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2006-04-05 第164回国会 参議院 少子高齢社会に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年四月五日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  三月一日     辞任         補欠選任      尾立 源幸君     蓮   舫君      前川 清成君     下田 敦子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         清水嘉与子君     理 事                 荻原 健司君                 岸  宏一君                 中原  爽君                 円 より子君                 森 ゆうこ君                 鰐淵 洋子君     委 員                 狩野  安君                 川口 順子君                 後藤 博子君                 坂本由紀子君                 関口 昌一君                 朝日 俊弘君                 加藤 敏幸君                 下田 敦子君                 羽田雄一郎君                 林 久美子君                 松下 新平君                 蓮   舫君                 山本 香苗君                 山本  保君                 小林美恵子君                 荒井 広幸君    事務局側        第三特別調査室        長        岩波 成行君    参考人        性と健康を考え        る女性専門家の        会会長        主婦会館クリニ        ックからだと心        の診察室産婦人        科医       堀口 雅子君        社会福祉法人賛        育会賛育会病院        院長       鴨下 重彦君        社団法人日本助        産師会会長        天使大学学長兼        大学院助産研究        科長       近藤 潤子君        株式会社科学技        術文明研究所所        長        米本 昌平君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○少子高齢社会に関する調査  (「少子高齢社会への対応在り方について」  のうち少子高齢社会課題対策に関する件)     ─────────────
  2. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ただいまから少子高齢社会に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る三月一日、前川清成さん及び尾立源幸さんが委員を辞任され、その補欠として下田敦子さん及び蓮舫さんが選任されました。     ─────────────
  3. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 少子高齢社会に関する調査うち、「少子高齢社会への対応在り方について」を議題といたします。  本日は、少子高齢社会課題対策に関する件について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、性と健康を考える女性専門家会会長主婦会館クリニックからだと心の診察室産婦人科医堀口雅子さん、社会福祉法人賛育会賛育会病院院長鴨下重彦さん、社団法人日本助産師会会長天使大学学長大学院助産研究科長近藤潤子さん、株式会社科学技術文明研究所所長米本昌平さんに参考人として御出席いただいております。  この際、参考人皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところこの調査会に御出席いただきましてありがとうございました。  参考人皆様方からは、「少子高齢社会への対応在り方について」のうち少子高齢社会課題対策に関する件につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきまして、調査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますけれども、まず、参考人皆様方からそれぞれ十五分程度意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。  なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと存じます。  また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。  それでは、堀口参考人からお願いいたします。どうぞ。
  4. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) ただいま御紹介いただいた堀口です。  私の属している性と健康を考える女性専門家の会は、女性ばかり威張っているのではなくて、メンバーは性別にかかわりありません。そして、メンバーは、医師、薬剤師、看護師保健師助産師心理療法士養護教諭を始めとする学校の教師、これを育てる教育者大学関係者、あるいは政治、報道関係者その他、そしてもちろん主婦も専門家だと思ってメンバーに加わっております。  女性の一生を通じた体と心の健康に関心を持って行動していますが、なぜ女性女性が幸せになれば周囲男性子供たちも幸せになれるからです。なぜ女の問題かというと、今、女性たちが割と割の悪いひずみを受けていると思います。政界も男性優位、ほとんどの領域が男性優位です。そして、男が女のすべてを知ってると、分かってるという思いでもって男の目で処置をされている、そこに私たちは矛盾を感じて行動しているのであります。いつか性差をわきまえた真の平等の日が来て、性と健康を考えるみんなの会とでもいうような日が来ることを祈っております。(資料映写)  少子高齢社会課題ということでお話を申し上げますが、ここで見るように、老人が増えるということになりますと、私たち少子化の中で更年期というのを一つの大事なキーポイントとして、これまでの生活を見直し、これからの老人に向かって、生活習慣病、高血圧、糖尿病とか骨粗鬆症などに対する更年期キーポイントでもって自分たちをしっかりやっていくことが、やがて訪れる老人期老年期子供たちに面倒を掛けない、そして自分自身のクオリティー・オブ・ライフを高めることであると同時に、政策、政府の費用を減らすことができるだろうということで、更年期も大きな問題として取り上げていただきたいと思っております。  少子化原因としては、男性女性結婚妊娠出産育児を考えるところに大きな変化がありまして、妊娠出産の時期が大変遅くなっております。また、性感染症、STDというのが蔓延しておりまして、これは不妊と密接な関係があります。また、労働過重その他とセックスレスということが問題になっておりまして、これもセックスレスイコール不妊原因となります。  対策としては、高齢妊娠出産育児プラス面マイナス面を取り上げ、健康教育の場でこれらの若者、目の前の高齢社会に対する危惧の念を高めていきたいと思いますし、高齢妊娠出産になった場合の医学的対応も気を付けなくていけないし、社会的支援も必要だと思います。  性感染症の健康に及ぼす影響不妊次世代への影響を考えますと、性の学習ということがとても大事であります。いわゆる性教育と言われているような上から下への命令でなくて、下から沸き上がる志によって性の学習が行われるように。そのまた性感染に関しては、医学的な予防治療、介助が必要だと思います。  幼児期思春期性教育のほかに、今や成熟期女性たち社会人になった女性たち男性たちにとって、やっぱり性感染症をしっかりと知っていただきたいと思いますし、子供たちがいい教育を受けるためには、親たち先生たちがしっかりした認識を持っていただきたいと思っております。  それから、セックスレスというのはとても私たちの診療の中で大きな過重を占めておりまして、労働過重に対するセックスレス、それと不妊関係は今後大変な問題ではないかと思います。  それに対して政府企業側認識視点はどうであろうか。緊急の調査研究を、明日では遅過ぎるというのが私たちの印象でございます。  女性の健康について申し上げますと、女性は健康のバロメーターとして月経というものを持っております。それを、自分自身周囲の人も月経関心を持って生きていってほしいと思います。月経が不順であるとか無月経ということは、脳の中枢の卵巣に行く命令系がうまく行かない場合があります。  心と体の問題として、その一つの要因として労働過重があります。そして、卵巣機能が不全であれば月経が不順であり、排卵しないということで、この無排卵の排は、ごめんなさい、配達じゃなくて、てへんに非という字を書いて無排卵、無月経、これは自分の健康を損なうだけでなくて、排卵しなければ不妊少子化に進むことになります。  また、女性の健康を月経に伴う症状で示してみますと、月経困難症月経のときにお腹が痛いとか腰が痛いとかいろいろありますが、これは早期に受診して加療をしていただきたい。特に、働く女性うちで待機するのでなくて、診察を受けに行ってほしいと。  原因としては、機能的なものであれば、まず未熟だからといって成熟になるのを待つことはできます。精神的なものが原因だとすれば、それを取り除いていかなければいけません。器質的なものとしては、子宮筋腫子宮内膜症子宮腺筋症などがあります。これらは年とともに頻度が高くなりますので注意しなくてはいけません。それから、最近注目されている性感染症、これも月経困難症を強める。ということは、月経困難症の陰に性感染症ありということで対策が必要になります。自分の健康を損なうだけでなくて、不妊原因少子化原因でございます。  それでは、治療をどうしたらいいかというと、まず、月経不順、無月経に関しては三か月以上の無月経を放置しないでほしい。これはなぜかというと、後で治療してももう間に合わないという出来事がたくさんあります。すなわち、排卵しなければ不妊の道へと進むわけです。そして、そのときに、私どもはピルを薬剤として大変いい、使い勝手のいいものだと思っておりますが、残念ながらピルは、経口避妊薬保険対象になっておりません。しかし、医療の目的で使う場合にはこれを保険対象にしていただきたいなと思っております。月経困難症薬物療法手術療法があります。  また、性感染症の場合には予防治療が必要であって、局所の検査血液検査が必要であります。そして、防ぐ方法としては、すべての性行動にコンドームをという指導が必要であります。そして、性行動というのは一人ではできませんから、パートナーについての同時の検査治療開始ということが必要だと思っております。  働く女性の健康についてもう一度言わせていただきますと、休んでおうちで待機しているよりは、その時期を診察に向けてほしい。手後れになってしまうと、不妊の道へどんどん進んでいきます。  不妊治療に関しては、後ろの方に何かパンフレットがございますが、新聞記事ですが、これは、職場から、不妊治療のための休暇が欲しい、あるいは不妊治療保険対象にしてほしい、いろいろ言われますが、後で申し上げますが、不妊治療というのは大変能率が悪いものであって、それよりもほかにしなくてはいけないこともたくさんあるのではないかと思います。  妊娠と健康という意味で、結婚適齢期はありませんが、妊娠には適齢期があります。若いときに将来のことを考えて、余り年を取らないうち妊娠というような計画を立ててほしいと思います。  高齢妊娠は一応三十五歳以上ということになっておりますが、なぜ高齢になるのか。  女性の生き方の複雑になったこと、産む、産まないという選択の自由も、また産めない人たちもおります。パラサイトという言葉で言われているように、親元での豊かな生活や、生活のレベルを落としたくない、そういう若い人たちも増えており、これがまた高齢妊娠出産結婚の方に結び付いております。これはジュリストの、山田昌弘さん、パラサイトという言葉をつくられた方の、ごらんになるといいと思います。  高齢妊娠出産マイナスの点、なぜ高齢が問題か。  三十五歳を過ぎると卵巣機能が低下し、排卵することが少なくなり、卵子の活性が低下することによって、妊娠率の低下、異常妊娠率が増加します。また、子宮筋腫子宮内膜症は、若いときはそれほどでなかったのが、大きくなったり癒着がひどくなりまして、不妊原因になります。また、流早産原因になりますし、異常な妊娠、筋腫と合併すれば流早産を起こしやすいとか、また、その結果、長期入院早産のために低体重児が出生する。これは小児科のお世話になることが多いわけです。それから、医療の介入による出産を考えなくてはいけません。つまり、自然分娩より帝王切開分娩などが増えていくという。また、全身疾患としても合併症が増えていきます。生活習慣病糖尿病や高血圧と合併すると妊婦は大変影響される、胎児にも影響があります。そして、やはり同様の長期入院早産、低体重児医療の介入による帝王切開などが増していきます。妊娠率の低下、流早産率の増加、ダウン症等の胎児異常が発生率が高くなる、それを忘れてほしくはないと思います。  対策としては、高齢妊娠出産育児プラスマイナス健康教育というところで人々に知らせたいと思います。医学的な対応も社会的な支援ももちろん必要ですが。  文献はいろいろ高齢妊娠にかかわるものが出ておりますので、参照していただきたいと思います。  多胎妊娠の結果、小児科のNICUがもう満杯になって、先生方も大変困っていらっしゃるということも聞いております。  それから、性感染症ですが、性感染症、セクシュアリー・トランスミッテッド・ディジーズ、患者が急増しております。  この背景には、性交開始の年齢が低くなっていること。そして、したがって結婚に至るまでの間には何人かのパートナーが現れるということ。そして今や、性感染症は悪い人が悪いところでもらってきた悪い病気ではなくて、現代の健康を損なう生活習慣病みたいなもの、自分が選んだ自分パートナー病気を持っている、あるいは自分が持っている可能性のある病気だと、そしてそれが妊娠出産のときに次世代影響するということを知ってほしいと思いますが、性感染症とその予防法を全く知らないのが現代の若者です。しかも、母親たちもそのことを知りません。妊娠とか避妊については多少は知っているが、全く無知と言ってもいいと思います。多様な性行為とその結果があるということ。例えば、性行動というのはペニスとワギナだけでなくて、口腔・肛門性交、いろいろありますが、そのために思わぬことが起こる。  例えば、私のいた虎の門病院で、若い会社員が高熱、呼吸困難で内科に入院しました。適切な治療によって元気になりましたが、おりものが少し多いということで婦人科に回ってきました。型どおりに、初交年齢を何歳か聞き、パートナーの数を聞き、そしてこれまでの感染についての知識を聞き出した後、検査をいたしました。そしたら、見事に局所からクラミジアという今一番多い性感染症病原体が見付かりました。ところで内科先生先生の患者さんの呼吸器病原体は何ですかと聞いたら、同じくクラミジアでした。これは内科先生には想像できないことかもしれませんが、私からすれば、オーラルセックスによる感染、同時に上と下に感染が起こったということであって、こういうことが当たり前になっている世の中。子供たちはアダルトビデオを見ておりますから、それをするものだと思って女性に強要し、女性はそれを嫌われたくないと思ってやっている。このような状態が続いております。  初交年齢が早まっているということは、いろいろ言われておる。これも後でゆっくり見ていただきたいと思います。  ここで示されるように、今若い二人が将来を誓おうと思っておりますが、元彼、元彼女、元彼、元彼女、元カレ、元カノとこれらの大勢の方たちのことを考えると、その陰にどれぐらいの人がいるか分からない。もしここにHIV感染者がいたら、このHIVは十年間は発症しませんから、あるいは私が病気を持っているかもしれない、彼が病気を持っているかもしれない、こんな状態が今のひしひしと迫る状態です。ここら辺は省略いたしますが、HIV感染もかなり若者に出ているということが去年のリポートではありました。  性感染症がなぜ困るかということは、不妊症原因になるということです。  例えば、男性の場合は、性感染症で尿道から膀胱炎程度で済みます。さらには、精管が尿道と精巣との間につながっております。病原体が精巣に行くことによって精子の製造が阻害されたり、精子が活性化しないということが、何年かたって本当に子供が欲しいときの男性側不妊原因として起こり得ると。しかし、男性にはこれ以上に腹腔内や何かに感染が及ぶことはありません。  しかし、女性の場合は、性行為によって、軽い外陰炎等が収まったとしても、その病原体子宮の中に入っていき、卵管を通して腹腔内に広がる骨盤内腹膜炎になります。そうすると、癒着がひどいために妊娠成立しにくい状態、卵子は放出してもキャッチできないような状態になります。そういうことで不妊症原因になっている。今不妊症検査をすると、かなりクラミジアがここから発見されている現状です。もし運よくここに着床し胎児が育ったとしても、病原体が活性化しますとこの包んでいる卵膜をはがして、そして流産、早産になるし、赤ちゃんがもし育ってここを通ったとしても、そこでもって感染を起こして一生障害を持つ赤ちゃんになったりするということで、大変な思いをしております。  それから、対策としては、性感染症をしっかり学んでいただきたい。  それから、不妊症ですが、不妊症に関しては非常に能率が悪いということで、年齢が高くなるにつれて排卵率胚移植率が低下し、妊娠率も下がりますし、流産率出産率が低くなる。三十五歳以下は卵の活性が低いということを知っていただきたいと思います。  問題点としては、できるだけ、三十五歳以上だと問題がありますので、遅くとも三十代前半には治療を開始してほしい。また、多胎妊娠流早産原因にもなりますし、小さい赤ちゃんが生まれるということで、これも大変な問題だと。本当に自分が産みたいんだろうか、周囲からの問題じゃなかろうか。  文献もいろいろある。パンフレットにこの本をお教えしておきましたが、「未妊「産む」と決められない」ということで、この本は大変参考になると思いますので、お求めになってごらんになったらいいと思います。  セックスレスが大変増えております。あちらこちらの、朝日の報道や何かがありますけれども、性の大脳化、目で見て満足してしまう、あるいは労働過重のため疲労こんぱいして、セックスレスの家族に聞きますと、もうパタンキューである、夜中まで働いて土日も休みがない。このようなことに対して、労働条件の改善、雇用者意識改革、それをしないと手後れになるのではないかと思っております。  時間が来ましたので、ちょっと慌ててお話をしましたけど、私の語りたいことを、また後ほど質問していただきたいと思います。どうも、お時間をオーバーしまして、失礼いたしました。
  5. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、鴨下参考人にお願いいたします。鴨下参考人、どうぞ。
  6. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) 私は、日本学術会議、それから厚生労働省研究班小児科医不足の問題、そういったことについて最近行いましたことを中心に、なお個人的なかなり主観的な考えも含めて、この少子社会というものに対するコメントを述べさしていただきます。  大体資料はお手元にございます最初の三ページぐらいにごく要点だけかいつまんで書いてございますので、それに従って述べさしていただきます。  少子化、これは最初にグラフが出ておりますが、合計特殊出生率下降線はまだ続きそうであると、どこまで進むのかという問題がございます。しかし、私自身は、少子化対策という言葉そのものに非常に違和感を昔から持っておりまして、これは要するに、子供の立場ではない、大人から見て何とか子供を増やそうということではないかと思うんですけれども、実際には効果が上がっておりませんから、むしろ次の世代をいかに健全に育成するかという視点が最も大事ではないかというふうに考えます。  なお、学術会議の五十周年というのが先年ございまして、そのときにアメリカのある社会学者が、この英語で書いてありますように、サステーナブルディベロプメントというのはフューアーピープルが長生きをする、少ない人間長生きをすると、その長生きをする人間はそれぞれファンクション、いい機能を持ってなきゃいかぬ。これはある意味優生思想につながるので嫌う人もいるようですけれども、実態はそうではないかと思います。それで、これまでの少子化対策と言われているのが余りにも出生数の向上だけを目当てに考えてきているんではないか、そういうことを反省したいと思います。それで効果が上がらない。  それから、三歳児神話は本当に神話かどうかというのは、私は小児科医としては疑問を持っております。これは平成十年度の厚生白書に、三歳児神話には少なくとも合理的な根拠はない。この合理的というのは一体何なのかよく分からない。科学的根拠はどうなんでしょうか。マターナル・デプライベーションという言葉がございます。この資料の四百六十二ページをお開きいただきますと、そこに「いわゆる三歳児神話について」という学術会議で議論したことが残っております。三歳児神話というのは、子供は三歳までは常時家庭母親の手で育てないと、その後の成長にいろいろな意味で悪影響が出てくるという、そういうことでございますけれども、それに対していろいろ反論、特にこれはジェンダーの視点からの反論もございました。女性家庭に縛り付けるものであると。  しかし、そこのところは問題があるにしましても、やはり母親とそれから父親とは育児の上で全く平等に参画できるものではないだろうと、そういうことを考えておりましたところが、サイエンスという雑誌に、一九九九年、もう大分前でございますが、育児遺伝子というものが発表されました。これは、マウスでノックアウトをいたしますとそういう遺伝子が見付かったということなんですけれども、その母親のネズミは子供を踏み付けたりあるいはもう全然育児行動をしないということなんですね。人間では実験はできませんけれども、マウス人間遺伝子の差は数%と言われておりますから、恐らく人間にもあるに違いないと思います。  それから、少年非行のことが書いてございますが、これはたまたま、警視庁で昨年五百三人の少年を窃盗、強盗、暴力行為その他で検挙をいたしましたが、そのうちの約二割が女の子でありまして、しかもその背景がすべて家庭の暗さとか両親の暴力行為あるいは離婚とか、そういう家庭に問題があると。つまり、家庭機能というのが非常に育児機能、しつけ、そういった点で最近低下しているということが問題だと思います。  それすべてが少子化の結果とは言えませんけれども、いずれにしましても、子供が少ないことの影響というのは、最大の被害者は、子供自身に表れると、大人に非常に大きな責任があると言えると思います。  それから、小児科医産科医不足というのはもう最近随分マスコミでも取り上げられておりますが、このことを大分前に憂慮なさいました元坂口厚労大臣ですね、坂口先生が、研究班を作って研究せよということで私がその主任研究者を務めさせていただきまして、ここへ、これちょっとオーバーなんですが、こんな大きな報告書を書くことになったんですけれども、ともかく、そのごくエッセンスをここでこれから申し上げたいと思います。  平成十四年から三年間いたしましたが、特にその現状と問題点では、小児科医の数は決して不足ではないと。絶対数の問題ではなくて、働いている、ワークフォースとしての低下、これはもうどこでも感じられているということでございます。過去十年間に小児科医の数は学会の入会者数その他では微増しております。ただ、産科医は明らかに減少しておりますし、また、特に、産科医は産婦人科医ということなんですけれども、お産を取り扱う医師が極端に減っているということがございます。  それともう一つは、最近言われていることなんですが、小児科医産科医不足というのは、これはむしろ医師不足のこの氷山の一角であって、多くの医者が、その次にございます三ない科というのは当直がない、救急がない、それからがんがない。がんの患者さんというのは非常に厄介といいますかね、手が掛かる、そういうことで言わばイージーな方向に流れているということでございます。これは医師の卒前教育に大変問題があるというふうに私は考えております。  それからもう一つは、九時―五時医者といいますが、朝九時から五時までオフィスで診療をいたしまして、五時になったら本日の診療は終わりました、明日九時にいらっしゃいという、そういうドクターが増え続けているということですね。それで、ですから、医師免許証を持っている人数は既に日本は人口十万当たり二百を超えております。これはもう先進国でもかなり多い方でございますが、そういう意味では働いている医師の実働、労働時間が少ないと、そういうことが医師不足の大きな背景にあるということでございます。  それから、小児科の場合には、後でこれは三ページの図をごらんいただきますと、これは私どもの研究班で細かい各都道府県別の数値を出したのでございますが、それを厚生省の方できれいなグラフで、グラフの方が分かりやすいと思います。東京、それから鳥取、島根はなぜか小児人口当たりの小児科医の数が非常に多いわけですね。それに対して少ないところは茨城、埼玉、岐阜と、倍以上の開きがあるということでございます。  これまで厚生省の医療政策の二次医療圏というのは大人中心の医療圏で組み立てておりましたが、これをやはり小児人口の医療圏をつくらなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。ちなみに、東京は非常に医師が多いことになっておりますが、私の勤務をしております賛育会病院のある墨田区は、つい最近まで一次救急が夜できないということがございました。ようやく昨年秋に、十一月に夕方五時から十時まで準夜帯の一次救急を医師会との協力で始めたような状況でございます。  それで、どういうふうにするかという対策、これは余り名案は正直ございませんが、ともかく医師の勤務条件を改善して多様な勤務形態をつくる、あるいは徹底的に女性医師を支援しなければいけないと。ドクターバンクというような話もあります。それから、少し時間もお金も掛かりますけれども、大学病院の中に是非母子センターをつくりたい。これは、もうじきできると思いますが、栃木県の自治医大の中に百五十床ぐらいの小児病院ができますが、そういうことをいたしますとそこに医師がプールされるといいますか、それから、例えば宮城県のように独立の小児病院をつくりますと、そこに非常に高額機器が必要になるわけですね。それから、眼科や耳鼻科、小児を診なきゃいけない医者は外から呼ばなきゃいけないということで、経済的にも大変ですから、大学の中につくるのがそれは一番、子供のための、子供医療の向上のためにもそれが必要だろうというふうに考えます。これはお金の掛かることですけれども、是非前向きにやっていただきたい。かつて文部省の時代にそういう構想があったと伺っております。  それからあとは、看護師さんたちのサポートが必要ですし、産科の場合には助産師さんにも大いに頑張っていただくというコメディカルの問題がございます。  それからもう一つは、初期臨床研修、これは必修化されたわけですけれども、それで小児科、産科をできるだけ長くやって、すべての医師が子供を診るということにやはり慣れる必要があるだろうと思います。  あと、小児科と産科でそれぞれ個別のことがございますが、夜間救急の電話相談ということを研究班でいたしまして、これは広島県でスタートして、大変モデル事業でうまくいきましたので、今やほとんど全県で厚労省の方からお金を出していただいてやっております。非常に好評のようでございます。  それからもう一つ、いわゆる子供の心を診る医師というのが非常に不足しているということで、これは私どもの研究班が終わってから、さらにそのことだけを専門的にやっていただくということで子供研究班ができまして、報告書が最近出たようでございます。  それから、産科につきましては、何といっても訴訟が多いこと、多いというのは件数も多いんですが、それ以上に賠償の金額が高いということがございまして、どんどん若い医師が離れていってしまうと。それから、産婦人科医師になってもお産をやらないということでございます。そういうことで、これはノン・フォールト・コンペンセーションというのはアメリカや北欧の一部で既に制度化されておりますが、是非日本でもやってほしい。研究班で提言をいたしましたら、早速日本医師会がこれを取り上げてくださいまして、現在その構想が進められているように伺っております。  それから、第三のテーマで、これは参考人米本先生お話しになるとは思うんですが、生殖補助医療に関して小児科医としてやはり見方がございます。  それは、この学術会議報告書では四百六十ページをお開けいただきますと、少し古いデータでございますが、日本医師会で少子化対策委員会が中間報告を出したものにこれが取り上げられておりまして、四百六十ページのちょうど真ん中下半分でございますが、もし仮に保険収載をした場合に、いろいろな条件がございますけれども、年間約十万の出生数が上がるであろうという結論が述べられております。  ただ、これにつきましては、多くの小児科医は考えておりますが、私も個人的に、産科医療をゆがめる可能性があるんではないか。つまり、正常のお産を産科医がますます取り扱わないで生殖補助医療、いろんなケースがございますけれども、体外受精、そういうことがはっきり申し上げてもうかるわけですね、そういう方へ流れていくという可能性がありはしないか。現在でも既に年間に二万人ぐらい生まれているわけですが、そうするといろいろ問題が起きてくるように思います。  そこで、倫理的な検討あるいは社会的な合意というのはなかなか難しいとは思いますが、法制度、何よりも子供の福祉を守るという見地からこれを考えなきゃいけないんじゃないか。そういうことが不十分な間に余りにも技術と臨床応用が先行し過ぎているというのが私どもの危惧するところでございます。  特に、代理母、代理懐胎の問題がございますが、これはサロゲートマザー、ホストマザーと二種類ございますけれども、そういうことは、遺伝子関係のない母親、親が生まれるわけでして、そのことによって一番影響を大きく受けるのは子供でございますから、これは是非子供本位に考えていただきたい。厚生科学審議会が二度にわたって委員会で検討されておりまして、最後のポツですね、六つ、生まれてくる子供の福祉を優先すること、安全性に十分配慮をすること、人を専ら生殖の手段とすることは許されない、優生思想を排除する、人間の尊厳を守る、商業主義を排除する、こういった六条件を提起しておりますが、もっともだろうと考えております。  最後に、やはりこの問題、子供を大切にするということを社会がもっと考えて、そういう合意、大きな合意が必要であると、そういうふうに思います。  以上でございます。
  7. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、近藤参考人にお願いいたします。近藤参考人、どうぞ。
  8. 近藤潤子

