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2006-11-15 第165回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年十一月十五日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  十一月十五日     辞任         補欠選任      犬塚 直史君     岡崎トミ子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         田中 直紀君     理 事                 加納 時男君                 岸  信夫君                 三浦 一水君                 木俣 佳丈君                 谷合 正明君     委 員                 愛知 治郎君                 小林  温君                 山東 昭子君                 末松 信介君                 田村耕太郎君                 二之湯 智君                 野上浩太郎君                 水落 敏栄君                 大石 正光君                 岡崎トミ子君                 工藤堅太郎君                 富岡由紀夫君                 峰崎 直樹君                 若林 秀樹君                 加藤 修一君                 大門実紀史君    事務局側        第一特別調査室        長        三田 廣行君    参考人        神田外語大学外        国語学部教授   興梠 一郎君        法政大学法学部        教授       唐   亮君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (「多極化時代における新たな日本外交」のう  ち、日本アジア外交日中外交回顧と今後  の課題中国外交安全保障))について)     ─────────────
  2. 田中直紀

    会長田中直紀君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、犬塚直史君が委員を辞任され、その補欠として岡崎トミ子君が選任されました。     ─────────────
  3. 田中直紀

    会長田中直紀君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査会調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日中外交回顧と今後の課題に関し、中国外交安全保障について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、神田外語大学外国語学部教授興梠一郎参考人及び法政大学法学部教授唐亮参考人に御出席いただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本調査会では、日本アジア外交について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、日中外交回顧と今後の課題、とりわけ中国外交安全保障について両参考人から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず興梠参考人唐参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、興梠参考人から御意見をお述べいただきます。興梠参考人
  4. 興梠一郎

    参考人興梠一郎君) 御紹介にあずかりました興梠と申します。本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。  余り時間もございませんので、早速、本題に入りたいと思います。  お手元のレジュメをごらんください。今日お話ししたいと思っていますのは四つございまして、まず中国の外交戦略、対日政策の変化、胡錦濤政権外交戦略とは何か、そして台頭への戦略的布石周辺外交の展開、最後に展望、流動化する東アジア情勢、台頭への課題、日本の選択と、主に最後の展望のところをちょっと多めにお話ししようかと思います。  まず、今日の趣旨でございますけれども、日本の今メディア報道であるとか一般の関心というのは、対日なら対日、対北朝鮮なら北朝鮮と、いわゆるバイ、二か国間の部分に非常に焦点が当たっているように私は感じます。  それで、今日ちょっとお話ししたいのは、むしろ中国外交の全体像というか、全体的な外交ステージの中で中国がそういった二か国間をどういうふうにとらえているかと、そこにちょっと重点を置いてまずお話ししたいと思います。  まず、最初の項目ですけれども、中国の外交戦略と対日政策の変化と。  明らかに変化があったと私は感じます。そこにございますように、対日重視、中国の外交戦略の変化から見るということで、対日重視というのは、これは今に始まったことではなくて、反日デモというのもございましたけれども、一つの流れとしてここ数年、認識できると思っております。  中国は積極的に対日関係改善をしてきたというのは、特に昨年の反日デモ辺りから向こうのメディアとかいろんな情報を見ていますと、メディアキャンペーンみたいなものが行われて、日本から学ぼうとか、日本にもいいところはあるんだとか、非常に肯定的な報道が増えておりました。また、靖国問題におきましても妥協点を探るような姿勢が見えてきて、国民といわゆる軍国主義者を分けるとか、A級戦犯に特定して議論を進めていくとか、いわゆる日中関係のソフトランディング化をねらうような姿勢が非常にはっきりしていたと。  その後、自民党の総裁選であるとかポスト小泉政権をにらんでますます積極的な外交姿勢がはっきりなっていったと。いわゆる野党外交とか民間外交とかいわゆる財界外交とか、中国のお得意の統一戦線的な発想で、周りから囲んでいくというふうな姿勢がはっきりと見られたと。そういった戦略的な部分というのは、実は背景には外交戦略これ全体の重点的なシフトがあったんです。これが意外と余り議論されておりませんで、それをちょっとお話ししたいと思います。  まず、外交で経済成長環境づくりというのは、これ改革・開放政策を始めてトウ小平時代からずっと続いておる既定方針でありまして、中国の外交関係者経済成長というのを念頭に据えて外交をやれというふうにずっと教えられてきたわけです。  ところが、胡錦濤政権になりましてからこの政策に若干の重点の変化が見られると私は思います。経済成長環境づくりという点では変わらないんですけれども、例えばその経済成長環境づくりとしましては、対日に限りますと、貿易、投資、技術導入とかそういったものでやはり重要な日本と、資金と技術と。日本を再認識しようと、これはまあ当然ずっとあったわけで、反日デモで日本の中で嫌中ムード、中国を嫌うようなムードが国民にも広がっていったと非常に懸念していて、それがビジネスに影響するんじゃないかとかなり懸念していたと。  中国国内でも、その反日意識が高まると、御存じのようにこれは政情不安につながっていくと。反日はよく反政府に転換しやすいので、国内のいわゆる調和社会づくり胡錦濤政権は目指しているわけですから、国内的な問題も出てくる。また、日米同盟が強化されていくと中国は不利な地位に置かれると。例えば、台湾問題であるとか、そういった安全保障面でも不利になる。台湾の独立派が勢い付くとか、統一に不利になる。いわゆる、国内のいろんな問題に跳ね返ってくるという懸念がありました。  しかし、これは従来から大部分あったわけですけれども、対日関係の改善の背景に、先ほど申しましたように、大局的な外交戦略があったと。それをちょっとお話ししたいんですが、まず周辺外交というコンセプトなんですけれども、これは日本でも紹介されていますが、これは、中国の内から見た周辺外交というのはどういうニュアンスがあるかというと、まず中国の現在の政権の認識としましては、アメリカによって中国の台頭が封じ込められているという空間意識を持っていると思うんですね。それが東西南北から封じ込めに遭っているというような意識を持っておりまして、すべての政策がそこから出てくると。台頭をしようと思うんだけれども、それを阻止されるのをどうやったら、打破したらいいのかと、そこが一番のポイントなんですね。その結果として対日政策とか対北朝鮮政策とかASEANとか、そういったものが出てくると。  最近、この周辺というのをちょっとコンセプトを拡大して大周辺という言い方をしております。これは広く、ラテンアメリカとかアフリカとか、そういったものを視野に入れて、アメリカの世界的な戦略の中で中国の封じ込めに対してどうやって対応していくのかと。かつての第二世界、第三世界というコンセプトの現代版なんですけれども、まあそういう認識があると。  そして、対米重視というところはしかし変わっていなくて、アメリカに嫌われたら台頭できないという現実認識もあるわけです。しかし、アメリカになめられたら駄目だと。ですから、周りに一杯仲間をつくって、理解者を増やしていって牽制していくと、非常に分かりやすい戦略。その周辺地域というのがいわゆる緩衝地帯、バッファーになるわけですよね。そこで理解を深めて対等な足場づくりをすると。  対日政策ももうその一環であるということだと思います。例えば、近年の全方位外交と中国でも言っておりますが、ベトナム、北朝鮮、韓国、ASEANアフリカラテンアメリカ、EU、ロシアとか、まあ目まぐるしい外交活動をやっております。これは多極化の推進と、アメリカの一極に対する多極で対応すると。できるだけ仲間を増やして、台頭するための環境づくりをしていく。最終的には中国脅威論を払拭して、取り払って、そういったいろんな抵抗を少なくしていくと。  対日というのは実はその中でも一番難しい部分だったわけですね。周辺は割かしうまくいっていたと、ASEANであれ韓国であれ、うまくいっていたと。ところが、恐らく今一番難しいと思っているのは対日と対北朝鮮だと中国は認識しているんじゃないかと思います。これは、日本の場合は特に台湾が絡むと見ていますし、日米の同盟強化によって台湾の独立勢力が強まるとか、そういった懸念も持っておりました。過激なナショナリズムが双方で強まれば、これが悪循環になって、先ほど申しましたように、中国は現在、国内いろんな問題を抱えております。格差もありますし、集団抗議活動というのも頻発しておりますし、反日というものがそういったナショナリズムが利用される形で政治的な変動をもたらすこともあると、そういった見方があったわけです。  次に、そういった前提がございまして、胡錦濤政権外交戦略というのはどういったものになっているかというと、そこにちょっと、鳴りを潜め、これは中国語でタオグアンヤンフエイと、韜光養晦、ヨウスオズオウエイ、やることはやる、有所作為と、こういったのが元々トウ小平時代からあったんですね。これは、天安門事件の後に孤立状態に追い込まれたときに、鳴りを潜めて黙々とやりましょうということだったんですけれども、最近この胡錦濤体制になってから後ろの方に、やることはやるというところを非常に重視し始めておりまして、国内のいろんなそういった国際問題の専門家であるとかそういった世論の方も、もう黙っていないで権益を主張するところはしようと、これが今日の日本との摩擦なんかにも出てきていると。日本側がそれを認識しているかどうかということが今後の問題にもなってくると思いますね。  当時、天安門事件の後は、ソ連が崩壊した結果、やっぱり社会主義イデオロギーに対する見方とかそういったものが中国国内でかなり衰えて、イデオロギー色からの脱却ということで、韓国と国交正常化をしたりして全方位外交を進めていくと。つまり、中国は天安門事件以後、実はイデオロギーから脱却して国益を前面に据えた現実外交という世界に入っていったわけです。逆に言えば、北朝鮮はそこで取り残された形になって、自分の安全認識といいますか、不安定な心理といいますか、そういったものが非常に高まっていったということも過去を振り返ってみると言えるわけです。  この胡錦濤時代というのは、先ほど申しましたように、できることはやるという重点にシフトしましたけれども、それが二〇〇三年ごろから平和的台頭外交戦略という形にはっきりとなって出てきたわけです。これは、WTOに加盟を果たして経済成長も加速し、かなり自信を強めてきたと。鳴りを潜めるじゃもう駄目じゃないかと、何かやっぱり国際ルールを自分からつくっていくような気概がないと逆に封じ込められてしまうと、経済至上主義でやってしまうと駄目なんだと、そういった意識もあったわけです。  それから、今世紀の最初の二十年というのは戦略的なチャンスだと。恐らく大きな戦争もないだろうし、中国にとっては台頭のチャンスだという見方もありましたので、この二十年はしっかりつかもうと。それが二〇〇二年の第十六回党大会なんかでもはっきり提起されたということですね。そして、平和的な環境を活用して経済成長、それから中国脅威論を周りとの協調関係によって払拭して台頭の障害を減らすと。つまり、手段は平和、目的は台頭ということだと思いますね。  その台頭への戦略布石という次の項目なんですけれども、これは周辺外交というのが一番の柱になっています。これは中国国内ではっきり言われておりますけれども、周辺が主要なんだと、大国はかぎなんだと、発展途上国は基礎なんだと、多国間外交は舞台なんだと、これ繰り返し繰り返し出てくる戦略論なんですね。これはどういうふうに解釈するかというと、従来は対米重視だったわけですね、江沢民時代なんかもそうですけれども。そういう対米重視にした結果何にも得られなかったじゃないかと、逆にアメリカから結構いろんな注文付けられて不利な状況に置かれてしまったと。ですから、周辺を固めてアメリカといろいろやり合っていこうと。ですから、大国外交というのを非常に重視するようになりました。  同時に、大国ばかりに目をやっておりますと、台湾問題なんかでやはりアフリカとかラテンアメリカとか、こういうところを押さえておきませんと独立勢力へ一票入るということになってしまうということで、やっぱり多国間は基礎なんだと、これは国家の利益において基礎なんだと、あっ、ごめんなさい、発展途上国は基礎なんだということになるわけです。  多国間というのは何かというと、多国間といろんな関係を結んで、そこで自分の力を、力量を見せて、例えば六か国協議なんかも典型ですよね。あれで中国が問題を解決できるんだと、平和的にやれるんだと、東アジア秩序形成者なんだということを世界じゅうに見せることによって、ああ、中国は怖くないんだと、こういった平和的な問題解決をやれる力量があるんだと。これが敵をなくして台頭へのサポートを増やしていくと、こういった戦略になるわけです。  多極化は、先ほど申しましたように、アメリカ封じ込めというのはやっぱり意識しておりまして、緩衝地帯の拡大であると。これは伝統的な中国の戦略で、毛沢東時代からあった第二世界、第三世界論というやつになるわけですけれども、その結果、積極外交というのを非常に展開しておるということになります。  この重点のシフトの理由というのは、先ほど申しました、やはり対米重視によるデメリットが大き過ぎるんだというところからまず始まったということです。逆に言えば、その対米交渉力をどんどん強化するためには自分の戦略的な価値を上げなきゃいけないと。