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2006-11-08 第165回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年十一月八日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  十月四日     辞任         補欠選任      大仁田 厚君     愛知 治郎君      伊達 忠一君     野上浩太郎君      谷川 秀善君     小林  温君      中川 雅治君     加納 時男君      西田 吉宏君     水落 敏栄君      西銘順志郎君     三浦 一水君  十月五日     辞任         補欠選任      山東 昭子君     矢野 哲朗君  十月六日     辞任         補欠選任      矢野 哲朗君     山東 昭子君  十月二十日     辞任         補欠選任      佐藤 雄平君     木俣 佳丈君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         田中 直紀君     理 事                 加納 時男君                 岸  信夫君                 木俣 佳丈君                 谷合 正明君     委 員                 愛知 治郎君                 末松 信介君                 田村耕太郎君                 二之湯 智君                 野上浩太郎君                 犬塚 直史君                 大石 正光君                 工藤堅太郎君                 富岡由紀夫君                 直嶋 正行君                 峰崎 直樹君                 若林 秀樹君                 加藤 修一君                 浜田 昌良君                 大門実紀史君    事務局側        第一特別調査室        長        三田 廣行君    参考人        防衛庁防衛研究        所図書館長兼主        任研究官     武貞 秀士君        静岡県立大学国        際関係学部教授  伊豆見 元君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○国際問題に関する調査  (「多極化時代における新たな日本外交」のう  ち、日本アジア外交東アジアにおける不安  定要因除去北朝鮮問題を中心に))につい  て)     ─────────────
  2. 田中直紀

    会長田中直紀君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日まで、西銘順志郎君、大仁田厚君、伊達忠一君、谷川秀善君、中川雅治君、西田吉宏君及び佐藤雄平君が委員辞任され、その補欠として三浦一水君、愛知治郎君、野上浩太郎君、小林温君、加納時男君、水落敏栄君及び木俣佳丈君が選任されました。     ─────────────
  3. 田中直紀

    会長田中直紀君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が三名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田中直紀

    会長田中直紀君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事三浦一水君、加納時男君及び木俣佳丈君を指名いたします。     ─────────────
  5. 田中直紀

    会長田中直紀君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際問題に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田中直紀

    会長田中直紀君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田中直紀

    会長田中直紀君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 田中直紀

    会長田中直紀君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査会調査テーマである「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本アジア外交に関し、東アジアにおける不安定要因除去、とりわけ北朝鮮問題を中心参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、防衛庁防衛研究所図書館長主任研究官武貞秀士参考人及び静岡県立大学国関係学部教授伊豆見元参考人に御出席いただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本調査会では、日本アジア外交について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、東アジアにおける不安定要因除去、とりわけ北朝鮮問題を中心にお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず武貞参考人、そして伊豆見参考人の順でお一人三十分程度で御意見を述べていただいた後、午後四時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、武貞参考人から御意見をお述べいただきます。武貞参考人
  9. 武貞秀士

    参考人武貞秀士君) ただいま御紹介にあずかりました防衛庁防衛研究所武貞でございます。  それでは、三十分お時間をいただきまして、東アジアにおける不安定要因の除去、北朝鮮問題を中心に私見を申し上げます。  私の本日申し上げたいポイントは五つございます。  まず第一に、北朝鮮の問題、これは核実験後どのような動きが朝鮮半島中心にあるかということと、そして今後どのような展開があり得るかということ、そして日本としてどういうことを念頭に置いて北朝鮮問題を考えなければならないかという点でございます。  五つの点、まず第一に、北朝鮮が十月九日、核実験をいたしましたけれども、国連の制裁決議が決まりました。国際社会では制裁についての具体的策定作業が進んでおります。二つ目は、北朝鮮追加核実験をするという報道がございますけれども、北朝鮮米国との対話の道を実は探ってきておりまして、実験の直後から六か国協議再開中国に対して打診をして、今北朝鮮が考えていることは、核保有国としての待遇を求めつつ、これから開催される六か国協議に向けて準備をしているという状況でございます。  三つ目は、米国はそのような六か国協議再開を歓迎しながらも、制裁は継続し、そして各国との協調を進める外交を展開しております。特に、日米と米韓関係を強化しながら中国の役割にも期待をしております。  我々は、これからの展開を考えますときに重要なことは、北朝鮮には核戦略というものがあると。核兵器というものはあくまでもこれは兵器でございまして、外交手段という側面もありますけれども、あくまでも兵器としての核兵器ということを念頭に置いて、北朝鮮には核戦略がある、そして北朝鮮主導の統一を実現するために軍事力を強化し、そのための軍事戦略を持って、そしてその軍事戦略中心核兵器を据えてきたということがポイントでございます。  そして、最後に、そのような北朝鮮の問題に対処するには、金正日には核戦略があるということを念頭に置いて、防衛分野では、統一と絡んだ朝鮮半島有事という事態も将来あり得るということを視点に持つことが重要でございます。外交的には、もちろん国際社会における協力を進める。特に、対米協力日米韓韓国ですが、との協調、そして中国韓国との個別の二国間の協調も強化していくということが重要でございます。  では、具体的に申し上げますと、まず北朝鮮核実験以降、北朝鮮では何が起きているかということでございますが、もうテレビでも新聞でも報道されておりますように、ピョンヤンでは核実験成功の十万人集会が行われております。そして、民族史的な大慶事であるという労働党書記のあいさつもありました。国際社会では決して大慶事というふうにはとらえていないんですけれども、そこが北朝鮮の特殊な体制ということにもつながるわけでございますが、大慶事であると。今、お祭り騒ぎが今ピョンヤンでは展開されているということがポイントでございます。  町の中でも、韓国のメディアが最近ピョンヤンに入っておりますけれども、スローガンが、新しいスローガンが目立っておりまして、核保有国としての誇りを持って帝国主義者たちのあらゆる挑戦を堂々と拒否しよう、あるいは核保有国としての自尊心は我々の命である、こういったスローガンが目立っております。  また、北朝鮮は、南と北、韓国北朝鮮の間の信頼関係を強調する傾向が特にこの一か月余りの間に目立ってきております。例えば、拡散防止構想と言われておりますPSIの訓練に韓国が参加することは恥ずべき反民族的犯罪であると、南と北の約束に反するではないかと、こういう報道を北はしております。これは、明らかに韓国アメリカの関係を悪くする離間策の一つであると見ることができます。  また、六か国協議に出席することを発表いたしましたが、これは米国北朝鮮の直接協議、及びその中でアメリカに対して制裁の解除を求める場として考えているようであります。これは、北朝鮮報道の中にもあるとおりでございます。  では、十月九日の核実験の後、韓国ではどうであったか。韓国は、固い米韓同盟に基づく米韓連合防衛体制の維持が朝鮮半島の平和と繁栄に非常に重要である、これは昨日の盧武鉉大統領の式典での演説でもございました。特に、北朝鮮核保有という事態を前に韓国が考えていることは、米韓関係が揺らいでいるようではこれはまずいのではないかという見方が韓国の中でも広がっているということを踏まえた発言であります。  また、実験の直後から韓国では、太陽政策北朝鮮という旅人に対して太陽を照らして外套を脱がしていく、改革・開放に向かわせるという政策が正しかったかどうかという議論が起きました。これに対して韓国統一相統一大臣は、辞意を表明した席で、決して南北融和政策が誤っていたとは思わない、成果には確信を持っていると発言をいたしまして、最近、韓国で目立つことは、太陽政策をもう一度考え直そうかという十月九日直後の流れから、むしろ太陽政策をそのまま続けようという傾向が目立ってきております。例えば、十一月一日、先週ですけれども、北朝鮮への米と肥料支援の再開は純粋な人道主義問題であり、韓国政府が自主的に判断する、統一省長官は述べました。また、盧武鉉大統領は、十一月二日、北朝鮮核実験があって安全保障を脅かす要因が増加したけれども、この問題は誇張すべきではないという説明をしております。これは日本でも大きく報道されたところであります。  そして、現在、韓国政府が考えていることは、つい二日前の韓国の国会における予算案施政方針演説ですけれども、韓国大統領が、国連安保理決議精神と趣旨に合うという方向で金剛山の観光、北朝鮮の中の金剛山という名所がありますけれども、それへの韓国人の観光と開城工業団地事業、この二つ北朝鮮に対する経済支援事業は継続をするということを正式に大統領が発表をしております。  アメリカはどうであったかと申しますと、北朝鮮の六か国協議への復帰を歓迎しつつも、国連安保理制裁決議を履行することを表明しております。これは、ブッシュ大統領は、我々にはまだやらなければならないことがたくさんあると、六か国協議北朝鮮が復帰したとしても国民のより良い未来と引換えに検証可能な方法で核兵器計画核兵器を放棄することを目指すと、すなわち北の核施設の解体という今まで持ってきたアメリカ政策を再確認する発言を十月三十一日にブッシュ大統領はしております。アメリカ政策には全く変化がないと見ておかなければなりません。  また、極東を歴訪いたしました米国国務次官は、北朝鮮が最近、自らが核保有国になったということで核保有国としての待遇を求める雰囲気が出てきておりますけれども、それに対して北朝鮮核保有国として容認しないことを再確認したという発言をしております。また、同じ国務次官は、北朝鮮核放棄に関連して、六か国のメンバーである北朝鮮を除いた五か国の結束を図るということを強調をしております。  また、中国に対しては、北朝鮮核実験直後から、米国国務省ライス国務長官を始め担当者たちは、今度は中国は真剣に北朝鮮に対して核を放棄するように説得をすることを考え始めたという発言が出てきております。例えば、ライス長官は、十月十五日、中国は今回真剣に、これは制裁ということですが、制裁に取り組むということを約束をしましたと、そういう発言をしております。また、それに向けて韓国北朝鮮との活動全般に関連してどのような決定を下すか、これは制裁決議に基づいた韓国の今後の動きですけれども、韓国が本当に協力して制裁決議に協力をしてくれるかどうかを見守りたいという発言もしております。  また、米国統合参謀本部議長は、十月の記者会見で言っておりますように、決して米国は軍事的なオプションを捨てたわけではないということを示唆する発言をしながら、これからの様々な外交政策が展開される場で外交に力を持たせた北朝鮮に対する説得をする、そういうニュアンスが出てきております。  次に、中国でございますけれども、中国に関連いたしましては、米国に配慮をする、配慮をしながら北朝鮮に対する制裁に対しては中国は協力をするという政策が若干見えてきておりますけれども、同時に北朝鮮に対する配慮も最近は目立ってきております。この二つのやや矛盾する要素が中国政策の特徴でございますけれども、これは中国外交のジレンマと見るか、あるいは巧妙な外交二つの言葉をうまくワシントン向けピョンヤン向けに使い分けながら展開していると見るか、この点に関しましては専門家の見解が分かれているところであります。私は、中国は非常に巧妙な政策を展開をしていて、ピョンヤンワシントンに向けては北朝鮮に対する中国のスタンスをうまく使い分けて説明をしているように見えます。  例えば、先日、北京で呉邦国全国人民代表大会常務委員長は、アメリカには小さなことで余り大きな損をしないようにと言っていると。つまり、核実験一回でもって制裁をする、あるいは北朝鮮に対する事実上封じ込めにつながるような様々な制裁の行為をするというのはちょっとバランスを欠いているんではないかというニュアンスのことを言ったと述べております。また、米国が、マカオのバンコ・デルタ・アジアの銀行ですけれども、二千四百万ドルの金を凍結しても問題解決にならない、こういう発言もしておりまして、この言葉だけ見ますと、アメリカ制裁はちょっとやり過ぎではないかと中国が言ったかのような印象を受けるわけであります。  ロシア、これはロシアは、制裁決議の後、外務次官が訪朝いたしまして、六か国協議開催に向けて外交活動を展開いたしました。また、プーチン大統領の言葉の中で、十月二十五日ですけれども、状況を緊迫化させる以外、事実上何もできなくなるような行き詰まりの状態に北朝鮮を追い込んではならない、交渉参加者のすべてがそのための努力を全力でしているわけではない、これは明らかにアメリカ日本に対して牽制をする言葉であったと考えることができます。  このような関係諸国の動きがこの一か月ほどの情勢の展開のポイントでございます。  それでは、北朝鮮はなぜ核兵器を開発するのか。まず最初に、北朝鮮核実験は本当に核実験であったのか、この点について申し上げます。  実験の直後、ある新聞の座談会で私は、通常火薬の爆発と核実験の爆発とこの二つ地震波については専門家から見れば一目瞭然であるという説明をいたしまして、何か所かからちょっと言い過ぎではないかという質問を受けました。  しかしながら、アメリカ、マサチューセッツ工科大学でありますとかロスアラモス研究所等では、国防上の目的から、TNT火薬通常火薬の爆発の地震波核実験の爆発の地震波、この二つを比較しながら、できるだけ早い時間で地震波を見て、発破による地震波核実験による地震波かを判別する技術が発達をしております。幾つかの国の中では、特にロシア韓国は、いち早く核実験であるというふうに特定をしたわけです。ロシアは特に、その直後に、核実験は一〇〇%成功したと発表して我々を驚かしたんですけれども、具体的なその根拠、地震波をどう分析したかということは明らかになっておりませんし、軍事上の機密ということもありまして、これは永久に明らかになることはないでしょうけれども、日本以外の国々は比較的早い段階で通常火薬の爆発ではなくて核実験による地震波であったということを特定していたこと、そしてまた、そういったような科学的な努力というものは日本にとってこれから防衛上の観点からも必要なんではないかなと、私はこの十月九日の核実験報道を見ながら感じた次第でございます。  北朝鮮核保有の意思があるのかどうか。もうこれは、意思は間違いなくあると言ってよろしいかと思います。  二〇〇三年、米国国務次官補に対して北朝鮮外務次官自分たちは核を持っているとささやいたことに始まり、昨年二月十日は、核抑止力保有宣言北朝鮮自身が公式に報道をしております。また、十月三日には、北朝鮮の外務省が自衛的戦争抑止力を強化する新たな措置として核実験を行うと述べ、そして十月九日には、北朝鮮地下核実験を成功裏に実施したと。北朝鮮報道を見る限り、核実験はし、そして核兵器は保有し、そして核兵器自分たちにとって必要であると一連の報道をしてきていることから、核保有をするという意思があることはもう間違いない。  あとは、本当にその技術があるかどうかということがポイントでございますけれども、こればかりは、私は一〇〇%北朝鮮核兵器があるということを保証できるわけではございません。金正日総書記も、もしかしたら本当に持っているかどうか知らないのかもしれないという、専門家の間でもそういう見方もあります。側近が成功していない核実験を成功したと金正日総書記に言って、金正日総書記は成功したと思い込んでいるということも可能でありますし、そうしますと、核兵器の置いてある倉庫を開けてみたらトウガラシみそが出てくるということだって、これはあり得ないことではないということで、これはもうこれ以上は追及のしようがないわけですけれども、様々な外国に対するミサイルの売却でありますとか、それぞれの節目節目で様々な資材、装備をいろいろな国から輸入してきたそれらのリスト等を見ますと、相当核兵器製造の段階は進んでいると見た方がいいだろうと私は思います。  そして、それでは北朝鮮核実験、何のねらいがあったのか、十月九日に核実験を指示をした金正日の頭の中にはどんなねらいがあったのか。  三つ指摘いたしますと、まず第一に、核戦略を持っているから核兵器を造っているわけでありまして、核戦略を続けるためには、維持するためには、発展させるためには、核実験は不可欠であると。米国に対する抑止力というのは、すなわち統一を妨害するアメリカの介入を阻止するという意味にほかならないわけでありまして、この抑止力を保持するために核兵器は必要であり、そして抑止力はどういうときに必要かといえば、統一のための戦争を起こすときにアメリカが必ず軍事介入をする、それを阻止するためには、アメリカが介入をあきらめるような、アメリカ中心部に届くような核兵器を開発してしまえばアメリカは身動き取れなくなるだろう、これが核戦略ですけれども、その核戦略を完成させるためには、やはり途中で核実験が必要であると。プルトニウム型の核兵器核実験が必要でありますので、核兵器はどうしてもそういう点から必要であった。  二つ目は、この段階で核実験をして、これからも様々な外交日程があるわけですけれども、核保有国としての待遇を求めるというねらいがありました。  三つ目に、北朝鮮に対して譲歩しなければ、あるいは北朝鮮を追い込んでいけば北朝鮮は暴発するよということをアピールしながら、外交の場で様々な譲歩を求めるというねらいがあります。これは外交的な譲歩を周辺の諸国から求めることが第一の目的でないというところが重要であります。なぜならば、十月九日に核実験をしても、アメリカ金融制裁を緩和する見込みがほとんどなかった。ブッシュ大統領も、核実験をしたとしても制裁はやめないということを正式に十月の上旬に述べております。それにもかかわらず、そのタイミング核実験をしたということは、制裁が強化される、あるいは韓国中国が困った北朝鮮だなと考えても、それは核兵器を開発してしまう過程でのリスクであるとかコストであるとどうもとらえている節があるわけですね。そう考えれば、なぜあのタイミング核実験をしたのかということは、彼らに核戦略があるから背に腹は代えられないということで実験をしたという説明が可能になるわけであります。  あと十分ほどございますので、重複を避けながらお話し申し上げますと、すなわち、核戦略があるから核兵器を持っているという点をもう少し詳しく申し上げますと、北の戦略には三つの柱があります。  まず、韓国社会の変化を促す、促進をする。これは五ページの上から五行目でございますけれども、韓国との対話を進める。あるいは、南北首脳会談を開催する。また、今は二回目の南北首脳会談を準備をする。あるいは、韓国で様々なイベントが行われるときには使節団を送って、韓国社会に対して北朝鮮は戦争をする相手ではないよということをムードをつくって韓国社会の変化を促進する。  二つ目アメリカの介入を阻止する。これは、在韓米軍を撤退させる。また、米韓連合司令部有事作戦統制権韓国側に返してもらった後、米韓連合司令部を解体してもらって、そうなると、必然的に在韓米軍は削減する方向に向かいます。そうしますと、米国は、朝鮮半島有事においてはやはり対応するには時間の差が起きるわけですね。タイムラグが生じる。  そのときに、それでもアメリカが介入しようとすると、アメリカ中立宣言をしない限り、ワシントンニューヨークは火の海だと、大陸間弾道弾を持っていると。弾頭の小型化終わっていないでしょうと言われたときには、二〇〇六年十月九日の核実験を覚えていますかと。粛々と核兵器を製造してきた今、北朝鮮大陸間弾道弾小型核弾頭を持っていると宣言をすれば、アメリカはやはり迷うでしょう。朝鮮半島の安定の回復と引換えにニューヨークワシントンが火の海になる。これは割の合わない話であって、この割の合わないときに、アメリカはそれでも介入しようということを、議会とアメリカの国民と国務省と国防総省が皆一致して介入を決定下せるだろうか。この問題がある。  そこをついて、この戦略の三本柱を立てて核兵器を開発しているのが金正日核戦略でありまして、私の友人の専門家たちは、これは武貞理論金正日理論じゃないと言うんですけれども、北朝鮮公式報道中心にいろいろ見てまいりますと、金正日総書記は、この核戦略というものを心に抱いて、秘めて、心に秘めて核兵器の製造に向かっていると見なければならないわけであります。  ですから、この核実験タイミングを取りましても、中国韓国日本との首脳会談をやっている正にそのときであったわけですけれども、北朝鮮にしてみれば、中国韓国が気分を害するということが分かっている、そのタイミングでなぜやったのかと。これはもう先ほど申し上げましたように、背に腹は代えられないということと、北朝鮮報道にも出てきておりますけれども、自らが造った核兵器、自らの力でだれにも頼らずに造った核兵器なんだから、その爆発のタイミングは自分が考えるという、そういうニュアンスもそこにあるわけですね。  私は、ある新聞の座談会で、実験直後に、このタイミングは何でこういうタイミングなのでしょうと言われたときに、これはチュチェ思想の薫りがすると言って、出席者が唖然として、それはさすがに活字にはならなかったんですけれども、こういった我々が予想したら、とてもこういうタイミング実験するはずがないというときに正に実験をしたというときに、彼らはやはりチュチェ思想というものを持っているんだという点から説明すると、比較的私は分かりやすいというふうに思います。  北朝鮮は本当にそのような戦略を持ってやっているとすれば、いろいろな周囲の条件、韓国だって核を持つ北朝鮮と仲よくしていこうという人たちの数は減っていくじゃないか、そういう見方もあります。  しかし、興味深い世論調査があります。十月九日、核実験をした二日後に韓国のKBSラジオが世論調査をしましたら、北朝鮮核実験の責任はどこの国の責任だと思いますかという質問に対して、何と第一位がアメリカの責任であるというのが四三・四%、北朝鮮であると答えたのが三七・二%。日本でこの同じ質問をするとすれば九十数%が北朝鮮の責任であると答えたことはもう間違いない。韓国では、この十年近くの間にいろいろな北朝鮮の問題が起きてくる過程でどこにどういう問題があったかと考えるとき、韓国人は余りアメリカ軍事力を片手に北朝鮮を追い込み過ぎた結果、やむにやまれず体制の温存を考える金正日総書記は非常に強い軍事力に傾斜した政策を取るようになったんだ、こういう見方が韓国では一般的になってきた、そのことを反映する数字でもあるだろうと思います。  米国韓国の間の同盟関係の調整も、余り北朝鮮軍事力で刺激し過ぎるアメリカと同じような同盟関係を維持して、朝鮮半島の安定と韓国の国防をアメリカに全面的に頼っていていいんだろうか、こういうムードが韓国でも出てきまして、このコンセプトに基づいて米韓関係を調整することを開始したのが今の韓国の盧武鉉政権であります。それに基づいて、韓国北朝鮮の陸軍の脅威に対抗するというよりは、ほかのものにしか使い勝手がないと思えるようなAWACSとかイージス艦の購入という趣旨を盛り込んだ国防計画も策定をしております。  金正日核戦略、それはそれでいいんだけれども、果たして北朝鮮崩壊するんじゃないかと、そんなもたないんじゃないか、こういう見方があります。北朝鮮、明日にでも崩壊するという議論、日本でもありますけれども、明日にでも崩壊するという方々は二十年前からあした崩壊すると言ってきたような気がするわけですね。例えば、金正日総書記と軍は対立している、その兆候全くないですね。アメリカの将軍も、北朝鮮の部隊の異常な行動は全くないと先月の記者会見でも発表しておりますし、またハト派とタカ派が対立しているということも北朝鮮の内部では非常に考えにくい。ハト派とタカ派が対立しているとすれば、まあタカ派が金正日総書記でしょうけれども、ハト派は数日内に粛清されると思いますから、対立という状態が続くということはあり得ない。  金融制裁、少しずつ効果が出てきておりますけれども、今まで韓国が送った金剛山観光による様々な代金、あるいは米支援、肥料支援、これらの金額は相当な金額に上っているわけでありまして、今まで金剛山観光に関しては、例えば韓国は四億五千万ドルが支払済みであります。二千四百万ドルのバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連の口座のお金が凍結されて北朝鮮は非常に困っているという、その数字と比較していただければ、南北関係における韓国が負担してきた様々なものを併せて考えますと、北朝鮮が経済的に冷え上がっている状態であるとはどうも見えない。  中国も同じでありまして、あと二分ほどおかりいたしましてまとめをしたいと思いますけれども、中国も同じでありまして、中国はもう核を持ったという北朝鮮を面倒見切れないと、こういう見方もあるんですけれども、昨年十月、胡錦濤主席がピョンヤンを訪問したときがハイライトでありましたけれども、そのとき十四億ドルを投資して北朝鮮の露天掘りの鉄鉱山の開発の五十年開発計画にも参与しておりますし、胡錦濤主席訪朝のときには二十億ドルの経済借款を約束したというふうにも言われております。  中朝関係を見ますと、特に経済関係を詳しく見るということと、中朝国境の動向を見ますと、核兵器実験一回、ミサイルの七発の発射一回で中朝関係が大きく変わるということは考えにくいという結論に至るわけであります。北朝鮮の地下資源は中国の企業にとっては不可欠の存在となりつつある現在、中国の経済の発展のためにも、北朝鮮の大量破壊兵器の早期解決のためにアメリカに全面的に協力するようには私は見えないわけであります。  今後、日本を含めた国々はどうすべきか、三点だけ申し上げて結論としたいと思いますけれども、最初申し上げましたように、北朝鮮には核戦略があるということを念頭に置いて統一のチャンスが生まれたと北朝鮮が考えるとき、それはもちろん在韓米軍がいなくなるときであり、韓国社会がまた大きく変化し続けるということが条件でありますけれども、また、大陸間弾道弾、一万五千キロ飛ぶ大陸間弾道弾が完成をして弾頭の小型化まで成功するという条件でありますと、七、八年以内にはこれは起こり得ないことでありますが、それらの三つの条件が備わるときには、朝鮮半島では一回だけ統一のための戦争を北朝鮮が起こす時期が私はあると思います。  そのためにも、我々はそのことを念頭に置いてこれから日本の防衛というものを考えるべきでありますし、外交的には、特に中国の説得に期待しながら、日米韓の三か国の協調が非常に重要である。と同時に、核兵器製造が今後も続くわけでありますから、安全保障貿易管理の様々な法的側面も含めて強化していくということが一層重要になりつつあるというのが私の結論でございます。  御清聴ありがとうございました。
  10. 田中直紀

