわゆる事業
信託
という点が
一つ
の論点になっておりますので、ここについてお伺いをしたいと思うんですけれども、産業界から、あるいは経済産業省の
類型
化でも、その典型として高収益を上げている部門を切り分けていくというやり方、あるいはハイリスク
分野
への進出、こういうところに
信託
が期待をされているというふうなことが言われるわけですけれども、こうなりますと、従来の
信託
、先ほども
信託
協会の方からありましたが、資産の管理運用という、こういうこれまでの取組からすると随分違ってくるんじゃないかなと思うわけですね。 そこで、それぞれの
参考人
のお
立場
から、事業を柔軟に
制度
設計をしていく、これを
信託
契約の中でしていくということになるのだろうと思うんですが、現行法と具体的にどう変わるだろうか。その中で、
信託
される事業のいわゆるガバナンスですね、この点については
会社
法を始めとした
規定
に今なっているわけですけれども、その
信託
される事業のガバナンスというのはどういうふうになるのだろうか、この辺りについて教えていただきたいと思うんですが、
中田参考人
からお願いいたします。
中田裕康
45
○
参考人
(
中田裕康
君) 今回の
信託法改正
によりまして、債務を当初から
信託会社
とすることができるということは、正に事業
信託
が可能であるということを示しているものだと存じます。 そうした場合に、事業
信託
が実際にどのように使われるのかということを考えてみますと、やはり
財産
と結び付くものでないとなかなか使いにくいのではないかと、
信託
である以上は。ですから、土地
信託
とか
知的財産権
の
信託
のような、
一定
の
財産
が
中心
だけれども事業性のあるものについて使われるのではないかと思います。 そういたしますと、当然、例えば土地についての公示でありますとかということが通常の
信託
における
規律
に重なって、それぞれの
目的
物に関する
規律
というのが働いてくるわけでございます。それからさらに、事業ということになりますと、それに伴う様々な
法律
による
規律
というのがかぶさってくるわけでございますので、その事業
信託
においても重層的にと申しますか、
規律
が働くことになると理解しております。
深山雅也
46
○
参考人
(
深山雅也
君) 事業
信託
につきましては、やはりこれも今後
利用
が盛んになるだろうと見込まれる
類型
の
一つ
かと存じますが、御指摘のように、従来、同じようなことをしようとすると、例えば
会社
の事業の一部を他者あるいは子
会社
に譲渡する、あるいは
会社
分割
をする、そういった言わば
会社
法上の
制度
を
利用
して行うということが考えられたわけです。それと比較しますと、
信託
という
制度
を
利用
すると、手続的にもコスト的にも非常に簡易にそれが実現できるという利点があろうかと思います。 今回の
信託法
を見ますと、様々なところで、先般成立しました
会社
法を言わば模範にしてといいますか、に倣って
制度
がつくられている
部分
がございます。そういう意味では、事業の
信託
ということに関しては
会社
法の
制度
や
会社
法の解釈というものがやはりいろんな形で影響してくるだろうと。そういう意味では、
会社
法上の
制度
を使った場合と
信託法
を使った場合とがバランスよく解釈されるということが今後
実務
においては定着していくんではないかというふうに考えておる次第です。
池田輝彦
47
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。 事業の
信託
につきましては、現在のところ具体的なお客様のニーズをお聞きしておりませんし、
実務
を踏まえた具体的な
研究
が今後進められるものと認識しております。私どもといたしましても、お客様のニーズ等に応じまして
研究
してまいりたいと考えております。 御指摘のような点につきましても、具体的な
研究
、
検討
に当たりまして、必要に応じ
弁護士
などの
方々
と御相談をしていくということになろうかと思います。
仁比聡平
48
○
仁比
聡平君
深山参考人
に確認なんですけれども、先ほどのお話でいきますと、つまり
信託
される事業の
規律
については、
会社
法を始めとした、他法といいますか、が直接
規律
をするのではなくて、
信託
契約によって柔軟に設計されることになるんだけれども、その契約の中に
会社
法やあるいはその解釈がバランスよく入ってくることが期待されると、そういう御趣旨なんですかね。
深山雅也
49
○
参考人
(
深山雅也
君) おっしゃるとおりでございます。 これもその事業の中身、あるいは
信託
される
財産
の中身によっていろんなバリエーションが多分これから工夫されるんだろうと思いますんで、もちろんそれによって一律ではないと思うんですが、
一つ
の解釈の指針として
会社
法の解釈、
会社
法の解釈が更に従来の商法の解釈というものが下積みになっておりますので、そういうものが反映していくだろうというふうに理解しております。
