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2006-04-12 第164回国会 参議院 少子高齢社会に関する調査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年四月十二日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十一日     辞任         補欠選任      加藤 敏幸君     小林 正夫君      松下 新平君     広田  一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         清水嘉与子君     理 事                 荻原 健司君                 岸  宏一君                 中原  爽君                 円 より子君                 森 ゆうこ君                 鰐淵 洋子君     委 員                 狩野  安君                 川口 順子君                 後藤 博子君                 坂本由紀子君                 関口 昌一君                 田浦  直君                 中村 博彦君                 朝日 俊弘君                 小林 正夫君                 下田 敦子君                 羽田雄一郎君                 林 久美子君                 広田  一君                 蓮   舫君                 山本 香苗君                 小林美恵子君                 荒井 広幸君    事務局側        第三特別調査室        長        岩波 成行君    参考人        早稲田大学大学        院会計研究科客        員教授(専任)  品川 芳宣君        株式会社野村総        合研究所研究理        事        中村  実君        東洋大学経済学        部教授      白石 真澄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○少子高齢社会に関する調査  (「少子高齢社会への対応在り方について」  のうち少子高齢社会課題対策に関する件)     ─────────────
  2. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ただいまから少子高齢社会に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、松下新平さん及び加藤敏幸さんが委員を辞任され、その補欠として広田一さん及び小林正夫さんが選任されました。     ─────────────
  3. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 少子高齢社会に関する調査のうち、「少子高齢社会への対応在り方について」を議題といたします。  本日は、少子高齢社会課題対策に関する件について参考人から御意見をちょうだいいたします。  本日は、早稲田大学大学院会計研究科客員教授品川芳宣さん、株式会社野村総合研究所研究理事中村実さん、東洋大学経済学部教授白石真澄さんに参考人として御出席いただいております。  この際、参考人皆様方一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして本当にありがとうございました。  参考人皆様方から、「少子高齢社会への対応在り方について」のうち、少子高齢社会課題対策に関する件につきまして忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますけれども、まず、参考人皆様方からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。  なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと存じます。  また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。  それでは、まず品川参考人からお願いいたします。どうぞ。
  4. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 御紹介いただきました品川です。よろしくお願いいたします。  私に与えられたテーマは御案内のように少子化対策所得税制ということで、所見を申し述べさせていただきます。  私は、約三十年ほど国税庁に勤務した後、大学に転じて十二年目を迎えておりますが、この十年来、少子化対策所得税制について幾つかの論文を発表してきたところであります。  その流れの中で、最近の税制調査会等で答申されている配偶者控除廃止問題等に関して、どちらかというと反対論を打ちながら問題提起してきたつもりですが、後はこのレジュメに沿いながら申しますが、この少子化対策政策手段については、これはもう既に御案内のようにいろいろな議論があるわけでありまして、そもそもこの少子化原因あるいはその是非論についてもいろんな立場の人によっていろんな考え方があろうかと思います。価値観の違い、あるいは家族観の違い、さらには国家観の違いがあって、少子化を是とする者もいれば、これを非とする者、あるいはその対策必要性議論する人もいるし、自然のままにほっておけばいいではないかという、こういう議論も多々あるわけであって、その中で、政策手段として所得税制をどう考えるべきかということは、これも論者によっていろんな立場があろうかと思います。  その中で、私は一貫して、現在のこの少子化の問題は、これは極めて複合的な問題を抱えているわけでありますが、一言で言えば、個人重視、とにかく個人価値観が非常に偏重しておりまして、家族愛とか社会愛とか国家愛とか、そういう組織に対する考え方が非常に希薄になっていると。よって、すべて一人で、個人単位に物事を考える、あるいは税制上の問題もそうですけれども、そういうふうな考え方が浸透してきますと、これは子供など生まれない、子供を産まない人生を選択する方が極めて楽なわけでありますから、この事の根幹はそこにかかわっているかと思います。  よって、私は、この少子化を言わば非とし何らかの対策を講じるべきだということを一貫して申してきたつもりでありますが、その中の税制の問題にありましても、個人単位を重視する所得税制がいいか、家族単位を重視する所得税制がいいかということについて、これもそれぞれ立場によってこの見解が違うというのは、これもう当然のことであります。  それで、それを前提にいたしまして、お手元人口政策所得税制について、過去にどういう議論があり、今どういう問題があり、そして我が国においてどういう政策的な選択肢があり得るかということについて申し述べておきたいと思いますが、従前、人口政策所得税制を採用した例は、私の知る限りでは二つの例が挙げられるかと思います。  一つは、昭和十五年に我が国所得税制において、言わば昭和十五年の大戦前の産めよ増やせよの時代を背景配偶者に対して初めてこの所得控除制度を設けたときがあります。このときの大蔵大臣所信表明では、諸外国に負けないように出生率を高める必要があるというところから、従来、こういう配偶者それ自体一つ労働力と考えられていて控除対象にはなかったわけでありますが、ここに初めて所得控除対象として配偶者を持ち込んだという、こういう例があります。  それからもう一つは、フランスにおきまして、第二次大戦後、出生率が急速に低下したことに対応するためにN分N方式を採用して現在に至っている経緯があります。N分N乗というのは、要するに家族の数によって所得を、家族所得を分割し、その分割した低い所得対応して累進税率を適用し、そして家族の分によってその低い税率を何倍かしていくという方法でありまして、これによって家族が多いほど、すなわち子供をたくさん産めば産むほど所得税負担が少なくなると、こういう方法が採用した例があります。  この二例を参考にしながら、現在議論されている所得税制上の選択肢としてどういう問題があるかということに関しては、これは一つ所得控除拡充であります。現在、我が国所得税制には配偶者控除とか扶養控除、あるいはその中でも老人扶養の問題であるとか、あるいは特定扶養控除といって、高校生、大学生の扶養控除に対しては数を多くするとか、いろいろな形が取られておりますが、その中で、二年ほど前に特別配偶者控除廃止されて、今でもこの配偶者控除それ自体についてはいろいろと冷遇されているというか、不要論議論されているのは御承知のとおりでありますが、いずれにしましても、かつて昭和十五年に我が国税制が採用したような例を取りますと、所得控除拡充し、そしてそれによって家族が多い人を遇するという、こういう方法があろうかと思います。  それから、その所得控除一つの難点は、所得が高い人ほど控除が行われて、累進税率関係もあって、税額計算上有利になると。これでは低額所得者にとって不利ではないかということで、最近は税額控除、例えば児童一人何十万円の税額控除すると、こういう税額控除の方がより一層この出生率を向上させるのではないかという、こういう議論もあります。  それからもう一つは、フランスの例に例えて課税単位を見直すべきだという、こういう議論があります。現在の我が国所得税制においては、いわゆる個人単位課税方式でありまして、個人単位にして課税をするわけでありますから、それぞれの単位ごとにいわゆる基礎控除が設けられる。よって、個人でいる方が税負担が比較的少なくて済むわけであります。共稼ぎの場合も、それぞれの単位別所得が計算されるわけでありますから、共稼ぎの方にとっては個人単位課税方式の方が有利であると。しかし、これ、しかも最近の税制議論におきましては、家族がどんどん、まあ言わば個人化しているといいますか、個人単位化しているから、この個人単位課税方式を一層強めるべきではないか、配偶者控除などの控除はもう要らないのではないかという、こういう議論が非常に強く出てきていることは承知しております。これでは、言わば個人、すべて社会的に個人重視あるいは個人単位化しているのを更にそれをただ認めるだけではないか、更にそれを一層促進させるということは問題ではないかということで、フランス方式に倣ったこの家族単位課税方式に改めるべきではないかという、こういう問題があります。  いずれにいたしましても、この際この課税単位を見直すべきだという、こういう議論一つあるわけであります。  それから、我が国出生率を考えた場合に、要するに婚姻が、要するに結婚する人が非常に少なくなっている。だから非常に晩婚化が進んでいる。通常の年齢というか、かつての二十代後半で結婚すると、その結婚した人たち出生率はそれほど変わっていないわけでありますが、要するに、未婚率といいますか、結婚が非常に少なくなっておる。そのことが結果的には出生率を、非常に全体の出生率を低くしているということが強調されているわけでありますから、できればこの結婚に対する促進税みたいなのができやしないのか。あるいは、独身でいることがある意味では非常に将来の民族を支える上において弊害があるから独身課税を強化すべきではないか、こういう議論があります。  このことは、実は税金一つの使命の問題があるわけでありますが、お互いに個人で、一人で働いている間は別に子供を産もうが産むまいがこれは個人の自由ではないかということになるわけでありますが、年老いてだれかの世話になるということは、自分子供世話にならないまでも、必ず他人が育てた子供世話になることは、これは人間社会において宿命であるわけでありますから、よって子供を産まない人には働いている間に少し税金を高く納めてもらって人様の育てた子供世話に堂々となれる、こういう仕組みも必要ではないかという、こういう議論もあるわけであります。  これらはいずれもいろんなメリットデメリットがあるわけでありまして、それらを総合しまして、レジュメの二枚目に、我が国が、じゃ現時点においてどういう方法が望ましいのかということについてポイントだけ説明させていただきますが、現状においてはやはりこの課税単位を改めるのが一番重要ではないか。で、課税単位改め方については、個人重視から家族重視、具体的にはフランス方式のようにN分N方式によって導入した方が望ましいのではないかと。  これについては主税当局からは、現在の我が国所得税最低税率が一〇%で、八割方それに収まっているから、今更このN分N方式を採用しても意味がないという、そういうことが出版されている本等で説明されているわけでありますが、もちろんN分N方式を採用する場合には、当然この税率の工夫が必要であります。何も所得税率を一〇%から始める必要があるわけではなくて、一%からでも二%からでも、当然刻みを工夫すれば我が国所得税においてN分N方式を十分活用して、子供をたくさん産んだ家族の方が税金が少なく済むという方策は幾らでも採用できるかと思います。  それからもう一つは、アメリカやドイツ等で採用している、言わば夫婦単位税金を計算すべきではないかと。N分N方式への移行ということも、これは家族を重視するという方法では非常に重要でありまして、現に我が国の戦後採用されている配偶者控除、あるいはかつての特別配偶者控除等については、所得税制については二分二乗、夫婦単位課税するのが望ましいという議論があったわけでありますが、そこに移行する、言わばその過渡期方策として、次善の策として、配偶者控除は高くしたり、あるいは特別配偶者控除を採用するのが望ましいという方向で税制が採用されたわけでありますが、先般の特別配偶者控除廃止などは、かつてこういうことで議論されていたことが一切無視されて、専ら、女性社会進出問題等に言付けて廃止に持っていかれたという経緯があるわけでありますが。  それらに関しても、むしろ人口少子化問題等を考えた場合に、今の我が国においては、職場で働きながら子供を産み育てるという環境をどんどん拡充していくことも非常に大切ですし、それは望ましいことですが、そこまで行ってない場合、すなわち専業主婦もまだ四〇%以上いるわけでありますが、そういう家庭においても安んじて子供が産み育てる環境を、やはり税制の上で控除するという仕組みを取る必要があるのではないか。そのためには、むしろ二分二乗方式の方がベターである。  さらに、現在採用されているこの配偶者控除扶養控除等拡充の問題について、今はこの税制簡素化の観点から、これらの控除についてはすべて廃止すべきであるという議論の方が優勢であることは私も承知しておりますし、その背景の中には、この男女共同参画社会との関係で、配偶者控除というのは女性社会進出を妨げるということがしきりに強調されるわけでありますが、それらの議論の問題と、ただ専業主婦として家庭にいるメリットデメリットということが言わばそれぞれ混乱されている問題があろうかと思います。別に、専業主婦だからといってこの共同参画社会に参加していないわけでも何でもなくて、いろんな形で、いろんな女性生き方等について保障する制度こそ、私は真の男女共同参画社会でなかろうかと思います。  私自身共稼ぎ家庭を維持したこともありますし、現在は家内が専業主婦でありますけれども、あるいは私自身農村の出身ですので、農村においてこの嫁が労働力としていろんな大変な仕事をしているということも十分承知した上で、いろんな生き方の中で子供がどう産みやすくなるかということを総合的に考えるべきではなかろうかと思います。  それから、最近の議論の中では、税額控除所得控除から税額控除に振り替えるべきだという議論がありますが、所得控除税額控除、私はいずれでも構わないと思いますが、それぞれメリットデメリットがあるわけで、所得控除が必ずしもマイナス面だけではなかろうかと思います。  それから、もう一つは、社会保障において児童手当を行えばいいのであって、税制上はそれはとやかく手を下す必要がないのではないかという、こういう議論もあるわけでありますが、所得税制の中でいろいろな政策的な措置が講じられる、これは租税論として当然の建前でありますが、社会保障上、児童手当とあるいは税制上の措置を併用するやり方は、これは諸外国も行っているわけでありますから、別に児童手当が設けられたから所得税制上の手当てとか控除とか、あるいは課税単位を見直す必要がないという議論にはなってこないであろうかと思います。  元々、この所得税制で採用するのは、自分で、正に自分自分を助ける社会を構築していく上において、自分所得子供を育てるという目的にかなうわけでありますから、そういう意味では、私はむしろ所得税制の方を重視すべきではないかというふうに考えられます。  最後に、結びといたしまして、これらのいろんな政策議論の中では、結局は、冒頭に申し上げました子供を産み育てることに対する価値観の問題、あるいは男女生き方、それぞれ共同参画して生き方をどう考えるかという、こういう問題にみんなかかわってくるわけでありますが。  繰り返して申し上げますが、それらのいろいろな生きざまの中で、最近子供が生まれなくなった一番のその原因は、やはり余りにも個人価値を重視し過ぎている。家族価値とか社会価値とか、あるいは国家価値とか、そういう共同社会の中で個人が生きる重要性がどうも軽視されているのではないか、そういうことを危惧して、その危惧を排除する意味の上におきましても税制上いろんな措置がとり得るということを申し上げて、おしまいにしたいと思います。  失礼しました。
  5. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、中村参考人にお願いいたします。中村参考人、どうぞ。
  6. 中村実