    会長田中直紀君) 武貞参考人、大変ありがとうございました。  次に、伊豆見参考人から御意見をお述べいただきたいと思います。伊豆見参考人
  11. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。また、こういう機会をいただきまして、大変光栄に存じます。  今、武貞先生の方から詳細な御報告がございました。私の方のはかなり絞ったお話をさせていただこうと思っておりましたので、ちょうど武貞先生のお話の後にうまくつなげることができればと思っておりますが、要は、北朝鮮のこの核開発をどう止めることができるのかどうかというようなことにつきまして私が考えておりますことをお話をさせていただきたいと思いますが、四点ほど挙げましたので、それに沿って申し上げたいと思います。  まずは、一応、北朝鮮核実験をやったと言い、米国政府も韓国政府もそれを認め、我が国政府も大変その蓋然性が高いということで、核実験であったと一応は国際的に認知されたんだと思いますが、それで、核兵器保有国としては認めないと我々は言っておりますけれども、当然、北朝鮮はそれを国際社会に認知させようということであろうかと思いますし、特に今、北朝鮮側は少なくとも当分の間、少なくとも当分の間という意味は、北朝鮮は最終的には朝鮮半島を非核化するということについて一貫して反対をしておりませんで、むしろそれを望むんだということを言い続けております。  これはミサイルを発射する前からそうでありますし、発射後も、あるいは今回の核実験を行った後も常に一貫して言っておりますのは、最終的な目標は非核化だと、自分もいつでも手放すと、核兵器は手放すと、その代わり、それはアメリカの敵対視政策というものがなくなるという条件下においてだと。しばらくはそういう状況は来ないということですから、そうしますと、北朝鮮がまず望んでいますのは、当面は核兵器を持った我々と共生しろという、リブ・ウイズでありますが、ともに生きろということを言っておりまして、それが今、北朝鮮がこれからも強く当面は言ってくることだろうというふうに思います。  それに対して国際社会は、とんでもないともちろん言っているわけでありますが、しかし実際のところ、私は、しばらくは北朝鮮核兵器と、共存するとは言いませんが、ともに生きることはやむを得ない選択というふうに我々は追い込まれるのであろうと考えられるというふうに思います。  一番そうした状況を本来許さないということで非常に強い圧力を掛けるのは、あるいは、どうしてもそれを絶対認めないということで具体的な行動に移るのは米国であるはずだと。あるいは、アメリカ政策、関心というのが注目をされますけれども、今のところは、御案内のように、アメリカの最大の関心事は北朝鮮核放棄にはないと。あるいは、最大というのが少し語弊があるようでしたら、今当面の関心事、差し迫った関心事というふうに言うならばこれは一〇〇%正確だと思いますけど、北朝鮮核放棄、解体にはございません。今アメリカの、最大といいますか最も差し迫った関心事、で、恐らく最大の関心事は、北朝鮮核兵器なり核物質が第三者の手に渡ることであります。その移転、トランスファー、拡散、まあいろんな言い方をいたしますが、これをともかく止めなければいけない。  もちろんその場合には、相手として想定しておりますのは国家があります。具体的にはすぐイランとシリアが浮かびます。だからこそ今、私は、イランとシリアに対してはアメリカはどうも秘密裏に直接の、交渉とは言いませんが、協議を始めたようでありますが、なぜイランとシリアが選ばれるかというのもよく分かるところでありまして、北朝鮮の核が、核兵器が、核物質が流れていくとすれば、一番考えられそうな国家がイランとシリアになるだろうと思います。  ただ、その国家にとどまるものではなくて、むしろ国家ではない存在にこの北朝鮮核兵器なり核物質が移転されることをアメリカは極めて恐れていると。  すなわちテロリストグループでありまして、それは、具体的に言えば、一番はアルカイダでありましょうし、あるいはヒズボラであるということであります。もちろん、そのテロリストグループの手には、イランを通じて、あるいはシリアを通じて流れることももちろん想定しなければいけないと。そのテロリストの手に渡れば、ほとんど自動的にアメリカ本土でそれが使われるであろうと、アメリカ政府のみならず、一般のアメリカのこの問題に関心のある人たちはほとんど自動的にそういうふうに考えるわけでありますんで、これを是非とも阻止しなきゃいけない。  元々、御案内のように、アメリカの非常に強い関心は、核の拡散といいますか、拡散の中でもとりわけそういう核兵器なり核物質がテロリストの手に渡って、そのテロリストがアメリカ本土でそれを攻撃として使うということに一番の関心がありました。ですから、元々あるものではないかと言われればそうなんですが、核実験の後それが極めて強くなっているということは、核実験の後に北朝鮮核兵器なりあるいは核物質についての信頼度が極めて増したということであります。実験をすることによって相当の信頼性が出てくると。  信頼性が高いものでないとテロリストは買わないということでありまして、これは、国家であれば核の技術を提供を受ける、自分でそれを基にして開発をすると、いろいろあるでしょうが、テロリストというのはほとんど信頼度の高い完成品に近いものを手にしたいと思う。そうじゃないと使いようがないということでありまして、その点では、北朝鮮核兵器、あるいは核物質もそうでありますが、ともかくテロリスト向け商品価値が飛躍的に今増大していると。更にこれはもっと増大するかもしれない、より信頼度の高いものになっていくかもしれないと。それが今のアメリカの物すごい強い関心事でありますから、これは何としても止めたいというわけでありまして、まあいわゆる臨検でありますが、船舶検査その他にあれだけアメリカが必死になる、そこに相当集中しているということは何を恐れているかということが極めて明確だと思いますが、この移転、トランスファーを極めて恐れているということであります。しかし、そこに集中していると、今すぐ北朝鮮の核を廃棄させようというような話には実はやはりならないんでありまして、その点についてのアメリカ、今のブッシュ政権の熱意というのは私は決して高くはないと考えておかなきゃいけないと。  そうしますと、正に北朝鮮の、核付き北朝鮮との共生というようなものは相当余儀なくされる状況があるだろうと思います。もちろん、そういうことは許さない、許せない、北朝鮮核保有国北朝鮮は受け入れられないということで国際社会は今動き始めましたし、国連決議の一七一八号というものが成立したことは大変それはすばらしい。全会一致が、二回目でありますが、中国ロシアも賛成してできたんですからすばらしいですし、また、それに基づいてようやく制裁そのものの措置が今発動されているということでありますので結構なことでありますが、しかし御案内のように、制裁で、だけでといいましょうか、制裁だけでまず核兵器保有国に核を放棄させるということはこれは基本的に不可能だと思うべきだと。過去の例でいうならば、制裁だけで核兵器を放棄させた、あるいは核兵器プログラムといいますか、核兵器計画を放棄させた例は残念ながら一つもございません。  まず、大体、インド、パキスタンについては、我々は制裁を掛けましたけれども、今も厳然たる核保有国であることはこれはだれもが否定できないことでありますし、あるいは、核兵器あるいは核プログラムを放棄した国としてよく挙がりますのは、まずブラジル、アルゼンチンがあります。あるいは、旧ソ連ということでいいますとウクライナがあります。カザフスタン、ベラルーシといったところがもちろん核兵器そのものを放棄したということがありますが、この国は基本的にはインセンティブの方です。圧力を掛けたからそうなったんではなくて、インセンティブがあった、見返りがあったから放棄したということになります。  南アフリカはどうだと。一番典型的な核兵器を持っていてそれを廃棄した国でありますが、しかし、南アフリカの場合も、これはそのアパルトヘイトに対してずっと国際社会が圧力を掛けてきた、制裁を掛けてきたことだけで南アフリカが核兵器を放棄したという話には全くなりません。南アフリカの場合には、一つはやはり冷戦の終えんというのが非常に大きかった。アンゴラにおけるソ連及びキューバの、キューバ兵、ソ連兵が派兵されておりまして、それの安全保障圧力というのが非常に強く南アフリカにあったわけですが、それが、冷戦崩壊、ソ連が崩壊、冷戦終えん、ソ連が崩壊ということで外国兵撤兵しまして、アンゴラからの安全保障圧力が掛からなくなったと。これがまず基礎にあり、言わば安全を獲得したということですからインセンティブ傾向の方になるんですが、さらにそこに、御案内のように、白人政権にはいよいよ終止符が打たれると。一種の政権の交代というもの、これは言わば体制の交代になります。一種のレジームチェンジみたいなものが行われると。これが重なって南アフリカは放棄したわけですから、制裁、圧力で放棄した例ではないと。  圧力が利いた例と。核プログラムをあきらめさせた例といいますと、韓国と台湾があるかもしれません。しかし、韓国と台湾に圧力を掛けてあきらめさせたのは、これはアメリカであります。アメリカは同盟国で、どういう圧力を掛けたかというと、あなたが核兵器計画をあきらめないんであれば、アメリカはあなたたちの安全を保証しないと言って脅かしたわけでありますが、これもまた圧力といっても特殊な圧力ですし、例えば北朝鮮には全く適用できないと。それに相当する同盟国を北朝鮮は持ちません。中国ロシアも同じような圧力は掛けられないということであります。  あとは、まあ核兵器プログラム、大量破壊兵器プログラムなどの核兵器プログラムで、完全に核兵器を持っていたわけではありませんが、昨今の一番うまくいった例は、リビアの例であります。リビアも、これもどっちかといえばインセンティブサイドの話でありまして、私は、実はそのリビアンケースとかリビアンモデルというのは依然として有効だと思いますんで、それは後ほどちょっと申し上げますが、いずれにせよ、制裁北朝鮮核兵器を放棄させられるであろうと考えることは、私は少なくとも過去の歴史が指し示すところによればあり得ないと言えると思います。  とはいえ、我々はあきらめられないとすると、何とか非核化に導かなきゃいけないと。どういう方法があるんだということでありますが、これは大ざっぱに言えば三つはあるだろうと。  一つは、ともかく軍事力を行使してつぶすというやつであります、戦争シナリオでありますが。これは全く選択肢としてないというわけではありませんから、ありますが、しかしこれを主導する国はもちろんアメリカということになると思いますが、当面の間、アメリカにそういう余裕がないのは御案内のとおりであります。イラクにこれだけ足を取られていると、恐らく昨日の投票の中間選挙の結果、共和党は相当苦戦をしたようでありますが、これもイラク戦がブッシュ政権の足を相当引っ張ったという典型的な例になろうかと思います。  もちろん、それ以外にイランの核問題もまだまだ控えておりますし、とてもそういう状況の中で、アメリカ北朝鮮の核問題について十分な関心も持ち得ないような今の状況下で、軍事力行使という、選択肢はもちろん常に彼らは持っておりますけれども、それが実際に発動されるということはないということでありましょうから、そのオプションは当面ないと。  次はやはり、だとするとみんなが魅力を感じるのは、体制変更といいますかレジームチェンジでありまして、何とか崩壊させようと、何とか金正日の首すげ替えて何とかならないかと、こう考えると。  ですが、これもまたアメリカが一番関心を持ってもアメリカが自分ではできない、やれる部分は極めて限られていますから、やはり彼らが期待するのは当然、中国ですよね。しかし、中国がその協力をするかと、今の状況で、そういう兆候が見えるかと。あるいは、中国のみならず韓国も恐らく必要でありますが、韓国についてはもう非常に明確ですが、それとは全く反対の方向に行っております。先ほど武貞先生がそこは詳細に御説明になられました。中国も基本的には私は同じだと思います。  レジームチェンジというのはこれは夢でしかないような話である。実際やる手段を我々は持ち得るのかというと、ない。そうすると、消去法でいけば、あとあるのは、交渉をやって取引するしかないわけです。取引して何とか北朝鮮に放棄させる方向、あるいは核開発を止める方向に引っ張っていくということしかないと思いますが、しかしこれは今、少なくとも今のブッシュ政権にはとても関心があるようには見えない。  問題は、ブッシュ政権だけじゃなく、私は、日本にも韓国にも中国にもロシアにも積極性という、積極的な関心があるとは私には感じられません。したがって、関心がなければ、あるいは熱意がなければ、これもまたうまくいくというような話にはならないだろうと思います。  しかし、でもやはり私は、やっぱり三番目のオプション、選択肢というのは真剣に考えるべきであろうと。私は、個人的には是非そちらの方に行ってもらいたいと思っております。そういう外交による解決の道、あるいは平和的な解決の道でありますが、これはやはりその二つの組み合わせが大事。よくいろんな言い方をします。対話と圧力と我が国が北朝鮮政策について言うのもその一つでありましょうし、あるいはニンジンとこん棒という、あめとむちという言い方もありますし、要は、その圧力とあるいはインセンティブ、いろいろ言い方もありますが、少なくともかなり圧力というものが一つ基礎になると。  それが一方に必要だということは事実でありますし、その圧力の下に巧みのある外交交渉が展開されるということが必要だ。これが組み合わさったときにかなり効果を持つ。先ほど申し上げましたリビアのケースというのは正にそこに相当する話であろうと思いますが、ただ、圧力もやはりかなり信頼に足る、あるいは相当強圧的な圧力というのが確かに必要であろうと。  だとすると、北朝鮮の核問題については、これまでの中で初めてここまで強い、まあ信頼に足るということまで言えるかどうか分かりませんが、強い圧力が掛けられるような状況になってまいりました。これはやはり国連の決議が成立しているということの意味は大きい。少なくとも、メッセージ性でいえば、こんなに強いメッセージを出したことは国際社会一度もないわけでありまして、制裁を、一方で日本アメリカから声が出れば、他方で、いや、それはとんでもないという声がすぐ中国ロシアから出て、あるいは韓国からも出てしまうというような状況であったものが、少なくとも今回の国連決議通じて、まあこの前のミサイルの後の国連決議もございましたけれども、国際社会がともかく一緒になってそのメッセージを極めて強く出して、それに基づいて制裁措置をとると。もちろん温度差がありますし、どれだけ効果があるかは別にしても、前に比べれば相当ましだと、こういうことになります。  しかし、それでもなお、本当にここの部分で信頼性を確立する、できるような圧力ということになると、もう中国韓国協力が不可欠になると。すなわち、別の言葉で言えば、北朝鮮の生命線を握っていると言われている、言わば経済的に支えているその両国が、その支え具合を変えるか、締めるか、減らすか、止めるかというような、そういう方向に動いてもらうことが最も効果的であるというのは当然だと思います。しかし、それでなおかつ、今それを少なくともアメリカ日本は強く求めているわけでありますが、私は、残念ながら中国韓国がそれにこたえるということはないと思います。  再び、この韓国はかなり見えやすいものがありますから、韓国の公のものを見ていても、韓国の公の報道、あるいは政府の声明、大統領発言等々見ていて、韓国が積極的に経済協力支援というものを圧力の手段として使って、減らす、止める、そういうような行為に出る可能性というのは残念ながらまず認められない。  中国の方もかなりあいまいなところがあろうかと思いますが、やはり決定的な圧力を加えることは私はないと思います。  私は、七月のミサイル発射の後は、八月の後半にちょっと中国側に御招待いただいて北京に一週間近く行って、中国側と意見交換をいたしました。今度、十月の九日の核実験の後は、やはりちょっと上海で会議があったものですから、その後ついでに北京に寄って、やはり中国側と意見交換をして、やはり十日間ぐらいいたんですけれども、そこで中国のいろんな方とお話をいたしまして感じたことは、確かに中国政策は変わったと言うべきであろうと。それは、北朝鮮に対してこれだけきつい対応を取るようになったことはかつてなかったわけですし、国連制裁、言わば制裁決議に賛成するというのも、それを支持するというようなことも前では考えられなかった、その点においては変わっていると。  しかし、中国がやろうとしている制裁というのは極めて有限なものである。無限に何でもやっていこうという話じゃありません。最初からある程度の制限を設けているものであると、これも極めて確かであろうと。  具体的に言えば、我々が期待する三点については、中国はそこをほとんど手を触れないといいますか、制裁の道具として、手段としては使わないであろうという印象を持ちました。三点と申しますのは、第一が食糧です。第二が言わばエネルギー。それはまあ石油のみならず、あと石炭、コークスも出しています。第三が中朝条約であります。六一年の中国北朝鮮の間の相互援助協力、相互協力援助条約でしたですかね、という名前の、まあ言わば同盟条約に類するものでありますが、この三つについては、やはり中国は大きく変更を加えたくない、減らしたくない、内容を修正したくないということであろうかというふうに思いました。  だとしますと、やはり中国の圧力ということについても期待は余りできない。そうしますと、本当の圧力、国際社会全体で形成する圧力の中でも信頼に足る圧力というのはかなり制限されたものでしかないかなというふうに思います。しかし、それでもなお、もう一度繰り返しますが、前に比べればましでありまして、国際社会がある程度歩調をそろえて北朝鮮に対して圧力を掛け始めているということは、これは悪いことでは全くないというふうに思っております。  本来であれば、それを基礎にして、今度は外交交渉で何とか北朝鮮をうまく変えていくということが重要であろうと思いますが、この場合の外交交渉といいますか、交渉して何とか取引をということになるならば、恐らく一番大事なのは相互主義の話であります。  これはもう外交でありますから、ギブ・アンド・テークで成り立つと。相手から何らかのものを引き出すときには、それに対する見返りを出すということになければ交渉の結果は出てこない。結果を出す場合に、相互主義ということになろうかと思います。北朝鮮にA、B、Cという行動を、移るように、そっちに導いていくんであれば、それに合わせて我々の方には、例えばX、Y、Zというようなものを提供するというようなものがなきゃいけない。それを組み合わせなきゃいけないわけですし、同時に、具体的にはこれロードマップを書いて、北のAという行動に対して我々はXというものを出すと、Bという行動に対してはYという見返りを出すというようなことも組み合わせなきゃいけない。それが、やはり相互主義というものがあって初めて交渉には結果が出るということだと思いますし、それからもう一つ大事なことは、やはり直接協議が相当重要だと。取引の話であります。  直接協議して取引したい相手、北朝鮮の目から見た場合に、これは明確なのはやはりアメリカ日本しかないわけですね。すなわち、新たに何か獲得できる、新たに何かもらえるものを持っている国は、あるいは新たに何かもらいたいと要求したい国というのは、北朝鮮の目から見ればアメリカ日本しかないと。ほかの国からは既にもらっているものを更に増やしてもらうかと、こういうような話もありますが、あるいは既にもらっているものを維持してもらうかというのはあります。しかし、全く新しいものをもらう、その全く新しいものが欲しいと北朝鮮が考える相手はアメリカ日本しかないと。すなわち、金正日独裁体制に対する保証ということはアメリカしか基本的には与えられないと北朝鮮は考えているでしょうし、あるいは大規模な経済協力、支援というものは、これは日本からしか当てにできないということがあります。  さらに、日本アメリカが一緒にならなきゃどうしようもないものは、国際金融機関から彼らは融資を受けられない。世界銀行に入れない。アジア開発銀行に加盟できない。アジア開発銀行から融資を受けることもできない。世界銀行から融資を受けることもできない。それはなぜか、日本アメリカが首を縦に振らないからであります。  ですから、やはりアメリカ日本との間の関係を何とかしないと北朝鮮は新たに得られるものというものはないということでありますので、そうすると、その相手である日本アメリカが直接協議をするということがないと、これはうまくいかないだろうと。  この二つが絡まると、うまくかみ合わせるとうまくいくかもしれないというのは、リビアは正にそうだったということであります。リビアも、考えてみればその制裁、圧力の歴史は長いわけでありますが、八〇年代のレーガン時代から始まっている。圧力だけ掛けていたときはどうだったか。八六年にそのカダフィをねらって爆撃をしましたが、その結果、リビアのテロリズムに火を付けたわけですね。パンナム機が爆破されたのがたしかその二年後だったと思います。これで、九〇年代に入ってブッシュ・シニアの時代から方向を転換しました、アメリカは。やっぱり圧力一本やりじゃ駄目だということで直接交渉を始める、インセンティブを考える。クリントン時代を通じ、やって、なかなかうまくいかないものが、二〇〇〇年代に入り、ブッシュ政権に受け継がれてブッシュ政権で実を結んだということになりました。  ただ、その間には、大きかったのはリビアのテロリズムによる、テロについてのちゃんと認証でありました。実際、それを認めさせて補償をさせたと。リビアは二十七億ドルぐらい補償金を払っているはずです。すごい額ですけれども、そういうことをやる中で国連制裁などは解除されるということがありましたが、アメリカは最後まで自分の制裁は解除しない形で保っていきますし、その中で直接交渉、秘密交渉、これはやったのはアメリカとイギリスが組んでやったと。  もちろん、リビアが望んだのもカダフィの保証です。カダフィを替えられたら、レジームチェンジされたら困ると。レジームチェンジじゃなくて政策を変えろということをアメリカとイギリスは求めて、これも相互主義でやっていきました。体制の保証というのが極めて大きかったです。  ブッシュのみならず、クリントンのときもそうでしたが、アメリカは直接事前に体制保証と出すというのを嫌がるものですから代理で、ブッシュのときはブレア、英国大使が代わりに手紙を書いて、アメリカはあなたの体制を壊さないよという保証を出したというようなこともやりましたけれども。  そういう例を見て、もちろん、リビアの場合には核兵器そのものまで持っていませんでしたから簡単だったと言われる方がありますけれども、しかしリビアは大量破壊兵器プログラムを全部放棄しました。核及び化学兵器、生物兵器、そうでありますし、そして弾道ミサイルについても中距離以上のものはすべて廃棄、解体ということもやりました。やはり、そのリビアのケースというのは参考には私はなると思います。ある程度強圧的な圧力というものをみんなでつくって、そこの基礎の上に、今度は交渉で相互主義に基づき取引をするということをやれば、リビアだって変わったぞという部分も考えなきゃいけない。  リビアはまともじゃないかと言われる方もいますけれども、カダフィという指導者は中東の狂犬だと言われていたんですね。金正日書記といい勝負かもしれないという人でありますが、そういう人でも変わったんだぞということも我々は忘れてはいけないだろうと思います。  私はそういう道に進むことを望んでいるんですが、ただ、どうなんだろうかというと、まあ無理だろうなと思っております。そういう方向に行くような雰囲気を私どこにも見付けられない。先ほど申し上げましたように、まず、圧力も完全な、十全なものにはまずならない。だけど、十全なものになったって、それだけでは恐らく北朝鮮の核は放棄させられない。じゃ、外交交渉、巧みな外交交渉というのが展開されるかというと、今そこにアメリカ日本が積極的に乗り出すという感じはない、あるいは日本が積極的に乗り出す感じも私はないんだろうと思っております。そうするとないと、有効な打つ手はないという可能性があると。  その中で一つだけ私が注目しておりますのは、本来ですと、大事なのは、もう当面大事なことは、核兵器開発をまず一回中止させる、止める、凍結することだと思います。もう放棄させるというのは、もちろんそれは目標は大事なんですが、それはどれだけ時間が掛かるかも分からないし、核兵器北朝鮮がいったん持った後は極めて難しくて、恐らく不可能じゃないかというような議論までたくさんある、こういう雰囲気を考えてみますと、まずは、まずは手を付けて何とか達成することが必要なのは、今、今日この一瞬にも進んでいる北朝鮮の核開発を止めると。  その中には、もちろん核実験を繰り返させないということも入りますが、五メガワットの原子炉の稼働を止める。彼らがその使用済みの核燃料からそれを再処理に掛けて兵器級のプルトニウムをつくることを止める。ともかくプルトニウムを増やさせないということはもう非常に重要だと思います。プルトニウムが増えれば実験はやりやすくなるということになるのは当然でありますし、さらに、その点では怖いのは、彼らはより大きな原子炉の建設にまた着手している可能性があるといいますか、本人たちはやっていると言っている、五十メガワットの原子炉の建設、やっています。  問題は、外の建物はまだいいんでありますが、中の原子炉であります。本来だとそこに、建物の中で原子炉を造っていくということですけれども、ひょっとすると、北朝鮮はたくさんある地下のいろんな施設、軍事施設の中に、部品となるものは見えないところで作っているかもしれない。それをある段階からすべて原子炉の施設のところに集めて、あとアセンブルするというか、それを組立てだけに走る。もしそれが本当に可能であるならば、その可能性が全くないとは言えないんですけれども、かなり短期間のうちに五十メガワットの原子炉ができるかもしれません。そうすると、プルトニウムを、ラフに言って年間十倍ぐらい多めにつくれるという話になりますので、そうなると、それをやっぱり止めるということをしないと、私は、やっぱりアメリカがそういう時期になると本気で軍事力の行使を考えるんじゃないかと思います。さすがにそのくらいまで来た場合の外に北朝鮮の核が流れ出ていくところは、可能性って極めて大きい。アメリカがそれを座視し得ないということになると、軍事力行使ということが私は現実のものになるかもしれない。それは相当な覚悟を持って我々受け入れなきゃいけない話になりますので、そうならないことを望むというところでありますが。  それで、ただ私は、全然違う方向にちょっと行くかもしれないなと思っておりますのは、この六か国協議が今月中にも再開されますが、その後に、今見ていると、南北の首脳会談が私はあるんだろうと私は思っております。今の韓国を見ていると、北朝鮮から呼び掛けて首脳会談やろうと言ったら、途端にすぐ成立しそうな雰囲気になっていますので。  南北の首脳会談をやると何が出てくるかというと、朝鮮半島の平和の問題が出てくる。朝鮮戦争に終止符を打とうと、平和協定を結ぼうというような話になる。そうすると、これを持って六か国協議に戻ってきますと、実は昨年九月の共同声明の中には朝鮮半島の恒久的な平和をつくろうというのはちゃんとうたわれていますし、直接の当事者が別個に協議しようという話も実は去年の共同声明の中に入っています。直接の当事者という意味は、すなわち朝鮮戦争を戦った南北と米中であります。この別個の協議が核問題が動かないときに進むということもあるかもしれない。そうすると、ちょっと違う状況に話が進んでいく可能性もあろうかということを考えておる次第でございます。  済みません、少しお時間を超過いたしました。ありがとうございました。
  12. 田中直紀