仁比聡平
50
○
仁比
聡平君
中田参考人
にその点、御見解をお伺いをしたいかなと思うんですが、
信託
契約の柔軟さというのは、これは先ほど妙味という言葉もありましたけれども、そこが
一つ
の今回の
改正
のポイントであろうかと思うし、これまで期待もされてきたかと思うわけです。
民事信託
やこれまでの
商事信託
の中で
実務
上求められてきた
改正
という面があることは私も重々承知をしておるわけですけれども、それが
一つ
の事業を
信託
するということになったときに、これまでに経験のないところに踏み込むことになると。確かに、
会社
法を始めとした他法の
規律
がこの
信託
契約の中に織り込まれればという期待は私も持つわけですけれども、ここについて
改正
信託法
はどういう考え方に立つということになるのでしょうか。
中田裕康
51
○
参考人
(
中田裕康
君) まず、
会社
法の
規律
ということでございますけれども、今般の
会社
法
改正
に伴いまして、
会社
法自体が極めて柔軟な
制度
になったというふうに認識しております。 そういたしますと、
柔軟性
という点で
信託
と
会社
法が言わば競っているというようなことになってまいりまして、逆に事業
信託
の方が使われることがそれほどないのではないかと思うわけです。つまり、
会社
法が柔軟になった結果、
一般
的な
規律
は
会社
法の方がむしろ親しんでいますからそちらに流れるんじゃないか。ですから、事業
信託
として使われるのは、先ほど申し上げましたとおり、
財産
が
中心
となっているものになるのではないかというのが私の予想でございます。 その上で、
会社
法にある
規律
が直接適用されるということではないでしょうけれども、それを例えば潜脱するというような場合に、
信託法
の解釈のレベルで、
一般
的なレベルで影響してくるということはあると思いますが、
信託法
は
信託法
としてその
規律
を十分用意しているというふうに理解しております。
仁比聡平
52
○
仁比
聡平君 ありがとうございます。 実際の事業
信託
の場合の活動をどう
規律
するかという意味で
監督
という面が重要なんだろうという点が先ほど
深山参考人
からも御指摘があったわけですが、資産の管理運用について、例えば
善管注意義務
に違反してはいないかというような
観点
で受託
会社
をこれまで
規制
をするという
観点
と、受託
会社
が事業を行っているということについて
監督
をするという
観点
とはまたちょっと違ってくるのかなという感じもするわけです。 そこで、
深山参考人
と、それからこれまでもちろん御経験のございます
池田参考人
に、どのような基準や
観点
での業法での取締りですね、これが期待されるか、望まれるかという点でもしお考えがあればお聞かせいただきたいと思うんですが、
深山参考人
から。
深山雅也
53
○
参考人
(
深山雅也
君) 今の御質問の点ですが、
会社
法と
信託法
といいますか、両
制度
を比較しますと、
会社
における株主は
信託
における
受益者
に近い存在、
会社
を実際に執行する取締役は
信託
における
受託者
に近い存在というふうに言えようかと思います。 そういう意味では、
会社
において株主の
利益
を追求して取締役が事業活動を行うという仕組みと、
受託者
が
受益者
のために事業
信託
を行う
場面
というのはかなり似ている面があると。そういう意味で、
受託者
の
責任
を考える、あるいは
受益者
の
利益
を考える上で、株主の
保護
であるとか取締役の
責任
というものが相当
程度
解釈論においても
参考
になるだろうと、また
法律
の仕組みも似通った
規律
が入っていると、こういうことを先ほども申し上げた次第です。 おっしゃるように、単なる管理と事業というのは相当
程度
違った面がありますし、そうなると、当然
受託者
の
責任
もより単なる管理よりは重くなるということは当然のことと思います。そういう意味で、実質的には
受託者
の
責任
というものも、
信託
の
内容
に応じて重さに解釈上違いが出てくるということは当然あってしかるべきだろうというふうに考えております。
池田輝彦
54
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。 先ほどお答え申し上げましたが、現在のところ具体的なお客様のニーズをお聞きしておらず、
研究
が進んでおりません。取組の可能性について申し上げることが現在できる段階にはございません。同様に、
監督
につきましても今後
検討
されるものというふうに理解しております。
仁比聡平
55
○
仁比
聡平君 ありがとうございます。
最後
に、二分ほどあるかと思いますが、
深山参考人
に
福祉型信託
と
弁護士
の活動についてちょっとお伺いをしたいと思うんですが、各地で
財産管理
センターや、あるいは成年後見センターという名称のところもあるかと思いますけれども、