    参考人近藤潤子君) 本日は、意見を述べる機会をいただきましてありがとうございました。  私は、いただきましたテーマ、妊娠出産の安全、安心の確保に関する取組について、主として助産師の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  妊娠を無事に経過して、自分がしたい出産、それから自分が出会いたい子供との出会い、それを経験した女性は非常に大きな喜びを経験しますが、その中で、女性として母になるというプロセスを経験しまして、自分自身の力が感じられる、あるいは自尊感情が深まってくる、その中で子供との間に愛着関係が深くなっていく。最近は、産み落とせばいいということではなくて、産み方から、生まれてすぐの赤ちゃん母親がどのように出会っていくかということに深いケアの注意が払われておりますが、それによりまして、母と子の間の愛着関係が非常に早い段階ででき上がっていく。それを土台にしまして、それから後に来る育児の問題とかいろいろ家庭生活の問題の中に大きな精神的なエネルギーが生まれていく。産むということは決して生物学的な現象だけではなくて、人間経験として非常に重要だということを助産師は大切にケアをすることになっております。  それで、子供の方からいいますと、この世に初めて生まれてくる、初めて呼吸をする。そして、そのときに、子宮の中にいたときのような温かさ、柔らかさがなくて、いきなり冷たい寒い空気の中に生まれてきたときに、温かく抱き締められる、それからすぐに乳首を吸わせてもらえる、そういったようなことから、そういう温かく扱ってくれる人に対する信頼関係をつくる、このことがとても大事だったのですが、ある時期、医療によって、子供がしばらくの間、赤ちゃんは絶食を十四時間しておいても大丈夫というようなお話があって、赤ちゃんとお母さんの出会いが阻害されていたというケアの仕方が大分長く続きました。最近、このところの重要さが強調されておりますので、生まれ方、生まれてすぐの赤ちゃんとお母さんの出会い方、そして、お母さんが赤ちゃんとの間につくっていく関係と、赤ちゃんがお母さんに向かっていろいろな感性、それをはぐくまれていくという、そのことが実は妊娠出産、産褥にまつわる人間育成のために非常に大事なポイントであるということで、例えば、基本的信頼関係が乳児期に形成されるというE・H・エリクソンの説でありますとか、たくさんの学者の方がこの辺りを強調されておられます。  それで、出産を満足な経験として、出産に関しましては自分でこういうふうに産みたいという最近はお母さんたちの計画がありまして、その計画に沿って自分なりに本当に力一杯産むことができたという満足感、そういうものが体験できますと、一人だけではなくて二人目も産みたい、また三人目も産んでみようという、そういうようないわゆる産むことから感じられる満足感が次の子供、次の子供というところに動機付けになっていくのではないかというふうに考えております。  それで、助産師の仕事と申しますのは、妊娠出産、産褥、育児の時期に独立した専門的な判断とか技術を用いまして女性と新生児に必要な心身のケアを行います。正常である範囲においては自律してこれを行うということを免許資格の上で保障されております。それで、実際には妊娠の診断、それから妊娠が正常に経過しているかどうかを妊娠各期で点検をしていく、そして正常で自然なお産が円滑に進むようにケアをしていくのが助産師の仕事でありまして、その上で、あと、新生児が母体外生活になじむ、適応するというそのプロセスを援助することを仕事としております。これには妊娠出産は必ずしも全部が正常であるということではございませんので、いつ異常が起こってもいいように異常を予防すること、それから異常の早期発見、それからもし異常が起これば速やかに医療と連携しなければ一命にかかわるということになるということもありまして、救命措置などが含まれております。  この点で、現在、医療との連携とか救命救急措置等に関しまして幾つか解決していきたいと、いかなければいけないという事柄を助産師としては抱えております。  妊娠の経過を、安全であるということを確認し、そこで起こってくる様々な変化が予想されますので、普通の場合のように病気になってから病気に関する指導をするのではなくて、妊娠の場合には次に何が起こりますのでどのように取り組んでくださいという事前の指導が非常に大事になってまいりまして、そういう指導を繰り返し繰り返し出会うことで妊産婦さんと助産師の間の関係が非常に深まって信頼関係ができるので、それで出産のときにもその信頼関係の中から出産が円滑に進められるといったような、単に医療機関で出会うとか助産所で出会うという、その会ったときだけの問題ではない、その部分が非常に重要になってきております。  それで、安全で快適な出産環境といたしましてたくさん問題がありますけれども、家庭的な温かい雰囲気の中で出産をしたいということがございます。そのために、何か病院のような雰囲気ではなく家庭的な雰囲気の中でお産をしたい、だから助産所がよいというような選択も働いております。現在、百十九万程度出産がある中で、約六割は自然の正常産で終わると言われておりますので、この部分に関しましては、産科の医師が少なくなられたということも再三伺っておりますが、異常に向かって医師が十分な力を発揮していただくために、正常をしっかりと助産師が受け持てる、そのことによって、ケア全体の問題だけではなくて妊産婦さんに通常助産師として提供できるケア、それが妊産婦さんにとって非常に大切な、人間育成についても大切なことではないかというふうに考えております。  この助産所等を通して助産師活動をいたします上で、私どもにいろいろ課題がございますけれども、現在はまず助産師は一体どこからどこまでケアをすべきかということで助産所業務ガイドラインというのを作りまして、異常とか危険なものには助産師はかかわらず、これは速やかに医療を受けられる方向に持っていくといったようなこと、あるいは事故が起こればすぐそれを詳細に調べまして、何が原因でどうしてそうなったかといったようなことに対応することなどに現在努力をしております。  女性が産む、女性女性の望む環境でお産をしたいというときに、では助産所の数はみんなが望むだけ、六十万のお産がもしあったとして、それに対応するだけあるかと申しますと、現在そのために働いている助産師は約八百人。助産所での出産は全出産の一%しかございません。この部分を今後育成することで、お母さん、赤ちゃんたちのためにいいお産をしていただける方向で努力ができればと考えております。  その一つとして、区市町村等に母子健康センターがつくられれば、そこを拠点に助産師が活動ができます。現在の開業型は、私費による土地の確保とか施設の確保は、若手の助産師には非常に負担が大きくてなかなかできませんので、できることでしたら、母子健康センターを各地に開設をしていただいて、助産師が中心でこの活動ができれば、妊産婦・新生児の方たちのお世話がいろいろできるのではないかと考えております。  それから、医療機関の中で産科棟が閉鎖されていくという問題が次々と起こっております。これに関しまして、助産師によって正常な妊産婦・新生児のケアをそこで行われないかということが再三検討されるのですが、従来、医師主導で運用されていた機関の中で、助産師そのものが自律してこれを引き受けるという準備が現在できていないところがありまして、そのために閉鎖されるところは閉鎖されてしまう。妊産婦さんは遠方まで健診に出掛けなければいけないという問題が起こっておりまして、助産師会といたしましては、新しい役割に備えての研修会を現在できるだけ頻回に繰り返し、そういう施設が閉鎖されて妊産婦さんに御不自由を掛けないような働き方ができるようにいろいろと苦心をしているところでございます。  助産師だけ単独でというのでは、救急の問題もございますので、ここで病院・診療所、助産所のネットワーク等に関して検討しておりまして、このページの終わりの方に幾つかそれらの最近ネットワークに関する研究等をいたしましたもののリストを作ってございます。  それで、助産師の活動には、緊密な医療機関との連携、それから助産師が具備すべき能力が、今までよりももっと独立して行動ができる能力を強化しないといけないということ、それから助産師によってケアをされている対象が、異常とか危険なリスクのある方たちをできるだけ速やかに医療に分担していただいて、先ほど申し上げた六〇%をできるだけ助産師で丁寧なケアをしたいというふうに考えております。  あと、医療機関で出産数が減少したのに伴いまして、空いたベッドに病気患者さんが入られる結果になりまして、これが、健康棟でケアされるはずである赤ちゃん、お母さんのためには非常に感染等の危険をはらんでまいりました。それと同時に、助産師看護師が、助産師助産師を必要とする方のケアだけではなくて、病人のケアに助産師が回らねばならず、助産師によってケアされる妊産婦さんが看護師さんのケアに任されるといったようなことが起こっておりまして、この混合病棟化に関して何らかの対策が必要であるというふうに考えております。  それから、古く助産師は貧しい方たちのお産を助産所でお世話をしまして、お金が払えない方がお野菜とかお魚を持ってこられたというようなこともしばしば古い助産師お話で伺っておりますが、現在、人工妊娠中絶が、平成十三年、ちょっとこれ数字が違っているかもしれません、三十四万一千五百八十八件の人工妊娠中絶があったとあります。この中で、例えば経済的な理由でのものも相当数含まれているのではないかと思います。それから、届けられていない人工妊娠中絶の数が実はこれと同じぐらい、あるいはそれ以上あるのではないかと言われております。  助産師といたしましては、産めない、そういうような方の事情をよく調べると、この中ではそれ相応の保護措置があれば産める赤ちゃんたちが中絶されている可能性が高いというふうに思いますので、この辺に関しまして、妊娠中の保護施策とか、それから出産に関する保護、出産後の養育費の補助、それで里親とか養子縁組とか、こういったような部分でもし対策が取れれば生まれることができる赤ちゃんが相当たくさん中絶されているのではないか。助産師としましては、昔からそういうことをやっておりましたが、最近、この保護施策の費用が非常に安いと。通常は一件三十万ぐらいが健康保険から出る手当でありますにもかかわらず、生活保護とか福祉で行きましたときに、最大二十四万、札幌市で調べました折には最大二十四万、通常は約十六万その補助が申請されたら施設に出るということですので、この点で、もしこういうところに力を入れるとしたら、生活保護、福祉助産等に関する給付費の見直しが必要ではないかというふうに思います。  それで、男子女子ともに成長の加速化現象が著明で性成熟年齢低下しておりますので、いろいろな性の問題がたくさんございます。助産師会といたしましても、このごろは幼稚園、小中学校から始まって、性のことを教育するという依頼が増えております。この点につきましても、助産師会として助産師教育訓練をすることによりましてこういうニーズに対応したいと考えております。  こういうような役割を担うためには、助産師の数が十分ございません。現在のところ、実働助産師は二万四千強でございますが、先ほど六十万仮に分娩あるものとして、その方たち妊娠期、産褥期の管理を助産師としていたしました折に何人助産師が必要かの試算をしてみましたが、最も短い時間で仕上げますと三万弱ぐらいになりますが、まあ大体普通の業務ですと三万四千人ぐらいあれば六十万のお産に対応できるかという、そんな感じで計算されております。  それで、助産師教育の質を高めなければ、例えば妊娠期の管理が十分できるか。なぜ産科棟が閉鎖されたときにそれを助産師が受けられないかと。妊娠期の診断はすべて医師がやっていました、その後の保健指導だけをやっていましたので、妊娠期の管理が自信がありませんというようなことになりますので、実際には産科のお医者様とどのようにこの分野の仕事を仕分をするか。それを受けて、正常は助産師ができますというためには助産師教育の内容を検討することが必要であろうと思います。量と質の両面から助産師教育を見直すことによりまして、六十万の正常の出産ができる方たちのケアが行き届くことができればというふうに考えております。  助産師養成に関してもいろいろ問題がございますが、実習施設の確保であるとか教育環境の整備であるとか様々な課題を抱えておりますので、いろいろ御配慮いただければ有り難いと思います。  以上でございます。
  9. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、米本参考人にお願いいたします。米本参考人、どうぞ。
  10. 米本昌平

