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参考人(
山岡修君) それでは、御紹介いただきました
全国LD親の会の
会長と
日本発達障害ネットワークの代表をしております
山岡と申します。本日は、このように貴重な場を設けていただきまして
意見を申し述べさせていただく
機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
LDという
言葉をもう今は
御存じいただいているかもしれませんけれども、私、新聞記事のピックアップというのをよくインターネットとかでするんですけれども、昔はレーザーディスクというのが出てきて、
LD親の会と言うと、レーザーディスクですかと言われてしまったんですね。最近、盛んに
LDと打つと新聞記事たくさん記事が引っ掛かってきて、いよいよ国会で
審議が始まったかと思ったんですが、どうもライブドアを
LDと訳す新聞社が多くて、私は非常に迷惑をしているところでございますけれども。この問題も片付きつつありますので、是非
教育の問題を議論していただきたいと思っているところでございます。
全国LD親の会といいますのは、一九九〇年に組織いたしまして、各地域で
活動する
LD親の会の
全国組織でございまして、約五十の
団体が加盟しております。お
手元の方に、私どもで発行しました冊子をお
手元に置かせていただいていますが、
LD、
ADHD、高
機能自閉症の
基本的な
理解を示すような冊子を発行したり、いろんな
活動をしているところでございます。
もう
一つは、
日本発達障害ネットワークという
団体を昨年立ち上げたんでございますが、これは昨年の四月に発達
障害者
支援法という法律が、議員立法でしていただきまして施行になりましたが、ここに関連する自閉症、
LD、
ADHDなどの
当事者団体、これに加えまして、学会とか職能
団体も含めて
全国団体が十一、それからエリア
団体が三十二加盟しております。こちらの
団体は、前の厚生労働大臣でございます尾辻先生に
会長になっていただきました発達
障害の
支援を考える議員連盟、先日総会をしまして百三十六名の先生が御参加いただいたんでございますが、こういった議員連盟とも連携を図りながら、発達
障害に対する
理解や
支援の向上に取り組んでいこうとしているところでございます。
前置きが長くなりましたけれども、三名の
先生方から
お話ございましたけれども、
特殊教育から
特別支援教育への
転換ということでございます。
大南先生から五倍に増えるんだということをおっしゃっていただいたんですが、お
手元の
資料の方にちょっと表しておりますけれども、
一つは、大きなことは、この
特殊教育に対する考え方を大きく変えるんだというのが、実はこの五年前の二十一世紀の
特殊教育の在り方に表されておりまして、
基本的には従来は
障害の種別と
程度に応じて特別の場を設定して
支援をしておりましたが、これからはその一人一人の
ニーズに応じて
支援をしていくんだということで、
基本は
障害モデルから
ニーズモデルへの
転換だというふうに言われております。
それと、その五倍に増えるんだということだけではなくて、従来はこの
LD、
ADHDの
子供たちというのは約六・三%いるというような推計値があります。要するに、四十人
学級でいうと二人とか三人とかいておかしくないんですね。すべての教室にいると思っていただいてみますと、従来の
特殊教育というのは、
通常の
学級にはそういう
子供たちはいないという前提でおりますから、一律一斉の授業をしています。これからはそうではなくて、各教室にそういう
子供がいるんだという前提で、すべての先生がそういう
子供たちに
配慮とかをしながら進めていく必要があるということでありまして、これは
特殊教育という一部の
世界のものではなくて
教育全体の問題、変革なんだというふうにお考えいただきたいと
思います。
それで、その
特別支援教育の
基本的な考え方や理念というところで、私は
三つ、ここで一ページのところで取り上げているんですが、
一つはその
LD、
ADHD、高
機能自閉症をその
支援の
対象に加えるんだというところであります。先ほども
お話が出ておりますが、
日本の
特殊教育、レジュメでは一・六となっていますが、一年進みますと一・七四%、全児童のですね。アメリカは一一%であります。
イギリスは約二〇%がそういう困難を持っているのではないかということで対策を進めております。この差というのは、アメリカとの間の九%ぐらいありますね。これ何かというと、