    参考人中村実君) 中村でございます。  お手元の資料、「子育てへの経済支援」ということでお話し申し上げます。  最初の一ページ目をお願いします。  まず、少子化の理由から確認していきます。  日本においてはシングルマザーがほとんどおりませんので、出生数は、女性が何歳で結婚するか、結婚した女性が何人の子供を持つかで決まると考えられております。結婚した女性に対するアンケートは過去三十年間続いておりまして、答えは常に二・二であります。つまり、一人っ子は嫌で三人は無理でしたという答えが続いておりまして、結局、結婚した女性から出てくる子供の数は変わらないんですから、結果、どうして子供が生まれなくなったかというと、それは晩婚化であります。七五年ごろ、女性平均初婚年齢は二十四歳でございましたが、現在は二十八歳、一貫して晩婚化であります。  晩婚化、別の言い方は未婚化であります。現在、三十から三十四歳の女性の三割が未婚でして、東京の場合は五割が未婚でございます。晩婚化ですから、最初子供が二十九歳ぐらいで生まれています。三十歳女性の五一・五%は子供を産んでおりません。現在、誕生した子供母親の半分以上が三十歳以上でございまして、中村さん、私は三十五だけど子供産んだの、もう少子化って終わったわよって言うから、おまえらだけが産んでいるんだという話でありまして、結局、三十代の女性子供を産んでいるというのが今でございます。こういう状況をどう考えるかであります。つまり、晩婚化少子化の主因であります。  少子化問題点に関しましては、昔は、産む産まないは女性自己決定であり、国家の介入すべき問題ではないという激しい主張がございまして、私も随分つらい思いをしましたんでございますが、私自身社会保障屋でありますので、少子化は嫌だという立場であります。  公的年金を例にしますと、親への仕送りの社会化でございます。人口動態が変わればとんでもない影響を受けます。六十五歳以上の高齢者一人を支える現役の数は、今三・六人で一人のOBを支えていますが、このままだと二人の現役で一人のOBを支えるようになります。若い人はつらいことはしません。  二番。医療費三十一兆五千億でございますが、そのうちの五割の十六兆を人口の二割に満たない六十五歳以上の人が使用しております。つまり、医療というのはみんなでお金を出し合って病院に行ったときの自己負担を少なくしようという相互扶助でありますが、実態は三十から五十代の社会保険料税金高齢者医療に使われているわけであります。  このような状況の中で子供が生まれず現役世代が縮小するということは、この国の社会保障にとんでもない動揺を生むことでございまして、したがいまして、少子化対策は必要であると。子育てへの経済支援というのは、主に若年層が無理なく結婚できる社会経済環境を整備することである。つまり、晩婚化を何らかの形で止める必要がある。  具体的な経済支援としては、労働環境、非正規社員の問題、それから女性にとっての育児と仕事の両立、税制面の優遇、出産費用の補助、次のページでございますが、教育問題について若干考えます。  まず、労働環境でございますが、東京学芸大学山田教授の「パラサイト社会のゆくえ」、ちくま新書の中で、アンケート結果がございます。東京未婚女性の約七割がだんな様に対してはせめて四百万、月給三十万円以上の人がいいわと思っているけど、未婚男性の八割は年収四百万以下で、需給ギャップ、両者折り合っていないというのが現実であります。  じゃ、結婚しないでどうしているのというと、三十から三十四歳の未婚者のうち、男性の七二・四、女性の七六・一が親と同居しているパラサイトシングルであるということであります。つまり、今回の長期不況は、非正規社員、つまりフリーター、パートを増加させた。その人たち所得は少ない、だから上げ底の人生をしたい、だから親と同居する。親の所得に依存する若者を物すごく増やしているのが今回の長期不況だったと。九〇年以降の長期不況であります。  その結果として、三番、非正規社員の数が千六百五十万人、雇われている人間の三三%、女性に限ると五三%が非正規社員であり、いわゆる格差社会、貧しい若者たちが増えているのが事実でありまして、男と女に給料格差があり、女性の正社員の七割が女性の非正規給料であるという現状があるわけであります。そして貧しい人が増えていると。  四番、具体的な例、ちょっと古い例でですけれども計算します。全国女性パート平均時給八百九十三円でありますから、一日八時間、週五日、年五十週働くと百七十九万の手取りであります。年収から国民年金地域健保所得税を取られると、手取りが百五十万であります。首都圏統合失調症生活保護給付というのは、いろいろぐじゃぐじゃっと足して、医療費を除きますと、月々十五万四千二百九十円、年額で百八十五万でありまして、現状女性パートのかなりの部分は生活保護給付以下の生活水準にあるというのが今の日本現状でございます。  そのような状況の中でこれを正当化されていいかということが問題でありまして、申し上げたいことは、同一労働同一賃金という議論はしておいた方がいいであろうということを申し上げます。  何でおまえは男じゃなくて女性の方を選んだのかということですけれども、過去三十年間、離婚が十万件から年間三十万件に増加しておりますが、その中で、離婚後、妻サイド子供親権が移動する比率が一貫して上がります。昔は三世代住宅等があったので、子供母親親権が行かなかった例があったんですけど、直近はほとんどが親権母親に帰属します。  今現在、母子家庭百二十万世帯世帯の三%でありまして、二百万強の収入しかないと。そこで子育てはしんどいということでありまして、女性結婚して、万が一離婚した場合、パートで生活したときかなりつらいという状況があるということは、結婚一つのリスクであるということをちょっと示したかったからであります。  次に三ページ目でありまして、まず申し上げたいことは、労働市場に関して、正規と非正規の同一労働同一賃金という議論は展開すべきであろう。そうでなければ、貧しいゆえに結婚できない人が増えるだろうと。  この問題は社会保障制度にも副作用をもたらしております。現在、貧しい二十代、パート社員というのは正社員じゃありませんから、厚生年金保険適用じゃなくて国民年金ですから、五割は未納者であります。二十代のフリーターというのは企業健康保険組合じゃなくて地域健保ですから、未納率が二三%。二十から三十九歳の介護保険支払義務は現在ございません。職を転々としているパートは失業保険の対象ではございません。  結局、賃金の二重構造が結果として若い人たちからの歳入が取れなくなって、社会保障制度を歳入欠陥にしているのと同時に、彼ら自身がセーフティーネットから漏れているという状況があると。労働市場における正当性の確保というのが必要であろうということがまず一点目であります。  二点目が女性にとっての育児と仕事の両立でありまして、男が貧しくなったから夫婦共稼ぎでいくしかないわけであります。  まず、保育所への入所を待つ待機児童が二万三千人でありまして、この二万三千人を、ごちゃごちゃ言うよりもとにかく解決しろというのがまず第一点であります。解決して子供が小学校に入ると、両親が働いているからかぎっ子になっちゃうわけです。車がやたら通るところで、変なおじさんもいるような時代になっていますから、学童保育が要ると。六十五万人が通っているけど、供給不足。供給不足の定義は、普通三十人ぐらいを見ているのが学童保育だけれども、七十人以上でだれがいるか分からないようなクラスがもう都市部で千八百か所ある。本当に学童保育というのは安全かという状況にあると。つまり、育児、学童保育、保育所等の強化が必要であると。  さらに、働く場において、育児休業制度のある職場の女性の出産は休業制度のない職場の三倍であって恵まれていると。パート女性だったら出産というのは即失業を意味する可能性もかなり高いと。働く女性の六割は最初子供の出産前後に退職していると。出産後も正社員であり続けた場合と、一回あんた駄目、辞めなさい、そしてパートでスーパーマーケットのレジの前に復帰した場合、生涯年収差は二億円であるということであります。こういうことを避けていくためにも、つまり女性の機会損失を避けるためにも低コストの保育所の供給というのが絶対命題であろうというふうに思います。  次のページでありまして、その上の方でオランダのいわゆる労働法、ニューコースで決まったことをちょっとこれ参考にいたします。ここにおいては、雇用者は労働時間の決定に労働者の育児、介護の責任を考慮すべきであると。つまり、子供が小さいとき母親サイドに短時間勤務を容認すべきであると。両親のケアが余りにも大変なとき、五十代の労働者に対して短時間勤務を認めるべきであるということでございまして、一九九〇年代央にオランダでは既に導入されていると。少子高齢化が異常に進行した日本で何もしてないというのはおかしいだろうということであります。  次が税制改正でありまして、前お話しいただいた品川先生と意見が分かれてしまうわけなんですけど、まず子供が生まれない理由は何だと。結婚してないからだと。まず原点は独身より結婚を優遇する必要があろうということであります。そのために、配偶者控除というのをちょっと結婚控除に名称変更をして、結婚したならば夫婦どっちか給料の多い方から三十八万円所得控除していいとすると。そうすれば、独身男女に比べて結婚した男女の方が所得税を少なくて済むということであります。こうすることによって、配偶者控除の弱点、共稼ぎ夫婦には適用できない、ずるいという話もなくなると。それから、配偶者控除所得三十八万円を上限にしているために、それより女の人の稼ぎが増えるといわゆるだんなの所得控除が減るという百三万円の壁がありますけど、上記のやり方にすれば、とにかく結婚してたらだれかに所得控除ですから、各人の収入を減らすというディスインセンティブはどこにも起きないということであります。まず独身より結婚を優遇する必要があろうと。  二番目は、NのN乗という議論もありますが、今の時代、貧乏人の子だくさんなんかどこにも見えぬと。今の時代は、乳幼児の死亡率が低下しましたために、少なく産んで大事に育てる時代であると。それに当たっては児童手当の直接交付が望ましいと。現在扶養控除があるが、限界税率一〇%の場合だったら年三万八千円と六万三千円、これが一体何なんだと。さらに、所得の高い人、限界税率三〇%の人にとっては、豊かな人ほど多い所得税の減税なんて間違っていると。例えば、生活保護の幼児に対する給付額は、生活保護、一—二歳が二万一千、三—五歳が二万六千九百五十円であります。仮に全国の子供、〇—十二歳、小学校修了時、各年次、年齢に百万人いて児童手当を月二万円、年間二十四万給付するとするならば、三兆一千億の年間給付であります。現在、扶養控除による減税が一兆七千と想定されていますから、あと一兆四、五千埋める必要があると。そろそろほかの歳入を減らしてこういうものを増加させるという議論をしてよいであろうということで、直接的な児童手当が望ましいと思います。  次ですけれども、いわゆる出産費の補助ということであります。貧しい人たち、貧しい夫婦が結婚して育児休業になるような時代なんだから、所得保障が四割、スウェーデンでは八割ですけど、六割程度までに引き上げる必要があろうと。現行、日本における育児休業手当というのは失業保険特別会計から出ているが、失業保険特別会計があの訳の分からない建物を造ってそれはわずかな金額でしか売れなかったというとんでもない時代があったではないかと、ああいうくだらないことをするぐらいなら育児休業の保障を上げているのは当然であろうということであります。  二番からはちょっと違うタイプの話であります。晩婚化が進んでいて、現在五十万人の夫婦が不妊に悩んでおります。二〇〇三年、体外受精で生まれた子供は一万七千四百人、六十五人に一人、累計で十二万人。不妊治療の平均金額は、アンケートによると百五十万であります。結局十万円しか保険でカバーされてない状況にあると。現在、三十から三十四歳の女性の三割、百五十万人は未婚であると。しばしの間晩婚化が続くとする、結婚が遅れる、そうすると不妊に悩む比率も高くなる、そうすると不妊治療を保険の対象にしていくことが必要になるだろうと。  米国において、まあ日経新聞にも出ましたけれども、体外受精において、若い女性の卵子を使った場合の体外受精の成功率はかなり高いということであります。女性のライフスタイルの自由度を上げるために、自分は働く、どこかで結婚する、そして子供を持ちたいというならば、自分が若いときに自分の卵子を取り出して凍結しておき、それを自分のセルフバンクに預けておき、自分が三十代で結婚したときに利用するというようなことも認めていいと。これは、現在がんの治療をする前の女性に対して適用されていて、がんの治療、放射線治療が終了したら子供を産めるようにという格好で現実に行われていますが、もっといろんな格好で適用されていいだろうと思います。  申し上げたいことは、不妊治療も医療保険の対象にすべきであり、より大胆な政策が取られていいということでございます。  最後が教育問題でございまして、いろんなアンケートを取ってみると、子育て不安の一番が必ず教育費が高いということであります。その話をもうちょっと精密に考えてみる必要があろうと。  経済の国際化が進行しておりまして、国際的な企業というのは、従業員の能力、賃金を比較した上で最適工場立地をします。  社会保障のトップのスウェーデンは、以下のような苦悩を私に過去インタビュー調査の中で語りました。九九年にボルボは乗用車部門をフォードに売却し、今トラックメーカーであります。だけど、スウェーデン国内に旧ボルボの自動車工場が残っているが、フォード本体、デトロイトは、生産拠点をチェコスロバキアに移行しようとしていると。このことは、スウェーデンに大規模失業を生む可能性があるということであります。こういうことは、日本においてもいつでも起きる時代になっております。スウェーデンの家電メーカーのトップは、当社の開発はスウェーデンを中心に行ってきたが、再検討の結果、人工衛星を上げたロシアのサンクトペテルスブルグが開発の有力候補となったと。あそこの工科大学は頭がいいし、給料が安いと。つまり、RアンドD拠点が移動するリスクもあるわけであります。  これからの時代、この国においてジョブ、仕事が残るためには、その人間の能力が強くないと貧しい国になってしまうような状況であることは明らかであります。  それで次のページ、六ページ目でございます。  そういう状況の中で、大学を卒業してもフリーターになってしまう子供がたくさんいると。そうすると親御さんから見れば、早稲田、慶応、東大に入れなきゃやばいじゃないのという話になっていくわけですね。そうすると、二番、中高ともに私立に通った場合の総授業料六百九十万円は公立の二・三倍だけど、二〇〇六年、首都圏で五万三千人が中学校、私立中学を受験し、東京では四人に一人の子が中学受験をしているのが現実であります。  子供を持つこととしての不安の第一は養育費である。じゃ、どのくらい掛かるのかなというのをこども未来財団が調べましたところ、妊娠から大学卒業までに二千三百六十五万、教育費は千百五十三万、高校と大学のところが七百二十八万だったと。親がこれだけの金を掛けて果たしてどうなるんだという話になるわけであります。  それで、話は二つに分けられるのだろうと。とにかく、四番、理工系高等教育の強化というのが最重要課題であることも確かであろうが、教育費負担の少ない職業教育専門学校を増設する必要が絶対にある。それは二つの理由であると。  現在、公立小中学校でお金が払えず就学援助を受けている子供は、東京で二四・八、大阪で二七・九%であります。つまり東京においては、四人に一人の子供が中学受験をし、四人に一人の子供が親が貧しくて授業料が払えない状況にあると。明らかに教育における機会均等はおかしくなっているのが現れています。そのときに、貧しい人たち大学までの授業料を払えと言うのはむちゃだろうと。もうちょっと期間が短く、低コストで着実な専門性の身に付く教育機関をつくり、親の負担を下げる必要があろうと。  より単純に言ってしまえば、ディズニーランドのような大学を、四年間行って授業料を払ってふわっと出て、フリーターになって三十代になってしまうというふうな子供を絶対に避けるために、何らかの体制整備が要るであろうということでありまして、そろそろこういうことも検討して、若い人が結婚しやすい、就業しやすい環境をつくるということが、まあ全体として少子化対策ではないかというふうに考えております。  以上であります。
  7. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、白石参考人にお願いいたします。白石参考人
  8. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 皆様、こんにちは。東洋大学白石真澄でございます。  本日は、少子高齢社会に関する調査会におきまして意見陳述の機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。  前で使用させていただきますパワーポイント、若干文字が小そうございますので、是非お手元の資料と併せてごらんいただければと思います。  本日お話しさせていただく内容はこちらでございます。(資料映写)  私は今、子供が二人でございます。上が十六歳、下が十四歳になりました。私自身子育てをしながらずっと共働き、正社員で参りました。私は現在、少子化対策大綱検討委員委員、これはもう既に終わりましたけれども、規制改革・民間開放推進会議少子化ワーキングの主査を務めさせていただいております。  本日、私に与えられました課題は、子育て世代への住宅の支援をどうしていくかということでございますけれども、もうこれは釈迦に説法だと存じますが、子育て世代向けの支援は、住宅だけではなく、総合的にしていくことが必要だと思います。その中で、住宅をどうするかということについてお話をさせていただきたいと思います。  最後に、もし時間がございましたら、今日、巻末に資料もお付けさせていただいておりますのですけれども、保育所の待機児童数を解消する上で何が必要かということも若干御説明をさせていただきたいと思います。  これは、先ほど申し上げたとおり、子育て世代には総合的かつ多様なニーズに応じた支援が必要ということでございます。もう日本社会では爆発的に人口回復ができないという今、私は、少子化対策ということは少子社会を前提にいろいろな制度を組み替えていくことではないかと思いますけれども、一方で、様々な理由が子供を持つことを阻害しているのであれば、それを社会としてきちんと支援をしていく必要性も強く感じております。  当然のことながら、子育て世代の方たちにいろいろ調査をしますと、ここにお示ししたような様々なニーズがございます。国や地方自治体が、こういう制度を利用したのだからこれに合わせて生活しろということではなく、一人一人のきめ細やかなニーズに即した政策を打っていかなくてはいけないということでございます。その中の一つとして、今日お話をさせていただける良質な住環境のお話があるということでございます。  これもよく言われていることでございますけれども、今、昭和二十二年から二十五年生まれの団塊の世代の子供たちがちょうど出産適齢期に差し掛かっております。人口ボリュームとして非常に多い世代でございますので、これから五年間で政策の効果が出れば、日本人口回復というのは若干望みがつながるのではないかと思います。  それでは、住宅は少子化とどのように関係しているのでしょうか。  私自身も、子供が生まれた当初、ちょうど上の子供と下の子供、二歳違いでございますので、賃貸住宅をいろいろ探しました。当時、バブルがはじけたころでございまして、住宅はたくさん建設されていたわけでございますけれども、お子さん一人ならばいいですけれども二人ではちょっとと言われたことを記憶しております。家主さんにとっては独身者で回転率が高いほどやはりその価値があるわけで、住宅を汚される若しくは騒音の問題があるような子育て世代を抱えるよりは独身者を入れた方がいいわけでございます。今ではもうなくなりましたけれども、当時、住宅情報誌さんを拝見しておりますと、犬猫のマークと子供のマークが並列してかいてございました。それだけ子供を持つ世代にとっては住宅を安心して借りることができていなかったというふうに記憶をしております。  これは理想の子供数を持てない理由でございます。これをごらんいただきますと、トップに挙がっておりますのがやはり、持てない理由として、子育てや教育にお金が掛かり過ぎる、これ六割でございます。家が狭いからというのは八位に来ております。全体の一四・六%が家が狭いということを理由に挙げておりまして、特に二十代の妻では二割を超えております。  若い人たちほど賃貸住宅が多い、もうこれは当然のことでございますけれども、賃貸住宅に住んでいる人ではより家が狭いからという理由が多いわけでございますけれども、これは、先ほど中村参考人の御意見にもございましたとおり、この理由を挙げる上での優先順位が違うということをまず差し引いて、割り引いてお考えいただく方がいいと思います。子育て世代にとって一番の関心事は教育費でございます。教育費にまずお金を掛けたい、そして住宅の点は二の次、三の次でいいわけですので、当然、比率としては子供を持てない理由の下の方にこの理由が挙がるのは当然のことでございます。  それでは、子育て世代が求める政策とはどのようなものでございましょうか。  一番は経済的支援、これ七割でございます。若干、子供のその末子の年齢、一番下のお子さんの年齢によって違いますが、平均値を取ればこのとおりでございます。住宅や住環境に関するものは、これも下位でございまして、下の方に位置付けられておりまして、ファミリー向け賃貸住宅の優先入居というのが八・五%、そして建築物や交通バリアフリーの推進は五・二%と、合わせて一四%弱でございます。  それでは、その住環境に対するニーズが少ないのかというと、私は決してそうではないというふうに思います。先ほど申し上げたように、教育費の方に取られてしまって、これに対するその関心度合いがやや低いということでございます。教育費で、児童手当で出していくのか、若しくは住宅の方で出していくのかという出し方を変えても、私はもっと子育て向けに経済的支援をしていく必要があろうというふうに感じております。  これは全国の住宅の種類を問わないで平均の床面積を地図上に表したものでございますけれども、ブルーの部分、東京圏、大阪圏、そして九州の一部は一住宅当たりの延べ床面積狭いのがこの図からもお分かりいただけると思います。どちらかといえば、東北や日本海側の北陸地域というのは、住みよさ日本一に挙げられる富山などは非常に床面積が広いのがお分かりいただけるというふうに思います。  これをお考えいただきますと、住宅の床面積と合計特殊出生率、十五歳から四十九歳の女性が産む子供の平均数でございます、これとをプロットしてみたときに、住宅面積が狭い地域ほど出生率が低くなっているのがお分かりいただけると思います。小さい字で恐縮でございますけれども、赤字でプロットさせていただきましたのは、宮城県、千葉県、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、福岡、都市部でございます。都市部ほど住宅を持つこと、住宅コストが高うございますので、広い住宅を安く手当てしていくことが非常に難しいわけでございます。この結果、やはり子供を持つ上で住宅の理由が阻害要因になっているということでございます。  それでは、子育て住宅の現状課題に移らせていただきたいと思います。  国が定めております居住水準に最低居住水準と誘導居住水準がございます。これは第八期の住宅建設五か年計画で定められた目標でございます。家族の人数に応じてどれぐらいの面積に住まなくてはいけないとか、適切な、適正な水準、設備を兼ね備えなくてはいけないということが定められておりますけれども、四人家族の場合でそれぞれ、最低居住水準五十平米、そして誘導居住水準、都市型のものと一般型のものと分かれておりますけれども、こうした基準がございます。しかしながら、子育て層、特に都市部に住んでいらっしゃる方は、この誘導居住水準を満たしていない比率が非常に高いということでございます。  面積的に問題があるということだけではなく、私は子育て世代にグループインタビューをさせていただきました結果、やはりフローリングによる騒音の問題とか公共スペースの汚損の問題等で住宅の面において子供の育てにくさを感じていらっしゃる世代は非常に多いわけでございます。  これは高齢者の住宅の広さを二時点で見たものでございます。上が全国、下が六十五歳以上を世帯主とする住宅が九八年から二〇〇三年までにどういうふうに変わってきたかということでございます。  これを見ますと、全国で百平米以上の広い面積の住宅というものは九八年から二〇〇三年までに一・七ポイント増えております。全体的に持家層の質は上がりまして、広い住宅の割合増えております。六十五歳以上の高齢者を見ますと、これは五年間で広い面積の住宅が三・八ポイント増えております。子供が独立して高齢者夫婦二人になりますと、当然のことながら都心部のコンパクトなマンションに移りたいというふうに、便利なところに移りたいというふうに思うわけでございますけれども、これが現実的にはなかなか難しくて、古い、広い住宅にとどまったままになっているということでございます。  今、持家の日本の平均的な床面積、百二十三平米でございます。四捨五入しますと百二十四平米でございます。借家では四十六平米という、一対三の割合です、持家三に対して借家一でございます。三十代のファミリー層の持家率は三八%でございます。約五人に二人が賃貸住宅に住んでいるということでございます。四十代の持家率は六割強でございます。五人に三人が持家に住んでいるということでございます。残りを考えますと、三十代の六割、四十代の三割が狭い賃貸住宅に住んでいるということです。高齢者の住宅は広い、一方で子育て世代の住宅は狭いということを考えれば、広い住宅を持っている、かつ老朽化している高齢者の住宅を手当てをして、手入れをして、そこを若い人たちに振り向けていくような市場をつくっていく必要性があるということでございます。  これは、もう少し細かく高齢者層とファミリー世帯の住宅のミスマッチをお示ししたものでございます。上は持家、下は借家に住んでいる子育て層、ファミリー層でございます。ごらんいただけますように、高齢者の単身夫婦のみ世帯というのは、広い住宅に住んでいるややグレーのところの比率が多いのがお分かりいただけると思います。一方で、七十平米未満の狭い住宅に住んでいるファミリー層が多いということもお分かりいただけると思います。  もちろん、これはよく言われることでございますけれども、日本の中で完全にバリアフリー化された住宅というものは、今住宅ストックの三・八%しかありません。高齢者は、持家であっても高齢者の持つ住宅の設備面、段差が多いとか手すりがないということで、住み続けていく上で問題がある住宅が多いということでございます。そこを手当てをして、若い世代にどういうふうにすれば流通していくのかということを政策的にお考えいただきたいというふうに思います。  これは、子育てにおいて重視する要素でございます。子供年齢によって、住宅の中で重視する要素は異なります。平均値で見ますと、やはりこれだけ治安の問題などが悪化してまいりますと、安全な地域に住みたいというようなことで、安全性に対する比率が上位に来ているのがお分かりいただけると思います。子供年齢が小学生以上の場合は、幼稚園や小学校などへの利便性というところが高くなってまいりますし、また子供年齢が五歳以下のときは、赤で囲いました子供の遊び場や公園などというものが第一に上がってまいります。子供年齢によって住宅の中で重視する要素は異なる、それではどうするかということを考えたときに、子供年齢によってきちんと住み替えができる環境を整えていくということでございます。持家を持つときに、子供年齢時点で何歳で持ちたいかということを聞いたときに、子育て世代の多くは子供が小学校入学時点でございます。入学時点で持家を持ちたいという人たちが大勢でございます。  これは住宅ローンの返済率でございます。これは、一九九三年以降どれだけ実収入に占める住宅ローンの返済額の割合が占められているかということをグラフに表してみたものです。二〇〇三年の月当たりのローン返済額でございますけれども、実際にローンを払っている人たちに聞きましたところ、平均で十万六千円でございます。十万六千円を払い続けているわけでございますが、それが実収入に対して比率が上がっているということです。返済額というものの比率は、実収入の伸びを大きく上回っている。実際には、ここ十数年地価は下落をしております。ようやく都心の商業地だけは反転しましたけれども、日本全国、住宅や地価は下落している中で実際は借入額が大きくなってきている、その比率も高くなっているということは、収入が減ってきていることの裏返しだと思います。  それでは、子育て世代向けにどのような政策が今まで行われてきたのでございましょうか。  少子化対策大綱では、目指すべき社会の姿として、妊婦や子供連れの人に対し配慮が行き届き、安心して生活ができるということをうたいました。具体的には、まず住宅の面積を確保しましょうとか、ゆとりある広さを持てるように住宅支援をしましょう、職住近接を実現していきましょうということが盛り込まれています。職住近接というのも父親が子育てに参加する上では必須要件でございます。目標がきちんと定められているものもあれば、そうでないものもございます。  これは、各自治体による子育て支援のための住宅政策をお示ししたものでございます。独自財源でいろいろなメニューが増えてまいりました。例えば、神戸市などは、空き家が増えている中層の市営住宅の一部を子育て住宅に転用するというものでございますし、北区などでは、最低居住水準のその以下の賃貸住宅に入っている場合、お子さんが多い、三世代同居の場合は引っ越しを出すというようなものとか、ちょっと変わったところでは、一番下の栃木県などは、中学生以下の子供が二人いる家庭では融資額、融資の利率を下げるというようなことも行われております。  それでは、最後に、今何をすべきかということをお話しさせていただきたいと思います。  もう一度繰り返しになりますけれども、これから五年間が勝負でございます。子育て世代の住宅の整備、供給のために今こそきちんと予算を確保し、目標を作り、政策動員をしていくということでございます。一番大切な前提としては、住宅というものは子育てをする上でどういう位置付けを占めるのか、どういう意義を持つものかというような理念があいまいだということでございます。住宅を子育ての安心インフラと明確に位置付けていく必要があろうかと思います。  一つ目は、まず、今検討されております、少し耐震偽装の問題などで遅れておりますけれども、これからできようとする住宅基本法の中で、子育てを支援する住宅とはどういうものかという理念を明確化していただきたいということでございます。  二つ目は、住宅の面において具体的なアクションプラン、行動計画を作っていただいて、今から五年間、十年間でどういうレベルまで持っていくのか、国の範囲はどういうことなのか、市町村の範囲はどういうことなのかという責任範囲をしていただき、予算を確保していただくということでございます。  これはほんの一例でございます。例えば、今、公営住宅の所得制限あります。東京都の場合だと、四人家族で給与所得で五百十万、それ以外では三百五十四万以下の人しか入れません。小学校就学前の子供がいる場合はプラス百万の加算をしてもいいのではないかと思いますし、負担をしていただいてもいいですので、今、千葉県などで公営住宅の平均家賃二万円でございます。五万円負担をしていただいてもいいですので、建て替えなどに合わせてもう少し広い住宅を確保して、そこに住宅を欲している人たちがスムーズに入れるように計画的に実行していくということ。  例えば、今、都市再生機構の賃貸住宅なども倍率優遇がございますが、これをもっと極端に現行の十倍から二十倍にしていくと。建て替えのときに保育所を併設して、地域の子育て拠点として一時預かりなどを積極的にやっていくというようなこともあります。  定期借地権住宅なども徐々に増えてきました。これ、個人の所有財産に関して国費を入れるということが難しいのであれば、借地料について補助をするということも一つのアイデアではないかと思います。  中古住宅の創出に関しては、民間がやるというのであれば、その賃借の上で不安でございましたら、公的なところを間にかませて高齢者の持っている住宅をきちんと借り上げをして、引っ越し費用を出して、そこを計画的にメンテナンスして子育て世代に貸していくと、そのための住宅価格の整備、中古市場の整備というようなこともできるのではないかと思います。  これは、最後にお付けをしました、保育に関する現状でございます。  今、保育は圧倒的な官製市場でございます。利用者が選べないということです。利用者が選べませんし、非効率な運営されております。ある区で聞きますと、夜六時以降の一時間の預かり保育、四百円でございます。裏側では五千円、六千円掛かっているのに利用者負担が非常に少ないわけでございます。  きちんとサービスに合った負担をし、それぞれの施設間で競争し、待機児を解消させていくには保育所と利用者の直接契約しかありません。そのために、介護保険に合わせた形で、介護保険に上乗せをする形で、国民一人二十歳以上の方から四百円か五百円を上乗せする形で徴収をして、子育て世代に利用券、保育のために使えるサービス券という形でバウチャーとして配付をしていきます。そして、保育園と利用者が直接契約をして子供を預かれるようにする。そうすることによって、次のページでお示ししたように、認可保育所とそれ以外の保育所での公費の格差というものが解消されます。頑張る保育園、良いサービスを提供する保育園に同じようにお金が流れる仕組みができるということでございます。  是非、これはお時間の関係で一〇〇%説明をさせていただくことができませんけれども、これも巻末の資料を御参考にしていただいて、後で質疑のところで補足をさせていただければと思います。  どうもありがとうございました。御清聴いただいてありがとうございました。  今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げます。
  9. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わります。  これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時をめどとさせていただきます。  なお、質疑者及び各参考人にお願いいたします。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。  また、多くの方が御発言できますように、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきます。  なお、質疑の際は、最初にどなたに対する質問であるかをお述べいただきたいと存じます。  では、質疑のある方は挙手をお願いします。  中原爽さん。
  10. 中原爽