    参考人米本昌平君) 大変重要な場にお呼びいただきまして、光栄に存じます。  私は、いわゆる生命倫理の問題を民間の独立の立場から研究しておりますけれども、方法論としては、生命倫理の問題は当事者、患者若しくは研究者が思い悩んで決断する問題であって、社会が考えないといけないのは、その技術の使用の現場あるいは研究の現場にどのような論理と強さで枠をはめるのか。要するに、技術規制、研究規制の政策立案の問題と読み替えまして、それを世界じゅう輪切りにするということをやっております。  今日は時間が限られておりますので、主として生殖技術の規制のタイプが一体世界がどうなっていて、その結果、一体日本が何をしなくてはいけないのかというお話にさせていただければと思います。  結論だけ申し上げますと、世界は、生命倫理関係の法律あるいは政策、すべてそうでございますけれども、ヨーロッパ型と、自己責任・自己決定のアメリカ型と、余り具体的な明確な政策がはっきりしてない日本と、それとそれ以外の非先進地域の政策と、要するに三プラス一極化がかなり明確になってきているんではないかというのが私の見方でございます。  それで、この一枚目と二枚目に沿って御説明させていただきまして、その都度この三ページ以降の方に御参照いただければと思います。  それで、大体その生殖技術、非常に大きいのは七八年に世界で初めて体外受精児が生まれましたけれども、これを含む出生諸技術を法律で規制するかしないのかという議論は、ヨーロッパが非常に着実にプロセスを踏んできているということだと思います。七八年に体外受精児が生まれますと、ヨーロッパは八〇年代を通しましてテクノロジー・アセスメント・レポート、この技術が科学的、技術的にどの程度のものであって、社会的な価値とどのようなところで切り結ぶのか、その上で政策の選択は幾つぐらいあるものかという技術の社会的評価に関する包括レポートを積み上げまして、九〇年代初頭にヨーロッパでは生殖技術規制法が成立いたします。  ヨーロッパの場合はこの生殖技術規制法が九〇年代前半に成立した国が多かったために、九〇年代末に哺乳類の発生工学、俗に言いますとクローンとES細胞という発生工学のテクニックでございますけれども、これが実現しても、ヨーロッパの主要国は既にある生殖技術法の枠組みの中でこの技術をどう取り扱うかという議論にできたということでございます。  ヨーロッパの議論、立法の内容でございますけれども、主として二つ特徴があります。  一つは、これはキリスト教的な教義。ヨーロッパはキリスト教圏でございますので、キリスト教教義の教義内容を脱色して世俗的なルールに読み替えたもの、これが法制化されたという特徴がございます。  それからもう一点は、七八年に体外受精児が実現いたしましたけれども、これは逆に言いますと、それまで女性の体内にしか存在していなかったヒトの受精卵が体の外に存在するようになりましたので、ヨーロッパの特定の国はこの受精卵を法的保護の対象にした国がございます。典型的なのはドイツでございますけれども。ただし、これは当たり前のように見えますが、このヒト受精卵は直径〇・二ミリでございまして、ほとんどの人は見たことがない。見たことも、見えない、見えないかもしれないものを法的保護の対象にしないと収まらない、若しくは法的保護の対象にすることをヨーロッパの人たちはだれも怪しまなかったわけでして、これは人間の発生プロセスについてキリスト教が非常に教義的な聖地化をしていたために、どこから人間が始まるのかと、どこから人間と認めるのかということについて宗教が大変にそこに問題の絞り込みをやっていったと。ですから、体の外に存在するヒト受精卵を法的保護の対象にしないとどうもヨーロッパ社会は落ち着かないということだったと思います。  この第二番目に、オーストリア、スイス、ドイツ、イギリス、フランスというヨーロッパの国を並べておりますが、この三ページを見ていただきますと、キリスト教教義の世俗化を立法化したものというのはこういうことでございます。  そもそも、生殖技術を医学的補助生殖と申しますのは、これは神の教えあるいは神の恩寵に従って愛が生まれて結婚してセックスをして子供が生まれて、ある特定のところで神が個別の、全能の神が個別の魂を吹き込む。その全体のプロセスの中で生殖、神のその加護の下で子供が生まれる、あるいは子づくりに夫婦が参加するというプロセスの中で、ほんの少しだけ科学技術がお手伝いをするというのがこのネーミングでございます。  ですから、このオーストリアというのは七八%がカトリック教徒でございますので、この九二年に成立いたしましたオーストリア生殖技術法というのは、カトリックの教えの世俗化のところをほとんど立法化したのに近いということになります。  見ていただきますと、まあ言葉としては正式の、できれば正式の結婚したカップル、まあそれに準じたとしても生涯の伴侶の精子卵子を使って、しかも三つだけを体外受精、体外で精子卵子に掛けてよろしいと。掛けた卵子は直ちに女性子宮に戻すということを前提としております。ですから、本当に子づくりのほんの一瞬だけを人間が外側でお手伝いをするんだということを具体的な立法化をしているということでございます。  それから、第六条は、この医療技術を拒否してもいいし、逆に、やった人間が社会的に非難を受けないということを法律が提示しているということでございますので、非常にこれが、ヨーロッパの法律はキリスト教教義の世俗化の価値を法制化したものがヨーロッパの特徴であるということの一つの典型でございます。  それから、四ページ目を見ていただきますと、これはスイスでございますけれども、スイスは非常に変わっておりまして、国民が代議員を送り込むのと同時に直接憲法改正ができます。その結果、スイス憲法というのは様々な国民の要求のカタログ化になっておりますが、二〇〇〇年に改めて再編されまして、二〇〇〇年に発効された現行のスイス連邦憲法というのは、その第百十九条というのはすべてこれ生殖技術法関連が憲法条項になっております。  例えば、②の真ん中、下辺りですけれども、今オーストリア法で申し上げました、例えば人間卵子は直ちに、これ移植と書いてありますが、これは子宮に移植できる数だけを女性の体外で胚にまで発生させることができるということが憲法条項になっております。それから、受精卵あるいは代理母は憲法でも否定しておりますし、それから少し変わっておりますのは第五番目でございますけれども、すべての人間自分の出自のデータに対するアクセス、ですから出自を知る権利が一応あるということが憲法条項になっております。  あと具体的に、ちょっとこの五ページ目を見ていただきますと、それぞれ主要国における生殖補助医療の規制のタイプでございますけれども、イギリスは独立の、生殖技術及び精子卵子の扱いについて独立の行政官庁をつくっておりまして、ここが様々な非常にプラグマティックな、個別に、よその国では判断が割れるようなケースも、この主務官庁が受精卵あるいは卵子の扱い方は個別に決めているということでございます。  それから、フランスはちょっと飛ばしますけれども、ドイツは、先ほど申し上げましたけれども、胚保護法というものを作りました。要するに、胚、人の、女性の体外で発生した受精卵そのものを法的保護対象にして、これに様々な実験、加工を加えた者は三か月程度の禁錮刑と、自由刑に処すということになります。  それから、これはアメリカでございますけれども、アメリカは家族法その他、教育とか医療に関するものは全部州法の立法権限でございまして、これは一応統一と書いてありますけれども、各州で統一するような親子法を作りなさいというモデル法のことでございます。  結局、アメリカの場合は、生殖技術というのはせいぜい親子関係については立法がございますけれども、具体的な生殖技術についてはほとんど直接的な法規制はないというのがアメリカの現状でございまして、その結果、不妊治療のほとんどは実際上不妊サービスの医療費が払える高額所得者のサービスのメニューのチョイスのうちということに現実はなっております。  時間が限られておりますのでヨーロッパはちょっとスキップいたしまして、じゃアメリカはどうなっているかということでございますけれども、アメリカは一九七〇年代の、日本を除く先進国は七〇年代に中絶自由化が実現いたしましたので、この七〇年代の中絶自由化論争の中でアメリカは中絶の自由化の賛否が割れてしまいまして、その結果、国論が二分したまま。共和党は中絶を抑制、民主党は中絶を自由にして、研究もどちらかというと自由にするという、大統領選になるとこれが一つの両党の政策の違う特徴になります。  その結果、連邦全体としては生殖技術で公的協議の場ができないままになっておりますので、生殖技術は、結局は個人の自己負担で逆に自由にやるということになります。その結果、外に出た受精卵の研究利用についても、受精卵を破壊してES細胞をつくるような基礎研究については、連邦政府の研究費を助成しないということが唯一の連邦政府のチョイスになってしまいまして、公的なお金をもらわない限りはヒト受精卵を破壊してES細胞という、これは再生医療の非常に有力な研究の手法でございますけれども、これは民間の研究費でやるということになっております。  それは、結局はアメリカの統治構造の、立法構造の成り立ちそのものが、アメリカは元々宗教移民の国でございますので、自己決定、自己責任以外に立法の組立てが実際上できない。同じ州の中でも別々の宗教のコロニーがありますので価値観が違う。価値観が違うと強制力のある社会的ルールは州法を作らないといけないということになりますので、その州法を作る場合に、ほかの人に明確な害を与えてない行為について規制をするのはアメリカの場合は非常に難しいということになります。  二ページ目に行きますけれども、その結果、世界は、先ほど申し上げましたけれども、生命倫理に関連する政策の型は三プラス一極化が二十一世紀の初頭は進行しているということでございます。  それで、今幾つか申し上げましたけれども、最後から二枚目をちょっと見ていただきますと、これが生殖技術で今かなり科学技術の規制が複雑になっていることの全体像でございます。  一番下のちょっと非常に地味に書いてありますのが、これが体外受精で胚移植、これが普通の不妊治療でございますが、今のところ、不妊治療で余った受精胚をカップルの同意を得て研究者がもらってまいりまして、それを破壊いたしましてうまく培養いたしますと、元々これは人になる細胞の塊でございますので、非常にうまく誘導分化すると、ありとあらゆる人の部分が誘導分化できるということでございます。  それで、この技術とクローン技術を合体いたしまして、その上を見ていただきますと、どこかから、女性からヒトの未受精卵をもらってきまして、患者の体細胞から核を採ってまいりましてその女性の未受精卵の核を交換いたしますと、患者由来の免疫拒絶が理論上ないと思われる受精卵ができて、それを破壊すると、理論上は患者由来の例えば神経細胞とか造血幹細胞とか脳細胞ができる。それゆえに、一型糖尿病とかパーキンソンとか、そういった理想的な置換医療ができるかも分からないということでございます。  世界じゅうは、ですから、ここのところが生命倫理の今ホットな議論になっております。これは、もしこの技術が実用化されてしまいますと、女性、未受精卵の需要が、潜在的需要が大変に大きくなってしまいますので、これも開発していいのかどうかというのが今から考えておかないといけない。  ちょっと結論になりますけれども、二ページ目に戻っていただきますと、日本の課題でございますが、先ほど申し上げましたように、先進国の中では日本だけが唯一非キリスト教圏でございますので、生殖技術法を作るという論理的必然性はあるんですが、それ以外の哲学的、宗教的必然性が欧米系と比べると極めて弱いということでございます。  実際にも、具体的な課題としては、なかなか一つの法律では網を掛けづらい個別の課題が、しかし法律が是非欲しい問題が、AID、第三者からの精子による人工授精、体外受精、死後の受精、妊娠ですね、それから卵子・胚の譲渡、それから代理母、男女産み分け、着床前診断、それから、これはあくまでも広義の生殖補助医療でございますけれども、それ以外にヒト胚研究、それから中絶胎児の研究利用、それから少し違いますけれども、先ほど申し上げましたけれども、出生時の出自を知る権利、それからもう一つこれは重要だと思いますけれども、治療ツアーが二十一世紀に入って大変に起こっております。  これは、これまで治療というのは、あるいは診療というのは属地的だと思われておりました。要するに、地域で診るもの、あるいは日本人は日本の保険の中で診療を受けるものを当然と思われておりましたけれども、二十一世紀にはこの診療のサービスの属地性が突然離れてしまっております。これで、ヨーロッパは二〇〇一年に人権裁判所が、イギリスのNHSというのは、これ国営でございますので、非常にこれ順番がなかなか回ってこない。非常に順番が回ってこないので、海外で同じ治療メニューを受ける権利をEU裁判所に認めてくれというふうに訴えておりまして、EU裁判所はそれを認めました。ですから、一般的に、これまだ一次の判決でございますけれども、不当に自国内で治療が遅らされた場合にはよその国へ行って治療を受ける権利を認める。しかも、これは保険料を払っている限りは同じ保険料、要するに自国内の保険料で自国内のサービスが異常に遅れた場合にはよその国に行くことも人権の範疇であるという、ヨーロッパ人権裁判所が、ちょっとこれはまだ非常に新しい段階でございますけれども、そういうことができました。  そうしますと、それぞれの先進国間でそれぞれ医療のサービスの得意なところを仕分けするということが起こっておりまして、日本は東アジアで一国だけ先進国でございますけれども、それ以外の部分で近隣諸国に、韓国とか中国に治療を受けに行くことが起こっておりますので、むしろ経済格差によって周りに逃げ、まあはみ出ていくというのと、ヨーロッパではむしろ得意な国でも患者サービスをやりくりしようというところまで行っておりますので、いずれこの医療費の削減、若しくは、あるいは治療ツアーということも、医療の属地性が外れ出したということも近未来はお考えいただきたいということでございます。  結論でございますけれども、非常にこれ、一つの法律で網を掛けるというのはなかなか今の日本では、それぞれ民法になったり生殖技術法になったり、内閣府の所管になったり厚生労働省の所管になったりしておりますので、取りあえずやるべきことだと私が思いますのは、包括的なテクノロジー・アセスメントを是非立法府の所管の中でお作りいただく。  私は、これ最後でございますけれども、脳死臨調の参与をやらしていただきました。その中で、一点だけ私が申し上げたのは、脳死臨調がどんな結論を出そうがいずれ同じような問題が出てきますので、私の意見としては、何らかの委託研究費を持っていて、それ以外に運営委員会を持っていて、その運営委員会が、今年はこのテーマで、例えば終末期医療の告知問題を、日本国じゅうの現状を、ですから法律でサポートしていただいて、情報の提供はこのプログラムについては必ずするようにという程度のサポートの、立法府でサポートしていただいて、いろんな生命倫理に関するテーマで十年間仮に積み上げれば、それがすぐ役に立たないにしろ、日本が取り組まないといけない生命倫理の問題の全体像がどんなものであるかというのは相当蓄積ができたんではないかと思います。  生命倫理の問題は、何か賛成、反対で二つに割るような問題だと思われておりますけれども、これはむしろそうではなくて、そういった賛否が割れる問題を具体的にどういう問題として切り取って政策メニューを絞り込むかということだと思います。  どうも、ちょっと時間を過ごしまして失礼いたしました。
  11. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  以上で参考人意見聴取は終わります。  これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時をめどとさせていただきます。  なお、質疑者及び各参考人にお願いいたします。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。  また、多くの方が御発言できますように、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきます。  なお、質疑の際は、最初にどなたに対する御質問であるかお述べいただいて御質問いただきたいと存じます。  では、質疑のある方は挙手を願います。  円より子さん。
  12. 円より子

