○
参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。また、こういう機会をいただきまして、大変光栄に存じます。
今、
武貞先生の方から詳細な御報告がございました。私の方のはかなり絞ったお話をさせていただこうと思っておりましたので、ちょうど
武貞先生のお話の後にうまくつなげることができればと思っておりますが、要は、
北朝鮮のこの核開発をどう止めることができるのかどうかというようなことにつきまして私が考えておりますことをお話をさせていただきたいと思いますが、四点ほど挙げましたので、それに沿って申し上げたいと思います。
まずは、一応、
北朝鮮は
核実験をやったと言い、
米国政府も
韓国政府もそれを認め、我が国政府も大変その蓋然性が高いということで、
核実験であったと一応は国際的に認知されたんだと思いますが、それで、
核兵器保有国としては認めないと我々は言っておりますけれども、当然、
北朝鮮はそれを
国際社会に認知させようということであろうかと思いますし、特に今、
北朝鮮側は少なくとも当分の間、少なくとも当分の間という意味は、
北朝鮮は最終的には
朝鮮半島を非核化するということについて一貫して反対をしておりませんで、むしろそれを望むんだということを言い続けております。
これはミサイルを発射する前からそうでありますし、発射後も、あるいは今回の
核実験を行った後も常に一貫して言っておりますのは、最終的な目標は非核化だと、自分もいつでも手放すと、
核兵器は手放すと、その代わり、それは
アメリカの敵対視
政策というものがなくなるという条件下においてだと。しばらくはそういう
状況は来ないということですから、そうしますと、
北朝鮮がまず望んでいますのは、当面は
核兵器を持った我々と共生しろという、リブ・ウイズでありますが、ともに生きろということを言っておりまして、それが今、
北朝鮮がこれからも強く当面は言ってくることだろうというふうに思います。
それに対して
国際社会は、とんでもないともちろん言っているわけでありますが、しかし実際のところ、私は、しばらくは
北朝鮮の
核兵器と、共存するとは言いませんが、ともに生きることはやむを得ない選択というふうに我々は追い込まれるのであろうと考えられるというふうに思います。
一番そうした
状況を本来許さないということで非常に強い圧力を掛けるのは、あるいは、どうしてもそれを絶対認めないということで具体的な行動に移るのは
米国であるはずだと。あるいは、
アメリカの
政策、関心というのが注目をされますけれども、今のところは、御案内のように、
アメリカの最大の関心事は
北朝鮮の
核放棄にはないと。あるいは、最大というのが少し語弊があるようでしたら、今当面の関心事、差し迫った関心事というふうに言うならばこれは一〇〇%正確だと思いますけど、
北朝鮮の
核放棄、解体にはございません。今
アメリカの、最大といいますか最も差し迫った関心事、で、恐らく最大の関心事は、
北朝鮮の
核兵器なり核物質が第三者の手に渡ることであります。その移転、トランスファー、拡散、まあいろんな言い方をいたしますが、これをともかく止めなければいけない。
もちろんその場合には、相手として想定しておりますのは国家があります。具体的にはすぐイランとシリアが浮かびます。だからこそ今、私は、イランとシリアに対しては
アメリカはどうも秘密裏に直接の、交渉とは言いませんが、
協議を始めたようでありますが、なぜイランとシリアが選ばれるかというのもよく分かるところでありまして、
北朝鮮の核が、
核兵器が、核物質が流れていくとすれば、一番考えられそうな国家がイランとシリアになるだろうと思います。
ただ、その国家にとどまるものではなくて、むしろ国家ではない存在にこの
北朝鮮の
核兵器なり核物質が移転されることを
アメリカは極めて恐れていると。
すなわちテロリストグループでありまして、それは、具体的に言えば、一番はアルカイダでありましょうし、あるいはヒズボラであるということであります。もちろん、そのテロリストグループの手には、イランを通じて、あるいはシリアを通じて流れることももちろん想定しなければいけないと。そのテロリストの手に渡れば、ほとんど自動的に
