○内藤正光君
民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました
住民基本台帳法の
改正案について
質問をいたします。
今回の
法改正は、昨年の三月に名古屋で起こった刑事
事件、すなわち
住民基本台帳の閲覧
制度を悪用して母子家庭を探し出し、強制わいせつに及んだ
事件が契機となったことは明らかです。ここで私が問題にしたいのは、なぜこんなにも
法改正が遅れてしまったのかという点です。
私は、決して結果論を言っているのではありません。二〇〇三年の五月、個人
情報保護法の審議の際、私は当時の片山総務大臣と
住民基本台帳の原則公開の是非について議論をいたしました。プライバシー意識が高まりつつある昨今、既に
社会問題化し始めたストーカー
事件にも触れながら、原則公開
制度の
問題点を問うたところ、片山大臣からは、大きな時代や
状況の変化の中でもう一遍見直して考えた方がいいと思います、あるいは、まず
状況をしっかりと
把握してその上で
関係の皆さんの意見を聞いて
対応してまいりますと、積極的な御
答弁をいただきました。
しかるに、見直しに向けた議論はその後一向に始まらず、
住民基本台帳の閲覧
制度等のあり方に関する
検討会が立ち上げられたのは昨年の四月、つまり名古屋での
事件の後だったのです。大きな
事件が起こらなければ、行政は動かないのでしょうか。正に行政の不作為が問われるべき問題なのです。
以前から原則公開の見直しを求める声があったにもかかわらず、個人
情報保護法の審議から遅れること三年、名古屋の
事件発生からも一年、
法案提出がかくも遅れた
理由は
一体何なのか、竹中総務大臣に
お尋ねをいたします。
ちなみに、我々
民主党は、
自治体関係者や
NPO等から幅広く意見を集め、昨年六月には既に住基台帳大量閲覧制限
法案を国会に
提出をいたしました。
内容は、台帳閲覧を国、
地方公共団体、公益上特に必要と認められるものに制限するものです。
ところが、
政府・与党は、国民の安心や安全よりもまず自分たちのメンツを最優先させ、我々
民主党案を審議することもなく葬り去ったのです。このような
政府・与党の姿勢に強く抗議をしておきます。
今回の
法改正は、原則公開を改め、公益性の高いと認められるものだけ閲覧を認めるという
内容です。そして、
改正の最大のポイントが正にこの公益性の判断にあります。判断のいかんによっては、今回の
法改正の意義が半減してしまうおそれすら生じてきます。
調査研究の公益性に関する
基準については総務大臣が定めることになっていて、その一つとして、調査結果が広く公表され、その成果が
社会に還元されていることが考えられているようです。しかし、その
基準はかなりあいまいで、判断にばらつきが出るであろうことが容易に想像されます。
そこで、竹中大臣に
お尋ねをいたします。
公益性の
基準についてどこまで具体的に明示するつもりなのか、公益性の高い調査研究とは具体的にどのようなものを想定をしているのか。また、各
自治体間で生じるであろう判断のばらつきについて
政府としてどのように対処していくお考えなのか、御
答弁を願います。
また、原則公開の
現行制度の下でも、
自治体によっては商用
目的の閲覧は一切認めないなど、いち早く
条例によって強い閲覧制限を行ってきました。今回の
法改正を踏まえ、
地方自治体にどの程度の裁量を許容するのか、総務大臣に
お尋ねをいたします。
民主党が昨年、
法案作成の際に、ある
自治体の
担当者に聞いたところ、住基の閲覧申請者三百件のうち、十一件が実際には存在しなかったことが後日判明したそうです。本
改正案では、閲覧手続についても様々な
規定を設け、本人確認も厳格化するとうたっていますが、具体的にどのように
対応するお考えなのか、伺います。
次に、本
法案の第十二条で
規定されている
住民票の写し等の交付について伺います。
今回の
法改正で台帳の閲覧については厳しい規制が掛けられる一方で、
住民票の写しに関する原則公開
制度については一切見直しが行われてはおりません。
住民票は、
住民基本台帳と違って大量閲覧はできないものの、より多くの個人
情報を含み、閲覧に当たっては被閲覧者が能動的に指定されるなど、個人
情報保護の観点からいえば台帳の閲覧以上に保護されるべきものなのです。
このように見てくると、今回の
法改正は決して個人
情報保護という観点からのものではなく、名古屋で起こった
事件に対する単なる付け焼き刃的な
対応であると言わざるを得ません。
今回の
法改正において、なぜ
住民票の写しの原則公開について何一つ見直さなかったのか。
情報の対称性
確保の観点から、少なくとも閲覧の事実及び閲覧者に関する
情報を被閲覧者にはがきで知らせる程度の
対応を取るべきではないのか、竹中大臣にお伺いをいたします。
続いて、個人
情報保護法については、過剰反応など現場で多くの混乱を生じているようですが、その運用や解釈について具体的に幾つか
質問をいたします。
昨年の四月二十五日、JR福知山線で脱線事故が発生しましたが、その際、負傷者が運び込まれた病院側が、安否を尋ねてくる被害者の家族にすら個人
情報保護法を
理由に氏名開示を拒否する一件がございました。これは、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないとする第三者提供の制限に過剰反応したものと推察されます。しかし、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって本人の同意を得ることが困難であるときはその例外としております。
JR福知山線事故のような場合は、明らかにその例外
