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参考人(多田正見君)
江戸川区長の多田正見でございます。
このたび、このような
機会をちょうだいいたしまして誠に光栄でございます。どうかよろしくお願いをいたします。
じゃ、座らせていただきます。
極めて簡単なレジュメがございますけれども、これを少しめり張りを付けて
お話を申し上げたいと思いますが。
私が今回
参考人として指名をいただきましたことは、察するに、東京区部では長い間
出生率が一番高い区であると、こういうことであります。子供の数も一番多いというようなことで出生数も一番多いと、こういうような若いという特徴を持った区でありまして、子供も多いので、そういう観点に立って、何をやっておるかということの御関心をいただいたのではないかというふうに思っております。
私どもも、現実、
出生率のデータが出るたびに行政
視察の
方々も大勢いらっしゃいますけれども、特段
少子化対策という形で
施策を打ち出しているということはございません。これまでの長い、街づくりでありますとか様々な
施策というものの上にこういう
状況ができているのではないかというふうに見ているわけでございます。
もちろん、子供の多い区でございますから、子供たちに対する
施策はいろいろ特徴的だと思っているものもやってまいりましたけれども、そればかりでこういう結果が出ているとは必ずしも思っておりません。どういう世代にも住みやすい魅力的な街づくりをどうするかということを何十年進めてきた結果ではないかというふうに思っているんでございます。特に、二十三区の中では最も後れて開発された区でございまして、街づくりに対する様々な努力がなされてきたわけでありますが、そういう中で皆さんが生き生きと楽しく生活できる
地域にしようと、こういうことで様々な
施策をやってまいりました。
今、若いデータがいろいろございますが、年少
人口も今九万七千人ほどでございますが、これが一番多い。平均
年齢が昨年三十代から四十代に上がりましたけれども、昨年、高齢
人口と若年
人口が逆転をいたしまして若年の方がやや少なくなりましたけれども、双方一四%台ということで
高齢化率も一番低い区だと、こういうことでございます。出生もこのところ七千人ぐらいずっとありましたけれども、ここでちょっと下がりまして六千四、五百人と、こういうことになっているわけでございますが、これも二十三区のデータでは一番多い。
結婚の婚姻届も五千件を超しておりまして、これも一番多いと、こういうことでございまして、
人口六十六万人で二十三区では四番目の区でございますが、そのように、若年
人口、特に子供さんの多い区だと、こういうことでございます。
毎年三万七千人くらいの人たちが江戸川区に移り住んでまいります。逆に三万五千ぐらいが出ていくということでございますが、この三万七千人の転入
人口の八〇%が三十代以下でございます。四十代まで入れますと九〇%を超えるわけでございまして、非常に多くの
方々が江戸川区に、多くの若い
方々が江戸川区に移り住んでくださっているという現実がございます。この三万七千人の転入
人口の半分が
全国から来られる
方々であります。それから四分の一が都内から、そして四分の一が隣の千葉県からと、こういうことでございまして、この形は変わっておりません。三万七千人転入というこの
人口もほとんどこのところ変わっておりません。
そうこう考えていきますと、若い
方々がどうやら江戸川区にまあある種の魅力と言うとちょっと手前みそでございますけれども、まあ何かを感じて移り住んできてくださっているのではないかと、こういうふうに考えております。東京は
人口移動の非常に多いところでございまして、転勤をなさる方も多いわけでありますから、そういう中で若い世代の
方々の
人口移動の受入れの区になっているのではないかというふうに見ているわけでございます。
若い
方々が転入してこられれば、当然子供さんたちの出生も多いと、こういうことになるわけでありますが、ただ、若い
方々がたくさんおられても、子供を産むという気になるかどうかということはちょっと別問題ではないかというふうに思いますので、若い
方々を受け入れて、その
方々がここで子供を産んで育てたいという
気持ちになっていただく
地域でありたいと、こういうふうに私どもは努力をしているわけでございます。
そういうことで、江戸川区の特徴といいますとそういうことでありますが、では若い
方々がなぜ魅力らしきものを感じてくださるかということを私たちがどう考えているかといいますと、
一つには、都心に非常に近い位置にあるということで、交通機関でいきますと、都心まで約、道路でありましても、車でありましてもあるいは電車でありましても十五分でございます。非常に都心に近いというこの利便性が
