○
沓掛哲男君 両
大臣から非常に適切なお答えをいただきましてありがとうございました。
そこで、今、
財務大臣がおっしゃられましたように、
経済成長を図りつつ、そして
財政再建を進めていく上においては
民需主導型の
経済運営が何よりも必要だというふうに
思います。
さて、
国際化が進み、また
中国等近隣諸国のすさまじい
経済成長の中では、それらの国よりも常に一ランク進んだ高い
技術を要するそういう
製品やサービスを提供していくことが必要であり、そのためには
ベンチャービジネスの
育成ということが不可欠だというふうに思っております。
今年の八月に、
戦略的外交ということでマーシャル、
ミクロネシア、パラオという三国へ私、総理の代理で行ってまいりました。そのとき、何かお土産が必要だと
思いました。そこで、
セイコー社の
時計がいいと思って、いわゆる三越に買いに行きました。
立派な
セイコー社の
時計があるので、これかなと思って、裏を見る、あるいは後ろを見ると、みんな
メード・
イン・
チャイナと書いてあるんです。で、
メード・
イン・
チャイナを持っていったんでは、
ミクロネシアでは正に
日本と
中国が、あそこで競り合っているところですから、敵に何も利を与えることはないので、
日本で作った
時計はないんですかと言ったら、もう
日本では
時計作っていませんと言うんです。
日本ではいわゆる重要な部品のところだけ作って、それを
中国へ持っていって、そして
中国で組み立て、周りとかそういうものは全部
中国品で、
日本ではもう
時計は作っていませんと言うんですよ。
いや、これには大変驚きました。やっぱり
日本というのは、やっぱりそういう一ランク高い、そういうものを作っていく。そういうことがもうこれから必要だし、そのためには
ベンチャー企業の
育成というのは欠かせない大事なことだというふうに
思いますので、これについて少しお話ししたいし、最後に
質問したいと思っています。
ベンチャー企業の
育成には
知恵と金が必要です。
知恵を
特許から、また金を
証券投資の面から見てみたいと
思います。
特許庁の
報告書を見ますと、
日本には
特許権が九十九万件ありますが、利用されているのは四十八万件、半分弱です。
日本の
特許の
内容は、革新的な
発明はほとんどありません。専ら
改良型発明が中心であります。革新的な
発明に対する
日本での
理解が非常に低いということが
原因かなというふうに思っています。
例えば、この間
ノーベル賞をいただきました島津製作所の
田中さんは、その
発明になる
特許ができたときに、
社長さんから賞品として一万円の
お金をいただきました。
日本では
ノーベル賞的な
発明がまあ一万円です。
じゃ、
アメリカではどれぐらいするのかなというんですが、最近のデータを私ちょっと持ってないんですが、少し古いんですけれども、例えば、
豊田佐吉が
日本で
織機を
発明した、しかし
日本では非常にただのようなものですから
アメリカへ持っていって売ったら、今の
お金で約一兆円になったというんです。そして、それで
豊田佐吉が帰って長男の
豊田喜一郎に、
織機の
時代ではない、
自動車の
時代だからこれで
自動車産業を興せと言って渡した。その一兆円を元にして今のトヨタがあるというんです。
また、私の石川県の
金沢出身の
高峰譲吉という方がおられます。これは
アメリカでアドレナリンとか
タカジアスターゼを
発明するんですが、同じく
アメリカで売ってほぼ一兆円の
お金を得ました。そして、三共製薬、今の
三共株式会社の
初代社長としてその
会社を起こしているんです。
ですから、
アメリカでは約、
ノーベル賞的な
発明は一兆円、
日本では一万円では、なかなか
日本では進まないのかな。じゃ、
日本の
改良型発明は駄目なのかというと、とんでもないことで、
日本のこの
改良型発明というのもすばらしい力を発揮しております。それは、いわゆる
日本の
技術というのは
蓄積型の中で大きな力を発揮しているんです。
例えば
自動車ですと、
基本技術が幾つかあります。例えばエンジンもありましょう、それから
足回りのものもありましょう、まあいろいろ操作するそういう
基本技術というのがあるんです。そして、その
基本技術一つ一つにたくさんの
改良型発明がなされて、そして全体としてすばらしい
製品ができているわけですから、なかなか
日本のまねはほかの国ではできない。そういう
日本は
蓄積型技術でいろいろなものができてきているんで、そういう点で
改良型発明というのも非常にまあ重要ではあるんです。
さて、
特許の二分の一強が利用されていないのですが、まあ
業種別に見て特に利用されていないのはどこかというと、教育、それから
公的研究機関、それから公務に関する、こういうものは
利用率二五%です。で、
医薬品工業も
利用率三七%、
輸送機械工業でも三七%となっています。
で、
我が国の
特許について、特に
外国で通用する
特許権を取得していないもの、かなりあります。やっぱり
外国でも
特許通用するには
お金が要りますから、そういう
特許を