    会長田中直紀君) 伊豆見参考人、誠にありがとうございました。  では、これより質疑を行います。  まず、委員各位のお許しをいただきまして、私から参考人に若干の質疑を行わせていただきたいと思います。私からは、総括的な質問を一問ずつ参考人にお願いをいたしたいと思います。  武貞参考人に伺います。  北東アジアにおける安全保障について伺いますが、私は、北東アジアにおいては東西冷戦は終えんしておらない、依然として冷戦構造が一部残っておるんではないか、北朝鮮軍事戦略もその延長線にあるんではないかと。まあ時代後れと、こういうふうに一般的には言われますが、そういう延長線にある核実験ではないかというふうに思っていますが、一方、中国ロシア軍事的な後ろ盾をほぼ失っておるという現実から、北朝鮮の核開発は世界から早晩孤立していくであろうというふうに私は考えております。  武貞参考人が最後に結論として三点お話がございました。日米韓協調あるいは安全保障貿易管理の一層の重要性ということに触れられておりますが、このような状況の中で日本の北東アジアにおける外交防衛の長期的なシナリオをどう考えていったらいいかということにつきまして、まずお伺いをいたしたいと思います。  それから、伊豆見参考人にお伺いをいたしたいと思います。  ただいまのお話の中で、核兵器保有国北朝鮮との共生を余儀なくされる状況が出てくるんではないかということが一つと、あるいは外交の解決の道としては、やはり信頼に足る圧力の行使と中韓両国の協力がかぎだということのお話がございました。  北朝鮮に対する韓国の対応についてお伺いをいたしたいと思います。  七月のミサイル発射の際の韓国政府の対応と比較しますと、今回の核実験後の対応については、自国の安全保障に対する直接の脅威ということで深刻に受け止めたというふうな報道もあります。しかし一方で、御指摘がありましたように、南北交流事業の継続など、包容政策の継続の方針を宣言を政府はしておると、こういう状況であります。六か国協議での韓国の独自性が出るのか、今、その後、南北首脳会談があるんではないかという御指摘もありましたが、韓国の六か国協議に対する姿勢と、それに伴う米韓関係変化が生じてくるのかと、この点を伊豆見参考人にお伺いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  13. 武貞秀士