高齢者
や障害がある
方々
、その御家族の相談、
財産管理
を
中心
にした相談に
弁護士
がずっと乗ってこられているという、その取組を私も承知をしております。 その中で、
弁護士
ならではのニーズ、つまり
信託銀行
やほかの受託
会社
といいますか、というところではなくて、
弁護士
ならではのこういうニーズがそういった
福祉型信託
の中にある、あるいは今後そのニーズがどのような形になっていきそうかという、その辺りの御認識がございましたらお伺いをしたいということと、それから
信託業法
の
規定
の
改正
について
日弁連
として案を出されているというふうに伺っておりますけれども、先ほど来ちょっと触れてはいただいているんですが、明瞭にどこをどう変えるべきだという点について伺いたいと思います。
深山雅也
56
○
参考人
(
深山雅也
君) まず、
弁護士
が
福祉型信託
にかかわる際、
弁護士
ならではのニーズという点でございますが、まず
一つ
は、
弁護士
とその依頼者というのは、
信託
にかかわらず、高度の
信頼
関係
が成り立って初めて仕事ができるという
関係
でございます。そういう意味では、
委託者
との
信頼
関係
に基づいてかなりプライバシーにも及ぶ情報も含めて託せる対象といいますと、もちろん
弁護士
だけとは申しませんが、その有力な候補として
弁護士
が期待されているのではないかというふうに自負をしております。 と同時に、
財産
を守るという
観点
からは、やはり不幸にして何らかのトラブルや
第三者
からの
権利
侵害があったときに的確にその
受益者
のために守ってくれる存在という意味で
弁護士
に期待されている点もあろうかと思います。 それと、そういうことも含めまして、
弁護士
が
受託者
として担い手になることについて是非明文で認めていただきたいと。少なくとも
弁護士会
としては解釈論上は現在でも特段問題はないというふうには理解しておりますが、
信託業法
二条で
信託業
を
定め
ている条文が見直されるのであれば、そこに
弁護士
業務を除くということを明記していただきたいというふうに考えております。
仁比聡平
57
○
仁比
聡平君 ありがとうございました。
近藤正道
58
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。 今日は、三人の先生方、大変貴重な御
意見
をいただきまして、ありがとうございました。 お話を聞いて、この
信託法改正
の展望が相当開けてきたな、とりわけ福祉型の
信託
あるいは
目的信託
、前途に非常にもう明るいものを感じますし、弊害の防止
措置
というのが
一つ
の課題なんですけれども、それについてもそれぞれ適切な御指摘をいただきまして、私、割と
信託法
の
改正
について懐疑的なところがあったわけでございますけれども、それが解消されていく、そういう思い、かなりひとしおでございます。 いろいろお聞きしたいことは結構あったんですけれども、一番
最後
でありますので、もう前に各
委員
の皆さんが聞かれておりますので、重複は避けたいというふうに思っています。 そこで、今ごろこんなことを聞いてというふうに怒られるかもしれませんけれども、そもそもの一番スタートのことについて
池田参考人
にちょっとお聞きをしたいというふうに思うんです。
信託業
界六百五十兆円という膨大な数字を示されましたけれども、私にとりましては具体的な
イメージ
がさっぱりわかないんですよね。
信託
というものはとにかく国民にはなじみが非常に薄いと。
信託業
界というのはどんなことをしているのかなと、分かっている人はほとんどいないんではないかと。そういう中で、今ほど六百何十兆という、そういう話が出てきて非常に戸惑っておるんですけれども、
信託業務
というのはどんなものなのか、国民とどういう接点を持っているのか、是非分かりやすく改めて説明をいただきたいということと、今度の言わば
改正
で、その業務のうちのどの辺の
部分
がこれから大きく伸びていくのか、今までとどこが業界でどういうふうに変わって拡大をしていくのか、その辺を鳥瞰図的に分かりやすく御説明いただけますでしょうか。
池田輝彦
59
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。 先生御指摘のように、
信託業務
、どうも国民の皆様には余りなじみがないということかもしれませんが、ごく簡単に申し上げますと、お客様の
財産
を預かり、その管理処分を行い、そして管理に伴う計算などの事務を行う業務と言うことができます。 具体的な商品で申し上げますと、例えば企業にお勤めの方の年金をお預かりする年金
信託
の
財産
の管理運用や、
投資家
の方の
投資信託
の
財産
である有価証券の管理などは
信託銀行
が
受託者
として
信託業務
を遂行しております。その受託残高は、平成十八年三月末で年金
信託
が約七十六兆円、そして先ほどの
投資信託
の管理の
部分