    ○円より子君 民主党・新緑風会の円より子でございます。  本日は、四人の参考人先生方、大変ありがとうございました。それぞれ二、三時間ぐらいずつお時間を取っていただいて議論をしたいような、大変密度の高い、いいお話を聞かせていただき、本当に感謝しております。  そこで、今会長がおっしゃったように質問時間限られておりますので、四人の方に質問させていただけることができないかもしれませんのでお許しいただきたいと思いますが。  まず、近藤先生にお伺いしたいのですが、私も、安心、安全の面だけからではなくて、満足のいくお産というものが二人目、三人目、本当また産みたいということにつながる事例をたくさん見てまいりまして、それは助産師さんによる助産所でのそうしたお産によく見られましたので、たった一%しかないというのが大変残念に思っておりまして、もう少しお母さん方の産むときの選択肢を広げるために助産所を増やしたいと思っている人間なんですが、例えば嘱託医の制度が産科医に限られるというようなことになれば、今産婦人科医少ない状況ですから、助産所の新しい新設ができなくなるとか閉所しなければいけないという問題も起きるかと思います。  それで、連携医療機関というような形にしたりとか、そういった問題だけでなくて、助産師さんの業務の拡大とか、そういった形で助産外来とか、いろいろ病院でも増やしていって、正常なお産は助産師さんが病院でもやるというような方向に持っていきたいと思うんですが、助産師さんをもっと増やし、教育の質を高め、そしてなるだけ助産所も増やしたい、そのためにはどのようにしたらいいか、御意見ありましたら教えていただきたいと思います。  もう一つは、済みません、堀口参考人にお伺いしたいのですが、堀口先生から、もう随分前から、円さん、少子化の問題はお金だとかそういったことだけではなくて、雇用の問題が大きいのよ、働き方の問題が大きいのよと、それでみんな疲れ果ててセックスレスになっているんだから、ここの問題しっかりやりなさいと随分言われてまいりましたが、今日来ていただきまして、本当にしっかりとその辺りをお話ししていただいて大変助かります。  今度、男女雇用均等法の改正がございまして、ずっと女性妊娠出産にかかわるそうしたものを大事にするためにかち取ってきたことは、逆に、例えば加藤シズエさんなどが坑内労働などは女性にさせてはいけないということだったのが、今回坑内労働が解禁されます。そうしますと、もちろん妊産婦にはそういったことはさせないということになっておりますが、先ほどの先生お話を聞いておりますと、妊娠した後ではなくて、様々な過激な雇用環境が、過剰な雇用環境が妊娠に結び付かないということがあるというふうにお話しなさったように思うんですが、そうした様々な男女を同じようにしていく労働環境、深夜労働の解禁とか、いろいろございました。男性の側に、何というのか、共通にしていくような雇用環境というのは私は決して良くない、ゆとりのある環境がいいと思うんですが、そうしたものがやはり妊娠に大きく影響するとお思いかどうか、その辺りもお聞かせ願いたいと思います。
  13. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、近藤参考人からどうぞ。
  14. 近藤潤子

    参考人近藤潤子君) 御質問ありがとうございました。  ただいま嘱託医の問題に関しましては、連携医療機関という方向で整備されている途中と伺っておりまして、連携医療機関の中に嘱託医を置かせていただくということで、従来の個別の嘱託医にいろいろ得られないという問題がございましたのはその方向で解決したいと考えております。  それから、助産所を増やしていきたいということに関しましては、基本的にプライベート、私的な助産所ですと費用の助成又は低利の融資などがなければなかなか着手できにくいと思うのですが、現在、医療機関の中の、先ほどおっしゃっていただきました助産師によるセクションを立ち上げることで同じような効果が得られるのではないかということと、それから、先ほどの母子健康センターを各地区で設立していただくことによりましてそれに代えることができればというふうに今あちらこちらにお願いをしようと思っております。  以上でございます。
  15. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、堀口参考人、どうぞ。
  16. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 今の質問ちょっとよく分からなかったんですが、妊娠した後でなくて妊娠前の健康状態として妊娠不可能になるようなことは避けたいなという……
  17. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 円さん、じゃ、もう一度お願いします。
  18. 円より子

    ○円より子君 補充をさせてください。  例えば、今度坑内労働が女性にも解禁されます。そうしたことや深夜労働等、過重な雇用環境というか労働環境が妊娠をさせにくい状況になるんじゃないか。今の、ですから、雇用政策を変えた方がいいと先生はお思いですかというような、そういったことです。
  19. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) さっき申し上げたように、やはりメンタルな面からと両方からそういう卵巣の働きを衰えさせるような労働条件には持っていかない方がいいと思います。  女性の場合には月経というバロメーターがありますが、男性の場合にはそれのバロメーターがない。だから、男性の方がパタンキューということになる。そういう意味でも、男性を救う意味でも、両方の健康状態をチェックするような方に持っていっていただきたいと思います。
  20. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございました。
  21. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
  22. 円より子

    ○円より子君 はい。
  23. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ほかにいかがでしょう。  中原爽さん。
  24. 中原爽