    参考人武貞秀士君) 御質問ありがとうございます。  委員長おっしゃいましたように、依然として北東アジアにおいては冷戦の構造が継続をしているわけであります。これは、旧ソ連とアメリカが対立していたような意味での冷戦が残っているというわけではなくて、北朝鮮という大量破壊兵器を開発し続け、そしてその目的が、実は一九四八年の朝鮮民主主義人民共和国建国以来抱き続けていた統一というねらいを持って、六十年間温めてきた目標を持ちながら、正に冷戦時代の発想そのもので核兵器を開発し続けているというところに冷戦構造が残っているということが言えると思います。  また、その手段たるや核兵器でありますので、核兵器を開発しながらその統一の目標を達成しようということ自体、これは核兵器技術というのは一九四五年の技術ですから、まあ随分古い手段を今も温め続けているものだなと考えざるを得ないわけであります。  そして、そのときにそれにどう対処すべきかというときに、今おっしゃいましたように、やがて軍事的な後ろ盾を失っている北朝鮮は孤立して袋小路に行くだろうということを、私は、いろいろな見方がありますけれども、軍事的な後ろ盾を失った北朝鮮が、これはもう熟したカキがおっこちるようなシナリオをたどるかといえば、必ずしもそうではない。この数年間の世界における大量破壊兵器拡散のプロセスを見ますと、ますます北朝鮮のようなタイプの国家は、あるときは漁夫の利を得たり、あるときはやみ市場から核開発の物資、材料を調達したりしながらしたたかに生き延びることができるような時代になっているんだなと思います。  例えば、中央アジアのブラックマーケットで大量破壊兵器に関する様々なものを調達する。あるいはイランとか、かつてはパキスタンのカーン博士と北朝鮮のコネクションが有名でありますけれども、そういったような国際的な目が届かないような国あるいは届かないようなグループと交流をしながら大量破壊兵器開発にいそしむ北朝鮮のやり方が相当うまくいってしまうという構造があるわけであります。  例えば、カーン博士は中国を経由して北朝鮮に飛行機で行っていたわけですけれども、中国が全く知らなかったというのは不思議な話でありまして、ミサイル発射を七月の五日に北朝鮮がしたときも、実は中国は事前に北朝鮮から通告を受けていて、中国技術者は北朝鮮にミサイル発射の発射具合を視察するために行く準備をしていたという、未確認ですけれども、情報もあるぐらいでありまして、これは米国の報告書の中にもありますけれども、中国北朝鮮のミサイル開発にアメリカの目の届かないところで協力してきたという未確認の情報もあります。  中国ロシアは、一般に言われているように、全く軍事支援を北朝鮮に対して遮断したかといえば必ずしもそうではない。ましてや、最近の米国の議会における証言等でも明らかでありますように、中国はイランと北朝鮮にミサイル開発の協力をしている。あるいは、ロシアとイランの間の大量破壊兵器の開発の協力北朝鮮が加わる形で、ロシア技術がイランに回った後、イランの技術北朝鮮に行くということも十分考えられるわけですね。そういたしますと、様々な形での三角の関係中国・パキスタン・北朝鮮関係ロシア・イラン・北朝鮮関係、イラン・パキスタン・北朝鮮関係、いろいろな三角形を重ねていきますと、それぞれの国々が意識しているかしていないかにかかわらず、様々な形で技術が拡散していく構造ができ上がっているわけであります。ここに比較的楽観しながら北朝鮮は大量破壊兵器開発をやってきた節があります。という意味で、拡散防止のための世界的なネットワークづくりが非常に急がれる理由もそこにあるわけであります。  こういったような状況に対処するために、日本防衛外交の長期的な在り方どうあるべきか、今の話を踏まえて申し上げますと、中国ロシアには毅然とした態度で、大量破壊兵器拡散に対しては今までとは違った、更なる一歩踏み込んだ厳格な姿勢で対応してもらう必要がある。特に、イラン・ロシア関係とかですね、も含めてですけれども、今まで明らかになっていることプラスアルファですね、毅然とした態度で、大量破壊兵器製造している、あるいは製造していると見られている国々に対するロシア中国の態度に対しては更に積極的な協力を求める必要があるということが一つ目。  二つ目は、このような、やみ市場で放射能を調達して、ダーティーボムという、汚い爆弾というのがありますけれども、時限装置でスーツケースに放射能を入れて、それを爆発させたら放射能が飛び散って被害を受けるというような仕掛け、これはテロリストたちが容易に考え、またローテクノロジーでありますので、比較的低い技術でも可能なものであります。こういったものも拡散をする時代でありますので、こういったテロ対策のネットワークづくりも日本は積極的に参加していくと同時に、やはり朝鮮半島に関して言いますと、これは私は三年前、五年前よりもはるかに紛争の可能性が出てきている。  また、船舶検査の過程でも、例えばアメリカの海軍の乗組員が、実際に船舶検査をどういうふうに行うかはまだ未定でありまして、決定していないことですけれども、アメリカの海軍の乗組員が北朝鮮の貨物船に乗り込む、こういう事態ですから、北朝鮮の貨物船はどうぞアメリカの海軍の乗組員見てくださいという可能性は非常に少ない。そうすると、乗組員を連行して、北朝鮮の貨物船が南浦港なんかに入ってしまう可能性がある。そうすると、アメリカの海軍の乗組員の命を守るために、アメリカ軍事的な行使をする可能性は私は高いと思います。これはもう地域的な軍事紛争のシナリオになるわけですね。  そう考えますと、これからの制裁の在り方によっては、この地域で、北東アジア戦争も起きる可能性があるということを踏まえて、以前よりは緊張が増してきているということで、日本の国内の法的な整備、あるいはそういったときに日本はどう対応するかということに関する政治を担っている皆さんの間の様々な意見の調整、一致というものが必要であると同時に、紛争という可能性が以前よりも強まっているということで、通常戦力、日本の通常戦力というものが現状でいいのかどうか。情報収集衛星四基だけで十分なのだろうか。二十四時間、世界のあらゆる情報を集めることができる情報収集衛星の数は十六基という数を専門家から聞いたことがありますけれども、核実験しそうだというときに、外国からその情報をもらうのではなくて、日本が独自に情報収集する能力を身に付けたりするという意味で、情報収集衛星の数を増やすといった通常戦力の整備ということにも我々は議論を向けなければならないだろうと思います。  ありがとうございます。
  14. 田中直紀

    会長田中直紀君) どうもありがとうございました。  伊豆見参考人
  15. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  六か国協議に対する韓国の姿勢はいかがなものかという御質問をちょうだいいたしました。  これは九月ぐらいから、それまで盧武鉉政権が一生懸命取り組もうとしていたことがございますんで、恐らくそれがそのまま踏襲されて今後も続くんであろうというふうに考えられるものがございます。言わば六か国協議の中で、圧力の部分ではなくてインセンティブの部分といいますか、こちらの見返りの方の部分をしっかり固めて、その見返りをある程度ロードマップの形にして北朝鮮に示して北朝鮮の態度変更を促そうということであります。これは、この秋から盧武鉉政権はアメリカに対して、ブッシュ政権に対して非常に強く働き掛けておりまして、ただ、その後に核実験ということになって、一瞬引っ込んだような形になっていますけれども、やはりこれで六か国協議再開ということになるならば、韓国の基本的な姿勢はまたこの秋の段階に戻るというふうに考えられると思います。  したがいまして、圧力の部分に関しては、それはできるだけ穏便にということでありまして、むしろインセンティブの方で北朝鮮の姿勢を変えたい。インセンティブを与えるためには見返りというものをしっかりと具体的なものにして、それは、例えば経済的なもの、エネルギー援助等、あるいは、もう一つが先ほど申し上げました平和の話であります。ですから、朝鮮戦争に終止符を打って平和体制をつくると、まあ平和協定をつくるですね。平和協定をつくっていって、最終的に恒久的な平和の体制にまで持っていくということでありますが、その問題も北朝鮮に対するインセンティブになるということでありますので、ここを韓国は重点を置いて六か国協議に臨むことになるんであろうというふうに私は見ております。  ただ、そうなりますと、やはり今のブッシュ政権の基本的な姿勢とはやっぱり相当ギャップがあるわけでありまして、もちろんブッシュ政権からしますと、まず主体にあるのは圧力の部分をより効果的にならしめるための措置をとりたい。圧力の部分、制裁の部分をより効果的にするためには、当然のことながら韓国の積極的なそこに参与が必要であるということになります。  もしそれが可能ならば、その上に韓国が望むようなインセンティブ、見返りの面についても、全くそれを考えないということではなくて、ある程度考えていこうという姿勢はブッシュ政権は示すものと思われますが、しかし、まず第一に優先順位が高いものは圧力の強化、制裁のより有効な制裁措置の実行ということでありますので、その部分で韓国と折り合えないのであれば、韓国が望むインセンティブの部分についてアメリカが積極的に応じるという可能性もないというふうに私は考えております。  したがいまして、なかなか米韓の、アメリカ韓国関係がより協調的に、より協力的に、より共同の利益、共通の利益は我々持っているわけですけれども、共通の政策であったり共通の戦略であったりというものをつくることは非常にもう難しくなっておりますし、今後も難しいままであり続けると。ほとんどそこら辺うまく調整はできないんではないかというふうに思っておりますので。  そうしますと、問題は、日米韓というものがやはりやりにくいと。日米韓協調協力というものが、アメリカはまだ依然として、もちろんあきらめているわけではありませんけれども、そもそも米韓が難しくなっている。さらに、日韓でそれをつくることについて韓国側がかなり消極的である。その二つの要素を前提にしますと、日米韓という三国協調というのは、これはまあ相当難しいという話に当然なりますので、もちろんこれが重要だということはみんなが認め、できるだけ日米韓協調協力というものができるように努力はすると思いますけれども、実際のところ、それが実現する可能性はもう小さいままにとどまっていると。それが大きくなりそうな気配はないんであろうと思います。  むしろ、アメリカの関心からしますと、日米中というふうに少し、日米韓からむしろ日米中の、この北朝鮮問題についてですけれども、三国協調という方向に関心が移っていくんではないかという印象がございます。  以上でございます。ありがとうございました。
  16. 田中直紀

