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参考人(
近藤潤子君) 本日は、
意見を述べる機会をいただきましてありがとうございました。
私は、いただきましたテーマ、
妊娠と
出産の安全、安心の確保に関する取組について、主として
助産師の立場から
意見を述べさせていただきたいと
思います。
妊娠を無事に経過して、
自分がしたい
出産、それから
自分が出会いたい
子供との出会い、それを経験した
女性は非常に大きな喜びを経験しますが、その中で、
女性として母になるというプロセスを経験しまして、
自分自身の力が感じられる、あるいは自尊感情が深まってくる、その中で
子供との間に愛着
関係が深くなっていく。最近は、産み落とせばいいということではなくて、産み方から、生まれてすぐの
赤ちゃんと
母親がどのように出会っていくかということに深いケアの注意が払われておりますが、それによりまして、母と子の間の愛着
関係が非常に早い段階ででき上がっていく。それを土台にしまして、それから後に来る
育児の問題とかいろいろ
家庭生活の問題の中に大きな精神的なエネルギーが生まれていく。産むということは決して生物学的な現象だけではなくて、
人間経験として非常に重要だということを
助産師は大切にケアをすることになっております。
それで、
子供の方からいいますと、この世に初めて生まれてくる、初めて呼吸をする。そして、そのときに、
子宮の中にいたときのような温かさ、柔らかさがなくて、いきなり冷たい寒い空気の中に生まれてきたときに、温かく抱き締められる、それからすぐに乳首を吸わせてもらえる、そういったようなことから、そういう温かく扱ってくれる人に対する信頼
関係をつくる、このことがとても大事だったのですが、ある時期、
医療によって、
子供がしばらくの間、
赤ちゃんは絶食を十四時間しておいても大丈夫というような
お話があって、
赤ちゃんとお母さんの出会いが阻害されていたというケアの仕方が大分長く続きました。最近、このところの重要さが強調されておりますので、生まれ方、生まれてすぐの
赤ちゃんとお母さんの出会い方、そして、お母さんが
赤ちゃんとの間につくっていく
関係と、
赤ちゃんがお母さんに向かっていろいろな感性、それをはぐくまれていくという、そのことが実は
妊娠、
出産、産褥にまつわる
人間育成のために非常に大事なポイントであるということで、例えば、基本的信頼
関係が乳児期に形成されるというE・H・エリクソンの説でありますとか、たくさんの学者の方がこの辺りを強調されておられます。
それで、
出産を満足な経験として、
出産に関しましては
自分でこういうふうに産みたいという最近はお母さん
たちの計画がありまして、その計画に沿って
自分なりに本当に力一杯産むことができたという満足感、そういうものが体験できますと、一人だけではなくて二人目も産みたい、また三人目も産んでみようという、そういうようないわゆる産むことから感じられる満足感が次の
子供、次の
子供というところに動機付けになっていくのではないかというふうに考えております。
それで、
助産師の仕事と申しますのは、
妊娠、
出産、産褥、
育児の時期に独立した専門的な判断とか技術を用いまして
女性と新生児に必要な心身のケアを行います。正常である範囲においては自律してこれを行うということを免許資格の上で保障されております。それで、実際には
妊娠の診断、それから
妊娠が正常に経過しているかどうかを
妊娠各期で点検をしていく、そして正常で自然なお産が円滑に進むようにケアをしていくのが
助産師の仕事でありまして、その上で、あと、新生児が母体外
生活になじむ、適応するというそのプロセスを援助することを仕事としております。これには
妊娠、
出産は必ずしも全部が正常であるということではございませんので、いつ異常が起こってもいいように異常を
予防すること、それから異常の早期発見、それからもし異常が起これば速やかに
医療と連携しなければ一命にかかわるということになるということもありまして、救命措置などが含まれております。
この点で、現在、
医療との連携とか救命救急措置等に関しまして幾つか解決していきたいと、いかなければいけないという事柄を
助産師としては抱えております。