アメリカ本土でそれが使われるであろうと、
アメリカ政府のみならず、一般の
アメリカのこの問題に関心のある人たちはほとんど自動的にそういうふうに考えるわけでありますんで、これを是非とも阻止しなきゃいけない。
元々、御案内のように、
アメリカの非常に強い関心は、核の拡散といいますか、拡散の中でもとりわけそういう
核兵器なり核物質がテロリストの手に渡って、そのテロリストが
アメリカ本土でそれを攻撃として使うということに一番の関心がありました。ですから、元々あるものではないかと言われればそうなんですが、
核実験の後それが極めて強くなっているということは、
核実験の後に
北朝鮮の
核兵器なりあるいは核物質についての信頼度が極めて増したということであります。
実験をすることによって相当の信頼性が出てくると。
信頼性が高いものでないとテロリストは買わないということでありまして、これは、国家であれば核の
技術を提供を受ける、自分でそれを基にして開発をすると、いろいろあるでしょうが、テロリストというのはほとんど信頼度の高い完成品に近いものを手にしたいと思う。そうじゃないと使いようがないということでありまして、その点では、
北朝鮮の
核兵器、あるいは核物質もそうでありますが、ともかくテロリスト向け商品価値が飛躍的に今増大していると。更にこれはもっと増大するかもしれない、より信頼度の高いものになっていくかもしれないと。それが今の
アメリカの物すごい強い関心事でありますから、これは何としても止めたいというわけでありまして、まあいわゆる臨検でありますが、船舶検査その他にあれだけ
アメリカが必死になる、そこに相当集中しているということは何を恐れているかということが極めて明確だと思いますが、この移転、トランスファーを極めて恐れているということであります。しかし、そこに集中していると、今すぐ
北朝鮮の核を廃棄させようというような話には実はやはりならないんでありまして、その点についての
アメリカ、今のブッシュ政権の熱意というのは私は決して高くはないと考えておかなきゃいけないと。
そうしますと、正に
北朝鮮の、核付き
北朝鮮との共生というようなものは相当余儀なくされる
状況があるだろうと思います。もちろん、そういうことは許さない、許せない、
北朝鮮、
核保有国北朝鮮は受け入れられないということで
国際社会は今
動き始めましたし、
国連決議の一七一八号というものが成立したことは大変それはすばらしい。全会一致が、二回目でありますが、
中国も
ロシアも賛成してできたんですからすばらしいですし、また、それに基づいてようやく
制裁そのものの措置が今発動されているということでありますので結構なことでありますが、しかし御案内のように、
制裁で、だけでといいましょうか、
制裁だけでまず
核兵器保有国に核を放棄させるということはこれは基本的に不可能だと思うべきだと。過去の例でいうならば、
制裁だけで
核兵器を放棄させた、あるいは
核兵器プログラムといいますか、
核兵器計画を放棄させた例は残念ながら一つもございません。
まず、大体、インド、パキスタンについては、我々は
制裁を掛けましたけれども、今も厳然たる
核保有国であることはこれはだれもが否定できないことでありますし、あるいは、
核兵器あるいは核プログラムを放棄した国としてよく挙がりますのは、まずブラジル、アルゼンチンがあります。あるいは、旧ソ連ということでいいますとウクライナがあります。カザフスタン、ベラルーシといったところがもちろん
核兵器そのものを放棄したということがありますが、この国は基本的にはインセンティブの方です。圧力を掛けたからそうなったんではなくて、インセンティブがあった、見返りがあったから放棄したということになります。
南アフリカはどうだと。一番典型的な
核兵器を持っていてそれを廃棄した国でありますが、しかし、南アフリカの場合も、これはそのアパルトヘイトに対してずっと
国際社会が圧力を掛けてきた、