    会長田中直紀君) どうもありがとうございました。私からは以上でございます。  それでは、これより各委員から質疑を行っていただきます。  本日は、あらかじめ質疑者を定めず質疑応答を行います。  できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いいたします。  また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  なお、理事協議の結果でございますが、まず大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。岸信夫君。
  17. 岸信夫

    ○岸信夫君 自民党の岸信夫でございます。  本日は、武貞参考人伊豆見参考人、大変貴重なお話をいただきまして本当にありがとうございました。  今、北朝鮮の問題、非常に複雑な連立の方程式を解いていかなければいけない状況に今なっておるわけですけれども、その中でも問題点、今両参考人からもお話がございましたけれども、北朝鮮に対して日米韓の三国プラス中国というところが、やはりそれぞれの立場からしっかりと対応していかなければこれは北朝鮮を動かすことはできない、こういう御指摘があるわけでございます。非常に難しいところであるとは思います。  この極東におきましては、従来から、いずれにしましてもこの日米韓という、自由と民主主義という価値観を共有した三国がしっかりと連携することで、過去においては、中国北朝鮮そしてかつてのソ連、あるいはまたロシアといった国々に対峙をして平和と安定を維持してきたという歴史があるわけで、この日米韓の三国が安全保障上の大変大切なキーになっておるわけですけれども、ただ、今お話ございましたように、最近の盧武鉉政権下の韓国政策というものが非常に我々にとっては首をかしげたくなるような対応が多かったわけであります。  今でもこの三国は連携をしていかなければいけないということではあるんですけど、なかなかそれがうまくいっていない。一つはやはり韓国の対応であると。韓国が、特に米韓そして日韓の関係なんですけれども、そこが少しがたがたしてきた。と同時に、韓国北朝鮮に対する特に太陽政策を継続する、また進めていくと、こういうのと両方動いているように思えるんですが、韓国政策として、近年、特に日本との関係、反日的な対応というのが非常に目立っていたわけですけど、そのことと南北調和への動きというものが何かリンクをしているものなのかどうかということについて、まず武貞参考人にこの点についてお伺いをしたいというふうに思うんです。  最終的に韓国北朝鮮も民族の統一というものを夢見ていると、描いているということだと思うんですけれども、それぞれ、韓国韓国の主導による北の併合、あるいはまた、北朝鮮の方は北による、場合によっては力ずくでも韓国を併合してしまおうと。同じ統一であっても、そのプロセスは多分違うものを描いているんだと思うんですが、その辺りについての韓国側の、特に世論の見方といいますか、そういう認識は果たしてあるんだろうかというものがちょっと疑問に思っております。すなわち、統一に向けて北は違うことを考えているんではないかということを韓国の世論としては認識をしているのかどうかということであります。  また、伊豆見参考人にお聞きしたいことなんですけれども、これから六か国協議へと向かうわけですが、一度、過去、歴史的にも核を保有したところが核を廃棄した例というのはないということでありますけれども、それまでの過程としていかに、特にアメリカがこの問題に対して強く関与してくるかどうかと、こういうことだと思います。  ただ、今の段階では、先ほどもおっしゃられましたけれども、核は持ったとしても、それを運搬する手段は今のところ北朝鮮にはないと。あとは、他国に売って、それでアメリカをねらってくると、こういう可能性があるわけですけれども、そこの部分を閉ざすことができれば、すなわち核は開発すると、だけれどもその核はアメリカには届かない。この辺りが何らかの形で保証されるような場合が起こったときに、アメリカはこの北朝鮮の核の保有自体は容認してしまうんではないかという懸念が実はあるわけです。  そうしたときに、一番の脅威を感じているのは当然一番近い日本でありまして、日本アメリカとのその意識に大きなギャップが出てくる。このことは日米同盟に対する影響というものも非常に大きくなる可能性があるんじゃないかと思うんですけれども、そういった関係について御意見をいただきたいと思います。
  18. 田中直紀

    会長田中直紀君) 武貞参考人、よろしくお願いします。
  19. 武貞秀士

    参考人武貞秀士君) ありがとうございます。  今御指摘のように、最近の日韓の関係がぎくしゃくしてきたということと南北の交流がずっと進展してきたということは非常に密接に関連があります。これ、時間的にも並行してこう進んできたわけですけれども、それは、例えば米韓の間で摩擦が起きてきたということと、南北の関係が、交流が、あるいは韓国北朝鮮に対する経済支援がずっと進展してきたということも密接に絡んでおります。むしろ、もう少し言えば、日韓と米韓の間のぎくしゃくした、あるときは摩擦あるいはノイズ、あるいは、あるときは対立というようなことも交渉の現場ではあったようですけれども、これは南北が進展してきたことと同じ、コインの裏表ぐらいの関係があると私は思います。  今の韓国の盧武鉉政権はそれまでの、以前の、金大中大統領までの政権とは違って、同盟関係あるいは日韓の友好関係を調整して、余り日本に頼り過ぎない韓国、経済的には余り日本に頼り過ぎない韓国、国防の面では余りアメリカに頼り過ぎない韓国にすれば、同族である北朝鮮と話しやすくなるという考えで、この発想は初めて出てきた、韓国の歴史上初めて出てきた考え方なんですね。  それまでの政権は、北を見れば同族がいますよと、アメリカとの同盟も大事だと、両方大事ですね。金泳三大統領は、同盟より同族が大事だと大統領就任式に言って、大きく新聞でも報道されたんですけれども、それでも、盧武鉉大統領のように、同盟関係を薄くすれば南北はその結果、交流が進みやすくなるというところまでは踏み込まなかったんですね。ということで、日韓の関係を調整し日本に言いたいことは言う、アメリカとの関係を調整してアメリカに言いたいことは言うということを、返す刀でと言っていいのかどうか分かりませんが、北朝鮮との交流にのめり込んでいったのが今の韓国の政権だと思います。  そういう意味で、因果関係さえ持たせたわけですね。日韓の関係と米韓の関係の調整と南北の交流に因果関係さえ持たせたのが今の韓国の政権である。したがって、同じコインの裏表であるぐらいの感じが今あると思います。  そして、韓国の世論は、もう一つの御質問ですが、韓国の世論は北朝鮮のそういった戦略、グランドデザインといいますかグランドストラテジー、統一というものを意識した大量破壊兵器開発、あるいは、韓国をどういうふうに持っていこうかと考えている北朝鮮統一のねらいというものを十分に意識をしているんだろうかということについては、ほとんど意識をしていない。むしろ、韓国の今の政権は、余りアメリカが武力で脅かし過ぎるから北朝鮮は思わず核実験をしたりミサイルを撃ってしまったりするんだと、平たく言えばですね、そういった認識をどうも持っているようですけれども、そこまでいかなくても、一般の国民、また野党に関して言いますと、北朝鮮統一なんというものはずっと先の話だと思い始めているし、非常に弱り切った北朝鮮がそこまで考える力はないよと、もう少しやり方を、アプローチの仕方を変えてあげれば南北はもう少し話しやすくなるなと考える人たちの数は過半数、半分以上だと思うんですね。  そういう意味で、北朝鮮の大量破壊兵器を開発するときの基本的なねらいといいますか、そこに貫かれた彼らの大戦略というものが恐怖のシナリオであり、アメリカを追い出してしまった後に韓国をびっくりさせて、大量破壊兵器片手に最後は自分主導でチュチェ思想による統一をしてしまうというデザインが含まれているということはほとんどの人が考えていないだろう。  ただ、私はこういった話、来週もソウルに行って国際会議で発表しますけれども、わずかな、統一に絡めた戦略を持ち、核を開発しているという点を指摘しているのは日本人では数少ない、まあ武貞も数少ない人間だけれども、自分たちとしては正に一番ポイントをついたと、何か自画自賛してもおかしいですけれども、韓国の元統一省長官康仁徳さんがそういうことをおっしゃっていただいて、わずかに、南北関係をずっと長い間見てきたやや保守的な見方をする韓国の人たちの間では気付いている方々はごく少数おられます。  以上です。
  20. 田中直紀

    会長田中直紀君) ありがとうございました。  伊豆見参考人、よろしくお願いします。
  21. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  今、岸先生からの御質問でありますが、まず、文字どおり北朝鮮からの拡散が防止できるということの保証が得られるんであれば、アメリカ北朝鮮の核を容認するというのは、少なくとも論理的には十分にあり得ると思います。しかし、これ現実の話として考えると、まず一〇〇%ないと私は思います。  なぜないかというと、アメリカが拡散防止ということについて、防止し切れていると、安心したと、大丈夫だと、そういう確信に至る可能性がまずほとんど考えられないからです。そうである限り、北朝鮮の核というのは容認できないという状況が続くであろうと。  一つは、先ほど来申し上げております、核兵器なり核物質が例えばテロリストの手に渡ることをきちっと止めるということですが、これは、止めた、あるいは北朝鮮が絶対それをやらないと、やらないというのは、今もやらないと言っておりますけれども、もちろんやらない、いろんな形でそれを明確にする、あるいはほかの情況証拠でもないようだとかいうふうになってきても、一〇〇%絶対に安心できないんですね。拡散しないであろうということを証明することが物すごく難しいわけです。  証明する手段というのは、恐らく金正日の首を取っ替えるしかないですね。か、あるいは相当、金正日政権の政策ががらっと変わると。例えば、核は放棄しました、ミサイルも放棄しましたというぐらいのことをやって初めて北朝鮮核兵器なり核物質をテロリストの手には渡さないであろうということについてある程度の安心感がアメリカが持てるようになるということでありますので。  ということは、これはまず現実の問題として、アメリカがそこまで安心するといいますか、確信することはまずあり得ないと思いますので、これが第一点です。  もう一つは、拡散というのはもちろんもう一つの意味があるわけでありますので、北朝鮮の核に刺激されて一種のドミノ現象が起こると。例えば、我が国で今核兵器論議というのがあることにアメリカがいろんな意味でぴりぴりしているのは御案内のとおりでありますが、日本がありますし、韓国がありますし、台湾もありますということですが、ここが大丈夫だという話にならないと北朝鮮の核を容認できないわけですね。  ですから、大丈夫だというのは、日本が核武装することはない、韓国が核武装することもない、台湾が核武装することもないと、最低この三国、とりわけ日本ですが、そこについてアメリカが確信を持てば、北朝鮮の核は容認しても構わないということになると思います。しかし、これも私は恐らく不可能だろうと思うんですね。  今の日本を見ていてというよりも、普通、アメリカ人が、こういう状況になったときに日本が核オプションということを考えるんではないかというふうに、多くの人たちがすぐそういうふうに見ますけれども、それは一種の常識論を展開しているんだと思うんですね。特別日本が変わっているからとか、日本だからそういうことをするんじゃないかとかいう話ではなくて、普通の国の普通の反応でいえば、北朝鮮のような国が隣にあって、極めて敵対的で、その国が核武装するというと、やっぱりその対抗あるいは防衛のために自分も核武装を考えるかと思う方が当たり前だと、これは常識だと。  だから、常識論を適用すると、日本の中に相当核武装を、あるいは核兵器保有を真剣な選択肢として考えるべしという議論が出るであろうというふうにアメリカ人はみんな見ると。それが常識論ですから、常識論が覆らなきゃいかぬわけですね。日本は絶対そんなことしないだろうと、韓国もしないだろうと、台湾もしないだろうと確信しないといけないと。じゃないと、北朝鮮の核は容認できないということだと思います。  ですから、拡散防止が本当に保証される、あるいはそこに安心して拡散防止が実現できているというふうにアメリカが思えば、私は北朝鮮の核というのは本当に最終的にもう容認しちゃっていいとアメリカは考えると思いますが、今はやっぱりそれは無理ではないかと。  インド、パキスタンのケースは何が違うかというと、あそこは終わりだからです。二つ一緒になったからよかったところもあるわけです。例えば、あれインドだけで終わっていたら、それは次にやっぱりパキスタンに行くかということをすぐ考えなきゃいけなかったわけですけど、まあもちろんインドは七四年に最初に核実験をやりましたが、実は九八年にほとんど一週間でそろってやってもらったおかげで、この二つ核保有国かというと、ここから後、拡散するという可能性というのは余り見えないわけですよね。あとはイランに行くかぐらいの話ですかね。でも、それはパキスタンが怖くて、じゃどこかほかの国が核武装するかというと、ないわけですよね。インドが怖くて中国がといったって、中国は元々核保有国ですからそれは関係ないと。  要するに、インド、パキスタンの核保有というのはそこから拡散しないと、ドミノ現象での拡散がないから、もう何となくそこは一種のエンドゲームみたいになっていますんで、まあ認めてしまえる、認めやすいと、黙認しやすい部分があった。  ところが、北朝鮮というのはそうじゃないわけです。ここで終わりだという保証が全然ないと。北朝鮮が持つということは、そこから北朝鮮の核が流れ出るということも当然あるし、心配ですし、同時に、北朝鮮が核を持つことでほかの国が核を持つという方向に行く可能性が十分にあると。その危険性に直面している間、アメリカが実質的に北朝鮮核保有を認めるということは私は全くないと、その点で日米の間でぎくしゃくするという可能性も全くないというふうに思います。
  22. 田中直紀

    会長田中直紀君) 木俣佳丈君。
  23. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 民主党・新緑風会の木俣佳丈でございます。  両参考人には、大変興味深い、また非常に含蓄のある御説明をいただきまして、心から感謝申し上げます。  武貞参考人に二点、そして伊豆見参考人に三点か四点伺いたいと思っております。  まず、先ほど御提案いただいた長期的な外交シナリオという中で、核の拡散を防ぐ、核又は大量破壊兵器の拡散を防ぐためにも、中ロに対してはもっと毅然とした態度でという御発言がございました。これ、具体的に言うとどういうことをどのようにすることが必要なのかという点。それからもう一点は、最後のどうするかのところで、七、八年後に、まあいわゆる核弾頭でしょうね、ができたとき、つまりは先ほどの論のように、統一のための戦争が起きるというお話がありましたが、ここがどういうコンテクストで起きるということか、御説明いただきたいと思います。  伊豆見参考人には、まず当面のアメリカの関心事というのは、その核、北の核が第三者に渡ることというポイントがございました。この核が渡るという、第三者に渡るというのは、つまり実験データというものも非常に大事なものだと私、思っておりますが、このデータなのか、それとも物なのか、それとも両方なのか、どちらがどれだけ重要なのか。さらには、アメリカというのはどの程度、今の質問とも関連するかもしれませんが、真剣にこれを抑止したい、つまり渡らなくしたいのかというその真剣度合いがどうも私、見えませんものですから、是非その辺りも御説明いただきたいと思います。  それから二点目、リビアの経済制裁の話もございました。実際、九二年に、私もちょっと調べておりまして、四十一条の制裁というのが戦後で十七件、リビアの場合に九二年に制裁発動になって、約十年で手を上げたというような感じでしょうか。ですから、昨日も官房長官にこの辺り、つまりは日本も十年ぐらい本腰を入れて制裁を続けるつもりかということを言いましたら、半年ごとに見直しがあるのでというような説明がありまして、非常に私、不可解というか、制裁をしようとする者が半年で見直しをするんだよということを言っていると。つまりは、かなり本気ではないだろうなというようなニュアンスを持ったんですが、今の私の意見に対してどのような御感想をお持ちかというのが二点目。  それから、ロードマップで、巧みな外交交渉をしなさいということなんでございますけれど、見返りを用意するというのが、それはXに対してA、Yに対してBというようなことでございますが、私はどうも理解できないのが、そういう一対一対応というのが本当にあるのかどうか。今までの例えばKEDOも含めたものの中で、一対一対応をしてきたのならば、じゃ先生はどういったものがこれに対するということなのかという点。  もう一点、ラストに、金正日を暗殺することができるならば全体が変化するのかというようなこと、この辺でございます。
  24. 田中直紀

