○長島(昭)
委員 民主党の長島昭久です。
きょうは、
麻生外務大臣の二大外交演説について、限られた時間なんですけれ
ども、少し突っ込んでお話を伺いたいというふうに思います。
一つは、ちょうど一年前になりますが、一年前の
東アジア・サミットの直前、恐らく前日だったと思いますけれ
ども、
日本記者クラブで講演をされた、今手元にあるんですけれ
ども、「わ
たくしのアジア戦略
日本はアジアの実践的先駆者、ソートリーダーたるべし」という演説であります。
それからもう一本は、ちょうど先月の末、これは国際問題研究所で行った「「自由と繁栄の弧」をつくる」、きょう皆さんのお手元に、そのチャートといいますか図を
外務省のホームページからダウンロードしてお配りをさせていただきました。
私は、非常に新鮮さを感じました。
一つは、やはり、官僚の作文ではなくて、まさに政治家らしいビジョンを示されたな、こういうふうに思っています。
私、ことしの一月に代表質問をさせていただいたときに、小泉総理に対して、福田ドクトリン以来のアジアのドクトリン、小泉ドクトリンみたいなものを打ち立てたらどうですか、こう質問させていただきましたが、答えは全くありませんでした。
恐らく、今回の二つのアジアに対する外交演説というのは、言ってみれば
麻生ドクトリンというか、
外務大臣も中で引用されておりますけれ
ども、七七年の福田ドクトリンをもう一度思い起こして、そして、さらにそれに新しい
意味づけを加える、そういう印象を私は持ちましたし、一番私が気に入ったのは、受動的でないということですね。
引用しますと、情勢の推移にただ受動的に対していくだけではだめなんだ、こういうことで、私も常々、
日本の外交というのはパッシブというか、
状況リアクティブというか、
状況に反応していくような、まあ、六カ国
協議というか、
北朝鮮の問題
一つとってもそうですけれ
ども、この演説の目指すところは、恐らくプロアクティブな外交を目指していきたい、こういうことなんだと思います。
最初、いい点だけ言います、後でクリティカルにやりたいと思いますので。
それと、もう
一つは、
麻生大臣らしい、非常にポジティブなメッセージ、これは恐らく聴衆として聞いていたら何か元気づけられるような、そんなところだったというふうに拝察しますが、そういう
意味では、本当に前向きなメッセージが出ているなという感じを持ちました。
それからもう
一つは、これも
外務省批判になってしまうのかもしれませんが、これまではどちらかというと場当たり的な、その場その場での外交のビジョンだったというふうに思うんですけれ
ども、それに対して、ある一定の方向で
意味づけを与えるということになった。
例えば、九七年に橋本総理がユーラシア外交というのを展開して、それで中央アジアを非常に支援を始めたわけですけれ
ども、今十年たって、ユーラシア外交という言葉を覚えている方はほとんどいらっしゃらないんじゃないかと思うんですね。しかし、今回の
麻生ビジョンの中では、そういうものも評価しつつ、継承しつつ、そこに一定の役割というか
意味をつけ加えた、こういうことなんだろうと思うんですね。
それからもう一点は、
中国との
関係において再定義をした。これは実は、私、一番、読んでいて、私はその聴衆として参加することはできませんでしたが、読むだけなんですけれ
ども、これは非常に感銘を受けました。
というのは、
中国が大きくなって、恐ろしい国だ、さっきも少しお話がありましたけれ
ども、
日本にとって脅威だ、こういう
議論、私も、ある
意味で、あの軍事的な拡張というのは脅威だと思いますけれ
ども、それを、我が
日本が待ち望んでいた事態だ、こういうことを言って、どうしてもライバル
関係、これから多分、二十年、三十年、五十年、百年、どちらかの経済がポシャらない限りはずっとライバルでいくんだろうと思うんですけれ
ども、そのライバル
関係に対して、足を引っ張り合うライバル
関係ではなくて、お互い競争して高め合うライバル
関係だ、そういう定義づけを与えて、しかも、
日本人としてすかっとしたのは、経済による競争だけじゃなくて、望むらくは、今後、より広く、政治、社会、こういう面にも、トータルな面で競争していこう、そういう呼びかけを
中国に行ったという点で、私は、ある
意味、画期的な外交ビジョンだったな、こう思うのであります。
そこで、そのことを申し上げた前提で、幾つかお話を伺いたいのでありますが、
一つは、この二つのメッセージの戦略的な
意味というのは何かということなんですね。
というのは、これをまた読んでみると、もちろん、例えば最近の「「自由と繁栄の弧」をつくる」というところには、「価値の外交」、民主主義、自由、
人権、法の支配、そして市場経済、こういう普遍的価値を外交の主眼としていくんだという話、それから、この地図にもあるように、こういうユーラシア大陸の外周、外縁の
部分にいろいろな
日本としての投資を行っていって安定化を図っていく、こういう自由と繁栄の弧をつくるんだという姿勢はよくわかるのでありますが、これをやっていくことによって、例えば、わかりやすく申し上げますと、
ロシアと
中国というのがユーラシアの、ハートランドと地政学では言いますけれ
ども、ハートランドであるこの二つの国に対して、この
麻生ビジョンというものが成功していくと、どういう戦略的な
意味が出てくるのかということ、ねらいと、ぜひ、その背景になるような情勢分析、最初に伺いたいと思います。