    ○中原爽君 自由民主党の中原でございます。  品川先生、参考人に伺いたいと思います。  所得税制につきまして、先生の御説明ですと、個人単位課税ということではなくて家族単位という考え方をお示しになっておられますが、この家族単位というのは、先生の御意見にもあったかと思うんですが、夫婦の単位と、それからフランス方式のN分のN乗の家族単位ということについての所得税制の掛け方ということだと思います。  それで、このN分のN乗についてフランス現状うまくいっているのかどうか。というのは、人口が増えているのかどうかということが一つと、それと、税収と控除のために出ていく部分とのバランスが当然国家としてはそのバランスを取っていると思うんですけれども、この辺りの現状はどういうものか、お分かりでしたらお聞かせいただきたい。フランスについては以上でございます。  それと、あと、この夫婦単位という考え方については、要するに配偶者控除という考えを入れながら夫婦単位と。というのは、夫婦で共稼ぎでない場合もあるわけですから。この点については、中村先生の御意見では結婚控除というふうにおっしゃっておられますので、そうなりますと配偶者控除そのものの言葉は必要がないということになると思います。  しかし、現在、結婚控除にしろ夫婦単位にしろ、所得税控除から始めて、家族という意味フランス方式のN分のN乗を取り入れていくということになると、総人口一億人を維持するために特殊合計出生率二・一人を維持するということですと、少なくとも家族単位四人ということになると思うんですね。この四人をこれからN分のN乗を取り入れながら二・一まで到達するということについての、この税制をこういうふうに変えたという場合に本当に何年ぐらい掛かるのか。何十年も掛かるというものでは意味はございませんので、白石先生言っておられるように、団塊の世代の子供世代というところから、こういうところでこういう税制がうまくいくものかどうか、予測でございますけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  11. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、品川参考人、どうぞ。
  12. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 大変難しい御質問でありますが、そもそもこの種の所得税制でどういう効果が上がるかという確実なデータはないわけでありますが、ただ、今までいろいろと機能的にといいますか、いろんなデータから考えるに、フランスの場合は、このN分N乗でどれだけの効果が上がったという具体的なデータはないにしても、現在の出生率それ自体は少なくともECの中で一番高い数値を示していることは確かであろうかと思います。イタリアとかドイツとか隣国に比べてフランス出生率はたしか一・七ぐらいまでいって、イタリアとかドイツは我が国と同じように非常に低迷しているという事実は指摘できようかと思います。  それから、夫婦単位か、あるいは先ほどのような結婚手当を出すとか、これもいろんな議論があるわけでありまして、これも、私も冒頭申し上げましたように、少子化対策所得税制で採用するという問題は、これは多くの政策の中の一つにすぎない。  所得税制について最近非常に私が危惧をしているのは、みんな一人になっていると。世帯もみんなどんどんどんどん一人になっているから、一人の世帯単位にして、そしていろんな控除をもうやめて、基礎控除だけ上げればいいではないかと、こういう議論が実は大勢なものですから、これは、そういうことをやるとますます一人を優遇してしまうんですね。そういうことに対して非常に危惧を覚えているわけであって、したがって、もっと家族を大事にする税制の方が大事ではないかと。  それでも、先ほど来、そういういろんな政策は社会保障の問題と言わば併用してやって初めて全体の効果が現れてくるわけでありますが、ただ、所得税制の問題は、所得を稼得した人がどういう処分をしていくかということが非常に大事である。結局は自助努力なんですね、所得を得るという。また、所得を得て、それを自分の意思でもってどういうふうに配分していくか、そのインセンティブにおいて子育てとか子供を産むとか、その前提としてできるだけ結婚した方が有利であると。  結婚した有利の問題も、二分二乗の場合、結婚してから夫婦がパートナー同士でどういう家族を営むか、仕事をしていくかということは、実はいろいろと選択肢があるわけですね。共稼ぎと片稼ぎと一口に言いますが、共稼ぎも大いにやればいいし、片稼ぎで、片方は銃後の守りを完全に固めて一人が完全に人の二倍、三倍も働く方法だってあり得るわけであって、そのことは我が国の経済成長にもいろいろといい結果を生んできたわけですね。私自身、公務員同士で共稼ぎもやりましたし、あるいは片稼ぎになって、完全に育児もあるいは老親の世話もすべて家内に任せてそういう社会コストをできるだけ低くして、そして自分所得を増やしてきたこともありますが、いろんな生き方をやはり保障する必要があると思うんですね。  そういう意味で、夫婦財産制の問題もあって、この二分二乗というのはいろんな生き方を保障する意味で非常に大事だと思うんですね。とにかく共稼ぎでなければ駄目だとか専業主婦は怠け者だとか、そういうふうな一方的な決め付けだけではなくて、いろんな生き方を保障することが社会を豊かにすることである。その中で、お互いの意思で子供を産み育て、そして豊かな社会をつくっていくというのが問題で、それは所得を稼得している世帯に対する税金をどう配分するかということがまず前提で、社会保障とか、先ほど中村参考人からも御指摘のいろんなフリーターの問題とか、いろんなことで今社会保障体制を強化しなければならないということは、これは私も同感でありますが、しかし、元は所得を得ている人たちに対する税制をどうするかということが一つあってしかるべきだと。  その考え方として、さっきのような二分二乗とか、一番現状では、やはりN分N乗でできるだけ家族の多い世帯を優遇してもいいではないかというのが私の意見であります。
  13. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  関口さん。
  14. 関口昌一

