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中川(昭)
委員 ぜひ、心身ともに、そして中身も外見も筋肉質で、そして体力をつけて頑張っていくということを
前提にして、中長期的な
日本社会に必要な歳出確保のための歳入というものを行っていくことを、我々としても、そういう
対応を与党として
議論をし、支援をしていきたいと思います。
さて、
総理は、
所信表明を私は何回も拝見して、ここで
所信表明についての感想をちょっと述べさせていただきたいんですが、キーワードが幾つかあって、例えば、「美しい国」という言葉が三回使われております。それから、「再チャレンジ」という単語は五回使われております。「
拉致」という言葉は五回使われております。また、「家庭」、「
家族」、「
地域」といった言葉。それから、「成長なくして財政再建なし」、「筋肉質」。消費税は「逃げず、逃げ込まず」という非常に力強い言葉があるわけでありますが、その中でイノベーションについてちょっと
総理のお
考えをお伺いしたいのであります。
イノベーションというと、一九三〇年代、アメリカが大不況になったときの、ハーバード大学のシュンペーター教授が提唱されたというか、シュンペーター教授が言われたことで非常に
世界的に有名になったわけであります。
シュンペーター教授は、もともとはオーストリアの大蔵
大臣をやられていて、つまり、第一次
世界大戦前後の大蔵
大臣ですから、オーストリア・ハンガリー帝国が崩壊するときの
財務大臣、大蔵
大臣であったわけでありまして、そこからアメリカに行って、ハーバード大学の教授になって、いろいろと大変な論文等をお出しになっていて、私自身は、このイノベーションがシュンペーター教授だぐらいのことしかわからないんですけれども。
改めてこのシュンペーター教授のイノベーションというのを見ますと、単なる技術革新を言っているんじゃないんですね。つまり、技術革新が
経済を活性化させる、逆に言うと、イノベーションが行き詰まって
経済が落ちつくとこれを不況と言うんだということであって、イノベーションというものは技術革新だけじゃなくて、新しい生産方式であるとか、あるいはまた販売先の開拓であるとか、仕入れ先の獲得であるとか、新しい
組織をつくることもこれはイノベーションだと。トータルとして
経済を活性化する、不安定状態にするとすら言っていますね。安定というのは停滞であって、不況なんだと。
これは言うまでもなく、あの当時はアメリカは大不況でありましたから、シュンペーターのその理論がいいのか、フィッシャーという
経済学者の財政を中心にした
議論がいいのかという大論争がありました。
経済財政諮問
会議のときにも、私がちょっと発言をいたしました。あのときはデフレ真っ最中、不況真っ最中のときでしたからそういう
議論をあえて申し上げたんですけれども、今は上り坂のときですから、上り坂においての技術革新というものを、私は、まさにシュンペーターという人の理論というものを、ある
意味では、技術革新というよりも広い
意味でイノベーション、
日本語で言ったら何と言ったらいいのかちょっと思いつかないんですけれども、まあ、革新ですね。
経済的な諸要素における革新と言った方がいいんでしょうか、そのイノベーションという言葉を
総理は何回もお使いになっております。
このシュンペーターという人が、学生時代私も授業で習って、うろ覚えでありますけれども、コンドラチェフの波という、長期の
経済波動というものをシュンペーターが理論づけをしたわけでありまして、
経済というのは五十年タームで景気の山と谷がある。それはまさにイノベーションと一体であるということで、シュンペーターは大体十八世紀の終わりぐらいから亡くなる二十世紀の半ばぐらいを分析しているわけでありますが、第一期がナポレオン戦争時代から十九世紀の半ばぐらい、このときは繊維産業と蒸気を中心にして産業革命が起こった、これが谷から山になり、また谷になるのに大体四、五十年というタームで、第一の波だというふうにシュンペーターは言っております。
次の第二の波は十九世紀の半ばから十九世紀の終わりぐらいですけれども、やはりこれは蒸気機関というエネルギーで、鉄鋼というものを生産し、それが鉄道になっていった。
鉄道になっていって最大の恩恵をこうむったといいましょうか、最大の利益を享受したのはアメリカですね。アメリカは、鉄道によってまさに物流というものが飛躍的に、大量に、迅速に行われて、あの広大な、しかも未開の西部を開拓する。あるいはまた、人口がどんどんふえていくという中で、大量に人や物を運ぶという鉄道によって、ある
意味では、そのとき以降今日までのアメリカのヘゲモニーのきっかけは、私は、蒸気機関、鉄道がスタートであった。もう一つは石油だったかもしれません。アメリカでスタンダード・オイルが、北東部で石油がとれたということで、例のロックフェラーさんのもあったかもしれませんが、これが第二の波だというふうにシュンペーターは言っております。
第三の波は、これは二十世紀の初めから多分二十世紀の半ばぐらいまでということで、電力、自動車、化学といった大量生産、これによって産業が引っ張っていく。これは要するに、何か新しいものができたというよりも、巨大な産業ができて、そして、産業構造だけではなくて一般の人々の生活まで変えていくということになる。車がだれでも手に入るようになる。あるいはまた、電気を使って家の照明から電気製品、テレビなんかも入るんだと思いますけれども、コンセントに差し込んでスイッチを入れればいろいろな電気製品が使える。これが大体二十世紀の半ばぐらいで終わる。
