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政府参考人(
寺田逸郎君) ただいま簗瀬議員は、米国の
域外適用の問題からこの特別留保条項をごらんになって、いろいろ御
議論があるだろうという御提示をされたわけでございますが、もちろん
アメリカの法の
域外適用もこの問題に
関係はないわけではございません。
しかし、この特別留保条項は特に
アメリカの
域外適用を念頭に置いて作ったものではございません。むしろ、やや細かくなりますけれども、
アメリカの
域外適用は、基本的に公
法分野で立法管轄権を域外の事象にまでカバーするような
規定の仕方をしているというところに非常に大きな問題点があり、かつ、その結果起こり得ることに対しまして行政的な管轄権を及ぼすというところに非常に
特徴があるわけでございます。
これに対しまして、ここで扱います問題は、基本的に
法律の強行性があるという
意味では共通の問題ではございまして、
域外適用で問題になる
法律の一部は確かにここで
適用が問題になるわけでございますけれども、基本的にこれは
私法の
分野の話でございまして、それが不法
行為の基準としての不法性というものをどう判断するか、その際の手掛かりになるかどうかということを論じているわけでございます。
具体的に申し上げますと、この
法例の十一条の二項が現実に
適用された例というのは、これは最高裁では一例最近でございまして、平成十四年の九月二十六日の最高裁判決でございますが、ここでは
アメリカの特許権の侵害というものが問題になりまして、それを積極的に誘導する
行為が
日本で行われたということを
理由とする損害賠償請求がございます。
その際に、今の
法律の、
法例の十一条の一項では、原因たる事実の発生地が基本的には連結点でございますので、それでこの権利侵害という結果はどこで生じたかということをその判決では問題にしたわけでございますけれども、それは
アメリカであるということでございまして、したがいまして
アメリカ法が
適用になるだろうと。そこで、
アメリカの特許法に
関連する損害賠償
責任が肯定し得る、そういう
状況に置かれている。
これに対しまして、この十一条二項があるために
我が国の
法律で累積的に
適用されるというわけでございますが、そういたしますと、
我が国の法令では特許権侵害を登録された国の領域外において積極的に誘導するという
行為は不法
行為にはならないという判断がされまして、それで結果的にこの
成立要件は、不法
行為の
成立要件が具備されないという判断があって、損害賠償請求は結局のところ
理由はないということで排除された、こういう例でございます。
ここではやはり、その
域外適用とは別の問題といたしまして、その不法
行為の根拠というものがどういうところにあるのか、その不法性というものがやはり
日本においても認められない限り不法
行為は認められないということの非常に重要なポイントが示されているわけでございまして、一部にはこういう問題は公序で排除できるんではないかという御
議論も確かにございます。つまり、
一般的に公の秩序に反する
規定というのの
適用というのは避けるという
一般的な、いわゆる
一般的な条項がございますので、それで十分ではないかという御
議論がございます。
法制審議会のこの特別留保条項を残すかどうかという御
議論の中にも、そういう
議論も確かにございました。
しかしながら、そのすべてのこのような不法性を持つもの、その根拠なるものがすべてその公序に引っ掛かるというわけではございません。これは基本的に
外国で不法
行為ということはあり得るわけなんで、それをすべて
日本で不法
行為がないから直ちにそれが
日本の公序に反するというわけではさすがにないわけでございます。
しかし、その不法
行為のこの条項というのは、やはりそういう公序には至らないまでも、やはり国民の
行為というものを規制するという面においては重要だという判断で、
法制審議会ではやはり
結論といたしましてこの特別留保条項を残すと。櫻田参考人も部会長でいらしたわけでございますが、櫻田
先生も当分の間というような留保は示されておられましたけども、残すという判断になったわけでございます。