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枝野委員 民主党の
枝野でございます。
今回の
海外調査に参加をさせていただきまして、
中山委員長のおさばき、そして事務局あるいは在外公館の皆さんの御尽力によりまして、先ほど来同行された諸先輩もおっしゃっておられますと
おり、大変充実した
調査をすることができました。まずは、この場をかりて
委員長を初め関係者の皆さんに御礼を申し上げます。
私からも、今、お三方が御
報告をされたのに付随をして、感想、
印象を申し上げたいというふうに思って
おります。
私は、特に
各国における
合意形成の
プロセスというものに着目をして今回
調査をいたしました。
まず、
ポーランドにおきましては、
円卓会議という方法を使いまして、いわゆる旧
共産党の勢力、これに対して対抗した労働組合、連帯をベースとする勢力、そして、この国は、前の
ローマ法王も
ポーランドの御出身でいらっしゃいますが、カソリックの大変強い国でございまして、カソリック勢力、この三者がこの
円卓会議の場で
合意形成のために大変真摯な努力を積み重ねた。その
プロセス、詳細というものは、特に大使公邸に当時の大物の
政治家の皆さんがお集まりをいただいて、
懇談というよりも懇親の場で
意見を聞かせていただきまして、それだけにかなり本音ベースのところを聞かせていただきました。詳細はこの
報告書にゆだねますけれ
ども、それぞれの立場で大変な努力をされた。特に、交渉の当事者である皆さんとそれぞれの勢力、交渉の当事者でなければそれだけ
自分たちの主張を通そうという勢力をそれぞれのグループ内に抱えている中で、それでも三者による
合意形成の上で進めていかなければならないという使命感のもとで進めてこられたということを、強く
印象深く受けとめさせていただきました。
また、特にこの
ポーランドにおいて
印象深かったことであり、これは我々にとっても参考になるべきではないかと思って
おりますが、御承知のと
おり、いわゆる社会主義圏から
民主化を進めてくる
プロセスで、この場合の
憲法改正は
改正というよりも新
憲法制定に等しい
作業であったと思いますが、
合意形成が比較的容易ないわゆる統治機構に関する分野を、小
憲法と事務局の方で訳してくれて
おりますが、まずこの部分についての
合意形成をして、こちらを先行させて進めていく。その上で、ここはカソリックの勢力が強いということもあるんでしょう、宗教問題を初めとして人権分野のところについてはなかなか
合意形成が進まなかったので、この部分は後に回して二段階で新
憲法を
制定する、こうした
プロセスをとっておられます。
結果的に、もちろん実際の
国民投票あるいは
選挙の際にはさまざまな政治的
理由で
政党間での対立が見られたりしましたが、結果的に三者とも納得した円満な形で新しい
憲法がスタートし、施行されている、こうした現状につながっているというふうに理解をいたしました。この後の
イタリアでの
調査などにおきましても、まずは
合意形成の容易なところから進めていくべきであるという
指摘を何人もの方から言われて
おりますが、まさにこうした知恵が多分これから私たちの国の
憲法議論において大変重要な意味を持つのではないか、こんなふうに思っている次第であります。
イタリアにおきましては、これまた先ほど来御
報告ございますと
おり、ことしの春に、これはいわゆる政権を争う総
選挙との絡みもあって、前の
与党が進めていた
憲法改正が
国民投票によって否決をされるという事態を受けての
調査でございました。
委員長を初め御
報告ございましたと
おり、それぞれの
与野党の事実上のこの
憲法問題の当事者、責任者の皆さんからは、そうしたことを乗り越えて
合意形成に向けて努力をするんだ、あるいはし始めているんだという大変意欲的な
お話もございましたし、また、それについて
内容的にはかなりの部分で
合意ができているので、先ほど来
お話ししていますと
おり、
合意のしやすいところから、できるところから一個一個進めていけば、
合意形成は可能ではあるという
印象を受けました。
ただ、同時にでございますが、当事者ではないフサーロ・
フィレンツェ大学教授が、この後に私
どもお話を伺いまして、この
報告書では二百十七ページにございますが、
合意形成が今後
与野党間で可能かと、かつて
与党であった現在
野党の
中道右派が提起したものを
中道左派が
反対して
国民投票で否決をした、今度はその
中道左派が
与党の立場で
中道右派に呼びかけて
合意形成して
憲法改正を進めようとしている、本当にそんなことが政治的に可能かというような質問を投げかけましたら、るるの
説明の上で、一番