一つあると思いますし、それから、江戸川区には江戸川という大きな川と荒川という大きな川がございます。そして、区内にもかなり多くの水路がございまして、こういう水路を、まあ自然を取り戻すということで親水公園ということの
事業を進めてまいりました。これは街づくりの
事業といたしましてはかなりはしりのような
事業でございまして、江戸川区が行いました親水
事業というものがかなり、この二十年間か三十年間ぐらい各地にかなり普及をしたと思っているわけでございます。そういう、何か都会の中では比較的自然のような条件が豊富であるということが
一つあるかと思います。
で、三十五年くらい前から緑化運動というものを大々的に進めまして、かなりの緑を増やしてまいりました。と同時に、公園の建設も進めてまいりまして、今公園数とかあるいは公園面積でまいりますと二十三区で一番多いということになっております。
人口六十六万人でございますが、これを一人当たりの公園面積として割り返していきますと、これも一番多いということになっておりまして、比較的小さな子供を育てていく環境面でかなりいいということが言えるのではないかというふうに思っているわけであります。
最近の
方々は、いろんなインターネットとかそういうことを活用いたしまして
地域のことをよく研究して入ってこられる方が多いものですから、私も最近江戸川区に転入してこられた若い世代の
方々になぜということを聞きますと、かなりそういう
情報を集めて参りましたという方が多くいらっしゃるわけでございます。
そういうことで、まあそれも
一つあると思いますが、もう
一つは、若い
方々の多い区でございますから当然お子さんも多いんでございますが、その両親も若いと、こういうことでございます。したがって、非常に活気がございます。二十三区の中で学校の統廃合をやっていない区は江戸川区一区でございまして、今、小中合わせて公立は百六校ございますけれども、まだ
一つもそのような事態に直面をしておりません。むしろ学校が徐々に足りなくなっているところもありまして、学校によっては
教室の増設をするというところも最近ではあちこち出てきているわけでございます。
人口解析によりますと、この二十年間は子供は減らないと、こういうことになっておりまして、大変それは有り難い条件だと思います。若い御両親が多いということは、PTA
活動、子供会
活動を始めといたしまして、大変子供さん向けの
活動が活発でございます。小学生は三万七千人おりますけれども、三人に一人は子供会に加入をしていると、こういうことでもございます。野球のチームも少年野球百チームございまして、グラウンドもたくさん整備いたしましたけれども五十七面ほどありまして、サッカー場ももちろんございますが、そういう子供たちのスポーツ
人口も大変多いと、こういうことでございます。そういう
地域であれば子供を育てるという上で何かにぎやかで活力があると、こういうことで、そのことにも魅力を感じていただけるのではないかという条件があるかなというふうに思っているわけであります。
そして、もう
一つ言えば行政
施策ということでございまして、その行政
施策が誇るべきものかどうかということは問題でございますけれども、レジュメにいろいろ書いてございますけれども、
一つは、
保育ということに対する考え方はどういうことかということを申し上げますと、今国も
少子化対策の中で待機児解消ということを盛んにこの何年か言ってこられまして、これが私どもの考え方として是か非かと申しますと、やや私たちは消極的に考えざるを得ないと思っております。
保育という問題は、ゼロ歳、一歳、二歳まででございまして、三歳以上は、これは
保育園、幼稚園、どちらでも、これは幼児教育の範疇に入ると思っております。その三歳以上の子供たちについては、これはすべて待機児はいません。全部どちらかに入れる
状況にございます。待機児が出るとすればゼロ歳、一歳、二歳ということでございますが、ゼロ歳について、私どもは公立
保育園ではゼロ歳
保育を受け入れておりません。もちろん私立でやっておられるところ、あるいはまた、最近、東京都では認証
保育という制度を始めましたが、こういうところはもちろん活用させていただきますが、つまり、生まれたての、生まれたばかりの赤ちゃんというのはやっぱり両親のスキンシップで育ててほしいというのがこの私どもの考え方の原点にあります。
ゼロ歳
保育をやりませんので、それに代わる
施策といたしまして
保育ママ制度というのを大々的にやってまいりました。今は二百二十人ほどいますけれども、四百何十人かの子供たちを預かっていただいております、これはゼロ歳についてでございますが。