ですが、これが七十五兆円に達しておりまして、先ほど冒頭申し上げましたように、
信託財産
の全体では三月末で約六百五十兆円に達しております。このように、
信託
は高度な
財産管理
運用の機能としまして我が国経済、国民生活の重要なインフラになりつつあるものと私どもは認識しております。 そして、二点目の、ではどのような
活用
方法
が広がるかと、こういう御質問でございますが、今回の
信託法改正
では、例えば、
一つ
にはシンジケートローンなどにおきまして
債権者
以外の者に一括して担保を管理させるために
信託
を
活用
する、いわゆるセキュリティートラストというものの取組が可能となること。そして、
受益証券発行信託
の
規律
の導入によりまして、
信託
受益権
の流通可能性が高まること。また、後継ぎ遺贈型の
受益者
連続のルールが整備されることなど、
個人
の
財産管理
、
財産
承継の
分野
におきまして
活用
方法
が広がることなど、様々な
活用
方法
の拡大が見込まれます。 このように、お客様と
受託者
の双方にとって使い勝手が良くなり利便性が
向上
することによって、今後いろいろな
場面
でより一層
信託
を
利用
していただけるようになると私どもは考えております。
近藤正道
60
○近藤正道君 今ほど来の
参考人
の皆さんと
委員
とのやり取りの中で、私としてはこれから言う懸念は相当
程度
うせたわけなんですが、あえてせっかく質問として用意をしてきましたので、ちょっと聞きにくい質問で大変恐縮でございますが、もう一度
池田参考人
にお尋ねをしたいと思いますが。 今回の
信託法案
の
改正
、大幅に中身が変わるわけでございますが、
信託業
界の
利益
拡大というものがやっぱり相当その
背景
にあるんではないかと、こういうふうな指摘も一部にあるようでございますが、今ほど申し上げましたけれども、その懸念、かなり私としては解消させてもらっておりますが、あえて質問をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
池田輝彦
61
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。 まず、今般の
信託法案
のポイントの
一つ
であります
受託者
の
義務
の合理化、これは
現代社会
に適合するように
受託者
の
義務
の
規律
の明確化を図るという趣旨でありまして、
受託者
の
義務
を従来以上に緩和するという趣旨ではないものと理解しております。 また、私ども
信託銀行
は、
信託法
だけではなく、
信託業法
及び
兼営法
の
規律
と相まって
受託者
の
義務
を果たしていくことになります。 また、
信託法案
では、
信託事務
を外部の専門家などに
委託
しやすくなるといった
自己執行義務
の合理化が図られております。この
手当て
によりまして、様々な専門家の
方々
との共同によるより良い
信託
サービスの提供が図られることになります。 また、新しい
類型
の
信託
につきましては民事
分野
でのニーズがより強いものと理解しておりまして、新たな担い手の参入や、それに伴い競争が激化することになりますが、私ども
信託銀行
といたしましては、適切な競争によりまして切磋琢磨することで
信託
の健全な発展につなげていきたいと、このように考えております。
近藤正道
62
○近藤正道君
中田参考人
と
深山参考人
にお尋ねをしたいと思いますが、事業
信託
がこの法
改正
の
一つ
のポイントになっているというふうに思います。その中で、事業
信託
と労働者の
権利
義務
というものが
一つ
ポイントになるんだろうというふうに思うんですけれども、なかなかこの
議論
は、営業譲渡だとか、あるいは
会社
の
分割
のときのような論議にならない。私もいろんな
関係
者に聞いてみるんですけれども、確かに理論的に、債務の移転というものがあるわけですから何らかの形で問題になるんだろうと思うけれども、しかし具体的な
イメージ
がどうしても出てこないと、皆さんそういうふうにおっしゃるんですね。 そして、この間も衆議院でその
観点
での質問が多少あったと思うんですけれども、おしなべてこれは営業譲渡あるいは
分割
の場合と違って問題はないということなんですが、皆さんとしてはどういうふうにこの労働者の
権利
義務
、とりわけ労使で争っている最中にこういうものが行われて、ある意味でだれと交渉していいのか、気が付いたら
財産
がどこかへ、別のところに行っていたとか、いろんな問題、観念的にあり得ると思うんですけれども、この辺についてはこの
実務
で深く
改正
にかかわったお二人はどういうふうに考えておられるのか、お考えをお尋ねしたいというふうに思います。
中田裕康
63
○
参考人
(
中田裕康
君)
会社
法自体が柔軟化された結果、
会社
法を使った場合の
規律
を免れるために事業
信託
を用いて、それで労働者の
立場