    ○中原爽君 自由民主党の中原でございます。  堀口先生にお尋ねしたいんですが、前もって先生からいただいております鼎談の資料の一番最後のところで先生はおまとめになっておられるんですが、この性感染症、STDについて、さらにオーラルセックスのことを考えると耳鼻科、口腔外科の先生方も無関係ではないというふうにまとめておられるんですが、私の専門は口腔外科でございまして、今日見せていただきました十二番の資料、スライドでありますけれども、そこにこのSTD感染患者の急増で、特に肺炎の病原体としてのクラミジアが、その感染経路はオーラルセックスだと、こういうふうにスライドに出ております。  私の専門から見ますと、口の中の粘膜にクラミジアの症状が出てくるというのはほとんどない。それよりも、ここに書かれておりますように、この感染経路によって、口の中の感染経路によって肺炎を起こすという方が問題だというふうに思っているんですけれども、そういうふうに考えていいのかどうか。それともう一つ、やはり口の周りに症状が出てくるのはヘルペスの方が多いというふうに見ておりますけれども、この辺りのことについて先生の御見解をお聞かせいただきたい。
  25. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 堀口参考人、どうぞ。
  26. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 感染経路として、口腔内の扁桃とかそういうところに病原体が入っていますと、症状は出ないけれども感染源になるということで、それから次へ次へと人に感染していくという、そういう意味での厳重なチェックが必要である。しかし、非常に私たちがやったんでは見付かりにくい、だけど広がっていると。そういうことで、これから先、もっともっと検出技術を上げていったり、みんながその意識を持って、産婦人科も口腔の方も診なくては、口腔外科の先生方もそういう意識を持って診ていただきたいと。  それから、今までは外性器のヘルペス、水疱を起こすウイルスと口唇のとは別だと言われていたんですが、今はやっぱり、そういう頻度が高くなりますと、この辺りにできるものもやはり下の方と関係があるというふうに言われておりますので、厳重な治療。そして、これは一遍出ますと、またしょっちゅうしょっちゅう出ます。初感染は物すごく激しいけど、その後のは少しずつ弱まっている。ですから、症状がなくても、ちょっとおかしいと思ったら薬を飲むような指導も必要だと、そういうふうに言われております。  よろしいでしょうか。
  27. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  小林美恵子さん。
  28. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  今日は、参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。  私は、まず女性の健康という観点から堀口先生にお聞きしたいんですけれども、いわゆる、先生も今お話がございましたけれども、不妊の要因となる性感染症対策ですね。この調査会も昨年、中間報告というのを行いまして、そこの提言の中に性感染症対策も明記をしました。  それは私は本当に重要なことだというふうに思うんですけれども、その点で、やっぱり学校における性教育の役割も重要かと思うんですけど、堀口先生、先ほど上からの押し付けではなくて下からわき起こる性の学習というふうにおっしゃいました。そのことも含めまして、この性教育の重要性といいますか、その点、いろいろ議論もあると思うんですけれども、そのこと含めて御意見をひとつお聞かせいただきたいと思います。  それと、もう一つ女性の健康にかかわりましては、先ほど民主党の円議員もお話がございましたけれども、堀口先生の、過重労働が一つ不妊にもつながるというお話がございましたけれども、私どもも、この少子化克服に当たりまして異常な長時間労働の是正が本当に大事だということを提案してまいりました。先日、神奈川の出版会社に勤める女性労働者の話を聞きますと、週六十時間、七十時間はもうざらで、ひどいときには百時間の労働をすることがあると、子供を産む気には更々なれないというふうにおっしゃっておりましたけれども、こういう異常な長時間労働が、男性もそうでしょうけど、女性にも与える影響という点についても改めてお聞かせをいただきたいというふうに思います。  あと、済みません、三点目に、子育てと出産に当たりまして、やはり私は産婦人科医と小児科医医療体制の充実というのは本当に大事だというふうに思います。  先ほど鴨下先生が、産科医の数も不足していると、小児科医はワークフォース、ワークフォースですか、の点で不足しているというふうに実例を挙げられましたけれども、私は、そういう産婦人科医の体制とか小児科医療の体制を充実する上で、やっぱり政府が果たしていく役割というのは当然あるというふうに思うんですけど、この点、鴨下先生のお考えと、それからそういう医療と連携を取られている助産師としての役割を果たしておられます近藤先生のお考えと、堀口先生のお考えをまとめてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  29. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、堀口参考人からどうぞ。
  30. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 性教育に関してですが、今学校の先生方性教育ができない状態になっています。つまり、周囲からの圧迫で年齢相応な教育でなくてはいけないということですが、例えば教える側が年齢相応かどうかということを子供年齢自分が下りて考えて、そしてこれが相応かどうかということを考えなくちゃいけないんじゃないか。  ちょっと激しい表現になりますが、例えば性交とかペニスとかワギナという言葉子供たち年齢相応な、低年齢の場合にはそういう言葉は使わない方がいいんじゃないか。性差があるという、性器に差があることを教えてもいいけれども、そこでワギナとかペニスという言葉は使っちゃいけないと。それはなぜかというと、大人がそれを思い浮かべるときに自分性行為思い浮かべるから子供たちにその言葉が使えないのである。しかし、幼い子供に事実をまだ性的な欲求がないときに語って教えれば、子供は素直に学んでいけるんではないか。  そういう意味での教える側というか、性教育をしていけないという方たち自分の邪念を払って子供の立場に立って教育する、そういうふうなことがとても必要で、それにはやっぱりスキルが要ると。だから、先生方のそういう力を付けていくということはとても大事じゃないかなと、そういうふうに思っております。  よろしいでしょうか。  それからもう一つ労働過重については、私どものところに体の問題で来たとき、月経の不順もありますが、その中にセックスレスが物すごく増えていると、とにかく今おっしゃったように、パタンキューであると、セックスなくして不妊は治らない。女性月経という問題で卵巣機能不全分かりますが、男性にはそれの調査がない。最近聞きましたのは、男性の唾液を調べてそこの男性ホルモンの下がり具合を見るという方法があります。でもそれで見ますと、年を取った方の男性ホルモンは少ないと明らかに分かるわけですね。もしそういう手技が使えれば、働いている男性に唾液から検査をして、こんなにホルモン減っているじゃないか、もっともっと良くして、しかしそれには莫大なお金が掛かる、しかし今後そういうところにも目を向けていっていただきたい、そんなふうに思っております。  よろしいでしょうか。
  31. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、鴨下参考人、どうぞ。
  32. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) 小児科、産科の医師不足に対して政府としてどういう手を打つべきかという御趣旨の最初の御質問かと思いますが、これは幾つかございますけれども、まず、今まで、特に小児について申しますと、診療報酬の上で非常に小児に関しては低かったわけですね。ところが、今年度の改定ではほかが非常に引き下げられたのに対して手厚くしていただいておりまして、この点は厚生労働省に私ども小児科医としては有り難く思っておりますが、やはりそういうオーダーといいますか、それはそれとしまして、もっと医療だけではなくて子供に対して国がお金を使っていただきたいというのが本当、正直な気持ちでございまして、例えばチャイルドシートというのございますでしょう。あれの今実際に利用されている率は四割から六割と聞いております。結構高いんですね。それを、子供を抱えている家庭に買わせるというよりも、それはそれこそ固有名詞を挙げては申し訳ないですけれども、トヨタ自動車なんかはみんな、もう子供のいる家庭にはただでサプライするぐらいの、そういった考えですね、社会の、それが私は必要じゃないかなと思うんです。  そういうふうに大きく世の中を動かさないと、なかなか個々の問題では私は限界があるんではないかと。子供たちもそういうことを、自分たちが大事にされているという感覚が広く行き渡らないと、今の少子化にしても解決が付かないんではないか、多分に個人的な感想でございます。  それから、助産師産科医関係、私は専門、小児科でございますので余り深く立ち入っておりませんけれども、これは研究班の中でも産科の先生方は大変議論をされて、ただ、最近のお産の傾向が高齢であってリスクが高いと。それから一方において、若い妊婦さんたちは快適性というんですかね、そういうことを望んで、それとの、安全性とのバランスといいますか、そういう点でやはり病院出産がどうしても増えるといいますか、主流になるということで、これは両者がもっと協力するような形でいくしかないんではないかと思っております。特に母子センター、これは私どもはちょっと概念が違いまして、大学につくるというような考えですけれども、地域の母子センターというのはやはり非常に大事だと思いますので、そういうのを都道府県別にきめ細かくやっていただくということが必要ではないかな。  それから、これも厚労省はたしか各都道府県でそういった少子化に対する政策あるいは小児医療に対するきめ細かい政策をするようにという協議会といいますか、連絡会のようなのを今度立ち上げたと伺っておりますので、やっていらっしゃると思います。  以上で、余りお答えにならなかったかもしれません。
  33. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それと同じ問題で近藤参考人、どうぞ。
  34. 近藤潤子

    参考人近藤潤子君) 助産師と医師の関係につきましては、先ほど申し上げましたように、約六〇%は助産師ができるだけ正常を正常である形で受け持たせていただけるように助産師の準備を整えてさせていただくのが助産師としては考えていることですが、どういうふうにそれを振り分けていけるかについて産科のお医者様方との協議が必要だというふうに思っております。  従来は、産科のお医者様が正常であっても異常であってもすべて必ずごらんになっておられましたけれども、だんだんに最近は正常に関して全部外来で診ることができなくなって、相当の比率に関しては助産師が分担するようにというお話が出て、協議を始めておられる大きな医療機関が幾つかございますので、その点はこれから、助産師にできること、できないこと、産科のお医者様から任せていただけること、いただけないこと、そういうことを今後明確にしていかなければいけないというふうに思っています。
  35. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 小林さん、よろしいですか。  それでは、山本保さん、どうぞ。
  36. 山本保

    山本保君 公明党の山本保です。  私も全部の先生にお聞きしたいんですが、今日は米本先生に少し時間を取っていただきたいと思っております。  ちょうど、先日ですか、帚木さんという方が書いた「エンブリオ」という小説を読みまして、ちょうど解説を書いています福島教授、私の高校の同級生でございまして、ちょっと今度、近く名古屋で講演してもらおうかなと思ってやっているところなんですね。ちょうど今日、正にその話が出ましたので、少し、といいましても、まず最初にお聞きしたいのは、なかなか今、脳死ですとかいわゆる臓器移植などについては法律もできたせいもありますから非常に世間の関心が高いわけですが、今日多分お話にあったヒトの胚の問題ですとかクローンの問題、クローンについては少し、ある程度商品化というか、そんな広告化されたのかなと思いますけれども、ヒト胚についてはまだほとんど関心がないのじゃないかなというような気もするんですが、これはまた、私知りませんので、もし御存じでありましたら、この問題の重要性若しくは日本の今の状況、こういうところからちょっとお話を伺いたいと思っておりまして、その次に、できれば今日、最後の辺にある、こうすべきであるというところが、もう時間の関係もあったのだと思いますが大変簡単に済まされましたので、できれば、いわゆる価値論に、多分先生のお考えは価値論に入り込まずにまず情報開示とそのデータ集積、そしてその手続的なプロセスをしっかりすべきだというお考えなのかなと思うんですが、ちょっと思い違いもあるかもしれませんので、その辺についてもお聞きしたいと思っております。
  37. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 米本参考人、どうぞ。
  38. 米本昌平

    参考人米本昌平君) 日本社会で、ヒト受精卵をどのような程度の問題として今、日本社会が認識しているかというのはかなり問題だと思います。問題というのか、かなりそういう研究論文その他たくさんありますけれども、それはどちらかというと海外、特にアメリカの研究論文を読んで、その問題意識を日本に振っているという疑いが少しあります。  これ、日本と特にヨーロッパと同じ構造なんでございますけれども、やっぱり中絶の自由化問題と、中絶でこれだけ乱暴なことやっているのに、じゃ幾ら、女性子宮に戻すとある確率で人として生まれてくるかも分からない受精卵をそんなに丁寧に扱うのかという、ここの議論が日本の場合は多分未整理なんだと思います。  典型的にはヨーロッパでございますけれども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、ヨーロッパ諸国は実は一九六〇年代まで中絶というのは犯罪でございましたので、それを不法でないことにするにはどうしたらいいかというので大変な大論争、それこそ政治論争がありまして、そのときの一つの妥協といいますか、非常に具体的な政策の絞り込みとして、一九六〇年代の末に出生前診断が通常の技術になりましたので、右派といいますか保守派の方も、原則として中絶は勧められないけれども、胎児に重篤な先天異常が非常に高確率で持つと分かった場合に、それは、カップル若しくは女性の全く自発的な判断で中絶する場合、これは仕方がないという論理で現在まで来ております。  ですから、ただ、逆に今度は日本の場合はその議論をしてこなかったというのか、別の理由で実質上中絶の自由化が認められておりましたので、出生前診断については、これは障害者差別につながるというアジェンダになってしまっております。  それと例えば着床前診断がほとんど同じ構造で今議論されておりますので、私は、もう問題をごまかさない、要するに日本が直面しないといけないまだ積み残しの問題がありまして、それはやはり中絶胎児の扱い若しくは中絶論争について、かなりしんどいとは思いますけれども、いったんそれをもう一度整理し直した上で、じゃ人の体外に出ている受精卵はどの程度の保護対象にするのかというところはやはり日本社会としてやった方がいいと思います。  諸外国の、実は同じ法の、人間の発生は一つなんですけれども、中絶の自由化と胚保護法というのは全然違う法スキームで、まあ逃げていると言ってはおかしいですけれども、別のコンセプトの扱いにしているということでございますので、そこのところははっきり一度立法府若しくは中央でおやりになった方がよろしいと思います。  御質問、もう一つは何でしたっけ。
  39. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 山本さん、追加してどうぞ。
  40. 山本保

    山本保君 ありがとうございます。  先ほどちょっと紹介した「エンブリオ」、お読みになった先生もおられると思いますけれども、正に、天才的な医学者が、来られた患者さんの出生前の胚を培養しまして、それを自分の出世とかいろんな形で使うという、こういう刺激的な小説だったわけですね。  今日お見せいただきまして、イギリスの役所ですか、これが何か四千とかすごい、大変な数字が今日資料として出ていまして、私自身、そうですね、十七万ですか、体外受精によって作成された胚十七万、それがこのように全部分類されてといいますか、こういうことになっているというのをちょっと今日非常にショックを受けたわけですけれども。  日本の場合、一般的な形で言えば、まだこういう問題が、言わば不妊治療についてお金を出す出さないということだけがやっと政策課題になって少し実現したわけですけれども、それの問題点というのが、実際のところ本当に子供が欲しくて生まれない夫婦にとっては大変なことであろうという気はいたします。それがまだ今のところは治療費を出すか出さないかというところなんですけれども、もっと効果的で、お金が掛かるかもしれないが確実に子供が生まれるような方法がないのかということで多分これから話が来るだろうということを考えておりました。  そこで、先生に今日、もう一つお聞きしたかったのは、この最後のところの二ページですか、脳死臨調に関連されて、そして日本の産科学会とか、正にこの前の尊厳死問題でありますように、倫理委員会か何かを通すか通さないか程度の問題に矮小化されているわけですが、それに対して、日本として、国家として、問題になる前に何かどういう方法を取ったらいいのかということについて、何かアドバイスがあればと思ってお聞きしたんです。
  41. 米本昌平