妊娠の経過を、安全であるということを確認し、そこで起こってくる様々な変化が予想されますので、普通の場合のように
病気になってから
病気に関する指導をするのではなくて、
妊娠の場合には次に何が起こりますのでどのように取り組んでくださいという事前の指導が非常に大事になってまいりまして、そういう指導を繰り返し繰り返し出会うことで妊産婦さんと
助産師の間の
関係が非常に深まって信頼
関係ができるので、それで
出産のときにもその信頼
関係の中から
出産が円滑に進められるといったような、単に
医療機関で出会うとか助産所で出会うという、その会ったときだけの問題ではない、その部分が非常に重要になってきております。
それで、安全で快適な
出産環境といたしましてたくさん問題がありますけれども、
家庭的な温かい雰囲気の中で
出産をしたいということがございます。そのために、何か病院のような雰囲気ではなく
家庭的な雰囲気の中でお産をしたい、だから助産所がよいというような選択も働いております。現在、百十九万
程度の
出産がある中で、約六割は自然の正常産で終わると言われておりますので、この部分に関しましては、産科の医師が少なくなられたということも再三伺っておりますが、異常に向かって医師が十分な力を発揮していただくために、正常をしっかりと
助産師が受け持てる、そのことによって、ケア全体の問題だけではなくて妊産婦さんに通常
助産師として提供できるケア、それが妊産婦さんにとって非常に大切な、
人間育成についても大切なことではないかというふうに考えております。
この助産所等を通して
助産師活動をいたします上で、私どもにいろいろ
課題がございますけれども、現在はまず
助産師は一体どこからどこまでケアをすべきかということで助産所業務ガイドラインというのを作りまして、異常とか危険なものには
助産師はかかわらず、これは速やかに
医療を受けられる方向に持っていくといったようなこと、あるいは事故が起こればすぐそれを詳細に調べまして、何が
原因でどうしてそうなったかといったようなことに
対応することなどに現在努力をしております。
女性が産む、
女性が
女性の望む環境でお産をしたいというときに、では助産所の数はみんなが望むだけ、六十万のお産がもしあったとして、それに
対応するだけあるかと申しますと、現在そのために働いている
助産師は約八百人。助産所での
出産は全
出産の一%しかございません。この部分を今後育成することで、お母さん、
赤ちゃんたちのためにいいお産をしていただける方向で努力ができればと考えております。
その
一つとして、区市町村等に母子健康センターがつくられれば、そこを拠点に
助産師が活動ができます。現在の開業型は、私費による土地の確保とか施設の確保は、若手の
助産師には非常に負担が大きくてなかなかできませんので、できることでしたら、母子健康センターを各地に開設をしていただいて、
助産師が中心でこの活動ができれば、妊産婦・新生児の
方たちのお世話がいろいろできるのではないかと考えております。
それから、
医療機関の中で産科棟が閉鎖されていくという問題が次々と起こっております。これに関しまして、
助産師によって正常な妊産婦・新生児のケアをそこで行われないかということが再三検討されるのですが、従来、医師主導で運用されていた機関の中で、
助産師そのものが自律してこれを引き受けるという準備が現在できていないところがありまして、そのために閉鎖されるところは閉鎖されてしまう。妊産婦さんは遠方まで健診に出掛けなければいけないという問題が起こっておりまして、
助産師会といたしましては、新しい役割に備えての研修会を現在できるだけ頻回に繰り返し、そういう施設が閉鎖されて妊産婦さんに御不自由を掛けないような働き方ができるようにいろいろと苦心をしているところでございます。
助産師だけ単独でというのでは、救急の問題もございますので、ここで病院・診療所、助産所のネットワーク等に関して検討しておりまして、このページの終わりの方に幾つかそれらの最近ネットワークに関する研究等をいたしましたもののリストを作ってございます。
それで、
助産師の活動には、緊密な
医療機関との連携、それから
助産師が具備すべき能力が、今までよりももっと独立して行動ができる能力を強化しないといけないということ、それから
助産師によってケアをされている
対象が、異常とか危険なリスクのある