    会長田中直紀君) どちらに。
  25. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 武貞さんからお願いします。
  26. 武貞秀士

    参考人武貞秀士君) ありがとうございます。  核拡散防止の上で具体的に中国ロシアに何を望むべきかという点でございますけれども、我々は七月五日、北朝鮮がミサイルを発射したときにまず我々が望んだことは制裁決議をするということだったわけですが、中国は、まず記者声明を、プレスに対する記者の発表を出そうというところから、議長声明にしようと下りてきて、そして制裁決議案には反対し続けた後で、フランス、イギリスの案である非難決議で満場一致で国連安保理が決議をしたわけですけれども、そこには中国が非常に巧みに国連憲章の第七章、七月には四十一条、四十二条も、両方の文言が入らないように努力したわけです。  我々は、十月のときには今度は制裁だということを期待したわけですけれども、中国は非常に巧みに第七章の第四十二条の文言が入らないように最後まで努力をした。交渉の現場ではいろいろ、いろんなことがあったと報道をされているようですけれども、中国は四十二条の文言を入れるんであれば賛成はしなかったであろうということはもう皆さん御存じのとおりでありまして、やはり武力をあるときはもってしてでも北朝鮮に大量破壊兵器開発計画を放棄させようという案に賛成ですか反対ですかといえば、一貫して中国は反対してきました。  今回の決議に対しても、船舶検査を中国が行うときに国際社会が当初期待していたような検査をするようにはとても思えない。やはり、これ一貫して、北朝鮮に対しては圧力を加えないようにしようということでは一貫してきた、こういった中国をやはり我々の認識と同じようにしてもらうように、例えばもう、十月の決議を今からやり直すというわけではございませんけれども、第七章の四十二条にはロシア中国が一致して賛成してもらうようなこと、これは必要だと思います。これはもう非常に具体的なことになると思います。  あるいは、ロシアについては、かつて核開発計画に携わっていた技術者をロシアの国内で登録をした上で、国外の研究所でそういった人たちが個人的ステータスで研究に携わるようなことがないように、ロシアの中の、これは技術者の、核関連技術者の人事管理の問題であろうと思いますけれども、そういったことも可能であろうと思うんですよね。  そのほかには、中国にはいろいろ、バンコ・デルタ・アジア、マカオの銀行口座凍結に当たっては中国の政府の了解がありましたけれども、香港とかマカオとか、そういったところの銀行口座の凍結というのはやや象徴的な意味があって、むしろ最も重要なことは、中国の国内の地方における銀行の北朝鮮口座の凍結に向けて中国政府がどこまで協力的であるかどうかということであります。  最近は、十月以降、やや中国政府もそういった問題に関心を持ち始めたという報道が出ておりますけれども、ずばり丹東市、それから瀋陽市の北朝鮮関係の口座のある銀行の洗い直しといいますか、凍結に向けての中国政府の努力は可能でありますけれども、まだやっていないですね。こういったことも含めてやってこそ初めて、大量破壊兵器を開発し続けている北朝鮮に対する金融制裁が効果を持ち始めるものだと思います。  もう一つの御質問でございますけれども、統一のための戦争が起きるとすればどのようなシナリオであろうか。七、八年後、私の申し上げた統一に向けての非常に緊迫した戦争も可能性もあるような動きが出てくると言った根拠は幾つかございまして、二〇〇八年の十二月三十一日をもって在韓米軍の一万二千五百人が削減され三分の二になるわけですけれども、その後、二〇〇九年の十月十五日から二〇一二年の三月十五日にかけて、米韓連合司令部の戦時作戦統制権は韓国の大将に返還される約束が先日の年例安保協議会で決定をいたしましたけれども、これまで、この時期以前には基本的には米韓同盟関係変化というものは私は実質的には起きないと思います。戦争北朝鮮が開始すると、まずソウルの北側にいるアメリカの第二歩兵師団と一戦交えなければならない状態であれば、北朝鮮は私は戦争を起こすのは非常に難しいと思います。自動的にアメリカ戦争に巻き込まれて、全力をもってピョンヤンに向けての私は巡航ミサイルの発射ということになると思いますね。  したがって、こういった米韓連合司令部の解体、あるいは作戦統制権のその前には移譲、そして在韓米軍の削減の後、在韓米軍が更なる追加削減等がある場合、これは方程式の変数でもあります。米韓同盟関係がどのようになるかというのは、これは朝鮮半島という方程式の変数でありますので、米韓関係が更にいろいろな問題が起きてきて、例えば在韓米空軍の射爆場の使用をめぐっては、韓国は住民運動等もあり、なかなか韓国の方で米国に対して射爆場の提供というものに対してはっきりした回答ができなかったということもつい先日までありましたけれども、こういった問題も含めて米韓同盟関係は問題山積でありまして、何が起きるか分からないようなところがあります。  その最悪のシナリオは、韓国防衛は自分で、じゃやるんですねとアメリカが言いながら、在韓米軍全面撤収するケースですよね。これ、私はあり得ないことではないと思います。そうしたときに、米軍がいなくなる、そして韓国の社会はずっとその間交流を繰り返していって、北朝鮮戦争をする相手ではないなと国民が考え、いざというときに、例えばソウル市内で何かよく分からない液体がこぼれて、米軍あるいは韓国軍の兵士たちがばたばたと倒れ、重要戦略施設守っている人たちがいなくなった。何か知らないけど三十八度線越えて何かが進軍してきたというときに、韓国は何ができるか。非常に難しい状況が起きると思いますよね。  かつて、潜水艦が東海岸で、韓国の東海岸で座礁したときに、二人の、潜水艦、北朝鮮の乗組員が、特殊工作員ですけれども、韓国の中で逃げた。二人の逃げた北朝鮮の特殊工作員を捜すために七万人、八万人の韓国軍が動員されて五十日間捜し回ったけれども、その二人のうちの一人は帰順をして、一人は恐らく北に逃げたと言われていますけれども、成果を十分に上げることができなかったという例がございました。  これは、訓練を積んだ特殊目的部隊が韓国の中に入り込んで逃げ回るときに、韓国は我々が予想する以上に相当苦戦をするという実例でもありまして、韓国はいざというときに本当に国を守るために国軍が国民の支持を得ながら対抗できるかというと、十年後、十五年後、今よりは弱っているだろうと思います。  それでもアメリカ介入するときには介入する。北東アジアの安全を回復するためには、安定を回復するためには介入するということは当然あり得る。ソウルにもアメリカ大使館がありますから、アメリカ大使館の職員の安全を守るためにということだって可能なんでありますから、介入する可能性があるときに北朝鮮が一万五千キロ飛ぶ弾道ミサイルを完成していれば、アメリカは中立を宣言しろと。ワシントンに、ニューヨークに届くミサイルはここにあると。そうすると、アメリカのそのときの大統領、どなたであるか分かりませんけれども、ワシントンニューヨークが焼け野原になるということと引換えに朝鮮半島の安定を回復するための決断を下すかと言われれば、非常に迷うだろうと思います。  これは、アメリカの核の傘が破れるときだと思うんですね。金正日はそのシナリオを描いているんだというのが今日の私の報告のポイントでもございました。
  27. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  木俣先生から四点、御質問をちょうだいいたしました。  まず第一点でございますが、トランスファー、移転の問題であります。  核兵器なり核物質の移転ということについてアメリカが気にしているのは、例えば実験データなのか、あるいは現物なのか、双方なのかと御質問をいただきましたが、もちろん双方であるということになりますが、しかし、先ほども申し上げましたように、実験データのようなものであればこれは国家でなければ活用できないと。テロリストが実験データを手に入れたから自分で核兵器を造ることができるかというと、それは基本的にないという前提にアメリカは立っています。アルカイダにせよヒズボラにせよすることはないということでありまして、したがいまして、現物そのものであればやはりこれがテロリストに渡った場合ということを懸念するし、実験データあるいは現物そのものでもいいわけですが、その双方であれば、国家であると、先ほど申し上げましたように、例えばイラン、シリアといったところにそれが渡ることを極めて懸念していると。  まあそれでも、双方ではありますけれども、特にこの核実験の後アメリカがより気にするようになったのは、やはりテロリストに渡ることだと私は思います。  テロリストに渡ると、ほぼ自動的にアメリカに対して攻撃で使われるだろうというふうにアメリカの人はまず例外なく考えると思います。ここら辺、アメリカの友人たちと議論していますと、そこについて例外は全くなかったんです。皆さん同じことを、同じ懸念を言われる。政府の人であれ非政府の人であれ、あるいは民主党系の人であれ、全く言われることは同じであります。したがって、相当な、相当なといいますか、少なくとも実験以前と比べた場合には、相当大きな懸念がテロリストグループに北朝鮮の核が渡ることについて生じたということは事実だと私は感じております。  それに対してどれだけ真剣に止めようとしているのかということでございますが、これも相当真剣だと私は思います。例えば、船舶検査でありますとか、あるいは臨検というようなことを公海上でも真剣にやろうとしているということ自体は、いかに危機感を持ち、それに対してできることなら何でもやろうと。これはほとんど軍事的な行動との境界線があいまいになる部分がありますし、実際、先ほど武貞先生が言われていたように、本当に臨検をやったときに捕まっちゃうかもしれないというようなことを真剣に考えていまして、実際乗り込んだ米兵が捕まることがありますが、船ごと持っていかれて、六八年にプエブロ号という監視船が北朝鮮に捕まったことがあるんですが、それと同じことが起きるかもしれないということも実は今国防総省の中では一応、もちろんその可能性が大きいというわけではありませんが、その可能性もあるという前提で彼らは検討を始めています。ということは、よっぽど真剣でないとそこまではやっぱり考えないだろうということですので、私は、今のブッシュ政権の姿勢は相当真剣であるというふうに申し上げてよろしいと思います。  ただ、これも先ほど申し上げた点でありますが、その移転というものを止めたと、止まったというふうに確信することが極めて難しいわけですね。ですから、一生懸命取り組んでそれを何とか防止しようとするわけですが、それが功を奏しているかどうかがよく自分でも分からぬみたいな話になると。ここが非常にアメリカにとっても悩ましいところであろうかと思います。一生懸命取り組む、真剣に取り組むわけですが、しかし、それが実際効果を上げているかどうか実証することが自分でも難しいと。そうしますと、やっぱり最終的には本当に今の金正日体制というのはひっくり返ってもらうのが一番いいと、まあ今すぐというわけではなくてもですね、そういう時期が来ないと安心はできないというような話になろうかと思います。  二番目の点でございます。あのリビアのケースをお引きになられましたので、重要な御指摘だと思います。  確かに、いったん特に国際社会が、多国間の枠組みで国際社会がある種、一丸となって制裁を掛けるとなると、これはできるだけ長くやるということが確かに効果的であると。それは今までの例が示しているところだと思いますし、今回、北朝鮮の核問題をめぐって国連制裁を発動することになったわけですから、簡単にこれを状況変化に応じて解除するというのは、もう当初からそれの効果というものを余り期待してないという話にも結び付きかねないようなことであろうかと思います。やはり、ある長い年月を掛けてでも本当の明確な結果が出てくるまでは制裁を続ける。いったん発動したからには、特に多国間の国際協調による発動というのは長期間続けることに意味があるというのは全く御指摘のとおりだと思いますし、私もそうすべきであろうというふうに思っております。  その点で、日本政府の行っている制裁措置について半年ごとの見直し期間を設けるというのは、確かにそれとは矛盾して見えるところもあろうかと思いますが、しかし見直しをするということ自体が私、悪いとは思わないんですけれども、その場合、何を達成しようとしていて、その達成しようとした目標がどのくらい達成されているかということを精査していただくというのがもちろん一番重要であろうと。  そうしますと、私は、今、日本政府が独自に打ち出した制裁、さらに今度の国連決議の中にもそれが取り込まれていくものもあるでしょうし、新たな追加的な措置もあろうと思いますけれども、少なくとも日本制裁というのは私は二つの部分に分かれると。  一つは、正に核問題といいますか、その脅威ということについて、それを北朝鮮が完全に我々に脅威を与えないような態度変更を行うまで制裁を続けると、続けるべき制裁というものがあろうかと思いますし、もう一つは、北朝鮮の不正行為に対して掛けている制裁的な措置があると。これはやはり別のものだろうと私は思います。とりわけ不正行為に類するもの、もちろん大量破壊兵器も不正の移転というのも不正行為に引っ掛かるといえば引っ掛かるかと思いますが、よりもう少し具体的に言うならば、例えば偽札に関するもの、麻薬に関するもの、あるいは偽ブランドたばこに関するもの、これもみんな北朝鮮の不正というよりも犯罪行為ですから、犯罪行為を取り締まるために、あるいはそれを抑制するために打ち出している措置というものは、その犯罪行為が終わらなければそれは当然解除されない、当たり前だと思いますし、そうしますと、この制裁の部分というのは、例えば北朝鮮核兵器を完全に放棄しても、で、放棄したことが明確になって我々がそれを認めても、でもなおかつ北朝鮮の犯罪行為が続いているんであれば、その我々の制裁的な措置は当然続けるべきであるということになると思いますし、あるいはまた逆に、北朝鮮核放棄にまだ至っていない前の段階であっても、北朝鮮が犯罪行為をやめたと、で、それが再発をしないということがほぼ我々が確信できるんであれば、核問題が解決するといいますか、核の放棄という目標が達成される前の時点でももちろん解除することができるということだと思いますんで、二つ違う目標のものが、私は日本のとっている制裁措置のその対象にはあると思いますんで、その辺をもう少しより具体的に峻別をしていただいて、それぞれについてどういう条件下で解除ができるのかと。逆に言いますと、何を北朝鮮に求めているのかということをより明確に具体的にしていただけるのが望ましいのではないかというふうに考えております。  三番目の件なんでありますが、私は、実は全くクリントン時代に行ったアメリカ北朝鮮の合意、まあアメリカの後ろには、実は日本韓国の、非常にこの時代には今と比べますと信じられないほど密接な協調関係日米韓に私はあったと思いますが、この日米韓アメリカ中心になりながら日米韓で組んで北朝鮮と取引をして、北朝鮮核兵器開発を少なくとも凍結していたわけですね。プルトニウムによる核開発を凍結していたそのやり方は、私は全く一〇〇%賛成なんでありまして、私は、あれはやり方として正しかったといまだに思っております。  それは正に取引だったわけでありますし、北朝鮮に完全に核をその時点で放棄させるということにはなりませんでしたが、これ以上の北朝鮮核兵器開発が進まないように止めると。止めると、凍結するということに対する見返りとして重油を提供し、軽水炉建設に着手し、さらに関係改善へのステップを踏むという方向に動く、あるいは経済制裁の一部を解除するというようなことをアメリカは措置をとりましたが、これは少なくとも八年間、プルトニウムの増産というのは止まっていたわけですね。  これは歴史の後知恵ですから何とも言えませんけれども、しかしその期間に核実験の可能性が極めて高かったかといえば、実は非常に低かったということが言えると。今回の核実験がプルトニウム型だったと仮に仮定しての話ですけれども、まあその可能性は非常に高かったと思いますが。なぜならば、正にKEDOによるプロジェクトが動いている間、北朝鮮は確かに十キログラム程度のプルトニウム、兵器級のプルトニウムを隠し持っていたはずです。しかし、この十キログラムぐらいの兵器級のプルトニウムで、一体どのくらい使うと彼らは臨界に達し、すなわち核分裂、核爆発を起こすことができるか。もちろん、外の世界の我々は一切分からなかったわけですけれども、それを五キログラムぐらいから七キロ、八キログラムぐらいかと、こういうふうに算定するわけですね。すると、それによって十キログラムというのは二発分にもなるし一発分にもなるということですが、いずれにしろ十キログラム程度のものを北朝鮮は隠し持っている。  これ、とらの子ですから、核実験に一回使ったらなくなっちゃうというわけですよ。しかも、その間に核開発を凍結していますから、そこから核開発を再開して次のプルトニウムを手に入れるまで、最低でも一年か一年半ぐらい掛かると。普通、とらの子だったら使わないだろうと思うわけでありますし、で、実際やらないと。今回、十月九日にやりましたけど、これは二〇〇三年以降、北朝鮮が再びプルトニウムの備蓄といいますか、増産に踏み切った後でありますから、今少なく見積もっても四十キログラムぐらいから五十キログラムぐらいの兵器級のプルトニウムを北朝鮮は持っていると。  ここで、今回の核実験に一体何キログラム使ったか分かりませんけれども、そこで五キロとか八キロ使っても、あと三十キロ、四十キログラムぐらい余っているわけですね。当然、核実験やりやすくなるという話になる、当然だと思います。やはり、核の開発を、凍結であれ停止であれ何でもいいですが、止めてあることには非常に意味があったと。そのために取引をやったわけですから、その取引は私は非常に意味があったと思います。  もちろん、今回のこの危機に至る、至るといいますか、今回の今の我々の直面している危機を生むことになったのは、実はその間に北朝鮮は秘密裏に隠れてこそこそとウランをやっておったではないかと。高濃縮ウラン、ウラニウムの獲得に彼らが邁進していたと。それが言わばパキスタンのやみの核ネットワークという市場、カーン博士のネットワークの中でいろいろなものを入れて彼らはやっていたと。それが分かったためにアメリカは、二〇〇二年の時点では、もはや実験段階からかなり、生産段階ですかね、プロダクションスケールに入ったという前提で北朝鮮に迫り、それを北朝鮮が認めたものですから、制裁措置をとらざるを得ないということでKEDOへの重油を止めということをやりました。結果として、重油を止められた北朝鮮は、今度は自分たちが今までの核凍結というものを解除して、プルトニウムによる核開発を再開して現在に至っておると、こういうことでありますが。  確かに、秘密裏に北朝鮮約束を破ってこそこそとやるんだから、今までのクリントンのやった取引には意味がなかったといって今のブッシュ政権、共和党は責めるわけでありますが、しかし考えなきゃいけないことは、まずは、濃縮ウランによる核開発というのは技術的にも非常に難しいということが言われますが、何よりも臨界量に達する量がかなり要ると。プルトニウムなら五キログラムぐらいでも一発核兵器が造れるかもしれないと言われるものが、高濃縮ウランだと二十キログラムぐらい最低要ると。つまり、二十キログラムの高濃縮ウランをつくるのにやっぱり相当時間が掛かるということが言われている。それは二〇〇二年から言われているわけですし、実際、いまだにこの時点、二〇〇二年の十月から数えますと、三、四、五、六、四年たちました。四年の間に北朝鮮が今二十キログラムの高濃縮ウランを手にしているかどうかよく分からないわけですし、その可能性が極めて高いという切迫感がどこか国際社会にあるかというと、全くないですね。アメリカにないです。  だから、今、不思議なことに、元々今回の核危機というのは北朝鮮が高濃縮ウラニウムによる核開発をやっているから生じた危機なのにもかかわらず、今国際社会はどこもこの北朝鮮の高濃縮ウランについては問題にしないですよ。  なぜか。恐らくまだたまってないからですね。時間があったという話ですね。だったら、やはりプルトニウムを止めておくことが重要だったという話ですよ。高濃縮ウランが明日にでも使われる、高濃縮ウランによる核兵器が明日にでもできるという段階であったというならまた話は別ですが、そうでなかったのならば、恐らくそうでなかったと言っていいはずです。だれも問題にしてないんですから、だれも危機感を持ってないんですから、これは恐らくそうなんですが。にもかかわらず、高濃縮ウランを問題にしてプルトニウムによる核開発を再開させたわけですね。  再開させた結果が今こういうことになっているということでありますので、やはり私は、アグリードフレームワークといいますか、その核合意、合意された枠組みによる取引というのは極めて有効だったと思います。  凍結、あるいはいったん停止でもいいですが、今の核開発を停止するために何らかの見返りを与えてやると。具体的にはもう明確にその対象ははっきりしているわけですから、五メガワットの原子炉稼働をやめさせる。そこからの燃料棒というのはもう一度確保すると。そして、再処理をやらせないということですね。再処理施設も動かせないということですし、あるいはさらに、先ほど申し上げた五十メガワット以上の大きな原子炉の開発というものを防ぐと。そういうことを幾つも、具体的に何を要求するかはっきりしていますから、それを取るために何らかの見返りを出して、それで取引をするというのは私はあり得るというふうに依然として思っております。  済みません。四番目のお話でございますが、金正日を暗殺することができれば全体は変化するかどうかです。  変化すると思いますが、これは特に、そうですね、中国の人たちと議論すれば必ず出る話でありますが、今、金正日書記を暗殺する。まあ暗殺かクーデターかとよく言われますが、暗殺の方がより可能性といいますか蓋然性は高いだろうというような言い方を一般によくすると思いますけれども、もし金正日書記を暗殺するということに成功したとすると、次はだれがその政権を担うんだと。今の時点で考えれば、恐らく軍部がそこに、次の政権を担うことになるだろう。それは集団指導体制かだれか別の人が出てくるか分かりませんけれども、その可能性が極めて高い。いずれにせよ、まだ後継者が明確に決まっているわけでもない段階ではその可能性が一番高いだろう。  その金正日の後を襲った政権というのはどうなるんだと、三つ考えられると思います。一つは、金正日と同じ程度というものがあります。金正日よりか良くなるというのがあります。もう一つは、金正日よりか悪くなるというのがあります、我々の目から見てですね。より危険になる、より脅威を我々に及ぼすような存在になるかもしれない。これ、どう考えてもこの三つの可能性があるわけです。ですから、金正日という指導者を排除すれば必ず良くなるという方向に進むと、状況は好転するという保証があるならそれを、別といいますか、まだもっと皆さん真剣に考えるのかもしれませんけど、どう考えても三つの可能性があるわけです。その中の一つの可能性は、今よりかもっと我々にとっては厳しい状況になる可能性があると。そうすると、なかなか実際の選択肢として皆さんが考えないのはそういう理由であろうかというふうに思っております。  ありがとうございました。
  28. 田中直紀

