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参考人(牧村功君)
建築設
備技術者協会会長の牧村でございます。
まず、この
国土交通委員会という公の場で、
設備設計業務にかかわる者がこんな形で
意見を述べる機会をいただきましたこと、誠に感謝申し上げます。
当協会は、
建築士法が
改正されました際、
建築設備士というものが制定され、その機会に建設
大臣の許可を得て一九八九年に設立されました社団法人でございます。構成員は、
建築設備士、それから空気調和・衛生工学会の
設備士及びこれらの資格取得を志す者のいわゆる
建築設備技術者から成る職能
団体でございます。
今日、お渡ししておりますパンフレット、これ中をごらんになっていただければというふうに思います。
私ども、常に
技術の
向上と、それから社会的地位の
向上ということを目途にしまして、社会への貢献、環境の保護、法の遵守等の当協会の倫理綱領、これ次のページに一枚ございますけど、こういう綱領を定め、それに基づいて行動をさせていただいております。
まず、今回の
建築基準法及び
建築士法の
一連の
改正でございますが、昨年の耐震強度偽装
事件により、大変
国民、
消費者に対して抱かせました
建築物に対する安心、安全への
不信感、それを払拭するに十分な
対応ができると判断させていただき、高く評価をさせていただいております。
また、今回の専門分野の資格を設ける
建築士法の
改正についてでございますが、大変私事でございますけれども、
設備設計監理にかかわる
技術者として、また、私自身大学のときに先輩から言われたことでございますが、
建築の設計というものは、意匠、構造、
設備の各分野のプロが相互の立場を
尊重、そして信頼し合って、その三者がいろいろ
意見を言い合いながら
議論を重ねた上で
建築というもののコンセプトをつくり、そして補完し合いながら竣工するまで検討し続けて、そして各々の
責任分野を全うすると。そこで初めて高品質で良好な社会ストックが生まれるという先輩の言葉をいただき、それを基に私自身四十年仕事をしてまいりました。
この先輩の助言が今回
建築士法の
改正によって
設備監理にかかわるすべての意匠、構造、
設備の
関係者が対等な立場で業務にかかわって、そして
建築主と社会のニーズにこたえた良好な
建築物を造り上げることができる、そのような環境になるということで、大変高く評価をさせていただいております。
言い換えますと、今まで過半の
建築物がいわゆる意匠設計が主で、構造、
設備が従という、そういう
関係で設計されていたのではないか。結果的にエンジニアの意向が十分に設計に反映しづらい
関係で設計されていたのではないかというふうに言えるかと思います。
今回、
建築設計の歴史始まって以来初めて、構造と
設備の設計者にとって大変
責任と権限のある法的な裏付けのある業務独占というもののある資格ができようとしているということは大変高く評価し、
建築業界でエンジニアとして活躍してきた多くの者が感謝をしているというところでございます。
私ども協会を含め、
建築設備の
団体、六
団体ございますけれども、そこの協議会をつくりまして、昨年の
事件以来、一年間にわたり
国土交通省の
住宅局の
建築指導課長、それから室長、担当官と月一回、それ以上のペースでいろいろと
意見交換、
議論を重ねてまいりました。我々の要望をよく理解していただき、是々非々で回答をいただきながら本日を迎えましたことに関してもまた感謝申し上げます。
ここで
設備設計者の社会的地位
向上及び
技術の
向上の歴史をちょっと述べさせていただきますと、一九五〇年に
建築士法が制定されて以来すぐ、いわゆる
設備の
技術者の資格という問題がその仲間の中で発生しました。当時、社団法人の衛生工業協会、これは現在の空調・衛生工学会になっておりますけれども、その中で
設備士の制定設置構想というものを作成しまして、当時の建設省、それから衆参両議院
関係者と接触をいたしましたが、結果的には法制化に至りませんでした。
ということで、まず
民間ペースで
設備士という資格をつくり、そして資格者の
団体として
設備士会、行く行くは日本空調衛生
設備士協会という形で変わってきましたけれども、そのような
民間団体で資格をつくり、そしてその資格の普及、それから活用の推進、それからもう
一つ、一番大きな法制化の推進ということを目的として活動してまいりました。結果的に、三十年間その活動をした結果として、一九八九年、一応その会は解散したわけでございますけれども、これは正に
建築設備士という士法が制定されたタイミングに次の組織へ移っていって私どもの協会に変わっていったという経緯がございます。
