○佐竹敬久君
秋田市長の佐竹でございます。
意見陳述の
機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私からは、分権の本論に入ります前に、実は、
地方分権というのは単に行政制度だけの問題ではなくて、さまざまなファクターを、いわゆる三次元的に物を
考えていかないとなかなかできないのではないのか、そういうことで、若干前置きをお話し申し上げまして、その後、本筋に入らせていただきます。
まず、
秋田市でございます。
秋田市は明治二十二年に市制を施行しております。東北では最初の市制施行でございます。
平成九年には中核市となっておりまして、十七年には旧河辺町、旧雄和町と合併いたしまして、ほぼ県人口の三分の一ということになっております。旧雄和町というのは飛行場のあるところでございます。
ちょうど紅葉シーズンも終わりまして、あと一カ月足らずで雪の季節を迎えるわけでございますが、実は、今冬といいますか、昨年の暮れからことしのお正月ちょっとにかけまして、
秋田市の歴史上最大の積雪であります。実は一年間に降った雪はそう大したことはございませんけれども、これは多分、異常気象であろうかと思います。四百年前までさかのぼって、藩政時代には特に気象台はないわけでありますけれども、藩の日誌がございます。そういうものを含めて調べましても、四百年来初めて。というのは、一年分の雪がたった十日で降ったということであります。
これで我々は大変苦労いたしまして、通常の年でありますと五、六億円ぐらいの除排雪経費で済みましたのが、三十四、五億プラスその後のさまざまな復旧のために約四十億という金がかかりまして、市の金庫が空っぽになった。実は、この状態を東京に伝えることが私ども大変苦労いたしました。
雪は非常にきれいなものというふうにとらえられておりますけれども、一番大変だったのが雪を捨てる場所でございます。田んぼに捨てると、その田んぼは買い取らなきゃならないんです。雪というのは大量の泥を含みます。単に河川に捨てますと、河川の汚染の原因にもなります。当然、道路の除雪をする際、グレーダー、ブルドーザーでかきますとアスファルトも一緒についてくるということで、雪は、私ども緊急措置として小学校のグラウンド、広場、公園に捨てましたけれども、全部もう一回土を入れかえなきゃならない。これを東京の方にお伝えしますと、きれいな水になるんだから川か田んぼに捨てたらというので、大変苦労いたしました。
ただ、
秋田市は通常はこういうふうな雪は余り少ないのでありますけれども、これほど最近の気象がおかしくなっている。これは私は非常に重要なことではなかろうかと思います。そしてまた、同じ
秋田県内でも全く雪が大量に降るところと余り降らないところ、同じ
秋田県内でも多様な気象状況だということでございます。
もう一つは、格差の問題であります。
今、格差の是正ということが非常に叫ばれております。実は、これを産業経済面からちょっとお話を申し上げたいと存じますが、かつて日本の、これは結果論としていいか悪いかは別にいたしまして、産業立地について一定の哲学を持ってやっておりました。首都圏の光化学スモッグ等の要因等もありまして、
地方への産業分散、
地方の産業立地を支援する、あるいは
地方への産業立地にインセンティブを与えるようなさまざまな施策があったわけでありますが、これは今、国としては非常に薄まっております。
そういう中で、今、バブル崩壊後のいわゆる経済、景気の立ち直りという中で相当な投資が始まりつつありますが、東アジアも含めて、先端産業あるいは新しい将来を見据えた産業
政策には国が相当程度の投資的な
政策をとっておりますが、実はこの分をほとんど自治体が肩がわりしているのではないのか。国による産業
政策といいますか立地
政策がほとんどない状態であります。そういう中で、当然、例えば、来る企業、企業誘致をする際にも、今はそういうものがないわけでありますので、直接そのインセンティブを与えるいろいろなものについて自治体が求められます。これは、端的に言いますと現ナマであります。
そうしますと、旧来はいわゆる大きな装置型産業でありましたので首都圏近郊ではなかなか立地ができなかったんですけれども、最近の産業形態はそう多くの土地が要りません。そんなに多くの水も使いません。そうしますと、首都圏から余り遠くない非常に富裕な