    会長田中直紀君) 谷合正明君。
  29. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。  本日、両参考人ともに示唆に富むお話をいただきまして、本当にありがとうございます。私も関心事としては、韓国がどうなっていくのかということにもあったわけでありますが、前段に質問が重なっておりますので、そこはちょっと省きまして、日本安全保障政策、まあ防衛政策が今回の核実験を機にどういうふうな転換点を迎えているのかというところをお二人の参考人に、同じ質問でございますが、お聞きしたいと思います。  いろいろ、ミサイル防衛の前倒しでありますとか、あるいは中国韓国にPSIの加入要請をするだとか、あるいは先ほど武貞参考人の方からありましたように、情報衛星の在り方も見直さなきゃいけないというようなお話もございました。あるいは、臨検に実際至った場合にどうなるのか、まだ法的な整備ができていないじゃないかとか、いろいろなお話があったと思います。そこで、日本防衛政策安全保障政策がどうあるべきなのかというところをお聞きしたいと思います。  そして、それに併せて核保有論議というのが、これもうずっと出ております。私自身も、もちろん日本が非核三原則を持っておりますので、このメッセージというのをしっかりと内外に、国内外にメッセージを出すことが重要であろうと。特にこの北朝鮮の今回の問題、短期間に問題が解決するわけではありませんし、長期にわたっての取組でありますので、日本の国是がぶれないことが、もうこれは当然のことであると思っております。  しかしながら、この核保有論議というのが出てきております。武貞参考人のいろいろ参考資料なんか読ませていただきました。これは一部の人が、元々持論を持っている人が言っているにすぎないというようなことも武貞参考人が言われていたと思いますが、日本人、日本というのは核保有という、そういういっときの感情によらずに冷静な判断ができる国民でもあるというようなことも言われていたと思いますが、そこで、そういったことを含めて御所見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  30. 武貞秀士

    参考人武貞秀士君) ありがとうございます。    〔会長退席、理事加納時男君着席〕  日本安全保障にとって、今回の核の実験がどのような示唆を与えているか、そして日本安全保障、その示唆に基づいてどうあるべきかという点について申し上げます。  いろいろな示唆、七月の五日のミサイルの発射、そして十月九日の核実験、この二つから幾つかの示唆を我々に与えているわけであります。  それは、先ほども申し上げましたように、まず第一に、こういったミサイルの発射の兆候でありますとか核実験の兆候があるときにはいち早くその情報を入手してどう対応すべきかという情報の迅速な入手、この能力はまず大事だということを我々も学んだわけであります。  それから、このような事態になりますと、隣の国が核兵器を持って日本を脅かすというシナリオがあるかもしれないと日本人は考えたわけですね。十月九日、その日以降、町の街頭で、テレビのカメラが道行く人にこれどう思いますかと言うと、いや、日本核兵器持ってもいいんじゃないですかと答えていた町の方もおられました。日本人は真剣にこの朝鮮半島から来るかもしれないミサイルの脅威というものを考えているわけですね。中国地下核実験をしても、そんなに日本人は真剣に日本中国の核弾頭の目標になるとは考えなかったと思うんですが、もちろん考えた方もおられますけれども、それに比べると、圧倒的多数が日本はこれで安全だろうかというふうに考え始めたわけですね。  こういったことを考えますと、核の傘というものが本当に機能するかどうかということを日本人は考える時期が来た。そして、私は、一回の核実験とか七月のミサイルの発射によってアメリカの核の傘が傷付いたとか破れたとは思いません。そういう意味で、その核の傘の再確認と、かつ、これからもアメリカとの信頼関係、これは永久に堅固なものであるかどうかは、日本人の努力ということも必要ですから、永久に今後もアメリカ日本に差し掛けられている核の傘が堅固なものであり続けるように、日米関係の様々なレベルでの信頼性の強化と、これは私は七月以降の様々な北の動きの教訓の一つであると同時に、我々に与えられた課題の一つでもあると思います。日米関係の更なる信頼性の強化ですね。    〔理事加納時男君退席、会長着席〕  さはさりとて、ミサイル防衛のシステム、これも私は前倒しをしてでも導入が必要だというのは、核実験の二日後のある新聞座談会でも発言したんですけれども。すなわち、実際に着々と核実験をし、かつ、ミサイルの射程を延長しようとしている国がいるということ、そしてそれはシナリオいかんでは日本にもその目標を定める可能性がある国であるということを踏まえて考えると、少なくとも、飛んできたものを払いのける、あるいは日本に向かって飛んでくるものを発射の直後に海上からそれを落とすという能力はできるだけ早く日本が身に付けると同時に、在日米軍のミサイル防衛のシステムも数を増やしてもらうようにするということも必要であろうと。これは飛んできたものを払いのけるという話ですから、中国韓国等の理解を、理解といいますか反発を、それほど大きな反発を受けることなく可能であろうと思います。  したがって、日本の近隣諸国日本に対する大量破壊兵器の脅威というものは現実として存在しているんだということも教訓の一つであろうと思います。そして、非核三原則という原則にのっとって日本は当然、国際社会の信頼を今までかち得てきたわけでありますので、非核三原則というものを確認すると同時に、いろいろな誤解に対しては解かなければいけないと思います。  この間、十月以降もドイツ、イギリス、アメリカ韓国なんかのメディアから同じ質問を受けました。大体、三十分ぐらい質問受けると二十五分ぐらいは日本核武装しますかという質問なんですね。  実際、核武装をする論議は必要ではないかという論議の中にも具体的な議論は実はほとんどないわけですよね。核兵器を持つといっても、その持つに至る核実験場が日本にあるだろうか、あるいは日本こそもう世界でも最も透明性の高い予算のシステムを持っていて、内外のあらゆる人は日本が核武装を決断したというときには瞬時に分かる、どこの予算でどういうふうに実験をしようかとしているかということも含めて分かるシステムになっていますから、そういったものをくぐり抜けて秘密に核を持つことができるだろうかという問題とか、あるいは核兵器であれば、これは敵の攻撃に対して生き残る能力がなければなりませんので、核戦力を抑止力として持つにはやはり潜水艦発射弾道ミサイルが必要ですね、そうすると原子力潜水艦が必要ですね。となると、原子力潜水艦、それから潜水艦発射弾道ミサイルの技術というのは日本にありませんし、購入する予定ももちろんありませんので、本当の意味での抑止力としての核戦力を持つということは、具体的にどういうアイテムが要るかということと、それらをそろえた上での運用、どういう運用をするかという議論も全く欠けたまま核を持つとどうだろうかという議論が、私は外国に対してちょっと誤ったシグナルを送っているのかもしれないなというふうに思うわけですね。  それよりも、むしろ私は、お手元にあります参考資料の中で幾つか申し上げた点ですけれども、通常戦力の整備というものの方の議論の方が大事であろうというふうに思います。それはいろいろな、一番最も手っ取り早いのは、情報収集衛星の数の増加と、そして日本に向けて攻撃を準備している弾道ミサイル発射基地の動きが激しくなってきたときに、いち早く日本がそれをキャッチして、国際社会にアピールして、そしてアメリカ韓国との事前の、数日以内というような、そういうタイミングででも、協調協力のための外交展開する日本独自の情報、こんなものがやはり必要だろうというふうに思いますね。  ですから、長期的にどうすればよいかという点でございますけれども、今の段階では、いろいろな多様な議論が出てきたということは事実だと思うんですね。非核三原則に関するいろいろな発言とか、敵基地攻撃能力を持つという議論は、議論自体が抑止力の効果はあるんじゃないかという議論も含めて多様性が出てきた。それを少し整理しながら、本当に日本の置かれた、貿易立国としての日本の条件の下で、防衛戦略どうあるべきかというのは、官界、財界、学界問わず、議論は高めていく必要がある。そういったことを教えてくれたのは、ほかならぬ金正日書記だったのかななんということになるのかもしれないと思います。
  31. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  私は、まず、これ一緒にして申し上げたいと思いますが、核保有論議というのは基本的に必要なものだと思います。その論議をする、議論をすることは必要。しかし、少なくとも相当諸外国に、誤解ではなくて、一方的な思い込みをさせる可能性というのは非常に高い話題ですから、だとすると、相当静かにといいますか、冷静にしなければいけないのが一点。要するに、相手に誤解を与えるということよりも、私は変な思い込みを与えるという方が正確じゃないかと思っていますが、その可能性極めて強いということがありますから、静か、冷静というのが第一点、必要でしょう。  二つ目は、やはり具体的な話がないといけないと。今、武貞先生が言われた運用面での話というのはその一つだと思いますが、その点について二つ私は加えさせていただきたいんですけれども、一つは、今この核保有の必要性ということについて議論を始めるその動機は北朝鮮の核の脅威だということでありますが、実際、ここで日本核保有を決断して、様々な技術的な問題をクリアしながら、実際、少なくとも北朝鮮の核に対するある抑止力が形成できるような核兵器が持てるときにまで一体どのくらい時間が掛かるんだと、どのくらいお金が掛かるんだと。で、大体間に合うのかという話であります。まあ、それは分からないと思いますけれども、でも、だとすると北朝鮮の核ということだけを考えて日本は核武装をすべきなのか、核保有すべきなのかという議論は、私はかなりまじめさが足らないと。どうせできるのはかなり後になるかもしれないということを前提にすると、やはり中国とどう対応するのかと考えてやるその核保有論議というのが当然必要だろうと思います。そこまで踏み込んだ議論がどのように闘わされるのかというのが一つの問題と。  それと二番目は、これ非常に簡単なことだと思いますけど、秘密裏には恐らくできない、それは今、武貞先生が言われたとおりです。これは、やっぱり日本は堂々と核保有国に、目指すんだと言ってやるというオプションしかないと私は思いますが、その際、アメリカの同意が得られるのか、支持が得られるのか。まあ同意までは必要ないですね、支持が得られるのか、国際社会の支持が得られるのかというのは、極めて大事な部分は日本の原子力平和利用の部分だと思います。少なくとも、日本が堂々と核保有の道を歩むのであれば、今の核拡散防止条約からは脱退するわけであります。非核保有国じゃなくなるわけですし、それを前提とした核の平和利用についての様々な国からの協力、とりわけ核保有国からの協力が果たして得られるかどうか分からなくなるという前提でやらなきゃいけない。  現在、日本の原子力発電は三五%ぐらいでしたか、たしか全体の電力の三五%ぐらいだったと思いますけれども、日本には天然ウランがないわけでありますから、そのまず天然ウランを外からきちっと供給してもらって手に入れなきゃいけないわけですし、あるいは使用済みの核燃料の再処理も今外に出しているような部分もありますし、そういうものも全部その前提で、前提でといいますか、日本核保有国になっても諸外国は日本の原子力の平和利用の部分について変わらぬ協力をするという話なら分かる。これが得られないままに核保有をするという、例えばその選択肢を国民の前に示したときに国民がどう考えるのかというのは、私は非常に大事な問題だろうというふうに思います。  電力面で相当な我々は耐乏を強いられるという話ですね。それでもいいんだと。というか、逆に言うと、それを忍んでまでも核武装しなければ我々は外の脅威に対抗できないんだという本当に話なのかどうかという突き詰めた議論が恐らく必要になるということだと思いますし、しかもそれは北朝鮮なのかという話でありまして、北朝鮮がそうなんだと言っているうちに、造っているうちにもう間に合わないという話です。  やっぱり中国なのかと。じゃ本気で中国とどこまでやる気なのかという話も議論しなきゃいけない。議論しなきゃいけないことはたくさん実はあると思いますし、そういう具体的な議論をしていただくことは、私は、結構といいますか、必要なことだろうというふうに思います。  ですが、私は個人的には日本は核武装をすべきではないと思っておりまして、それはいろんな問題で難し過ぎるということもありますし、大体バランスシートを考えたときに、とてもじゃないですけれどもマイナスの方が大き過ぎるという話であります。私は、外国の人たちと話していると、そういう話が一番説得力があるなと思います。損得勘定というのは一番大事でありまして、日本は損になることはやらないぞと言うと外国人は信じるというところがあるかなと思います。  非核三原則というのは極めて大事な原則ですけど、なかなか外国人の目から見るとよう分からぬみたいなところがあって、その原則があるから日本は核武装はしないのだというのは、外に向けての説得力という意味では、やっぱりちょっと不足しているところがあるかもしれないと。  あるいは、日本が唯一の被爆国であるということについても、被爆国である国が核武装してなぜいけないんだという疑問が国際社会の中にはたくさんあるわけで、むしろ、被爆国であってその悲惨な状況を知っているがゆえにそれを、更に再びその惨禍に見舞われないように自分が自ら核を持って武装するという方がまともではないかという考え方が国際社会の中に私は非常に、強いとまでは言いませんが、確かにあるわけですから。  やっぱり、被爆国であるということが日本が核武装をしないということの理由として国際社会に受け入れられるというのはなかなか難しい話だろうと思いますので、そういう議論が、やっぱり具体的な議論というのがすごく必要だろうというふうに思います。  その上で、ですが、じゃ当面どうするんだと、日本政策についてというと、基本的にはやはり日米安全保障体制日米同盟で日本の安全を守っているということであると。状況が随分変わったと。北朝鮮のミサイル能力についても、あるいは核能力についても大きな変化を今示し始めているかもしれないわけですし、いずれ北朝鮮の核ミサイルというものが我が国に向けられるということ自体も考えざるを得ないとすると、正にそのアメリカの、基本的に言うと核の傘というものが、今は核の傘できちっと守るべきという話になるんだろうと思いますが。  そうすると、非常に今の時点で一番必要なことはアメリカが明確なステートメントを出すことだろうと。これ、今アメリカの中でもいろいろそういう意見が出てきていることは御案内のとおりでありますが、すなわち、日本に対する攻撃はアメリカに対する攻撃とみなしてアメリカは必ず報復するという、そういうタイプのステートメントであります。  特に、日米という文脈でいいますならば、我々は、そろそろ改定の時期であろうと思いますが、日米防衛協力のガイドラインというのは、これは九七年にできていると。九七年のときはまだ正に九・一一の前ですから、国際的な範囲でのテロに対してどう対応するかという部分の問題が抜けているわけですし、さらに北朝鮮のミサイル能力であり、核能力でありというのも九七年の時点ですから抜けています。今全く二つ新しいものに我々は対処していると。  例えば、その九七年のガイドラインは、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動というところで、作戦構想の中のその他の脅威への対応というところに入っているのが、弾道ミサイルの攻撃に対応するためというのが入っています。しかし、弾道ミサイルの攻撃に対応するために米軍は何をするかというと、必要に応じて打撃力を有する部隊の使用を考慮するんだというんですね。必要に応じて打撃力を有する部隊の使用を考慮する、かなり弱い表現ですね。  ですから、これはその当時ならよかったのかもしれませんが、今のように北朝鮮の弾道ミサイルの能力が極めて明確になり、なおかつそれが将来、核ミサイルになるかもしれないというときならば、北朝鮮の正に弾道ミサイル、核ミサイルが日本に撃ち込まれて、その攻撃を受けたときはアメリカは必ず北朝鮮に対して報復する、その文言がここに入ってくることが重要であろうと。あるいは、日本に対して核が使用されるという可能性も、かつてはほとんどないものが今はかなり現実のものになってきているとするならば、正に日本に対する核攻撃はアメリカに対する核攻撃と同等とみなし、アメリカはその国、日本を攻撃した国に対して核をもってでも攻撃するという、そういうものが今一番必要なものだろうと私は思いますし、特に日米のガイドラインの改定はそういうことが必要になると思います。
  32. 田中直紀

