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参考人(
白石真澄君) 皆様、こんにちは。東洋
大学の
白石真澄でございます。
本日は、
少子高齢社会に関する
調査会におきまして
意見陳述の機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。
前で使用させていただきますパワーポイント、若干文字が小そうございますので、是非お
手元の資料と併せてごらんいただければと思います。
本日お話しさせていただく内容はこちらでございます。(資料映写)
私は今、
子供が二人でございます。上が十六歳、下が十四歳になりました。私
自身も
子育てをしながらずっと共働き、正
社員で参りました。私は現在、
少子化対策大綱検討
委員会
委員、これはもう既に終わりましたけれども、規制改革・民間開放推進会議
少子化ワーキングの主査を務めさせていただいております。
本日、私に与えられました
課題は、
子育て世代への住宅の支援をどうしていくかということでございますけれども、もうこれは釈迦に説法だと存じますが、
子育て世代向けの支援は、住宅だけではなく、総合的にしていくことが必要だと思います。その中で、住宅をどうするかということについてお話をさせていただきたいと思います。
最後に、もし時間がございましたら、今日、巻末に資料もお付けさせていただいておりますのですけれども、保育所の待機
児童数を解消する上で何が必要かということも若干御説明をさせていただきたいと思います。
これは、先ほど申し上げたとおり、
子育て世代には総合的かつ多様なニーズに応じた支援が必要ということでございます。もう
日本社会では爆発的に
人口回復ができないという今、私は、
少子化対策ということは少子
社会を前提にいろいろな
制度を組み替えていくことではないかと思いますけれども、一方で、様々な理由が
子供を持つことを阻害しているのであれば、それを
社会としてきちんと支援をしていく
必要性も強く感じております。
当然のことながら、
子育て世代の方たちにいろいろ
調査をしますと、ここにお示ししたような様々なニーズがございます。国や地方自治体が、こういう
制度を利用したのだからこれに合わせて生活しろということではなく、一人一人のきめ細やかなニーズに即した政策を打っていかなくてはいけないということでございます。その中の
一つとして、今日お話をさせていただける良質な住
環境のお話があるということでございます。
これもよく言われていることでございますけれども、今、
昭和二十二年から二十五年生まれの団塊の世代の
子供たちがちょうど出産適齢期に差し掛かっております。
人口ボリュームとして非常に多い世代でございますので、これから五年間で政策の効果が出れば、
日本の
人口回復というのは若干望みがつながるのではないかと思います。
それでは、住宅は
少子化とどのように
関係しているのでしょうか。
私
自身も、
子供が生まれた当初、ちょうど上の
子供と下の
子供、二歳違いでございますので、賃貸住宅をいろいろ探しました。当時、バブルがはじけたころでございまして、住宅はたくさん建設されていたわけでございますけれども、お子さん一人ならばいいですけれども二人ではちょっとと言われたことを記憶しております。家主さんにとっては
独身者で回転率が高いほどやはりその
価値があるわけで、住宅を汚される若しくは騒音の問題があるような
子育て世代を抱えるよりは
独身者を入れた方がいいわけでございます。今ではもうなくなりましたけれども、当時、住宅情報誌さんを拝見しておりますと、犬猫のマークと
子供のマークが並列してかいてございました。それだけ
子供を持つ世代にとっては住宅を安心して借りることができていなかったというふうに記憶をしております。
これは理想の
子供数を持てない理由でございます。これをごらんいただきますと、トップに挙がっておりますのがやはり、持てない理由として、
子育てや教育にお金が掛かり過ぎる、これ六割でございます。家が狭いからというのは八位に来ております。全体の一四・六%が家が狭いということを理由に挙げておりまして、特に二十代の妻では二割を超えております。
若い
人たちほど賃貸住宅が多い、もうこれは当然のことでございますけれども、賃貸住宅に住んでいる人ではより家が狭いからという理由が多いわけでございますけれども、これは、先ほど
中村参考人の御
意見にもございましたとおり、この理由を挙げる上での優先順位が違うということをまず差し引いて、割り引いてお考えいただく方がいいと思います。