制裁を掛けてきたことだけで南アフリカが
核兵器を放棄したという話には全くなりません。南アフリカの場合には、一つはやはり冷戦の終えんというのが非常に大きかった。アンゴラにおけるソ連及びキューバの、キューバ兵、ソ連兵が派兵されておりまして、それの
安全保障圧力というのが非常に強く南アフリカにあったわけですが、それが、冷戦崩壊、ソ連が崩壊、冷戦終えん、ソ連が崩壊ということで外国兵撤兵しまして、アンゴラからの
安全保障圧力が掛からなくなったと。これがまず基礎にあり、言わば安全を獲得したということですからインセンティブ
傾向の方になるんですが、さらにそこに、御案内のように、白人政権にはいよいよ終止符が打たれると。一種の政権の交代というもの、これは言わば
体制の交代になります。一種のレジームチェンジみたいなものが行われると。これが重なって南アフリカは放棄したわけですから、
制裁、圧力で放棄した例ではないと。
圧力が利いた例と。核プログラムをあきらめさせた例といいますと、
韓国と台湾があるかもしれません。しかし、
韓国と台湾に圧力を掛けてあきらめさせたのは、これは
アメリカであります。
アメリカは同盟国で、どういう圧力を掛けたかというと、あなたが
核兵器計画をあきらめないんであれば、
アメリカはあなたたちの安全を保証しないと言って脅かしたわけでありますが、これもまた圧力といっても特殊な圧力ですし、例えば
北朝鮮には全く適用できないと。それに相当する同盟国を
北朝鮮は持ちません。
中国も
ロシアも同じような圧力は掛けられないということであります。
あとは、まあ
核兵器プログラム、大量破壊
兵器プログラムなどの
核兵器プログラムで、完全に
核兵器を持っていたわけではありませんが、昨今の一番うまくいった例は、リビアの例であります。リビアも、これもどっちかといえばインセンティブサイドの話でありまして、私は、実はそのリビアンケースとかリビアンモデルというのは依然として有効だと思いますんで、それは後ほどちょっと申し上げますが、いずれにせよ、
制裁で
北朝鮮に
核兵器を放棄させられるであろうと考えることは、私は少なくとも過去の歴史が指し示すところによればあり得ないと言えると思います。
とはいえ、我々はあきらめられないとすると、何とか非核化に導かなきゃいけないと。どういう方法があるんだということでありますが、これは大ざっぱに言えば
三つはあるだろうと。
一つは、ともかく
軍事力を行使してつぶすというやつであります、
戦争シナリオでありますが。これは全く選択肢としてないというわけではありませんから、ありますが、しかしこれを主導する国はもちろん
アメリカということになると思いますが、当面の間、
アメリカにそういう余裕がないのは御案内のとおりであります。イラクにこれだけ足を取られていると、恐らく昨日の投票の中間選挙の結果、共和党は相当苦戦をしたようでありますが、これもイラク戦がブッシュ政権の足を相当引っ張ったという典型的な例になろうかと思います。
もちろん、それ以外にイランの核問題もまだまだ控えておりますし、とてもそういう
状況の中で、
アメリカが
北朝鮮の核問題について十分な関心も持ち得ないような今の
状況下で、
軍事力行使という、選択肢はもちろん常に彼らは持っておりますけれども、それが実際に発動されるということはないということでありましょうから、そのオプションは当面ないと。
次はやはり、だとするとみんなが魅力を感じるのは、
体制変更といいますかレジームチェンジでありまして、何とか崩壊させようと、何とか
金正日の首すげ替えて何とかならないかと、こう考えると。
ですが、これもまた
アメリカが一番関心を持っても
アメリカが自分ではできない、やれる部分は極めて限られていますから、やはり彼らが期待するのは当然、
中国ですよね。しかし、
中国がその
協力をするかと、今の
状況で、そういう兆候が見えるかと。あるいは、
中国のみならず
韓国も恐らく必要でありますが、
韓国についてはもう非常に明確ですが、それとは全く反対の
方向に行っております。先ほど
武貞先生がそこは詳細に御
説明になられました。
