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2006-02-15 第164回国会 参議院 少子高齢社会に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年二月十五日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         清水嘉与子君     理 事                 荻原 健司君                 中原  爽君                 円 より子君                 森 ゆうこ君                 鰐淵 洋子君     委 員                 狩野  安君                 川口 順子君                 後藤 博子君                 坂本由紀子君                 田浦  直君                 中村 博彦君                 朝日 俊弘君                 加藤 敏幸君                 下田 敦子君                 羽田雄一郎君                 林 久美子君                 松下 新平君                 蓮   舫君                 山本 香苗君                 山本  保君                 小林美恵子君                 荒井 広幸君    事務局側        第三特別調査室        長        岩波 成行君    参考人        エコノミスト   香西  泰君        法政大学社会学        部教授      小峰 隆夫君        株式会社ニッセ        イ基礎研究所主        任研究員     伊藤さゆり君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○少子高齢社会に関する調査  (「少子高齢社会への対応在り方について」  のうち少子高齢社会課題対策に関する件)     ─────────────
  2. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ただいまから少子高齢社会に関する調査会を開会いたします。  少子高齢社会に関する調査のうち、「少子高齢社会への対応在り方について」を議題といたします。  本日は、少子高齢社会課題対策に関する件について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、エコノミスト香西泰さん、法政大学社会学部教授小峰隆夫さん及び株式会社ニッセイ基礎研究所主任研究員伊藤さゆりさんに参考人として御出席いただいております。  この際、参考人皆様方に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ本調査会に御出席いただきましてありがとうございます。  参考人の方々から、「少子高齢社会への対応在り方について」のうち、少子高齢社会課題対策に関する件につきまして忌憚のない御意見をちょうだいし、そして調査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますけれども、まず、参考人皆様方からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。  なお、質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行っていきたいと存じます。  また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。  それでは、香西参考人からお願いいたします。香西参考人、どうぞ。
  3. 香西泰