    ○関口昌一君 品川先生、非常に私も参考になりました。  実は、私も予算委員会で少子化対策について、N分N乗の税制在り方についてとか、あと、特に少子化対策においては、働く女性の支援というのは強く訴えられるんですが、専業主婦に対してもう少し評価をして少子化対策として支援策はないだろうかというような質問もさせていただきました。  もう多くの先生がこれから質問するかと思いますので、一点だけ、三世代同居世帯に対して、少子化対策として、特に税制措置ですね、考えるべきだということも質問したんですが、先生の何かいいお考えがあったら教えていただければと思います。N分N乗ですと子供の数をカウントするというようなことなんですが、三世代同居世帯の場合に、おじいちゃん、おばあちゃんの数もカウントしたらどうかという話も、ちょっと質問もしたんですが。
  15. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 品川参考人、どうぞ。
  16. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) おっしゃるとおりだと思います。  私も、N分Nの中に老親を含めても私は一向構わないと思います。現に私自身自分の親が九十四歳と九十五歳、同居してすべてその世話を家内に任せて自分はもう必死に仕事をやってきたわけでありますが、それによって社会コストを非常に下げる、自信を持って自分たちですべてその世話をしてきてそして送り出してきたという、そのことが育児や何かにもある意味ではいい影響を与えてきた、そういうふうに自信を持って言えると思いますので、先生の御指摘、私はごもっともだと思いますし、そういう方策も是非考えていくべきではないかと、そう考えております。
  17. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか、関口さん。  ほかにいかがでしょうか。  坂本由紀子さん。
  18. 坂本由紀子

    坂本由紀子君 自由民主党、坂本由紀子です。  品川参考人にお伺いいたします。  私も、家庭を大事にするというメッセージを国民に出すためにもN分N乗というその税制は非常に意味が大きいと考えております。ただ、そのN分N乗にするときに幾つかの課題があるかと思います。一つは、家庭単位でありますので、すべての人が確定申告をしなくてはならないというような、そういう徴税面での手間暇が掛かるのではないかと思うんですが、多くのサラリーマンが源泉徴収で税を払っている現状から考えて、この点についての有効な打開策としてどんなお考えがあるかというのが一点です。  それから、二点目といたしまして、このN分N乗には低所得者の負担が軽減されないとかあるいは高所得者の軽減効果が大きいということが言われております。低所得者の部分については、先ほど一%の税率だってあるという御指摘でしたのでその点が有効に機能するかと思うんですが、この高所得者のところに減税効果が大きいということについてどう考えたらよろしいか。私は、N分N乗の導入は、イコール累進税率をもっと急にするということが必要だとは思っておりますが、その点についてのお考えを聞かせてください。  それと、最後、独身課税の強化ということを御指摘になられましたが、N分N乗以外の方策でこの独身課税を強化する具体的なやり方というものにお知恵がありましたらお聞かせいただきたい。  それと、今日は少子化でお考えを聞かせていただいておりますが、少子高齢社会というのがこの調査会でのメーンテーマであります。高齢者については、かつて子供が親を養うというところから今は社会高齢者を支えているわけでありまして、そういうことからすると、もっとその相続税、つまり社会に養ってもらったお返しを社会に返すという意味で、相続税を強化した方がいいのではないかという意見が出されておりますが、これについて品川参考人のお考えを聞かせていただきたいと思います。  それと、長くなって恐縮ですが、中村参考人には一点、いろいろ御指摘になった御意見はもっともですが、財源の確保をどのようにお考えか、具体的なお考えがあれば教えてください。  それから、白石参考人には、住宅の広さの問題と同時に、特に首都圏等では通勤時間の問題も大きいかと思うんですが、この点についてのお考えを聞かせていただけたらと思います。  以上です。
  19. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、三人の参考人に質問が出ましたけれども、まず品川参考人からどうぞ。
  20. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) それでは、一応その要点だけ申し上げますが、まず徴収面の問題について、私もこれは専門でやっておりましたのでよく分かりますが、今の所得税でも源泉徴収という方法で、例えば家族がいるいない、子供が何人いるいないで、それによって毎月の所得税の源泉徴収額が全部決まっているわけですね。したがって、これもN分N乗で年間税額や何かをあらかじめ計算できるわけでありますが、それに応じて子供の数あるいは扶養家族の数によって税額算定が毎月簡単に計算できるはずですね。そういう意味では、今のように源泉徴収を建前にして何ら徴収上不都合が生ずることはない、そういうふうに考えております。  それから、低所得者の問題については、これは所得税ですからあくまでも所得税を納める人の税制をどうするかということで、先ほどのようなフリーターのような所得税を納めるまで所得がない人に対しては当然対象外ですね。しかし、そういう人たちには社会保障の上で別な手当てがされると。何度も申し上げますが、所得税の手当てと社会保障の手当ては併用されて当然であって、別に二者択一ではない、そういうふうに考えております。  それから、高額所得者に対して有利になりはしないかというこの問題でありますが、これは多くの方が確かにそういう御指摘があります。ただ、もっと大局的に考えた場合に、やはり所得の多い人もどんどん子供を産んで育ててほしいわけですね。あるいは、所得が何に比例するかということは一概には言えませんけれども、より能力の高い、あるいはいろんな優れた人のところに所得が集まるというのは、これは一つの組織の流れですから、そういうところで多くのやっぱり子育てをしてもらうということが、私は、それを高額所得者が有利になるという言葉だけで退けることはできないのではないか、むしろ所得に比例した形で育児を補助するというやり方も所得税制の上では必要ではないか、こういうふうに考えております。  それと、低額所得者に対する手当てというのは、先ほどとの関係でその問題は解決できるかと思いますし、もう一つのこの独身課税の問題については、N分N乗であれば当然独身者はNが一でありますので、必然的に累進税率が高くなるので、それによってかなりカバーできるかと思います。  ただし、もう一つは、税制議論としては、先ほど中村参考人の方から結婚控除という話がありましたが、逆に独身税というのを掛けるべきだという、こういう議論もあるわけですね。それはにわかに賛成するわけにはいきませんけれども、考え方としてはそういうペナルティー的な税制があってしかるべきである。私は、先ほども申し上げましたように、人間は年を取ったら幾ら財産があっても若い人の世話にならざるを得ないわけですね、介護の問題にしても。よって、人様を育てた手当てになる以上、自分が働けるときにはちゃんと保険料だけではなくて税金も納めてもらった方がいいのではないかと、そういうふうに考えております。  相続税の問題については、御指摘のように確かに現在のこの相続税は、かつて四兆円ほどあったのが今は一兆二、三千億しかなくなっているわけですね。これはバブルのときに基礎控除を大幅に引き上げた結果でもあるわけでありますが、バブルがつぶれていろいろとこの資産課税が縮まっている中で、これはもう一度見直す時期に来ているということは、これは御指摘のとおりであろうかと思います。  以上です。
  21. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 中村参考人、どうぞ。
  22. 中村実

    参考人中村実君) 財源の点でございますけれども、国家財政再建をしなければいけないと、歳出を削減する中で少しずつ消費税を上げていく時代だと思います。結局、児童手当にした場合の財源を何に求めるかという問題になるんだと思いますが、まあ扶養控除で減税が、減税効果が一兆七千億と発表されていますから、あとは残りをどうするかであります。  まあ何か例を挙げろと言われたなら、例えば地方公務員給与総額三十兆円である、一割カットすれば三兆円出ると、そういう問題にもう手を触れなければいけない時代だろうというふうに思います。
  23. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、白石参考人、どうぞ。
  24. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 現在、都心回帰が進んでおりますけれども、やはり地価の高騰によって子育て世代が持てる住宅というのは十数年前から郊外でございました。その結果、一都三県の平均通勤時間、七十分を超えております。これを子供数との関係で見ますと、やはり遠距離に住んでいるほど子供との一日のコミュニケーション時間、非常に短いですし、一週間のうち子供と夕食をともにする頻度も少ないのが現状でございます。  いったん持ってしまった家をどうするかというような発想も非常に大切でございまして、これから造る住宅を都心に大量供給していくという発想と、一方で、働き方を変えることによって住宅の遠隔地にあることをカバーしていく必要性もあると思います。例えば、ある生命保険会社のワークバランス社員というのは、労働時間も二分の一でございますが給与も二分の一でございます。短時間勤務や子供が六歳未満のうちの時差出勤なども活用することによって、遠隔地にある住宅の不利性はカバーできるのではないかと考えております。  以上でございます。
  25. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 坂本さん、よろしいですか。  それでは、川口順子さん。
  26. 川口順子

    ○川口順子君 中村参考人が、結婚をしている人の子供の数はずっと二・二人であるというお話をなさいました。そういう事実が、それがかなり根強い動きであるというふうに考えると、今結婚をしている人の夫婦の子供の数を増やそうとする努力というのは余り効果がないんではなかろうかという気がいたしますが、いかがでしょうかというのが一点です。  それから、これはできたらお三方にということなんですが、全体としてその少子化対策が、結婚をさせるか、あるいは結婚をしている人に経済的な支援をして子供を増やさせるかという方向に今行っているような気がするんですけれども、この結婚をさせるということに関係があるんですが、ずっと私、自分も働いてきて子供を育ててきてみると、今の若い人が結局結婚に踏み切らないのは、多少のその三十八万円の控除の問題ではないだろうという気がするんですね。  働き方の問題、機会費用、収入が失われるということもありますし、それから実際に職場に気兼ねして、あるいはその他の理由で育児休業も取れない。現に取っているのはその一割ぐらいしかいないわけですから、子育てをしながら、ということであって、経済的な支援をするとかいうことはあんまり、個人にその支援をするということは余り意味がないんではないかと。  むしろ、意味があるというのは、そういった環境を働いている人に与えるように企業に仕向けることであって、それはその企業が、例えば一人に育児休業を与えればインセンティブを何かもらえるというような、企業がそういう行動を取って、働いている社員結婚もし、あるいは子供も産みということができるような環境をつくるのが一番早い道じゃないだろうかという気がどうもいたしまして、そういう意味で卵子バンクというのはおもしろい発想だというふうに思いましたけれども。  特に、これは品川参考人に伺いたいのは、税制の中で企業へのインセンティブを与えるということでどういう案があり得るだろうかということです。ですから、今の質問は品川参考人に伺います。  それから、バウチャーの話があって、これも経済的な効率性というところでは意味があると思いますけれども、実際に保育園に子供を連れて通うという人の行動形態からすると、例えば駅までの途中にあればそこにする。幾ら良くても回り道してそこに連れていこうという時間はないんですね。ということでいうと、考え方としては非常にいいと思いますけれども、実効性という意味ではあんまり意味がないんじゃないだろうかという気がしますので、その点、三点について伺いたいと思います。
  27. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、またお三人の先生方に御答弁をお願いしたいと思います。  中村参考人からどうぞ。
  28. 中村実

    参考人中村実君) 最初の、まず過去三十年間アンケート調査をやりました。いつも二・二人というふうに結婚した女性答えてきています。でも、答えてきている結婚女性人たちが何歳で結婚したかをよく見てみると、晩婚に、極めて遅く結婚した女性から生まれてくる子供の数が減りつつあるわけですね。つまり、晩婚化の進行がこれ以上進んでいくならば、二・二、過去三十年間同じだった数字が減少するリスクがあると。  ここにおいて、結婚しなきゃいけないとかいう、まあ経済的支援という議論じゃなくて、五十万人の不妊に悩む家族がいるということならば、いわゆる生殖医療の問題である程度解決する手段をつくっておく必要があるだろうということであります。それが、まあ結婚が二・二と。  本質的に重要なことは、この国ではシングルマザーがほとんどいませんので、じゃ、女性晩婚化をいつやめるか、男性晩婚化をいつやめるかという問題である。こちらが少子化の主因でございます。  それで、NのN乗の問題に関してはこう思っております。昔は貧乏人の子だくさんと呼ばれていましたけど、今の時代にそんなのどこにも見えないと。子供はほとんどちいちゃいとき死ななくなりましたんで、どこの家族においても少ない子供を大切に育てる時代に変わってきている。だから、NのNにすることによって、産めば産むほどインセンティブを与える必要はもはやないのではないかというふうに思っております。  ですから、たくさん子供が生まれたらたくさん優遇してやるぜという必要は別にない。どんな先進国を見たって、やはり二人あるいはその前後であり、そういう、子供がちゃんと生まれるように結婚がある程度しやすく、高齢化のときに、不妊に悩んでも、それについて何らかの社会の支援がある体制にしておけばいいのではないでしょうかというふうに考えているわけであります。
  29. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、品川参考人、どうぞ。
  30. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 今御指摘のように、この少子化の問題についてはいろんな原因があるわけであって、私自身冒頭に申し上げたように、これはある意味個人の哲学の問題なんですね。  我が家にも娘と息子がいて、息子はようやく三十半ばで結婚したんですが、娘が三十前で、要するに、お父さん余り結婚したい相手がいないと言うんですね、それは魅力のある男性がいないという意味もあって。ただ子供がほしいから、どこかの、要するに場合によっては非婚のママになっても構わないみたいな物騒なことを言って冷やりとさせられるわけでありますが。要は、一つ子供を産み育てることに魅力をみんなが感じなくなっているのが、私は、最大の原因なんですね。  私は実は農学校出身で、家畜も育て作物も育て、物を育てることの重要性と物を育てることの喜びと、またそういうことを非常に実感してきているんですが、都会の人はそういうことが余り実感できていないんですね。よって、本当に子供を産んで育児が本当にすばらしい仕事だと、こういうことが本当は実感できるのが私は最大の少子化対策だと思うんですね。  ところが、何か子供なんか面倒くさいみたいな、あるいは仕事の邪魔になるとか、要するに我々の生命を次につないでいく最も貴重で尊厳のあることを非常に尊重しなくなったという社会風潮が私は最大の原因であって、所得税制どうやるとか、先生も御指摘があったように、配偶者控除の三十八万がどうのこうのなんというのは、あんなのは言ってみれば何てことない話なんですね。ただ、税制でどうあるべきかということについてはやはり税制の中できちんとそういうことを、産んだ人が報われるような、育てた人が報われるような制度が必要であると。  今、中村参考人の方からN分N乗なんかやったって意味がないとおっしゃりますけれども、でも高額所得者の中にも五人も六人も子供を産んで育てている人が一杯いるわけですね。だから、それは価値観の問題で、育てた人に褒美があってしかるべきで、そういう人にやっぱり尊敬の念も含めて税金を安くしてあげるということは、それはそれで非常に大事なことだと思うんですね。  それから最後に、企業のインセンティブをどうするかというのは、これは確かに、今日は所得税制の問題で申し上げたわけでありますが、企業が例えば育児の施設を造るとか、あるいは休業を認めるとか、そういうときに法人税でかなりのインセンティブができるんですね。そういう育児施設を造ったら全部それが、建物を建てて全部損金で落とすとか、あるいはその税額控除を認めるとか、あるいは育児休暇を取った人に対しては何日幾ら税額控除とか所得控除は損金算入を認めるとか、こういうやり方は幾らでも取れるはずであって、そういうことによって育児休業が企業にとってもプラスになる、企業にとっても育児休業を与えたら法人税が安くなるという、こういうやり方を取ればいいんですね。  今、設備投資や何かするといろいろと減税をやって、設備投資をした減税だけでも平成十五年、十六年では年一兆円も減税しているわけで、今度、今年の税制改正で若干それは手を緩めておりますが、過去にそういう政策的な税制をやっているわけでありますから、これは子育てのために企業に対していろんなインセンティブだって幾らでもできるんですね。それから、固定資産税や何かもそういう施設を造ったときには減税できるというやり方があるわけでありますから、税制の問題は別に所得税だけではなくて、大いに先生御指摘のように、この企業税制の中にも取り込んで育児の環境を整えるべきだと、そういうふうに考えております。
  31. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 白石参考人、どうぞ。
  32. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 川口先生がおっしゃいました、企業に対して様々なインセンティブを組み込んでいく、私もこれはまず社会的な実験をすべきではないかと思います。企業に対しては、現時点でもこれからですから中小企業に対して一律百万円、そして産休の代替要員、育児休業の代替要員を、採った方の手当てのために補助金が出されているわけでございます。現行の制度もありますし、これから税制でやるのか補助金でやるのか、いろいろ方法論はあるかと思いますが、私は、今までのお金の使い方で最も問題なのは、きちんとお金を出した上での政策検証ができていないということだと思います。税制でやる、そして補助金でやる今までのやり方で果たして効果があったのかどうかということをまず検証してから議論をするべきではないかと思います。  二点目に御質問をいただきましたバウチャーのことなんですけれども、現在都心区の中では、徒歩圏で、二十分圏内で保育園が二か所、三か所あるところも出てまいりました。私は、バウチャーというのは、先ほど保育園を選べるためにこれを導入するという一つの目的を申し上げましたけれども、もう一つの目的はバウチャーによって保育園を増やしていくということでございます。  新宿区内に、二十四時間やっておりまして、有機野菜で給食を三回作り、そして母親が望むような語学教育なども積極的にやっている保育園があります。これ、かつて認可外保育園でございましたけれども、認可を取って、社会福祉法人の取得をして認可保育園に変わりました。なぜかといいますと、やはり補助金が少ない中ではいい保育を持続的に提供することができないということで、無認可が認可保育園に変わっていったわけでございます。  きちんとお金を出すことによって保育園はもっと増えてきますし、サービス競争が起こってまいります。是非、保育園をまずパイを増やす、今全国で二万三千人の待機児童、そして内閣府の調査では首都圏だけで二十七万人もいる潜在的児童の解消をするためにパイを増やす、そのために認可と認可外の参入障壁をイコールフッティングにするという意味でのバウチャーという制度と御理解いただきたいと思います。  ありがとうございます。
  33. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 川口さん、よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  小林美恵子さん。
  34. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。今日は参考人の皆さん、本当に貴重な御意見ありがとうございました。  私はお三人の参考人の皆さんにそれぞれ一問ずつお伺いをしたいと思います。  まず、中村参考人にお伺いしたいと思いますけれども、私も子育て世代に対する経済的負担の軽減というのはとても大事なことでございまして、児童手当拡充とかいうのは本当に重要なことだというふうに考えます。先ほどのお話の中には、例えば扶養控除廃止をして直接というお話もございました。  そこで、一つお聞きしたいんですけど、例えばこの間も年少扶養控除、それから配偶者特別控除廃止とか、また定率減税の全廃とか決定されて、また既に実施されているものもございますけれども、そういうことと考えますと、いわゆる扶養控除等廃止をするということは、例えば児童手当を受ける対象にもかかわると思いますけれども、一番教育費などがたくさん掛かる、そういう子供さんを持っている世代については結局は増税につながっていくんじゃないかということが私は考えられると思いますけど、そういう矛盾についてはどのようにお考えかというのを一点お聞きしたいと思います。  それと、品川参考人にお伺いしたいのは、そういういわゆる各種控除の問題ですね。各種控除廃止が私は本当に低所得者の人ほど重い負担になるというふうに思います。私の手元の試算でいきますと、例えば定率減税の廃止とか給与所得控除の半減とか配偶者扶養控除廃止等を見ますと、年収三百万の方の増税倍率は三十三・一倍になります。三千万の方でいきますと一・二倍になります。要するに、年収が低ければ低い人ほど各種控除廃止とか半減とかされていきますと大変、何といいますか、負担が重くなるということで、それは結局、子育て世代は年収は決して高くはございませんので、そういう各種控除廃止というのは結局は少子化に逆行していくものじゃないかという点で、その御意見をお聞きしたいと思います。  あと、白石参考人には住宅の問題で、その住宅の問題が少子化とも、大きく要因になっているという点で貴重なお話をいただきました。それで、先ほどございましたけれども、私も、何といいますか、今、住宅は、公営住宅、所得制限がかなり高くなってきてなかなか入れない状態になっていますよね。一方で、マイホームということもあって、マンション建設ラッシュもあって、多額のローンを組んでお住まいになるという、余儀なくされているという局面が政府の住宅政策の中にもあるというふうに思うんです。  そういうことから考えますと、やっぱり若い世代向けの安い、本来は公共住宅をもっと建設することと、同時に、ローンも負担可能なローン、家賃も負担可能な家賃ということで、これから住生活基本法の審議もございますけれども、そういうことも設定をしていくべきではないかというふうに思いますけど、この点、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  35. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、中村参考人からどうぞ。
  36. 中村実