日本の
教育ではこの軽度の発達
障害の
子供たちに何の手だてもしないままずっと進んできたということなんですね。放置されてきたということであります。ですから、
文部科学省の
報告書を見ましても、
LD、
ADHD、高
機能自閉症等への
対応というのは喫緊の
課題というふうに取り上げております。
私、民間企業に勤めておりますが、喫緊の
課題と言われますと、何か月か以内に対策を打たないと会社がつぶれてしまうような表現なんですね。ですから、この問題については真剣に取り組んでいただきたいというふうに思っております。
それから、
二つ目のこの
特別支援教育の考え方としましては、一人一人の
ニーズに応じた
指導、必要な
支援をしていくんだというところであります。これは、同じ
障害名、従来の
知的障害でもそうですし、身体
障害でも同じなんですけれども、同じ
障害名であっても一人一人の持っている特性が違います、
ニーズが違います。これからは一人一人のお子さんの
ニーズやプロフィールに合わせて適切な
支援をしていこうという考え方であります。これも従来の
教育の考え方とはかなり大きな
転換だと
思います。
それからもう
一つは、
三つ目は乳幼児期から
学校卒業後までの一貫した
支援を行おうということが挙げられております。これも、私たち
保護者は、学年が替わるたび、
学校が替わるたびに積み上げてきたものが全部つぶれてゼロからスタートするんですね。先生が替わるたびに一から説明しなくてはいけないということで、これらについては一貫した
支援を行うということが
一つと、手だてが用意されておりまして、引継ぎをうまくしていくというふうな道具をきちっと用意するということだと
思います。
それで、この
特別支援教育の
転換というのは、従来のいろんな制度と違うところというのは、最初からパーフェクトでスタートすることは多分無理だろうと
思います。ですから、今回の
中教審の
答申も、今回の法律の
改正案も、完全な形で完成版で出ているわけではないということですね。ですから、ある意味でいくと、いろいろ不十分な点とか御不満のような点もあるんですけれども、それは
特別支援教育と今
三つ挙げたような高い理念に到達するための
一つの
段階だと考えると、合格点といいますか、だと思っています。後で申し上げますけれども、もしここで止まってしまったら、これ合格点ではないんですね。この制度とか箱を用意して、その後にソフト面でありますとか、次のステップ、次の検討を進めていくという一
段階としてはすばらしい大きな一歩を踏み出したというような法案だというふうに思っております。
それで、今回の
改正点でございますけれども、
資料の二ページ目にちょっとまとめてございますが、既に多くの
先生方が説明をされておりますので、特に私のところに関係があります二番目のところを中心に御説明申し上げます。
今回
改正のところでは、
中教審の
答申では
三つありまして、盲・聾・
養護学校の見直し、これを
総合化して
特別支援学校に移行というところであります。それから
三つ目のところでは、
教員免許制度の見直しのところで、これも
総合化というふうな案になっております。
この
二つ目でございますが、さっき
嶺井先生も御指摘されましたけれども、
特別支援教室という
構想があったんですけれども、これは
中教審でもいいシステムということで認めながら、すぐにここに行くのはいろいろ難しいものがあるねというところを言っております。
基本的には一
段階ステップを踏んでからこの
構想を目指そうというところであります。
お
手元の
資料でいきますと、四ページのところを開けていただきますと、この
中教審の
答申の中で、
最後のページにこの
特別支援教室への
構想についてのステップのところが載ってございまして、現状、
通常の
学級があって、それから
通常の
学校の中では
特殊学級と
通級による
指導がありますと、そこから
特別支援教室に移行。
特別支援教室というのは、簡単に言っちゃうと、
通級と
特殊学級を
総合化するような形で特別な場を設けようというものでございますが、ここに一気に行くのではなくて、
特殊学級と
通級を弾力化をして、それからさらに
特別支援教室の
構想を目指そうというものでございました。
実際には、今回の中でいきますと、
学校教育法施行規則の
改正がございまして、四月一日に既に施行され、
LDと
ADHDが既に
通級の
対象に加わっております。更にその弾力化を進めていくということだというふうに思っています。
五ページの表をちょっと開けていただきたいんですが、五ページの中で、ちょっと