    参考人米本昌平君) それで、このテクノロジー・アセスメント活動というのをもう少し丁寧に御説明した方がいいと思いますけれども、ここに書いておきましたけれども、七二年にアメリカ連邦議会がテクノロジー・アセスメント局というのをつくりました。しかし、行政改革でまず議会から始めろというので、九五会計年度以降、予算を米国議会はゼロにしてしまっております。  普通、何かテクノロジー・アセスメントといいますと、技術評価といって、物になるかとか製品になるかとか、何か直接の応用だけのような考え、イメージがあるんですけれども、あくまでこのOTAというのは立法活動に必要な情報の編集、提供でございますので、それぞれ議員が主としてこの事務局長に、こういう問題で調べてくれと言って、技術の評価と、アメリカの場合はいろんな宗派がありますので、各宗派との価値観のすり合わせと、そういう配慮から技術を使うとすればどの程度の社会制度あるいは既存の法律との調整が必要かという、立法府が、要するに技術の評価と社会との調整と、その調整は具体的に、に対して立法府がやるべきことはどうかということを、大体レポートを見ますと三つぐらいに政策オプションというのをつくって、これはちょうど研究論文と報告の中間のような形でございまして、各章ごとに最低限の必読文献、ですから、それさえ読めばこの問題がどういうものであるかということが論争の参加者に分かる、ですから賛成か反対かで終わって元に戻らないという、そういう意図したレポートでございまして、この政治手法をヨーロッパは非常にうまく八〇年代に移植して九〇年代の立法活動につなげたということでございます。  これを私の立場からいいますと、こういった活動が社会的に影響力をちゃんと持つというのは三つの要因があると思います。  一つは、手続上の正統性ですね、レジティマシーでございます。もう一つはオーソリティー、権威。三つ目は、これはそういう研究集団が能力を持ってなきゃいけませんので、レジティマシーとオーソリティーとケーパビリティー、日本語で言えば手続的正統性と権威と能力、こういったものを日本で、しかもすべての包括的な立場から書けるようなセクターを集約すれば、これ一つ書けばもう二つ三つ書く必要はありませんので、とっくに日本全体のどこかでこういった作業をしていれば、もう少し今の、例えば医療の現場とか研究の現場も、それほど突然、外から見て不都合が起こったために突然警察ざたになるとか、そういう警察権と現場の配慮がいきなり結び付くのではなくて、間にこの技術というのはどういう配慮の下で使うべきかという一般的な日本の安定した基軸が中央で書かれていれば、もう少し現場はそれほど悩まなくてもよかったのではないかというふうに思います。
  42. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 山本さん、よろしいですか。
  43. 山本保

    山本保君 ありがとうございました。  ちょうど衆議院でまた臓器移植法が出てきたわけですが、私自身考えますに、どうも問題を矮小化して考えていたような気がしましたので、今日お話を伺いまして、そのまた背景になることをもっと勉強しなきゃいけないなということで、ありがとうございます。参考になりました。
  44. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。  それでは、川口順子さん、どうぞ。
  45. 川口順子

    ○川口順子君 どなたにお伺いしていいかよく分からないんですけれども、多分鴨下参考人かもしれませんが、生物が、人間を生物として考えたときに、いったん少子化が始まる、その増加率が減っていくような状況に陥った場合に、これはそういうトレンドを止めることができるのかできないのかというのが一つです。  それからもう一つの質問は、先ほどの近藤参考人資料を見ていましたら、もう一人の方の資料にもありましたけれども、日本で中絶数が三十三万とか四万とかあるということでして、やみで行われているのももっとあるだろうから、相当数多いということでいうと、日本人の生物学的な出生率というのは決して落ちていないだろうと思うんですね。  それで、他方でスウェーデンとか、すべての国の事情を知りませんけれども、北欧の国、それからアメリカなどでも相当に婚外子の出生が社会的に認知された形で行われていて含まれていて、それが人口増加率といいますか、少子化が日本ほどひどくないということのその数字のかさ上げに役立っているということなんだろうと思うんですね。  ですから、ちょっとそういう研究があるのかどうかよく分かりませんけれども、例えばスウェーデンで、日本的な社会の枠組みで計算をするとしたら、一体少子化の率というのはどれぐらいなんだろうかと。逆にその日本の、これ中絶をなさる方の理由は様々でしょうからよく分からないと思いますが、日本の場合、スウェーデン的な社会の枠組みであったとしたらば一体少子化程度というのはどれぐらいなんだろうかということが関心事でございまして。  何を申し上げているかといいますと、今結婚をしている子供、その親の子供たちを増やすということに日本はずっと力を入れてきているわけですけれども、なかなかその家族制度との関係では難しいんですが、中絶が起こるというような状況というのは事実上、一夫一婦制というのが崩れているということでもございましょうから、あるいは若くて結婚しない人たちが事実上結婚をしているということでもありましょうから、もっと社会の寛容度を増すことによって少子化の問題を解決した方が早いのかという気もするんですね。ですから、ちょっと生物学的な要因なのか社会学的な要因なのかという、一体どっちなんだろうかということに関心があるということでして。  それから三番目は、これは堀口参考人堀口先生に御質問を申し上げたいんですけれど、いろいろなその対策うち性教育をいかにきちんとするかということが今多分、一番日本でお金が掛けられていなくてエネルギーが使われていない部分かなという気がするんですが、これも、どの段階でどのような性教育をするかということについて日本の中でいろいろな議論が今あるんだろうと思うんですね。特に、最近の風潮は、余り早く性教育をすることに問題があるんではないかということもあるかもしれないという気もいたしまして。  現状、どういう形で必要な性教育をやっていくのがいいと思われるか、お考えを伺いたいということでございます。
  46. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、鴨下参考人からでよろしいでしょうか。どうぞ。
  47. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) 人間を生物としてとらえるということなんですが、実はこの学術会議報告書の中にそのことが少し書いてございまして、済みません、ちょっと四百五十一ページをお開きいただきますと、要するに、人間も最終的にゾウリムシあるいはネズミと同じで、ある程度以上密度が増えますと自然に増加にブレーキが掛かると、そういうとらえ方も可能であると。日本の社会はそういう面を一つ持っているんではないか。ある程度多くなると生物は自殺行為に走って、イナゴとかネズミもそうでしょうけれども、集団自殺の記録は生物学の歴史の中に幾つもあるわけですね。それは密度がある程度減ればまた自然に回復してくるということですので、人の場合にもそういうことが起こるのか。  いずれにしましても、これは日本だけではなくて地球環境、現在六十二億の人口がいるわけですけれども、すべての国で、例えば今の一番最貧国はバングラデシュとか東南アジアの国も仮に日本のような生活レベルにすれば、地球が三つ要るとか、そういう話になりますから、ですから、これは日本だけで考えるべきことではないのかもしれません。  それから、社会的といいますと、これは恐らくほかのデータでございますけれども、一戸当たりの住宅の面積と出生数が非常にパラレルであるという報告がございましたが、そういう点では日本の住環境というのは非常に貧しいと。  それに関しては四百五十五ページに住宅のミスマッチというのがありまして、三人の子供を育てるためにどれだけ広さがあったらいいか、そのために国がどれほど経済的な支援をすればいいかというようなことが書いてございます。現在、百二十万をもう既に割っておりますんで、その八%の約十万人が三番目の子供として出生するということを考えれば、毎年一つ家庭に、一戸の家庭に払う補助金が五十万円と、十万家庭で五百万円、十年間それを続けるとすると五千億円ですか、これを高いと見るか低いと見るか。しかし、子供の一人一人のやはり福祉といいますか、そういうことを考えますと、住環境はいい方がいいわけですから、このぐらいのお金を国として用意していただきたいというのが私の個人的な考えでもございます。  それでよろしゅうございましたか。
  48. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) もう一点、中絶の問題とか婚外子、スウェーデン等の。
  49. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) スウェーデンの例ですね。これは、これも私の個人的な意見でございますけれども、そういうことで子供が増えるということが日本でいいのか悪いのかという、やはりモラルといいますか、そういうことにかかわってくるように思います。
  50. 川口順子

    ○川口順子君 その価値観の問題はもちろんあるんで、少子化を、対応が大事なのか家庭が大事なのかという議論はあるんですが、それはおいておいて、むしろ、その現象として見たときに、それが社会学的な理由なのか生物学的な理由なのかということを知りたかったということなんですが。
  51. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 鴨下参考人、いかがでしょうか。
  52. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) ちょっと難しい御質問ですけれど、やはり日本人の考え方で、意外に婚外出生というのに対する社会の目が厳しいように思うんですね。それは社会的な一つのブレーキかなと思いますけれども。議論がかんでおりませんか。
  53. 川口順子

    ○川口順子君 済みません、多分かみ合ってないんだと思うんですが。  少子化原因がどこにあるかということで、例えばそのスウェーデンは高いじゃないかという議論がありますね、今、日本ではね。だけど、ふたを開けてみれば、スウェーデンは、今恐らく先生がおっしゃったように、日本の大部分が望まない、日本の今の家族制度を壊しての上でのその数字が高いということなんだろうと思うんですね、というふうに推測をするんですけれども、そういうスウェーデンの子供うちどれぐらいが婚外子であってというようなことについて、客観的なデータはないんでしょうかという質問でございます。社会の認知度は全くこれ別な問題だと思っています。
  54. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 鴨下参考人、いかがでしょうか。
  55. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) それは調べればデータはあると思います。ただ、私はちょっと手元にない。申し訳ないです。
  56. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、堀口参考人、どうぞよろしくお願いします。
  57. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 性教育にもっとお金を使ったり、どういうふうにしたらいいかということですね。  性教育に関しては、やはり今反対はされているけれど、うれしいことに、親たち性教育をしてほしいということで講演依頼が増えているんですね。そういう意味で、親の方からそういう教育が、知恵が入っていけば子供たちと接しやすくなると。そのときに私たちは、産婦人科の医者以外に、生命というのはとても大事なんだよということを伝えられる助産師が、私たちがいろんなこういう例が、こういう例があると言うよりも、助産師さんたちが命の大切さを教えるという、そういう性教育をするというのはとても受け入れられるんです、子供たちに。そういう面での連携をやっていきたい。  それから、やはり先生方性教育をしやすい状態に何とかして持っていかなくちゃいけない。というのは、私たちはいろんな事例を持って話しに行けるけれども、子供たちに語り掛ける言葉を持っている先生方がやはり子供たちに、畑をならしておいてくださるからこそ私たちのほうり投げた芽が生きるのであって、何とかして性教育が大切であると。さっきも申し上げたように、大人の感覚で子供たちの、性的なものを持っていない段階に大人が反対しているところを何とかしてつっついて、大丈夫なんだよというふうに性教育の方を持っていきたい。ちょっと分かりますでしょうか、私の言いたいことが。  そういう意味と、それからもう一つ。  子供たちが今いろんな状態になっているのは、マスコミの影響が物すごくあるんですね。どうぞアダルトビデオを見てほしいと思います。それから、コンビニでもって子供たちのためにかかれている本を見てほしい。そこに、股間に頭をうずめている男性の絵とかそういうものがばっちりある。これを何とかしたい。しかし、私は戦争中の人間ですから言論統制はしてほしくない。だけど、これだけ害があるところに子供たちを置いておいて、これでいいのかと。その方面も、やっぱり性教育をしちゃいけないと言っている人に対してアゲインストしてほしいなと思います。  性教育は、今言ったような命の大切さを教える助産師たち、それから学校で教えている、そして私たち、そして父母たちが、しかも今、父母たちにいい焦点が当たっているというところからつっついていきたいなと思います。先生方がより話をしやすいように。  今、東京都では、小学校やなんかには厳しいんですが、高校には産婦人科医を派遣してほしいと、つまり大人だったらいいというような感覚があるんですが、しかしそれでは遅過ぎる。中学生からもう実態がとにかく、私たちに、アンケート調査で、今度先生来てくれるんだけれども何歳だったらセックスしてもお母さんが心配しないだろうかという質問が出るような子供たちであるということ、それが、必ずしも勉強は余り好きでない子供たちの学校ではなくて、かなり進学校の子供たちからそういう質問が来ているということに対して、先生方も、性教育をバッシングしようとしている方たちにももっともっと知ってもらいたい、そんなふうに思っております。
  58. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 性教育の問題についてはかなり助産師さんもかかわっていらっしゃると思いますけど、近藤参考人、いかがでしょうか。
  59. 近藤潤子

    参考人近藤潤子君) 性教育の問題は、性教育とは何かということになるかと思うんですが、小さい子供のころから、性というのは恥ずかしいものとか忌まわしいものとかいうことではなくて、二歳前後ぐらい、子供が裸で走り回って自分の性器を興味深く見ているという、そういう段階から、それは大事なところだからというような教育が始まって、それでだんだんに大きくなるにつれて必要な性に関することを教えていくことになるのではないかというふうに思うんですが、女子で現在、初潮が大体十一歳前後ぐらい、それから男子の精通現象も多分同じぐらいの年代になっていますので、その年代の子供たちはもう知りたいのですね。知りたいにもかかわらず、まともにそれを知らせてくれる情報源がない。そうすると、いろいろな雑誌とか興味本位のいろいろなものを見る、それを見ていることを親に見られる、親の方は非常に慌てる、子供の方は大変傷付くという、そんなちぐはぐなやり取りがいろいろあるわけなので、実際には今、本来性に関しては加速現象がありますので、やはり相当早い段階から子供が知りたいと思うことに合わせてその知識を与えていくのが必要なんだろうと思いますのと、もう一つ、性とか性行為に関して親がはっきり価値観を伝えてほしい。何か人に教えてもらいたい、先生に教えてもらいたい、だれか性教育をする人に教えてもらいたいと言う前に、親の方が本来性はどうあるべきであるということを自分子供に伝えてほしい。そのためには、子供性教育だけじゃなくて、親に、大体その年代の前になった親にそれに関することを教育すべきではないかというふうに思っております。  それで、現在は非常に低年齢からの性教育が、本当にニードが高くなっているというふうに思っております。
  60. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 川口さん、よろしいですか。  ほかにはいかがでしょうか。  では、坂本由紀子さん、どうぞ。
  61. 坂本由紀子