    参考人中村実君) 私自身扶養控除廃止して直接的な児童手当にすべきであると。なぜ扶養控除が嫌かというと、扶養控除年収が多くなればなるほど、つまり限界税率が一〇、二〇、三〇、上がれば上がるほど減税効果が大きくなると。つまり、豊かな人ほど減税効果が大きくなる、そういう児童手当はおかしいだろうと。それより、それほど豊かでない人たちに対して直接的なキャッシュが非課税で渡される児童手当の方がいいだろうと思っていると。  今お話しの中で、扶養控除をなくすとその分所得税が増えるじゃないかという議論だったと思いますんで、四ページ目の資料で説明いたします。  子供が二人いたと、限界税率一〇%だったと、年間の減税三万八千円と六万三千円だから多分十一万円の所得税の還付が得られると。下で私が説明したのは、非課税キャッシュで二十四万渡すだと。だから、この人にとっては扶養控除所得税が減るよりも直接的に児童手当がもらえた方が得ではないかと。さらに、収入が低い方にとってはその効果も強いであろうと。  で、豊かな人に対して児童手当をどうするかの問題はまた別な議論にございますけど、私自身は高額所得者に対して児童手当は出さないという格好で調整すればいいのではないかと思っております。
  37. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 品川参考人、どうぞ。
  38. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 今の控除の問題ですが、そもそも税制上の、所得税制上の扶養控除の問題と社会保障の手当の問題というのは、言うならば次元の別な問題なんですね。と申しますのは、所得税における控除の問題は、自分が稼いだお金のうちの幾ら自分が使えるかという直接的な、言うならば可処分所得の増減にかかわるわけでありますし、他方、社会保障の方は、所得制限がどうとかあるいはいろんな制限があって、納めた税金が戻ってくるのにはいろんな時間も掛かるし、人のところに行って戻ってこない場合もあるわけですね。したがって、まず稼いだ人が自由に使えるお金をどうするかということが問題ですから、私は配偶者控除扶養控除も、あるいは今まで採用されてきた特定扶養控除とか老人扶養控除も、それぞれの目的がある限りはやはり温存していくべきではないかと。  二年ほど前にこの特別配偶者控除廃止されたときも、私もある新聞に投稿いたしまして、これでは少子化に逆行するではないかと。私のマンションにも若い奥さん方が必死に子育てをしていて、その人たちはみんな専業主婦なんですけれども、そういう人たちに、今でも所得がそれほど多くないにもかかわらず、今、小林先生から御指摘のあったように、最高十何万ぐらい税金がすぐ多くなるわけですね。最低でも三万とか四万税負担が掛かるわけでありますから、所得税制の根本的な議論もしないでただ控除をやめればいいという、そういう短絡的なやり方は私はおかしいと、そういう警鐘は鳴らしてきたつもりです。  以上です。
  39. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、白石参考人、どうぞ。
  40. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 今、小林委員の方から、もっと子育て世代向けの住宅供給が必要だという御意見いただきましたけれども、私もそのとおりだというふうに実感しております。  日本人は非常に持家志向強いわけですけれども、バブル崩壊以降もやはり依然としてこの持家志向根強く残っている中で、一部の人たちは一生賃貸住宅でもいいというような新しい考え方を持った人たちが出てきています。やはり、若い人たち向けの住宅政策ということを考えたときに、借家、賃貸住宅政策と、そして持家供給策というこの大きく二つのカテゴリーがあると思うんですね。  一つは、低所得者向けの公営住宅、今お話にもございましたけれども、これをどうしていくか。今、都道府県や市区町村でもこの公営住宅の管理運営、非常にその後悩んでおります。こうしたものを老朽化している中から計画的に建て替えて、もっとたくさんの容積率を乗せて戸数を増やしていくと。管理運営面なども公的な自治体から切り離して民間委託をするとか、NPOが管理運営をするということによって管理運営コストを低減化していく必要性もあるというふうに思います。  持家政策に関しては、これは今頭金ゼロでも買えるようなマンションがたくさん増えてきておりますので、結果として後々のその支払が家計の上に乗っかってくるという非常に重い負担の支払になっていることも確かでございます。特に、都市部では土地価格を反映させないということで借地という定期借地なども出てきたわけですが、まだまだ件数が増えておりません。定期借地の上に借家、子育て世代は五十年住むわけではございませんので、借地の上に例えば二十年、十年というスキームで借家を組み込むことによって一戸当たりの単価というのは落ちていくと思います。  子育て世代向けの住宅、例えば性能の面でもいろいろ工夫をして、フローリングの床のスラブ厚などにも工夫をしたものをきちんと位置付けることによって、そういう仕様を満たした住宅を供給したところに例えば利率の面での融資をしていくとか、様々なインセンティブを組み込んでいくことによって民間事業者の中でも地価を反映させない良質な住宅供給をしていくところが出てくるのではないかと思います。  以上でございます。
  41. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 小林さん、よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  それでは、鰐淵洋子さん。
  42. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子でございます。  本日は大変にありがとうございました。  白石参考人にお伺いしたいと思いますが、冒頭、少子社会少子高齢社会が進む中で、やはりこの社会のシステム自体も見直していく必要があるというお話がございまして、住宅そのものもそうですけれども、やはり町全体の見直し、少子社会が進んでいく中で住宅と併せて町全体の在り方も見直していく必要もあるかと思いますけれども、先ほど通勤時間のお話もありました、また保育所のお話もございましたが、少子高齢社会が進んでいく中で具体的にこういう点を見直していったらいいんではないかとか、そういったお話、御意見ございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  43. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 白石参考人、どうぞ。
  44. 白石真澄

    参考人白石真澄君) ありがとうございます。  最初に、少子社会を前提に今ある社会制度を組み込んでいくと申し上げましたのは、町づくりに限らず様々な分野でございます。  例えば、教育そのものも一つでございます。先ほど中村参考人がおっしゃいましたように、一人の子供を育てる上では数千万のお金が掛かるわけでございます。例えば、親が子供の教育費に対して不安を感じているのであれば、今のように十八歳時点ですべての子供が高額な費用を支払って大学に入る必然性というのはないわけでございます。子供がいったん働いて自分でお金をためて大学に入るというようなこと、若しくは子供が少なくなっている中で二十五人や三十人の少人数教育をしていくということも必要だと思いますが、まだまだ都市部の中では、二十三区の中でも二十五人から三十人学級というのは実現しておりません。  雇用の面においても、年金の面においてもそうでございます。年金制度においても、若年人口が減っていく中で、依然として若い人たち高齢者を支えるという賦課方式が現行制度のまま残っております。教育も年金もそして雇用の面でも、今六十五歳定年制というものがある企業の中では積極的に導入され始めましたけれども、年齢制限を撤廃して能力と意欲のある方たちは七十歳まででも働いていけるという、こうしたありとあらゆる世代を、高齢者が増加する中、女性の潜在能力と高齢者の力を活用していくということを前提として組み替えるという意味でございます。
  45. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 鰐淵さん、いかがですか。どうぞ。
  46. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 住宅とあと町全体の在り方ということで、具体的にこの点を、町づくりを進めていく上でこの点を具体的に見直したらどうかとか、そういった御意見もありましたら併せてお願いいたします。
  47. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 重ねてどうぞ、白石参考人
  48. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 例えば、子育て世代がよく悩みますのはベビーカーを押して町の中を自由に歩き回ることができないということでございます。  首都圏の中で、JRは乗降客数が多いところから次第にエレベーターやエスカレーターが付き始めましたけれども、まだまだ一〇〇%ではございません。駅のトイレなどもすべてのトイレに、男性用、女性用ともにベビーベッドが付いているかというとそうではございません。都市環境の中で、駅、公共建築物を始めとして、すべてを子育て世代のニーズに合うようにもう一度見直していくということでございます。  授乳室をきちんと付けていく、ベビーカーを押しやすいように段差を解消していく、男性用トイレにもベビーベッドをきちんと付けていくというような非常に細かいことでございますけれども、社会全体として子供をみんなで応援していくんだというような機運が社会の隅々、都市空間の隅々に行き渡る必要があるんではないかと思います。  例えば、駅を中心として町中に子供向けの住宅があって、そこに高齢者住宅と併せて住んでいくことによって、子育てに悩むお母さんがちょっと子供を預けたりすることもできますし、子育ての相談に子育て経験者に乗っていただくこともできるわけでございます。もっと都心に住む、便利なところに住んで、職住近接の中で男性女性とともに仕事とそして家庭、育児を実現できるような環境をつくっていく。そういう点では、今ある都市の在り方といいますか、子育て世代が郊外に住んできた、緑豊かな環境の中に住むことを重視してきたような考え方というのも改める必要があるのではないかと思います。
  49. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  それでは、円より子さん。
  50. 円より子

    ○円より子君 本日は、お三方、本当にありがとうございました。  先ほど、品川先生が子育てというのは本当に楽しい、子供はかわいいというふうにみんなが思うことがとても大事だとおっしゃったこと、よく分かります。  私も子供を育てて本当に、子育てというよりも子供によって育てられたというか、本当に楽しかったし、かわいいという思いがいたしまして、子供は五歳までに親に恩返しをしてくれるというのは本当だなとよく思いました。ところが、残念ながら一人しか産めなかったものですから、後になって本当、二人、三人産んどきゃよかったというふうになるともうそのときには遅いんですね。こんなことは余り質問には関係ないんですが。  日本でそうやって子供がかわいいと思えるような、子育て負担ではなくて楽しいと思えるような、そんな社会に本当是非したいと思うんですが、先日、川崎厚生労働大臣にも私質問したんですけれども、少子化対策ではなくて子育て支援ではないかと。子供を産みなさいということよりも、今生まれている子供たちをとても大事にして、子育てが楽しいと思えるような、そういう支援の、支援といいますか、そういう社会であれば自然と子供を産みたくなるんじゃないかと思うんですが、残念ながら、今例えば非嫡出子の問題ですとか、先ほど中村参考人がおっしゃったような母子家庭子供たちとか、子供たちが余り大切にされているように思えないんですね。  それから、若い世代が子供を産んでというケースもたくさん、私は今まで四千人の女性たちから相談を受けたカルテを国会議員になる前に持っているんですが、みんな好きな人と結婚して子供が欲しいと思って子供を産んだにもかかわらず、狭い住宅、それから引っ越そうと思っても子供がいるから駄目と言われたり、そういう住宅事情や、それからリストラされたり失業したりして家を追い出されるかもしれない、明日の収入がどうなるのかというときに、どんなに子供がかわいいと思って産んだ人たちでも、特に若い世代で例えば高校を中退したりそういう人たちはなかなか、本当にかわいいと思っていたはずなのに虐待に走ってしまう、そんなケースもたくさん見てきたんですね。  そうすると、もう今本当に少子化人口が減ることを何とかしようと国全体が思うならば、もう本当に抜本的にやらなきゃいけないというふうに私は思うんですが、もういろいろ考えている時期じゃないと思うんですが。  そこで、一つちょっと。財務省も厚生労働大臣も余りこのことに賛成してくださらなくてちょっと残念だったんですが、どなたも余りお考えになっていない税額控除の件なんですが、やはり、以前は専業主婦家庭が二人目、三人目を産んでおりましたが、今は正社員の収入の高い世帯子供を産みやすくなっている、もう本当に経済的な理由も大きくなっていますから。そうすると、じゃ収入の少ない世帯が産みたくないかというと、決してそうではないので、例えば母子家庭だけではなくて父子家庭も含めた一人親家庭、それから二人親でも収入の大変低い家庭、つまり、一生懸命働きたい、だけど一生懸命働いても働いても貧乏だという、アメリカで言うとワーキング・プアと言うらしいんですけれども、そういう世帯に向けて、アメリカは余り福祉国家じゃないと私たちは思っていたんですが、EITCという、日本語で余りちゃんとした正確な翻訳語がないんですが、勤労所得税額控除というような、つまり一生懸命働いてもなかなか水準まで行かないときに税額控除する。そうすると、生活保護みたいに、あなた生活保護受けているのという、何というのか、スティグマみたいにはならずに働くことがインセンティブになる。  百三万円の壁とかなんとかがなく、働きたくても働かないような制度はよくないと、またさっきもおっしゃったように思うんですが、そうじゃなくて、働きたい、そうすると、一生懸命働けば、でもうまくいかないときにはちゃんと控除が入ってくるというような、そういうのをやれば、もしかしてこれ子供がもっと産みやすくなるかなと思うんですが、品川参考人中村参考人に、アーンド・インカム・タックス・クレジットと言うらしいんですが、そういうようなことを日本で考えられないかどうか。もし税の点で御意見いただければ有り難いと思います。  それからもう一点は、私もちょうどバブルのときにずっと原宿に住んでいたんですね。白石さんにお聞きしたいんですが、物すごい、地価があのころ原宿上がりまして、私が娘と住んでいた賃貸住宅も立ち退きを要求されたんです。それで、周りを探しましたら、もう同じ広さで倍の家賃になっていまして、で、自由業でしたから、電話が変わると仕事がなくなるという不安がございましたので周りを探したんですが、やっと何とか見付かったところに娘と契約に行きましたら、あら、お子さんがいらっしゃるんですか、子供さんは駄目なんですって目の前で言われた経験もありましてね。やっぱり子育て期に住宅というのはとても、特に東京のような都心は大きな要因になると思うんですが。  先ほどからいろんなミスマッチのこと、それから賃貸をどうするというお話もありましたが、国土交通省といいますか、もう国を挙げて、持ち家政策ではなくて、私はライフサイクルに合わせた、子育て世代だけではなくて、私たちぐらいの年になるとみんな夫婦二人だから広い家は要らない、都心のかぎ一つで出られるマンションがいいって大抵の女の人は言っていますし、ライフスタイルに合わせた賃貸住宅、良質な賃貸住宅に政策を転換すべきだと、もう二十年も前から言っているんですが、そういったところがなかなかうまくいかない原因、そしてどうすべきかということについてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  51. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、まず税制の問題で、中村参考人からでよろしいですか。
  52. 中村実