外国で取ってないものがございますが、そういうものについては
外国からの
アクセスが多く、特に韓国からの
アクセスがすごい勢いで来ております。
さて、
知的財産の形成には人材、金、時間が費やされているのですから、
外国でただ使いされてはたまりません。
日本で活用することが是非必要です。
ベンチャーを起こすに必要な、まず
知恵は
我が国にはたくさんあるわけです。では何が問題なのかということ、これが次の
質問なんですけれども、しかし
ベンチャーを起こすにはやっぱり
お金が必要なんです。
アメリカで
ベンチャー企業を起こそうとするとき、
起業者は
銀行にお願いしますと。
銀行が、そんな危ないのはおれ嫌だよと言えば、いわゆる豊富な
資本市場から必要な
お金を調達してまいります。ところが、
日本の場合は
資本市場が余り
育成されていませんから、専ら
銀行頼りです。ところが、
銀行というのは、やっぱり何といってもそういう危ない
企業、
事業には
投資したがりません。
アメリカでも
ベンチャー事業の
成功率は五割から六割と言われています。
アメリカでは、じゃ
ベンチャー企業を起こすのを決定するのはだれかといえば、今申し上げたように
起業家なんです。ところが、
日本の場合、
ベンチャー企業を起こすかどうかを決定するのは
銀行家なんです。あの保守的で本当に安全第一の
銀行家を頼りにしていたんではこれはなかなか大変で、
銀行家に首根っこを押さえられていては
ベンチャーの芽は出にくいです。まあ、もちろん
自己資金をたくさん持っているとか、大
企業を支援するのは別なんですが。
そこで、お
手元にお配りしてあります、どういう
資本市場の
育成状況かというのをお
手元に配った資料で見てください。
この左側の方の
丸印で書いてある、これは
我が国の
個人金融資産がどのように使われているかというものを示しております。千五百五十六兆円の
個人金融資産があります。
投資的に使われているのは、上に太い線であるように、
投資七・九、投信三・六、一一・五%、
我が国の
個人金融資産の一一・五%はこういう
資本市場で今のようなところに動くんですね。で、真ん中が
ドイツです。
ドイツは一八・七%が
資本市場で、そして
アメリカは右のあるように二八%がございます。
昔、三十年ほど前は
日本も
ドイツも余り違わなかったんですけれども、
ドイツは
アメリカからそういう
専門家を呼んで、そして一生懸命やった成果がここへ上がってきているんです。まあ
アメリカはこの
個人金融資産の
ベースも広いです。合計三十九・八兆ドルは、
日本円に直すと五千兆です。
日本は千五百五十兆、
アメリカは五千兆、その五千兆のうちの二八%、いわゆる千四百兆円が
資本市場で動いているし、
日本は
資本市場で動いているのは百八十兆円という、大きな差があります。まあ
アメリカ並みとは言わなくても、せめて
ドイツ並みの一八%ぐらいには是非持っていってもらいたいなというふうにも
思います。
そこで、実は一昨年から昨年にかけて参議院自民党の政審で講師を呼んで、この
資本市場の
育成を一生懸命勉強いたしました。まあ、税制等の優遇措置を比較しても、
日本は余り
外国とそう遜色はないんですよ。しかし、こんな大きな差があるのはなぜなのか。私なりに言えば、
銀行が余りにも強過ぎるのか、あるいは国民の意識が投機的なことに向かないのか、あるいは証券
会社の
投資家に対する対応がいま
一つ足りないのか。よく言われているんですけれども、素人で長年株をやって、そしてもうけられるのは十人に一人だと言うんです。
そういう中で、記憶に残っている某証券
会社、有名な証券
会社の
社長さんの
言葉がございます。それはこういうことでした。国会議員、参議院の国会議員四、五十人いたんですが、ここにおられる国会議員の皆様で株をやっておられる方はおられますかという
質問に対して、この数十人の中で三、四人の人だけが株をやっているということでした。その
社長は、国会議員の方が株を売買すると議長に届けなきゃならないし、公務員でも審議官以上の人が株を売買すると役所にやっぱり届けなけりゃならないという、そういうことがありますが、これを是非緩和してほしいということでした。まあ株式と特別関係のある部署なんかは別でしょうし、又は多額の取引をする人も別だとは
思いますが、一律に政治家もいわゆる官庁のリーダーの
人たちも非常に株が、まあ一々報告するというんじゃ、とてもなかなかそういうことはできませんですね。
そこで、
山本金融大臣にお尋ねしたいんですけれども、
我が国の
個人金融資産に占める株式プラス
投資信託の構成比は近年少しずつ高まっているものの、諸
外国と比較した場合、依然として低い水準にあります。貯蓄から
投資への促進が必要と
思いますが、効果的、抜本的改革についてお尋ねします。せめて
ドイツ並みの一八%程度を目標にお願いしたいというふうに
思いますが、ちなみに
大臣は株をお持ちですか。私は持っておりません。まあこの最後の
質問はどちらでもいいんですけれども、私は持っていません。是非ひとつお願いいたします。