建築設備士の誕生の経緯と現在の業務の実態を紹介させていただきますと、実は一九六九年、かなり前のことでございますが、建設省さんの呼び掛けによりまして
建築業務基準
委員会というものができ上がりました。その場で一番大きな問題は、
設備技術者の法的資格の早期実現ということで、当時の建設
大臣に幾度と要望を出させていただきました。一九八三年になりまして、
建築審議会答申の中で、
建築設計・工事監理業務のうち、
建築設備に係るものに携わる者の資格を創設することとするという結論までいただいたわけでございます。それを受けて、当時、建設省さんの方でいろいろと
改正案を検討されました。
諸般の事情によりまして、結果的に業務権限、いわゆる独占業務のある資格創設というのは見送られまして、皆様御存じのように、
建築士法の第二十条第五項に書いてありますように、ちょっと読み上げますと、
建築士は、大規模の
建築物その他の
建築物の
建築設備に係る設計又は工事を行う場合において、
建築設備に関する
知識及び技能につき建設
大臣が定める資格を有する者に
意見を聴いたときは、設計図書又は工事監理
報告書においてその旨を明らかにしなければならない。これは正に
建築士に対する助言はできても、実質的にはその設計に対して
責任を負う立場ではないという、そんな形で
建築設備士というものが生まれたわけでございます。
それ以降、
建築設備の登録
団体として当協会が一九八九年に発足したわけで、それ以降、
建築設備士の活用範囲というのは単なる
一級建築士に対するアドバイサーの立場ではなく、いろいろな業務にかかわってまいりました。
設備設計及び監理の協力業務、これが実は主たる業務でございまして、
民間の中では大変重要な資格として運用されているということを紹介させていただきます。
また、実際、
建築設備士というのはどんな仕事をしているかということで、私ども、中学生向けにこの「くうき・みず・でんき」を皆様にお渡ししているかと思いますが、こういう絵本をつくらせていただきました。この中に実は
建築設備の
内容ということを網羅させていただいております。これだけ多くの
内容を、かなり深いものを、かなり専門的な
能力を持った人間でないとこういうものは設計できないということで、参考までにお渡ししたいと思います。
今年の三月現在で
建築設備資格者の取得者は三万五千人強でございます。その中で登録者が約三万三千人、そのうち約四分の一の方々が当協会の会員となって活躍していただいているわけでございますが、この
建築設備士の構成比率、これ大変重要なことでございますけれども、
建築系の大学を出た方が恐らく二割弱ではないかと。それで、機械系の大学を出た方が約四割強、それから電気系の出身の方が四割弱という形で、約一対二対二という形で構成されているのではないかというふうに想定しております。
実は、三万二千人のうち、実質的に実際設計にかかわっている方というのは約一万人以下ではないかなというふうに思っておりますけれども、その一万人では実質的に設計をするという行為に対しては足らないということで、当協会では何とか毎年千人ずつの資格者をつくり上げ、結果的には約三万人を超える組織をつくっていかないと、この
設備設計ということをサポートする組織にはならないんじゃないかというふうに思っております。
今の
建築設備士がつくり上げてきた歴史とそれから
実情を
説明させていただきました。
それでは、これから
設備設計
一級建築士というのが二年後に施行されるということになりますが、その中で、どんな形でいろんな方々がかかわっていくべきか、それから
制度の
内容はどうあるべきかということで具体的な
お話をさせていただきたいと思います。
まず、
建築設備士の活用でございますが、士法に定められておりますように、アドバイスをした場合には確認申請図書に
建築設備士の記名、捺印、そして登録番号を書くという形で通達をいただいておりますけれども、実質的にこの運用をされているというのが地方自治体では大変少ない。これを徹底して運用していただくことによって、
建築設備士というものがこのプロジェクトに
責任を持ってかかわっているんだろうということが分かるような形で運用をしていただければということで、是非この
建築設備士の有効活用を図っていただきたいというふうに思っております。
それから、今までいろいろ
議論がございました
設備設計
一級建築士を制定したとしても、恐らく当初は三千人ぐらいしかいないんじゃないかと、それから地方にはそういう方が少ないんじゃないかということで懸念をされている方、特に地方の
設備設計
事務所の方々は心配されているわけでございますけれども、これに対する
一つの対策というのを提案させていただきたいと思います。