    坂本由紀子君 自由民主党、坂本由紀子です。  まず、鴨下先生にお伺いしたいのですが、不妊治療に対する保険適用の問題につきまして、様々な論があるかと思いますが、先生のお考えを教えていただきたいというのが一点です。それと、加えて、不妊治療によって生まれた子供さんに生命力等の点において何かリスクが大きいとか、そういうような問題があるのかどうかということも併せて教えていただきたいと思います。  それと、堀口参考人には、性の早熟化を抑止するためにも性教育が必要ではないかと私は思っております。先ほど、少しその点に関連して出版物等についても非常に問題があるというお話が出ましたが、子供たちの性の早熟化以外に、出版物の点については性犯罪を助長しているというような課題も出ているかと思いまして、私は、本来その自由を守るという観点から規制は望ましいことではないと思うんですが、なかなか自主規制というような形で見守っているとこの状況は商業主義にあおられてなかなか解決のめどが付かないように思うのですが、この点について堀口先生のお考えを聞かせていただきたいと思います。  それから、近藤参考人に、人工妊娠中絶が大変多いということで、こういうことについては里親や養子縁組等々を充実していけばよりいい解決策があるのではないかということで、私も同じ考えを持っておるんであります。ただ、一方で、日本人は血のつながりをとても重く見る民族のように思いまして、養子をもらうよりは不妊治療を何回も重ねて自分子供が欲しいという人たちが多いように思うんですが、この点について、今後、妊娠中絶等をできるだけ少なくして芽生えた命をできるだけ世の中に誕生させ、その後、順調に育つような養子縁組や里親制度がうまく機能するために、私たち社会にとって必要なこと、財政的支援以外にどのようなものが必要であって、どのような方策が考えられるかということで参考人のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  62. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、鴨下参考人、どうぞ。
  63. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) 不妊治療保険収載するということですが、この場合、不妊治療といっても恐らく体外受精のことをおっしゃっているかと思います。  例えば、排卵誘発剤の使用とかそういうのはもう今かなり広くやられておりますし、これについては余り問題がないといいますか、全然なくはないと思いますけれども、結構ではないかと思いますが、体外受精については、私はやや、先ほどネガティブといいますか、まだ慎重にすべきだ。基本的には反対ではないんですが、ただ、それが少子化対策といいますか、私は使いたくないんですけれども、子供を増やすためにそれをやるというのはやはり本末転倒じゃないか。つまり、実際に今、体外受精、先ほどスライドもございました、年齢によって違いますけれども、平均してその成功率、一五%から二〇%という非常に低いわけでございますね。それから、ある程度のリスクもまだあるわけでして、そういう問題がやはり解決しないと、一般的に保険適用というふうにはならないんじゃないか。  一つの議論の分かれ道は、一体不妊症病気として扱っていいのかどうかということもあるのではないかと思うんです。その辺は医師全体よりはむしろ産婦人科医の意見が大事かと思いますけれども、恐らく見方によっては、御本人は日常生活に差し支えないわけですし、特に痛いとか苦しいとかいうことはないわけです。むしろ心の悩みですかね、子供を持ちたいのにできないという、そういうことですから、そういう見方からすれば一種の病気ということになるかもしれません。そう考えて保険適用するということではないかと思うんです。  安全性、確実性、そういったことをもう少し待って、それから法律的な、そういう法制審議会でしょうか、そういったところでの議論を踏まえた上でやはり進めるということが根本的に大事ではないかというふうに私考えます。  それから、済みません、すぐ忘れてしまって……
  64. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 不妊治療で生まれた子供のリスクがあるかどうか。
  65. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) 問題ですね。  これは、実際に奇形とか、それから障害を持つ子が頻度的には高いというふうに言われておりますけれども、それよりも不妊、むしろもっと精神的に、そういう子供大人になって、それで結婚してちゃんとした家庭を持てるかというような、そういうところまでのフォローアップはこれからだろうと思うんです。ですから、そういう点ではまだ答えが出ていない。  それから、いろいろ産婦人科学会の雑誌を見ますと、ほとんど毎月のようにこの体外受精の特集などがなされておりますけれども、そこで技術的な進歩は確かにいろいろやられているようですけれども、そういった何といいますか、社会的なフォローアップといいますか、そういうところまではまだ行っていないように思います。
  66. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、堀口参考人、どうぞ。
  67. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 出版物の性犯罪との関係、助長するんじゃないかということや何かから自主規制ということですが、なかなか本当にできないんですが、もう一方、子供たちの生き方の中にコミュニケーションスキルが足りないということ、そして子供たちが集まれば、それぞれが別個に何かパソコンや何かいじったりして、同じ集まっていながらそこにコミュニケーションがないという、その辺りや何かをもっと子供たちの生き方に対して変えていく。そうすると、自然に仲間というものの大切さが分かってきて、いろんな書籍や何かからくるものの害を防げるんじゃないか、そういうふうな考え方が私たちの中でもあります。  そして、自分自身を大事なものだということを、自分を尊重できるということを知れば、また相手方の人々、仲間たちを、他人を大事にすることができると。そうすると、例えば性の問題でいっても女性の性の感覚と男の子の性の感覚は違うんだということが分かっていけば、大事にするということができていくんじゃないか。そのためには、やはり家族の中で父親、母親がお互いを小さいときから大事にするところを見ていけば相手を大事にできるだろう。しかし、離婚家庭が増えています。そうすると、そこの大事さということができないんじゃないか。  そういう意味でいったら、広い広い範囲からやっていかないと本の規制ということはできないんじゃないか、そんなふうに思います。
  68. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 近藤参考人、どうぞ。
  69. 近藤潤子

    参考人近藤潤子君) 中絶のことですね。  子供と親の関係というのは、血がつながっているかどうかよりも、できるだけ小さい段階で我が子として身近に置いて一緒に暮らすと非常に強い愛着ができていくというふうに思われますので、実際に血液型が同じとか、遺伝子検査とか、そういうことを抜きにして、親子として暮らし始めたときに、血縁よりも実際には育ての親と子供との関係というのは非常に深くなるというふうに思われますが、日本の社会では一般的に非常に血縁にこだわっておられて、実子であるかどうか、戸籍上がどうであるかということに当人たちよりも周辺までがこだわるということがあるので、この問題がもうちょっと解決できれば、それでそのために母子手帳とか、あるいは出生証明書を偽造してしまうというようなことさえ起こってしまうのですが、そういう問題を解決できれば、実際には、子供を引き取るときにはなるべく大きくなってから引き取りたいと一般の方は思われるようで、赤ちゃんのときには非常に難しいと考えておられるようですが、実際には生まれてすぐに本当に引き取って里親になられるのなら、その方がずっと関係が深まる。そのことを話さなければ本来は分からないでも大きくなっていくので、私は実の血のつながりよりも、本当に小さいときから引き取って育てられる、そのバックアップをすれば随分深い親子関係ができていくというふうに思います。  ただ、それに伴う戸籍の問題その他の問題をどのように解決するかで、最近は割り切って子供にはっきり言っていらっしゃる方たちが多くて、本当の子供じゃないけど本当の子供以上にあなたのことを愛しているよというようなことを言いながらお育てになって、別に実子でないからどうこうというようなことがないというふうにも聞いていますので、実際にはできるだけ小さいときからの里親、養子縁組などはもっと推進されてもいいんではないか、その社会的にこだわるところをもうちょっと打破していくことによって子供たちにもいいんじゃないかと思います。  特に子供は集団保育されるよりは、自分の家族がいるところで育つのが一番人間として育つための条件が良いのではないかというふうに思いますので、特に中絶で経済的な理由の中絶というのが結構たくさんありますので、その点は非常に残念であって、子供が欲しいけれど子供がいない家族の方もたくさんいらっしゃるというところから見ますと、血縁よりは実際の育ての親と育ての子の関係というのを本当に深い、実際にはもう本当の親子かどうかなんかは外から見て全く分からない関係ができていきますので、その方向で考えられるといいなというふうに思っております。
  70. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  ほかにございますか。  森ゆうこさん。
  71. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 民主党・新緑風会の森ゆうこでございます。  本日は四人の参考人先生方、大変貴重なお話ありがとうございます。  まず、鴨下参考人とそして米本参考人に伺いたいんですけれども、鴨下参考人におかれましては、生殖補助医療と生命倫理に関しまして、倫理的検討、社会的合意、法的制度、子供の福祉を守る体制の整備などが不十分な段階で技術と臨床応用が先行してしまっているというふうに指摘をされております。そしてまた、米本参考人におかれましては、日本の今後の課題として、法的整備というよりもまずは基本的に包括的テクノロジー・アセスメントの報告書を作成する中立的セクターを持つこと、まずはこれをやれば取りあえずはいいのではないかというふうに御提案をされているところでございます。私も、実際に生殖補助医療の現場に携わっている先生方から鴨下参考人の提起されている問題点等々のお訴えがございまして、こういう現場の状況を放置していてはいけないのではないかというお話も伺ったことがございます。  この点に関してもう少し詳しく問題点を指摘していただきたいということと、米本参考人の方からは、取りあえずはテクノロジー・アセスメント報告書を作成するこういうセクターを持つということについて御提案があったわけですけれども、この点についていかがお考えかということ。そして、米本参考人におかれましては、そういう現場のそういう訴えがあるわけですから、もう少し踏み込んで国内での法的整備を進めた方がいいのではないかというふうに思われる点もあるんですが、その点についていかがかということをまず質問させていただきたいと思います。
  72. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、鴨下参考人、どうぞ。
  73. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) この私の資料の二ページの三番の真ん中辺に書いてございます倫理的検討、社会的合意、法制度、これはやはり私どもから見ますと、そういうことがまだきちっとできていないという現状はあると思います。今、進行中だと思うんですね。  ですから、個々のケースについては十分にやらざるを得ない場合もあるとは思うんですけれども、今の特に産婦人科先生方がやっていらっしゃることは、体外受精をやる、それとお産を引き受ける病院が違うんです。これが非常に大きな問題だと思うんですね。だから、要するに体外受精をやりっ放しで、それでリスクはございますし、それから障害児も出生頻度は高いわけですが、そういうものがみんな、それを、お産を取り扱う病院の方に今度掛かってくるわけですね。そういうことは余り御存じないんじゃないかと思うんですけれども。だから、そういう点ももう少し、これはむしろ産婦人科医会、学会辺りで考えていただかなきゃならないことですし、それが学会としてできなければやはり何らかの法的な規制を掛けるべきではないかと思います。  それから、遺伝的関係がない親子というのは、今までも養子縁組、先ほど近藤参考人も申されましたけれども、あるわけで、それはやはり親の非常に考え方が大きいと思うんですね。  これは、普通の妊娠でも、望まない妊娠という言葉がありますけれども、両親が非常に子供を待って誕生を心から祝う、それからその周辺の家族も祝う、待ち望んで生まれた子供というのはやはり非常に成長がいいわけでして、そういうような子供の社会といいますか、それが今はいろんな条件で、都会の生活もありますし、それからこれはちょっと話が違いますけれども、今女性の、日本は非常に先進国の中でも喫煙率が高いですね、妊婦が平気でたばこを吸っている。それから、これはいわゆる二次喫煙で、赤ちゃんが、妊婦が自分は吸わなくても周りで吸うと。そういうことの被害というのは、健康被害というのは結構高いということがだんだん分かってきておりますけれども、そういう点でもっと社会が、もう繰り返すようですけれども、赤ん坊といいますか子供を大事にするという、そういうふうに世論がつくられることが大事だと思うんですね。  私、社会的合意というのは単に生殖補助医療の先端的なことだけではなくて、もっとそういうことも含めてやっていかないと、子供は数は増えなくても、要するに幸せな子供が増えるということが大事だと思いますので、そういう方向へ行かないんじゃないかと、そんなふうに思っております。
  74. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 米本参考人、どうぞ。
  75. 米本昌平

    参考人米本昌平君) 私も、理屈の上では何らかの法律が必要だというような局面の問題は幾つかあるとは思います。しかし、大体議論はそこで終わっちゃっておりまして、例えば厚生科学審議会の生殖補助医療部会の報告書がもう三年前に出ておりますが、それは多分、政府提案の法案が提案されるという前提でお動きになったんでしょうけれども、それぞれの時点でまあ一時的な、一時的っておかしいですけれども、ある程度部分的にその立法準備の手続は進んでいるんですけれども、なかなか全体として具体的な法案に読替えが行われていない。  要するに、逆に言うと、立法コストと言わないですけれども、本当に物になるまでに大変なエネルギーが要る。それならむしろ、とっくにやってないといけないことなんですけれども、日本が具体的に、個別に言いますと、生殖技術についてどういう形で社会全体としてぶつかっているのかという問題の全体の構造を、まず問題認識の構造を共有する。単に議論を、単にって変ですけれども、何となく生命倫理の問題というのは、賛成派、賛成を主張する人と、やりたい人と慎重論言う人が出会って議論をして何かルールが必要だねということで終わるんではなくて、その技術、元に戻りますけれども、私も法律は必要だと思いますが、私の体験からいっても立法が実現するまでのエネルギーたるやこれは大変でして、しかしその前にまだやらないといけないこと、むしろ立法が必要だという認識をなるべく多くの方に効率よく御認識いただくためにも、あるいは議論が後戻りしないためにも、中立的なところからともかく問題の全体構造を切って見せるということが取りあえず必要なことではないかという、それが取りあえず私の意見でございます。
  76. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 森さん、よろしいですか。どうぞ。
  77. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。  続きまして、堀口参考人一つだけ伺っておきたいと思います。  先ほどからの性感染症等に関する話は本当に大変緊急課題だなということを改めて認識しております。私も地元の例えば成人式などで、日本というのは先進国の中で非常に不名誉なことに性感染症、特にエイズの今若者への感染、蔓延というのが非常に急速に進んでいるということで、その警鐘を鳴らすことをあいさつの中に入れますと、終わってから必ずお母様方に、いいことを言ってくださったと、親からはなかなか言えないので非常に良い話をしてくれたといって感謝をされるんですけれども、私、先ほど先生がおっしゃったように、もっともっと中学生とかそういう年代からきちっと教育をすべきだろうというふうに思っております。  それで、質問なんですけれども、全然違う質問なんですけれども、先生のこの資料の中に「性差を意識した医療」という部分が最後に、この「女性のウェルネス・ガイド」のところで結論のところに書いてございまして、「これからは不必要に性差が語られている女性外来・女性医療を見直す必要があります。」というふうな結論の部分で書いていらっしゃるんですけれども、百七十三ページのところなんですが、この不必要に性差が語られている女性外来、女性医療を見直して、真の人間に適した医療というようなことはどのような意味なのか、少し御説明をいただければ大変有り難いと思うんですけれども、よろしくお願いいたします。
  78. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、堀口参考人、どうぞ。
  79. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 性差医療ということで、男性女性の性差によって例えば病気の種類が違うとか、例えば女性にはリューマチが多いとか、それから同じお薬使っても女性の方が効きが悪いとかいろんなことがあるんで、性差を注目した医療が進むと病気そのものが解明されていく、そういうのがあるわけですね。  しかし今、残念ながら、性差医療というのは、女性を特徴としてやっていくと世の中に受けがいいんじゃないかということで、上の方からとにかく女の医者だったらいいからやってくれとか、そんなふうな、全国的に見るとそんな問題もあることはあるわけですね。本当の意味で性差をきちっとわきまえてやっていけば進歩があるけれども、ただ女性であればいいというような表面的なものを今は追い過ぎるんじゃないか、しっかりと本当に根差したものを私たち自身がやっていかなくちゃいけないし、外にPRしていかなくちゃいけない。  そして、それじゃ男の医者は駄目かというと、男の医者だって女性のことをよく分かるような人もたくさんいるわけですから、そういう方たちと連携してやっていった方がいいじゃないかと。そんなふうに、ちょっと過渡期な、余りにも進み過ぎている、本当の意味での性差ということをきちっと考えた医療が行われて、じゃ例えば今外来や何かでやっていったときに、じゃ、もしあなたは手術が必要ですとかいろいろなことになったときに、その女性たちはいわゆる外来という大きなものからもうちょっと深入りした場合の、病気の数は少ないかもしれない、そのときにやっぱり大学の教授に手術してもらいたいとか、そんなようなことも出てくるんじゃないか。もっともっと、そういう意味での広く女性医療というのを見ていきたいな、そういうことだと思います。
  80. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  下田敦子さん。
  81. 下田敦子