ここから先は私の推測なんですけれども、その理論が、シュンペーターによる、技術革新による世の中、産業、生活の劇的な変化のコンドラチェフの波が続いているとするならば、では、その次の第四の波は何だったんだろうか。つまり、五十年ということになると二十一世紀になるかならないかという時期だろうというふうに思いますけれども、これを振り返ってみますと、例えばITであるとか、それから、いろいろな、携帯電話なんというのは非常に貢献しているんだろうと思います。これはもう本当に、産業構造だけではなくて、
皆さん方が一人一台、二台持っている携帯電話によって、電話もできればテレビ等の動画も見られれば双方向の
情報交換もできる。これが第四の波だったんですけれども、ITバブルの崩壊と
関係するのかどうかわかりませんけれども、それも大体一巡してきた。
そうすると、ちょうど二〇〇一年の今ごろの時代から第五の波が今度始まるのではないか、これはあくまでも、何回も申し上げますが、シュンペーターの理論によるコンドラチェフの波をあえて
前提にしての推測になるわけでありますが。そうすると、これから始まるであろう第五の巨大かつ抜本的な産業構造、生活様式の変革に寄与するというか、なっていくだろう分野は何であろうかというと、例えばナノテクノロジーでありますとか、あるいはまた遺伝子工学でありますとか、あるいはまた次世代エネルギー、既に一部始まっておりますけれども、非化石燃料でありますとか、あるいはバイオ
関係のエネルギーであるとか、あるいは究極のエネルギーと言われております水素エネルギーであるとか、こういったもの。それから、新しい形の脱工業化、サービス化といったものも多分ITと連動してより生活等に大きく変化を与えていく、つまり便利になっていくということになるのかなというふうに思っております。
そういう
意味で、
総理は、技術革新、革新的な技術を中心にして
日本がある
意味では
世界の競争の中で勝ち抜いていこう、いい社会をつくって次の世代に渡していこうというのはわかるんですけれども、これは
世界経済史的に見ると、もっともっと大きな流れの中の第五番目の波であるということ、そういう
認識に立って、先ほど申し上げたように、単に技術の問題じゃないんだ、製品化するんだ、その製品化というのは、さっきも言ったように、販売であったり仕入れ先であったりあるいは
組織の改編である。広い分野、あえて言えば、ハードだけじゃなくてソフト、あるいは人間
関係も含めて抜本的な変革になっていくんだということだろうというふうに、このシュンペーター、コンドラチェフ理論でいくと、そういう第五の波の先頭に
日本が立とう、また立たなければならないということであります。
そこで、アメリカは、一九八〇年代に
日本が非常によくてアメリカが非常に悪くなった時代にヤング・レポートというのが出まして、これはもう
皆様御
承知だと思いますけれども、アメリカの戦略産業十業種の中で今アメリカが競争力を持っている分野は農業と航空機産業しかない、あとの重要八分野は全部
日本やヨーロッパ等に負けている、これじゃいかぬということで、ヤング・レポートというものを出したわけであります。これは随分、私が農林
大臣をやっておりました小渕
内閣のときに
政府としても勉強をした記憶があるわけでありますけれども、これによってレーガンはある程度の競争力の回復をしたわけでございます。
二〇〇四年になりますと、今度はパルミザーノ報告という、IBMのCEOの方が中心になって、競争力評議会がイノベート・アメリカというレポートを出したわけであります。つい二年ほど前のことであります。
これもやはり、国際的競争力を確保していくためにはアメリカが頑張らなければいけない
部分がいっぱいある。例えば、
国家的なイノベーションというものを
共通目標を持って教育を行っていくとか、あるいはまた次世代のイノベーターというものを育成していくとか、あるいはグローバルな競争の中でのアメリカの労働者の
皆さんをどうやって支援していくか、あるいはまた、先進的な分野に対するあるいは起業家に対する
投資、それからリスクを恐れない長期的な
投資、こういったものに積極的に支援をしていこうというのがパルミザーノ・レポートの要旨だというふうに理解をしております。
つまり、要は技術を、国際的な競争に勝つためにはいいものを売らなければいけない、価格も含めていいものを売らなければいけない、いいものというのは技術だ、技術というものを開発するのは人だ、販売も含めて人だ、
組織だという観点から、イノベーション・ジャパンとあえて言いますけれども、
総理が提唱されている、イノベーションということを大変強調されているのは、将来にわたっての、まさに第五の波が仮に始まっているとするならば、
日本はその中で勝ち抜いていくために、先端技術を
つくりましただけではなくて、それが実用化しましただけではなくて、それが
世界を席巻する。
一時の
日本のIT、あるいはまたテレビ、そして自動車、細かいものはいっぱいあるんでしょうけれども、
世界へ行っても
日本の自動車、最近テレビはどうも
韓国、
中国のテレビが大変元気になってきておりますし、自動車だっていつまでも大丈夫だということではないので、さっき言ったように、次世代エネルギーであるとかナノテクノロジーであるとか遺伝子工学、遺伝子工学は
総理が医療の最大のポイントにしております予防医学、これにも
関係してくるわけであります。
そういう
意味で、単なる技術革新としてのイノベーションではなくて、社会を変える、生活を変える、産業構造を変えるような、そういったものを、過去においてやってきているというアナロジーにおいて、今まさに第五の波が始まろうとしているという
前提に立った上で、
総理としてのイノベーションというものに対するお
考えをお聞かせいただきたいと思います。