    参考人香西泰君) 御紹介いただきました香西でございます。よろしくお願いいたします。  お手元にハンドアウトをお渡ししているわけですけれども、簡単に私の考えているところを御説明さしていただきたいと思います。大ざっぱな話しか私にはできませんので、それで御勘弁いただきたいと思っております。  まず最初に、少子高齢化があって、最近ではそれがもう人口減少にまで及んでいるということでありますけれども、経済の面からいいますと、それが経済成長に対してどういう影響を与えるかということがやはり一番大きな問題だろうというふうに思います。これについては、常識的かもしれませんけれども、マクロ的に言えばやはりマイナスであるというふうに考えておいた方がよろしいということだろうと思います。  その一つの原因は労働力減少するということでありまして、人口が減ってくる、あるいは高齢者や、少子化が進んで若い人がだんだん少なくなるということですと労働力供給はおのずと減少してくるので、全体としての成長は鈍くなるだろうと、こういうことであります。これは、もう既に労働力は現在減少中であると、人口減少を始めましたけれども、労働力の方が先に減少が始まっております。  次は、貯蓄が減るのではないかということでありまして、これは簡単に言いますと、働ける間に貯蓄をしたものを、高齢者になって働かなくなった人はそれを取り崩していくと、こういうことでありますから、高齢化が進むということは取り崩す人があると、ディスセーブですね、セーブ、セービングするんじゃなくてそれを取り崩す人が多くなるということによって貯蓄減少が起こる可能性が高いと、こういうことであります。これは現に、日本個人家計貯蓄率を見ておりますと、高度成長期には圧倒的に高い貯蓄率を示しておりましたけれども、最近ではヨーロッパ水準をはるかに下回って、まあアメリカ水準にまでは行っていませんが、低下しているということであります。これは不況の影響とかあるいは郵便貯金の解約が多かったとか、そういう影響もないわけではないと思いますが、やはり高齢者が増えて、単身的な高齢者がいる、そういった人たちかなり貯蓄減少が見られるということがその理由になっていると思います。  ちょっと注を付けますと、少子高齢化そのこと自体がそんなに貯蓄を減らすのかという議論もあり得るわけでありまして、例えばこれが予想されていたかどうかということによって影響が違うという考え方もあり得ると思います。つまり、八十まで生きると思ったら、自分がリタイアした後二十年なら二十年貯蓄しなければいけないわけですから、それを分かっていれば前もって貯蓄をしているはずじゃないかと。それから、子供が少ないということは、従来でもやはり子供によって老後を支えてもらっていたわけですから、自分子供を産まなければその分貯蓄しておかないと間に合わないわけですから、少子高齢化、ただ純粋にそれだけであれば、貯蓄は、それが予想されておれば、高齢化に備えて、あるいは少子化に備えて貯蓄をしたはずなんでありますけれども、実際は予想がなかなかできなかった。  私のケースでいいますと、例えば三〇年代に生まれた人間にとっては、現に一九四五年の日本人の寿命は五十歳、まだ五十歳、戦時中であったせいもありますけれども、でありましたから、まさか自分が七十、八十まで生きるとは思っていなかったわけでありまして、これは社会保障基金そのものがそういう形になっているわけですね。こんなに長生きすると思わない形でスタートしていますから、その辺りの貯蓄の積立てというのは、社会全体としての社会保障でもできていませんし、それから個人家計についてもできていないと、こういう状態になっておりますので、予期されない少子高齢化というのは特にその貯蓄減少を招くものであるというふうに考えるべきだと思います。  それから三番目は、資本が、それじゃ貯蓄をして、まあ少なくなっても貯蓄をして、それを投資するかどうか、国内投資するかどうかということになりますと、投資をするのであれば、特に現在のようなグローバリゼーションが進む中で投資をするのであれば利益の高いところに投資しなければならない。これはまた、その方が、日本人生活水準としては、海外でもうけて、それを国内で使った方がいいという面がありますが、しかしそれは国内的に言えば産業等にはむしろマイナス影響が出る可能性があります。  で、資本利益率が高いというのは、労働がたくさんあって資本が少ないところが資本希少価値がありますから、当然利益率が高いはずである。資本労働比率で、それも資本がたくさんあるところではあんまり投資をしないと、こういうことになりますと、人口が減っている国というのは、資本労働比率において労働比率が小さくなっておりますから、言わば労賃の方がむしろ上がって利潤率は余り上がらないと、こういうことになるわけですので、むしろ貯蓄が少なくなるだけじゃなくて、それが海外に流出すると。まあこれはGDPが減るだけで、GNPはむしろプラスになるんだという説ももちろんあるんですが、そういう影響も出てくるだろうと、こういうふうに考えております。  最近の経済理論では大体、こういった長期の問題は供給側からの影響中心に考えておりますけれども、従来の考え方として、需要の面にもむしろプラスマイナスかという問題がありまして、これについては、ケインズがそういうことについて議論をした講演があります。  彼は、マルサス、十九世紀初めにいた「人口論」の著者ですが、マルサスについて、マルサスの場合は人口が増え過ぎて貧困が広がるということを「人口論」で主張しておりますけれども、ケインズ人口が減っても今度は逆に需要が落ちるので失業が増えると、こういう言い方をしております。人口が減れば労働供給減っているんだから失業しないじゃないかというのに対しても、必ずしもそうは言えない、むしろいろんな意味需要が落ちてくることが失業を生むのではないかと、そういう懸念を言っております。世の中には悪魔が二ついて、悪魔Pというのはポピュレーションですが、人が多過ぎて貧乏になると。人が少な過ぎてかえって仕事がなくなってしまう、経済が発展しなくなって仕事がなくなってしまうんだと、こういう考え方も一方でケインズはそういう考え方をしております。  まあこれが正しいかどうか分かりませんけれども、需要面で見ても、やはり人口が増えるということが需要を底から下上げしていたということは事実であったろうというふうに考えていますので、そういう点からもマクロ的に言えば成長率にはマイナスであろうと、こういうことであります。  それに対して、一人当たりはどうだと。全体が減っても一人当たりが良ければ経済的な生活の面ではいいんじゃないか、こういう議論もございます。  しかし、これについて特に、まあ海外といいますか、欧米等で出ている成長論のテキストでは比較的楽観的な議論が多いわけでありまして、それはどうしてかというと、一つは、簡単に言えば、これまでの人口減少の経験として、教科書によく出てくるのは、ヨーロッパにおけるペストの流行ですね。ブラックデスと言いますけれども、十三、四世紀ヨーロッパ人口が三割減ったか、三分の一になったとかという、もう大変な疫病がはやって人口減少したケースがあります。しかし、このときは、もうそれが一巡しますと、疫病が止まると経済はむしろ非常に活性化をして、ルネサンスというのはそういう時代に起きたのだというふうに経済史の方には理解されているわけであります。  しかし、この場合は、人口減少といっても少子高齢化による人口減少ではなくて、恐らくそういう疫病などではやって人口が減るというときには老人の方がむしろ減っていくわけでありましょう。当時は農業時代でありますから、一人当たり農地に対する人口比率が、広い農地を減った人口で耕すということになりますと、一人当たり食料生産が増えるので栄養も良くなると、こういうような形であったわけでありますけれども、現在はそういう農業でもありませんし、日本で直面しているのは少子高齢化型の人口減少であるという点で、それは余り楽観できないのではないかというふうに思います。  で、資本労働比率は上がるんじゃないか、これは今の多くの成長論教科書のモデルではそう書いてありますけれども、先ほど言いましたように、資本の方は、貯蓄の方もやっぱり減ってくるということも考慮した場合にはそう簡単には言えないのではないか。しかも、土地とは違いまして資本は、技術進歩によって、古い資本を持っていても余り生産性は高くないということでありますので、そういうふうに考えると、一人当たり成長についても必ずしも私は楽観できないのではないかというふうに考えているわけでございます。  そういう意味で、やはり成長していくということになると、生産性を上げるということが経済としてはどうしても必要なことになるというわけでございます。  日本人口の今後については、むしろ後のお二人からいろいろお話があるんではないかと思いますけれども、はっきりしていると思いますのは、結局、第一次のベビーブーム、第二次のベビーブームまではございましたけれども、第三次のベビーブーム日本の場合は不発に終わっているということで、これはまだあと数年ありますし、だんだん高齢出産の例もあるようでありますけれども、どうも大した盛り上がりはないままに時間がたってしまったということであります。これはかなり大きく将来に影響があると思いまして、今度は出生率が万一回復、万一といいますか、回復してもらわなきゃ困りますが、いずれ回復するということを考えても、第三次ベビーブームがないということは母親の数が今後かなり減少するということでありますから、出生者そのものかなり低調にならざるを得ない、こういう問題があると思います。  それからまた、よく言われているのは、非常に不安定な就業状況が多くなってきているので、その点で人口減少ということが問題になるんではないかということも議論されています。この点については不安定就業ということが、ある程度パートタイマーと、あるいはフリーターとか、まあ私は現にフリーターなんですけれども、そういうのが結婚あるいは出産にいいかどうかというのは、いろいろ問題があることは事実でありますけれども、逆にそういうフリーター的な職業、パートタイマー的なものを持たなかった場合にはそれではどういうことが起きただろうかというふうに考えると、例えばヨーロッパ諸国なんか見ていると非常に失業率が高いと。日本の場合は、それはある程度パートタイマーという形になったけれども、失業率は停滞した割には低かったということもありまして、どっちがいいかというか、経済全体の問題ということになるのではないかという気がいたします。  こういう中で、出生率が、あるいは出生数が回復している例というのが問題になるわけでありますけれども、まあこれは後で小峰さんからもお話が、グラフが後から出てくると思いますが、米国の場合は二ですね、出生率二を超えております。女性しか子供は現在のところ産めませんので、女性が一生の間に二人以上、これ二・〇八とか言うんですが、産んでいないことには人口は増えないわけですが、現在先進国で二を超えているのはアメリカだけに近い形になりつつあるわけ、大国の中ではですね。あとドイツ日本、イタリアといったところは非常に低いわけですから、例外的に米国がその例であります。  この場合、どうしてかということについてはいろんな議論があるようですが、私、専門ではないんですけれども、拾い読みというか、そばから見ているところでは、一つ議論は、結婚年齢が遅くなって子供の数が少なくなりつつあるわけだけれども、結構、結婚した人あるいはそうでない人でも、ある年齢がいっても、遅く結婚しても結構子供は産むという形で、ある意味日本のようにもう第三次ベビーブームが出てこないというような形ではなくて、まあ晩婚になっているけれども晩産といいますか産児を、後になってもつくっていると、そういう例があるということを言っている方もいらっしゃるようですし、それからもう一つ米国の場合は、七〇年代の人、若いころ、自分の親、自分子供で、大人になっていった時代といいますか、七〇年代と比べてやはり経済状況が改善しているのではないかと。つまり、将来、今までよくアメリカにおいては、親の代よりも豊かになってきたという感覚があるということがアメリカンドリームの支えだと言われておりましたが、一時アメリカは、やはりスタグフレーション時代には非常にそれが薄れていたんですけれども、最近はやはり経済、好調の方が将来の期待を高めているんだと、こういう二つの説があるように思います。  そういう意味では、一つは、晩婚にしてもあるいは遅く結婚しても子供が産める体制というのはやっぱり一つポイントだと思いますし、それから、やはり経済全体を着実な成長路線に乗せていくということが重要なことである。特に米国の場合は、特別に大きな育児のための財政負担をしているというヨーロッパ型とは違った形で出産を回復しているという点では研究するに値するポイントではないかと思っております。  一方、それに対しましてスウェーデンフランスのような、まあスウェーデンの場合は一度大きく落ちて少し回復してまた、それほど、二はとても行っていないんですけれども、こういったところでは育児保険とか、スウェーデンですね、これは。それから児童手当を払っている、フランスなんかはそれが中心だと思います。それから、スウェーデンでは婚外子の扱いですね、結婚前に生まれた子供に対する差別を一切外して、むしろそういう婚外家族といいますか、そういったものの権利というものをむしろちゃんと認めていくという形になって、そういう形の、まあ言わば政府かなり力を尽くして出生率を回復した例というふうに考えられます。  ただ、これについては、その制度をつくればそれで非常に簡単に効果が上がるかという点についてはまた問題がありまして、典型的な例として、私、素人なんですが、そういう話を聞かされているのは、例えばドイツ児童手当水準であります。大体非常に手厚くて、ヨーロッパの中でも手厚くて、例えば大学生になったら卒業するまでもちゃんと手当が出るというぐらいになっているわけですが、その割にはというか、その割、むしろドイツ日独伊、かつての三国同盟国はいずれも出生率が非常に下がっている国であって、どうしてだろうという話が出たときがありますが、ある専門家の方が、いや、それは出生率が低いからあんなに高い手当が払えるんだという笑い話になってしまったこともありまして、簡単に制度でやればすぐ効果があるかどうかということも十分検討に値することだろうと思います。  こういう中で問題として私が考えますのは、特に少子高齢化型の人口減少の場合は、ある意味世代間の負担世代内の負担を見直すということが必要になっているのではないかというふうに考えております。  その次に、「悲観的だった二〇〇六年見通し」と書いてありますが、実は二〇三〇年のことをお話ししようと思っておりました。  昨年になりますけれども、政府日本ビジョンと、二十一世紀日本ビジョンというのをまとめて、作業が行われたことがあります。これは経済諮問会議で行われた、まあ特に閣議決定とはなっておりませんけれども、そういう作業が行われました。私、そのときはまだ役人をしていまして、若干それに関与したわけでありますけれども、そのとき非常に印象に残ったのは、その調査のため、その見通しを作るために一種のサーベイを、意見サーベイをやっております。これはインターネット等も使って答えを募集したと。二〇三〇年の日本が良くなっているか悪くなっているかというと、圧倒的に悪くなっているという人が多いわけですね、六割ぐらい悪いというわけです。その理由については、記入式であって選択式ではありませんでしたのでいろんな理由が出ておりますけれども、その中でもやっぱり非常に大きいのが、これは高齢者が増えて若い人たち、働く人たち負担がますます増える、現在の財政社会保障が一体もつのかどうか、そういう負担、その負担に耐えかねて、経済も発展しないんじゃないか、こういう悲観論が非常に大きかったというように思います。  そういうことを考えますと、私はやっぱり世代間でみんなで共助すると、つまり違う世代がお互いに助け合う、あるいは順繰りに助け合うということは理想としては非常によろしいわけですけれども、あんまりそれが負担が重くなるぞということになりますと、やはり経済的にも公平ではなくなってくるし、活力にも問題が出てくるのではないかというふうに思います。  少子高齢化型人口減少でそれがやはり成長率プラスでないとすると、先送りということがだんだん無理になってくるわけでありまして、もし経済成長人口が増えていくのであれば、先送りするのがある意味解決として最善の解決の場合があるわけですね。将来が明るい、生産性も上がってくる、人口も増える、成長もしているのであれば、先送りしておけば問題は、高齢者の問題は解決するわけですけれども、どうもそうではないのではないか。そういう感じを持つようになりました。  そういう意味では、私は、世代内の共助ということが必要で、つまり世代の中である程度相互負担をしていくという形で、あんまり次の世代にツケを回さないというような対策があって、それによって次の世代が元気を出して経済を支えていってくれればある部分は先送りができるようになるわけですが、その前にもう少し世代内共助を強める必要があるんじゃないか。その意味で、例えば相続税年金税といったようなものは見直す余地があるように考えております。  五十で死んで、子供が非常に小さいというのであれば、相続税余り取らないというのはあれですが、八十歳で死ぬ、親が死ぬ、そのときの子供はまあ五十、六十ですから、自分で財産を稼いでいてもいい世代なんですね。そういう意味では、相続税、まあもっともこれ家族を、社会というものを維持するためにはある程度、あんまり重い相続税はよくないという議論も分かりますけれども、もう少し、自分の子孫よりは、同世代人たちを助けるために使っていくということがあった方が、かえって将来的に世代間の問題を深刻にしないためによろしいのではないかと思います。  実は、成長の問題についても、やはりこの世代間負担というのを行うのはどうしても財政の役割になるわけですから、財政的に、少子高齢型の人口減少というのは、普通の人口減少、つまり疫病人口が減ったという場合とは違った影響が出てくるわけで、この問題が経済的には大きなことではないかと、こういうふうに考えております。  非常に暗い話をいたすわけですが、私、やはり生産性の向上ということも非常に大事ですし、世代間の負担をなるべく公平に持っていくということも、先送りしないということも大切なことだと思いますが、一方で、やや長期的に考えてみて、世界じゅうで人口減少しない国というのは、少なくとも先進国にはなくなりつつあるわけであります。そうだとすると、ある意味で、少子高齢化して人口減少社会というのがむしろ二十一世紀にかけて、成長を遂げ成熟した先進国になればそれがむしろ当たり前なのかもしれないと。そういうものに、それはまたそれなりにいい面があるわけでありまして、これは御批判もあったわけですけれども、お金を持つばかりじゃなくて、時間を持つということも福祉の一面でありますから、そういう意味で、少子高齢化した人口減少社会というのも、それなりの住みよさもないわけではないと思います。  社会を明るくしていくためには、そういった利点もある程度生かしながら、しかし、今現在のような急テンポの高齢化人口減少少子化ということについては歯止めを掛けていくと、そういう形の解決がむしろ望ましいのではないかと、そういうふうに考えております。  雑駁でございますけれども、以上で私のプレゼンテーションを終わります。  どうもありがとうございました。
  4. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  次に、小峰参考人にお願いいたします。小峰参考人、どうぞ。
  5. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) 法政大学小峰でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  スライドを使ってお話をさせていただきます。(資料映写)  私は特に人口問題の専門家というわけではございませんで、これまで一エコノミストとして、主にマクロ的な観点から、日本経済全体にかかわる諸問題について考えてまいりました。  人口につきましては、昨年たまたま総合研究開発機構、これはNIRAというふうによく呼ばれておりますが、こちらで人口減少と総合国力という研究をいたしまして、そのプロジェクトをまとめたという経緯がございまして、本日、そのプロジェクトに基づいて、少子化人口減少という問題を日本経済社会全体との関係でどういうふうにとらえたらいいかということを中心お話をしてみたいというふうに思います。  今日お話しする内容ですけれども、大体三つ考えておりまして、今お話しした総合国力と、日本全体の力という観点で人口減少をどう考えたらいいか、二番目に人口減少にどうやって備えたらいいか、三番目にその人口減少をどうやって防いだらいいかと、この三つについてお話をしたいというふうに思います。  私の基本的なアイデアは、この図にありますように、最近、ここ数年ですね、日本経済とか社会を見てみますと、いろんな問題点というか、これまで現れなかったような異常値みたいなものが出ている。例えば、少子化が進展している。それから、右の方に書いてありますが、日本は対内直接投資が非常に少ないということがある。それから、異常なISバランスというのがありますが、これは要するに、ISバランスというのは貯蓄投資の関係を示しているんですが、大体、家計貯蓄をして企業がそれを使って投資をするというのが健全なバランスだということなんですが、日本はここ数年、家計貯蓄をしているんですけれども、企業も家計並みに貯蓄をしているという姿になっておりまして、残った投資政府部門、これは財政赤字なんですけれども、財政赤字と海外投資、これは経常収支の黒字になるんですけれども、そういうふうに流れているという、つまり、国内で形成された貯蓄が円滑に国内投資されてないという姿になっているという、まあ幾つかの問題点が出てきているということなんですが。  こういった問題点はそれぞれもう強く認識されておりまして、少子化についてはいろんな少子化対策が取られている。それから、対内直接投資についても、もっと対内直接投資を増やそうではないかという対策が取られている。それから、異常なISバランスについても、これはリスクマネーをもっと供給しようということだと思いますけれども、金融の正常化という試みが取られているということですが、私が申し上げたいのは、こういったいろんな問題点というのは、それぞれが問題であることは事実なんですけれども、もっと大きな根本的な問題があるんじゃないかということです。  それが左に書いてある、一つは総合国力の低下、つまり日本全体の国の力、これは後でどういうものかというのをちょっとお話ししますけれども、日本全体の国の力が若干衰えてきている、又は将来もっと衰えるのではないかと多くの人が思っているということにかなり大きな問題があるのではないかと。それから、これまで我々が維持してきた従来型のシステム、これは特に雇用との関係で大きなものが出てくると思いますけれども、これが変化してきた環境と不適合になっていると。そういったことが結果的に少子化ですとか対内直接投資が低いとか、そういった現象となって現れているのではないかというのが私の基本的なアイデアでありまして、したがって、少子化をもし止めようというのであれば、少子化を止めるための対策というのももちろん必要である。  これは、児童手当を多くするとか児童保険をつくるとかいろんな考え方がありますけれども、それだけではなかなかうまくいかないのではないか。もっと根本的な、日本全体の経済力、力、そういったものを発揮していくようなことにならないとうまくいかないのではないかと。今、香西さんのお話にもありましたけれども、我々が子供を持つというのは、我々が産んだ子供が我々自身よりももっと豊かな生活ができるであろうという展望が持てるときに安心して子供を産めるということですから、子供を持てというのではなくて、多くの人が安心して子供を持てるような経済とか社会にしていくということがもっと重要なのではないかということでございます。  これが最近の合計特殊出生率の表ですけれども、今、香西さんもお話しになりましたように、二〇〇二年を見ていただきますと、アメリカが二・〇一ということで、アメリカだけ二を上回っているということで、日本は、これは二〇〇二年ですけれども、最近は一・二九まで下がっておりますが、一・三二ということで非常に低いと。  ここで私が申し上げたいのは、レベルとして日本出生率が低いということだけではなくて、下がっているということがより重要である。右側に八五年から二〇〇二年の変化幅を取っておりますけれども、主要国の中で日本が一番ドラスチックに下がっているということですね。主要国の中で日本だけ下がっているということは、日本だけ何らかの特殊要因があるのではないかということをうかがわせるということであろうというふうに思います。  今申し上げました総合国力というのはそれでは何かということになりますけれども、これ、本日の主なテーマではありませんので簡単に御紹介するだけにとどめておきますけれども、今申し上げましたNIRA、総合研究開発機構で総合国力というものを考えたときに、国の総合的な力というのは何だろうかというのを考えて、大体三つぐらいの要素があるのではないかというふうに考えました。  ここではそれを市民生活向上力、経済価値創造力、国際社会対応力というこの三つに分けておりますけれども、市民生活向上力というのは国民の一人一人が豊かに暮らすことのできる社会ということですし、経済価値創造力というのは企業なり雇用者なりが自分の能力を最大限に発揮して活力を発揮しやすいような経済である。それから、国際社会対応力というのは、日本が国際的にふさわしい貢献をして、ある位置付けをもって尊重される国になるというようなことで、この三つがそろって初めて日本の総合的な力が発揮できるのではないかという考え方でございます。  この研究では、これをそれぞれ国際比較をしたり数値化をしたりアンケートをしたりということで様々に分析をしているんですけれども、ここではそれは主なテーマではございませんので省略いたしますけれども。  ただ、一つ申し上げておきたいのは、この表をごらんいただきますと、人口と総合国力、特に経済規模なり一人当たり所得とこの関係をどう考えたらいいかということでちょっと一点だけ申し上げておきたいと思います。  今ごらんいただいている表は、普通我々が見ていますドルベースで見た経済規模と、左側が経済規模、右側が一人当たり国民所得なんですけれども、御承知のように左側の経済規模を見ますと日本は第二の経済大国ということで、しかも圧倒的に、飛び抜けて第二位の経済大国ということになっております。一人当たり国民所得もかなり高くて、ベストテンの七位に入っているということで、堂々たる豊かな国であるということになります。  ところが、この計算は経済的には若干問題があるということでして、エコノミストの間では若干問題があるということになるんですけれども、それは換算するときの為替レートを何を使うかということです。ここでは普通我々が見ている為替レート、一ドル百十円とかそういったものを使っているんですけれども。それでは、それは通貨の実力なのかというと、例えば百十円を一ドルに替え、じゃアメリカで一ドルを百十円に替えて日本に持ってくるとアメリカと同じものが買えるかというと、買えないということですね、日本の方が物価が高いですから。ということは、日本の通貨価値は一ドル百十円よりは実力としては安いということですね。これを、購買力平価という考え方があるんですけれども、これ、世界全部の国の購買力平価を計算するというのは非常に大変なんですけれども、世界銀行が毎年これを出しておりまして、それで計算をし直してみたというのが次の表でございます。  これを見ると大分イメージが変わってまいりまして、左側の経済規模を見ますと、日本はもう第二の経済大国ではなくて中国に抜かれて第三位であると。しかも、中国の方がもうかなり大きいということになります。したがって、実力ベース、通貨の実力ベースで見ると日本は第三の経済大国であるということですし、今度は左側の経済規模を見ると、中国、インド、それからブラジル、ロシア、最近よくBRICsというふうに言われて、人口規模の大きい新しく登場してきた国々をBRICsと言うんですけれども、それらの国々が軒並み入ってくるということですね。これは簡単に将来を展望してみますと、日本は間違いなくインドにもやがて抜かれるであろうということですし、ブラジル、ロシアもかなり人口規模が大きいですから、今後成長してくれば日本を抜いていくだろうということです。  これで言いたいことは、要するに、経済規模で勝負はできないということですね。もう人口の規模が全然違うわけですから。中国は日本の十倍以上人口があるわけですから、一人当たり所得が日本の十分の一になったら経済規模は同じになるということですから、もうこれは簡単に抜かれてしまう。これは、ほかのインド、ブラジル、ロシアも同じであるということですので、日本経済力というのを考えたときに経済規模で勝負するのでは、当然これは話にならないということです。  右側の一人当たり所得を見ますと、これも実力ベースで見ますと、日本はもうベストテンから外れてしまうということになっているということで、私はむしろこちらの方が大きな問題であると。つまり、実質的に見た所得水準はまだ低いというふうに言っていいのではないかということで、むしろ経済規模を問うのではなくて、一人一人の生活の質、所得の質というものを問うべきである、それが日本経済力ではないかということではないかと思います。  この調査では、その後、それを発揮するためにはハードなパワーではなくてソフトパワーだということで、特に人的資源、環境、技術、情報、こういったものに選択と集中をしていくべきだということになっていくんですけれども、これは本日の趣旨、本日のテーマとはちょっと離れますので省略をさせていただきます。  次に、人口減少との関係ですけれども、以下二つのことをお話ししたいんですけれども、一つ人口減少に伴う悪影響をどう防いだらいいのか。これは、言わば人口が減っても大丈夫なような社会にしようということで、人口減少と共存するという考え方です。それからもう一つは、人口減少そのものにどうやって歯止めを掛けるかということなんですけれども、この二つはよく考えるとちょっと矛盾しているようにも見える。  つまり、人口減少に歯止めを掛けられるのであれば、人口減少の悪影響がなくなるんだから、悪影響を防ぐという必要性もなくなるのじゃないかということですから、この両方考える必要はないんじゃないかということなんですが、少なくとも今後三十年ぐらいを考えると両方考える必要がある。つまり、今すぐ出生率が二に回復したとしても、実際に人口が増え始めるのは二十年後、三十年後であるということですので、どう頑張っても人口は必ず減るということですね。少なくとも今後二十年、三十年は絶対に減るということですので、減っても大丈夫なような社会にするということは避けられないということです。  逆に、今、出生率について対策を取らないと、三十年後以降もまだ減り続けるということですから、このもし人口減少を止めたいのであれば今すぐ対策を取らなければいけないということになりますので、一見矛盾するようでありますけれども、この二つは同時に並行して行っていかなければいけないということだと思います。  この悪影響との関係ですけれども、先ほど市民生活向上力、経済価値創造力、国際社会対応力という三つで整理しましたので、ここでは人口減少がそれぞれにどう影響するかということを考えておりますが、詳しい説明は省略いたしますけれども、少なくとも、減らないよりは減るとやはり悪影響があるということは、これは避け難いということだと思います。  真ん中の経済価値創造力のところは、今、香西さんからもお話がありましたように、経済的にもいろんなマイナス影響があるということになります。  では、その点について簡単に御説明いたしますと、人口の変化と経済成長の関係では、今これ香西さんからお話がありましたので繰り返しませんけれども、特に労働力とそれから資本というところに大きな影響が出てくる。それから、広い意味経済社会制度ですとか社会保障制度のようなものがうまくいかなくなってくるという点で、これも経済的にマイナス影響があるだろうということになります。  これに対してどうしたらいいのかということになりますけれども、オーソドックスな対応策としては、労働力人口が減ってしまうということについては、女性それから高齢者労働力率を上げてもっと労働力市場に参入してもらう。それから、それでも足りなければ外国人労働力を使う。それから、全体として労働の質を高めていく。つまり、一人で二人分働くようになればいいということですね。  それから、貯蓄率の低下に対しては、国内貯蓄がないのであれば海外から投資してもらえばいいではないかということになって、アメリカが今正にそういう状態になっているんですけれども。それから、資本の効率を上げたり、それから財政赤字を減らす。これ、財政赤字というのは、せっかくの国内貯蓄財政が食べてしまっているということですので、これを減らせということになります。  それから、経済全体の効率化を果たすということで、これ、全要素生産性と言われていますけれども、これは大体技術革新、研究開発というのが中心なんですけれども、それ以外にもやはり時代の変化に合わせて制度改革を進めていくということも大変重要になるということだと思います。  というのが標準的な回答になるんですけれども、私自身は若干こういった回答については違和感を覚えておりまして、特に労働力との関係なんですけれども、よくこれから労働力人口が、人口が減ると労働力人口が足りなくなるので、女性高齢者にもっと働いてもらいましょうという計算が出てくるんですけれども、二つの点で私は若干違和感があると。  一つは、経済が大変だから女性とか高齢者にもっと働いてくださいという発想がちょっと逆転して、本末転倒ではないかという感じがします。じゃ、経済が大変でなければ女性やお年寄りは働かなくていいんですねということになりますし、じゃ、働きたくない人も経済が大変だから無理して働かせるんですかということにもなりますし、これは発想が逆転しているのではないか。つまり、経済のために人がいるのではなくて、人のために経済があるわけですから、経済が大変だからもっと働いてくださいというのはちょっと本末転倒ではないかという感じがいたします。  それからもう一つは、実際にそれはどういう状態なのかというと、人口が減って労働力人口が足りなくて困ったという状態は、言わば人手が足りなくて大変だということですから、失業率はゼロだということですね。働きたい人は全部働いているはずだということなんですが、ところが、これはもう既に労働力人口はとっくに減っているということですね。労働力人口が減っているのに現実に何が起きているかというと、一番足りないはずの若年層で失業率が一番高いということになっている。  つまり、私は、人口が減って人が足りなくなりますというのを心配する前に、今働きたくても働く場がない人が一杯いるわけですから、その人たちに働く場を提供するという方がまず最初にすべきことであるということで、それでも足りなくなったときにもっと真剣に心配すればいいということではないかというのが私の考え方でございます。  それから、もう一つ人口減少に対してどう対応したらいいのかという点については、これはやはりいろんな対応策が山のように考えられておりますけれども、これは基本的になぜ人口が減っているのかと、少子化が進んでいるのかという理由をきちんと整理する必要があるということだと思います。  これの理由もいろいろありますので詳しくは省略いたしますけれども、私自身が一番重要だと考えておりますのは、やはり女性の機会費用、つまり女性が子育てをするときに何かをあきらめなければいけない、そのあきらめるものがだんだん大きくなってきているという点が重要であるということです。  ここにお示ししたグラフは、女性の機会費用が実際にどれぐらいになるのかというのを、これは昨年の国民生活白書で計算しているものがあるんですけれども、上にあるラインが働く女性の所得ラインで、この面積が生涯所得になるんですけれども、例えば出産のために一時勤めを休んでもう一回働きに出る、又はもう退職してしまって次に働きに出るときはパートに出るといったようないろんなケースを考えて、この青いラインが育児に伴って所得をあきらめなければいけない部分だということになります。  私が言いたいのは、日本の場合にはこの青い部分が非常に大きくなる傾向があるということですね。  というのは、一つは、これは次の日本型雇用慣行との関係で大変重要な問題になると思うんですけれども、日本の場合にはどうしても新卒で採用して長期雇用であると。企業にふさわしい人材として長期的な観点からトレーニングをしていくという観点になっておりますので、なかなか、企業にフィットした人材になるということで、特定の職務、ジョブにフィットした人材にはなかなかならない。つまり、プロフェッショナルな人材がなかなか育ちにくいということになります。  そうすると、企業にフィットしているわけですから、企業から離れてしまうということは非常に大きなコストになるということですね。したがって、女性がある企業に職を得てキャリアを進んでいく場合に、そのキャリアをあきらめるということは非常に大きなコストを払うことになるということになります。これがもし雇用が流動化していて、プロフェッショナルな人材として育てられていて、いったん企業から出ても別の企業にまた同じような条件で採用されるということが容易であるということであれば、その機会費用は非常に小さくなるということです。  それから、日本の場合には正社員とパートの賃金格差が先進国の中で一番大きいということがありますので、女性の場合どうしても子育てが終わってもう一回勤めに出るときに、時間の自由のあるパートにということですけれども、そうすると、非常に所得が下がってしまうということになります。これも、もし同一労働同一賃金になっていて、同じような職務をしているのであれば正社員でもパートでも給料が同じということになっていれば、女性の機会費用はずっと小さくなるということになります。  それから、下の方に書いてありますように、日本の場合にはどうしても長期雇用を前提としておりますので、仕事が忙しいときには同じ労働者数で同じ仕事を、より多くの仕事をこなさなければいけないということで、どうしても残業が大きくなる、つまり時間で仕事の繁閑を調整するということになって、そうするとどうしても残業時間が長くなると。  これも日本の場合には主要国の中で残業時間が一番長いということがありますので、そうすると、男女共同参画とはいえ、家事については男性が共同参画するというのが非常に難しくなると、女性にどうしてもより多くの負担が残ってしまうということになります。さらに、共同参画したくても男性の方がいないという、単身赴任でいないということさえあるわけですから、なかなか家事の共同参画というのができないと。これも国際比較をしますと、日本の場合、男性の家事への、家事に割く時間は先進国の中で一番短いということがありますので、こういったことを考えると、日本の雇用の在り方というのが男女共同参画という大きな時代の変化とフィットしていないということですね。従来型の長期雇用、年功賃金というものが、女性が男性と同じように参画してくるという流れと合っていない。  その合っていないということが真の病なのであって、その結果が女性子供を持つことの機会費用が大きくなって少子化になるということですから、少子化が本当の病気なのではなくて、雇用のシステムが時代の変化と合わないというのが本当の病気であるというのが私の考え方です。  例えて言えば、風邪を引いて熱が出たというときに、これは風邪を治さなければ熱は引かないと。熱冷ましだけ飲めばいいかというと、それも飲まなければいけないんでしょうけれども、本当に病気を治そうと思えば病気そのものを治さなければいけないということですから、少子化の場合にも、単に少子化を止めればいいということで少子化に焦点を当てた対策を取るということも必要ですけれども、そのより根源にある働き方を見直すということをもっと考える必要があるというふうに思います。  最後に、総合国力という観点から少子化について二点だけ申し上げておきたいと思いますが、一つは、やはり迂遠なようではありますけれども、将来に明るい展望が描けるような健全なマクロ経済というのがやはりどうしても基本だということで、その基本はさらに人の力というのが重要だということで、これ現在、総合研究開発機構の方で先ほどの研究の続編みたいなのをやっているんですけれども、その一部だけ御紹介しますと、これは、将来働く上で必要な能力や環境を向上させるための努力をしていないという人に対して、なぜしないんですかというのを聞いた答えなんですけれども、これ年代別になっておりまして、各グラフの左側が二十代なんですけれども、年代によって理由かなり違う。二十代の人は、そういうことをするきっかけがないとか、それから努力できる環境がないとか、やり方が分からないという答えが非常に多い。そもそも努力しても報われないという、つまりあきらめている人というのはほとんどいないということですね。ですから、これは、若い層にそういった能力向上の機会をもっと与えるということをやっていけばもっと向上する余地がかなり大きいのではないかということをうかがわせるということです。  それから最後に、少子化への対応として、基本的に重要なのは、私が先ほど申し上げたように、雇用というのが非常に重要だと思うんですけれども、基本はやはり働く人々の立場に立った質の高い雇用というのを実現するということが少子化対策の王道だというふうに思います。その中身は、もう既にいろんなところで指摘されておりますけれども、これまでは男性の新卒の正社員というのがコアの労働力であるという考え方だったんですけれども、これからはそういった単一のモデルで企業の労働というのを、雇用環境を設計するのではなくて、多様な働き手、子供を持っている人、持っていない人、これから持とうとする人、男性、女性日本人、外国人、お年寄り、若い人、いろんな多様な方々がそれぞれの能力を発揮できるような雇用システムというのを考えていく必要がある。  それから、社会への参画だけではなくて、家事への男性の共同参画というのも必要ですから、これはやはり労働時間ですね、労働時間をもっと見直して、まあこれ、ワーク・ライフ・バランスということが言われていますけれども、ワーク・ライフ・バランスを考え直す必要がある。  それから、やり直しができる雇用、教育システムということで、これは、いったん企業に入ってしまうと一生の運命が決まってしまうということではなくて、もしこの企業は自分にフィットしないということがあればいつでも再挑戦ができるような仕組みというのが必要だと。  それから、基本的には、男女間、正社員、パートといったようなものが同じような仕事をしているのであれば同じ賃金ということで格差を是正していくということが、まあこれは因果関係がかなり離れてはくるんですけれども、基本的にはこういったことを是正していくのが少子化対策の王道ではないかというのが私の考え方でございます。  どうもありがとうございました。
  6. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  それでは次に、伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人、どうぞ。
  7. 伊藤さゆり