要するに、中国がいないと北朝鮮問題は解決しないんだとか、中国がいないとアメリカは困るんだというふうな意識を持たせることによって自分の空間を増やしていくと、そういった認識があるんだと思います。  ですから、一方でアメリカ封じ込めを嫌に思いながらもアメリカとはパートナーであると。アメリカから例えばステークホルダーと言われたということで、ああそうなんだ、アメリカは私たちを利害関係者と見ているんだということを前面に押し出して、アメリカとは一緒にやっていくんだということを見据えていくと。ですから、これは全く矛盾しておりませんで、先ほど言ったような戦略的な配置があって、こういった計算の下でなされていると。  次にちょっと御紹介申し上げたいのは、この「台頭への戦略的布石」の中の二つ目ですけど、四つの外交環境。これは直接に胡錦濤国家主席が指示したと、二〇〇四年に指示したと言われているんですね。平和で安定した国際環境、親睦・友好の周辺環境平等互恵協力環境、客観的かつ友好的な世論環境。これちょっと説明しますと、つまり、中国のこれからの国家建設のためには安定した国際環境は必要である。そのためには周辺を固めなさいと、周辺と仲よくしよう、これは日本も入るわけです。お互いにいろいろ利益を分かち合っていこうと。最後がなかなか面白くて、これは友好的な世論環境、世界から中国のイメージはどうなっているか、世界が中国をどう見ているか、中国を好意的に見てくれるようなことをやりましょうというのが入っているわけです。ですから、先ほど言いました大局的な戦略論というのは、やっぱりこういった国家指導者の指示にもはっきりと見て取れると言えると思います。  次に、米国の封じ込め突破周辺国家と関係を緊密化、これは先ほど申しました。  具体的にはどういうふうな意識を持っているかといいますと、アメリカは、日米同盟封じ込め、台湾問題でもいわゆるいろいろ言ってくると。又は西の方から、中央アジアからもかなり戦略的な配備をやってきていると。あとはモンゴルとかインドとか、いわゆる中国を取り囲む形で関係強化を図っているじゃないかと。まあこれが実際にそうかどうかは別として、こういった認識を持っているということは非常に大事だと思うんですね。そういった認識を持っていて、それからいろんなことが行われるということですから、こういった自己イメージというのをちょっとはっきりと知っておく必要があるんではないかと私は思います。  周辺国家との関係緊密化では、ここに睦隣、安隣、富隣というのがある。まあ周りと仲よくして、これは主にアジアですけれども、アジアを安定さして、最終的にはアジア全体が豊かになるんだという、こういった地域に視点を置いた戦略を打ち出してきていると。ですから、これは、ロシアとか中央アジアとか韓国とか北朝鮮とかASEANとか、そして日本とか、こういった国に対して積極的に手を差し伸べて仲よくしましょうと、アジアのためなんだといったような姿勢を見せてきているというところでも分かるわけです。  最後の「展望」でございますが、そういったいろんな戦略的配備がありまして、じゃ、現状ではどういった問題があるかということにちょっとお話ししたいと思うんですけれども、まず流動化する東アジア情勢という、これは私がちょっと今感じていることでございまして、台頭の課題というのも実はあるんだと、中国の平和的台頭戦略というのがあるにしても課題もあるんだと。これもちょっとお話ししたいと思います。そして、最後には日本の選択と。じゃ、日本はこういった中でどういったふうなことをやるべきなのかとか、それをちょっとお話ししてみたいと思います。  まず、平和的台頭のための周辺調和、対日方針、日米同盟強化へのくさびというふうにちょっと書いたんですけれども、これはもう先ほど若干お話ししました。胡錦濤政権の一番のスローガンというのは、国内の調和社会、それから派生する外における調和社会、つまりこういった調和というのを、ハーモニーですね、これを前面に置いたいわゆる路線なわけです。これが実はリンクしていてうまくいくんだと、国際環境をうまくできれば国内にも圧力は減るだろうと、逆に国内もしっかりやれば外交的ないろんな空間も増えると、そういったふうな見方なわけです。  まず、平和的台頭外交空間という面では、やっぱり、何度も申しましたけれども、対米関係なんだ、対米関係がかぎなんだと。主要は周辺だけれども、やっぱりアメリカに嫌われてしまったら中国は台頭できない、それが第一の認識。次に、それに対抗する形で、周辺であるとか大周辺で仲間を増やして多極化で対米牽制力を強化すると。アメリカと協力できるところは協力していって、自分の存在価値を高めて、戦略的なパートナーとして力を付けていくと。そういった台頭をするためのいろんな手段を考えていると。  対日関係改善の中では、実はこれは日中米関係で、アメリカが主導権を握っていることを非常に中国は懸念していたという部分がありまして、日中米と比べたときにアメリカが一番いいポジションにいるんじゃないかというふうなことを感じていますね。  それはどういったところに出てくるかというと、例えばアメリカが、今回、北朝鮮問題なんかでも、例えば中国に全面的に表に出ていろいろ調停をやってもらっているというような認識が中国側にどうもあるようですし、例えばそれで中国が失敗したら、やっぱり中国は下手くそじゃないかとか、余り力がないじゃないかということになってしまうけれども、成功したら、結局、アメリカの方にメリットがあるというようなことも言っていますし、この北朝鮮問題で日本とか中国とか韓国とかが矛盾が目立つことも、実は日本、中国にとっても余りいいことではないんじゃないかと。つまり、そういったアメリカに対してのかなり懸念みたいなものが前提にありまして、やっぱり日中米のこの三か国の中でアメリカが主導権を握っているのはどうも良くないと。  それが台湾問題なんかにも出てきていると見ているわけですね。中国が日本をどんどんあちら側に追いやると、アメリカ側に追いやると、結局、アメリカと日本の関係が強くなって、台湾問題なんかでもかなり介入されてくると。じゃ、やっぱり日本との関係を強めることによってアメリカからも一目置かれるような立場に置かなければいけないということで、かなり日本との関係というのは、そういった対台湾問題であるとか、今、東アジア全体のそういった周辺環境という立場から緻密にはじき出してきているような印象を私は受けます。  また、この対日関係でいえば、これはもう技術と資本というのは、先ほど申しました中国の経済成長にとっては、これはもう日本の技術、環境問題でも何でもそうですけれども、やっぱり日本の技術と資本というのは絶対に必要であるという認識は、これは経済面では当然あると。  次に、北朝鮮をめぐる中国の思惑という、一番これ今注目されている部分ですけれども、私のちょっと見方というか、中国側もどう見ているかというのもちょっと紹介したいと思うんですけれども。  アメリカ中間選挙もありましたし、かなり変わってきてはいるんですけれども、まず北朝鮮の崩壊を絶対避けたいというのはもう最終的なボトムラインというか、それは絶対に譲れないラインだという感じですね。これはもう御存じのように、難民が出てくるとかいろんな問題があると。中国の東北地方というのは元々失業率も高いですし、そこへのインパクトも考えられます。また、朝鮮族の人たちもいますし、そこで何らかのそういった独立運動のようなものに火が付くのも怖いでしょうし、とにかく何にも崩壊したらいいことはないと思っていると思います。  かつて、朝鮮戦争アメリカと敵対して、その後長いその経済成長チャンスを失ったわけですから、やはり経済成長を前面に置けば置くほど対米関係というのが悪化するのが怖いと。ですから、戦争にも絶対持ち込みたくない、これはもう中国の公式見解の中に繰り返し繰り返し出てくることで、本音だと思います。  そしてまた、これは東アジアの核ドミノ、これはもう言い尽くされた感じがありますけれども、これはアメリカとは利益が中国は一致しているわけですよね、既得権益者としての、戦後秩序の。ほかの国には絶対核は持たせたくないという面では、これは一致しているわけですから、ここはアメリカとかなり話が合うところで、東アジアの秩序形成という面でその辺を前面に出していく可能性があるわけです。  あとは同時に、しかしやっぱり制裁に関しましても何にもやらないという姿勢もまずいと。これは平和的台頭にマイナスである。先ほど申しました胡錦濤主席の言う友好的な国際世論、つまり中国って何なんだと思われるのは困るわけですよね。やっぱり何かおかしいものにははっきりとおかしいと言う、そういうものを見せなきゃいけないわけですから、これはやっぱり制裁はしなきゃいけないと。  しかし一方では、やはり北朝鮮というのは最終的なカードとしては取っておきたいと。これは対日・対米不信というのは中国はなくなっていないわけですから。これは、例えばアメリカが中国の台頭を封じ込めるならば、日本もそれでワンセットだと見てますんで、北朝鮮を相手側に追いやってしまったら、中国の戦略カードは何もなくなってしまう。例えば、北朝鮮問題があるからこそ中国のプレゼンスがあるわけで、それを解決していくことによってまた非常に大きな利益も得られるということですから、ここがジレンマかなと思います。  北朝鮮にまた圧力を加え過ぎれば、当然、北朝鮮アメリカ側に行ってしまうという懸念も持っているんですね。これは、東アジアの情勢が非常に流動化しておりまして、実はもう中国が韓国と国交を正常化した時点で冷戦は終わっているという感じですね、中国側から見れば。しかし、そこから後は、もうイデオロギーとかそういったものではなくて、国益を前面に出した外交をやってきておりますので、分かりやすく言えば経済成長ということですよね。そうしたらば、北朝鮮とのずれがどんどんどんどん目立っていくということになるので、逆に言えば、じゃ制裁に一緒に加わってがんがん締め付けましょうということになると、ここから後はこれは新しい国益の問題になってくる。なぜかというと、冷戦が終わったと中国が認識している一方で、まだ終わってないとも認識している。それはやっぱりアメリカが中国を封じ込めているという認識を持っておりますから、北朝鮮を、じゃ国益重視でがんがん相手に追いやるようなことをやると、逆にこれは新しい国益、つまり北朝鮮が核を持った親米国家になるという悪夢もあるわけですよね。  これはもう、恐らく核を持っちゃったということは中国はある程度もうあきらめざるを得ないような状況になっておりまして、だったらもう核を持った後どうなるんだろうと。最近よく中国で出てくる議論が、インドみたいになったらどうしようと。インドはアメリカがいわゆる中国を牽制するために核開発の面で協力しているというふうに中国は見てますから、アメリカのその核の不拡散というのは限定的なものだと中国は見ているんですね。要するに、自分にとってメリットのある国には寛容に対応するじゃないかという議論が最近、中国でかなり出てきていると。それを考えると、北朝鮮の核というのは必ずしもアメリカに向いたものではなくて、最終的に自分に向いてくる可能性もあるということで、ますますこれは制裁というものが取りにくい環境になっていると、こういったジレンマがあるんじゃないかと思います。  最終的にはこの六か国協議というのは自分が主導権を握る形でまとめたいと思うんですけれども、最近の情勢を見てますと、米朝の接近もある可能性も出てきますし、できるだけアメリカ主導の朝鮮半島になるということを避けたいという、むしろ受け身の対応にこれからかなりなってくるんじゃないかなと。ただ、最終的に相手に追いやることだけは絶対したくない、このカードは取っておきたい、一定の影響力は残しておきたいというのがあるんではないかと思います。  次に、この台頭への内なる課題というんです。これは割と余り外交で議論されないんですが、実はもう御存じのように、台頭が成功するかどうかという議論もしないといけないですね。台頭の前提というのは経済成長の持続ですから、中国の経済が持続的に成長するかどうかという問題が実は大きな議論なわけです。  今日これをやってしまうと随分時間掛かりますから、二つだけポイントですけれども、一つはやっぱり格差の拡大と民衆の不満の増大と。過去十年ぐらいでもう十倍ぐらいに抗議活動が増えていると、七万件、八万件に達していると。突発性の抗議活動なんかかなり増えてきている。これは経済成長のパターンそのものに問題がある。例えば、強硬な地上げをやって、民衆の利益を無視する形で経済成長が進んでいるとか、あとは、経済構造の面で見ますと、外資に非常に依存していて、例えば貿易の六割は外資系企業がやっているとか、技術力はやっぱり海外に依存しているとか、あと財政赤字の問題、公共サービスの欠如、銀行の不良債権とか、いろんな問題があります。  ですから、中国は今後、グローバル化と市場化に乗り切れるか、その波に乗り切れるかという問題も実は議論しないといけない。中国の経済成長が停滞しますと資源外交も変化してくるわけですよね、資源への需要が減りますから。今はむしろ、アフリカとかラテンアメリカとかに、資源を買うから逆に私のものも買ってくださいよと、中国製品を買ってくださいよと、こういったバーター的な感覚でやっていますけれども、資源への需要が減ったときに、資源というものはカードでなくなってくる可能性もあると。  ですから、これはもうこれ以上お話ししますと本題からそれますのでやめますけれども、やはり中国の台頭は可能なのかということが大前提にあってでの中国の外交戦略なんだと、これはまだある程度クエスチョンの部分も実はあると。  最終的に、じゃ東アジアはどうするのか。一体化への流れというのはこれは事実なわけで、しかし安全保障の枠組みが後れているということなわけです。  例えば、アメリカ北朝鮮が和解したというようなことになった場合、これは東アジアの情勢は一挙に流動化する可能性もあると。今まで我々が見ていた世界とは変わってくる可能性が出てくると。朝鮮半島の統一という問題は私はまだ何とも言えませんけれども、例えば統一された場合にどういった朝鮮半島になるのかと。親米、親日なのか、それともそうではないのか。そういった問題も出てきますし、核を持っているという問題も、そのときには違ったニュアンスになってくるんではないかと。  東アジアにおけるそういった本当の意味でのポスト冷戦というのが起きた場合に、EU的なニュアンスに転換していくのか、それともお互いに軍拡競争に走って緊張が激化するのかと。恐らく、そういった非常に大きなテーマが目の前にぱかっとこう出てくるんじゃないかと思うんですね。  で、東アジアというのは、これはそういった安全保障とは別に、貿易の相互依存関係というのが急速に高まっておりまして、域内貿易も非常に増えておりますし、EUに迫る勢いで域内貿易が、域内のこの経済依存が強まっていると。しかし、政治、外交、安全保障の枠組みというのは非常に流動的で、例えば東シナ海の問題なんかもそうですけれども、ちょっと間違えば大変な問題になりかねないような緊張をはらんだ地域であると。  日本は、ではどうしたらいいのかという問題なんですけれども、非常に大きな問題ですが、やっぱりこれからお互いに食い合ってばらばらになっていく東アジアなのか、まあ月並みですけれども、一つのシステムをつくって共存共栄でやるのかと。これは日本と中国というのは非常に大きな要因になってくるわけですね。  ですから、こういった中国の近隣外交というのをずっと紹介してきたわけですけれども、中国は、先ほど申しましたように、アジアが豊かになるということ、富隣というのを先ほど、富める近隣という政策を出してきておるわけですから、例えばガス田の問題なんかでも、日本と中国というのは、ただ対立し合うだけではなくてお互いに利益を分かち合う、痛みも分けるという方針でいかないと、こういった経済の一体化の状況にはどうも合わないんじゃないか。じゃ、日本は今後どうするのかという問題を、北朝鮮の核実験の問題を契機に、流動化する東アジアということからもう一度考え直す必要があるんではないかと思います。  以上で私の話を終わらせていただきます。
  5. 田中直紀