    下田敦子君 座ったまま失礼いたします。民主党の下田敦子と申します。  米本昌平参考人様にお尋ねをしたいと思います。  今日初めてこういう専門的な御指導をいただきましたけども、まさしく倫理観、宗教観、また医学、どれを通して見ても、すべて高邁な考え方、そういうものを持たないといけない時代に入ったなという一つの重いものを今感じてるわけなんですが。  私、浅薄な質問で大変恐縮なんですが、なぜ、所長先生の、組織されたのか、あるいは所属された団体なのか、株式会社ということなのか、私、大変違和感を今覚えてるんですが、失礼ですけども、お尋ねいたします。
  82. 米本昌平

    参考人米本昌平君) ちょっと、先ほどの立法のことをちょっと補足さしていただきたいんですけども、私、産科婦人科学会の倫理委員会が外に倫理審議委員会というのを出しておりますけども、それの委員長をやらしていただいております。  実際に、具体的に言いますと、例えば着床前診断について、学会勧告をほぼ確信犯的にお破りになって、着床前診断を何例かやっておられるクリニックの方がいらっしゃいます。そういう例が出ると、法律が要る、要するに学会ガイドラインでは統制が利かないので法律を作ってくださいという話になるわけですけれども、ただ世の中そんなに完璧に動かないわけでして、逆に言いますと、今学会勧告をお破り、まあ破るというよりは、学会勧告がそのドクターから見ると古くなってしまったので、もう学会勧告をそのまま臨床の現場では遵守できないということでステップアウトされた方はお二人なんですね。ということは、これをイレギュラーと見るのか誤差のうちと見るのかと、そういうことだと思います。  先ほど、私、法律の重要性を軽んじたわけではありませんけども、もしこれだけ法律を作ってくれといってもなかなかできないということになると、国民の側から見ると、法律がなくてもあたかも法律があるかのように医療現場がコントロールができれば、別に無理して法律作ることはないわけですよね。それは、逆に言いますと、現在の個別学会がもう少し学会員の臨床の現場のガイドラインについて、実務的に実際に使えるガイドラインを常時作って、それを学会の責任で守っていれば、必ずしも法律という話にならないわけですよね。  今のところ、学会というのは学術親睦団体で、除名の項目というのは会費不払しかないわけですよね。それを倫理審判違反で学会除名しているので、そういう意味では社会的に要求されている学会の活動と学会の社会的な法的な根拠とがこれだけずれているわけなんですけれども、それをあえて法律を作るのか、あるいはもう少し学会が学術活動以外に、ある種のギルドとして自分たちの統治機能が強化されるように補助金でも出して、法律ができる前まではもう少しガバナンスを高めてくれというようなことでうまく取りあえずいけば、それほど私は、まあ不満たくさんあると思いますけれども、何とかだましだましやるより仕方がないのかなということで、それを横から全体像を日本が認識する意味でも包括レポートが必要だろうというのが私の意見でございます。  私の立場でございますけれども、出身は三菱化学生命科学研究所という、金は出すけど口は出さない基礎実験研究所でございまして、そこで社会的な問題も考えるという研究室が一つありまして、それが今から四年前に、研究活動も金の使い方も全然違うので分けろというので分けました。ですから、私は三菱化学生命科学研究所の一〇〇%子会社でございます。  それで、三菱化学という名前でいろんなことを書きますと、余り批判的なことを書きませんので、諸外国はどうしてるかという政策比較という実証主義を介して結果的に日本社会を批判するというのか、研究の中立性を担保するということをやっております。ですから、研究活動費はすべて三菱、すべてと、九割ぐらいは三菱化学から、しかられながらただで情報を外に出してるということで。ただ、それは、まじめな研究をせいという研究所ですので、今のところ何とかバランスは取れてるということでございます。
  83. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 下田さん、よろしいですか。どうぞ。
  84. 下田敦子

    下田敦子君 大変御無礼なんですが、御自身はメディカルドクターでいらっしゃるんですか。
  85. 米本昌平

    参考人米本昌平君) 違います。
  86. 下田敦子

    下田敦子君 違いますか。
  87. 米本昌平

    参考人米本昌平君) 私は理学部の生物を出まして、勝手に資料を読んで、ですから、はっきり申し上げまして、私は今こういうのを主宰しておりますけれども、非常にきつい言い方ですけれども、日本のアカデミーの専門教育はほとんど役に立たないというのか、大学院マスターかドクター一年目ぐらいの人間を無理やりだまして、給料上げるからこれを調べろといって、四年間走ってまいりましたけれども、非常に、世界がどうなっているのかと非常によく分かるようになりました。
  88. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 下田さん、どうぞ。
  89. 下田敦子

    下田敦子君 最後のお尋ねなんですが、日本はやおよろずの神がいて、誠に宗教的には根っこが非常に複雑多岐で固定したものがない。まあこれはある意味で非常に一つの強さであったり、一つのまた広さであるかもしれませんが、事こういう生命に関しては、本当に、先ほどちょっとお話があったように受けましたけれども、かなり今そういう意味で倫理観とか宗教観とかすごく問われてる時代に入って、日本は特に困ってる状況ではないのかなと、そう思うんです。ですから、その辺の最後のお答えをいただいて、何かいい方法があったら、どうすればいいのか、お願いいたします。
  90. 米本昌平

    参考人米本昌平君) 実は、むしろ冒頭にお答えしようと思ったんですけれども、宗教観が重要で、哲学が重要で、倫理学が重要だというのは、実はこれはキリスト教の立場からの話でございまして、先ほどちょっと飛ばしましたけども、西欧近代哲学というのはキリスト教の教義の脱色したものですので、逆に言いますと、中世まではアルプスから北側というのは地中海側よりは後進地域であったために、ローマ教会の権威をすべてかりたということでございますので、必ずしも、逆に言うとキリスト教圏が非常に変わった宗教のタイプでございます。  例えば、これは、私はコーラン読めませんけれども、回教の教えでは、人間は三か月までは水みたいなものだという、何かそういう教義になってるらしくて、回教系の大学医学部で生殖技術がもっと進むということになると、多分今よりははるかに許容度が広いといいますか、社会的な認知がもっと幅広いような生殖技術が広まる可能性がある。これは、変な話ですけれども、生身の人間のセックスについてはめちゃくちゃに厳しいんですけれども、人間以前のことについては、これは文化の、いい悪いとは別にいたしまして、かなり許容度があるんではないかというふうに思います。  そういう意味では、日本というのはキリスト教のような体系的なテキストを持つ宗教圏ではありません。それはお隣もそうですので、私としては、むしろ韓国とか台湾というほとんど先進国あるいは準先進国の生殖技術の現状の議論、あるいは日本よりもはるかに少子化がひどくなっている韓国、そういうところと共通のテーブルをつくるために本格的な研究費を五年ぐらいのプログラム掛けて投げてしまうと。その比較をしながら、じゃ、韓国はこうだけど日本と同じだよね、あるいは日本と少し違うよねという、言葉になっていないところをもう発見的に近隣諸国と同じ研究テーマで同じものをやりながら比較研究をやるというのが一つの具体的な研究プログラムではないかというふうに今現在思っております。
  91. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 下田さん、よろしいですか。
  92. 下田敦子

    下田敦子君 ちょっと情緒的なお願いで恐縮ですが、すべてのベースはやはり優しさと愛であるようにお願いいたします。
  93. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。  後藤博子さん、どうぞ。
  94. 後藤博子

    ○後藤博子君 済みません、もうやめようかと思ったんですけども。  すごい専門的なお話をお伺いいたしまして、ありがとうございました。専門的なお話の中に非常に身近な話で、専門的な質問ができない私でございますが、自民党の後藤と申します。  これから私は、来月になるかと思いますけれども、大学生、大学院の生徒とディスカッションする機会をいただくことになっております。その打合せの中でその学生が、話が出たんですけれども、子供を産んで育てることは非常に大事だと思うと。しかし、今自分は大学院で学んでいることをこれからの社会の中で生かしていきたい。子供を産んで育てる、好きな人と結婚して子供を産んで育てるということは非常に大事なこととは思うんですけれども、自分は今それに価値観を見いだすことができない。ですから、今は、自分は大学院を卒業したら、自分の専門分野を生かして社会にもっともっと出ていって自分の力も試したい。そういう中で、結婚出産というものをどうとらえていくべきなのか。そして、その大事なことは分かるけれども、どうしても自分は今の価値観の中ではそれが一番とは思えない。  そういう学生に対して、四人の先生方、それぞれのお立場からアドバイスをいただけませんでしょうか。私の参考にさせていただきたいと思いますんで、よろしくお願いいたします。
  95. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) という御質問でございます。  それでは、堀口参考人からでよろしいでしょうか。
  96. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) これは正に私自身が歩いてきた道とも言えるわけで、自分が成長する、技術的にもアップしていくときに妊娠出産に取られるということは非常に大変なマイナスではないかと思うのですが、しかしその中に得られたものは、それを、一歩後退したけど、それを更に前進するものにもなり得るということで、一時的に目をつぶっても両方をやるというような力を、それには、やはり社会的な支援とそれから家族の支援と、一番最終的にパートナー支援ということが必要であろうと。  非常に厳しいものです。しかし、必ず報われます。しかし、やっぱりそのときでなくてはいけないという自分の成長、学問的な成長そのものについてはジレンマがあると思いますが、一歩ちょっと考えて退いてみると意外に大丈夫だということもあるのではないか。いや、本当に苦しいことだと思います。
  97. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、鴨下参考人、いかがでしょうか。
  98. 鴨下重彦

    参考人鴨下重彦君) 実はこの問題、多少関連があると思うんですが、私のあの資料の四百四十一ページをお開きいただきますと、やや古いんですけれども、これは都内の女子大学、三大学、割合いい大学なんですが、その女子学生のアンケートで、子供を、要するに結婚とか子供に対する調査なんですけど、皆さん、三人ぐらい、もう結婚もするし子供も産みたいとおっしゃっているんですね。特に理科系の学部の学生さんにその傾向が強いようなんです。  ですから、これは国民全体のアンケートで見ますともう結婚もしないとか子供も産まないというのがどうしても多くなるんですけど、細かくやるとこういうピークが結構あるということは非常に大事で、特に大学の女子学生なんかでそういう考えをもっと広めるといいますか、深く持っていただきたい、大事にしたいというふうに思います。
  99. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 近藤参考人、どうぞ。
  100. 近藤潤子

    参考人近藤潤子君) 子育てには時期があるし、それから、この人と一緒に暮らしたいという生涯の伴侶に出会うのもチャンスの問題かと思うんですが、そういう方に出会ったときに、当然そこで子供を産むというような決心ができれば、あとは子育てをうまくやれるかどうかの問題で、二通りのタイプがある。ベビーシッターを家に置いて子供生活環境はできるだけ変えないという方と、最近のアメリカの方などでは、赤ちゃんをかごに入れてクラスに連れてきて、ぐずるとお乳を飲ませながらクラスを続けるぐらい、自分の行くところ行くところに赤ちゃんを同伴していくというやり方もあって、それぞれのやり方でそういうやり方選ばれるのだと思うのですが。  私の身辺では、最近、配偶者の方の転勤にはまず付いていかない、子供が小さいときにはお母さんの側が子供を育てる、子供が学齢期になるとお父さんのところに置くと、それで週末とかそういうときに家族が一緒になるという、そういう生活を始めた私の同僚とか後輩もたくさんおりまして……
  101. 後藤博子

    ○後藤博子君 日本人ですか、日本の方ですか、今のお話しになったのは。
  102. 近藤潤子

    参考人近藤潤子君) はい。だんだんにみんなそういうふうな生活を考えるようになるのではないかと。  家庭に、先ほど三歳まではというのは違うとおっしゃったお話もございますけれど、それで子供たちが立派に大きくなっていまして、別に温かい優しい子供たちが育っていますので、その人に与えられたチャンスでそれを上手に生かされれば、生活の仕方は随分最近変わっていて、社会的にも割合に若い方同士ではそういうことが容認されているように思いますが。
  103. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 米本参考人、どうぞ。
  104. 米本昌平

    参考人米本昌平君) 私はもう、今、近藤参考人の御意見に先に感銘すると同時に、かなり安心して拝聴しておりました。特にこれ以上申し上げることはありません。
  105. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございました。  来月のディスカッションにしっかりと先生方のお言葉を……
  106. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 追加。
  107. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、堀口参考人、どうぞ。
  108. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) 保育所とかそういうところに子供を預ける場合に、集団の中で得られるものが少子化の場合にはとても子供たちプラスになると。そして、短い、前と後の時間を濃厚に接すれば、三歳児神話やなんかを押さえるだけの良いものがあるだろう。
  109. 後藤博子

    ○後藤博子君 前と後……
  110. 堀口雅子

    参考人堀口雅子君) ええ、朝の出掛け、夜帰ってきた、その間に濃厚に接するということができるんじゃないかなと思います。
  111. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 後藤さん、どうぞ。
  112. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございました。  勇気が出ました。私も自分の体験からしか話すことができませんでしたので、どうやって話そうかなと悩んでおりましたけれども、今日は参考人のすばらしいアドバイスをいただきまして、しっかりと私も前向きに皆さんと話してきたいと思います。  ありがとうございました。
  113. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  ほかに、よろしいでしょうか。  それでは、これで質疑もなくなったようでございますので、参考人に対する質疑を終わらせていただきたいと存じます。  参考人皆様方には、大変長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。いただきました御発言、御意見、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして御礼を申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  次回は来る四月十二日午後一時から開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会