    参考人中村実君) 児童手当の問題を北欧諸国でいろいろ考えていく場合、日本社会保障制度の中は、医療、年金、介護、生活保護、失業保険までなんですけれども、いわゆる北欧諸国の社会保障制度の中には、その後、家賃補助と高等教育無料というのが入っているわけですね。これを全部入れて社会保障制度と呼んでいるわけです。それで、スウェーデンなんかの、いわゆる子供に対する支援のときは、児童手当に合わせて家賃補助をうまくかませて、その人たちの家の生活を維持していくわけです。  ただし、日本でこの手の政策をやろうと思った場合のポイントは、どういう言い方がいいかよく分からないんですけど、プチ生活保護みたいな感じで、あなたの生活はこれですよね、ちょっと足りないですよね、ソーシャルワーカーから見たらこうやったら何とかいけますよね、このぐらいの補助を通常に併せて加えましょうというようなやり方だと思うんですね。  これは、今後同時に発生してくる高齢者、年金、生活保護給付高齢者が増えていき、自営業者の収益性が落ちているために、基礎年金だけで生活できない高齢者もまた増えていく。その高齢者に対して、医療、介護のところだけはただで行っていいよとかいうやり口のプチ生活保護。生活保護か生活保護じゃないかという議論じゃなくて、その中間として、あなたはこういう支援をします、ただしソーシャルワーカーがちゃんと見ますという格好が想定されるんですけど、そのちいちゃい子版というのをうまく作っていく必要がある。  ただし、偏倚的にならないように客観的にその過程をきっちりとデータで管理する必要があるが、そういうことをみんなが受け入れるかどうか。つまり、あなたに合わせて少し公的支援をという感じだと思うんですね。こういうやり方の問題だと思うんですけど。
  53. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、品川参考人、どうぞ。
  54. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 先ほども申し上げましたが、税制社会保障の問題というのは非常に質的に違って、税制の方は自分が稼得した所得自分が決めることができるわけですね。国に納める税金自分のその可処分所得として使える税金、これが法律の中で制定されていて、その区分ができるわけで、社会保障のようにお役所が、あなたの所得は幾らですから、いろんな制限を設けて、じゃあげますという、こういうものとはかなり質的に違って、できるだけ自助努力という問題を考えると、税制である程度面倒を見た方が効率がいいんですね。  そういう意味で、今御指摘のその方法に関しては、実は所得控除税額控除、扶養に応じた所得控除税額控除の問題は確かに一長一短があるわけでありますが、これは有利な方を選択することも認められるんですね。これは、産業政策上、特別償却を認めるかあるいは税額控除を認めるか、そういう選択制を認めて産業優遇をやっているわけでありますから、同じようなことも可能であると。  ただ、税額控除の方が低額所得者に相対的に有利になるわけでありますが、それでも先生が御指摘のように税金を納めてない人に対しては税金は戻ってこないんですね。ただし、これは別な方法で、昔から所得税制の中で負の所得税というのがあって、低額所得者に対しては社会保障の手を煩わすことなく一定の所得を申告したら逆に税金が戻ってくると、低額の所得であればそれに応じて実質的な社会保障に見合うものが税額控除として戻ってくると。こういう負の所得税制度があるわけでありますから、今のような問題については、例えば子供が二人いて五十万円この税額控除が行われるという法律を作って、しかし税金は十万円しか納めてないと、残りの四十万円をどうしてくれるんだという場合に、今までの税制であればそこで打切りなんですが、そういう場合には、ちゃんとフルタイムで一生懸命働いていると、そういうことにインセンティブを与えるためには四十万円の税額控除を認めればいいわけですね。これは立法政策的にやろうと思ったら幾らでもできるわけで、その税制理論としてはこの負の所得税という考え方を活用すればよろしいのではないかというふうに考えられます。  以上です。
  55. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 白石参考人、どうぞ。
  56. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 円先生のおっしゃるライフサイクルに応じた賃貸住宅、私もこれは大賛成でございます。  私事でございますけれども、大学の研究室も手狭になりましたので、大学の近くに賃貸でちょっと書籍を置けるところを借りようと思いましたところ、まず大学に本当に勤務しているかどうかの在籍確認が要ると。大学のどこにお電話をすればいいでしょうかと、個人的なことなのに在籍確認が必要とか、あと保証人とか、礼金、敷金という、これは法的に非常にあいまいなものだそうでございますが、こういう慣行が残っております。  こうした賃貸住宅が増えていくのは、やはり市場にこういうニーズがあればもっとたくさん増えていきますけれども、日本人にとっては残念ながら賃貸住宅というのは今まで人生の一時点での形態でしかございませんでした。というのは、やはりいい賃貸住宅がないし、賃貸住宅に住み続けると損になるという仕組みがあったからだと思います。例えば、二年に一回の更新料などということもそうだと思いますし、法的にあいまいな礼金の位置付けというのもあろうかと思います。やはりこうした商慣行をもう一度見直していくことによって、賃貸って非常に便利だし、住み替えをする上では有利性があるというような、まず需要者側ができていくと思うんですね。需要がない限りはこうした供給が増えていくはずもあろうとは私は思いませんので、商慣行の見直しなどということも検討すべき一つの重要なテーマではないかと思います。
  57. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございました。
  58. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  それでは、森ゆうこさん、どうぞ。
  59. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 民主党・新緑風会の森ゆうこと申します。  今日は三人の参考人の先生方、大変貴重な御意見ありがとうございました。  品川先生の御著書等を読ませていただきまして、まず、国家観家族の位置付けというものをまずはきちんと国民的な議論を巻き起こして、子育て価値観というんですか、そういうものを高めていくことが重要であろうという御指摘に、私大変共感をいたすところでございます。そして、様々な所得控除等、また税額控除の創設等についての御提案についても非常に興味深く伺ったわけですけれども、しかしながら今の税制度をもっとシンプルにという観点から考えますと、なるべく控除というものは廃止をしていって、そしてそれを皆さんが納得できる形でやっぱり手当にしていくと。控除じゃなくて手当というものに変えていった方がより税制というものがシンプルになるのではないかというふうに考えております。  そういうふうに考えますと、今御提案になったことについては、なかなかすべて賛成できるというふうにならないということで、何かもっと税制をシンプルにする中で子育てに対してのインセンティブを与えていくという方法がないのかどうか、もしございましたら、是非サジェスチョンをいただきたいと思います。  そして、中村参考人にも、今、品川参考人に伺った同じ質問で、もしサジェスチョンがあればもう少し伺いたいなと思いますし、もう一つ、今日は、中村参考人におかれましては卵子バンクについての御提案があったわけですが、実は先週のこの調査会で生殖医療について少しお話がありまして、生殖医療の現場が、様々な、環境が整わないままどんどんどんどん進んでいって、いろんな問題が起きてきているというものもありまして、私は、一つのこれはアイデアだと思うんですけれども、個人的に余り賛成できないなというのが率直な今の意見なんですけれども、もう少しお考えを、追加でおありになればお願いをしたいと思います。  それから、白石参考人には、先ほど品川参考人の方から、日本の先端で働いている、活躍している女性が、女性たちの発言が少子化を進めているのだと、結婚すること、そして子育てをするということに余り価値を置かないそういう社会をつくっているのではないかというような、そういう御指摘があったわけですが、そのことについて、この日本の先端で活躍されている白石参考人から御意見を賜ればと思います。お願いいたします。
  60. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、品川参考人からどうぞ。
  61. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 税制簡素化については非常に大事なことで、私も今いろんな税制が複雑になっていることについて非常に危惧感を持って、いかに簡素化すべきかということについては別な機会にいろいろな提案をしているつもりでありますし、またこの簡素化というのは、一口にただ全部削ればいいというわけではなくて、どういう形でやるかというのはやはり税制仕組みを全部知ってないとなかなか具体的な提言がしにくいんですね。  今の扶養控除の問題とこの手当の問題に関しては、実は扶養家族の人数に扶養控除をやる計算なんというのは、これ一番簡単なんですね。今、ここ数年の議論というのは何でも控除を削ればいいという言い方をしているんですが、税制を複雑にしているのはそんな程度の問題じゃないんですね。もっと複雑にしている要因はたくさんあるわけであって、それを削った方がはるかに、扶養手当を、二人や三人を一人何十万計算して、そこから控除するなんというのは極めて単純な話で、何かこの税制簡素化を、ためにするために扶養控除を削るとか配偶者控除を削るとか、こういう議論が非常に最近強いんですね。私も税法については実務的にも全部指導している立場なので、その程度は非常に簡単である。  もう一つは、手当でやればいいという問題は、これ、手当で支給する方が国家コストはもっと高いはずですね。税制の方は、自分が申告書を書いて、五十万円に、例えば家族が三人いれば、三、五、十五で百五十万引けば、それだけで自分で計算できるんですが、児童手当を出すのには、役所の窓口であなたの所得は幾らですかとか、役所の人自体が、たくさんの職員を抱えなければならない。  少なくとも、税と社会保障の問題は、社会保障で手当を出す方がはるかにコストが高いんですね、仕組みも複雑だと。そのことを十分考えるべきで、税制上の措置というのは、これは陰の補助金と言われるように、これは自分で決定して自分で計算してできるわけですから、全体の、国民コスト全体を考えると、私は、税制上の措置の方がはるかにコストが少なくて済む、そういうふうに考えておりまして、現実に、実際に自分でもそういう計算をやってみて、確かにそういうことは言えると思います。
  62. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、中村参考人、二点あったと思いますが、どうぞ。
  63. 中村実

    参考人中村実君) 二点です。  最初の一点目で、所得税の計算でそれほど複雑に自分でした覚えはないんです、結婚控除基礎控除で、あと確定申告になるだけで。問題は、児童手当の問題だと思うんですね。  ただ、現実に、正確な比率は忘れましたが、日本所得税を納めている方々のほとんどの方々が一〇%の所得税率の方々だと思うんです。そして、その方々が一〇%であれば、二人の子供がいれば十万円の年間の所得税の減税になっているだけで、果たしてそれが子供を育てるのに十分かと考えるならば、やはり直接的に二万円ぐらい出して二十四万にした方がその夫婦にとって生きやすいだろうと、手続はちょっと面倒かもしれないが。  子供を支援するという問題は、いわゆる稼いだ人間が、おまえが稼いだからその分から税金を少し減らしてやるということではなく、子供に対して直接的に国家が現金を給付するという格好の方が分かりがいいのではないかというふうに思っているのが一点目であります。  二点目は卵子バンクの件なんでございますけれども、この国においては、医療に関して決めることを決めてない状況が続いていると考えております。憲法十三条、幸福追求権、人間自己決定ができると、自分が幸せになるためには。この自己決定権が意外にあいまいでございまして、いわゆる富山の外科医の問題で、尊厳死に関するルールもまだ明確化していないと。  つまり、人は自分の未来に対して自分自己決定が働かせてやることは可能なはずであります。ただし、それが周りの人を動揺させることは許されない、それならばルールで明快なことにしておく必要があると。ルールがきっちりしていれば尊厳死だってみんな普通に行われるだろうと。その延長線上で、私は非営利目的の代理妻という概念も正しいと思っています。  具体的に例を申し上げれば、お姉ちゃんは子供が産めないから私が産んであげるよって、姉夫婦の精子と卵子を妹の子宮に入れることを私は間違っていることとは思わない。それが行われても私はいいと思う。つまり、みんなが幸せになることで副作用が少ないことなら認めていいと思います。  卵子のセルフバンクに関して言うならば、アメリカで、結構、中年になった女性に対して若い卵子が提供されたときのいわゆる体外受精成功率が高いというのが現実に出ている。そして、多くの女性たちは、今、まあ男の自分の過去の経験でいえば、二十代後半、やっぱり総合職だったらとことん残業が多い時期です。働かなきゃどうにもならない時期で、そのとき全力でやるなら全力でやらざるを得ない。そして三十代、どこかの時点で結婚しちゃって随分時間がたっていたと。そうすれば、いわゆる不妊の比率は上がっていくことはほぼ自明であると。それなら、悩まないように、二十代のときにちゃんとした幾つかの限定された卵子バンクにおいて正当な手続で自分の卵子を凍結し、それを将来自分のために使用するために万が一の保険として保存することは、私はおかしくない話だと思います。
  64. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 森委員がおっしゃいました、女性の中で、先進的かつ世の中で活躍している女性が非常に画一的な価値観を持っていて、専業主婦人たちを侮べつといいますか、そういう、生きにくくしているというような考えも私は現実として存在している面があると思います。私自身は、子供を持つ人も子育てを終えた人も、すべての人が今子育てをしている人たちを一生懸命応援していく社会をつくっていくと。それぞれの生き方、多様な生き方を認めていく社会こそがしなやかで、かつ最終的には強い社会ではないかと思います。  女性の中を見ましても、専業主婦対有職女性、正社員女性対派遣やパートといった非正規女性、そして子供を持つ人と持たない若しくは子育てを終えた人というような、非常に狭い世界の中ではコップのあらしのような意見、けんけんがくがく、いろいろございます。これを形作っているのは、私はある面、社会制度ではないかと思うんですね。  例えば、いったん非正規社員になってしまえばなかなか正規社員に復帰することができない。専業主婦になってしまえば、非常に高学歴でばりばり働いていたのに、元の職場に復帰ができないからこそ他方を攻撃するということに終わってしまうわけでございます。いったん自分の選択する生き方をしても、それが、自分考え方、年代、子育ての時期に応じて幾らでも元の状況に戻れるというような社会制度をつくっていく、制度面できちんと自分の能力、働き方に見合ったような便益が得られるような社会をつくっていくことによってこうした対立の構図というのは若干解消されると思いますし、社会全体としてこのすべての人が子育てを応援するというような価値観を形作っていくのは非常に時間が掛かり、かつ困難なことだと思います。  これについては、私は是非、国の力と政府のアピールを期待したいと思うんですね。メッセージを発していただいているわけですから、まだまだ弱い部分があると思います。安心して産んでください、どうぞみんなで、すべての人があなたの子育てを応援しますというような、より強い声明、アピールを出し続けていただくことが肝要なのではないかと思います。  以上でございます。
  65. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  ほかに。  それでは、小林正夫さん、どうぞ。
  66. 小林正夫

    小林正夫君 民主党・新緑風会の小林正夫です。  今日は三人の先生から大変いいお話を聞かしていただき、なおかつ貴重な資料もいただきまして、これからの活動に参考にさしていただきたいと思います。  三人の先生に同じ質問なんです。今日は、少子化対策として税制の面あるいは経済での支援の面あるいは住宅の面でこういう支援が必要じゃないか、こういう提起をいただいたと思います。私がお聞きしたいのは、その結果、この少子化の流れを止めて、我が国日本人口の規模を、どのぐらいが適当なのか、あるいは三人の先生方の頭の中に、こういう対策をすることによって日本人口の規模がどのぐらいであったらいいなと、どのように考えられているのか、ちょっとお聞きをしたいんです。  私、先日の予算委員会の中で、政府に対して、過去十年間にわたって日本の国はどれだけのお金を使って少子化対策をしてきたんだろうか、こういう質問をいたしました。その結果、約七兆五千億円この十年間で使って、なおかつ平成十八年度で一兆円を超える予算を使うということになった、それでも少子化の流れを変えることができなかったと総理大臣あるいは担当大臣もおっしゃるんです。  したがって、これからも毎年一兆円規模のお金を多分使っていくんでしょうけども、私たちは、対策をすることによってどこで頑張りどころを持つのかと。結局、この十年間はそれだけのお金を使ってきたけども少子化の流れが変えられなかったんだから、今後はどうなるかよく分かりません。しかし、これだけの政策をやっていくんだから、私たちの国の人口がどのぐらいで歯止めを掛けたいとか、あるいは少子化の流れを変えるということはどういうことなのか、この辺を、目標を明らかにして、国民の方にも理解をもらっていきながら税金を投入していくという施策が私は大変大事じゃないかと思うんですが、そういう点で、この日本人口の規模、これをどうお考えになっているのか、お三人の先生にお聞きをしたいと思います。
  67. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、よろしいでしょうか。品川参考人からどうぞ。
  68. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) これは非常に、見通し等については難しい問題があろうかと思いますが、元々政策的な価値判断は、もちろん効果がどう現れるかということを一つの目標設定をしていろんな政策をつぎ込んでいくということは非常に重要なことでありますが、事この少子化の問題は、先ほど来いろいろと議論が出ておりますように、言わばそれぞれの個人の哲学によるところが非常に多いわけであって、そこに国家の政策として手を突っ込んで右向け左向けということはおよそ考えられないんですね。ただ、いろんな社会のフレームワークとして、そういうふうにインセンティブを与えることは可能なんですね。  したがって、私が申し上げているのは単なる税制上の一つにすぎないけれども、税制上において個人単位の方が有利になるよりも家族単位の方が有利になる方向にやはりつくっておくべきであると。その結果、具体的にどういう結果になるかということは予断が許さないわけでありますが、問題は、先ほどのフランスがどうこうというような問題についても、結果的にはECの中で、あるいはフランスが隣国に比べてそれなりにこの少子化を食い止めていることができていると。これがN分N乗のせいなのか別なせいなのかというのはいろいろ議論のあるところで一概には申し上げませんが、しかし、そこで一応とどまっていると。  我が国の場合も、これが今、出生率が一・二九で、このままいったら百何十年後には日本民族はいなくなるとか、いろいろな議論がある。あるいは、いや、そんな少子化少子化でほっておけばいいじゃないか、どんどん移民を入れればいいではないかと、いろいろな議論があるわけであって、これも国家観とか、あるいはそもそも自分たちのこの民族に対する価値観とか、いろいろなことによって決まるわけですね。  ただ、人口規模がどうこうということに関しては、少なくともカロリーをどれだけ日本が確保できるかという観点からいくと、日本人口は六千万、日本の国土からは六千万しか維持できない。そういう意味では、その六千万に落としておけば、別に戦争が起こって輸入ができなくなっても、飢え死にすることはいなくなるという、こういうことは言えるわけで、むしろ少子化は、これは福音ではないかと。適正規模に収れんしていけばいいではないかという、こういう議論もないわけではないですね。  ただし、これは、我が国が全く今まで味わっていないことは、今までは少なくとも、第二次大戦で何百万の人が戦争で亡くなったこと以外は、必ず右肩上がり、凍結していたのは、これは江戸時代に、まあこれは一種の人口政策的な結果で、三千万なら三千万で収められていたわけでありますが、それ以降は必ず右肩上がりで人間が増えてきたわけですね。この中で採用してきたその政策と、今度は確実に自然減が発生している中で、まあ六千万が適正規模だからといって、ただ六千万になればいいわけではなくて、人口減の中にいろんな弊害とか、いろんな問題が生じてくるわけで、これをいかに政策的な措置で少なくしていくかということについて知恵を絞っていかなきゃならないと思うんですね。  よって、これは、子供が生まれるか生まれないかというような問題は、これは日本国民全体の責任なんですね。その中で、我々が、結局は国民全体で子育てに今失敗しつつあるわけですから、そういう失敗しつつあることをどう反省し、そしてどう、定着するところまでに、いろんなデメリットをどうやって防いでいくかということに対して我々全体が知恵を絞っていくべきではないか。これは先生方はその先鋭に立たれているわけでありますので、大いにいい政策が生まれることを期待したいと思います。よろしくお願いいたします。
  69. 中村実