    会長田中直紀君) ありがとうございました。  では次に、唐参考人から御意見をお述べいただきたいと思います。唐参考人
  6. 唐亮

    参考人(唐亮君) 法政大学の唐亮と申します。よろしくお願いします。  私は、事務局通して田中会長から五つの大きな宿題いただきまして、一つ目には最近の中国の政治経済状況、二番目には安保を中心とする中国外交政策、三点目は中国の対日政策、四点目は対米政策と、五点目は対北朝鮮政策なんですが、三十分という時間の制約がありまして、ポイントだけ述べさせていただいて、後ほどの議論の時間を活用できればと思っています。  また、一つ断っておきたいというのは、三十分の時間を有効に利用するために早口になるかもしれませんので、こういうせっかくな機会で先生たちに一生懸命語りたいと、そういう熱意として受け止めていただければ有り難いと思います。  それでは早速、中国の政治経済情勢について述べさせていただきますが、先ほど興梠先生も既に話しましたように、中国は一九八〇年代になってから近代化路線を打ち出して経済建設に力を入れて取り組んできまして、それでその実績はある意味では経済の高度成長、国民の生活向上等々の形で既に表れていると思いますが、しかしそれと同時に、今の胡錦濤政権は新しい挑戦を受けていることも事実ではないかと。  この新しい挑戦をもたらす要素は、私は二つがあるかと思います。  一つ目は、近代化路線は光の部分が注目されているんですが、影の部分も非常に大きかったと。この大きな影というのは、一つ目には三つの大きな経済の格差、貧富の格差があると思います。地域間の経済格差、都市と農村の格差、それから都市内部の貧富の格差が非常に深刻になっています。それから、経済開発が進むにつれて環境問題が悪化し、なおかつ資源をどう確保するかが大きな問題として浮上しているし、それから社会保障制度あるいは公共サービス等々の整備がやっぱり社会の要請には後れていることは事実ではないかと。こういう問題をどう克服していくかがこれからの挑戦だと思います。  それからもう一つの挑戦も、既に興梠先生が述べられたとおりで、どちらかというと中国国民はやっぱり共産党の強力な権力を前に今までずっとおとなしかったという部分がありまして、権威主義政権の下では力によって社会矛盾、対立を抑えてきて、社会を安定を保ってきたという経緯がありますが、しかしグローバル化、市場経済化、それから情報化が進展する中で、中国の民衆の権利意識が高まってきて、公正公平に対する要望も高まってきていることも事実ではないかと。  その結果として、やっぱり良い面では政治参加が活発化になりつつあると。しかし、挑戦になるという部分は、民衆はやっぱり権力の腐敗、あるいは不平等な分配、あるいは国家権力による権利の侵害に対して昔のようにやっぱり今は我慢しなくなってきて、それがさっき興梠先生がおっしゃった集団騒ぎ、あるいは暴動、あるいはデモが頻発し、なおかつ大型化してきているという状況ではないかと。  その新しい挑戦を受けて胡錦濤政権は何をしようとしているか。私は恐らく、この三、四年間の間に二つの緩やかな政策転換を図ろうとしていると思います。  一つ目は、やっぱり経済発展優先、効率優先という政策路線から、経済発展、効率優先をしながら、より公正公平の社会を構築していく、そのような政策転換が見られていると。二番目のその転換というのは、やっぱり力による強引な政治支配というのは国内でも国際社会でも支持されませんので、やっぱり力を使わなければならないという部分はまだ結構ありますが、そのできる範囲ではやっぱり合意と民意を重視していく支配をどう確立していくかという転換が求められています。  この二つの転換が図っていくという中で、この胡錦濤政権が誕生してからこの三、四年間の間に実は新しい政策、特に新しいスローガンが一杯打ち出されていると。  例えば、私自身が非常に関心を持つのは、一つは社会主義新農村の建設なんですよね。この社会主義という言葉がいいかどうかは別にして、その中身を見てみますと、農業税の廃止とか、あるいは農村義務教育の無料化、あるいは農村への公共サービスの強化等々という、予算の配分を含めてそのような政策が打ち出されていると。  それからもう一つは、さっき興梠先生もおっしゃったとおりで、和解社会を構築していこうと。今、やっぱり矛盾が多いですから対立も多いという国内社会ですので、どうやってそのバランスが取れて、思いやりがあって優しい社会を構築していくかという問題だとは思いますが、その中では弱者保護を強化するとか、それから分配制度を見直して、より貧しい人への配分を増やしたり、あるいは社会保障制度の整備を加速化したりして、そのような政策が打ち出されていると思います。  ただ、一点付け加えておきますと、このような政策転換を行っているんですが、しかしそのプロセスが非常に緩やかなものになるのではないかと。要するに、中国が抱えている問題が解決していくには、やっぱり条件の成熟、あるいは全体の経済力の増大というのが前提条件になっているので、その意味では転換の完成が長いプロセスになるんではないかと思います。これからの中国は、恐らく今までと同じように矛盾、困難を抱えながら緩やかに変わっていくではないかというのが私の考えです。  それから次に、中国の対外戦略について少し触れたいと思いますが。私は、恐らく近代化が中国ではすべて圧倒する国家目標、国家課題である以上、中国外交の原点、出発点を確認しますと、やっぱりさっき興梠先生がおっしゃったとおりで、近代化のために外交の目標を立てていくというのはまずそもそもの原点ではないかと。  その原点に併せて、私は、恐らく大きく三つほどの目標が立てられているではないかと。一つは、安全保障に関連して、やっぱり安定的な国際環境をどう構築していくかと。外交摩擦、対立はエネルギーを消耗するものですから、やっぱりそこがポイントだと思います。二番目は、やっぱり経済建設に有利な環境を整えていくことがもう一つの大きな目標ではないかと。外資を導入し、あるいは国外市場を積極的に利用していくにはやっぱりポイントではないかと。三点目は、これも安全保障にかかわる問題なんですが、台湾の独立を阻止し、平和的な統一の環境を整えていくと。その三つの目標が大きな目標と考えてよろしいではないかと。  その目標がどういう特徴を持つかというと、私はここであえて内向きの対外戦略という言葉を使いたいと思います。日本では、中国外交の大人の国だと、世界戦略を持ってしたたかな外交を展開しているではないかと、そういう評価が時々聞こえてくるんですが、しかし私に言わせてみれば、それは隣の芝生が青いというパーセプションではないかと、現実の外交は実は内向きだと。理由は非常に単純なものなんですが、外向きの世界戦略を立てていく場合、その国のキャパシティーというか力量みたいなものが必要だと。今の中国のサイズ、規模は大きいですが、しかし途上国の周囲の国は到底そのような力量を持たないではないかということは私の印象なんですよね。  しかし、それと同時に、中国が高度成長によって国力が伸ばしてきていると。その中では、大国化する中では今までの内向きの外交をこれから徐々に積極外交に展開していく可能性はだんだん高まってくるではないかというのも同時に私は思っています。さっき興梠先生がレジュメでもやることはやるということを使っているんですが、正にそのところだと思います。  次に、そのような外交戦略を持ちまして、対日政策、どのような対日政策中国の方が進めてきているか。ここで私はまず第一点目申し上げたいのは、中国にとって、中国外交にとっては日本は非常に大切な国だと。これはさっき興梠先生も既に説明しましたが、私は、理由を少し補足しておきますと、恐らく大切、外交上大切というのは、まず一点目は、世界第二の経済大国としての魅力。これは日本中国が持っていない資金力、技術力あるいは経営力、あるいは世界第二規模の市場が中国にとっては非常に魅力なものだと。  二点目は、安全保障関係してくると、日本は非常に大切な隣国だと。平和建設に必要な東アジア国際環境の安定化を実現するためには日本との協力がなければまずあり得ないということは非常に分かりやすいことと。  三点目は、強調したいのは、今の中国はある意味で経済発展に自信を持ち始めたんですが、しかしすべての面においてはやっぱり日本中国より進んでいると。中国は、近代化の過程では日本は良い手本という認識中国のエリートの間には私はかなり共通認識を持っていることではないかと思います。  この大切な日本が、ですので、中国の国益から考えてもやっぱり対日の重視政策を進めざるを得ないと、というのは私の認識なんですが、ここで、よく私、日本の友人あるいは専門家から、じゃ中国日本重視の利益はどこにあるかと聞かれるんですが、細かい言うと切りがありませんが、私なりの言葉で表現していれば、対立による不利益協力による利益だと。この対立による不利益というのは、日本とけんかをして中国は何を得を得られるかという問題なんですが、まあ得を得られるというものか、建設に、経済建設に集中すべき政治、外交、あるいは安全保障のエネルギーを無駄に消耗されてしまうと。対立が激しければ激しいほどその消耗が大きくなるというのを、そのものは対立による不利益なんですよね。しかし、協力関係をしっかり結べていれば、もちろん日本も国益になるんですが、中国は大きな国益を得られると。  で、よく言われるのは例えば経済協力、金融、環境、エネルギー等々の分野でその経済の相互補完関係をつくっていれば両国の国益になると、それはよく議論されているんですが、私はここであえて安全保障の例を挙げますと、この隣り合わせしている大国が、もし安全保障の分野において信頼関係が、信頼関係協力関係を築くことができれば、やっぱり両国の国民が自国の安全に対して絶大の安心感を得て、軍事に使うそのエネルギー、資源というものをより国際貢献あるいは国民の福祉ですね、活用することができるではないかと思います。  しかし、ここでの問題になるのは、日中両国は相手国を大切な国と思いながらも、この近年においては日中関係が激しく対立してきたことも事実だと思います。それから、日本国内では果たして中国は本当に対日重視政策を取っているかと、そういう思いをしている日本人の方々が、恐らく先生方を含めて、いるかと思いますが、その問題に対して私は対立の原因を二つに分けて考えていきたいと思います。  一つ目の原因は、日本中国は違う国のわけですから、立場と国益が当然違ってくると思います。で、国益がぶつかり合う、対立するということも当然避けられないと。これは日米関係が幾ら同盟国、あるいは近年においては良好な関係を保ちながらもやっぱり牛肉やら基地の移転問題等々、そういう対立があり得るんですよね。その問題に、対立に関しては今日、先生方の前で私、二つの解決のアプローチを、まあよく言われることなんですが、強調したいと。  一つは、やっぱりフィフティー・フィフティーの妥協精神を持って交渉によって克服していこうではないかと。そのフィフティー・フィフティーの精神のアプローチが環境、条件の未成熟でできないという場合は棚上げ方式の方がお勧めしたいと思います。今度、条件、環境が成熟するときはもう一度話し合おうと、そのような形でやっていれば、避けられない国益の対立も大きなけんかにならないで済むではないかと思います。  しかし、今日、私はあえてここで強調したいのは、実は私は来日十九年目になりますが、この四、五年の間に日中のけんかを息苦しく思っている部分があります。で、なぜそういうふうに言うかというと、互いに持ってなくてもいい不信感あるいは誤解みたいなものが対立を必要以上に激化させたではないかと。言ってみれば、この部分のけんかというのは、子供っぽいのけんかというものが入ってくるではないかと思います。  話すにはたくさんの時間が掛かりますが、恐らく、まず断っておきたいのは、中国日本に対してたくさんの誤解あるいは不信感を持っていると。逆に言うと、私から見ると日本人も、あるいは日本メディア中国に対しても、もうたくさんの誤解を持っているではないかと。そういう誤解がなくなっていれば、日中関係が、国益の対立を抱えながらも、そこまでのけんかしなくてもいいではないかというのは率直に言って私の気持ちなんですよね。  二つの事例を挙げてその誤解を説明しようと思いますが、一つ目は、歴史問題から見る日中の誤解なんですが、私、ここで一つの逆説を立てたいと思いますが、最近の日中の対立というのは、やっぱり歴史問題、特に首相による靖国神社参拝問題をめぐって激しく展開されているんですが、実際は日本側が、中国ですね、いつでも歴史問題を持ち出して、外交カードに使って日本に謝罪を求めてくるかという考え方が、実は大勢の方が持っていらっしゃると思いますが、私はここが誤解だと。実は、激しく対立している歴史問題あるいは靖国神社の問題に関して、中国の対応から見ていて実は誤解ではないかと。細かいことは述べる時間がないんですが、レジュメにある程度まとめていますが、理由は三点ほどの誤解があると思います。  一つ目は、実は日本は、あるいは小泉前首相が靖国神社に参拝して論議、ここでは立ち入りませんが、中国側はやっぱり日本の首相、指導者が被害者の感情をどう考えているか、あるいは歴史のモラルをどう考えるかというところから出発して、強い反発を持ってきて、また抗議をして批判していることは事実です。それでも、私は対応が割に抑制的ではないかといって、を皆さんに私の意見を述べたいと思いますが。  例えば、首脳外交が、相互訪問ができなくなりましたが、しかし第三国での首脳会談が随時行われました。それから、日中双方の外交当局、それから当事者、関係者の努力によって首相の靖国参拝による対立ができるだけほかの分野に影響をしないように、そのリスクのコントロールはずっとしてきたと思います。恐らく反日デモがなければ、私は小泉前首相が任期を終えるまで第三国で中国の首脳とずっと会談ができたではないかと思いますが、幾ら権威主義政権であっても、民意がああいう形で怒り出すと、やっぱり中国はそこが、その立場は表明しないと難しくなって、去年の九月以降、第三国の首脳会談ができなくなったということが事実ではないかと。  それから二点目は、実は私は、私は中国の歴史教育の人間の一人として、実は中国側のその歴史問題に対する公式の見解というのは、戦争の責任は一部の軍国主義者にあると、日本国民も被害者だと。そこが実は一九七二年の日中の間の歴史問題に関する基本合意だと思います。  皆さんに是非考えていただきたいということは、恐らく歴史の認識が、個人の価値観、心によって多分違う歴史認識を持ち合うことが非常に当たり前のことなんですが、問題は、前向きの外交を進めていく過程でやっぱり歴史認識に関して政府と政府の間にそういう妥協というものが非常に重要で、そこが、一九七二年の合意というのは私は基本合意という言葉で表現しているんですが、そのぐらいの合意ですか、その表現というのは、恐らく戦争の被害を受けた中国としては、日本に対して過大な要求はしていませんと、そういう気持ちは多分あると思います。  三点目、最後に三点目の歴史問題なんですが、中国は繰り返して日本に謝罪を求めているではないかということなんですが、私は不勉強なんですが、一生懸命資料などを調べて、外交議題の中で歴史問題が議題になることが七二年、九二年の天皇訪中と九八年の江沢民前国家主席の訪日ではないかと。で、最後の一回が中国側が謝罪という言葉を共同声明に入れてほしいと、これは中国側が進んで持ち出した謝罪だと思うんですが。しかしそれ以外に、恐らく皆さんが、まあ皆さんというよりは多くの方が抱いているイメージは、私は恐らく日中が歴史問題で対立が表面化して、そのパターンというのは靖国神社問題、教科書問題と政治家の失言なんですよね。それが問題起きている場合が、まあ売り言葉があれば買い言葉があると。そこが恐らく、一般論として何も受けなく謝罪求めるということと違うではないかと。そういうふうに考えていれば、実は私が表現したいことは、歴史問題の対立の中でも、中国の対日重視という姿勢が見れるではないかと。  最後に、もう一つの誤解というのは中国の軍拡の問題なんですが、この軍拡の問題について私の考えというのは、軍拡はよくないと。それから、日中両国はやっぱり責任感が大きいですから、互いの軍事動向に対してはやっぱり監視し続けるべきだと、監視し合うべきだという立場を私は取っております。  それからもう一つは、中国はこの十七年間、対前年度比、軍事費の予算が二けたの増加率を保ち続けてきたと、これも事実だと。軍備の近代化が進んでいることも事実だと。その事実に対して、日本国内ではかなり不安感が高まっていることは事実です。ただ、ここで私が言いたいというのは、特に専門家、特に責任の立場にある方々、先頭に立ってこの事実をどう解釈するかという問題は考えていくべきではないかと思います。  というのは、何かの野心があって必要以上に軍拡を進めているか、あるいは通常の軍の近代化を進めているか、この解釈によって大分不安感が違ってくるわけですよね。私が思うには、実は、私の結論から言うと、実は通常の軍の近代化ではないかと。というのは、経済近代化が進む中で、恐らく経済力、技術力向上する中で軍の近代化も同時に進むというのはどこの国も見られる現象ではないかと。  実は、私は日本の防衛白書を調べた結果としては、日本は高度成長期、特に六〇年代、七〇年代、対前年度比の防衛予算の増加率は二けたの増加が二十年近くずっと続けていたというのも分かりやすいことではないかと思います。  さらに、最後一言、この軍事力についてもう一言言いますと、日本が軍事力、まあ経済の近代化も防衛の近代化も恐らく終えたと思います。中国は、軍事の実力から考えると、専門家の間によく言われるのは、日米と比べれば二十年、十五年後れているのもよく指摘されていると。その意味では、中国の経済近代化も軍事近代化もまだ終わっていませんので、これからしばらくはまた増えていくことはあるではないかと、そこがやっぱり警戒しながら平常心で見ていくことがこれからの日中関係を考えていく上で大事ではないかと思います。  この日中関係について、最後に私から、二十一世紀を迎えてどのような日中関係を構築すべきかのことについて、一人の在日の中国人、一人の日中友好論者として政治の現場に立っている先生方に、細かいことよりは、政治家の先生たちは大所高所から問題を見ていますので、私もそれに合わせて日中に必要な外交の理念と哲学を三点ほど言いたいと思います。  第一点目は、やっぱりナショナリズムを、いかに節度のあっての健全なナショナリズムを育てていくかということなんですが、やっぱり国益、外交は国益のための外交とよく言われています。しかし、それを余り言い過ぎると場合によって極端なナショナリズムをあおってしまうということにもなりかねません。二十一世紀の外交のあるべき姿というのは、恐らく自国の国益を主張しながら相手国の立場、それから国際社会の協調というものを大事にしていかなければならないではないかと。実は、二十一世紀の真の外交力は、大衆迎合主義みたいに内向きの論理を述べて拍手を受けるというよりは、私は、恐らく問われている外交力というのは、自分の主張は相手国、それから国際社会にどこまで通用するか、どのような論理力、説得力を持つかというのは問われるのではないかと。だから、そういう点では両国のメディア、それから政治家、政治指導者、それからやっぱり外交当局、専門家が重い責任を持つではないかと思います。私の体験からいうと、中国国民日本国民もやっぱり責任にある立場の方々の話、あるいはメディア、伝わった情報を聞いて判断するわけですから、そこがやっぱり、発言というのは責任の重さに応じてやっぱりやるべきではないかなというのが一点目ですね。  二点目は、国の品格という、大国の風格という言葉を使いたいと思いますが、やっぱり尊敬される国というのは品格と風格がある国だと思います。確かに今年はベストセラーになっている、国の品格という本があるんですが、私は、ああ、自分が言いたいことかなと思って買ってしまったら趣旨は若干違いまして、趣旨若干違いまして、私が主張したい大国の風格、国の品格というのは、やっぱり他国、特に貧しい国に対して寛容の精神、理解の精神を持って、なおかつ自己反省と独善の自戒の精神を持ち合わせている国だと。ここを強調したいというのは、実は、大国の場合は大体ほかの国よりは優れたものをより多く持っている、こそ大国になれたわけですよね。しかし、政治は、外交はどうせ人間がやるものですから、あのブッシュ大統領が過ちを起こしたように、やっぱりそういうことを考えて、あるいは途上国の事情、あるいはよその国の事情を考えて、押し付けあるいはその反省の精神は常に求められるのではないかと。  最後に、日中関係に関しては大人の二国関係になれないかとよく議論されています。私が思うには、日本中国も名誉のある国際地位を得たいと、尊敬される国になりたいと、そういう向上心と競争心を持っている国々だと思います。その向上心、競争心自身は非常にすばらしいものだとは思いますが、問題は、どこに使うかと。あと二分で終わります。その競争心が私は文明への貢献を競い合うべきではないかと、そういうことを強烈に主張したいと思います。  というのは、恐らく、自分の国はすばらしいんだと、美しいんだと、偉いんだと、立派だといって、もうこれは非常に大事なことだと思います。それと同時に、他者の評価も非常に重要ですから、そうすると、恐らく二十一世紀の国際地位は、その文明に対して、国際社会に対してどれほどの貢献できるかによっておのずと決められるものではないかと。そういう意味では、日本中国はこれから是非文明への貢献や国際社会への貢献を競い合って、なおかつライバルへ敬意を持って、協力精神を持ってやっていけば良きライバルになるではないかと思います。  私のレジュメは、対米政策と対北朝鮮政策も用意されてきましたが、時間が超えてきましたので、あと議論の時間ができればと思います。  ありがとうございます。終わります。
  7. 田中直紀

    会長田中直紀君) 興梠参考人唐参考人、熱のこもった意見陳述、大変ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は挙手を願います。小林温君。
  8. 小林温

    ○小林温君 お二人の参考人から大変ためになるお話を聞かせていただきました。  中国の対日政策が対日重視姿勢であるということ、これは胡錦濤の政権の中でもそういう方向に進んでいるということでございました。唐参考人からは、健全なナショナリズムの育成のためにメディア、政治家、外交担当者の役割が重要だという御提案もいただきましたが、我々も含めて、どちらかというと靖国の問題で、この二年ほどは日中関係の全体像がどこか霧の中にあって見えない、うまくよく見えないような環境の中にあったのかなというふうにも思いますし、その中で安倍新総理が中国訪問も実現をして、今日お二人からもお話をいただいたように、中国の対日政策が現在どうなっているのか、これからどういう方向に行くかということをこれから冷静に我々も見極めていくという、そういうことができる環境が整ってきたのではないかというふうに思った次第でございます。  二つほど質問をさせていただきたいと思います。  一つは、北朝鮮の問題というのは我が国にとっても大変今大きな目の前にあるものでございますが、お二人がお話をされた、あるいは既にいただいている資料の中でも触れられていることでございますが、北朝鮮に対する中国の影響力というものが今どの程度のものなのか。六者協議への北朝鮮の復帰、これは一部では例えば中国がその仲介役としての役割を果たしたということが言われてもおりますが、一方で唐家センさんがピョンヤンに行ったときになかなか金正日総書記に会えずに、どうも今の中朝関係というのはかつてのような状況ではないのではないかと。六者協議への復帰に向けても、どちらかというとアメリカがそのリードをしているのではないかというような話も関係者からもお聞きをしました。  お二人とも、中国にとって北朝鮮は決して崩壊というシナリオがあってはならないという見方をされているというふうに思いますが、このシナリオの中で、例えば興梠参考人は、親米政権の誕生に中国が危機感を持っているということもお触れでございますが、中国から見た場合に幾つかシナリオがあるとして、金正日体制のままでの例えば核の放棄なり国際社会への復帰というシナリオがあるのか。あるいは、レジームチェンジがあって、その上での体制の保証が中国から見た場合も許容される範囲になっているのか。あるいは、もっと違った観点で中国北朝鮮の今後の行くべき方向というのを考えているかということについてお考えをお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、その平和的台頭という外交戦略の中で、中国協力による利益が大きいということでこういう外交戦略を取っているということは私も分かるんですが、私、昨年来、アフリカとか中東、中南米という資源国に訪問をさせていただいて、我が国とそれぞれの資源国との将来的な資源の確保のための交渉などもしてまいりました。そうすると、どこに行っても必ずぶつかるのがやはり中国のプレゼンスでございまして、中国も当然更に増える人口、経済発展をにらんで資源の確保、これはある意味でいうとなりふり構わずという表現もあるんですが、と同時に、極めて戦略的に世界各地でこの資源の確保、石油やガスのみならず、例えば金属や希少資源といったところまで手を出しているわけです。  アフリカに行くと、どこにでも中国の大使館もございますし、援助でいろんなものをつくっております。中南米に行っても、資源国には中国の首脳が必ず訪問した跡があるわけですね。ですから、日本にとってもこの資源エネルギー問題、極めて重要な中で、どうしても中国と様々な形でバッティングしてしまうと。近隣諸国として向き合う中での経済関係の調整というのは可能なのかなと思いますが、この資源をめぐる世界の局所局所でその争奪戦というものが果たしてこれからの日中関係にどういう影響を与えるんだろうかということを私、非常に懸念を持ちました。  具体的に例を言うと、例えばロシアでもパイプライン日本に来ない分、中国に行くというようなことが言われておりますし、サハリンの権益も日本にLNGで持ってこれない代わりにパイプライン中国に行くんじゃないかと、イランに持っていたアザデガンの利権も日本がもたもたしている間にどっかに行ってしまって、これも中国に行くんではないかということがございます。  こういうことも踏まえた上での日中の、特に資源外交をめぐる関係というのがどういうふうになっていくのかということと当然同じことが日本以外の国とも実は起きているわけでございます。例えば、インドでありますとか、アメリカもそうでありますし、ヨーロッパの国々と中国が様々な形で資源をめぐってバッティングしているというのも見聞きするところでありますが、このことが、平和的台頭ということで軍事的なプレゼンスは大きくしない中で経済的な活動を進めている中国の落とし穴にもなるのではないかという気が私はしているんですけれども、この辺についてもお二方から御意見をいただければと思います。
  9. 田中直紀