中国も基本的には私は同じだと思います。
レジームチェンジというのはこれは夢でしかないような話である。実際やる手段を我々は持ち得るのかというと、ない。そうすると、消去法でいけば、
あとあるのは、交渉をやって取引するしかないわけです。取引して何とか
北朝鮮に放棄させる
方向、あるいは核開発を止める
方向に引っ張っていくということしかないと思いますが、しかしこれは今、少なくとも今のブッシュ政権にはとても関心があるようには見えない。
問題は、ブッシュ政権だけじゃなく、私は、
日本にも
韓国にも
中国にも
ロシアにも積極性という、積極的な関心があるとは私には感じられません。したがって、関心がなければ、あるいは熱意がなければ、これもまたうまくいくというような話にはならないだろうと思います。
しかし、でもやはり私は、やっぱり三番目のオプション、選択肢というのは真剣に考えるべきであろうと。私は、個人的には是非そちらの方に行ってもらいたいと思っております。そういう
外交による解決の道、あるいは平和的な解決の道でありますが、これはやはりその
二つの組み合わせが大事。よくいろんな言い方をします。
対話と圧力と我が国が
北朝鮮政策について言うのもその一つでありましょうし、あるいはニンジンとこん棒という、あめとむちという言い方もありますし、要は、その圧力とあるいはインセンティブ、いろいろ言い方もありますが、少なくともかなり圧力というものが一つ基礎になると。
それが一方に必要だということは事実でありますし、その圧力の下に巧みのある
外交交渉が
展開されるということが必要だ。これが組み合わさったときにかなり効果を持つ。先ほど申し上げましたリビアのケースというのは正にそこに相当する話であろうと思いますが、ただ、圧力もやはりかなり信頼に足る、あるいは相当強圧的な圧力というのが確かに必要であろうと。
だとすると、
北朝鮮の核問題については、これまでの中で初めてここまで強い、まあ信頼に足るということまで言えるかどうか分かりませんが、強い圧力が掛けられるような
状況になってまいりました。これはやはり
国連の決議が成立しているということの意味は大きい。少なくとも、メッセージ性でいえば、こんなに強いメッセージを出したことは
国際社会一度もないわけでありまして、
制裁を、一方で
日本や
アメリカから声が出れば、他方で、いや、それはとんでもないという声がすぐ
中国や
ロシアから出て、あるいは
韓国からも出てしまうというような
状況であったものが、少なくとも今回の
国連決議通じて、まあこの前のミサイルの後の
国連決議もございましたけれども、
国際社会がともかく一緒になってそのメッセージを極めて強く出して、それに基づいて
制裁措置をとると。もちろん温度差がありますし、どれだけ効果があるかは別にしても、前に比べれば相当ましだと、こういうことになります。
しかし、それでもなお、本当にここの部分で信頼性を確立する、できるような圧力ということになると、もう
中国と
韓国の
協力が不可欠になると。すなわち、別の
言葉で言えば、
北朝鮮の生命線を握っていると言われている、言わば経済的に支えているその両国が、その支え具合を変えるか、締めるか、減らすか、止めるかというような、そういう
方向に動いてもらうことが最も効果的であるというのは当然だと思います。しかし、それでなおかつ、今それを少なくとも
アメリカや
日本は強く求めているわけでありますが、私は、残念ながら
中国、
韓国がそれにこたえるということはないと思います。
再び、この
韓国はかなり見えやすいものがありますから、
韓国の公のものを見ていても、
韓国の公の
報道、あるいは政府の声明、
大統領の
発言等々見ていて、
韓国が積極的に経済
協力支援というものを圧力の手段として使って、減らす、止める、そういうような行為に出る可能性というのは残念ながらまず認められない。
中国の方もかなりあいまいなところがあろうかと思いますが、やはり決定的な圧力を加えることは私はないと思います。
私は、七月のミサイル発射の後は、八月の後半にちょっと
中国側に御招待いただいて北京に一週間近く行って、