    参考人中村実君) 話を二つ分けます。人口がどうなるかということは、それほど重要なことではないと思っているんです。  まず、国家目標を設定する必要があると。二〇二五年にかけてこの国の国家目標は、人口減の中で福祉国家であり続けることであると。福祉国家であり続けるというのは、若い人に生きがいを与え、高齢者に安心ある生活を保障することであると。そのための大前提は生産力が強くなければいけないと。つまり、能力がなく賃金が高ければ生産は中国で行われてしまうであろうと。したがって、若い世代が極めて有能でなければ話にならないであろうということだと思うんです。若い人が優秀で、現役世代が優秀であるということが、極東において、この低賃金が周りにたくさんある中で福祉国家を維持していく上での最大の争点となるだろうと。  もう一つ別な話があると。多くの方々はすぐ人口減少国家はどうなるかという議論をするが、それはずるい。一番嫌らしい問題は、現役に対するOBの比率が上がっていってしまうことが現役負担を掛けることだと。高齢者医療費、高齢者介護費、高齢者年金、高齢者生活保護が、子育てをし住宅ローンを返済している若者たちに負荷を課し、ベースアップの大半がそれで吹っ飛んでしまったらやる気にならぬだろうということであります。  ですから、解決策としてはそこは二つでありまして、社会制度論でいうならば、なるべく世代間扶養、現役がすべてOB世話をするというウエートを下げて、OB自己負担を上げて現役人たちを楽にし、現役の人が楽で生きやすく、大量の保育所が供給されているならば、ある程度出生率の回復を想定してよいのではないかというような考え方を私自身はしております。  つまり、私の今日申し上げたいことは、人口社会日本はどう考えるというのは先に一歩行き過ぎだと。目の前で一番ややこしいのは、二〇二五年にベビーブーマーが全部七十五歳以上になっているということだと。そして、堺屋太一という方は、これから六十代のベビーブーマーに黄金の十年があると言うが、その後の十年のことを語ってないと。なぜかというと、その後の十年というのは大量のフリーターが四十代になっていることを指す。つまり、二十代後半から三十代のフリーターが四十代になっているときに、私、戦後のベビーブーマーは七十代になる。彼らは僕らを守ってくれるだろうかと。その辺は分からぬということでありまして、やはりまず検討していただきたいのは、適正人口規模というよりも、この現役OB負担という問題が現役の生産能力から見てどう調整するかという問題で考えた方が物事は解きやすいのではないかというふうに思っております。
  70. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 私は人口学の専門ではございませんので余り詳しいお答えはできないと思いますけれども、人口のその規模というよりも、これから国土全体にとって人口配置の方が問題になってくるんではないかと思います。  現在、四六%の国土のところにわずか六%の人口しかいません。当然、その人口の適正規模、今食料の自給率や都市の過密などを考えますと、今のままではいいとは限りません。ただ、日本全体の人口配置をどういうふうに考えていくかということと併せて規模の問題なども論じていくべきではないかと思います。  諸外国は、もう皆さん御案内のとおりだと思いますが、いずれも子供を増やそうというような意図で様々な政策を打ってきたわけではございません。家族として安心な生活を送れるという面で家族政策ということをアピールしてまいりまして、その結果、男女共同参画社会を遠回りながらやってきて、人口が、子供が増えてきたという、いずれもその成功のプロセスを歩んでおります。  私も、人口を増やす、少子化対策というよりも、家族政策、次世代健全育成というようなネーミングを是非もっと広めていくべきではないかと思います。  七兆五千億円のそのお金ということ、これ一・五七ショック以降、もう十数年ぐらいにわたってずっとこれが使われてきているわけでございますけれども、私は、額というよりも、その使い道をどうしていくかということではないかと思います。  ここに公明党の先生方もいらっしゃるので、これはまた別の機会に議論をさせていただきたいと思いますが、今三人合わせて二万円のお金をもらったところで、果たしてこの使途が子供向けに使われているかどうか。四割が家計の足しにしているということで、使途が若干あいまいでございます。お金を出しても、果たして政策的な効果があったのかどうか。先ほど来御説明しておりますように、保育園ということが問題になっておりますが、保育園一辺倒で来たのではないかと思います。  二十三区内の中で、江戸川区は唯一合計特殊出生率突出して高い地域でございますが、ここは一歳までは保育ママさんが育てる、家庭で養育するということに重点を置いております。フィンランドなども同じで、一歳までは社会的なコストを安くするために家庭で育て一歳以降は地域社会が責任を持つというふうに、子供をどう育てていくかのコンセンサスが明確で、そのためにどう予算を付けていくかということが明らかでございます。  私は、お金のそのゴールをどういうふうにするのか、これ以降も子供を増やすことに重点を置くのか、これをゴールにするのか、それとももう少子化というものは所与の条件として、少ない子供を豊かにするためにこのお金を使っていくのか。これは国民のコンセンサスと政治的判断ではないかと思います。  以上でございます。
  71. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  それでは、下田さん、どうぞ。
  72. 下田敦子

    ○下田敦子君 座ったまま失礼いたします。民主党の下田敦子と申します。  非常にお忙しい中に私どもにこういう長い時間を割いていただいて、感謝申し上げます。  今、大変高邁な、様々な実態に即したお話を今ちょうだいいたしましたけれども、ちょっと視点を地方に向けていただいて、私のつたない経験ですけれども、十五年前からのお話をちょっとさせていただきたいと思います。  県議会議員を三期務めさせていただきました。その十五年前に、私は少子化という問題はえらい大変な問題だというふうに思いまして、絶えずいろんな委員会あるいは一般質問等々でやらせていただきました。そうしたら、生活福祉部の男性の、しかも少し立場の上の高齢の方々から、下田が口を開けば少子化少子化だ、しょっちゅう少子化だと、そういうことを言われたことを今つくづくと思い出すわけなんですが。  私、大変これもまたちょっと失礼な話になるかもしれませんが、国会に上がらせていただいて、予算委員会等々で、実にコンクリートから人づくりへという予算配分あるいは政策のとらえ方、本当に少ないなということをつくづくと感じます。  例えば、このたびの三位一体で大変小学校三年生から六年生まで一気に児童手当を上げましたよということを国はおっしゃるんですけれども、私は、先ほどの江戸川方式じゃありませんけれども、お金を給付して、それで果たしてどのぐらいこれが正式に受け取るのかということを常に心配があります。いろんな問題がありますので今日はその話を差し控えますけれども、非常にそういうことを感じます。  それから、社会保障給付が、白石参考人がおっしゃっておられるように、どうしても日本我が国の場合は高齢者の給付が非常に多い。その割に、二百七十万の高齢者に対する給付を見ました割に、子供への給付が十七万円という実に少ない。こういう国はちょっと欧米諸国にはないわけでして、こういうことを考えたときに、私は、大変今日申し訳ないんですが、男性中心の政治、政策決定の場が今日を生んでいると、当然のように生んできたと。やはり意識の中に、女子供という意識がどうしてもあるんだろうと思うんです。そんなことは男の仕事じゃないと、道路を付けて橋を架けて、その他もろもろのハードの政治を執り行うことが仕事なんであって、そんなことという考え方がないという今は一つのものが見えてはきているけれども、長い間これはやっぱり政治の中心ではなかった、そういうことが今日のこの弊害を生んでいるんだろうと思います。  たくさん申し上げたいことあるんですが、お三方の先生方に申し上げてお尋ねしたいんですけれども、例えばこの三位一体の家族手当、このたびもいろんな議論がされました。ですが、私が根本的に違うことをこの間川崎厚労大臣にも申し上げましたが、フランス家族給付、これ全国基金です。企業も参加し、国庫、公庫も参加しながら作っている。全国に百二十三か所この基金団体があって、実に組織的にきちっと行われている歴史がある。また、スウェーデンもこれ全額国庫負担だということではありますが。  でも、並行して考えることは、ノルウェーに一か月いて思ったのは、お父さんの子連れ出勤が何も不思議じゃないという、設備も組織もある。それから、個人的なことで恐縮ですが、ノルウェーの、ちょっと家族がおりますけれども、男性もちゃんと普通に子育てに参加をし、また、家事も結構こなしているわけでありまして、まあ日本の家事労働時間、男性の家事労働時間が十五分、アメリカ、フランス、イギリスは約二時間というふうなことをどう打破していくか。  結局、この底に流れるものは、男は厨房に入るを禁ずと、男子厨房に入るを禁ずとか、ほうきは持つものじゃないとか、これはあながち間違いではないかもしれませんが、まだまだこういうものがあって、非常に人の価値というものをそういう価値観で見ているという、これは大変私は困るわけです。結果として一つ、育児休業、大変いい前進だと私は思っておりますが、ただ、個人的に申し上げますと、例えば、百何人の職員がいたとすれば、若い人たちでないとできない職員の性質なものですから、絶えず育児休業を取っている、絶えずそれにカバーして経営者は採用して補充していかなきゃならない、そういう悩みを常に与えられていく。  これに対して、企業はどうあるべきなのか。企業内保育所というのは全部赤字です。どこからどう見ても赤字です。ですから、こういうことをやろうとした場合に、やはり行政なりそこにいる様々なこういう政策決定の場の我々が少し完全に柔軟な考え方に切り替えていかないとやり切れないんじゃないかなという気がいたします。  ですから、人工授精とか卵子保存とか、これら医学的な、科学的な問題、確かに時代に先駆けた話でありますが、地方においては極めてこれは誠に数的に少ない話であって、こういうことを少子化対象に話すことすら抵抗を持たれる、そういう現実がある。ひのえうまの人口がどんと減っている。そういうことをやっぱり考えていかなければ全国的なこういう少子化をカバーすることはできないんじゃないかなという、まあベビーブーマーの方々がどういうふうにこれからやっていくかということも考え方にありますが、どうぞ何か御示唆をいただければ、お三方の先生にお願いを申し上げたいと思います。  失礼いたしました。
  73. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、お答えいただけますでしょうか。白石参考人の方からよろしいですか。
  74. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 今の先生の御指摘で、私も幾つかまだ頭が整理ができていないところがあるんですけれども、育児休業の取得率、せっかくその制度があっても非常に低いわけです。男性の取得率、〇・五五%で千人に五、六人ということで、なぜ取れないのかということの理由として、もう皆さん御存じでございましょうが、やはり会社の雰囲気がそうでないということと、最も大事なことはやはり経済的な面だと思います。  現行制度では、先ほど中村参考人がおっしゃいましたけれども、四割しか給付できない。これは、財源を失業保険の中で求めているから、別途その財源を組むことによってスウェーデン並みの六割若しくはもっと出せるかもしれません。  この育児休業をせっかく一年から一年半に拡大したと。じゃ、この間いつから保育園に入れるかというふうに言ったときに、ほとんどが一歳からということで、皆さん一歳明けの保育園を求めていらっしゃるわけですが、実は、育児休業給付をもっとたくさん出しますので、現行のところ四割ですけれども、七割、八割出しますので、その間家でお子さんを見てくださいと、その方が子供をゼロ歳で保育園に入れて四十万円弱掛けるよりもコストは安いわけでございます。一歳半まで育児休業を拡大したのであれば、その間は所得保障をして、その額をもっと上げていきます、その代わり、保育ママ制度をきちんと充実させて、コストの掛からない方法でお父さん、お母さんが家庭の中でお子さんと一緒に時間を過ごしてくださいというような、現行制度のそのインテグレーション、私は統合化ができていないということが問題なのではないかと思います。いろんな制度は出てきましたけれども、そこがきちんと整理をされていない、つながっていないというところがございますので、そこを是非検証していただければと思います。  男性中心の働き方に関しては、これもよく出てくるデータでございますが、こども未来財団の調査では、女性の管理職比率が高いほど、若しくは女性の活用の意思がある企業ほど業績がいいというような結果も出ております。企業にとっては、女性活用というのは与えられた命題ではなく、女性活用をすることによって業績を伸ばせていくというメリットがあることでございます。こうしたことを、まだ広く行き渡ってない、経営者の多くが御存じではないからではないかと思います。こうした広報活動なども併せてやっていただくことによって企業側の意識を変えていき、そして女性の積極的な登用を進め、男性にも少しお休みをいただいて育児の機会を提供していただくというような、やや遠回りでございますけれども、そういうことも可能になっていくのではないかと思います。  以上でございます。
  75. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、中村参考人、どうぞ。
  76. 中村実