    会長田中直紀君) では、興梠参考人の方からお願いします。
  10. 興梠一郎

    参考人興梠一郎君) ありがとうございます。  二つあると思うんですけれども、まず北朝鮮に対する中国の影響力ということなんですけれども、やはりミサイル事件ですね、あの辺りからずっと見ていますと、いろんな情報が出ていますが、基本的には、やはり中国というのは北朝鮮に影響力、例えば食料とか石油であるとか、そういった影響力を持っているけれども、その最後のカードを使ってしまうと圧倒的な影響力がなくなってしまうので使えないと。だから、最近、中国国内のいろんな声を聞いていますと、その足下を見られちゃっているということをよく言うんですね。  だから、中国ボトムラインというか、結局は北朝鮮を手放したくないし、崩壊に追い込みたくないんだろうと、だから最後は味方してくれるんだろうと、例えば制裁に関しても軟らかくしてくれるんだろうとか、そういった足下を見られているという言い方を時々するんですね。見られているけれども、その最後の一線は越えられないと。ですから、影響力は行使すればあるんだけれども、使えない影響力という部分があるんじゃないかと。  その最終的な問題というのは、崩壊とか難民問題とかいろいろ言われていますけれども、一つ流動的な要因としては、北朝鮮がやっぱり自分の主体的な発想で国家づくりをやっていて、どこの国にも依存したくないという哲学を持っているということですよね。ですから、かつての中朝の同盟とは違ったことになっていると。これは先ほど申しました、韓国関係を正常化した時点で北朝鮮はやっぱり裏切られたような感じを持っていたわけですし、だったら自分でやっていこうと。どんどん中国は、アメリカ関係が良くなっていくに従って取り残されたような感じがしてきたと。いわゆる冷戦の残像物として残っていったと。じゃ、自分自分を守ろうということになると、結局は核を持つとか、そういう問題になってくる。  したがって、中国が国益を考えて経済発展を前面に据えた結果、そういった関係変化してきている。しかし、北朝鮮も、やっぱり中国をカードとして使えるわけですから、やっぱり丸裸でアメリカと向き合っていちゃこれはもうどうしようもないので、中国とかロシアとか、そういったものを使いながら対抗していくと。だから、両者のそういった思惑の違いと一致というのがあるので、それが交互に出てくると思うんですね。  ですから、影響力はあるけれども使えないと、対北朝鮮に対しては使えないと。しかし、一定の範囲内で、例えば北朝鮮の生存空間を確保してあげるとか制裁をちょっと緩めてあげるとか、その辺で恩を売るということはできるわけですね。中国は、基本的には、先ほど申しましたように、アメリカとの関係というのを最重要視していて、台頭するための最大の課題だと思っていますから、今後の問題というのは対米関係と対北朝鮮の問題をどう調整するかということで、それはまだ結論が出ていないと思うんです。  一方では、どんどん北朝鮮が例えばアメリカ関係を深めていって、核を持った朝鮮半島の統一というのが最終的にもしできて、それがなおかつアメリカと近いというようなことになっていくと困ってしまうと。それから、最低限ベトナムぐらいで、アメリカとも関係はいいけれども中国とも関係は維持するみたいな感じでソフトランディングさせてと思っているんではないかと。まあちょっと怖がっているのは、インドみたいになった場合はちょっと手ごわいなみたいに認識している感じがします。ですから、影響力はあるといえばありますし、使えないという面もある。  今後のシナリオを中国はどう見ているかというと、一つではないような気がしますね。いろんな意見が出ていますね。  例えば、軍関係の人というのは北朝鮮戦略的な価値というのを非常に重視していますし、言わば緩衝地帯と、いわゆるアメリカの影響力を食い止める意味では北朝鮮、非常に重要。あと中国は、先ほど申しました多国間の外交で力を見せ付けると。多国間がステージだと、自分が華やかに活躍するステージだと。そのステージがなくなっちゃうというのもありますよね。中国をだれも必要としなくなると、これは戦略価値が下がる。  ですから、シナリオとしては、やはり今のレジームで改革・開放をやらせたいわけですね。ですから、金正日さんが中国に来たたびにそういったところを連れて回って、改革っていいんだよと、あなたの政権は続くんだよというようなことを説得したりとかしていると思うんですね。それは中国国内報道なんかでも見ていても、その辺が非常に分かる。中国風モデルというのを見てくれと。ところが、これはまた北朝鮮はどう思っているかというのは別で、それは中国の力は必要だけれども、全部マーケットが中国製品で占領されちゃ困ると。だから、適当に他外国、アメリカ日本であるとか欧米とか、そういった資本も入れたいというのもあると思うんです。  次に、平和的台頭ですが、やっぱりアフリカ、中南米というのは一つのキーになっていて、アメリカも非常に気にしていますよね。特に中南米の場合は自分の裏庭ですから、中国は特に反米意識の強いベネズエラとかそういったところと資源関係を持ったり、いわゆるアメリカのすき間に入っていっている感じがする。例えば、アフリカなんかも、最近大規模なサミットは中国がやりましたけれども、でも対台湾というのもありますが、やはり欧米諸国が人権であるとかいろんな面で、内戦とか、忌避していた、回避していたアフリカへの影響力というもの、そのすき間にぱっと入っていくと。そこにまた資源とマーケットという交換条件が成立するということで、これは皆、皆が無視している間にばっと入っていってプレゼンスを高めた。  今後どうなるか。ある意味では、先ほど落とし穴とおっしゃいましたが、私も正にそう思っていまして、実は中国台頭するようになる一番大きな問題というのは発展途上国との問題なんですね。自分が作っている製品が実は相手とバッティングするという問題がある。これはむしろ先進国とはないわけですよ。ですから、マーケットを獲得すると。一方的に資源買うわけじゃないですから、自分のものを売らなきゃいけない。そうすると、中国製品と相手方のものがバッティングしてしまう。例えば、EUとの間では靴をめぐって問題があります。それから、スペイン、中国人の靴の店が焼かれたなんということもありましたし、これは今、中国というのは台頭する過程で実は貿易摩擦とか発展途上国ともそういうものを抱えていますし、非常に大きな問題。先進国とは、今申し上げましたように、資源の問題。例えば、アフリカの比率をどんどん上げていきたい、資源の輸入元として。これは当然アメリカも同じ考え持っているわけですから、今後どうするかと。  そういった広いスパンで見ると、日中の関係というのは、そういった世界的な中国のいろんな矛盾とか、台頭をめぐる矛盾とか、そういったものが一つの、一つのパターンといいますか、そういったようなものは見えますが、今後、中国台頭する過程では、当然、資源とマーケットという問題が出てくるであろうと。それを克服ができるかどうかという問題はこれからであると。  もう一つは、中国自身が資源の需要を増やし続けられるかどうか。環境問題もありますし、経済成長のパターンもあります。これも、今日はちょっと本題からずれますのでやめますが、それも、先ほど申しましたように、まだクエスチョンであるということで私の回答を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  11. 田中直紀

    会長田中直紀君) では、唐参考人
  12. 唐亮

    参考人(唐亮君) ありがとうございます。  まず、小林先生と親交を温めたいと思います。一度、小林先生が、お忘れなったと思いますが、一九八九年後半から九〇年辺りで福島に一緒に旅行させていただくことありまして、なおかつ小林先生、当時の立場表明ですね、地元で大学つくりましたら私は大学の教員になろうと。今でも覚えていますが、途中で議員になられまして、失望ではありません、おめでとうと非常に言いたいと思います。  二つ質問をちょうだいいたしまして、興梠先生の方が既に答えたと思いますが、まず中国北朝鮮に対する影響力はどの程度のものだと。それが、恐らく各国と比べれば、やっぱり中国北朝鮮は伝統的な関係があって、なおかつ経済支援も一番力を入れているので、ほかの国と比べれば割合にある方ではないかと思います。  ただ、私は、レジュメにも書きましたが、限界が非常に大きいと。限界というのは、さっき興梠先生がおっしゃったとおりで、北朝鮮はまず主権国家なんですよね。主体思想を持って、恐らく中朝同盟関係がいいときもその主体思想は絶対譲れないという国だということはまず一点目。  二点目は、どこに対する影響力の問題と思うんですが、今、六か国協議で北朝鮮のミサイル開発、核兵器を断念させるということに関しては、私、思うのは、その当事者は米朝なんですね。中国の限界というのは、主権国家北朝鮮はこの問題に関して中国の説得あるいは圧力を受け入れるか受け入れないかは、北朝鮮なりの損得勘定あるんですよね。この今の段階ですね、この核兵器、ミサイルの問題は、北朝鮮の金正日体制の核心的な利益にかかわる部分なんですよね。だから、それ利益計算をして自分の体制の存続、あるいは譲歩によって得られる利益が多いときだけ多分恐らく中国の説得あるいは圧力を受け入れるではないかと。それ以外、多分幾ら中国は説得しても圧力掛けても応じない可能性が高いではないかと。  もう一点目は、実はもう一つの限界というのは、この六か国協議では主な当事者は、もう一人の当事者、アメリカなんですよね。アメリカの出方によって北朝鮮の出方もまた変わってくるわけで、だからそういう意味ではアメリカの出方によって北朝鮮、また中国の説得あるいは圧力を受け入れるか受け入れないか、その中での中国の影響力を見ておくべきではないかと思います。  将来のシナリオですね。これも興梠先生が既におっしゃいました、中国にとってはベストのシナリオは、この大量破壊兵器の問題が平和的に解決すると。それで、日朝、米朝関係が正常化。なおかつ、いいシナリオというのは、その中で北朝鮮は、まあ中国モデルといったらあのプライドが高い国は多分受け付けないという可能性あるんですが、しかし望ましい方向へ変わっていくと。その場合は、中国あるいは近隣諸国がサポートしていくというのは一番ベストのシナリオではないかと。そして、今の中国の基本的な政策は、そのシナリオが実現するために努力していこうではないかと。当事者にも呼び掛けているんですね。  ただ、問題は、人事を尽くして天命を待つということで、ここで結果については中国が決められるものではないと。米朝の役割は一番大きいと。なおかつ、日本韓国も非常に重大の役割を担っていると。この軟着陸するためには、やっぱり北朝鮮以外の五か国は違いを乗り越えて、協調活動を取って柔軟に対応していくことが重要ではないかと。一番のポイントは、私はアメリカだと思います。  また、時間が超過しますが、中国の平和的な台頭について、私、思うのは、やっぱり新興の大国台頭する中で必ず既存の国際秩序に挑戦するんだと、そうすると混乱の原因だと、そういう国際政治の理論があって、中国もそういうふうにとらえている意見が非常に多いんですよね。それを意識して、中国の平和台頭というのは、あれは発展はしますが、しかし発展する過程で既存の国際秩序を受け入れる形でやっていきますから、だからその台頭は平和的な台頭だと。特に、アメリカに向けて発しているメッセージだと私は思います。  このアフリカの資源のことについて、さっき小林先生が問題提起をされたんですが、私が思うには、今の議論は多分中国の対アフリカの援助政策関係していると思うんですが、条件を付けないという言葉を中国は使っているんですよね。ここが明らかに世界銀行あるいは主要国の援助方針とは違うところがあります。  それで、中国アフリカに対して資源の獲得にも力を入れていることもあって、大いに批判を受けている問題だと思いますが、ただ私が思うには、その中国の政府の主張を弁護するつもり全然ないんですが、結果として弁護になってしまうかもしれないんですが、グッドガバナンスという条件を世界銀行等付けているんですよね。  これ、私がその資料を持っているんですが、説明責任とか、それが透明性の問題とか法の支配の枠組みとか、考えてみればこのような条件をそろえる途上国はそもそも援助はそれほど要らない国じゃないかと、まあ要らないというよりは要するにかなり相当いい国なんですよね。そこが、中国自身も発展国、途上国の経験あるわけですから、やっぱりこういう目標は非常に大事だと。どうやって目標を到達していくかはプロセスがあるんですよね。この開発が進む中で、国民意識も変わるし、指導者も変わらざるを得ない。その中で多分このような目標が到達されると思います。だから、そういう意味では、ある意味では先進国あるいは国連の援助方式の代わりに新しいオプションを提示する意味では、私はしばらく時間を見て、経過を見た方がいいではないかと思います。実は、それに付け加えて言うと、実はアメリカの援助方式が、じゃ、果たして有効に機能するかどうかという問題も多分検証する必要あるではないかと思います。
  13. 田中直紀

    会長田中直紀君) ありがとうございました。  富岡由紀夫君。
  14. 富岡由紀夫

    富岡由紀夫君 富岡由紀夫と申します。  本日は、大変参考になる御意見をいただきまして、ありがとうございます。お話を伺って、幾つか質問をさせていただきたいと思います。  両参考人からもお話しいただいて、御認識も共通している部分があるんですけれども、今、中国が非常に現実化路線で経済的発展を最優先に取り組んでいるということで、それが非常にある意味成功しながら今成長を遂げているわけでございますけれども、一方で共産党として計画経済というものがございまして、その市場経済化と相矛盾するところがあるんだと思うんですね。資本の蓄積とか、そういった問題をどういうふうにこれから中国は整理していくのかなというところが非常に私は関心を持っております。  共産主義というその政治体制とも関係しているんですけれども、そういった問題がこれから、先ほどのお話だと、いろんな抗議活動だとかデモ活動が非常に増えてきているというお話でしたので、それが天安門事件みたいな形である程度もっと拡大すると、抑えるような形を取らざるを得なくなってしまうのか、それともソ連のように体制が内部の中で切り替わる、指導者とともに切り替わっていくような、そういうことも想定できるのか、一党独裁体制の今の共産主義が、共産党が今後どうなるのかというところがやっぱり一番大きなテーマだと思っております。まあ、アメリカなんかは悪の枢軸国ということで非常にブッシュさんはそういう形で脅威だということで定義付けておりましたけれども、そういった問題がやっぱりある程度全世界的にクリアされていかないと、そういった認識がクリアされていかないと、国際協調路線を歩もうとしても、なかなか中国のそういった外交がうまく進展できないんじゃないかと思っておりますので、その辺のところをお伺いしたいと思います。  それと関連して、お話の中にはちょっとなかったんですけども、ロシアとの外交についてどういうふうにお考えいただいているのか。ソ連がああいう形で体制が崩壊したというところとの関係も含めて、中国ロシアとの関係をどういうふうに見ているのか。ロシアのこの歩んできた近代の、ここ数十年の歩みについてどういうふうに見ているのか。お考えをいただきたいなと思っております。  あと、それと、今お話再三ありましたけれども、唐先生のこのレジュメの中で、ちょっとお話、時間がなくて伺えなかったんですけども、北朝鮮のこの望ましい方向への変化を促すということであるんですけども、望ましい方向への変化って、これどういうことなのかなというところをお伺いしたいと思っております。  先ほどの体制の問題もそうなんですけども、ソ連がああいう形で体制が崩壊したと。で、今このアジア地域、極東地域で残っているのは中国北朝鮮だけでありまして、その辺の、体制は維持しないといけないけれども、お互いに、しなくちゃいけないけれども、そういった核の問題とかミサイルの問題とか、そういったところは国際世論の中ではなかなか容認し難いといったところだと思うんですけども、その辺の関係をどういうふうに見ていらっしゃるのか。このレジュメのところをちょっと御説明していただきたいなと思っております。  あと、もう一点なんですけども、両参考人にお伺いしたいんですが、中国が軍拡、軍備の拡大をずっと続けてきたと、これは経済成長を遂げている日本も同じじゃなかったかというお話があったんですけども、本当にそうかなと、私はちょっと疑問に思っております。  いろいろありますけど、一つは核を持っていたり、あと、一つは台湾の独立問題を視野に入れていろんな軍備の増強をされているんじゃないかという、国際、この調査会でも先週そういった参考人の御意見もありましたけれども、そういった点も含めて考えると、本当に、経済成長が伴って軍備も増強するのはこれは当然なんだよという形で簡単に理解しろと言われても、本当にそれできるかなといったところがあるものですから、その辺のところを、ちょっとこれは興梠参考人にも含めて、その軍備の最近の拡大についてのねらいとか問題点とか、そういった観点でお話を伺えればと思っております。  ちょっといろいろ漠としましたけれども、是非、両参考人の、それぞれの立場で御意見、いろいろとお考えをお伺いしたいと思っております。よろしくお願いします。
  15. 興梠一郎