子育て世代にとって一番の関心事は教育費でございます。教育費にまずお金を掛けたい、そして住宅の点は二の次、三の次でいいわけですので、当然、比率としては
子供を持てない理由の下の方にこの理由が挙がるのは当然のことでございます。
それでは、
子育て世代が求める政策とはどのようなものでございましょうか。
一番は経済的支援、これ七割でございます。若干、
子供のその末子の
年齢、一番下のお子さんの
年齢によって違いますが、平均値を取ればこのとおりでございます。住宅や住
環境に関するものは、これも下位でございまして、下の方に位置付けられておりまして、ファミリー向け賃貸住宅の優先入居というのが八・五%、そして建築物や交通バリアフリーの推進は五・二%と、合わせて一四%弱でございます。
それでは、その住
環境に対するニーズが少ないのかというと、私は決してそうではないというふうに思います。先ほど申し上げたように、教育費の方に取られてしまって、これに対するその関心度合いがやや低いということでございます。教育費で、
児童手当で出していくのか、若しくは住宅の方で出していくのかという出し方を変えても、私はもっと
子育て向けに経済的支援をしていく必要があろうというふうに感じております。
これは全国の住宅の種類を問わないで平均の床面積を地図上に表したものでございますけれども、ブルーの部分、
東京圏、大阪圏、そして九州の一部は一住宅当たりの延べ床面積狭いのがこの図からもお分かりいただけると思います。どちらかといえば、東北や
日本海側の北陸地域というのは、住みよさ
日本一に挙げられる富山などは非常に床面積が広いのがお分かりいただけるというふうに思います。
これをお考えいただきますと、住宅の床面積と合計特殊
出生率、十五歳から四十九歳の
女性が産む
子供の平均数でございます、これとをプロットしてみたときに、住宅面積が狭い地域ほど
出生率が低くなっているのがお分かりいただけると思います。小さい字で恐縮でございますけれども、赤字でプロットさせていただきましたのは、宮城県、千葉県、
東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、福岡、都市部でございます。都市部ほど住宅を持つこと、住宅コストが高うございますので、広い住宅を安く手当てしていくことが非常に難しいわけでございます。この結果、やはり
子供を持つ上で住宅の理由が阻害要因になっているということでございます。
それでは、
子育て住宅の
現状と
課題に移らせていただきたいと思います。
国が定めております居住水準に最低居住水準と誘導居住水準がございます。これは第八期の住宅建設五か年計画で定められた目標でございます。
家族の人数に応じてどれぐらいの面積に住まなくてはいけないとか、適切な、適正な水準、設備を兼ね備えなくてはいけないということが定められておりますけれども、四人
家族の場合でそれぞれ、最低居住水準五十平米、そして誘導居住水準、都市型のものと一般型のものと分かれておりますけれども、こうした基準がございます。しかしながら、
子育て層、特に都市部に住んでいらっしゃる方は、この誘導居住水準を満たしていない比率が非常に高いということでございます。
面積的に問題があるということだけではなく、私は
子育て世代にグループインタビューをさせていただきました結果、やはりフローリングによる騒音の問題とか公共スペースの汚損の問題等で住宅の面において
子供の育てにくさを感じていらっしゃる世代は非常に多いわけでございます。
これは
高齢者の住宅の広さを二時点で見たものでございます。上が全国、下が六十五歳以上を
世帯主とする住宅が九八年から二〇〇三年までにどういうふうに変わってきたかということでございます。
これを見ますと、全国で百平米以上の広い面積の住宅というものは九八年から二〇〇三年までに一・七ポイント増えております。全体的に持家層の質は上がりまして、広い住宅の割合増えております。六十五歳以上の
高齢者を見ますと、これは五年間で広い面積の住宅が三・八ポイント増えております。
子供が独立して
高齢者夫婦二人になりますと、当然のことながら都心部のコンパクトなマンションに移りたいというふうに、便利なところに移りたいというふうに思うわけでございますけれども、これが現実的にはなかなか難しくて、古い、広い住宅にとどまったままになっているということでございます。
今、持家の
