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寺田政府参考人 この
忠実義務というのは、
先ほど申しましたように、
受託者に対する
信認、基本的にはこれは
受益者から観念的にそれを託されているということになるわけでございますけれ
ども、それを
中心とする
法律関係ですから、今
委員の御
指摘にありました、
忠実義務と言われる、
財産を
管理するに当たって
受託者が一番基本的に心得ていなきゃならないことについての
規定が
中心になることはもう申すまでもないわけであります。
実はこれまで、基本的に、
利益相反行為、
忠実義務と言われるものでございますけれ
ども、その中に一般的に
忠実義務を
定めた
規定はございませんでした。まず今回、それを基本的に大事な
要素だということで明文化いたしました。
次に、
利益相反の
行為は、現行の
信託法の中では、
受託者の
固有財産と
信託財産の間のやりとりを禁止する点だけが書かれていたわけでございますけれ
ども、今回それを広げまして、さまざまな面で、
競合行為も含めて、
受託者がしてはいけないことを決めたわけであります。
ただ、これが余り硬直的になりますと、
現代においては非常に不便なところがございます。これまでのように、例えば
自分の計算において行うことと
信託財産の
管理というものを全く切り離して
考えなきゃいけないということになりますと、例えばビルの
信託を受託した
受託者にとりましては、空き室ができたときに、たまたま借り手が全くいない、
自分ならば相場の家賃で借りられるのにということが、例えば
信託銀行なんかにもあり得るわけであります。そういうときに、それを全くしてはならない、あるいはもうぎりぎりやむを得ない場合でしかそれが許されないということになりますと、これは甚だ窮屈であります。
そういったことから、
利益相反行為、
忠実義務の一形態でありますけれ
ども、そういう
行為への制約というのを少し緩めるべきではないかという
考えに学界の方でも進まれましたし、
実務界の方でもそれを要望されたわけであります。
そこで、今回、
信託法案では、
受託者による
利益相反行為を原則的にはもちろん禁止してはおりますけれ
ども、
信託行為の
定めがある場合や重要な事実の
開示を受けて
受益者が承認した場合などにその
例外を認めることによって、柔軟化したわけであります。
ただ、おっしゃるとおり、これに歯どめがないということになりますと非常に困るわけでありまして、その
一つは、今も申しましたように、では、
受益者がオーケーと言えばそれでいいかということはいろいろ問題が出てくるわけでございますので、
規定の中に、既に、重要な事実の
開示というのを必ず
受託者側からしなきゃいけないということを決めているわけでございます。
したがいまして、そこで
同意というものに対する
一つの
前提条件を課しているというように御理解をいただきたいところでございます。その手続的な
前提といたしましては、重要な事実というものを当然通知するということになるわけでございます。
さらに今度は、実際に、いわば
事後チェックの形になるわけでございますけれ
ども、
利益相反行為の禁止の違反に対してどういう措置がとれるかということも非常に大きい
ポイントでございます。それは今まで必ずしも明確になっておりませんでした。例えば、
受託者が
利益相反行為の禁止に違反して
自分のポケットに
利益を得てしまうということが起こったときに、その
利益をどうするかということでございます。
今度の
法律では、その際に、その
行為によって
受託者が得た
利益は
信託財産に生じた損害と推定することによって、これを
信託財産に取り戻させるということができるようにいたしております。
これらの
手当てによって、やや柔軟化はいたしましたが、しかし十分に歯どめはかかっているものというように
考えているところでございます。