団体が、我々からしますととてもとてもできないような金額を提示して、そちらの方で新増設が始まる。まさに自治体の格差というものは、産業と結びつきまして、ますます格差の固定というものがあるわけであります。それがいいのか悪いのかということは別ですけれども。
よく
考えてみますと、これの象徴が東京であります。東京はもうヒートアイランド化しまして、夏は四十度になります。それに、片や京都議定書の遵守ということで、あれは、まさにエネルギーの非常に多消費型の
地域を一方でつくっておいて、これは環境もくそもあったものじゃ、言葉が悪くて済みません、ないわけであります。
まさに国家としての環境あるいは
地域戦略、国家戦略、産業の面においては非常に薄くなっているのではないのか。このまま任せておきますと、全く地震が来たら日本は全部壊滅になります。そういうことで、私ども、何とか行政
改革を進めながら
地方の産業
政策について今一生懸命頑張っておるわけでございますが、この大きな隘路があるわけでございます。
そういう中で、私ども、地場産業の振興というものと企業誘致というものの二本立てでやっておりますが、いずれにいたしましても、この産業の偏在というものは、将来、いわゆる
地方分権とも絡んでかなり難しい問題になるということを御理解いただきたいと思います。
次に、行革の問題。
自治体でございますが、私ども
秋田市におきましては、ガス事業とバス交通事業がございました。これが、
平成七年度時点、十年前は、市職員の一割に相当する三百三十人余りの公営企業職員を持っていましたけれども、昨年までに全部民営化しております。これによりまして、その
関係の職員、まだ残っている職員は一般の方で若干引き取っておりますけれども、両事業に係る職員はゼロ。そしてまた、年間で約十億円の繰り出し金について削減をしておるわけでございます。
また、十七年に合併をいたしまして、一市二町の職員が約三千六百人程度でございましたが、これは、三百数十人ふえたわけでありますが、少なくともこの十年間に、いろいろ
総務省の目標値、六・何%とかいろいろありますけれども、それを上回る一〇%以上の削減という形で今動いておるわけであります。
いずれにいたしましても、
行財政改革については、
議会とも議論を重ねながら、やはり相当自治体はスピードアップしてやっているということについて御理解をいただきたいと思います。
そしてまた、この後本論でございますが、
地方分権の実情でございます。
今知事もお話し申し上げましたけれども、
三位一体の
改革ということはございましたが、これはいまだ半ばといいますか、入り口に立ったという時点でございます。この後のやはり
地方分権改革第二期
改革ということでより実態に近いものに、理想に近いものにしていかなければ、いずれにいたしましても、全体の効率性というものについては近づくというのは非常に時間がかかるのではなかろうか、そういう感じがいたしております。特に、これも知事がお話し申し上げております、いわゆる重なる部分、重複する部分、これが我々自治体から見ますとはっきり見えるわけであります。
実は、国、
都道府県、
市町村で重なるところの中で、
都道府県と
市町村での重なりについては、これは非常に私ども、県と
市町村はもう毎日のごとくやりとりしながら、この整合性といいますか、整理にかかっておりますけれども、実は、国と
都道府県、あるいは国と中核市、もう一つは国の内部であります。国の内部の二重行政か
三重行政というところが、我々実際に感ずるのはそこが非常に大きいわけでございます。
ですから、国、
都道府県、
市町村というこの
団体種別ごとのほかに、やはり、国の中の二重行政、
三重行政について、これを切り込まないことには全体としての効率性あるいは
行財政改革、全部を含めての公の
行財政改革というのはかなり難しいのではなかろうか、そういうことを感ずる次第であります。
次に、
財政の問題であります。
いずれにいたしましても、
三位一体の
改革の中で、
税源移譲ということで、私ども、今度は
地方税の部分が、所得税が減って
地方税がふえるわけであります。より
住民に対して説明
責任を果たさなければなりませんし、より透明性の高い予算執行をしなければならないわけでありますが、一方で、やはり