    参考人伊藤さゆり君) ニッセイ基礎研究所の伊藤と申します。よろしくお願いいたします。  私の方からは、少子高齢化日本に先行してまいりました欧州において労働市場改革という観点からどのような対応が取られてきたのか、そしてその成果と課題から我が国にはどのようなインプリケーションが得られるのかという内容についてお話をさせていただきたいと思います。(資料映写)  まず初めに、非常に簡単ではあるんですが、EUでは労働市場の改革というのを、九七年以降、経済通貨政策ですとか農業政策と同じような共通政策という位置付けで進めるようになっておりますので、その枠組みについて簡単に御紹介してまいりたいと思います。  そもそもなぜ共通政策として始めるようになったのか、着手するようになったのかということなんですが、こちらでお示ししておりますような共通の課題に多くの国が直面したからということです。七〇年代以降、経済停滞と大量失業、そして社会保障負担増大という問題があって、八〇年代を通じてこれへの対策がなされたわけなんですが、なかなか芳しい成果が出なかったということ。それから、関税同盟に始まりまして、八〇年代には市場統合、九〇年代には単一通貨を導入するというまでに欧州の経済の統合というのが深まったわけなんですが、それに対応してやはり労働市場においても制度面での対応が必要になったということ、そしてやはり少子高齢化、EUの場合では全体で労働力人口減少に転じるのが二〇一一年になるんですが、これがいよいよ現実のものとして迫ってきたというようなことがあるわけです。  実際の雇用政策の運営というのは、こういった形でEUの行政機構である欧州委員会が全体の指針と言われるようなものを公表する、それを受けて加盟各国が自分たちの事情に合った行動計画というのを作成して、年央にそれを各国首脳レベルで相互に承認するような仕組みになる。その行動の結果なんですが、年末の時点で評価を加えて、翌年の初めにまた新たな雇用指針を作るという流れになってきています。  具体的な目標ということで掲げられているものなんですが、現在、EUでは二〇〇〇年から十か年計画ということでリスボン戦略というものを推し進めています。これは、こちらでお示ししているとおり、世界で最も競争力があり、かつ力強い知識基盤経済社会の構築ということで、かなりアメリカのIT化を原動力とする高成長を意識したものではあるんですが、その一方で雇用というのを非常に重視しているという欧州的な特徴も残しています。  具体的な数値目標というのも、こちらにスライドでお示ししておりますように定められておりまして、二〇〇〇年から約十か年間の間に生産年齢人口の就業率を七〇%、女性の就業率を六〇%、そして高齢者の就業率を五〇%まで高めていこうというようなものになっております。ここで、就業率というものを重視しているところに一つヨーロッパ的な特徴があります。  というのは、こちら、日本でよく見ております労働力率なんですが、これはまあ労働力人口を対象にするということになりますので失業者も含まれてしまう。ただ、ヨーロッパの場合には、いわゆる構造的な失業問題というのが七〇年代からの悩みになっておりましたので、やはりこれが含まれてしまうことは望ましくないということです。では逆に、失業にターゲットを当てることが望ましいのかというと、七〇年代、八〇年代の失業解消のための政策というのがこの失業者の非労働力人口化、具体的には早期退職であったり病欠ということで失業給付を受けたりして、それが長期化する人を増やしてしまったという反省から、とにかく非労働力人口化している人も含めて就業者の中に取り込もうというようなことがこの政策の理念にあります。  このためには、この非労働力人口化してしまっている人の就業意欲を低めてしまっているような環境的な要因というのを除去するというようなことが非常に重要なポイントになってきますし、こうやって就業者をより増やしていくことによって経済成長の成果を共有しようというような点が非常に大きな枠組み、目標の一つとなっているところが特徴と申し上げられると思います。  こうした結果として、EUの労働市場がどのように変わったということなんですが、共通雇用政策の開始が九七年、それからリスボン戦略の導入というのが二〇〇〇年ということになるんですが、先ほどごらんいただきました三つの就業率の目標については緩やかながら上昇しているということになりますので、これは一定の成果を収めていると申し上げられる状況です。  そして、この間、じゃ、欧州の労働市場で何が変わったのかということなんですが、大きく構造的に変わっている要因というのは、一つは、日本においてもそうなんですが、パートタイムあるいは有期雇用者という、有期雇用契約という形での就業者、いわゆる非正規雇用が広がったということです。それからもう一つは、サービス業の就業者の比率というのがやはり大きく上昇したということでございまして、この間の就業率の引上げというのは、一つは就業形態の多様化によって、もう一つはサービス業の雇用拡大によって実現したと申し上げることができると思います。  ただ、このように時系列で見る、EUの動きということで見ると改善してきた就業率なんですが、なお努力の余地を実は大きく残しているということも現実です。先ほどお示ししたリスボン・ストックホルム・ターゲット、そしてこちらがEU十五か国のベースで見ました就業率の直近の数字ということになるんですが、二〇〇五年がちょうど十か年計画の間の年で、中間のレビューが行われたんですが、まだまだ努力の余地を残しているというのが評価でした。  それから、日本アメリカとの比較で見ましても、全体の就業率はもとより、女性の就業率も、高齢者の就業率についても最も低いという状況が続いているわけです。女性については、日本の就業率も余り高いとは言えないわけなんですが、それを更に下回るという状況にある上に、高齢者につきましては四二・五%ということで、日本アメリカに対してもかなり大きく引き離されている。実は、これは八〇年代に早期退職というのが一つ慣行として定着してしまったことの名残なんですが、この高齢者の就業という部分にも、実はヨーロッパ高齢化対策という点では大きな課題を残しているということになるわけです。  ただ、ここまではEU全体としてこうであるというお話を申し上げたんですが、実はEUの中でも、先ほど香西先生のお話などでも出てまいりましたけれど、その労働市場の在り方というのはかなり多様であるという現実もあります。  というのは、八〇年代に実はEUの市場というのは労働力の移動も自由化されておりまして、本来であれば統合労働市場というのが成立していてもおかしくはないんですが、実際のところに、社会保障制度や資格制度といった制度的な側面からの統一というのが妨げになっているということもありますし、もっと深いレベルで言語、文化の障壁なども存在しますので、実際のところ労働市場はそれぞれかなり分断された状態にある。その結果として、北ヨーロッパから南ヨーロッパまでかなり多様な労働市場の伝統的な形態が残っているということがあります。  加えまして、経済成長率、EUの中でもかなり所得水準の格差などもございまして、成長のスピードも違っている。そして、共通の理念を抱えているとはいっても、具体的に取られている雇用政策の中身というのも違いますので、その結果として出てくる就業率の状況、あるいはその改善状況というのは、かなりのばらつきがあるというのが現実なんです。  こちらにお示しさせていただいたのは、縦軸がいわゆる全体の就業率ということになります。そして横軸は、やや長い時系列で見たいということで、十年ほどの間、この就業率がどの程度変化したのかということをお示しさせていただきました。  実は、EUの十五か国の中でも既に二〇一〇年の目標の水準を超えている国というのがデンマーク、スウェーデン、イギリス、オランダと四か国あるのが実態です。それから、フィンランド、アイルランドといったような国々では、ほかの国よりもかなり早いスピードで就業率の改善を進めた結果として、目標がかなり近づいている。その一方で、六〇%を割り込むような水準にいる国や、改善がほとんど見られない国というのもあるわけです。  この就業率についてなんですが、そもそも大きな違いの要因となっているのは、やはり男女間の役割分担がどうなっているのかというところにあるようです。  こちらには、縦に先ほどと同じ就業率を示しているんですが、横には男女間の就業率の格差というのを示しております。ということで、この右の方に参りますと、男性の就業率の方が女性の就業率よりもかなり高い状態、言わば伝統的な役割分担が色濃く残っている形態ということになりますし、格差が小さい国、まあ男女間の平等がかなり進んでいる国と申し上げられると思います。やはり、その就業率との関係というのは負の相関関係、男女間の格差が大きい場合、役割分担が仕事と家庭という形になっている場合には就業率も低いし、逆に、共同で参画するような形になっている場合にはこれも高いというような形で、それがばらつきの一つの大きな要因になっているということが分かります。  それから、先ほどワークシェアリング、言わば就業形態の多様化というのが一つヨーロッパの市場で起こった構造変化ですと申し上げたんですが、その点についても実は浸透の度合い、あるいはどうやってそれを進めたのかという点はヨーロッパの国々の中でもかなりの違いがあります。  このワークシェアリングで最も成功を収めたモデルとして言われているのがオランダになります。オランダの場合ですと、これはOECDの統計になるんですが、パートタイムの就業者の比率が三五%、それからEU十五か国にアメリカ日本もこちらに含めて書かせていただいておりますけれど、いわゆる労働時間という点でも、平均で見ますと最も低いのがオランダであるということです。  これを進めたのが何であるかということなんですが、これはパートタイム化を、先ほど小峰先生の提言でも出ておりました、いわゆるフルタイムとパートタイムの処遇の均等化ということを徹底することによって自発的なパートタイム化を促進したことの結果ということが申し上げられるわけです。  それに続くパートタイム比率が高い国というのが実はイギリスになるんですが、イギリスの場合はオランダとは異なりまして、政策的にこれを推進しようという意図ではなくて、逆に非常に自由な、規制の少ない労働市場を形成した、構築した結果としてこういった外部労働市場が発達する形でパートタイム比率が高まったということでもあります。ただ、一方でパートタイマーと正社員との役割分担のようなものがかなりできているということで、正社員の方はかなり長時間の労働を強いられている側面もある、ある意味日本と似ているのかもしれないんですが、そういう状況もあるということで、全体としての平均労働時間というのは実は長いということが言えるわけです。  労働時間の短さということで見ると、オランダに次ぐのがドイツフランスということなんですが、それぞれこの二つも時短という形でワークシェアリングを進めたことがこの結果、背景にあります。ただ、そのドイツフランスのワークシェアリングなんですけれど、これはかなりの程度、実は労働の維持あるいは創出ということを意識したものではあったんですが、残念ながら、この両国ともにその目的というものは必ずしも十分達成できてないという側面があります。  ただ、その反面で、フランスの場合、この雇用創出プラス仕事と家庭の両立支援ということをもう一本の柱として立てたんですが、この点については、この後お話し申し上げるとおり、かなり十分な成果を収めたと言えるような状況にあるということです。  少子高齢化への対応ということを考えた場合、女性の就業率の上昇と出生率の向上というのが同時に実現しなければいけないわけなんですが、それで成功を収めたヨーロッパの国々、先ほど香西先生のお話にも出てまいりましたが、スウェーデン、デンマーク、フィンランドといった北欧の国々、オランダ、イギリスなどが挙げられます。  これは縦軸に女性の就業率、こちらの方に合計特殊出生率が出ておりますので、その点から相対的にEUの中で就業と特殊出生率の、高めの出生率の維持というのを図った国がこれらの国々と言えるわけです。それプラスフランスについてもやはり女性の就業率という観点ではこちらには届かないわけなんですが、EUで二番目の出生率を上げているという点でやはり注目に値する国と申し上げることができると思います。  具体的に、じゃこれらの国々がどういった政策を推進したのかということがこの後のお話になるわけなんですが、まずスウェーデンフランスについて、この両国は家族政策という形で包括的な支援の枠組みを構築しているということが特筆すべき点ではないかと思います。  ただ、スウェーデンの場合には、どちらかというと、出生率を引き上げる、女性の就業率を引き上げるというよりは、そもそもの国家の理念である男女間の平等という部分、これを追求する、あるいは児童の福祉という理念を追求した結果として、こういった手厚い育児休業手当あるいは経済支援そして保育サービスの充実というようなことで、女性仕事をしながら子供を育てるということが当然、前提であるという仕組みが成り立っているということになるわけです。  フランスの場合、先ほど軽く触れさせていただきましたが、実は労働市場の状況というのは必ずしも良好ではありません。失業率の水準も、EUの域内でもかなり高い水準にありますし、女性の就業率も必ずしも高くはないんですが、そういった雇用・所得面での不安がある中にあって相対的に高い出生率を実現できる背景というのは、フランス政府かなり明確なメッセージとして、女性の就業率の向上そして出生率の向上は両立可能であるというメッセージを打ち出して、育児休暇あるいは経済支援といったような辺りを非常に積極的に拡充してきているというようなことがあると思います。保育サービスについては、保育所自体は余り十分な整備が進んでいないということなんですが、認定保育ママというような制度を設けて、これをサポートするような仕組みになっているということになっています。  次に、オランダ、イギリス、そして比較のためにドイツということでごらんいただきたいと思います。  これらの三か国については、先ほど、二か国ほど明確な家族政策を打ち出しているということではないんですけれど、ワークシェアリング、オランダの場合は、相対的にはこの休暇あるいは支援という部分は手厚くはないんですが、やはりワークシェアリングということで労働市場、労働の選択肢の幅が広いということが非常に貢献をしているようです。イギリスの場合は、相対的に手厚い手当等に加えまして、やはり外部労働市場の発達によって経済の状態が非常にイギリスの場合良かったということもあるんですが、企業の方も、優秀な人材を確保するという観点からこういった女性仕事と家庭の両立支援に積極的に取り組んだというようなこともあって、やはり比較的高い出生率を実現する、女性の就業率と出生率の向上というのを実現しているということのようです。  翻ってドイツなんですが、先ほどもお話に出ておりましたとおり、育児の休暇あるいは経済支援といったような辺りはかなり手厚いということではあるんですが、一つ大きな問題になっているのは、経済の状態が、停滞がこの十年余り続いてきたということですし、プラス、やはり育児は家庭で行うものというような社会的な通念というのが非常に根強くて、例えば三歳まで両親休暇を取って育児を、休暇を取って、それで育児を行ったとしても、その後じゃどうするのかという段になったときに、保育サービス、保育所の設備が不十分であって、実際に仕事と家庭の両立ということが難しくなってしまう、育児との両立は難しくなってしまうというような制度面での言わば不突合というんでしょうか、整合性の問題というものもあるようです。  また、もう一つのテーマである高齢者の就業促進という点でも、高齢者の就業率あるいは改善の幅ということではばらつきがあって、やはりモデルとなってくるのは北欧あるいはオランダ、イギリスといったようなところになります。  実は、高齢者の就業促進の場合、EUでは、冒頭お話し申し上げましたとおり、一つ早期退職の慣行というようなものがございましたので、これをいかに見直していくかというようなところが実は政策面で大きなポイントになったということで、スウェーデンの場合には、九九年に行われた年金改革によって、年金の給付年齢自体六十五歳からということになったわけなんですけれど、従来六十五歳であったものが六十一歳から受給可能であると。ただ、これは選択が可能であって、仮に就業を継続して年金の受給を見送った場合には、その分後に受給を開始したときに加算されるというようなことで、様々な退職、労働市場からの退出に関する様々なタイミングなどの選択が可能になった仕組みになっているということです。  プラスもう一つ、早期退職の制度の見直しが大きく高齢者の雇用促進に貢献したのがオランダの場合でして、オランダの場合は、早期退職年金あるいは就業不能手当失業保険といったようなものが早期退職のルートになっていた、これを見直したということになります。実は、先ほど男女間のワークシェアリングという点ではモデルとしてお話し申し上げたオランダなんですが、実は世代間のワークシェアリングはこういう妨げがあって十分進んでいなかった。政治的には非常にもめた問題ではあったんですが、これが何とか実現に向けて動いたということで、高齢者の雇用の状況というのも大きく変わりつつあるということです。  そのほかに、こちらにお示ししているように、高齢者の就業ということで、生涯教育、あるいはまだ職場に根強い偏見をいかに除去するかというようなことでキャンペーンを行ってみる、あるいは改善に政労使で協調的に取り組む、あるいは労働市場の仲介機能を高齢者に特化、ある意味特別に必要とされるノウハウを指導するといったようなことで、様々ないわゆる積極的な雇用政策というものが取られています。  EUの場合、そもそも失業給付の水準、これ縦に見ますと、受動的雇用政策、これは失業保険給付ですとか早期退職といった手当にどのぐらいGDP比で見て拠出しているかと。逆に、今申し上げたような教育訓練ですとか助成金といったような積極的雇用政策のためにどのぐらいの公的支出をしているかというグラフでして、日本アメリカのこの位置に対してほかの国々、ヨーロッパの国々というのは基本的に非常に手厚い支出が行われているわけなんですが、高齢者の雇用に関するこれらの積極的な雇用政策、包括的な形で推進したフィンランドの場合にはかなり効果を上げたというような評価がある反面、イギリスなどでは余り効果を上げなかった、キャンペーンなどは無駄であったというような評価もあるようで、この辺りはまだどういった仕組みが一番最も有効なのかという結論は出ていないといったようなことが申し上げられると思います。  それでは、こういった経験から日本に対して何が言えるのかということなんですが、ワークシェアリングの意義、ライフスタイル、価値観、体力等に応じた就業形態の選択肢が多様化するというようなことで、現在、雇用の問題、非常に日本少子高齢化のそもそもの根源にあるという小峰先生のお話でしたが、私もそれに基本的に同感でございまして、やはりこういった就業形態の選択肢の多様化、その中でより良い仕事と家庭のバランスというのを追求できるような社会になっていけばこの問題は解消に向かうというようなことではあると思います。  ただ、現実のところは、やはり就業形態の選択に伴う不利益というのが現実に発生してしまうし、女性育児、家事の負担が集中しているという問題もあると。それから、企業の側からすれば、ワークシェアリングということで非正規雇用を雇うことによって現在の処遇の格差がある状況ではコストの削減につながると。このメリットは明らかなわけなんですが、例えば正社員の多様な就業を認めていって、それで果たして、理屈としては、人材の確保あるいは定着率、優秀な人材を確保して定着率を上げて就業意欲の向上を通じて競争力が強化されるとは言うんだけれども、本当にそうなるんだろうかという不安も根強いといったようなことではないかと思います。  ですので、この辺りの問題を一つ一つ解決していかなければいけないということで、全体として何が必要かということなんですが、やはり大きな枠組みでいえば、先ほど小峰先生のお話にもありましたが、就業形態の選択によって不利益が生じない制度環境、処遇の均等化というようなものはやはり徹底して推進していかなければいけないということだと思いますし、関連制度の一体的な見直しということで、先ほどオランダの例で、早期退職制度高齢者の雇用を推進しようと思っても妨げる制度として存在していたというお話を申し上げたんですが、この辺り、全体の政策の整合性、一方でアクセルを踏んで一方でブレーキを踏むというような形になっていないかと。それから、ドイツの保育所の不足の問題が大きな妨げになってしまっているように、そういった制度間の連携、全体のバランスが悪くて実効性を妨げるような形になっていないかというようなところも重要かと思います。  そして、現実に職場環境の改善というものがなかなか制度はできても実際に使えないという状況になっているわけですから、ここの部分の指導、あるいはインセンティブを拡充していく、効果的な方法で拡充していくということもやはり必要とされる問題だと思います。  先ほど関連制度の一体性的な見直しということで申し上げたんですが、女性就業率と出生率の向上という点から申し上げますと、やはり働き方の見直しの部分というのが非常に大きい、仕事と家庭の両立というのが前提である、大前提であるというような形での制度の整備が社会に浸透していくような方向で進んでいくことがやはり必要であると思います。  高齢者の就業に関しては、ちょうど日本では年金制度改革、年金の支給年齢の段階的な引上げというのが始まって、それと併せて継続雇用の制度も義務化、六十五歳までの継続雇用が義務付けられるというようなタイミングにもあるわけでして、この高齢者の問題については、早期退職という慣行が根付いてしまったヨーロッパよりもはるかに高い高齢者の就業率、そして就業意欲も高いということで、アドバンテージにある日本がこういった継続雇用の制度というのをいかに定着させていけるのかということは、逆に大いに注目されるポイントではないかと思っております。  以上でございます。どうもありがとうございました。
  8. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取を終わります。  これより参考人に対する質疑を行います。質疑はおおむね午後四時をめどとさせていただきます。  なお、質疑者及び各参考人にお願い申し上げます。質疑及び御答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。  また、多くの方が御発言できますよう、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきます。  なお、質疑の際は、最初にどなたに対する質問であるかをお述べいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある方、挙手をお願いします。  中原爽さん。
  9. 中原爽