日本の平均的な床面積、百二十三平米でございます。四捨五入しますと百二十四平米でございます。借家では四十六平米という、一対三の割合です、持家三に対して借家一でございます。三十代のファミリー層の持家率は三八%でございます。約五人に二人が賃貸住宅に住んでいるということでございます。四十代の持家率は六割強でございます。五人に三人が持家に住んでいるということでございます。残りを考えますと、三十代の六割、四十代の三割が狭い賃貸住宅に住んでいるということです。
高齢者の住宅は広い、一方で
子育て世代の住宅は狭いということを考えれば、広い住宅を持っている、かつ老朽化している
高齢者の住宅を手当てをして、手入れをして、そこを若い
人たちに振り向けていくような市場をつくっていく
必要性があるということでございます。
これは、もう少し細かく
高齢者層とファミリー
世帯の住宅のミスマッチをお示ししたものでございます。上は持家、下は借家に住んでいる
子育て層、ファミリー層でございます。ごらんいただけますように、
高齢者の単身夫婦のみ
世帯というのは、広い住宅に住んでいるややグレーのところの比率が多いのがお分かりいただけると思います。一方で、七十平米未満の狭い住宅に住んでいるファミリー層が多いということもお分かりいただけると思います。
もちろん、これはよく言われることでございますけれども、
日本の中で完全にバリアフリー化された住宅というものは、今住宅ストックの三・八%しかありません。
高齢者は、持家であっても
高齢者の持つ住宅の設備面、段差が多いとか手すりがないということで、住み続けていく上で問題がある住宅が多いということでございます。そこを手当てをして、若い世代にどういうふうにすれば流通していくのかということを政策的にお考えいただきたいというふうに思います。
これは、
子育てにおいて重視する要素でございます。
子供の
年齢によって、住宅の中で重視する要素は異なります。平均値で見ますと、やはりこれだけ治安の問題などが悪化してまいりますと、安全な地域に住みたいというようなことで、安全性に対する比率が上位に来ているのがお分かりいただけると思います。
子供の
年齢が小学生以上の場合は、幼稚園や小学校などへの利便性というところが高くなってまいりますし、また
子供の
年齢が五歳以下のときは、赤で囲いました
子供の遊び場や公園などというものが第一に上がってまいります。
子供の
年齢によって住宅の中で重視する要素は異なる、それではどうするかということを考えたときに、
子供の
年齢によってきちんと住み替えができる
環境を整えていくということでございます。持家を持つときに、
子供の
年齢時点で何歳で持ちたいかということを聞いたときに、
子育て世代の多くは
子供が小学校入学時点でございます。入学時点で持家を持ちたいという
人たちが大勢でございます。
これは住宅ローンの返済率でございます。これは、一九九三年以降どれだけ実収入に占める住宅ローンの返済額の割合が占められているかということをグラフに表してみたものです。二〇〇三年の月当たりのローン返済額でございますけれども、実際にローンを払っている
人たちに聞きましたところ、平均で十万六千円でございます。十万六千円を払い続けているわけでございますが、それが実収入に対して比率が上がっているということです。返済額というものの比率は、実収入の伸びを大きく上回っている。実際には、ここ十数年地価は下落をしております。ようやく都心の商業地だけは反転しましたけれども、
日本全国、住宅や地価は下落している中で実際は借入額が大きくなってきている、その比率も高くなっているということは、収入が減ってきていることの裏返しだと思います。
それでは、
子育て世代向けにどのような政策が今まで行われてきたのでございましょうか。
少子化対策大綱では、目指すべき
社会の姿として、妊婦や
子供連れの人に対し配慮が行き届き、安心して生活ができるということをうたいました。具体的には、まず住宅の面積を確保しましょうとか、ゆとりある広さを持てるように住宅支援をしましょう、職住近接を実現していきましょうということが盛り込まれています。職住近接というのも父親が
子育てに参加する上では必須要件でございます。目標がきちんと定められているものもあれば、そうでないものもございます。
これは、各自治体による
子育て支援のための住宅政策をお示ししたものでございます。独自財源でいろいろなメニューが増えてまいりました。例えば、神戸市などは、空き家が増えている中層の市営住宅の一部を