    参考人興梠一郎君) どうもありがとうございます。  三つあると思いますので、ちょっと手短にお話ししたいと思います。  まずは、一党独裁体制の問題。まず、共産主義という言葉は忘れた方がいいと思います。中国共産党の性格からしまして、むしろクローニーキャピタリズム、まあ発展途上国が必ず経てくるパターンを経ていると。これはどうしてか、どういう形かといいますと、計画経済で権力を持っていた官僚層、これの取り巻きとか一族とか、彼ら自身がビジネスをやるという体制なわけですね。ですから、社会主義市場経済という言葉になっていますけども、社会主義とか共産主義とか、いわゆる資本主義が発展した段階の下での、その後に来るポスト資本主義としての社会主義とか共産主義ではないわけですね。資本主義が原始的蓄積段階を経て、発展しないまま形だけそこに突入したと。これは、中国ではそこを何とか理論的に整理して、初期段階と、社会主義の初期段階なんだといって一応説得しているわけですけども、中を見ますと、これは例えば、そういった旧官僚層、計画経済の時代にいろんな利権を得た人たちの一族とか、そうした人たちがビジネスに入って一族が肥大化すると、潤うという、それに向けられたメッセージが天安門事件のときのいわゆる特権反対とかそういったことだったわけで、もう民衆は既にそのときに感じていたわけですね。それが九〇年代を経てますます強まっていって、最近、共産党の六中全会というのがありましたが、そのときでも、そういう特殊な利益を持った団体がもう存在するんだと。これは官僚機構もそうですし、いろんなそういった業界とかといわゆる癒着したものがあるんだと。上海の事件なんというのは皆さん記憶に新しいと思うんですが、上海のトップがいわゆる解任されましたが、あれも中を見ていくと、社会保険基金を横領したり不動産業者がつるんでいたり銀行関係者がつるんでいたり、一つのそういった資本化して、権力が資本化と中国は言いますけれども、権力の市場化とか。ですから本質は、いわゆる共産主義とか社会主義とかいう言葉でこちらが理解しますと、中国の本質は理解できない。つまり、中国で一党独裁体制というのは、そういった支配層がいわゆる潤う体制になっていると。ですから、六割と言われます農民とか労働者という人たちの抗議活動が多いのも、大半が地上げであるとか地上げの補償費が足りないとか、こういった問題になる。また、医療費が高いとか、これは公共サービスをしっかりやっていない。  したがって、今後の問題は、どういうふうになるかというと、天安門事件型の事件というのはちょっと理解、余り考えにくいんですけれども、実はもう頻繁に抗議活動というのは街頭で起きているということなんですね。農村でも起きていますし、都会でも起きていると。これはもう中国の公安筋もはっきり認めていて、数字も七万件、八万件とかそういうのも出しますし、二〇〇四年でしたか、三百数十万人が延べ参加したとか、全く秘密にしておりません。だから、調和社会だということを必死に言うわけです。  ですから、一党独裁体制の今後というのは、私は三つあると思うんですね。一つは財政、財政問題ですよね。潜在的な財政赤字というのは、数字が表に出ているものと随分違うわけです。もう一つは不良債権の数字ですよね。これも表と裏で本当なのかうそなのかという問題がございます。不良債権は最近の不動産等投機とか、こういったもので増えているという見方もあるわけです。三つ目は公共サービスです。こういったビッグブラザー的な一党独裁体制の最終的な問題というのは、パイを分けられるかどうか。つまり、持続的に経済を成長させていければそのおこぼれである程度懐柔できますけれども、経済成長が止まったとき又は低成長になったときにそういったあめが配れないという、その前に制度がしっかりできていないという問題ありますので、実はその三つの問題というのが今後一番表面化してくる。むしろ、天安門事件型の抗議活動というよりも、そういった水面下でのいわゆる内部的な、構造的な変動というのが私は大きいんではないかと思うんですね。  国際協調というのは、当然そういった政治体制ですとなかなか理解しにくいですし、やはり平和的台頭というのに結び付きにくいですから、やっぱり中国のその看板ですよね、いわゆる一党独裁体制というのは表から見ても中から見てもはっきり分かるわけですから、これを変えていかなければやはり外から見たイメージというのは変わってこないと。  ただ、それは今の状況ではちょっと考えにくい。自らそういった特権を手放して体制を転換するということを支配層がするはずがないというのがまず考えられる。それに、外資系企業とか、一般に海外の企業もそういったパターンにのっとってある程度もうけているところがありますから、そういった腐敗、最近、中国報道されているのは、結構、外資系企業が、最初中国を変えてくれるだろうと、ビジネス環境を、思ったのに、結局、賄賂を配ったりなんかして逆に染まっていっているなんという議論が最近、中国であるんですよ、外資批判で。  ですから、そういった、何というんですか、同化力みたいなのがあのシステムにありますし、海外のビジネスも中国共産党のシステムを見捨ててはいませんから、清王朝末期のようにむしろ支えていく可能性もある。ですから、これは外からの力というのも要因としては考えなきゃいけない。  二つ目は、ロシアとの外交というのは、これは非常に簡単で、まずプーチン体制というのは、胡錦濤政権というのが一つの管理された資本主義ということでかなり評価しているところがあるんですね。強権政治プラス市場経済ということで、ある程度それを中国も目指しているわけですから。昔は権威主義的な発展とか言っていましたけれども、管理された資本主義、いわゆる情報であるとかいろんなメディアであるとか、そういったものを国家統制の下に置きながら資本主義的な発展をしていくと。  一方では、アメリカに対する多極化の一極として、これはロシアは手放せませんよね。ロシアとは、やっぱりイラン問題とか北朝鮮の今回の問題とか、中国はやっぱり統一戦線組めますから、完全にロシアを信用してはいませんけれども、まあ使えるときにはお互いに使い合おうという実利的な関係になっております。  三つ目は、軍事的な技術、これはやっぱりEUなんかでは武器を買えないような状況になっておりますから、中国はこれは対台湾の問題でもやっぱりロシア技術というのは非常に重要であると見ております。ただ、足下を見られてロシアからなかなかいいものをもらえないとかいう不満もよく言っておりますので、どうなるか分かりませんけれども、今、三つの要因というのがあるんだと思うんですね。  三つ目の軍備の問題ですが、私が見るに、中国の中からの議論というのがどうなっているかといいますと、こういうことをよく言うんですね。いわゆる退役軍人さんたちなんかが最近結構騒いで、実は去年北京に出てきて抗議活動をやったということもあったんですよ。これは年金が足りないという。昔は、田舎に帰ると地方の政府が面倒を見たんですね。郷鎮企業という地方のそういう政府系の企業に手配したりやっていたんですけれども、今そういった郷鎮企業は、例えば公害垂れ流しとかいうので結構つぶされたりなんかして、受皿がないというのがある。  だから、軍人さんがそれで騒ぐともう本当に困りますから、昨年はそれに対して軍人規律、軍人に対する共産党の規律条例なんというのを出して、これはしちゃいかぬ、あれはしちゃいかぬというのを公開したんですけれども、その中にデモはやっちゃいかぬ、座り込みはやっちゃいかぬというのがあったんですね、あとは宗教活動をやっちゃいかぬとかですね。実際、そういうことが行われているということなんですね。だから、やっぱり軍部の中のそういった意思統一というか、モラルの低下という問題が実はありまして、ハードとしての武器の問題と別に、その軍人の士気の問題というのは実は大きな問題として抱えているんですね。高級幹部といいますか、そういった軍の幹部と一兵卒との矛盾というのも強いわけです。私、先ほど申しましたその規律条例の中に、勝手に外国に行っちゃいかぬとかですね、出境、つまり香港とかマカオに行ってはいかぬと、そういうことも書かれているんですけれども、これはそういった公然と出張できる、そういう幹部層に対する、向けられたもので、一兵卒たちは非常に不満であると。  軍備の状況というのは、これは当然今言ったソフト面とは別に、そういった生活を改善するということとは別に、これは当然、空と海というのが今課題なんですよ。中国が大陸型の装備をやってきたと。しかし、台湾の問題というのは、これは海だと。これは海と空だというので、やっぱり情報戦、海、空というのは非常に重視してきていますね、胡錦濤さんは。それで、軍人さんの質の向上とか高学歴化とか、あとは海と空というのを。これは、海というのは国土なんだという意識を最近非常に強く打ち出しています。青い国土なんだという言葉をよく使います。ですから、これは当然、日本ともこれから海をめぐって、もう既に起きていますけれども、東シナ海の問題とか尖閣の問題とか、弱まることがないと思いますね、矛盾は。  要するに、双方でそういった意識が、相手も非常にそういった権利意識が、国民も高まっているように、中国共産党体制自身も権利意識が高まっているわけですよ。今まではぼうっと見ていた領海とかそういうのを真剣に利益として見るようになっている。宝の宝庫だとか言うんですよ、海は。だから、中国意識が変わったということをまず見ていかないといけませんから、今までのようにどうでもいいとか棚上げとかいうことにはなかなか言いにくくなってきている。したがって、日本側もそれに対応できるような、中国意識変化に合わせた対応をしていかないと、当然これは平和的台頭というのは、最終的には平和的が形容詞で台頭が重要な部分なんですね。ですから、そこをやっぱり重視していかなきゃいけないので、今後、そういった摩擦を激化させていくのか緩和させていくのかという意味でも、しっかりとした対中認識が必要であると。  以上、私の回答でございます。どうもありがとうございました。
  16. 唐亮

    参考人(唐亮君) ありがとうございます。  富岡先生は、多分四つほどの問題があると思いますが、私、後ろから行きます。  まず、軍拡の問題について富岡先生の方から、通常の軍の近代化じゃなくて、もうちょっと軍拡の意味も含まれているではないかという状況認識だと思いますが、私が思うには、台湾問題をにらんで中国の軍の近代化を進めているということはまず事実だと思います。やっぱり深い議論というのは時間の制約でできませんから、中国は、少なくとも台湾自分の国の一部だと、今の段階ではどうやって独立を阻止するかと。目標としては、やっぱり平和的な統一をやっぱり果たしていきたいと思いますが、しかし独立を阻止するには軍事力の行使という可能性を持って牽制していると思います。  しかし、それから富岡先生の方は、中国は核を持っているではないかと、ミサイルを持っているではないかと、これは全く事実で、しかしこの核とミサイルを持つことはイコール軍拡ということが、多分同じように考えるということが難しいんだと思うんですね。要するに、中国以外にほかの国もミサイル、軍拡、まあ核兵器を持っているので、そこは日本は持たない、持っていないと、これは事実なんですよね。  ただ、日中の例えば軍事力を比較するという場合は、日本が持っていない核、ミサイルを中国は持っている、日本は持っていないと、これは事実なんですよね。ただ、通常兵器の分野では、例えばあれは兵器の装備のハイテク度という言葉使ってれば、日本ははるかに中国よりいいものを持っているんですよね、数が少ないかもしれません。それから、一応安全保障の問題を考えるときは、やっぱり日米同盟というものを入れて考えていれば、恐らく今の中国の持っている軍事力と日米同盟という、比べてれば全然脅威にならないというものは間違いないんではないかと思います。  それから、実はもう一つこの点に関して言えば、私、余り今日、日本外交を批判することはずっと遠慮しようと思ってきたんですが、今関連して言わせてもらうと、実はアメリカから議論が引き継がれている部分があるんではないかと私は思うんですよね。あのアメリカが、世界の主要国を合わせた軍事費より多い国は中国を今軍事脅威ととらえているんですよね。それが、だからどのような神経でとらえているか、私には正直言って分からないところあるんですよね。  実を言うと、アメリカ中国を潜在的なライバルだととらえているんですよね。今は多分、中国は全然アメリカの相手にはならないと思うんですが、将来的になる可能性ということを含めて、そうすると、何らかの形で中国を牽制しようと、多分そういう意図を込めて中国の軍事脅威論をアメリカは盛んに言っているんですよね。だから、一番資格ない、アメリカではないかと思うんですよね。  それから、実はもう一点言いますと、皆さん、例えば日本の防衛白書を調べてれば分かりやすいのですが、一九八〇年の前半まで、アメリカ日本中国の軍事費比率世界第三位と言っていたんですよね。実はもうこれは全然あり得ない話で、当時の中国の国力を考えても全然あり得ない。  ここで私、強調したいのは、日中が信頼感が足りない中で、やっぱり隣の国が軍事近代化が進んでいることが不安が大きい、そこから、あそこのことが取られて、実際に正常な近代化にすぎないということに対する評価がなかなか下せないという状況ではないかと。  北朝鮮の望ましい変化というのは、私は思うには、やっぱり平和的な問題を解決する中で、今の北朝鮮は、今までの、今のような体制では、もう到底ではないですが、もう経済も破綻するし、その経済破綻していれば政治体制の存続もまずあり得ないと、この辺りの認識北朝鮮の指導者が持っているかどうかという問題だと思うんですが、だから望ましい方向というのは、その認識に立って核問題を平和的に解決して、アメリカ日本、あるいは関係国の協力を得て、やっぱりより開かれる経済体制、まず経済を立て直して、経済の活力を持たせて、その中で需要を、国民の需要を増やして、それからどんどん協調外交を取っていくことは望ましい変化というのが、私はそういうことを望んでいると。  ただ、実際にできるかどうかは、一つ目には、まずこの核・ミサイル問題を平和的に解決できるかどうかという一つはポイント。もう一つのポイントは、解決される場合、北朝鮮が果たしてそのような構想を持つか持たないか。で、持つ場合は、なおかつその構想を実現していく能力が金正日体制にあるかどうかというこの三つのポイントがあるんですが、ただ、我々は、隣の国として是非そういう望ましい方向に進んでほしいと、その場合はサポートしていくということは重要ではないかと思います。  ロシア外交について、中国は対ロシア外交を強化してきているんですが、そのロシア中国の重要な戦略的なパートナーシップという言葉使って関係強化に乗り出していると。その意義は三点ほどあると思います。  一点目は、北方の安全という問題ですね。ロシア中国は長い国境線を持っている隣の国ですから、この意義が非常に大きいと。二番目には、さっき興梠先生がおっしゃった、アメリカはやっぱり中国に対して牽制していると、私の言葉使って言えば、ソフトな対中包囲網ですね、民主主義、人権の包囲網と、地政学の包囲網と、あるいは経済の包囲網ですね。多分そのようなものがあると思うんですが、その対中牽制に乗り出しているアメリカに対して、ロシアとの、ある意味では共通の立場に立たれているロシアとの関係を強化することによって、やっぱり対米の牽制、安全保障の面で、対米牽制という意味では非常に重要な意味を持つと。三点目は、やっぱりエネルギー、経済協力によって相乗効果、総合効果が得られるではないかと。  そういうことで、さっき興梠先生がおっしゃったとおりで、中国ロシア、国が違う以上、当然いろいろな利益の対立があるんですが、この三つの点については共通の利益を持って、今のところでは関係がかなり強化されている方ではないかと思います。  最後の、政治体制どう変わるかというのは、簡潔に申し上げますと、恐らく今の中国は、指導者から見ても国民から見ても明るい、まあ発展しているわけですから明るいではありますが、しかし満足できる状況、それからこれでいい、これで満足できる、政治にしても経済にしても社会にしても満足できる状況ではないと。だから、言葉換えて言えば、より近代国家の目標を考えている場合、その要素をそろえているかどうかというのは、とてもじゃないけれども今の段階はまだそうなっていないんですよね。  これからの課題というのは、中国共産党の言い分からいうと、共産党の求心力、指導力をもって市場経済化を完結させ、近代化を達成して民主主義と自由のメカニズムを徐々に増やしていくと。大切なポイントは、恐らく中国共産党が西側のような複政党制あるいは自由競争の選挙を導入するか導入しないかということなんですが、共産党自身は導入するつもりがないと。その理屈は分かりませんが、自分の、共産党がなければ、中国の安定保てないと、だから近代化は完成できないと、そういう論理で我々は説得されているわけですよね。  私が思うには、この共産党の信条というのは、ここで自民党の先生方が多いんですが、中国共産党は自己愛が非常に強いですね。自分がなければ中国はうまくいかないと。ただ、違うというのは、誤解を与えないように、違うというのは、自民党は選挙を経て政権を担当しているんですが、共産党は自分自身が論理を持って政権を担当しているんですね。ただ、共産党が使命が終えるまで、私はやっぱり共産党の求心力がなければ、中国のこれからの政治の自由化も民主化もあるいは市場化の完成というのはなかなか難しいというところはあります。  ただ、将来的に中国は、例えば中産階級が社会の主流になる場合、あるいは法による支配という枠組みがある程度できつつあるという場合、あるいは市場経済、特に国営企業の民営化がある程度決着が付けられるという場合は、市民社会の力で、民衆側の力で民主化を、軟着陸を、何というかな、つくり上げていくということが望ましいではないかと思います。
  17. 田中直紀