    参考人中村実君) 純粋に個人的な見解なんですけれども、育児休業のときに男性が取っていないという議論がいつもよく出る議論であります。  戦後の日本において非常に私から見てよく分かんないなということは、北欧においては女性議員が上昇するに従って育児支援が猛烈な勢いで増えていくということが経験されていると。ウーマンリブが極めて激しい運動があった国においては女性のいろいろな経済支援等が進展したということであります。  しかるに、この国においては、戦後、フェミニズム、いろんな議論もございましたけど、激しいウーマンリブの闘争というのはまだ一回も経験しておりませんし、ただ、国会議員の方に占める女性の比率が上がっても、不思議なことに、北欧と違って、いわゆる育児、保育所等に関する進展は極めて穏やかであると。これはもうそろそろ派手なことをやるしかないんではないかと。真に現状を打破するんだったら、衆議院、参議院の女性の国会議員の方がバリケードでもしいて、保育所二万三千を造らなかったならばここから法案は一切通過させないと、これに賛成する女性は国会の周辺に集まってデモをしようと、こういうことぐらいをやらない限り物事は動かないということであります。  つまり、少子化問題というのは、それに絡む利益団体がないから、それが明確に票田になることが分からないということが物事を動かしづらくしているわけでありますから、女性議員等々が、この二万三千保育所を造る法案に、すべての国会議員にアンケート調査を打ち、反対した人は当選させないようにしましょうというふうにすれば物事は進むわけでありまして、そろそろ物事は、もしも進行させようと思うなら、今の二十代の女性たちが社会に出て三十代を迎えるまでに当たって、彼女たちの人生を幸せにしてもらうためには、今いる国会議員の方々が派手にバリケードぐらい一回やった方がずっと物事は進むんではないかと思います。  それから、地方における保育所というのは余っています。保育所が足らないのは東京、名古屋、大阪でありまして、出生率が一番低いのは東京でありまして、女性出生率東京は一を下回っておりまして、東京が先行指標とするならば、東京女性自分自身の再生産すら望んでいない状況にあるという極めてつらい状況にあるということであります。  ですから、大都市における出生率が極めて低く、保育所が極端に不足していると。それに対して、地方はある程度三世代住宅等々があり、むしろ保育所は余っているという状況でありまして、大都市問題と地方問題は育児に関して意見が違います。  御案内のとおり、いろんなアンケート調査を見れば、地方の場合は、おばあちゃんが見てるんで私が保育をする時間がない、不満というのが出てまいりますが、東京においてはそのようなものは発生せず、東京においてはむしろ追われるような感じで、いつまでも結婚しない若者、若い男女がいるという状況で、これは何とかしなきゃいけない。それに対しては強行的に行きやすい姿を、もういわゆる保育所のバウチャーという議論よりも造れという、とにかく増やせという議論で解決するのが一番早いんではないかと思います。
  77. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 今、下田先生のおっしゃったことは、いろんなある意味では本質的な問題を抱えていて、いろいろな厄介な問題があろうかと思います。  地方の問題については、私も地方出身で、既に過疎化が進んでいて、私が通った小学校も中学校も高校も校舎がみんなもうなくなっております。そして、人口減がどんどん進んでいるということで、これからその人口減の問題はどんどんどんどん地方にしわ寄せされていくということは目に見えているわけであって、これをどう対策するということは、いろいろな方法論があろうかと思いますが、非常に厄介であることは確かだと思います。  ただ、この少子化に関しては、いろいろの経済的要因を満たせれば子供が生まれるかというと、決してそうではないですね。今我が国で最も出生率の高いのは沖縄であって、出生率の一番低いのが東京なんですね。しかし、東京と沖縄の県民所得を比べると、大体沖縄は東京の二分の一ぐらいしかないんですね。昔から貧乏人の子だくさんと言われるように、別に貧乏だから子供が生まれないわけでも何でもない。  ただ、結局は、冒頭にも申し上げましたが、それぞれの個人の意識が一番重要なんですね。ある意味では、究極的には教育の問題だと私は思うんですけれども、これ意識の問題で、男女のいろいろな役割分担の問題、男女共同参画社会といっても、何となく女性男性並みの仕事をしたら何となく参画社会で、これだったら女性男性に近づくという、こういう意味合いが非常に強くて、私はそれはいささか問題で、むしろ私は、結婚してから女性の方がはるかに偉いのではないかと。男なんてたかが一生懸命稼いできているだけの話であって、そんなのはだれでも替わることができるわけですね。ところが、今我々の社会の中で命懸けで何かをやるというのは恐らくお産ぐらいしかないんですね。ほかの仕事なんていうのはみんな大したことがない、だれだって替われば簡単にできるわけで、ただ、命懸けでやるお産ということを、私はこれはもう物すごい人間にとって、これ、生物にとって最大の偉大の事業なんですね。そういうことが非常にべっ視されている社会だから、ここはもう、少子化の根源はそこにあるんですね。  あとは、私も共稼ぎをやり、今は家内に専業主婦をやってもらっているんですけれども、共稼ぎでやったら男性が家事をやるのは当たり前ですね。私も一生懸命共稼ぎのときは皿洗いをやったりふろ洗いやったり、いろんなことをやりましたが、ただ、自分が家内と相談して専業主婦の道を選んだのは、私がそれをやっていたら仕事以外の別な勉強ができないんですね。恐らく、自分があのまま共稼ぎを続けていたら、国税庁を退職して大学に来ないかという話はなかったと思うんですね。国税庁で人一倍に仕事したつもりですけれども、その傍ら、専らもっと余分な勉強ができた。  これは、いろんな人生生き方があって、これは私はもう完全に家内のおかげだと思っておりますから、そういうことにお互いに尊重し合ったら、共稼ぎでも片稼ぎでもいろんなレベルで、子供も生まれるし、豊かな家庭生活も営めるし、豊かな社会もできると思うんですが、要は、本当に突き詰めていけば心の問題であり、その心の問題というのはお互いに尊重し合う教育の問題だと思うんです。  以上です。
  78. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 下田さん、よろしいですか。
  79. 下田敦子

    ○下田敦子君 本当にありがとうございました。  中村参考人おっしゃってくださいますように、国家目標を定めないことには、スローガンだけではなかなか行かないだろうと思いますし、是非ほかの政党の女性議員の先生方、バリケード運動の必要性を御賛同いただければ先頭に立ってやっていただけると思いますので、お願いを申し上げたいと思います。  大変ありがとうございました。
  80. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ほかに御発言ございますか。  それでは、後藤博子さん。
  81. 後藤博子

    ○後藤博子君 今日はありがとうございました。お疲れさまです。もうしばらくですので、お付き合い、よろしくお願いいたします。  もういろんな御意見がたくさん出ましたから、私はもう重なることもありますし、同じ答弁をいただくような結果になりかねませんけれども、あえてお尋ねをいたします。  今、日本というこの国の逆に私は存亡みたいなものがもうすごい危機感を感じておりまして、もちろん少子化になったから国が駄目だということではないんですけれども、やっぱり人というのは財産ですし、やはり国力を何で表すかというとやっぱり人で表していくことだと思っております。中国とかインドが十三億とか十億とかいうような人口がありますし、今それを脅威だと言われておりますけれども、そういう中国もインドも、自分たちも人口は増えているから、多いから国力が大丈夫だと言っているわけではなくて、やはり中国もインドもその国力をどう力として蓄えていくかというところに教育の問題が入ってきまして、今、先進国に留学させるとか、我が国にも来ておりますしアメリカ等にも留学しまして、積極的に国策として進めている部分があるんですね。  でも、しかし、じゃ我が国を見たときに、国家戦略という意味ではなかなか、対症療法的なものはたくさんあるし、少子化対策に関してもいろんな対策が出てきているんですけれども、いま一つそれがうまく反映できてない。ということは、国家戦略としての日本の教育の問題、あるいはこの国の行く末をどうするかということの取組が少し見えてこないんじゃないかと私自身が思っております。その中には、先ほど女性の議員の取組とかいろんなことがありまして、もっともっと具体的にやっていかなきゃいけない問題もあるんですが。  そこで、三点お尋ねしたいんですけれども、各先生方でお願いいたしますが、私は、国家の国力を培うためにはやはり子供を産んで、親ができれば第三子まで産んでいただきたい。そして、第三子を産んでいただいて、三歳、六歳までを母親家庭で育てられるような体制を整えることがまず第一に必要になってくると思うんです。もちろん働く女性ということもありますから、もちろんそのお母さんが働く時期が来ればしっかりと働いてもらえるような体制も整えていきながら、しかしやはり親力や人間力を育てていくためには親が、やっぱりせめて三歳から六歳までは母親家庭で育てられるような環境を整えることが第一だと思っております。それについての御意見をいただきたい。  そのためには、そこにやはりお金というものがないといけませんので、例えばお金を月額十万ぐらいを支給いたしまして、十年間ぐらい十万を支給をすると約一兆円ぐらいのお金が必要になってまいります。それが一点です。お金をどう充てていくかということがありますね、それ。  それから、教育費ということで、私は、もう小中高とか一貫教育を今やろうとしておりますし、国が教育体制をもっとしっかりとつくるべきだと思っておりますので、思い切ってもう高校まではもう全額は国が負担するんだというぐらいの教育体制を整え、その中に、中村先生がおっしゃったような理工学の高等学校の強化だとか職業訓練のものだとかいうものをしっかりそこの教育の中で体制整えながら、日本人としての教育をしっかりとつくっていくことが必要ではないかと思っておりますので、小中高をもうこの際、一貫した十二年間のシームレス教育をつくっていって、受験ストレスから解放し、また安定的な教育体制をしっかりと国がつくっていくというふうな考えはいかがでしょうかという、これは二点目です。  恐縮です、最後ですけれども、そのためには、やはり幼児期からの子育ての支援、そして社会復帰や再就職ができるような支援体制が必要ですし、先ほど出ましたように、男性が育児休暇を取れるような企業としての企業力という、ある意味では企業力が必要になってまいりますので、社会的なそういう企業力、社会復帰するためのものをどう企業に求めていくかというようなことも必要になってくるかと思います。  そういうことを併せますと、消費税上げるのがいいとか悪いとかいうことではありませんけれども、今、国の財政は非常に厳しくて、国内の歳出や歳入を今いろいろ考えて財政的にもやっておりますけれども、ざっと考えたときに、高校までの教育体制を国が見たときに、あるいは三子まで産んで、三歳から六歳まで家で育てようかということをざっと考えたら、約五兆円ぐらい必要になるんですけれども、それは約消費税の二%ぐらいに当たると思うんですね。消費税上げるかどうかという問題もありますが、そういう財政的なことも併せて、国は大きな国家プロジェクトとして、もう今やらなければ私は国家の危機だと思っております。それについてのお考えを、ちょっと長くなりますけれども、お答え願いたいと思います。  よろしくお願いいたします。
  82. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) たくさん質問ございましたが、広田さん、よろしいですか。  それじゃ、今の三つの点でお三人の先生方にということなんですけど、どちらから。
  83. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) よろしいですか。
  84. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 品川参考人からどうぞ。
  85. 品川芳宣

    参考人品川芳宣君) 今、後藤先生のおっしゃったことは私も全く同感です。それにはいろんな選択肢があるわけであって、先ほど来申し上げておりますように、私が専門とする税制の上では、先ほどから申し上げたような形で、これは、仕事を続けながら子供を産むことも可能だし、あるいは専業主婦になっても、両方から子供を産み育て、育児ができる環境を育てるべきであると。男女共同参画社会だからとにかく専業主婦は切り捨てるんだというような発想は、私はおかしいと思うんですね。どちらでも、どういうやり方でも、お互いのパートナー同士で相談して、豊かな社会をつくるために発想ができる、そういう仕組みをつくっていくべきだと、こう考えております。  それで、その教育の問題で、私は全く、教育こそ我が国のこの最終的な進路を決める重要な問題であり、これはもう明治以来、先人たちは一生懸命教育に力を注いできたわけですね。そういう意味では、ここ数年のゆとり教育とか、個人的に言えば、何たるこの国の将来を誤るやり方を取ったなと非常に個人的には憤慨しているわけでありますが、その弊害もいろいろと指摘されてきているところでありますが、問題はその財源の問題で、おっしゃるように、五兆円という問題は消費税の二%の問題でありますが、税制全体を考えた場合に、結局はすべての税制度の中でどういう配分をするかということをもう一度見直す必要があるんですね。消費税については、五%が高いか低いかという議論いろいろあるわけでありますが、これは、特にヨーロッパ諸国に比べたら極端に低いということはだれでも分かっているんですね。であれば、それに合わせた方法も取る必要もあると。  それから、歳出の削減問題等についても、これもむしろいろんなやり方があって、その聖域をなくすとかいろんな問題も議論もありますが、これは今、市町村がいろんな合併でいろいろと行政のスリム化を図っているわけでありますが、これは行政も司法も立法機関もすべて、どうやったら我が国のこのコストを削減できるかということについて、自分のところはやってはいけないというのではなくて、もう少し考えるべきだと思うんですね。  そういう意味では、先生方のポストももう一度見直して、本当にこれだけの人数が要るのかどうかも含めて、全部自分たちの問題としてとらえて、我が国の将来がどうあるべきかということをお互いに謙虚に考える時期が来ていることで、先生がおっしゃるように、今それを徹底してやらないと、日本の将来は非常に危うくなるということはおっしゃるとおりだと思います。
  86. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 中村参考人、どうぞ。
  87. 中村実

    参考人中村実君) 私は、ちょっと意見が違います。理由は、アメリカの統計を見ていますと、アメリカにおいて雇用はほとんど流通サービス業です、八〇年代以降。理由は、海外から安い完成品が入ってくるからです。つまり、海外から安い完成品が入るから、その国の産業が流通サービス業になって、そこに女性が大量に雇用され、だんだん女性の賃金が増えることによって、製造業の夫と専業主婦の妻という時代から、両方ともサービス業で夫婦共稼ぎで中産階級の生活を維持するようになるということでありまして、現在アメリカの共稼ぎ比率は六五から七〇でございます。八〇年代後半にハリウッドで子育てをする父親のテレビが随分出たということであります。  恐らく、日本において、今後とも完成品が東南アジア及び中国から来る比率は上がり、この国の中が流通サービス業を中心とした雇用になり女性の進出が進むということを考えるならば、夫婦共稼ぎで中産階級の生活を維持して生きていこうということだと思うんです。  極端に言ってしまえば、女性の願いというのは、右手がだんな、左手が仕事のためのかばん、背中に子供、懐に札束と、これが多分理想じゃないかと思っているんですけれども、そういうことを可能にするためには、恐らく保育所の徹底的強化という格好でいった方がいいのではないかと思います。  それから、教育に関しては、イギリスの大学進学率は三%だという事実をやはり認識した方がいいと思うんです。だから、真に高等教育というのはどこまで、何%ですかと。専門性を身に付けて社会に出るという道もあるじゃないですかと。  現在、日本における教育の問題点は、大学生のうち一四、五%しか理工系がいないという問題であります。この国は、何やかにやいろんなことを言おうと、しょせん海外から資源を入れて完成品を輸出して生きていく組立て加工国家でありまして、この国製造業の競争力が失われるということは許されないことでありまして、いわゆる今回の学力重視の問題の根底は、理工系教育を再編成し強化し、国際競争力をいかに付けるかというような問題ではないかと思いまして、やはり理系重視、文系ではなく理系を重視する教育をどのようにするかという問題ではないかと思います。  それから、三番の財源をどこにするかの問題なんですけれども、物の考え方を、企業に援助する、公共投資をする、だから結果として企業が潤い、その結果家族が潤うからうまくいくという時代が多分終わっておりまして、歳出削減が続きますので、企業を経由して家計に潤いをという議論をやめて必要なものは直接家計に渡す、企業に対して意味のないことはしないという方向に行って歳出削減をする必要があろうと。  それと、そろそろ覚悟を決めなければいけないことは、ヘルパーさんがクラウンに乗っていい道で介護に行くという、すべてが整う時代ではなくて、やはり介護を重視するなら、場合によっては道が悪いからジープで行かなければいけないということで、有限資源の最適配分という議論がなされなければいけない時代でありまして、やはりすべて、何かをする場合は何かを削減するということを代替案として提示することが必要な時代かと考えております。  以上であります。
  88. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 最後に、白石参考人、どうぞ。
  89. 白石真澄

    参考人白石真澄君) 六歳までを家庭女性が育てるということに関しまして、私は、今から申し上げる二点の理由で賛成しかねる点がございます。  一つ目は、専業主婦として六歳まで家庭子育てをした結果、一つは、企業にとって再雇用したいという能力を温存し続けることが非常に難しくなるということでございます。  女性がもし早く働きたい、子育てを終えた結果再度社会に出たいといったときに、このときに、企業が求める人材と実際家庭の中で六年いたことの価値が見合わなくなってくるというおそれを企業経営者が持っているという点でございます。それに伴って、やはり経済的な面で不利性が生じるということでございます。お父さんの来年、再来年のお給料が分からない、ボーナスがあるかどうか分からないのに、エンジンが一つだけで子供を持とうというようなインセンティブは働きません。エンジンが二つあった方が結果として子供が持てていくということでございます。  二つ目は、やはり女性にも社会的接点をということでございます。  やはり産休を取って育児休業を取って早く働きたいというような女性も一部ございます。このときに、女性が六歳まで家庭にいることが多くの女性の共通観になっているかどうかというと、私はそうは思いません。ただ、六歳まで家庭にいて子供を育てるというような選択肢も私は保障していくべきだと思います。そのときに、六年間家にいたとしてもきちんとその能力を温存するような仕掛けをして、自己啓発をして社会に復帰できるような準備を整えるような支援を行政としてやっていくべきではないかと思います。  教育の点でございますが、私は、もう高校進学率が九八%を超えているとたしか思いますけれども、小中高義務教育化をしてもいい時点に来ているのではないかと思います。そのときに、国がどこまで保障していくかということでございますが、年金制度改革のときに議論になったように、高校、大学若者が年金を原資とした中から奨学金を借りて、自分でそれを活用して将来にわたって返済していくというようなことをやれば、教育費の面からもひとしく教育を受けることができると思います。  日本は教育費がGDPに占める比率、非常に低うございますので、もっと教育費にお金を出していくべきではないかと思います。そのための財源をどうしていくかということで、私は、消費税の中で、例えば今お話ございましたように、二%を目的税化して子育てのために今後十年間使うと。そのために二%上乗せをして、消費税を値上げする中の一部を子育て費用に使うというようなことも一つのアイデアではないかと思いますが、そのときに並行して大切なことは、何に使うのかというような使途を明確にすると。評価項目もきちんと挙げて、こういう効果が出なければやめるということを打ち出して国民に納得性を得ていくべきではないかと思います。  歳出削減に関しては、今公務員の五%を五年間カットということが行われておりますが、赤字の企業でこうしたのんびりしたようなことをやっていれば、もうつぶれていきます。もっとスピードを上げてやっていくべきではないかと思います。  私は現在規制改革をさせていただいておりますけれども、官が持っている仕事の中で果たして本当に官がやるべきだろうかというような仕事、本当に雨後のタケノコのようにございます。省庁に張り付いているような財団が不必要な仕事を持っていて、そこに多くのお金が流れているような事例、たくさんございます。官から民への仕事の棚卸しというようなことも必要な政策ではないかと思います。  ありがとうございました。
  90. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  質疑はまだまだ尽きないようでございますけれども、予定の時間も参りましたので、以上で参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人皆様方、本当に長い間貴重で有意義な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきまして、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表して厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  次回は来る五月十日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会