    ○中原爽君 小峰先生にお尋ねしたいと思います。  先生の御説明で、合計特殊出生率、これ日本だけが下がる一方だと、日本特有の原因があるのではないかというふうに御説明いただきました。それで、別途、名目GDPと一人当たり国民の所得の図表において、名目GDPは国際比較で二位とか三位の上位でありますけれども、国民の一人当たりの所得というのが非常に低い。したがって、国民一人当たりの所得とGDPの格差があるということだと思います。  このことについて、出生率日本特有の原因があって低下しているというのは、恐らくこのGDPと国民一人当たりの所得の格差、これが先生おっしゃっておられるように日本型の雇用慣行から来ているのではないかというふうに私は思うんですけれども、例えば別の表で、若年者の失業率が増加しております、それと相関して若年者の出生率が低下するという現象が起こっております。これが、GDPが高くて国民所得が低い、あるいは若年者の失業者が増えるということが、恐らくこの日本型の雇用慣行から、現在の雇用慣行を続けている限りGDPは高いけれども国民一人当たりの所得は相変わらず低いという形態が続くのではないかと思うんですね。  これを改善するということについて、先ほど伊藤先生からのお話もありましたけれども、企業の定年を例えば六十歳から六十五歳まで引き上げるということを行っても日本型の雇用慣行を変えるということにつながるのではないかというふうに思うんですけれども、この日本型の雇用慣行をこれからどういう形で変えていくということのお考えをもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  10. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 小峰参考人、どうぞ。
  11. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) それでは、三点申し上げたいと思います。  まず、先ほどのグラフで、日本だけ飛び抜けて合計特殊出生率が下がっていると、これは日本にだけ当てはまる何らかの特殊要因があるのではないかということですが、これはなかなか国際比較で明確な結論を出すのは難しくて、例えばアジアでも韓国とかシンガポールなんかは相当日本並みに出生率が下がっているというようなことがありますので、こういったことも含めて全部明確に言えというとなかなか難しいということですが、私なりに考えれば、さっきも申し上げましたように、所得水準がかなり上がっていって経済が発展していくと、これは当然、女性が男性と同じように高い教育水準を受けて高い能力を身に付けて社会に参画していくという世の中になっていくということですが、そういう基本的な流れと我々がこれまで維持してきた雇用慣行又は家族観、それから結婚観、こういったものがうまくフィットしていないのではないかというふうに私は考えております。  つまり、女性が参画してくるという流れは先進国共通なんですけれども、そのときに我々がどういう制度を持っているかという点において、うまくフィットしてない制度を持っているとそれが結果的に少子化となって現れてしまうということだと思います。  で、若干申し上げれば、例えば終身雇用とか年功賃金というのは、これはやはり男性の正社員に有利な、それを中心とした制度設計であるということですからどうしても女性との格差が広がってしまうということになります。それから、結婚観、家族観というのは、これはなかなか価値観が入ってきますので難しいんですけれども、例えば日本の場合にはやはり結婚を前提として子供を産むということになりますので、今のように若年層の失業率が非常に高いというようなときですと、そもそも結婚子供を産む前提となる結婚にまで至らないという、生活力がないということですが。アメリカ出生率が高いという一つ理由として、かなり若い方でも子供を、出生率が高い、若年層でも高いんですけど、これはアドプション、生まれた子供を養子として引き取る制度が非常に充実していて、しかも希望する親がたくさんいるということですが、日本の場合はどうしても子供というと血がつながっているのが子供だということがありますので、そういうアドプションがなかなか進みにくいということもあります。  こういった広い意味での我々が持ってきた諸制度、慣行、物の考え方というのが経済社会の流れにうまくフィットしていないのではないかという疑いがあります。  それから二番目に、GDPと一人当たり所得の乖離ということなんですけれども、これは、私はそれほど深刻な問題だとは考えておりませんで、これは単に一人当たり所得に人口を掛ければ経済規模のGDPになるという話だけですので、これは単に日本がまだまだ一人当たり所得が低いということはまだまだこれを高める余地がある、又はその必要性があるということは、まだ成長をする必要があるということは、活力のある経済というのはどうしても必要だということになります。それでも、それ掛ける人口経済規模ですから、経済規模ではこれはもう人口の多い国にはとてもかないませんというのは先ほど申し上げたことでございます。  それから最後に、定年の引上げというようなことで日本型雇用慣行が変わっていくかということですが、私は日本型雇用慣行というのは恐らく今物すごい勢いで変わりつつあるということで、これを企業に聞いてみますと、もう年功賃金というのはほとんどそれはもうやっていませんという企業が多くなっておりますし、終身雇用とは言いませんが、長期雇用も、これはまだ年功賃金ほどではないんですけれども、だんだん崩れつつある。  これはある意味ではお互いに関係がありまして、年功賃金であるからこそ長期雇用になっているということですね。つまり、年功賃金というのは若いうちは働きよりは安くてその分後で取り戻すという制度なんですけれども、それは同じ企業にいないと取り戻せないということですから、年功賃金だと同じ企業にとどまりやすいということです。逆に言うと、年功賃金がなくなってくれば無理して同じ企業にとどまる必要がなくなるということですので、これは関係を持って今物すごい勢いで変わりつつあるというふうに思います。  ちなみに定年というのは、これはかなり議論のあるところで、日本は定年を延長するということによって高齢者の雇用を確保するということを大きな方針として掲げているんですが、これは私は将来定年はなくなるだろうというふうに思っています。アメリカでは、事実、年齢による差別であるということで定年がないわけですから、これは男女差別と同じように年齢で差別するというのも将来はなくなっていくだろうということで、これは詳しくは述べませんが、定年ですとか、それから退職金ですとか、こういったことはある意味日本型雇用慣行とワンセットで今まで存在してきた制度ですので、むしろこういったものが自然になくなっていく、そういう方向に進みつつあるのではないかというふうに考えております。
  12. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。
  13. 中原爽