を悪くするということは、まあ実際にはそれほどないのではないかなという予想をしております。 仮に、しかし、濫用的かどうかは別にいたしまして、事業
信託
を用いることによって労働者の
権利
が害されるかというと、これは今御指摘のございましたように
一般
的なルールが当然適用されるということになりまして、例えばその条件を
変更
する際に労働者の同意が必要であるというようなことで担保されるのではないか。さらに、もしも濫用的な使用があった場合には、これは
一般
法理によって
対応
できるのではないかというように考えております。
深山雅也
64
○
参考人
(
深山雅也
君) 労働者の
権利
義務
についての心配ということで御質問があったかと存じますが、そもそも事業の
信託
というものは特別な
類型
、特別な
信託
として認められたということではなくて、
財産
、積極的な
財産
以外に消極的な
財産
、債務も
信託財産
に取り込めるという意味で、結果としてその事業が
信託
されるという
状況
をつくり出せると、こういうものであります。 そうしますと、その中身というのは
基本
的には
信託財産
を
委託者
から
受託者
に
権利
が移転をするということでありまして、実際には事業をそこでしようと思えば、そこで働く人がいなければ
財産
だけ移してもできませんので労働者の地位の移転というものが必要になってくるとは思いますが、しかしそこでは当然労働者の
意思
を無視してそういうことができるということではなくて、労働条件の
変更
にしろ、あるいは転籍にしろ、当然労働者の同意を得てやるということが前提になろうかと思いますので、実際には余り心配がないだろうというふうに考えております。
近藤正道
65
○近藤正道君 あと二分ぐらいありますので
最後
の質問でありますが。先ほど
中田参考人
に質問がありましたけれども、あとのお二人、
深山参考人
と
池田参考人
にはなかった問題なんです。つまり、今回の法
改正
で積み残された問題のうち
公益信託
についてのこれからの展望のことなんですね。これは先ほど
中田参考人
に
仁比
委員
が質問をしましたけれども、同じ問題を
深山参考人
と
池田参考人
、どういうふうに考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
深山雅也
66
○
参考人
(
深山雅也
君)
公益信託
につきましては、公益法人
制度
の抜本的な
改正
を踏まえて、それに平仄を合わせて整備をするということで、一歩立ち後れた形にはなっております。 公益法人の方も、
法律
はでき上がりましたが、更に具体的なことはこれから、とりわけ公益認定の基準なりといったものについては正にこれからだと思います。そうなりますと、公益法人の方の公益認定の考え方や仕組みが
公益信託
の方にも同じような形に取り込まれてくるということですので、まずそこの
議論
が先決であるということと、
信託
の場合は、
目的信託
という形で、必ずしも
公益信託
と認定できないものについて、言わばその
目的信託
として救う道というものもあろうかと思いますので、そういう意味でも、まずは
公益信託
のルールが確立したところで、その周辺に位置する
目的信託
の方も解釈等が定まってくるというふうに理解しております。
池田輝彦
67
○
参考人
(
池田
輝彦
君) お答え申し上げます。
公益信託
は、篤志家の方の善意に支えられ、これまで公益
分野
への助成の枠組みとして広く用いられてきておりまして、平成十八年九月末の受託残高は、
信託
協会加盟の社員
会社
全体で五百七十九件、六百五十五億円となっております。
公益信託
につきましては、今後、公益法人
制度
改革の
内容
と整合性の取れた
制度
の見直しが見込まれております。 公益法人
制度
改革につきましては、
法律
の
施行
は平成二十年度中であり、さらに、移行期間は法
施行
から五年間とされておりますが、政省令等にゆだねられている
部分
も多く、
制度
の詳細は現段階では明らかになっておりません。 引き続き、公益
信託制度
は、公益増進のために貢献できるよう、公益法人
制度
改革とともに
検討
を行っていただきたいと考えておりますので、何とぞ御理解を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
近藤正道
68
○近藤正道君 終わります。
山下栄一
69
○
委員長
(
山下栄一
君) 以上で
参考人
に対する
質疑
は終了いたしました。
参考人
の
方々
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、大変お忙しいところ貴重な御
意見
をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当
委員会
を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手) 本日の
審査
はこの
程度
にとどめ、これにて散会いたします。 午後零時二分散会