    会長田中直紀君) 谷合正明君。
  18. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。  興梠先生、また唐先生、本日は本当にありがとうございます。  まず初めに、興梠先生の方に質問をさせていただきます。  環境問題について質問をさせていただきます。いわゆる中国外交政策の中に環境問題の対処というのはどのように位置付けられておるのかということなんですが、先ほどエネルギー問題が話に上がりましたが、エネルギーと環境問題も、これは同時に考えていかなければならない問題だと思っております。  特に、環境問題なんですけれども、例えば水ですね。かつて、世界銀行だったと思いますけれども副総裁の方が、これからは資源をめぐる争いから水をめぐる争いになるだろうと言われておりました。実際、中国における水、これも一人当たりの水の資源量というのは、実はイランだとかスーダンとか、そういった若干砂漠をイメージするような国とほぼ同じぐらいなわけでありまして、非常にこれからは重要な観点ではなかろうかと。  今後、日本としては、やはり日中の間におきまして、環境パートナーシップといいましょうか、これまでのODAの関係というよりはパートナーシップの関係を築いていくべきではないかと思っております。  例えば、具体的に何をするかといいますと、一つ目には環境汚染を禁止するだとか、あるいはその二つ目には省エネ循環型社会への転換を図るだとか、三つ目には環境教育というものをしっかりと進めていくということでございます。中国は国境を接している国がもう十か国以上ありますので、こういった取組というのはアジアに広がっていきますし、またこれが世界に広がっていくものだと思っております。  私自身はこういう、日本としてはこういう環境パートナーシップというものをやっていかなければならないと思っていますが、この点について興梠先生の見解を伺いたいのと、果たして中国政府が環境についてどれだけ意識というか、危機意識があるのかということをまずお聞きしたいと思います。  次に、唐先生の方ですが、中国の政治経済状況を最初に説明していただきましたが、私も中国の格差問題というのには大変関心があります。特に農業、農村、農民という三つの農ですね、この問題があるのではないかと思っております。  先ほども若干関連する質問がございました。この中国の格差というのはもう日本の格差問題以上の格差でございまして、内政問題と言われればそうかもしれませんが、これは、でも、よく見ますと、例えば反日デモとリンクしてしまった問題でもございますし、日本としてもやはり中国のこの地域格差であるとか所得格差であるとか、そういった問題についてしっかり見ておかなきゃいけないと思っております。  特に、中国もWTOに加盟して市場経済を導入していく中で、農業、農民、そして農村が受ける影響というのは非常に今計り知れないものがあると思っております。また、農業セクターだけじゃなくて、行政組織自体も市場経済に即した組織改革というものがあるんじゃないかと思っておるんですが、先ほども唐先生は、求心力を持って市場経済化をしていくんだと、それが中国をうまくハンドリングしていくかぎだとおっしゃったんですが、果たして本当にそういったことが可能なのかどうかというのが私の非常に素朴な関心でございます。唐先生の率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  19. 興梠一郎

    参考人興梠一郎君) どうもありがとうございます。  環境問題というのは、中国では実は政治問題ですね、政治構造と関係していると。まず、日本と同じ土台で考えるとどんどんずれていってしまうというのがあるんですね、日本では余りそういう議論がされてないんですが。  水と空気、あと砂漠化とか川の汚染とか、日本でも時折メディア報道されます。例えば、ロシアとの問題では松花江ですね、中国東北部、あそこで化工工場がたしかトラブルになって、それが垂れ流しになって、ロシアと一時緊張したことがありました。民衆が水を買い付けに行ったりとかして大変な問題になりました。ただ、中国は逆に、それ、当局は、ロシアと大きな問題にならなかった、ロシアとのパートナーシップの結果だとか言って、外交的な関係がいいからだみたいに一応持ち上げたこともあるんですね。    〔会長退席、理事三浦一水君着席〕  しかし、国境を越えて、黄砂の問題もそうですけど、中国平和的台頭にとって非常に大きなマイナスイメージになっていることは確かなんですね。一つは、国境を越えたそういった汚染の問題、もう一つは、国境を越えて人間が移動するという問題もそうです。ロシアの例えば極東地域、あとは最近のヨーロッパもそうですし、アフリカなんかも中国人の労働者がどんどん出ていって、現地でいわゆる黄禍論みたいなものがはびこっていると。だから、人間の移動というものは、ある意味で考えたら、経済成長のパターンの結果と言えると思うんです。  政治的な問題というか、行政システムの問題として日本からいまいち見えてこない問題が一つあるんですね。それはほとんど、例えば川の汚染とか、特に川の汚染が最近深刻なんですけれども、中国国内メディアで相当報道してるんですね。  特に胡錦濤時代になってから、これ調和社会の一つのポイントだということで、環境部門も実は余り権力がなかったんですけれども、これから強化しようなんという動きになっているんですね。  どういう仕組みになっているかといいますと、例えば地方にも環境保護の主管部門というのはあるんですけれども、ほとんどが経済担当の部門よりもやっぱりちょっと力がないんですね。やはり、今までGDP、経済成長至上主義というので突っ走ってきましたから、それに対する環境の負荷というのはほとんど考えてこなくてよかったと。ですから、例えば抗議活動なんというのも大きい意味で考えると環境問題なんですよ。つまり、農民の意識、農民の生活を全く無視して都市に重点的に投資して、病院も都市に集中し、医療も全部都市、もう農村はほとんど手付かずの状態だったと。自分の国の中に、いわゆる発展途上国を残したまま発展してきたわけでしょう。共産党というのは、そのGDPをどんどん伸ばしたおかげで皆が前よりは良かったと、まあ毛沢東の時代よりは良かったという、そういう安心のおかげで何とかここまで突っ走ってきたと。ところが、最近は出稼ぎ労働者も黙っちゃいないし、おれたちは同じ国民なのに何でこんな差別されているんだとか言い始めましたし、環境問題も実はそういった大きな経済成長パターンの限界という問題としてとらえるということです。  ですから、地方ではそういった経済をとにかく発展させていれば、中国の地方指導者は出世するんですよね。それから、GDPが八%行くぞと言ったら、一〇とか一五とか言えば、これはやっぱり目立つわけですよ。もう巨大な営業会社みたいになっていまして、そもそも中央政府が今年は何%だとか言うこと自体がそれに火を付けるところがあると。したがって、外資をどんどん導入して、土地ももうただ同然で切り売りして、公害を垂れ流そうが全部隠ぺいして、とにかく物を作れとやってきたわけですよ。ですから、そういった垂れ流しに大体かかわっているのは、例えば中小企業、特によく言われるのは香港とか台湾の企業ということを言われるんですね。日本は割と余りやり玉に上がらないんですけれども。しかし、これは地方の指導者からすると有り難いんですよね。雇用を確保できると、GDPも確保できると。  じゃ、中国環境を重視した結果どうなるんだと。じゃ、外資系企業はどうするんだと。急にそういった高度な技術を持った外資系企業が田舎に来てくれるのかという問題になるんです。したがって、これは中国の成長パターンの代価でもあって、現状の限界でもあるわけですね。ですから、これからどうするかという問題も真剣に議論されていて、当然エネルギー効率を良くするとか胡錦濤政権は言っていますし、日本からも絶対協力してほしいことの一つにも環境問題挙がっていると。環境を日中の懸け橋にしようとかよく言うわけですよ。ほかのことじゃ問題多過ぎるんで、何か一個、お互いにやったらいいんじゃないか。だから、砂漠の緑化なんかも、よく日本人が植えているところですね、写真で、雑誌なんかで大きく出すんですよ。そうすると、日本人も悪くないというイメージになるじゃないですか。だから、環境問題というのは一つの、協力パターンの一つで、割かしやりやすいところだと。で、これは民衆の利益にも直接かかわっていると。  だから、これからも恐らく日本には相当それを期待しているでしょうし、日本もそれはやっていくのはやっぱり効果があるということになるんですが、問題は、今言いましたような行政機構の独特なそういった問題とか、中央の指導者が知らないところで、例えばSARSなんかも最初は局部的なところからどんどん広がっていったところもありますし、エイズの問題もこれ広い意味で、環境問題でいえば、ほっておけばこれ一千万人に行っちゃうとかいう話もあるわけですよ。その経済的な代価は非常に大きいんですね。ほとんどが、この中国の中央政府と地方政府と全く一つになっているわけじゃなくて、これよく言われるのは、天は高く、皇帝は遠いという言葉が中国にあるんですけれども、天が高いように皇帝はずうっと向こうに、中央政府は向こうにいて、こっちのことはほとんど分かんないというニュアンスなんですよ。  ですから、そういったコミュニケーションの問題とかあの国の大きさとか、そういったことを考えますと、中央指導者、胡錦濤さんの知らないところで何か起きていることというのは非常に大きくて、後手後手に回っちゃって、後からやってもなかなか、もうぱあっと広がっちゃっていたりとかというのがありますんで、今後、日本ができるところは当然ありますけれども、中国がそういった行政システム全体の問題として解決していかないと、長期的に見てなかなか容易ではないと言えると思います。  以上です。どうもありがとうございました。
  20. 唐亮

    参考人(唐亮君) ありがとうございます。  谷合先生から中国の農村問題はどうなるかということを聞かされましたが、私は、谷合先生の問題提起は、ある意味では中国のこれからどうなるかが、中国台頭が果たして可能かどうか、それを決めるぐらいの大きな問題だと思っています。  というのは、さっき、私、理解している中国の近代化というのは、実は経済の面から考える場合は、どうやって農業国を産業国に変えていくかというのが経済の近代化なんですよね。それを考えると、実はこの二十数年間の中国の経済発展、実は農民の労働力をいかに産業労働者あるいはサービスの産業に移転させていくか、それから農村地域の産業開発あるいは都市化をどうやって進めていくかと、そのような問題だと思います。その成果もそこではっきりしているし、問題が依然として非常に大きいと、これもはっきりしているんですよね。  今の中国胡錦濤政権は、さっき私が申し上げましたように、農民を支援を強化していくという方針が打ち出されていると。これは分配制度の改革に関連するものなんですが、しかしやっぱり限界が大きいというのはまず申し上げなければならないと。  私、たまに日本のことを比較してこのような問題の深刻さを説明しているんですが、日本の場合は例えば、正確なデータ、私、今覚えてませんが、二、三%は農民だと、サラリーマンは九五%以上だと。そうすると、日本は九十五人のサラリーマンの力をもって二、三%の農民を支援すると。そういう意味では、農業生産の付加価値が低いにもかかわらず、日本の農民はそれなりの豊かな生活を送ることができるようになっている状況なんですよね。  その問題を、そのような視点から今の中国を見る場合は、実は五割以上まだ農民なんですよね。四割ちょっとくらいで、今、第二次産業あるいは第三次産業の労働者、職員なんですよね。そうすると、四人が五人以上支援しなくちゃいけないというのは、実は支援の能力に大きな限界があると思います。    〔理事三浦一水君退席、会長着席〕  だから、そういう意味では、これからの中国の農民、農村問題をどう解決していくかは、大きなその考え方、整理していく場合は、分配をより、農民を支援すると同時にパイをどう大きくするか。そういう意味では、産業化、経済の近代化が、高度成長というのが絶対にその必要不可欠な条件ではないかと思うんですね。そこが、具体的な方針を少し簡単に述べると、やっぱり経済発展する中でどうやって農民の余剰労働力を沿海地域あるいは都市部に移転させていくかと。  もう一つは、皆さんがよく御存じのように、中国は四、五年、五、六年前から西部大開発、それから最近になって中部の開発にも力を入れていると。私、なぜこれを触れるかというと、実は中国の三つの大きな格差、特に一番目と二番目の地域格差は実は農村と都市の格差でもあるんです、重ねているんですよね。西部と中部は農村地域が中心になっているんで、だから経済が後れて貧しい人が多いわけですよね。  そういう点を考えると、だから解決方法というのは、一つは農村の余剰労働力を付加価値の高い第二、第三次産業に移転させることと、中部、西部の開発によってその地域の産業化と都市化を進めていくことと、それから、なおかつ、農民が多分たくさん残るから、その余力をもってその農民たちの生活基盤を支援していくことが重要ではないかと。その点に関しては、恐らくさっき私、申し上げました日本の経験が、実は相当の経験がかなり参考されるものではないかと思います。  抽象的になりますが、以上です。
  21. 田中直紀

  22. 大門実紀史

    大門実紀史君 本日はありがとうございます。  一点だけ、同じことを両参考人に御意見を聞きたいと思います。中国北朝鮮政策が成功しているのか、あるいはこの後どうなるのかという点についてでございます。  これは六者協議の今後の方向にも影響するし、そのことを日本としてもきちんと分析をしていく必要があると思いますのでお聞きしたいわけですけれども、若干経過申し上げると、〇二年の十月の北朝鮮の核兵器開発のときですね、あれをきっかけにして中国北朝鮮政策というのは変化があったんではないかと認識をしております。それまではアメリカ北朝鮮で核の問題はやってくれというようなところが、中国としても、あの後、〇三年の頭から中国共産党の中で北朝鮮の核問題、北朝鮮問題の検討チームをつくるということでいろいろ政策検討をして、すぐ動き始めまして、六者協議に向けて動き出したという経過があると思います。  その辺りで先ほど、今日、先生方からお話があった、北朝鮮に核を持たせないと、半島を非核化すると、あるいはその中で中国の影響力だけは確保しておくとか、あるいは北朝鮮の体制を急激には崩壊させては中国も困ると。ですから、中国と同じような改革・開放路線を取らせて、経済の自由化をさせてソフトランディングというふうなシナリオも含めて固めたんではないかと思います。  そのときにアメリカは、まあ中国やるならお手並み拝見というところがあったんじゃないかと思いますが、そして六者協議を模索、中国が非常に頑張ってイニシアを取って、シャトル外交と言われるようにアメリカにも高官を派遣する、北朝鮮をも説得するということで六者協議を、つまりアメリカに任せちゃうと北朝鮮の核問題が国際化するといいますか、国連で問題になるような、この流れになってしまうと。そうではなくって、周辺国でこの問題を何とか協議してうまくまとめていけないかということで、六者協議を中国が模索をしたんだと思います。  で、いろいろやってきて、いつでしたか、〇三年ですかね、八月ですか、第一回の六者協議が北京で行われると。で、その後いろいろあって今回の核実験ということになってしまったわけですが、そういう中国北朝鮮政策、思惑からいくと、今回の核実験で二つのことが思惑が外れたんではないかと。  一つは、当初、北朝鮮の核を国際化させないといいますか、国連の場で問題になるようにさせたくなかったと。それがとうとう国連決議となってしまったと。二つ目には、経済の自由化、ソフトランディングも、軍部の抵抗もあったりいろいろあるし、今回の核実験でいろんな支援から、いろんなこと含めてかなり困難になってくると。ですから、中国が目指したあの目的からすると、北朝鮮政策、六者協議を通じてというようなのが、今回少なくとも二つぐらいの点では明らかにうまくいかなかったんではないかというふうに思うわけですけども。  ただ、六者協議というのは非常に重要な場だと、総理もおっしゃっていますけども、それが中国が、自分たちのやり方がうまくいかなかったということで、万が一、まだそこまで行ってませんけども、見直すと、つまり六者協議にもう余り意欲を示さなくなると、中国がいて成り立ってきたようなところもありますから、六者協議が困難になってくるとか、非常にいろいろ影響が大きくなると思います。  そういう点で、中国北朝鮮政策、今の段階で、まあ失敗したとまでは言い切れないと思いますが、うまくいっていないんではないかと思いますし、もし見直しがあるとすると今後どういう方向に見直す可能性があるのか、その辺の御所見を伺いたいと思います。
  23. 興梠一郎