    ○中原爽君 はい。
  14. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、小林美恵子さん。
  15. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  今日は、本当に貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。  まず、私は小峰参考人にお伺いしたいと思います。  先生は、たしか一昨年の十月の政策研究の論文の中で、少子化の要因として若年層の雇用情勢の悪化と将来不安の高まりが子供を産み育てる力を失わせてきたと指摘をされているかと思います。今日のお話の中にも雇用ということを本当に重要視されておられまして、働く人たちの立場に立った雇用、労働時間の見直しというとこら辺をすごく強調されているというふうに思うんですけど、それは大事な御指摘だなというふうに思うんですけども、そういう若年層の雇用を改善させていくという観点から、今、政府と企業に、政府と企業に求めることといいますか、果たすべき点ということについて御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。  それと、伊藤参考人に私は二点お伺いしたいと思うんですけれども、欧州の労働市場、また子育て支援について日本との比較で随分詳しい御説明をいただいたと思うんですけれども、そこで一点目お聞きしたいのは、欧州の労働問題と特に若者の雇用ですね、日本の若者の雇用対策で欧州から学ぶべき点というものは多分あると思うんですけれども、この点教えていただきたいというのが一点です。  二点目は、ワークシェアリングについてですけれども、参考人女性の就業率の引上げと出生率の改善の両立、高齢者の就業促進を可能にする少子高齢対策となり得るが、関連する政策を適切に組み合わせなければ効果は限られてしまうというふうに指摘をされているかと思います。  それで、関連する施策ということで、たしかこの資料の二十五ページ、二十六ページで、育児に対する経済的支援の拡充とか、男女間の平等でありますとか、保育サービスでありますとか、そういうことを挙げておられるんだろうと思うんですけれども、この点について今の日本の法的な問題、また政策的な問題で強化しなければならないというふうにお考えの点と、もう一つは企業がやっぱり果たさなくてはいけないという点について教えていただければありがたいと思います。
  16. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、小峰参考人からどうぞ。
  17. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) それではお答えいたします。  若年層の雇用問題ということですが、ちょっと今スライドでお示ししているんですけれども、さっきちょっと省略したんですけれども、少子化の要因として基本的には三つ考えておりまして、一つはこれは先進国共通なんですけれども、女性社会に参画してくると女性が子育てをすることの機会費用が非常に高くなるということですね。これは日本に限らないと。  二番目は、これは失われた九〇年代要因となっておりますが、右側にグラフがありますけれども、若年失業率が赤いグラフで高まっているのと歩調を合わせて若年世代での合計特殊出生率が下がっているということですので、これは、先ほど申し上げましたように、日本はどうしても結婚して子供を持つということが前提になっておりますので、そもそも結婚ができない世代生活力のない世代があって、これが若年層の出生率の低下につながっているということになります。  それから、三番目は、さっきちょっと強調した構造要因、これまでの社会システムそのもの時代に合わなくなってきているという、この三つなんですけれども、今の御質問はこの二番目の若年層の失業率が高まっているということなんですけれども、これは確かに先ほど意見のときに申し上げましたけれども、労働力人口が減って、人口がこれから減って労働力人口が減るときにこの若年労働力がどうなるかということですが、私は恐らくこれから物すごい勢いで労働力不足時代に本当に入っていくだろうというふうに思います。それで、人口が減って大変だという心配で、労働力人口が足りなくなって企業の人手不足が深刻化するということは、これから正にそういう時代に入るんだろうというふうに思います。  そうすると、この若年失業率も相当改善するというふうに思います。現に、私もゼミを持っておりますけれども、ゼミの学生の就職がかなり楽になってきている、まあ早く決まるようになってきているということですね、というものがありますので相当改善するということですが、しかしこれがどんどん下がるかというと、やはり相当高止まりする面もあるのではないかということで、これは若年層の側で無理に仕事を求めないという動きもありますので、この部分は相当残る可能性がある。つまり、労働力、一方では企業は人手不足なんだけれども、一方で働かない若い人も結構いるという時代になっていくのではないかというふうに思います。  これに対してどう考えればいいのかというのは、これは非常に難しい問題で、私もゼミなんかで学生に聞いてみると、一部の学生は、自分たちが、そういうフリーターとかニートとかでいいという、それを選択したというのであれば、別にそれに対してとやかく言われる必要はないのではないかという意見さえ出てまいります。これはなかなか難しい問題で、個人の選択であれば結果はどうあれ構わないのかというと、社会全体には相当大きなマイナスをもたらす可能性があるということで、これはやはり放置できないというのが私の考え方です。  恐らくこれは将来の格差の温床になるであろうということと、それから将来、これは年金にも入っておりませんから、生活保護を受けるという形で我々の負担になるということですね。本来年金をなぜ整備しなければいけないのかというのは、年金を整備しておかないと、みんな将来の貯蓄をしておかないでいざとなったら生活保護という人が増えてしまうので、そういったことがないように国民皆年金にするんだというのがまあエコノミストが考える年金がある理由なんですけれども、まあそういった制度設計が崩れてしまうということによって放置できないということですね。  これに対してはやはり、これの根本的な原因は、私はやはりライフデザインといいますか、どういう生き方が良くて、そのためにはどういう時点でどういう社会的選択をしていったらいいのかというデザインが従来のものとかなり変わってきているんですけれども、これまでは、まあ親の言うとおり大学を出て企業に入ればそのデザインが自動的に実現されたというものでだんだんなくなってきているということですが、しかしそれを教えてくれる人がいないということになっていて、そのギャップがそういったニート、フリーター問題となって表れているということですので、これは私の法政大学でもキャリアデザイン学部というのがあるんですけれども、そういったキャリアをデザインしていく、又はそのコンサルタントみたいな形で指導していくという部分を相当充実させるということは一つ解決方法ではないかと。つまり、これまで家族なり教師なりが担ってきたキャリアデザインというのを、別の専門のキャリアデザイナーというのがある程度助けていくというような形が必要なのではないかというふうに思います。
  18. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) では、伊藤参考人、どうぞ。
  19. 伊藤さゆり