最後に、要するに、
中道右派は、
憲法改正の
内容について
中道左派との
合意があるのはわかっているわけであるが、それで
合意して今の政権を支えていくよりは、今の政権を一刻も早く窮地に追い込む形で総
選挙に持ち込みたい、それが関心事項になってくるのではないかと思うと。
イタリアの政治、政局に大変詳しい
フサーロ教授のこの
発言というのは、かなり重く受けとめなければいけない。
一つには、現在は
野党の立場である私
どもの立場としても、こうしたことを我々が考えてはいけない。と同時に、こういう事態になっていることの原因には、
中道右派が、みずからが
与党多数派でありましたときに、かなり強引なやり方で、
中道左派との
合意形成よりもみずからの案をごり押しするという
プロセスが
前提にあったわけでありまして、こういったことがあると、この
フサーロ教授の見るように、なかなか
合意形成が進まなくなって、いろいろな意味で暗礁に乗り上げるというような事態であろうと思います。
さらに、それを乗り越えてということで両サイドの当事者の方は努力をされていることに期待をしたいと思っていますが、私たちの国が同じような状況にならないためには、この間、例えばビオランテ
憲法委員長の、百九十二ページの
発言にございますが、
合意は徐々に形成されていくものである、
与党でつくったものを
野党に押しつける、あるいは
野党でつくったものを
与党に押しつける、そのような強制的なものであってはならないというふうにおっしゃって
おりますが、こうしたことにそれぞれが留意をしていかなければ、
我が国の
憲法議論というものは大変不幸な状況になるのではないか。改めてこの点について真摯に取り組まなければならないという
認識をして帰ってきたところでございます。
デンマークに関しましては、これは今
船田先生の
お話にもございましたが、
国会の多数が推進をしている
案件であっても、
国民投票では時としてそれを否決することがある。
デンマークの
EU関連の場合については、おおむね半分ぐらいは
議会の圧倒的多数の意思に反して
国民はノーという
判断を下しています。
昨年のフランスなどのEU
憲法条約の
国民投票などの結果も踏まえるならば、これは私
どもがそれぞれにかなり強く意識をして今後の
議論を進めていかなければならない。
国会の中で
議論が煮詰まり、
国会の中で双方の理解が深まっていたとしても、それが本当に
国民的なものとなっているのかどうかということの検証を常に進めながら我々は
議論を進めていかなければならないだろうと思っています。
この
委員会における今後の進め方にもかかわりますが、例えば、一般的に参考人として、あるいは公述人として公聴会などで
意見をお伺いするだけではなくて、これは
理事会等でこれから知恵を出し合っていかなければいけないというふうに思っていますが、
国民投票制度について御
意見、見識を持っていらっしゃる方から、私
どもを初めとする、例えば提案者などに疑問点などを逆に問いただしていただくとか、そういった双方向でのコミュニケーションをとりながら、
国民全体とこの
議会の中における
認識の深まりというものの足並みをそろえていく
必要性というものを強く感じた次第であります。
また、この
デンマークの
サイデンファーデン総
編集長の
お話には多々示唆に富むことがございましたが、このうち
テレビ等での各
賛成派、
反対派への
キャンペーンの時間配分について、私
どももさきの
国会に提出してあります提案では、
議会における議席配分というものをベースにして時間配分すべきではないかと提案をしているところではありますが、この総
編集長との
議論の中で、例えばそういう形で、
議会の多数が
賛成しているから提案しているわけですから、
反対派に配分される時間が少ないとなると、その少ないこと
自体をもってこれ全体が不公平であるという
キャンペーンがなされ、それが
国民に対してかなりの影響力を持つ、そういう可能性がある、
報告書の二百七十八ページにございますが、こうした趣旨の御
発言をいただいて
おります。これについては我々もかなり真摯に受けとめなければいけないだろうというふうに思って
おりまして、これは今後のことでありますが、場合によっては、私
ども自身、現在提案している中身を見直さなければいけないのかな、
国民から見て公平な
キャンペーンがなされているんだという、まず公平らしさが見えなければいけないということを考えると、むしろ
賛否それぞれに対等な時間を配分するということの方が公平らしく
国民の皆さんから受けとめられるのではないかということを感じてまいりました。
以上、ポイントを絞らせていただいて今回の
印象を御
報告させていただきました。ありがとうございました。