子育て住宅に転用するというものでございますし、北区などでは、最低居住水準のその以下の賃貸住宅に入っている場合、お子さんが多い、三世代同居の場合は引っ越しを出すというようなものとか、ちょっと変わったところでは、一番下の栃木県などは、中学生以下の
子供が二人いる
家庭では融資額、融資の利率を下げるというようなことも行われております。
それでは、最後に、今何をすべきかということをお話しさせていただきたいと思います。
もう一度繰り返しになりますけれども、これから五年間が勝負でございます。
子育て世代の住宅の整備、供給のために今こそきちんと予算を確保し、目標を作り、政策動員をしていくということでございます。一番大切な前提としては、住宅というものは
子育てをする上でどういう位置付けを占めるのか、どういう意義を持つものかというような理念があいまいだということでございます。住宅を
子育ての安心インフラと明確に位置付けていく必要があろうかと思います。
一つ目は、まず、今検討されております、少し耐震偽装の問題などで遅れておりますけれども、これからできようとする住宅基本法の中で、
子育てを支援する住宅とはどういうものかという理念を明確化していただきたいということでございます。
二つ目は、住宅の面において具体的なアクションプラン、行動計画を作っていただいて、今から五年間、十年間でどういうレベルまで持っていくのか、国の範囲はどういうことなのか、市町村の範囲はどういうことなのかという責任範囲をしていただき、予算を確保していただくということでございます。
これはほんの一例でございます。例えば、今、公営住宅の
所得制限あります。
東京都の場合だと、四人
家族で給与
所得で五百十万、それ以外では三百五十四万以下の人しか入れません。小学校就学前の
子供がいる場合はプラス百万の加算をしてもいいのではないかと思いますし、
負担をしていただいてもいいですので、今、千葉県などで公営住宅の平均家賃二万円でございます。五万円
負担をしていただいてもいいですので、建て替えなどに合わせてもう少し広い住宅を確保して、そこに住宅を欲している
人たちがスムーズに入れるように計画的に実行していくということ。
例えば、今、都市再生機構の賃貸住宅なども倍率優遇がございますが、これをもっと極端に現行の十倍から二十倍にしていくと。建て替えのときに保育所を併設して、地域の
子育て拠点として一時預かりなどを積極的にやっていくというようなこともあります。
定期借地権住宅なども徐々に増えてきました。これ、
個人の所有財産に関して国費を入れるということが難しいのであれば、借地料について補助をするということも
一つのアイデアではないかと思います。
中古住宅の創出に関しては、民間がやるというのであれば、その賃借の上で不安でございましたら、公的なところを間にかませて
高齢者の持っている住宅をきちんと借り上げをして、引っ越し費用を出して、そこを計画的にメンテナンスして
子育て世代に貸していくと、そのための住宅価格の整備、中古市場の整備というようなこともできるのではないかと思います。
これは、最後にお付けをしました、保育に関する
現状でございます。
今、保育は圧倒的な官製市場でございます。利用者が選べないということです。利用者が選べませんし、非効率な運営されております。ある区で聞きますと、夜六時以降の一時間の預かり保育、四百円でございます。裏側では五千円、六千円掛かっているのに利用者
負担が非常に少ないわけでございます。
きちんとサービスに合った
負担をし、それぞれの施設間で競争し、待機児を解消させていくには保育所と利用者の直接契約しかありません。そのために、介護保険に合わせた形で、介護保険に上乗せをする形で、国民一人二十歳以上の方から四百円か五百円を上乗せする形で徴収をして、
子育て世代に利用券、保育のために使えるサービス券という形でバウチャーとして配付をしていきます。そして、保育園と利用者が直接契約をして
子供を預かれるようにする。そうすることによって、次のページでお示ししたように、認可保育所とそれ以外の保育所での公費の格差というものが解消されます。頑張る保育園、良いサービスを提供する保育園に同じようにお金が流れる
仕組みができるということでございます。
是非、これはお時間の
関係で一〇〇%説明をさせていただくことができませんけれども、これも巻末の資料を御
参考にしていただいて、後で
質疑のところで補足をさせていただければと思います。
どうもありがとうございました。御清聴いただいてありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げます。