  33. 大門実紀史

    大門実紀史君 今日はありがとうございます。  まだ私の後に質問したい方もおられるかも分かりませんので、是非簡潔にお答えいただければ有り難いと思います。  北朝鮮をどう見るかというときに、私は、国力全体を総合的に分析するということも重要かなと思っております。言葉とか言動とか外交姿勢だけですべて判断すると誤ってしまう場合もあるんではないかと思います。  そういう点で、経済の点で一つ、まず伊豆見参考人にお聞きしたいんですけれども、この間、北朝鮮の中で、中国ロシア協力もあって、経済の市場化といいますか自由化というようなものが一定進んでまいりました。国有企業の中に成果主義とかを取り入れて、ピョンヤンの発電量が二倍になったとか、数年で二倍になったとかいろいろ。ただ、全体としてはまだ分からないことが一杯あるわけですけれども、いずれにせよ、そういうことが進んできたと思います。  こういう経済の自由化というものが北朝鮮の国全体にとって私はプラスだと思うんですが、金正日の独裁体制にとってプラスなのかマイナスなのか見極めが付かないというふうに言われております。例えば、軍部は余り喜んでいなかったとか、いろいろ情報がありますけれども、まだ分かりませんが。  そうはいっても、経済成長は二%まで行ったわけですから、全体としてそういう経済の自由化というのは決して彼らにとって全部がマイナスではないと思うんですけれども、今回のようなミサイルとか核実験をやると当然マイナス要因になってくると思うんです。その辺はどういうふうに北朝鮮が、今の体制が判断しているのかということを、まず、お分かりでしたら。  加えて言うならば、中国ロシアは恐らく、仮に北朝鮮が核を保有しても、保有しても、しばらくするとやっぱり経済の自由化、市場化による北朝鮮の柔軟化といいますか液状化といいますか、そういう戦略で行くんではないかと思います。そういう点で日本はどういう対応をしていけばいいのか、御見解あればお伺いしたいと思います。  武貞参考人には大変刺激的な話をいただきました。  核戦略論というのはなかなか興味深いと思うんですけれども、その最終目標であります、北が主導して統一すると。まあ彼らが言うのは勝手なんですけれども、北朝鮮の今の国を維持するので精一杯の国力のところが本当にそんなことを、スローガンは別として、想定してそういう戦略を持っているのかどうかというのが素朴な疑問でございます。  先ほどの、北が統一のための戦争のシミュレーションも、物語としてはどきどきするんですけど、本当にそういうことになるのかなと。例えば、万に一つ、南を北が占領したとしますね、しますね。しかし、あの国力で南を支配するということが維持できるのか。例えば、CIAの統計によりますと、軍事費でいくと北朝鮮が五十億ドル、韓国が二百億ドルですか、しかもGDPはもう全然違うと。小が大をのむようなことがあるのかどうかですね。韓国の人もそんなにぼやっとしているわけじゃないと思いますし、余り、北主導の統一というのは余り想像力が働かないんですけれども、その辺のリアリティー、もう少しあれば教えてもらいたいと思います。
  34. 伊豆見元

    参考人(伊豆見元君) ありがとうございます。  経済改革あるいは自由化のお話が出ました。  二〇〇二年の七月から、北朝鮮は彼らなりのある種の改革に踏み出したということでありました。それがどのくらい実を結んでいるのかは、外からは判断ができない部分が相当あると思います。ただ、ピョンヤンだけ見ていれば、この四年間でかなり様相が良くなっている、明るくなっているということはあるかもしれませんが、その反面、自由化でありますから、かなり規律が緩むとか格差が広がるとか、そういうことも目撃されている。しかし、地方に至ってはよく分からないわけですし、地方が同じように経済的にある程度いい状況の方に向かってきているという話は特にございませんので、ピョンヤンだけが少し見える範囲ではあると。  では、そういうものが金正日体制にとってプラスかどうかといえば、ピョンヤンだけでも少し豊かにすることは、体制にとっては恐らくプラスだという意識がされているだろうと思います。  それともう一つ、経済の面で、経済的な改革あるいは変化の中で考えるべきは、この四年間のもう一つの変化というのは、中国や、とりわけ韓国に対する依存体質がどんどん増したということですね、経済的に。  要するに、四年間自分たちでも改革か何かの努力は確かにしてきたかもしれませんが、この四年間目立つのは、やっぱり韓国からもらう物がたくさん増えたと、ほとんど制度化されたと、貿易もどんどん増えていくと。同じことが中国に対しても、中国の場合には物が増えているかどうかは分かりませんけれども、維持はされている。明らかに中国からもらっている物に加えて韓国からもらう物がどんどん増えてきているという四年間ですね。それが北朝鮮の経済にいい影響を必ず与えているはずだと思います。  それ自体は、金正日政権にとって得なのかどうかといえば、やっぱり得なんじゃないでしょうか、それはもらってきている物ですから。自分で何か努力して変えて生み出したものじゃなくて、外からもらう物が増えたと。増えることによって少し経済の面でプラスがあるという部分は、政権にとって、体制にとって、政権にとってですかね、プラスという部分があるんだろうというふうに思います。  二番目の大門先生の御指摘ですが、中国ロシアは、やはり核兵器を本当に放棄させるというところに必死になるよりも安定の方を優先して、ある程度経済、とりわけ中国の場合だと経済協力をする可能性というのは私は依然としてあると思いますので、そうなると、我々はどうすればいいのかというのは難しいことでありますが、私は常々考えていることを言ってありまして、やっぱり中国が、ロシアは余り物出していませんから余り影響力がありませんが、中国韓国は明らかに影響力ある。それは物を出しているわけです。その出している物を減らすとか止めるとかすれば相当なインパクトがあると思います。しかし、彼らはそれを出したがらない。  一方、中国韓国が例えば日本に求めるのは、圧力を掛けるんじゃなくて、いろんな物を提供してくれと、物を出してくれと頼んでくるわけですよね。こちらはそれは嫌だと、我々は圧力だといって、全然ある意味では意見がかみ合わないわけですけれども、これを何とかある程度中間で収れんさせるとすれば、北朝鮮がともかく態度が変わるということを前提にして、日本もある程度の物を出すことはあり得ると。もちろん、変わるということが、変えるために出すんじゃなくて変わった後に出すと、変わったということを確認した後に物を出しますと。しかし、出すということについては明確にしますと、明確にコミットします。  じゃ、どうやったら変わるんだというときに、変えるためにそっちが圧力を使ってくださいと。まず、中国韓国が圧力を使って、北朝鮮が態度を変えればその後にいいことがありますよと。いいことがあって、物をもらえる部分は我々が出しますと。こういう、これは夢物語みたいなことを申し上げているんだろうと思いますけれども、こういう点で中国韓国との間のすり合わせをして、一つの政策、包括的な政策をつくると私は有効ではあるだろうと常々思ってはおります。  ありがとうございました。
  35. 武貞秀士

    参考人武貞秀士君) ありがとうございます。  北朝鮮が主導して統一というものは果たしてあるだろうか。北朝鮮があれだけ国力が弱っていて、韓国との格差も付いた、また、韓国国民も北に統一されるということを果たして受け入れられるだろうか、統一した後、韓国国民がそれに従うだろうか。もちろん、そういった問題が御指摘のとおり正にあるわけでありまして、私の先ほど申し上げたそういったシナリオというのが、必ずそうなるというよりは、朝鮮半島で有事という事態が起きるとすれば、可能性が一%とか〇・一%であるにしても、最も高いものがそのシナリオであるということであります。  また、小説のようなとおっしゃって、正に非常にそれが朝鮮半島北朝鮮の行動パターン、戦略を考えるときのキーワードでもあると思うんです。正に小説のような話なんですが、その小説のようなことを考えているのが金正日書記なんですよね。小説のようなことを考えながら、それを現実のものにするために気が付いたのが、どんな国力が弱っても大量破壊兵器でやってみせるとまで考えているんだろうと思います。言わば、これはマジックのようなもので、そう考えてみますと、金正日書記がマジシャンの引田天功さん大好きだというのも何か納得のいく話なんです。これ本当なんですね、私が言ってるんじゃない、本当のことなんです。  ですから、この小説のような世界を考えているのが金正日書記であり、かつ、どんなリスク、コストがあっても核兵器を造り続ける動機、理由というのがそこにある、そのシナリオにあるということを申し上げた次第なんですが、実際あるだろうかと。私は、条件次第ではあるだろうと思うんですね。  最近も幾つかスパイ事件が韓国で摘発されて、韓国の原子力発電所の写真を持っていたと。何でこんな写真撮ったんだと北朝鮮からのスパイに聞いたら、韓国の原子力発電所を爆破したら核兵器攻撃をしたのと同じぐらいの効果があるのでその写真を撮っていたと答えた。こういう捜査結果が新聞でも出ておりましたけれども、そういった韓国の中に埋め込まれた要員が、工作員がそういう活動をするといったこととか、あるいは化学兵器、生物兵器を使う。これは可能性は十分にあります。世界第三位の化学兵器の保有国なんですね、北朝鮮は。韓国はそこに注目をして、化学兵器対策の国民の民防衛訓練までしてきているわけですね。  こういったものを使い、そして最後はアメリカがくぎ付けになってしまう大量破壊兵器を持つことによってそのシナリオは可能だと、小説のようなことを現実のもののようにしようとしているのが正に金正日書記なんだというのが今日の私の申し上げたかったポイントでございます。
  36. 田中直紀

    会長田中直紀君) 予定の時間が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  武貞参考人及び伊豆見参考人におかれましては、長時間にわたり大変貴重な御意見を述べていただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。  両参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日の御礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十七分散会