今、江戸川区の九十数%の親御さんはゼロ歳を自分で育てておられます。これは私どもとしては理想の形ではないかというふうに思っているわけでございますが、江戸川区は公立
保育園でゼロ歳をやらないためにゼロ歳
保育に対して冷たいとかいろいろ言われますが、実は
保育ママでやっていると。これは三十八年間の歴史がございまして、しっかりした制度を組み立ててきたと思っているわけであります。
やっぱり、いろんな学説がございまして、まあいろいろありますけれども、私どもはこのゼロ、一、二歳のところをやっぱり両親のスキンシップを豊富にして育てるべきだという論調は非常に強いものがあると思っております。これを可能にするということは、つまり労働政策に入ると思いますが、これまた後ほどお尋ねがあれば私の考え方を申し上げますが、そういうことの
理念が
一つございまして、これはいろんな御
意見もございましたけれども、これまでの私たちの
一つの考え方、哲学というとオーバーでございますが、一貫してそのことをやってまいりました。
今このことに対しては非常に
地域では御理解をいただいて、問題なくその制度が続けられているわけでございますが、そのようなことで、単純に待機児解消をしようということが何か親と子供を切り離す政策を強めると、こういうことになりはしないか。そのことがその子供たちが大きくなったときにどういう影響が出てくるかということは学問的にもいろいろ問題があるところだと思っております。
保育ママのいいところは、つまり
家族同様になるわけでございまして、その関係はゼロ歳の
保育期間のみならず、小学校に入ったとき、あるいは中学校に入ったとき、成人式を迎えたとき、そういうところまで延々と続いていくわけでございまして、預けるお父さんやお母さんも
保育ママさんに様々な育児経験を教えてもらいながら、大変いい関係を作り上げていくということがあるのではないかというふうに思っているわけであります。
自分でお育ての親御さんに対して何もしないということも問題でございまして、これも二十三区では唯一江戸川区だけでございますが、乳児養育手当というものを、これも三十年以上続けておりまして、まあ今としてはそれほどの金額になりませんが、かつてはかなりインパクトがあったかと思いますが、所得に応じて月一万円、一万三千円という手当を支給しているわけでございます。もちろんこれは
児童手当とは別で、江戸川区独自のものでございます。
この幼稚園児に対する助成は、私どもが私立幼稚園に、つまり受入れを依存してきたということもございまして、圧倒的に多数の私立幼稚園がございますので、ここに大幅な
保育料の助成をいたしまして、公立と同様の、公立は六園しかありません、この授業料が三千円でございますので、しかとこのバランスを取りまして、大体二万六千円の月々の助成をしておりますが、これは
全国的に見ても断トツではないかと思っているわけでございます。
乳幼児医療費の助成制度につきましては草分けでございまして、これは今や各自治体でおやりになるようになりました。
学校給食費の
保護者負担の軽減は約三分の一ほどやっておりまして、これも相当なレベルにあると思っているわけでございます。
子供に対する
支援施策ということは、つまりその時代時代に合った
課題にきめ細かく
対応するということでございまして、乳幼児だけの問題でなく、
保育園あるいは幼稚園の時代、あるいは小学校、中学校の時代、様々にあるわけでございます。
最近始めたことといたしまして、すくすくスクールというのがございますが、これはつまり学校開放
事業でございます。私どもが三年前に考えまして、今の子供たちは
家庭と学校を往復する、あるいは塾に行くと、こういうことでございまして、そこで得られる人間関係しかないと、こういうことでございます。
家庭も核
家族化をいたしまして、なかなか違った世代の人たち、そのお友達と豊富な人間関係を持つことができない、そういうことでございますので、これは非常に教育上問題があるということが指摘されておりまして、これは学校開放をやりまして、そこで
地域ボランティアを大勢取り込んで、そういう
方々に様々な形でのお付き合いをしていただいて、まあ遊びでも結構ですし、何かを教えていただくことも結構、英会話も結構、そろばんや囲碁、将棋も結構、踊りや民謡も結構でございますが、そういうことをいろいろこのボランティアの
方々にやっていただきながら豊かな人間関係をそういう場で形成をしてもらうと。子供たちが多面的な人間関係の中で様々なバランス感覚を養っていただくということをやってまいりました。
大変に
地域の御
協力をいただきまして始めまして、これは七十三校という小学校がありますが、その学校全校で今やっております。これはできるところからやるということではなくして、つまりすべての学校でやってくれということでやってまいりました。