方たちをできるだけ速やかに
医療に分担していただいて、先ほど申し上げた六〇%をできるだけ
助産師で丁寧なケアをしたいというふうに考えております。
あと、
医療機関で
出産数が減少したのに伴いまして、空いたベッドに
病気の
患者さんが入られる結果になりまして、これが、健康棟でケアされるはずである
赤ちゃん、お母さんのためには非常に
感染等の危険をはらんでまいりました。それと同時に、
助産師、
看護師が、
助産師が
助産師を必要とする方のケアだけではなくて、病人のケアに
助産師が回らねばならず、
助産師によってケアされる妊産婦さんが
看護師さんのケアに任されるといったようなことが起こっておりまして、この混合病棟化に関して何らかの
対策が必要であるというふうに考えております。
それから、古く
助産師は貧しい
方たちのお産を助産所でお世話をしまして、お金が払えない方がお野菜とかお魚を持ってこられたというようなこともしばしば古い
助産師の
お話で伺っておりますが、現在、人工
妊娠中絶が、
平成十三年、ちょっとこれ数字が違っているかもしれません、三十四万一千五百八十八件の人工
妊娠中絶があったとあります。この中で、例えば経済的な理由でのものも相当数含まれているのではないかと
思います。それから、届けられていない人工
妊娠中絶の数が実はこれと同じぐらい、あるいはそれ以上あるのではないかと言われております。
助産師といたしましては、産めない、そういうような方の事情をよく調べると、この中ではそれ相応の保護措置があれば産める
赤ちゃんたちが中絶されている
可能性が高いというふうに
思いますので、この辺に関しまして、
妊娠中の保護施策とか、それから
出産に関する保護、
出産後の養育費の補助、それで里親とか養子縁組とか、こういったような部分でもし
対策が取れれば生まれることができる
赤ちゃんが相当たくさん中絶されているのではないか。
助産師としましては、昔からそういうことをやっておりましたが、最近、この保護施策の費用が非常に安いと。通常は一件三十万ぐらいが健康
保険から出る手当でありますにもかかわらず、
生活保護とか福祉で行きましたときに、最大二十四万、札幌市で調べました折には最大二十四万、通常は約十六万その補助が申請されたら施設に出るということですので、この点で、もしこういうところに力を入れるとしたら、
生活保護、福祉助産等に関する給付費の見直しが必要ではないかというふうに
思います。
それで、男子女子ともに成長の加速化現象が著明で性
成熟の
年齢が
低下しておりますので、いろいろな性の問題がたくさんございます。
助産師会といたしましても、このごろは幼稚園、小中学校から始まって、性のことを
教育するという依頼が増えております。この点につきましても、
助産師会として
助産師の
教育訓練をすることによりましてこういうニーズに
対応したいと考えております。
こういうような役割を担うためには、
助産師の数が十分ございません。現在のところ、実働
助産師は二万四千強でございますが、先ほど六十万仮に分娩あるものとして、その
方たちの
妊娠期、産褥期の管理を
助産師としていたしました折に何人
助産師が必要かの試算をしてみましたが、最も短い時間で仕上げますと三万弱ぐらいになりますが、まあ大体普通の業務ですと三万四千人ぐらいあれば六十万のお産に
対応できるかという、そんな感じで計算されております。
それで、
助産師教育の質を高めなければ、例えば
妊娠期の管理が十分できるか。なぜ産科棟が閉鎖されたときにそれを
助産師が受けられないかと。
妊娠期の診断はすべて医師がやっていました、その後の保健指導だけをやっていましたので、
妊娠期の管理が自信がありませんというようなことになりますので、実際には産科のお医者様とどのようにこの分野の仕事を仕分をするか。それを受けて、正常は
助産師ができますというためには
助産師教育の内容を検討することが必要であろうと
思います。量と質の両面から
助産師教育を見直すことによりまして、六十万の正常の
出産ができる
方たちのケアが行き届くことができればというふうに考えております。
助産師養成に関してもいろいろ問題がございますが、実習施設の確保であるとか
教育環境の整備であるとか様々な
課題を抱えておりますので、いろいろ御配慮いただければ有り難いと
思います。
以上でございます。