    参考人興梠一郎君) ありがとうございます。  中国でもいろんな見方がありまして、北朝鮮問題に関しては、以前はちょっとした批判めいた論文を出したぐらいでその雑誌がつぶされるなんということもあったんですけども、ミサイル事件から今回の核実験にかけていろんな論点がいろんな学者の口から出てきてまして、幾つかちょっとそれを紹介して、それから私の見方もちょっとお話ししたいんですけれども。  一つは、日本側でも注目された論文があったんですね。上海の復旦大学の方が書かれた、この人は軍拡問題とかいろいろやっている人で、沈さんという人なんですけども。これはどういう内容かというと、核実験の一か月前に当てたんですね。一か月前に、これは核実験絶対やるぞと、絶対やるぞと。で、見事に当たったものですからもうメディアの寵児になって、一躍有名になった人です。  私もそれ読んだんですけども、どういう論点かといいますと、北朝鮮は国益で動いているんだと。中朝がどうのこうのとか、そういうイデオロギー的な、まあ血と肉を分けた兄弟とか、そういった朝鮮戦争以来の同盟関係で動いているんじゃないんだと、国益なんだと、主体思想というのはどこにも依頼したくないという発露なんだと。したがって、核は自分を守るためなんだ、そういった不安定な精神状況にあると。したがって、中国も守ってくれない、どこも守ってくれないという下で考えているから、当然やるだろうと。非常にシンプルな議論なんですけれども、それで一か月前にそういう話をして、見事に、やらないという意見も結構ありましたから、ばたっと当たったわけなんですね。したがって、それがまず一番根幹にあるということですね。  中国側が、先ほどいろんな意見、唐先生の方からありましたけれども、中国ができる範囲ってどんどん少なくなっていっているってイメージですよね。例えば、ミサイルのときも、事前に分かっていても、やるなと言ってもやっちゃったわけですし、今回の核実験も、ロシアは二時間前、中国は二十分前って議論もあるじゃないですか、そういううわさも。何でロシアに先に教えて、こっちは教えてくれないんだと。  私の耳に入ってきているいろんな情報では、例えばもう大国の順位付けも変わってきていると。中国が一番上じゃなくて、アメリカを一番上に置いていて、次がロシアで、それで、むしろ日本中国の上に置いている、そういった認識を最近、北朝鮮は持っているんじゃないかというのを、例えば中国の軍部の人が言っているとか、そういったものがいろんな形で伝わってくるわけですよ。  そうしたら、一体これは何なのかというと、やっぱりちょっと前にさかのぼってみますと、先ほど言いましたけれども、やはり北朝鮮世界の冷戦構造の解体の中で取り残されたという部分が随分あって、中国が改革・開放政策でばあっと西側と経済関係を深めて正常化をどんどんやっていくと。で、もうイデオロギーはぱあっと断ち切って全方位外交に出たんだけれども、北朝鮮はそれに乗れなかったという、自分だけが取り残されたような感覚がある。だから、中国を裏切り者と見ているというのを昔よく言っていました。  ですから、例えば今回のミサイルの問題でも、いろんな西側のメディアを通して、金正日さんの中国に対する悪口なんかが流れたわけですよ、中国は信用できないんだという言葉を西側のメディアに流したりとかして。中国側も、ある意味ではそれを感じていると思うんですね。  ですから、中国の対北朝鮮政策で成功しているかどうか。現時点においては中国は非常にフラストレーションが高まっている。改革・開放政策に、自分のモデルに転換してもらって、少なくともベトナムのように安定的にやってほしいと思っているけれども、なかなか難しい。ただ、中国は、ベトナムはもう先に行き過ぎているんじゃないかと最近思っているわけです、政治改革なんていう言葉も出始めましたから。自分のちょうど影響下に置けるような感じで北朝鮮に変わっていってほしいんだけれども、どうも最近見ていると中国よりはアメリカの方にラブコールを送っていると。  これはやはり、先ほどもおっしゃいましたけれども、核兵器開発というのが分かった時点で中国の対応が積極的になった。つまり、しりに火が付いたわけですよね。これは核を持った北朝鮮と持っていない北朝鮮とでは全然違ってくる。核を持つとどういう状況になっているかというと、アメリカと近くなればなるほど中国にとっては脅威になっている。だから、中国前面的に出ていって北朝鮮に働き掛けたり話を決めていかないと、もう米朝だけで全部やられちゃったら中国の周囲の環境が全然変わっちゃうわけですよ。  だから、よくインドの例を中国は出すんですね、モンゴルとか。要するに、周りから囲まれちゃっていると。親米国家周りにできちゃったら、中央アジアなんかでも、中国はこれ民主化ドミノというのはアメリカが後ろでやっているなんて言っているぐらいですから、東西南北全部囲まれちゃう。だから、私は積極的になったんじゃないかなと。核を持った北朝鮮と持っていない北朝鮮は、中国にとっては全然戦略的な意味合いが違ってくるということだと思うんです。  最後に、六者協議なんですけれども、これはやっぱり中国としては舞台と思っているんですね。先ほど言いました、多国間は舞台という規律があるわけですから、これはもう外交筋、外交官からトップまで全員暗唱しているぐらいですよね、多国間は舞台なんだと。どういう舞台かというと、そこで大国の利害を調整したり、周辺との関係を安定させたり、自分世界に向けて中国は平和国家なんだ、いろんなそういう戦略的能力を持っているんだ、おれたちがいないと困るだろう、日本じゃやれないだろうみたいな、そういった部分を見せることによって、やっぱり自分にとっての台頭のいわゆる障害が減っていくということになる。  だから、六者協議は、やっぱりできればそれで決めたいんだと思いますよ。やっぱり自分があくまでも主導権を握れる場所であって、先ほどおっしゃったように、ですから国連に持っていかれちゃ困るわけで、その庭で絶対にやりたい。  ところが、今回の核実験を、実は中国の中でこういう見方があるんですね。あの核実験は、これはあくまでも想定ですけれども、こういう議論があって、あれはアメリカが追い込んだんじゃないかと言っているんです。金融制裁で北朝鮮が六か国協議から外れるように意図的にして、六か国協議をいわゆる空洞化して、中国主導権を失わして、アメリカ北朝鮮とさしで話合いをして、アメリカ主導の北朝鮮解決モデルに無理やり持っていったんじゃないかという陰謀論が結構聞かれるんですよ。  これはどういう議論かというと、要するに、北朝鮮が核を持った後インド化していくパターン、非常にやっぱり懸念しているわけですね。これは、中国のトータルな周辺環境という感覚から見ますと、あながちうそとは言えなくて、やっぱり流動的ですよね、今、北朝鮮がどっちに付くかというのは。中国ではなくて、もしかしたらアメリカ側とがんがん関係が良くなる。  かつて中国は、ソ連と関係を切ってアメリカ側と手を結んで改革・開放政策が大成功したわけです。北朝鮮も当然、マーケットを全部中国に支配されて人民元が流通するような状態から、主体意識を持っているんであればなおさら、これは中国アメリカを競い合わせるというのはやっぱり一番彼らとしてはやり得ることで、中国はかつてソ連といわゆる関係が悪くなった後、日本とかアメリカにアプローチして経済が急速に発展したわけです。ですから、資本力でも資金力でもそれをやりたいということですから、中国が一番心配しているのはそういう状況になるということで、今後どうなるかというのは中国はそこを一番心配しているので、六者協議は当然崩壊させたくないんじゃないかと私は思っております。  ありがとうございました。
  24. 唐亮

    参考人(唐亮君) ありがとうございます。  今、大門先生の御質問は中国の対北朝鮮政策が成功しているかどうかということなんですが、私は、成功しているかどうかというのは、まず中国の対北朝鮮外交政策、どのような目標を立てていっているか、その目標から見て今の結果が合っているか合っていないかということだと思うんですが、中国の対北朝鮮政策の目標は、私は関連し合って四つほどの目標があると思います。  一つ目は、レジュメ、三ページから成っているんですが、朝鮮半島の安定と平和と。さっき申し上げましたように、中国自身の経済建設には平和的な国際環境が必要だと。この朝鮮半島が不安定になってくると中国の要するに望んでいる国際環境ができないわけですから、これはまず第一に北朝鮮、朝鮮半島の安定と平和と。  二点目は、朝鮮半島の非核化、あるいは核・ミサイル問題の平和的な解決ですね。この問題が存在する限りではアメリカあるいは日本あるいは韓国は絶対許しませんから、そういう意味では、地域の緊張関係が核、ミサイルの問題が解決されない限りは絶対安定しませんので、だからそういう意味ではやっぱりこの朝鮮半島の非核化の問題が、目標が重要だと。  三点目は、さっき興梠先生がまたおっしゃったと思いますが、北朝鮮の崩壊というシナリオを避けたいと。これは、米朝あるいは日朝が緊張する中で、北朝鮮はある意味では体制としてあるいは経済力としては非常に脆弱な国ではありますから、そうすると当然、もめている中で北朝鮮という、崩壊というのは、外の力による崩壊とあるいは内部の崩壊というものもあるわけですから、その崩壊によるというマイナスの影響というものは中国はやっぱり避けたいと。これも興梠先生がさっきおっしゃったと思いますが。  ついでに、この三つの目標を達成する場合、なおかつ、できれば、さっき富岡先生との中でも議論したと思いますが、望ましい方向に変わってもらえばこの地域の長期的な安定した平和的な国際環境ができるわけですね。  この四つの目標を立てて、恐らく私は、日米あるいは韓国等々も似たような、温度差が若干違うとは思いますが、まあ共通目標を持っているんではないかと。そのような目標から考えて中国は六か国協議で仲介役を果たしているんですよね。今日の現実を見ている限りでは全然この三つの目標は到達されていないんですよね。北朝鮮は更に踏み込んでミサイル発射の後には核実験をやってしまったと。これは、地域の緊張関係が高まってきているということはもう間違いないと思う。ですから、その点から考えると、私なりに今、大門先生の質問に答えていくと、全然成功していないと、全然成功。  ただ、成功するか成功しないかということ以前にその目標を達成するために努力してきたと。なおかつ、今もその希望を捨てないで努力し続けていることと。これは米朝両方に働き掛けて年内に六協議再開されると、平和的な解決の希望を持ってこれからも努力をし続けるべきではないかというのは、中国は多分考えているんですね。これは一つ。  それで二点目は、私、さっきの議論の中で、中国北朝鮮に対しての関心をいろいろ議論されていると思いますが、米朝の接近に中国は面白くないではないかと、あるいは中国の対北朝鮮の影響力はどうするかという問題なんですが、私、思うのは、北朝鮮は恐らくミサイル発射にしても核実験にしても、やっぱり対北朝鮮強硬外交を取っているブッシュ政権を交渉テーブルに引き付けたいと、そういう瀬戸際外交の意図が見られるではないかと。そういう意味では、北朝鮮はやっぱり、この北朝鮮だけじゃなくて中国日本も、やっぱりアメリカというのは世界唯一の超大国で、なおかつ同盟の動員力を持ち合わせている国ですから、すべての問題についてアメリカを抜きにしてなかなか解決できないというのは恐らく今日の国際状況ではないかと。その北朝鮮は、やっぱり核兵器の問題、ミサイルの問題を交渉する中で、よりアメリカから利益を得ようとしているんですよね。米朝の正常化、テロ国家のリストから外してもらうとか、そのような望んでいるんで、やっぱりアメリカと直接交渉によって問題の解決を図ろうとしているんですよね。そういう意味では、ある意味では中国を外置いていても、本来は米朝がそういう交渉ができればある意味では問題解決できるんですよね。  米朝の接近について中国はどう思っているか。私は恐らく焼きもちは全然しないではないかと、あるいは焼きもちはする必要は全くないではないかと。北朝鮮という今日が置かれている状況、北朝鮮という国の体質を考えると、米朝が接近して中国包囲網に加えるということはまず考えられないんですよね、今の状況を考えると。だから、もし米朝が直接交渉して問題解決できれば大いにやってもらおうじゃないかというのは私は中国の本音なんですよね。  なおかつ、もう一点は、中国はある意味では対北朝鮮は支援をして、北朝鮮の開発にも手を出しているんですよね、資源開発に。そこが私は、恐らく、資源が欲しくてなりふりやっているというよりは、皆さん考えてほしいということは、今の北朝鮮でこの合弁事業をやったりして大きな利益得られるかどうかというのは、恐らく貿易取引のリスクと、あるいはその投資環境を考えると多分無理だと思います。資源というのは国際市場である意味では私は調達可能とは思っているんですよね。やっぱり北朝鮮との関係というのはできれば崩壊はしてほしくないと。できればやっぱり北朝鮮が自力的に経済の回復をして、これから活力のあるシステムになっていってほしいと、そのような状況の中で中国の対北朝鮮政策を進めているではないかと思います。
  25. 田中直紀

    会長田中直紀君) これより自由に質疑を行っていただきます。  田村耕太郎君。
  26. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 お話興味深くお伺いしました。ありがとうございました。  私は、これからの、次の世代がいかに不信感や誤解を取り除いて日中うまく付き合っていけるかということに関してお知恵をお聞かせいただきたいと思います。  今、対中脅威論みたいなのもあるんですけれども、これからの中国のことを考えたら、僕はちょっと中国に同情してしまう方なんですね、大丈夫かなと心配しちゃうんですけれども。食料、エネルギー、環境、ほかにもいろいろありますね。例えば社会保障ですね。一人っ子政策の影響が出てきます。また、一人っ子政策であれだけ豊かにわがままに育った人たちが大人になったときに、今のような体制でみんな我慢できるかなというふうに勝手に思っちゃうんですけれども。  ただ、やっぱり仲よくするのもメンツの問題もいろいろあるわけですね。例えば、今、中国のOLなんか日本のOLのファッションを非常に参考にしていて、向こうの雑誌なんかを見ますと本当に日本の雑誌の生き写しみたいになっていますし、日本のドラマとか音楽とかカルチャーは非常に向こうではやっているんですけど、しかしそれはそれ、国に対する感情は感情なんですね、聞いてみたら。日本のファッションや食べ物や服は好きだけど、じゃ日本が好きかといったらそれは別の問題だと。若い世代に行けば行くほど対日不信感といいますか、対日感情が悪化しているような気がします。  また、日本日本でやっぱり若い人に行けば行くほど、何というんですかね、国粋主義じゃないですけど、愛国心がちょっと先鋭化しているような嫌いもあって、時間が解決するとか、次の世代はうまくいくとか、文化交流が進めば何とかなるという問題でもないような気がするんですね。  じゃ、これからどうしたら次の世代が仲よく交流できるかというところにお二人のお知恵をお聞かせいただきたいんですけど、私がちょっと心配に思ったのは、何で中国人たち中国の若い人たち日本に対して誤解や不信感があるのかと。  私自身のつたない経験なんですけど、ちょっと中国に何日かいることがありまして、去年なんですけど、去年ちょうど何か記念の年でしたよね、忘れましたけど。テレビ見ていましたら、大河ドラマみたいなのをやっているんですね、CCTVで八時から。あれ、日本戦略の歴史みたい、占領の歴史みたいなのをドキュメンタリータッチでつくっているんですけど、正にノンフィクションといううたいでドラマは進行するんですけど、どう見てもこんなことがあったのかみたいな、日本人が非常に女好きで弱くてどうしようもないように描かれていまして、これが毎日流れて、視聴率で割り出すと毎日四億人から五億人の人がそういうテレビを見ると。教科書の問題もあるんですけど、教科書を読む人なんか限られているよと聞きますけど、テレビの影響というのは非常に大きいんですけど。ああいう番組じゃなくて、「大地の子」とか「シルクロード」とか、ああいうのを流してくれれば大分、対日感情は変わるんじゃないかなと思ったんですけど。  そういうことも含めて、次世代が本当に相互信頼を築くためにはどういうことをすればいいのか、もう本当に端的にお答えいただければと思いますので、よろしくお願いします。
  27. 田中直紀

    会長田中直紀君) どちらの参考人ですか。
  28. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 お二人に。
  29. 田中直紀

    会長田中直紀君) じゃ、興梠参考人
  30. 興梠一郎

    参考人興梠一郎君) ありがとうございます。  これは、いろんな側面があると思うんですね。教育、メディア、政治、経済、まあ歴史認識も教育の中にも入りますし、メディアの中にも入ると思うんですが。まあできる範囲とできない範囲があると私はある程度思っておりまして、できる範囲といいますのは、例えば先ほど環境面での協力とか、こういったものはできると思います。ただ問題は、今の中国政権の性格というところにまた行くわけですよ。  やはり、先ほど唐先生もおっしゃっていましたけれども、例えば日本の政党と中国共産党のその存在の仕方の違いといいますかね、選挙制度も違いますし、人民代表というのはおりますけれども、それは中国共産党の指導下で行われる選挙ですし、ほとんど共産党党委員会がかかわってやられる選挙ですから、国民から委託を受けて政治をやっているという感じではないですね。革命、内戦、革命で勝った下で正統性を樹立して、その後、毛沢東時代を経て、経済も破綻状況に追い込まれたときにトウ小平が立ち上がって経済を改革し、共産党の体制を維持したと。  したがって、中国の共産党の存在意義というのは経済発展なんですよね、国を豊かにするという。したがって、その下で皆まとまっていますから、まあ少数民族もたくさんいますし、宗教も違いますし、いろんな要因がある多元的な国家ですけれども、一応経済成長をやってきたんだと、どんどん大国化しているじゃないかという、そういうプライドの下に求心力を維持している。そこの大前提からすべてを考えないといけない。  したがって、ある意味では非常に脆弱な政権なんですね。脆弱な政権、基盤が弱いと。常にだれかから囲まれているとか、下から覆されるんじゃないかとか、革命政権のそういった精神的な遺産というのを受け継いでいるんですね、今でも。だから、中国国内でこういう問題よく議論があって、反日デモ、かなり反省している人もいるわけですよ。特に、外交筋とか大学の先生とかはメディアでそういった議論をします。結構そういうことを言うと、おまえは裏切り者だとか非国民とか言われたりとかして彼らも苦しいんですけれども、それでも声を上げてこういうことを言っていますよね。中国ナショナリズムというのは危ないんだと、もろ刃のやいばだと。ナショナリズムによって国家大国化していって台頭してくるのはそれはいいことだけれども、逆に見ると中国イメージも非常に悪くなってくる。それが破壊行為に及んだり、過激なナショナリズムが奇妙なショービニズムになっていくと。だから、これは中国の指導者も非常に懸念していて、反日デモ以後かなり調整が行われたということなんですけれども。  じゃ、それはどうしてそういう結果になったかというと、まあ日本でよく愛国教育をやったとかいうことを言われていますが、これは天安門事件の後にいわゆるソ連の崩壊というのもあって、共産主義の国家の孤立化というのが進んでいったと。で、新しい求心力として当時の江沢民政権の下で愛国主義が強調されたという議論があるんですね。  確かに、そういう新しい求心力としての愛国主義というのもあったと思うんですが、しかし戦争の傷跡というのは家庭の中でも教えられているわけですよね、おじいちゃんが殺されたとか、おばあちゃんが殺されたとか。これは学校の教育レベルとは違ったレベルの、まあ傷跡としては歴然として残っていると。  じゃ、それが今の、先ほどありました大衆文化、例えば日本の漫画とかが大好きな子、一杯いますよね。コナンが好きで日本に留学に来たとかですね、いるわけですよ。日本のそういうファッションとか漫画というのはもう圧倒的なイメージで迫っていると。中国側もそういった日本のアニメの影響力というのをやっぱりかなり懸念しているところもあって、国産のアニメを強化しようとか、そういうのもあると。  じゃ、文化レベルで今言ったような戦争の傷跡を相殺できるかという問題あるんですけれども、私はそこは、やっぱり中国人たちの中でまだ使い分けが行われていると思うんですね。全面的に心を開いて受け入れているという面ではなくて、要するに、まあ日本人がアメリカの文化を受け入れるときもそうじゃないかと思うんですよ。やっぱり日本の心、日本人の心の中に、どこかにやっぱり日本人としてのアイデンティティーとか気概というのがあるわけで、それがたまにはイラク戦争をめぐる反米意識につながって、メディア日本人個人の発言に出るということあると思うんで、別に中国だけが特殊な状況ではなくて、そういう多面的な意識を持っているという面があると思うんです。  ただ、今後の最大の問題というのは、唐先生もおっしゃってましたけれども、やっぱりナショナリズムの管理なんですよね。これは韓国もそうなんですよね。韓国の人もかなり日本の現代カルチャーというのに関心を持っている若い人多いですけれども、しかしやっぱり政治とか領土とか、そういう問題になると急に変わりますよね。日本人もそうですよね。ヨン様、ヨン様とか言っているけれども、やっぱりその領土、領海の問題になるとかなり血が熱くなるわけだし、対中認識でも悪化しているというデータが出てますけれども、これもやっぱりサッカーのブーイングだとか反日のデモだとか、こういうのを見ていると、だんだんだんだん若い人が特に悪くなっていったと、意識が、対中認識が。  今後できる問題というのは、幾つかあると思うんですが、一つは、やっぱり中国側のそういう政権の要求に、維持のためにやってきた今までの国民教育というんですか、教科書とかも含めて、日中の首脳同士でそういう歴史認識の問題もたしか話し合われたと思うんですけれども、やっぱり教科書というものをどうするかという問題がまず第一点。  次に、やっぱりメディアの在り方というのが問われていますが、これは日本は管理できませんので、メディアは。特に、中国側が対日政策変化するとメディアが急激に変化すると。これはやっぱり、でも向こうの政治体制の問題で、こっち側はどうしようもない。ですから、向こうでメディアで好意的に取り上げてもらえるようなメッセージというか、それを発信するしかないけれども、これは僕は限界があると思っているんですね。  三つ目は、これはやっぱりちょっと広い話になりますけれども、日本中国、これからどうするのと。東アジアでどういう役割を果たすんでしょうかと。お互いに傷付け合って経済成長を止めますかと。アジアのこの経済の一体化に逆行するようなナショナリズム、逆行するような軍事拡張、こういったものをお互いに悪循環で高めていった結果、アジア台頭するのか、没落するのかという、こういう問題を真剣に考えないと、自分の国のことに結局はなるわけですから。やはり、EUのようにはなる、EUが成功したかどうかは別として、EUと全く同じ環境にはないんですけれども、やっぱりもうそろそろ、海のそういった資源をめぐる闘いとか、ナショナリズムの発露とか、非常に古めかしい後れた部分改善して、やっぱり日本中国はもうちょっと未来をにらんだ形で、そういった、ともにこの地域をどうやっていくのか。これは、アメリカを排除するということではなくて、アメリカはむしろ太平洋アジアを取り込んだ、何かFTAみたいな構想を打ち出したりとかしたというのは日本メディアにも出てましたけれども、アメリカがむしろそういう広い観点で見ているのであれば、日本中国ももうそろそろやっぱりそういうことをやらなきゃいけないと私は思っております。
  31. 唐亮