    参考人伊藤さゆり君) まず最初に、若年者の雇用対策の経験についてということなんですが、実はお話の中に何度か出てまいりました早期退職制度という、ヨーロッパで八〇年代に広く広がった制度というのは、実は大きな目的というのが、若年雇用、高齢者の雇用を若年者に置き換えようというような目的がありました。ですので、ということではあったんですが、その数十年の結果を経てみると、一つは、高齢者の雇用者は余りに早期に退出させてしまうことによる損失が大きかったという問題が出てきましたし、では早期退職した穴埋めを若年の失業者によって埋められたのかというと、必ずしもそうではなかったという問題があって、現在それを見直すというのがヨーロッパの流れになってきています。  ということで、実はまだまだこの問題はヨーロッパにとって引き続き大きな課題になってはいるんですけれど、幾つか問題点として考えられている。なぜ、じゃ若年者の失業が発生して、しかも長期化してしまうのかということの一つの大きな要因として、やはり学歴、まあ低学歴者に相対的にやはり長期失業者が多い、ヨーロッパケースなんですが、そういうことが言えると。中でも、途中で高校あるいは中学といったところを中退してしまう層に非常に多いというようなことが明らかになっていて、まず自治体ですとか地域のレベルでそういった途中でドロップアウトしてしまう層というのをいかに防衛していくか、そこが将来的な若年失業者の長期化というのを抑える重要なポイントになってくるというような認識ができつつあるというふうに考えられます。  それから、具体的な対策ということでいうと、こちらでイギリスの高齢者雇用対策のところなんですが、生涯教育、職業教育の欄でニューディール・フィフティー・プラスというのがございます。これは、実は元々はニューディールということで、若年者失業対策として用いられたもののシニア版ということになるんですが、この政策はイギリスの中では比較的うまくいったというふうに言われているということで、具体的な内容というのは、要は、あめとむちのような形で職業訓練などを受けさせる、それに対して一定の職業訓練が終えた後で幾つかの選択肢を提示する、継続的な訓練を受ける、あるいはこれこれこういう就業があるのだけれどどうだと。その中の幾つか提示された選択肢の中から選べばその道を進むということになるんですが、仮にそれを拒否した場合にはそこで失業給付を打ち切るというようなことで行うと。まあ、あめとむちのような制度なんですけれど、これと似たようなものがその後ドイツで導入されたりということで、こういった形での積極雇用政策というのはある程度効果を発揮するというようなことで考えられてはいるようです。  ただ、この場合というのは、かなり例えば手厚い失業給付というのがなされているというような前提にもなってきますし、既にそういったものが対象になっている層になるということになりますので、日本の実態にマッチするのかどうかというところでいうと、必ずしも実態にそぐわない部分が若干あろうかと思いますが、日本型のそうしたニューディール政策のようなものを検討する余地はあるのではないかと思います。  で、ワークシェアリング、もう一つの御質問のワークシェアリングを妨げている要因という部分で考えますと、やはり仕事と家庭の両立、特にここでは女性育児とそれから仕事の両立ということを考えた場合に大きな妨げとなっているのは、やはり休暇制度、まあ労働市場からいったん退出してしまうコストが大きいということもありますし、それから継続的に雇用されるという場合でも、そこでいったん休暇などを取ってしまったことによって、キャリア上非常に不利な扱いを受けてしまうことへの不安というのがあると思いますので、この辺り既に制度化されている部分ではあるんですけれど、これの実効力を高めるということはやはり重要なことだと思います。  先ほどドイツお話で、保育所の不足の問題、育児休業期間と保育所の不足というところで大きな断層のようなものが生じてしまうということを申し上げたんですが、日本の場合にも現実、保育所の不足の問題というのがあって、仮に延長された育児休暇制度、一年半使ったとしても、じゃ、そこで果たして適切な保育サービスを見付けることができるのかというような不安もあると思いますので、やはりここの部分を、いろいろな先進国等の事例も参考にして、保育サービスの充実を図るというところも優先すべき課題ではないかと思います。  企業の果たすべきことという部分では、逆に制度ができても、それの、権利の行使は実際には周りの顔色を見ているとなかなかできないというような現状というのをやはり打開していかなければいけないということで、積極的に就業者のモチベーションをアップするというような観点からも、この権利行使を積極的に推進するというようなことが求められますし、そういった適切な運営をしている企業を割とイギリスなどでは積極的にモデル例として提示して、いろいろな企業の参考にするようにというようなことで公表していたりするんですけれど、そういった措置であるとかあるいは環境、ある程度の基準、職場環境の改善に向けた基準を満たした企業に対する助成を行うといったような形で、企業が積極的にこのワークシェアリングのメリットを追求するような環境を整えられれば望ましいのではないかと思っています。
  20. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか、小林さん。  ほかに。  それでは、川口順子さん、どうぞ。
  21. 川口順子