中国側と
意見交換をいたしました。今度、十月の九日の
核実験の後は、やはりちょっと上海で会議があったものですから、その後ついでに北京に寄って、やはり
中国側と
意見交換をして、やはり十日間ぐらいいたんですけれども、そこで
中国のいろんな方とお話をいたしまして感じたことは、確かに
中国の
政策は変わったと言うべきであろうと。それは、
北朝鮮に対してこれだけきつい対応を取るようになったことはかつてなかったわけですし、
国連の
制裁、言わば
制裁決議に賛成するというのも、それを支持するというようなことも前では考えられなかった、その点においては変わっていると。
しかし、
中国がやろうとしている
制裁というのは極めて有限なものである。無限に何でもやっていこうという話じゃありません。最初からある程度の制限を設けているものであると、これも極めて確かであろうと。
具体的に言えば、我々が期待する三点については、
中国はそこをほとんど手を触れないといいますか、
制裁の道具として、手段としては使わないであろうという印象を持ちました。三点と申しますのは、第一が食糧です。第二が言わばエネルギー。それはまあ石油のみならず、
あと石炭、コークスも出しています。第三が中朝条約であります。六一年の
中国と
北朝鮮の間の相互援助
協力、相互
協力援助条約でしたですかね、という名前の、まあ言わば同盟条約に類するものでありますが、この
三つについては、やはり
中国は大きく変更を加えたくない、減らしたくない、内容を修正したくないということであろうかというふうに思いました。
だとしますと、やはり
中国の圧力ということについても期待は余りできない。そうしますと、本当の圧力、
国際社会全体で形成する圧力の中でも信頼に足る圧力というのはかなり制限されたものでしかないかなというふうに思います。しかし、それでもなお、もう一度繰り返しますが、前に比べればましでありまして、
国際社会がある程度歩調をそろえて
北朝鮮に対して圧力を掛け始めているということは、これは悪いことでは全くないというふうに思っております。
本来であれば、それを基礎にして、今度は
外交交渉で何とか
北朝鮮をうまく変えていくということが重要であろうと思いますが、この場合の
外交交渉といいますか、交渉して何とか取引をということになるならば、恐らく一番大事なのは相互主義の話であります。
これはもう
外交でありますから、ギブ・アンド・テークで成り立つと。相手から何らかのものを引き出すときには、それに対する見返りを出すということになければ交渉の結果は出てこない。結果を出す場合に、相互主義ということになろうかと思います。
北朝鮮にA、B、Cという行動を、移るように、そっちに導いていくんであれば、それに合わせて我々の方には、例えばX、Y、Zというようなものを提供するというようなものがなきゃいけない。それを組み合わせなきゃいけないわけですし、同時に、具体的にはこれロードマップを書いて、北のAという行動に対して我々はXというものを出すと、Bという行動に対してはYという見返りを出すというようなことも組み合わせなきゃいけない。それが、やはり相互主義というものがあって初めて交渉には結果が出るということだと思いますし、それからもう一つ大事なことは、やはり直接
協議が相当重要だと。取引の話であります。
直接
協議して取引したい相手、
北朝鮮の目から見た場合に、これは明確なのはやはり
アメリカと
日本しかないわけですね。すなわち、新たに何か獲得できる、新たに何かもらえるものを持っている国は、あるいは新たに何かもらいたいと要求したい国というのは、
北朝鮮の目から見れば
アメリカと
日本しかないと。ほかの国からは既にもらっているものを更に増やしてもらうかと、こういうような話もありますが、あるいは既にもらっているものを維持してもらうかというのはあります。しかし、全く新しいものをもらう、その全く新しいものが欲しいと
北朝鮮が考える相手は
アメリカと
日本しかないと。すなわち、
金正日独裁
体制に対する保証ということは
アメリカしか基本的には与えられないと