    参考人(唐亮君) ありがとうございます。  田村先生は、中国のことをいろいろ心配していただいてありがとうございます。田村先生は、私が会った大勢の日本人の中で優しい心を持っている一人だと思っています。  中国には心配しなければならない問題たくさん抱えているということは、全くおっしゃったとおりと思います。それと同時に、その質問に答える前に、もう一点申し上げますと、心配をしていただくと同時に希望も是非持っていただきたいと思います。  私が思うのは、中国はやっぱりこの二十五、六年間ですか、改革・開放政策に進められてから、ある意味では国開かれて良い方向を目指してかなり努力してきたし、それからオープンマインドという言葉使って言えば、日本含めて先進国に学ぼうという精神を持って今頑張ってきているところですので、是非心配しながら希望を持っていただきたいと思っています。  その中国の対日の感情は極めて悪いと、さっき、御自身の体験から中国の教育あるいはメディア報道の在り方について問題提起したと思います。  実は、私が思うには、実は日本中国の、特に中国から日本の感情を申し上げるときは、日本に対して二つの面で悪い感情を持つと。一つは歴史問題、もう一つは、国益がぶつかり合うときは、互い国のナショナリズムでやっぱり日本はけしからぬという、思いたい、多分そういう中国人が多いと思うんですが、今日、対日感情悪いという事実をどう解釈するか。  私が思うには、一つ目は、やっぱり歴史問題とはいえ、これはまだ生きている人間が記憶がまだ新しいという部分があって、やっぱりこの歴史という重みというものがこの底流にあるではないかと。本来は、私自身は、中国人は割合に歴史問題におおらかではないかとずっと思ってきたんですが、この四、五年間が、あの神社の問題によって、ある意味では眠りそうな子を起こしてしまったという部分があって、今特殊な時期に、案外に悪いと。  三番目に、これからどうするかという問題なんですが、少なくとも中国の対日感情に関して、私は日本の方々、政治家の皆さん方々、今の中国は恐らく国際的な意見を無視して国は進めるということはできないから、だからそういう問題あるときはどんどん中国側意見を申し上げる方がいいとは思っているんですよね。それと同時に、中国自身も、今までこういうふうにやってきましたと、しかし視野が狭いという問題はあるではないかと、その辺りの反省をやっぱり重ねてやっていかなければならないではないかと私は思っています。  幸いに、例えば中国の教科書の問題については、興梠先生は非常に詳しいとは思いますが、実は中国はこの二十五、六年間ぐらい、歴史教育について、ある意味では私は反省してずっと検討してきているんですよね。今年の上海の歴史教科書、社会という教科書なんですが、かなり以前のその歴史教育のロジック、論理とか、これですべていいとは思いますが、改善されたという部分があるんですよね。互いにこういう重ねた努力によって恐らく日本中国国民感情はこれから大丈夫ではないかと、私は常に前向きに考えています。  ありがとうございます。
  32. 田中直紀

    会長田中直紀君) じゃ、若林秀樹君。
  33. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 民主党の若林です。  経済問題について簡単に二点、まずは唐参考人にお伺いしたいというふうに思います。  世界銀行の来年度の予測によれば、経済発展、中国、来年も一〇%近いということで、恐らくしばらく続くんだろうというふうに思いますが、いつかはやはり調整期が来ると私は思います。そのときに、微妙な調整期なのか、それともバブルの崩壊のような大きなマイナス成長も視野に入れたショックが起きるのか、まだそこは予測はできないですけれど、やっぱりいずれそうなるときに、どういうシナリオを持ってどういうように対応していくかというのは非常に重要なことではないかなと思いますし、不良債権も、新しい投資先の民間会社の大きなやっぱり不良債権、あるいはお金持ちの人の資本の逃避問題が出てくるかと思いますが、私はもっと重要で危険なのは、やはり雇用、余剰労働力が一時的に大量に出たときにどうそれを吸収していくかということが私は非常に重要ではないかなと思いますんで、恐らく雇用保険等ではまだ全然整備されてませんので、それは今やっているというお話は伺っておりますけれど、一時的にその余剰労働力を海外に退避させるとかいろんなやり方は多分あると思うんですが、どんなシナリオを今一時的にやっぱり考えているのかということについてお伺いしたいと思います。  二番目は両参考人に伺いたいんですけれど、先ほど農民が六割ということで、農村の格差をなくしていこうというお話がありました。そのときに、私もODA等の仕事を見ながら、先進国の国やNGOがアメリカ型の先進国の一つの発展パターンを描きながらアフリカにそのODAをしながらやっても、やっぱり十年、二十年たってもなかなか難しいわけですよね。ですから、この十三億の中国一つとっても、同じような沿岸部のモデルを描きながら中西部、内部も含めて同じ発展パターンをやることが本当に中国にとっていいのかどうかというのは私はあるんではないかなというふうに思います。  そういう意味では、こっちはシンガポール型、ここはオーストラリア型の農業国を中心に目指すとか、幾つかこれまでとは違うやり方じゃないと、一回それをやったら同じパターンを繰り返し、結果、不幸になるんじゃないかなというふうに思っているんですが、その辺について皆さん方の、どう専門家として中国の経済発展のこれからの在り方を考えるかを御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  34. 田中直紀

    会長田中直紀君) 四時ごろをめどにいたしておりますので、御配慮いただきながら答弁をお願いいたします。  唐参考人
  35. 唐亮

    参考人(唐亮君) ありがとうございます。なるべく簡潔に意見を述べます。  中国の経済、いつまで高成長続くか、希望を申し上げますと、中国は近代化達成されるまではずっと高成長を維持していきたいと。オリンピック、上海万博と言われているんですが、実際それが終わっても中国は必要な大型のプロジェクトが一杯控えているんで、そういう意味では持続な高度成長はそういうニーズがあって、問題は中国当局はその経済を持続させていく能力がずっと持ち続けられるか、その辺が問われているんですよね、経済運営の能力。そこが、バブルの問題が、その要素が最近よく議論されているのは、不動産のかなり値段が高騰してそれがつぶされるという場合は銀行の不良債権もたまってくるし、それは大丈夫かなとよく議論されているんですが、その辺は当然、当局は警戒心を持って慎重な経済運営をしなければならないんですが、しかし経済も政治も結果論ですから、結果がどうなるかは、恐らく今責任を持っている中国政府のある意味ではガバナンスの能力が問われているところではないかと。  その中国地域開発については、中西部の開発については正に若林先生がおっしゃるとおりで、沿海地域のパターンをもう一回中西部に繰り返すというのは不必要だし、できないわけですよね。実際は日本アメリカもすべての地域は経済開発進んでいるわけではないですよね。  今の西部の大開発の例を挙げますと、実はポイント三つなんですね。一つはインフラ整備なんですね。二番目は環境保護なんですね。どうやって水、どうやって森林を保ってどうやって草原の草を保っていくかと。で、三番目になって、要するに可能なところでちょっと産業開発を進めていこうと。その地域の特性に合わせての産業開発なんですね。基本的には、やっぱり今中央部に住んでいる人たちがどうやって沿海部にある意味では出稼ぎ労働者等々の形で移転させると同時に、西部の開発の中でまたそれを吸収して、最後どうしようもなくなったところでやっぱり援助を強化していく、そのような考え方を持って中西部の開発が進められているんではないかと思います。
  36. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 一点目の余剰労働力に対する危機感というのはないですか、中国に、一時的なそういう。
  37. 唐亮

    参考人(唐亮君) その失業問題は終始、中国政府が抱えている深刻な問題で、最近のあらゆる政策の中では必ず就業問題は重要、重点問題、課題として取り上げているんですね。そのためには高い成長率が必要ということも言われるんですね。  そうすると、問題は、今先生が多分おっしゃりたいというのは、経済成長がある意味では減速、あるいは悪くなるときはその問題どうするか。その辺について私が思うのは、今の中国はやっぱり失業労働者自身によるコストの吸収と、それから中国政府の方が、日本ほどの社会保障制度は全く整えていませんが、最低生活保障制度というものが都市部はもう完全に導入しているんですよね。農村部でも、沿海地域から始まって、給付の水準は非常に低いのですが、やっぱりみんな生活していかなければならないんで、そのような形で対応しているではないかと思います。
  38. 若林秀樹

    ○若林秀樹君 ありがとうございました。
  39. 田中直紀

    会長田中直紀君) じゃ、興梠参考人
  40. 興梠一郎

    参考人興梠一郎君) 二つ御質問が出て、一つは唐先生にということですけれども、両方重なりますので両方話がダブるかもしれませんが。  まず、農村の格差と問題ですね。農村、まあ農村内部にもあるし都市の内部にもある。実は、最近は都市の内部の格差が問題になってきている。都市部には、例えば北京なんか三百万人ぐらい出稼ぎ労働者が来ている。彼らの人権の問題というのがあるんですね。彼らの家の問題、彼らの子供たちの教育の問題。実は今、都市の内部の問題というのは非常に注目されているということで、農村対都市というのは当然ありますけれども、実は都市の内部で格差がもっとはっきり見えちゃう、そういう問題があるんですね。だから、都市部でも結構そういった抗議活動が増えているというのはある。それはちょっと視野に入れないといけない。  なぜそういうふうになっているかといいますと、実は中国は地方では例えば特区という、経済特区というのをやってきて、違うシステムでやってきたわけですよね。まあ、そういった広東省とかの経済特区、深センなんて有名ですが、そこはそこで資本主義的にやって、外部と枠をつくって、実験的にやってそれを波及効果でもたらしていくというのはトウ小平的イメージ。  例えば、不動産バブルなんかでも、九〇年で一回起きていますけれども、これはやっぱり局部的だったんですよね。結局、その発展パターンが全国に広がっちゃったんですよね。つまり、だから最近、特区は要らないなんて言い始めたのは、そういった特区のモデルが全部広がったということで、ある意味ではイメージとしてはそうだったわけですからよかったのかもしれないんですが、しかし特区の問題もそのまま広がっているわけです。例えば、低賃金で外資で支えていくというパターンですよね。  中国の今最大の問題というのは、地方で違うシステムをやるという問題も一つのオプションとしてはあると思うんですけれども、一番の大きい問題というのは発展パターンなんですね。一つは外資に頼っているという。貿易なんかも六割ぐらいは実は外資でやっているわけです。だから、中国の成長エンジンって何なのという問題。あとは内需が弱いということですね。投資でがんがん引っ張っているということなんですね。その投資のまた北京なんか六割ぐらいは不動産なんですよ。不動産も三割余っちゃっているんですね、作った結果、投機目的で作ってますから。  こういう問題はどういうことかというと、国民の需要に合った経済成長パターンを取ってないということ。ただ、それで潤っている階層はいますよ、潤っている階層はいますけれども、まあ数千万人と言われている。だから、日本の企業なんかもその数千万人がターゲットなんですね。残りの十数億という人たちは、ある意味では成長パターンから取り残されているということなんですね。  じゃ、これを逆転させようと、どうするかというと、これはやっぱり農村に相当お金をつぎ込まないといけないんですよ。しかし、これ外資系企業が農村にお金をつぎ込むかという問題。外資の人なんというのは、ジェトロのアンケートなんか見ても、やっぱり農村はちょっと視野に入れてないんですね。流通状態が悪いとか、あとは内需、例えば冷蔵庫すらも必要でない農民というのがかなりいると。  そういった問題を考慮しますと、やはり今の中国の問題というのは、外資主導で投資で引っ張るというパターン、ずっとこれは、しばらくはそれでやってきたわけですから、これは急激に転換するのはかなり難しいと。では、これは転換できるかどうかというのは、私は個人的にはかなり難しいんじゃないかなと思っています。もうほとんど中毒状況みたいになっていて、これは気持ちがいいし、うまく回るし、外資の力をかりて発展してきている。じゃ、独自にやろうと思っても、例えば自動車なんかほとんど外資に占拠されちゃってる状態ですよね。  で、ここから民族資本をどうやって育てるかという、非常に経済、コーポレートガバナンスも含めて全面的な見直しをしないといけない。それから、調和社会というのはある意味では抵抗もすごいんですね、抵抗勢力という言葉は日本でもあるけど。これは官僚層もそうやって慣れてきた経済パターン手放したくないし。  ですから、今後は地域別に違うモデルやるかという以前に、中国国家としてどういう経済モデルにしていくかという問題、最初にあるんですが、これはかなり今言ったような外資依存型の経済成長、投資依存型からそっちに転換するには相当な力が必要になる。胡錦濤さんはそれがやれるかどうかという問題なんですけれども、私は、先ほど申しましたように、財政問題、隠れた潜在的な財政問題、それがまずまず第一にありますし、先ほどおっしゃった金融問題とかいろんなのがありますから、これからそれをどうやっていくかということが課題になるんだと思います。  どうもありがとうございました。
  41. 田中直紀

    会長田中直紀君) じゃ最後に、三浦一水君。
  42. 三浦一水

    ○三浦一水君 両先生、ありがとうございました。  唐先生の発言に関しまして一点確認をさせてもらいたいんですが、共産党の求心力が必要だという御認識を示されたんですが、その共産党の求心力というのが、考えようじゃ政治的なイデオロギーということもあろうし、あるいは、そう言うとなんでありますが、専制主義体制の中で非常に圧力的な求心力というのもあるだろうし、あるいは今の社会主義市場経済をうまく運営をされていると、今までのところ、それによる求心力というのもあるかと思うんですが、先生はその求心力、今の共産党の求心力はどの辺に見られていますか。それをちょっと残った時間でお示しいただければと思います。
  43. 唐亮

    参考人(唐亮君) 三浦先生、ありがとうございます。  私が言っている共産党の求心力はこのような論理を立てて述べなければならないんですが、まず近代化建設を進めていくには混乱してはならない。これはトウ小平は、中国は混乱してはならないという言葉に象徴されている、まあ安定、団結というのは必要だと。  二点目は、実は改革・開放路線を進めていく過程で既得権益との衝突という問題が常に起きてくるわけですよね。そのどの方向に進めていくか、アイデアの方は割合に簡単なんですが、推進力というものが非常に重要なんですね。アイデアがあってもその実行力がなければその国がうまくいくかどうかという問題に当然なってくるわけですね。そうすると、今の問題は、例えば民主主義、民主化を考慮に入れてこの求心力を考えるという場合は、例えば今の中国は、将来は目指すべきだと思うんですが、今の中国は、例えば自由競争の選挙、複政党制が中国で導入されるという場合は果たして今のような状況が、安定した状況が保てるかどうか。それから、新しく生まれた政権というのは中国を確実に改革・開放路線を実行していく能力を持つかどうか。その点について恐らく私が意味している求心力の問題なんですよね。  そうすると、将来どうするかというのを今この共産党の求心力を利用して経済発展あるいは社会保障制度の整備等々をしながら、条件、環境が成熟するときはまた場面が変わってくると私は思っています。
  44. 田中直紀

    会長田中直紀君) 予定の時間が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  興梠参考人及び唐参考人におかれましては、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。  両参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日の御礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会