    ○川口順子君 二つ質問があるんですが、よろしいでしょうか。  最初の質問は、これは小峰参考人か伊藤参考人かちょっとどちらがよろしいのかよく分かりませんが、この小峰参考人の図で、十五図の機会費用、女性育児をすることによって機会費用が高くなっているという図は非常に印象的で、これが非常に大きな理由である、少子化のと私も思いますが、そのときに、まあ日本の場合、出産育児が終わった後、再就職をするときに、パートタイムが非常に多いとか、いろいろな理由で所得が低くなってしまうというのが特徴であるわけですが、これ逆に欧州を見ましたときに、何で高いのかということを教えていただきたいんですね。終身雇用制がノームでない、基準でない国で、割に流動性が高いからということなのかもしれませんし、逆にワークシェアリングをやるということになっていた場合に、やはり収入としては正規労働よりも低くなるんではないだろうかというふうにも思うんですけれども、何で欧州ではそういった生涯所得が少なくなるということがないんだろうかということが質問の一つです。  それから二番目の質問は、これは恐らく香西参考人にということだと思いますけれども、よく言われることで、日本の予算の支出が年配の方、要するに高齢者と、それから育児との間に使われる予算のバランスが圧倒的に高齢者に非常に多いということが言われるわけですけれども、これは数字の取り方によってどれぐらいの差があるかというのはいろいろありますが、経済学という観点から考えたときに、日本が将来的に成長し続けていく、そして一定の国民所得が確保されるということから考えたときに、本来どういうバランスにあるというのが望ましいかという何らかの考え方の整理ができるものなのだろうかどうでしょうかという、そういう質問でございます。
  22. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、最初の質問、お二人お答えいただけますか。  じゃ、小峰参考人からどうぞ。
  23. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) それでは、私の答えられる範囲でお答えしたいと思いますけれども、今お示ししている図で、日本の場合にはまず、企業にとどまって、もう一回子育て終わったら同じ企業で働き続けるというのが一番機会費用が少ない場合なんですけれども、いったん退職してもまた同じようなプロフェッショナルな仕事に就けるという場合が二番目に機会費用が少ない場合で、一番機会費用が大きいのは、いったん退職してしまって、次に働きに出るときはパートタイムというのが一番機会費用が大きいということですね。  この場合、日本は正社員とパートタイマーとの賃金格差が非常に大きいということですが、私の理解では、これは幾つか背景があると思いますけれども、やはり年功賃金であれば、同じ仕事をしていても経験年数の多い人とパートタイマーでは当然経験年数の多い人が賃金が高くなりますから、年功賃金であればあるほど正社員とパートタイマーの賃金格差が大きくなるというのが私の理解です。  それから、恐らくそれで多くの人がいいとは思わないかもしれませんが、そんなにおかしいとは思わないというふうに思うことが大きな理由ではないかと思うんですが、それは正社員という言葉にも表れているんですけれども、要するにパートタイムでない人が正しい社員であるということで、パートタイマーは正しい社員でないということになるんですが、それは恐らく中立的な概念で考えた方が良くて、たまたま同じ企業でずっと働く人と、それからたまたま時間を切ってその企業の仕事をする人というのは、働き方が違うだけで同じであるというふうに考えれば、同じ仕事をしていても同じ賃金を払うのは当然であるというふうに多くの人が自然に思うようになれば、それは相当是正されるのではないかというふうに思います。
  24. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、伊藤参考人、どうぞ。
  25. 伊藤さゆり

    参考人伊藤さゆり君) ヨーロッパの場合にはいわゆる同一労働同一賃金の原則というのはかなり徹底していて、いわゆる職種別に幾らの賃金であるというような基準が明確になっております。ですので、その職を続ける限りはこれこれの給料はもらえるということが、どこで働くかにかかわらず基本的には保障されているという仕組みになっていることが一つあります。  機会費用ということなんですが、当然のことながらワークシェアリングということで労働時間を減らした分というのは、当然フルタイムで働いた人よりも所得はその分減るということにはなるんですけれど、その減らした時間については別の、何というんでしょう、楽しみ方というか充実した使い方をしているということで、本人、その当人にとっての機会費用にはならないというんでしょうか、そういう仕組み、そういう考え方というのがヨーロッパなどでは定着しているということになると思います。  ですので、ワークシェアリングを推進すれば所得がフルタイムと比較して減らないということではないんですけれど、著しい格差というようなものが同一処遇の原則というものをなるべく徹底していくことによって妨げることができますし、どういった時間の使い方、生涯を通じてしていくのが一番望ましいのかというようなことを選択しやすくなってくるというようなことが申し上げられると思います。
  26. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、香西参考人、どうぞ。
  27. 香西泰

    参考人香西泰君) 川口先生からは大変難しい問題を言われたので、恐らく完全な答えはとてもできない、もっと勉強して出直しますと言うしかないのですけれども、取りあえず幾つかの点を申しますと、確かに予算というのはもうかなり限界に来ておりまして、特に日本の場合、財政規模というのはもう限界、つまりあれだけの国債依存をしているということですので、何とかやりくりしていかなければならないということになると思います。  日本の場合、育児については主として税制で対応してきていたということ、つまり扶養控除ですね、こういう形で対応する部分が非常に多かったと思うんですが、これは、育児というのは家族の中の話であるという形であったと思います。それに対して、予算の上でもっと育児のものを増やしていくという、支出の面で増やすということになると、やはり育児というのを社会化するといいますか、そういう考え方になっていく。つまり、子育てというのは社会全体でやるんだと、家族だけでやるものじゃないという形になっていくと思います。もちろん、税制ですと税金を払わない人には恩典が及びませんから、元々限られていたということであったと思います。  そういうことで、私、これもし間違っていたら伊藤さんから直していただきたいんですけれども、例えばそういう形で育児ということを本当に予算の中に、財政の中に組み込んでいくということであれば、考えられるのは、ちょうど高齢者に対する年金保険と同じように育児保険というのをつくっていく。それで、たしかスウェーデンではそういう育児保険というのがあって、そういう形でかなり大きな資金も出ているということだと思います。  例えばスウェーデンでは、伊藤さんの表の十七にもありますけれども、例えば育児休暇というのは非常に大きいわけでして、四百八十日といいますが、四百八十日というけれども、週休二日を考えると大体一年間働いているのは二百何日なんですね。だから、ある意味で二年間何となく休めるというか、すごい休暇が長く取れるということになっているわけです。例えば、スウェーデンでよく女性の就業率、労働力率を見ますと、日本は三十代で一度減っちゃうわけですね。子育てになると労働力から抜け出しちゃうんですけれども、実はスウェーデンのそこは全然抜けてない、もうM字型じゃなくてU字型になっているわけですね。  で、実態調査を、私、関係していました、去年までいました内閣府の研究所で委託調査で実態調査をしてもらったんですけれども、実際にはスウェーデンだって働いてないんですね。休暇を取っているわけなんです。そういう意味で、そういう形で、ただし復職とかそういうときに、まあ言わば就業が続いていたという形になっているということが大きいというふうにも承っていますが、そういう育児保険といったようなものを考えるのかどうかということも最終的には大きな問題になってくるんじゃないか。  つまり、そういう財源を、私は、申しましたように、確かに老人の負担が、老人のところへ老人のための負担が大き過ぎる、まあ私も老人ですから肩身が狭いんですけれども、そういうふうに思うのは、やっぱりもう少し世代内で、高齢者高齢者の中で、何というか、豊かな人はもう少し同じ世代の間で負担していくという形にして、少しそちらの方を軽くして、そして次の世代というものを財政の中でやはりある程度見ていくと、そういうことが考えられるところではないかと思います。  こういうことを恐らく理論的に考えるのは、かなりいろんな考え方がある。つまり、将来の世代というもののウエートというものを現在の世代のウエートとどういうウエート付けをするかということは、価値判断も入ってきて簡単ではありませんけれども、世代会計という考え方アメリカで始まりましていろんな国が行っております。ジェネレーショナルアカウンティングでは、各世代ごとにどれだけ払ってどれだけもらっているかという計算をするようになっておりますから、そういったものが発展していけばある程度数量的に、どの世代がどの世代にどれだけ負担して、どれだけ助けてもらったかということが分かってくるので、そういったようなところから少しずつ、どういうのが最適の負担在り方であるか、支出の在り方であるかということが分かってくるんじゃないかというふうに思うんですけれども、残念ながらまだこれ以上のことはなかなか、価値判断もありますでしょうし、明快な答えがすぐ出ているというわけではないように思っております。今後もう少し勉強させていただきたいと思います。
  28. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  それでは、後藤博子さん。
  29. 後藤博子

    ○後藤博子君 いらっしゃらなければ。  今日はありがとうございます。私はちょっと違う視点からの質問になると思います。  それぞれの皆様方がいろいろと研究していただきまして、今日はそれぞれのお立場で御指導いただきましたと思っております。今日、また、香西参考人の方、小峰参考人の方、また伊藤参考人の方、それぞれと、世代が違う、また背景も違う中からの研究ではないかと思っておりますけれども、総合的に考えてみますと、やはり女性がこれからは結婚、子育てという価値観から、結婚、子育てをしながら社会に出ていって仕事もしていけるような環境整備が必要ではないかなというような総合的なお話ではないかと思います。  そういう中で、最初に、今日の資料じゃないんですけれども、参考人の皆様の主要論文等ということで、この委員会が始まる前にいただいたんですけれども、例えば香西参考人の方はこの中に「総合的な発想力を持つ多様な個人」というふうなことを書かれておりますし、また小峰参考人は「結婚と子育てに関する社会的な価値観も改革が必要だ」というふうに書かれておりまして、どういう改革なのかということもお聞きしたいと思っております。また、最後の伊藤参考人は、今言ったような、ワークシェアリングは両親の休暇とか育児休暇といった各種休暇制度などがいろいろ必要ということで書かれております。  そこでお尋ねしたいのが、人間のその人間力、結局は総合力といっても、最終的には人ということの、国力はイコール人の力が一番だと私は思っております。いろんな環境を整えても、要は人がどれだけの力を持つことによって、この国の経済やその文化やいろんなそのものが発展していくかと思っておりますので、では、今のように子育てをもうその外に、まあ何ていうんでしょうね、保育所に預けたり幼稚園に預けたり、またほかの方からの手伝いをもらうということに関して、人はどこで育って人間という豊かな感性を持つんだろうかとか、あるいは今言ったような女性の就業と子育てとの両立は果たして本当に人間力を養うことにつながっていくのだろうか、そして今、今現在はまだ戦後の方々、あるいは香西参考人もそうだと思いますけれども、戦後の貧しい時代を経験した人たちがまだまだいらっしゃいますけれども、これから三十年、四十年、五十年、六十年のその長い期間を見たときに、人をどこで育てるかということの根本的なものがなければ、幾ら環境を整えて、国力はどうだこうだと言われても、人を育てるところが、じゃどこで育てればいいのかというふうに私はずっと疑問に思っているものですから、そういうことを今日お尋ねをして、それぞれのお考えでお答えをいただければと思っております。  特に、最後の伊藤参考人には、両親の育児休暇とか、あるいは両親休暇とか育児休暇と言っておりますものが、どの時期に取ることが子供にとって一番いい両親の休暇である、あるいは片親ずつの休暇で、育児休暇であるといったようなデータがもしあれば教えていただきたいと思います。ただ単に両親の休暇が取れる、育児休暇が取れるといったことではなくて、もう少し突っ込んで、その休暇が子供のためにいつ取れば一番いいのかというようなことのデータとかお考えがあれば教えていただきたいと思っております。  それぞれ三人の方々にお尋ねなんですけれども、よろしくお願いいたします。
  30. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいでしょうか。  それでは、香西参考人からどうぞ。
  31. 香西泰