現在、三階以上でかつ五千平米以上の新築建物というのは年間三千五百件という実績があると聞いております。そのうち、約三分の一が地方で仮に建設されるというふうに想定しますと、約千二百件。この千二百件をだれが法適合性証明を
設備部門でやるかということになりますと、例えば
建築設備技術者協会に
設備設計
一級建築士というものの資格を持った者でかつそれが
委員会活動として百人のメンバーがそろえられたといたしますと、一人年間十二件、一か月一件というペースでできる。たとえその業務が集中したとしても、一週間に一件
対応すれば十分第三者の機関としてその法適合性証明ができるということになるかと思いますので、こんな形で運用するということも
一つの方策ではないかというふうに思っております。是非、こんな形で御検討いただければというふうに思っております。
あわせて、
設備設計
一級建築士だけはなく、
建築設備士という空調衛生の専門
部門とか電気専門の
部門が併せてそのチェックに加われば、いわゆる品質を
向上するという設計性能のチェックもできる、いわゆる設計コミッショニングといいますけれども、こういうことも可能になるのではないかということで、レベルを上げるために
建築設備士というものを有効に活用していただくということが必要ではないかというふうに思っております。
それから、
設備設計
一級建築士の認定要件でございますけれども、やはりかなり高いレベルのものでなくちゃいけないということで、
一級建築士から
設備設計
一級建築士に認定される基準というものは、
建築設備士の資格を持っている者又は同等の
技術レベルを持つ者を目途として確認を受けた者に承認をするという形で運用していただければというふうに思っております。
それから、先ほどちょっと紹介させていただきましたように、
建築設備士というのは、機械系や電気系の人間がかなり多いということで、今後、
一級建築士の受験資格、試験方法に関しましては、電気系、機械系の出身者が大変チャレンジしやすいような試験
制度とすべきではないか。先ほど村上先生からも言われましたけれども、若い電気系の
技術者が、また機械系の
技術者が
設備設計にチャレンジするということの門戸を狭めてしまうということは大変まずいと思われますので、そんな形で試験自身が受けられやすいようにすべきであると。
具体的に申し上げますと、例えば
建築設備士を持っている人は新
一級建築士の受験資格があるとか、それから試験の問題に関しましては、実は
一級建築士の試験というのは学科試験と製図試験になっております。学科試験に関しては
設備関連の問題の比率をかなり多くするということ、それから設計製図試験に関しては、可能であれば意匠、構造、
設備というコースに分けて、そして選択制として試験を構成するということも、若手の電気、機械の
技術者を養成するという
意味でも必要ではないかというふうに思っております。
最後に、CPDの
お話をさせていただきたいと思います。
いわゆるCPD、継続職能開発ということに関しては、各
建築関連職能
団体、
建築学会を始めとしていろんなところで
制度化されておりまして、既に
民間ベースでこの
技術レベルを上げるという
制度は確立し運用されています。是非、
一級建築士や
建築設備士の
技術レベルをアップさせるということに関しては、この
民間のCPD
制度を有効に利用するということでやっていただくということと、それから五年
ごとに指定
講習を義務付けるということで運用していただければ、
一級建築士、
建築設備士の
技術のレベルが上がるのではないかというふうに思っております。
当協会では、
建築設備士で更に五年間いろんなレベルで
研修し、そして実績を持った者に対してジャブミーシニアという称号を与えております。空調衛生の分野とか電気の分野ということでもって与えておりますので、これがいわゆる
建築設備士のある特定分野のプロフェッショナルであると、そういうプロが
一級建築士や
設備設計
一級建築士の助言者として設計協力として活躍できるということを目標にしながら、私ども
技術の
向上、それから倫理観の育成ということを
対応しながら、これからも協会の活動を進めていきたいというふうに思っております。
大変時間が限られておりまして、私自身いろんな
意見を申し上げたいと思ったんですけれども、それで言い足らないところは、実は「
建築設備士」という雑誌、これは当協会の機関誌でございます、十月号の
冒頭のところに十一ページにわたって私の綿々とした思いが入っておりますので、後ほどまた目を通していただければというふうに思っております。
技術者協会の会長の立場で
意見を述べさせていただきました。大変ありがとうございました。