北朝鮮は考えているでしょうし、あるいは大規模な経済
協力、支援というものは、これは
日本からしか当てにできないということがあります。
さらに、
日本と
アメリカが一緒にならなきゃどうしようもないものは、国際金融機関から彼らは融資を受けられない。世界銀行に入れない。アジア開発銀行に加盟できない。アジア開発銀行から融資を受けることもできない。世界銀行から融資を受けることもできない。それはなぜか、
日本と
アメリカが首を縦に振らないからであります。
ですから、やはり
アメリカと
日本との間の
関係を何とかしないと
北朝鮮は新たに得られるものというものはないということでありますので、そうすると、その相手である
日本と
アメリカが直接
協議をするということがないと、これはうまくいかないだろうと。
この
二つが絡まると、うまくかみ合わせるとうまくいくかもしれないというのは、リビアは正にそうだったということであります。リビアも、考えてみればその
制裁、圧力の歴史は長いわけでありますが、八〇年代のレーガン時代から始まっている。圧力だけ掛けていたときはどうだったか。八六年にそのカダフィをねらって爆撃をしましたが、その結果、リビアのテロリズムに火を付けたわけですね。パンナム機が爆破されたのがたしかその二年後だったと思います。これで、九〇年代に入ってブッシュ・シニアの時代から
方向を転換しました、
アメリカは。やっぱり圧力一本やりじゃ駄目だということで直接交渉を始める、インセンティブを考える。クリントン時代を通じ、やって、なかなかうまくいかないものが、二〇〇〇年代に入り、ブッシュ政権に受け継がれてブッシュ政権で実を結んだということになりました。
ただ、その間には、大きかったのはリビアのテロリズムによる、テロについてのちゃんと認証でありました。実際、それを認めさせて補償をさせたと。リビアは二十七億ドルぐらい補償金を払っているはずです。すごい額ですけれども、そういうことをやる中で
国連の
制裁などは解除されるということがありましたが、
アメリカは最後まで自分の
制裁は解除しない形で保っていきますし、その中で直接交渉、秘密交渉、これはやったのは
アメリカとイギリスが組んでやったと。
もちろん、リビアが望んだのもカダフィの保証です。カダフィを替えられたら、レジームチェンジされたら困ると。レジームチェンジじゃなくて
政策を変えろということを
アメリカとイギリスは求めて、これも相互主義でやっていきました。
体制の保証というのが極めて大きかったです。
ブッシュのみならず、クリントンのときもそうでしたが、
アメリカは直接事前に
体制保証と出すというのを嫌がるものですから代理で、ブッシュのときはブレア、英国大使が代わりに手紙を書いて、
アメリカはあなたの
体制を壊さないよという保証を出したというようなこともやりましたけれども。
そういう例を見て、もちろん、リビアの場合には
核兵器そのものまで持っていませんでしたから簡単だったと言われる方がありますけれども、しかしリビアは大量破壊
兵器プログラムを全部放棄しました。核及び化学
兵器、生物
兵器、そうでありますし、そして弾道ミサイルについても中距離以上のものはすべて廃棄、解体ということもやりました。やはり、そのリビアのケースというのは
参考には私はなると思います。ある程度強圧的な圧力というものをみんなでつくって、そこの基礎の上に、今度は交渉で相互主義に基づき取引をするということをやれば、リビアだって変わったぞという部分も考えなきゃいけない。
リビアはまともじゃないかと言われる方もいますけれども、カダフィという指導者は中東の狂犬だと言われていたんですね。
金正日総
書記といい勝負かもしれないという人でありますが、そういう人でも変わったんだぞということも我々は忘れてはいけないだろうと思います。
私はそういう道に進むことを望んでいるんですが、ただ、どうなんだろうかというと、まあ無理だろうなと思っております。そういう
方向に行くような雰囲気を私どこにも見付けられない。先ほど申し上げましたように、まず、圧力も完全な、十全なものにはまずならない。だけど、十全なものになったって、それだけでは恐らく