パワーポイントから写してきたので分かりづらい表でございますが、これ
三つに分かれておりますけれども、十七年度までの制度というのがありまして、今
通常の
学級というのは、一週間二十八時間あるといたしますと、特別な場での
指導は一応ゼロでございます。それから
通級教室というのは、横長に線を引いています、四角を作っておりますが、三時間から八時間の特別な
指導ができますと。それから、
特殊学級は
基本的には固定
学級で、二十八時間固定でございます。
これ時間軸を縦に取りますと、
子供たちの
ニーズというのは、週に一時間
指導してほしいという
子供から三時間欲しいというお子さん、それから十時間、いや二十時間欲しいんだというお子さんもあると思うんですけれども、現在の制度は、
通級は三時間から八時間、それから
特殊学級は二十八時間ですので、制度に大きな落差があります。その落差がある中で、
子供たちはその今の制度に合わせてどっちかを選択しなくちゃいけないんですね。
特別支援教育の考え方の中でいくと、本来は
子供たちの
ニーズに制度を合わせるべきだというのが私たち
保護者の考えでございます。これでいきますと、一番下の表でございますが、
子供たちの
ニーズが連続性があっていろんな
ニーズがある以上、時間軸という面で見ても、こういうふうに柔軟に一時間から二十八時間までいろいろ
対応できる
特別支援教室という
構想を是非進めていただきたいというふうに思っております。
手元の
資料で二ページにちょっと戻るんですけれども、この
三つ、
改正の中で、
答申の中で
三つ案が出ている中で、実はこういうハード面のことは整備されていくだろうと思うんですが、先ほど申し上げましたように、この
特別支援教育というのは非常に高いハードルといいますか、長期的に取り組んでいくものと考えますと、
幾つかのソフト面といいますか、そういうものを
充実させていく必要があるということでございます。
三ページの方に移りまして、では、じゃソフト面って何だということであります。さっきも申し上げましたとおり、今回の
改正案は
特別支援教育の理念を実現していく第一歩と考えますと、ここで止めてしまっては駄目だと。どんなことが必要なのかといいますと、この五番のところに「
特別支援教育の理念実現に必要な拡充すべきもの」というふうに書いてございますが、先ほどもいろんな
先生方おっしゃっていますけれども、元々その
LD、
ADHD、高
機能自閉症という軽度の
子供たちというのは
特別支援教室ができたとしても
基本的には
通常の
学級にいるんですね。ですから、
通常の
学級の先生が
通常の時間に
理解をしたり
配慮をしたりということが必要でございます。ただ、今の
先生方はそこまでしろというふうに言われておりませんし、そういう
教育も受けてきておりません。ですから、
先生方の
教員になるときの中でこういう
障害児に対する
教育をしていただくとか、あるいは担任の先生一人では駄目なので、
学校の内外から
支援をするようなシステムをつくるということが大事でございます。
それから、先ほど申し上げましたように、この
子供たちは
通常の
学級の中だけではなくて必要に応じて特別な場での
指導が必要でございまして、必要に応じ特別な場での
指導というのができる制度をつくっていただきたいということであります。
それから、一人一人に合わせた、
ニーズに応じた一貫性のある
教育ということについては、今、個別の
指導計画とか個別の
教育支援計画というものが用意をされています。これ、計画といいますけれども、プランをして、そして実行をして、それを見まして、それから次のステップに行くというプラン・ドゥー・シー・チェックという
一つのサイクルが大事でございまして、
教育の中でもこういうサイクルを適用していくということが大切だというふうに思っております。
それから、ソフトという意味でいきますと、実は今回、制度の中でいくと、
特別支援学校をつくるとか
教員免許状の
改正ということが目立っておりますが、実は七十五条の
改正のところでいきますと、
通常の
学級の中で、
学校の中でこういう
子供たちへの
支援をしていくんだということが
学校教育法の中で初めてうたわれています。従来、七十五条というのは
特殊学級のところだけだったんですけれども、前段のところでうたわれておりまして、こういったものを
言葉だけではなくて拡充させていくことが先ほどから申し上げておりますような
特別支援教育の理念とか
基本的な考え方を完成させていくものだというふうに思っておりますので、法律の