税財源の偏在というのは、これはいかんともしがたいところがございます。実際、
秋田市については、一般会計のうち市税収入が大体四十数%ですけれども、やはり
秋田県全体になりますと、一〇%も行かない。これをどうにかしようといったって、これはなかなか難しい。これは日本全体の、国土の形成の中の自然発生的にできた面もございます。
そういう意味では、やはり
地方交付税の機能というものは、いずれいろいろな議論はありますけれども、この後も交付税制度というものは続くでありましょうし、私どもは、
地方の固有の財源として
地方共有税という形でということを
地方六
団体で提言しておるわけでございます。
そういう中で、骨太の方針二〇〇六では、法定率の堅持ということがこの夏に言われましたけれども、直ちに今、また景気がよ過ぎるからその分をカットというような話が載っておりますけれども、いずれにいたしましても、さまざまな形で国と自治体が歩調を合わせながら
財政再建というのはわかるわけであります。それはそのとおりでありますが、分権あるいは
三位一体の
改革といわゆる
財政の
地方へのしわ寄せ、こういう形については、私どもはなかなか納得しがたいというのが現実の状況でございます。
そういう中で、今回のこの
法案でございますが、
法案の中身一つ一つについてはさまざまな議論があるところでございますが、私どもとしては、まずは第一歩としてこの
法案を成立させていただきまして、問題は成立した後であります。それらの一つ一つの条文は大変いい理念でありますが、どうやってこれをやっていくのか。これは非常に難しいのでありますが、
法案をつくった後の道筋というのは、私ども
地方団体においてもそれぞれ今研究をしておりますし、また、利害のぶつかり合いだけになってはならないわけでありますので、国と
地方がお互いに
意見を尊重し合いながら、お互いに痛みを共有しながら、どうやってこれを
改革していくか、そういうことではなかろうかと思います。
いずれにいたしましても、
地方から見ますと、なかなか国全体を統括したビジョンというものが見えてこない。
都道府県、
市町村は、大体企画というところがございまして、企画ですべての利害調整を行って一本でやりますが、日本国をどうするのかというところが我々としてはなかなか見えにくいということ。やはり、一方で
地方分権という中での
地方の自立、
地方の
責任の重さを自覚しながら
住民との協働で自治行政をやっていく。もう一方で、やはり国家としてどうすべきか、どういう形でこれを運営すべきか。まさにそこのところがなかなか私どもも見出せないというのが実態であります。
そういうことで、
地方分権というのは何も
地方だけの問題ではございませんで、国家運営にかかわる非常に基本的な問題でありますので、この
法案の成立の暁には、そういうことでより大きな取り組みをしていただければ幸いでございます。
もう一つは、
地方分権改革推進委員会への
意見ということではございますが、いわゆる国と
地方の
協議の場というものについて
地方六
団体で
要望してまいったものでありますが、こういうことでこれが
設置されるというような形になっておりますけれども、これについては大変期待をいたしておるわけでございまして、これも、一つ一つの大きな事案のみならず、やはり定期的な形で、国と
地方との
意見の交換の場、さまざまな調整の場とするような形にすべきではないのか。そういうことで、
地方自治体の
関係者からの
委員も任命されるというような流れでございますので、
地方の声の反映についても十分御配慮をいただきたいものと思っています。
最後に、時間でございますので、結びでございます。
私ども、みずからの
責任というものを、
住民と非常に近いところにおりますので、常々、
住民の理解なしには物を進めることができないわけでございます。そういう中で、少子高齢社会、産業の偏在、異常気象の問題等々、さまざまなこれを抱えながら苦悩しておるわけでございますが、何とぞそのような点についても、繰り返しになりますけれども、この
地方分権を大きなマトリックスとして
考えて、いろいろな方面からの議論を今後国政の場においてもしていただくことを期待いたすものであります。
以上でございます。ありがとうございます。