北朝鮮の核は放棄させられない。じゃ、
外交交渉、巧みな
外交交渉というのが
展開されるかというと、今そこに
アメリカや
日本が積極的に乗り出すという感じはない、あるいは
日本が積極的に乗り出す感じも私はないんだろうと思っております。そうするとないと、有効な打つ手はないという可能性があると。
その中で一つだけ私が注目しておりますのは、本来ですと、大事なのは、もう当面大事なことは、
核兵器開発をまず一回中止させる、止める、凍結することだと思います。もう放棄させるというのは、もちろんそれは目標は大事なんですが、それはどれだけ時間が掛かるかも分からないし、
核兵器を
北朝鮮がいったん持った後は極めて難しくて、恐らく不可能じゃないかというような議論までたくさんある、こういう雰囲気を考えてみますと、まずは、まずは手を付けて何とか達成することが必要なのは、今、今日この一瞬にも進んでいる
北朝鮮の核開発を止めると。
その中には、もちろん
核実験を繰り返させないということも入りますが、五メガワットの原子炉の稼働を止める。彼らがその使用済みの核燃料からそれを再処理に掛けて
兵器級のプルトニウムをつくることを止める。ともかくプルトニウムを増やさせないということはもう非常に重要だと思います。プルトニウムが増えれば
実験はやりやすくなるということになるのは当然でありますし、さらに、その点では怖いのは、彼らはより大きな原子炉の建設にまた着手している可能性があるといいますか、本人たちはやっていると言っている、五十メガワットの原子炉の建設、やっています。
問題は、外の建物はまだいいんでありますが、中の原子炉であります。本来だとそこに、建物の中で原子炉を造っていくということですけれども、ひょっとすると、
北朝鮮はたくさんある地下のいろんな施設、
軍事施設の中に、部品となるものは見えないところで作っているかもしれない。それをある
段階からすべて原子炉の施設のところに集めて、
あとアセンブルするというか、それを組立てだけに走る。もしそれが本当に可能であるならば、その可能性が全くないとは言えないんですけれども、かなり短期間のうちに五十メガワットの原子炉ができるかもしれません。そうすると、プルトニウムを、ラフに言って年間十倍ぐらい多めにつくれるという話になりますので、そうなると、それをやっぱり止めるということをしないと、私は、やっぱり
アメリカがそういう時期になると本気で
軍事力の行使を考えるんじゃないかと思います。さすがにそのくらいまで来た場合の外に
北朝鮮の核が流れ出ていくところは、可能性って極めて大きい。
アメリカがそれを座視し得ないということになると、
軍事力行使ということが私は現実のものになるかもしれない。それは相当な覚悟を持って我々受け入れなきゃいけない話になりますので、そうならないことを望むというところでありますが。
それで、ただ私は、全然違う
方向にちょっと行くかもしれないなと思っておりますのは、この六か国
協議が今月中にも
再開されますが、その後に、今見ていると、南北の
首脳会談が私はあるんだろうと私は思っております。今の
韓国を見ていると、
北朝鮮から呼び掛けて
首脳会談やろうと言ったら、途端にすぐ成立しそうな雰囲気になっていますので。
南北の
首脳会談をやると何が出てくるかというと、
朝鮮半島の平和の問題が出てくる。朝鮮
戦争に終止符を打とうと、平和協定を結ぼうというような話になる。そうすると、これを持って六か国
協議に戻ってきますと、実は昨年九月の共同声明の中には
朝鮮半島の恒久的な平和をつくろうというのはちゃんとうたわれていますし、直接の当事者が別個に
協議しようという話も実は去年の共同声明の中に入っています。直接の当事者という意味は、すなわち朝鮮
戦争を戦った南北と米中であります。この別個の
協議が核問題が動かないときに進むということもあるかもしれない。そうすると、ちょっと違う
状況に話が進んでいく可能性もあろうかということを考えておる次第でございます。
済みません、少しお時間を超過いたしました。ありがとうございました。