改正だけではなくて、それからの施策で是非拡充していっていただきたいところでございます。
最後に、六番目としまして、三名の
先生方とダブるんでございますが、
特別支援教育の理念実現に必要なことということで申し上げておきます。
先ほども
お話出ておりましたが、第八次の
教員定数改善計画、昨年いったん見送りとなりまして、その中で
LD、
ADHDの
通級に対して二百八十二名の人員が単年度で確保いただきました。しかし、
子供たちは一年だけではないわけでありますから、是非十九年度から五年間で、定数改善計画をまた復活していただきましてこの
子供たちに対する
教育に必要な人員を配置していただきたいと思っております。
二番目は、重なりますが、
通常の
学級の中での
特別支援教育、これからは大事でございまして、これに必要なことを是非国として積極的に取り組んでいただきたいということでございます。
それから
三つ目は、四月一日の
学校教育法施行規則の
改正で、
通級の
対象として、従来、情緒
障害というあいまいな
言葉の中に実は自閉症とそれから緘黙とかのやや精神的な疾患をお持ちになったお子さんとの
二つの種類が入っていたんですけれども、今回の
改正で自閉症ということが単独できちっとうたっていただきました。ただ、これは今のところ
通級だけなんですね。ですから、
特殊学級あるいは
養護学校においても自閉症というものをきちっと位置付けていただいて、それに適した
教育をしていただきたいということを思っております。
四つ目でございますが、先ほども申しましたけれども、
特別支援教室の
構想というのが
中教審でも更に検討することが適当となっております。こういうものは余り時間を置かずに、迅速に次の検討をやっていただきたいというふうに思っております。
それから、
最後でございますが、さっきと重なりますけれども、
特別支援教育というのは、こういった今回の法律の
改正は第一
段階というふうに考えておりますし、その法律の条文の中にはいろんな意味が込められております。それを更に事業として、あるいは必要な法律の
改正も含めて、
特別支援教育が掲げる理念や
基本的な考え方を実行していただくようにというふうに思っております。
最後でございますけれども、私、
LDや
ADHD、高
機能自閉症の
子供たちを持つ親の会におりますけれども、この
子供たちは一見変わっております。見たところ、やる気がないと見られたり、実はだらしないとか、母親のしつけが悪いんじゃないかというふうに思われることがあります。
学校の先生も
対応に困っておられることがあると思うんですけれども、よく考えますと、一番困っているのはこの
子供たちであります。この
子供たちは、やる気がないとかそういうふうに見えることもございますけれども、実は僕も勉強できるようになりたい、私も褒められたいという気持ちでおります。大きくなると、私も
仕事をしたい、恋人も欲しい、結婚もしたい、家も持ちたいというふうな夢や希望を持っているわけでございます。
しかし、残念ながら、今の体制でいきますと、そういう
子供たちが疎外されて、不幸にして二次的
障害に陥ったケースもあります。是非、数年前に
イギリスでブレア首相が就任されたときに、私は感動したんですけれども、私はやりたいことが
三つあるとおっしゃいまして、
一つ目は
教育だ、
二つ目は
教育だ、
三つ目は
教育だとおっしゃったんですね。それほど
教育というのは大切であります。
実は
嶺井先生もおっしゃいましたけれども、この
特別支援教育、決して
LDや
ADHDや高
機能自閉症の
子供たちのためのものだけではありません。こういう一人一人に対してきちっと
ニーズに応じて
教育をしていくということは、実は
障害のある
子供だけではなくて、本当はすべての
子供に適用されることでありますし、その一人一人の
ニーズに応じて適切な
支援をしていくということ、これは今
学校の
教育が抱えておりますいじめや不登校や
学級崩壊あるいは学力低下というような問題の解決にも必ずつながるというふうに私は思っております。
そういう意味も含めまして、将来の国を支える
子供たちでありますし、もう
一つ、軽度の
子供たちというのは、きちんと
対応して
教育をしていけば、将来税金を払ってくれる、自立をして、
人たちに育っていくんですね。ところが、誤ると、将来たくさん税金掛けなきゃいけないような対策を打たなければいけなくなると
思います。現在、財政事情厳しいかもしれませんけれども、長い目で見て投資効果の高いことだと
思いますので、是非国として積極的に取り組んでいただきたいというふうに思っております。
以上でございます。