私どもが始めましてから、文部科学省で安全な居
場所づくりというタイトルで学校開放をやろうと、こういうことが打ち出されました。しかし、私どもは安全な居
場所というタイトルで、考えで始めたわけではございませんで、正に
地域における人間教育ということでこのねらいを設定したわけでございます。安全な居
場所であることは当然でありますが、そういうことが
一つございます。
それから、中学校も今年度から始めたことでございますが、これはもう既に兵庫県などでずっとやってきたことでございますが、東京では珍しいことだと思いますが、中学二年生の
全員、四千五百人いますけれども、職場体験
事業を五日間ぶっ通しでやると、こういうことも始めました。大変な
企業の
協力が要ることでございますが、五日間ぶっ通しでございますので、まあこれはかなり
企業の
方々にもいろんな形での御迷惑をお掛けかも分かりませんが、喜んでやってくださっておりまして、この反響も大変すばらしいものがあると思っております。
私は
企業の側の
方々の
お話を多く聞くわけでございますが、子供たちは四日目からがらっと変わると、こういうことを言っておられます。どこでもあいさつということから入るようでございますけれども、あいさつそのもののやり方が違ってくると、こういうようなことでもございまして、こういうことが非常にまたこれは、小学校のすくすくスクール版ではございますが、まあ人間形成上大変に重要なことだと思いますし、これはフリーター、ニート
対策、そういうことにもつながりますし、また将来、子供たちが非行に走らないというような、つまり健全育成として大きな意味を持つものではないかと、そういうふうにも思っているわけでございます。
最近、かつての
児童館、大型のものが六館ございましたけれども、これを共育プラザというふうに
名前を変えまして、小学校の子供たちがすくすくスクールの方に行ってしまいましたので、この施設を中高生の
活動拠点にしようということで、中高生の主体的な考え方で運営をしてくださいと、こういうことで施設改修などもいたしまして、今これは手掛けたばかりでございます。
学童クラブの問題がございますが、これはつくってもつくっても子供が多い区では足りないと、もう待機児が出ると。小学校三年生までで勘弁してくださいということでありましたけれども、三年生さえ入れないと、こういうことが出てまいりまして、これを
先ほどのすくすくスクールと合体をしましょうということで、全部すくすくスクールの中に入れてしまいました。つまり、過ごし方が同じであります。
しかしながら、長時間、親御さんが
仕事が終わるまではお預かりしますということで、この子供たちには特別なそういうサービスが付きますので、別に四千円の
保育料をいただくということにしておりますが、これは、まあ人によっては
家庭的な雰囲気が少し損なわれるのではないかという
意見もありますが、多くの子供たちと縦横の関係で、異
年齢とも付き合うことができる、仲のいい子供たちとも付き合えることができる。つまり、学童クラブはこれまで隔離されてしまっていたのが、ほかの子供たちと開放されるということにおいて非常に喜んでくださっている
保護者の
方々が多いと、こういうこともございます。
そういうことでいろいろやっているわけでございますが、私たちは、ややもすると
子育て支援について、何か手当てでありますとか
保育でありますとか、
家庭に対して
支援をするということが中心的な考え方になっていたのではないかと思いますが、もっともっと私たちは子供たちに直接の影響の及ぶ
施策を展開するということが重要ではないかと、そういうふうに考えまして、今のような
事業を新しく打ち出しているわけでございます。
そういうことの中で、これらはすべて、
地域の
方々の
協力なくしてすべて成り立たないものでございます。
保育ママもそうでございますし、すくすくスクールもそう、学校の職場体験もそう、つまりは
地域と一体となっての
子育て支援をすると、こういうことでございまして、私はこの
少子化をどのようにして抑え込んでいくかということについては、どうしても
地域が子供たちに対してどういうふうな考え方を持ってはぐくんでいくかということを皆さんが
気持ちを共有していただいて、それぞれがそのことに向かって努力をしていただくということがない限り、
地域で子供を産んで育てていくということが希望につながるかどうかということにかかわってくるのではないかと、そういうふうに思っているわけでございます。
時間が来たようでございますので、このようなことを申し上げまして、また御質問にお答えをさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。