規定に該当するのではないのでしょうか。厚生労働大臣に確認をいたします。
先月の二十四日、千葉県議会から参議院
議長にあてて、ある意見書が
提出されました。その
内容は、県の
福祉部局等が保有する独り暮らしの
高齢者、重度
障害者などの
情報を防災部局等が使用することは
目的外使用に当たるため、多くの
自治体でその
情報を共有できずにいることから、個人
情報保護法の
改正を強く要望するというものです。
しかし、これは先ほどの例外
規定に相当するものである以前に、そもそも
地方公共団体は個人
情報保護法の定める個人
情報取扱
事業者には含まれず、
自治体の個人
情報保護は
条例で
規定されることになっております。つまり、意見書の事案については、各
自治体が独自に法制上の
措置をとって柔軟に
対応できるのではないでしょうか。総務大臣に確認をいたします。
二〇〇四年一年間に犯罪等で懲戒免職処分を受けた各省庁の
国家公務員は三十四名おり、その六割強の二十一名が処分時に匿名で発表されました。しかし、その処分
理由はといえば、横領が九名、窃盗が四名、その他、詐欺、児童買春、強盗傷害といったものでした。
各省庁は匿名発表の
理由を、人事院の発した懲戒処分の公表指針でうたわれている、公表に当たっては個人が識別されないようにするという文言に求めているようです。しかし、その冒頭部分では、個別の事案に関し、当該事案の
社会的影響、被処分者の職責等を勘案して公表
内容について別途の取扱いをすべき場合があるとしております。懲戒免職処分者の匿名発表は、個人
情報保護法を逆手に取った悪乗り便乗行為と言わざるを得ません。
懲戒処分を受けた公務員についてもプライバシーが保護されるべきであることは当然だとは考えますが、立場を
利用した犯罪や
社会的に許されざる犯罪については、氏名をも公表することが公正で民主的な行政の
推進に資するのではないのでしょうか。人事院の懲戒処分の公表指針もこのような観点から理解されるべきです。公務員
制度を所管する総務大臣に
お尋ねをいたします。
以上のように、一連の個人
情報保護法に対する過剰反応などは、法の無理解による誤った解釈や運用に原因があると思われます。逆に言えば、
政府が明確な指針を示していないことが問題なのです。そこで、
政府は、法の運用、解釈をめぐる現場の混乱を早急に調査し、これらの事例に関する統一指針を定める必要があると考えますが、担当の猪口大臣に所見を伺います。
我が国の個人
情報保護法は、業種や分野ごとに規制する個別法ではなく、包括的に一律の網を掛け、氏名や住所などの
基本的な
情報も、病歴や金融、通話記録といった秘匿性の高い
情報も、皆同列に扱っているところに大きな問題があります。
当時の細田
法案担当大臣も、医療とか金融とか個別の分野で、この
法律だけでは十分律し切れないものがあるんじゃないか、確かにそういう面がございますと明確に
答弁をし、衆参の附帯決議でも、医療、金融・信用、
情報通信等の分野について個別法を
検討する旨が明記もされたのです。
ところが、結果は、すべて個別法ではなくガイドラインで済ますという
対応になってしまいました。ガイドラインは、善良な業者に対しては有効であったとしても、悪質な業者に対しては効果は全く期待できません。
例えば、やみ金融の背景には消費者金融の顧客
情報を入手して作った多重債務者リストを売る名簿業者の存在がありますが、そのような業者に対し法的拘束力もないガイドラインが有効に機能するなど到底考えられません。だからこそ、直罰
規定を伴った個別法が必要なのです。
厚生労働大臣を始め、金融担当大臣、総務大臣に
お尋ねをいたします。
三年前の委員会審議で、センシティブな個人
情報を扱う医療、金融、
情報通信などの分野では個別法の
制定が必要だと大臣が明確に
答弁しながら、結局、ガイドラインで済ませることになったその
検討経緯をつまびらかにしていただきたい。また、ガイドラインが悪質な業者の存在を踏まえても十分に機能するというなら、その
理由も併せて明確に御説明願います。
最後に一言申し上げます。
小泉総理の任期もいよいよ半年を切りました。現在、衆議院において、小泉改革の総決算という触れ込みで行政改革
推進法案の審議が進められています。しかし、衆議院の審議で早くも明らかになったように、この
法案には中身が全くありません。
関係大臣の
答弁は、
検討中に始まり、努力中、今後、これからのオンパレードで、具体的な
制度設計をすべて先送りしてしまっています。正に官僚丸投げです。
振り返れば、この五年間に進められた小泉改革なるものは、看板こそ甘い言葉で国民を魅了したものの、実態は官僚丸投げといったものがほとんどでした。その結果、例えば
道路公団は形の上では民営化したものの、
計画していた高速
道路はすべて造るといった本末転倒の話がまかり通っております。
そしてもう一つ。昨年の総選挙の前には、サラリーマン増税はしないと公約しながら、選挙後には何食わぬ顔で定率減税の廃止に踏み切りました。また、先日も
政府税調の石調査会長が消費税率の引上げ幅を三%にとどめることはあり得ないと発言をされましたが、それに対し自民党の中川政調会長は、何も選挙の最中に増税の話をしなくてもよいだろうと批判したようです。なるほど、今では小泉的手法が自民党内には十分に浸透し切っているようですね。
民主党は、新しい小沢体制の下、再出発をいたしました。官僚丸投げの政治、不誠実な政治を変えるために、我々
民主党は全力で立ち向かっていくことをお誓いを申し上げ、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣竹中平蔵君
登壇、
拍手〕