    参考人香西泰君) 将来の家族の形態、恐らく家族がどの程度子育てをやるかということに、御質問にかかわっているのではないかと想像しているわけですが、家族というもの自体も歴史的には随分変化しつつあるし、変化してきております。したがって、将来どういう形の家族形態になるかということはなかなか分からない点が多いわけですね。  ただ、現在のところは、やっぱり子育ての、ある意味で、特に生後間もない数年間といいますか、そういった時期について言えば、やっぱり母親が接触しながら育てるのがいいというふうに考えている人が、これは私の世代もそうでしたし、例えば、これもまた間違っていたら伊藤さんから直していただきたいんですが、先ほど紹介、ちょっと一言言いましたスウェーデンの実態調査と称するものを、アンケートなどを見ておりましても、むしろ三歳まではいなきゃいけないんだという観念は非常に強いわけですね。しかし、そういう観念はありますから、逆に言えば、そういう観念を前提とした上で、やはり社会的にそれを支えていくということを彼らは彼らなりにつくっていきつつあるのではないかと、そういうふうに私は想像をしております。  そういう意味で、例えば衛生とか健康とかそういったようなことについて、家族だけでやるよりは、それは保健所が入ったりいろいろすることがいいということもありますから、社会化ということも当然やっていかなければいけないんですけれども、しかし日本の場合、やはり家族というのは、例えばベビーシッターなんというのは、アメリカなら簡単に手に入るし、フランスの場合は特にそれは資格を持った人が来てくれるということなんですが、そういう制度がなかなか日本の住宅には入りにくいところがあるわけですね。  そういう点で、住宅問題とか医療問題とかそういうこととも関連してそういうことは、まあやっぱりある程度時間を掛けてなるようになるというか、自然にどっちへ動いていくかというのを見極めながら結論が出てくるのではないかと。その程度にしかちょっと私には考えられないということです。
  32. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) 私も余り明快な答えはないんですけれども、私の考えは、基本的には雇用のところで申し上げたのと同じなんですけれども、結婚とか子育て、家族、こういった形態にも多様なものがあっていいのではないかというふうに思います。この辺は価値観が相当絡みますので意見は分かれるところですけれども、結婚をして子供を持つ、また結婚をしないで子供を持つというのも全く同じ立場で併存していいのではないかというのが私の考え方ですし、子供の育て方も、もし手元で育てたいということで専業主婦になるんですという人がいれば、それはどうぞそうしてくださいということですが、是非働きながら、働くキャリアを維持しながら子供を育てたいという人は、そういったことができるような環境を是非整えるべきだというふうに思います。  その結果、家族で育てた場合の子供と保育園で育った子供、又は母親が三年間手元に置いた子供とそうでない子供というのは、私は余り差がないというふうに思います。どちらに育てても、ろくでもない子供が出る可能性もあるし、立派な子供が育つ場合もあるというふうに思います。
  33. 伊藤さゆり

    参考人伊藤さゆり君) 私自身も余り明快なお答えということは正直なところ申し上げられないんですが、一つは、私も恐らく小峰先生と似ているのではないかと思うんですが、やはり多様な選択肢があることが非常に重要なのではないかと考えております。例えば、フランスなどの家族手当などでは、たしかフランスでは生まれた子供の数として、婚外子の方が通常の結婚で生まれている子供よりも多いというような形に変わっているということではあるんですが、こういう結婚外の子供も、それから結婚内の子供も同じように家族手当を受給するというようなことで、かなり広く権利、子供子供ということで権利を認めるような仕組みになっているということになっているということで、ここは本当に、それぞれの両親の選択とそれぞれの今度子供の人生の選択というのがかなり多様なものが認められているということの表れであろうと思いますし、できれば日本においても、まあどこまで許容していくのかということはあろうかと思うんですが、余りに規制、縛り過ぎてしまうと子供を持たない、持てないというふうな結果にやはりつながってしまうのではないかなというふうに考えます。  それから、休暇と子供年齢という部分について、残念ながらその辺りについての具体的な調査結果というのは私自身持ち合わせていないんですが。先ほど香西先生のお話にもありましたが、ヨーロッパの場合ですとやはり三歳児神話というのがかなり根強くて、三歳まではやはり親が手元で育てるべきだと。そういったこともあってこういった休暇制度等を充実しているわけなんですが、ここについても、では本当にそれが子供成長にとってやはり非常に有益なのかどうかというところについてのその結果というのは明らかではないということのようですし、要は、私自身の考えとしては、両親がバランスが取れて、そこで両親というか親が非常に、仕事と家庭のバランス、自分なりの選択、まあ家庭に非常に重点を置く場合もあるでしょうし仕事によりウエートを置く場合もあると思うんですが、そういった中で非常に充実した生活を実現していれば、そこで育てられる子供というのはやはり幸せに育つのではないかなというような気持ちはいたしております。
  34. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 後藤さん、よろしいですか。まだありますか。どうぞ。
  35. 後藤博子

    ○後藤博子君 ありがとうございました。  ちょっといろいろ言いたいことありますけど、婚外子の問題とか、いろいろな、結婚しても結婚していなくても子供を持つ、持ちたければ持てばいい、持ちたくなければ持たなくていいというような先生の発言とか、これからの時代家族の形態はこれから時代のまた変化によって変わってくるだろうから、どういうふうになるのかよく分からないというようなお答え。だから、私たち、私たちというか私の、これは自分の主張なんで申し訳ないんですけれども、やっぱりこの日本をどうしたいかというものがなければ、流れるままに身を任せるようなことではこの日本というものが私はなくなっていってしまうんじゃないかという、ちょっとそういう危機感を持ってますから、ちょっとそういう感想を私は持ちました。  三人の皆さん、ありがとうございました。
  36. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ありがとうございました。  それでは、下田敦子さん、どうぞ。
  37. 下田敦子

    ○下田敦子君 座ったまま失礼いたします。  お三方の参考人の方々に二つの項目にわたってお尋ねをしたいと思います。  まず第一なんですが、四十年ちょうど前になりますが、アメリカを主として訪ねましたし、暮らしてみまして非常にびっくりしたことは、高齢者が非常に、私どもの日本人の人生観から見れば残酷だなと思うくらい、率直に感じた感想としては、よく働いておられた方々が非常に多かった。まさしく、先ほどのお話のように、今そういうことの時代に入っているにもかかわらず、なかなか日本では、退職後のという考え方があったり、高齢者の再就職ということが非常に進んでない、システム化されてないということがまず言えるかと思います。  例えば、まあこれはちょっと不遜な申し上げ方で失礼になるかもしれませんが、デイケアとかデイサービスとか通っていらっしゃる、いわゆる日本社会保障の一環の方々をお見受けしてますと、もうまだまだ元気で何か社会参画ができるのになと思うことが、しかも御専門の技術をたくさん持っておられるような方がいらっしゃるのに、どうもこういうことがしっくりいってない。考えてみるに、日本人のこの人生観における御隠居という考え方がまだまだ根強いのかなと思うんです。  そこで、一つお尋ねしたいんですが、三鷹市が何か高齢者の就職先の開拓を非常に率先して、自治体としてあるセンスを持って開拓されてたというお話を伺いましたが、そのことでもいいし、あるいはほかの地域で、各地で高齢者就労の先進的な事例があったら具体的にお話をお教えいただければと思います。  それから、二つ目のお尋ねなんですが、特に北欧でも感じますけれども、父親の子連れ出勤がごく当たり前によく見掛けられます。例えば観光バスとか、バスの運転席の隣に、最初は何かお人形でも載せているのかなと思っておりましたら、そのキューピーが動くわけでして、次の瞬間何だろうと思ったら、それはいわゆるお父さんの子連れ出勤ということなんですが。まだまだ日本では、運転席に息子を入れたことが原因で退職をさせられた鉄道会社もあるようですけれども、どうもジェンダーシステムが全然できてない、家庭においても、社会においても。ですから、そういうことから考えたときに、特に、男性の労働時間数とかもいろいろありましたけれども、こういう社会的な意識改革をまずどうしていけばいいのか。  非常に現場として困っていることは企業内保育です。これは、いずれの場所に聞いてみても赤字で、必要性をつとに感じてつくることはつくるけれども維持ができないというふうなことが本当に多いです。ですから、企業内保育は、女性の就労数の多い地域は大変そういう意味では経営が困難で、これに対しての予算を話してもなかなか理解してもらえない。だけども現場では、特に我が方の委員長の清水先生の御本業である看護師等々の女性の多い世界では、大変これが一番の問題になっている。特に私は、この企業内保育の必要性を感じているのは永田町と霞が関だろうと思うんです。林委員は子連れ出勤を時にされたりしているわけですけれども、一番後れている地域の一つじゃないかなと思ったりします。  大変長々と申し上げて失礼ですが、以上の二項目についてお尋ねをいたしたいと思います。  以上です。
  38. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) じゃ、香西参考人、どうぞ。
  39. 香西泰

    参考人香西泰君) まず、老人になってどうしたいかということを、私、老人になったものですから大分感じることがあるのですけれども、ある意味で隠居というのは非常にうらやましい制度でありまして、それは、働くことも老人としては生きがいでもありましょうけれども、今までしたことのないような生活、つまりお寺へお参りするとか、そういうこともやっぱり人生としては結構充実したことがあり得るわけですので、そして、落語なんかに出てくる大家さんというのは老人で、隠居している人が多いと思うんですが、いろいろ八さん熊さんにお説教なぞをして教育機能も果たしているというわけですから、一概に全員が働かなければならないということはない。  それからまた、報酬の点では別として、NPOとかそういった公共的な関心を持っていくということも生き方の一つであると。これ、生きがいという点でいえば、必ずしもいわゆる労働市場へ出て働くことだけではないということはあり得るんじゃないかと思います。ただ、出たい人にはなるべく出ていただけるような可能性を広げておくことが必要なんじゃないかと思います。  それから、職場と家庭を分離するというのは、ある意味で近代的に家庭生活と企業生活というのを分けて公私を混同しないという、そういう一種の倫理があったんだろうというふうに想像するわけでありますけれども、日本のような場合はそれがちょっとやや極端に行き過ぎて、特に都市の構造が職住近接というのを全く許しませんので、そういう意味では非常にそのことが逆にマイナス面も持っているというふうには感じているわけであります。  まあそういう点ではむしろ企業城下町なんかはある意味で子育て、実は地域別にどういうところで出生率が回復しているかというと、結構やっぱりそこで、職場がある市町村でやっぱり子育て、子供が生まれているというようなことを研究を、私やったわけじゃなくて、人の研究を見たことがありますので、そういう意味で、確かにそういう都市の構造も変わる必要があると思いますが、まあ家庭と、家族と企業との間の壁を余り高くしないようにするというのも試みる価値は十分あるんじゃないか。  それから、企業内保育については、私、これまたよく分からないので、伊藤さんなり小峰さんから教えていただきたいんですが、アメリカでは結構企業内保育をやらしてるというふうに聞かされたことがあります。つまり、一つの企業が従業員を引き付けるための手段としてそういう形のことをアメリカではやってるんだということを言ってる。それが先ほど言ったアメリカ出生率が回復している一つ理由になるということを書いている方もいらっしゃったように思いますが、そういうことがあればいいんですけれども、企業は基本的にやっぱり収益がないと存在しませんので、そのコスト負担の問題はやはり大きな問題ですが、例えばそれも、地方公共団体がつくってる保育所というのを企業のそばにつくるとか、それに対してある程度費用を負担するとか、いろんな形のことがこれから行われていっても、実験が行われてもいいのではないかと、そういうふうに感じているということぐらいがお答えです。私のできるお答えです。
  40. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) 私もこの問題についての専門家というわけではありませんので大ざっぱなお答えしかできないんですけれども、私自身はずっとエコノミストをやってきて、いわゆる市場原理主義者に当たりますので、マーケットの力が相当この問題を解決するであろうというふうに考えております。  先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、これからは恐らく人口が減って、労働力人口が減ってかなり深刻な人手不足の時代になるであろうというふうに思われます。そうすると、企業はどうしても女性高齢者、若年層、いろんな層の雇用をできるだけ活用しようとする。それから、高齢者で、ある程度所得は減っても働く場がないだろうかというふうに探している人がたくさん出てくれば、そういった人を活用して新しい事業をやってもうけてやろうという企業が必ず出てくるに違いないというふうに考えますので、まあそういう流れがあるだろうと。  それから、女性についても、女性を戦力として活用した企業がより発展していくという時代になっていくと思いますので、これは単に企業内保育がコストであるということではなくて、これは一種の設備投資と同じであると。技術革新なり新しい機械を導入するのと同じであって投資であるというふうに考えて、女性が、そういった企業内保育が充実しているところに優秀な女性が入ってきて戦力として定着するということがその企業にとっても大きなプラスになるという時代になると思いますので、基本的な流れとしては今後はそういったことが進んでいくというふうに思います。  ただ、そのときに考えなければいけないのは、それを奨励しなければいけないのかどうかということですが、少なくとも足を引っ張ってはいけないということだと思います。我々の持っている制度には、まあ暗黙のうちに、それをねらったものではないんですけれども、暗黙のうちにどうしても働いている女性よりは専業主婦を優遇している制度、それから高齢者になってからも働くよりは年金で暮らした方がまだ楽だという方を選択してしまうような制度が残っているということですので、少なくとも高齢者、働きたい高齢者がより労働市場に参画していく、又は子育てと仕事を両立したい女性が、それを実現できるような方向と逆の方向になっているようなバイアスを持っている制度はなるべく中立的なものにしていくということが必要だろうというふうに思います。
  41. 伊藤さゆり

    参考人伊藤さゆり君) そうですね、二点目の御質問にあった企業内保育の問題について、これはやはり、先ほど香西先生のお話にもございましたが、イギリスですとかアメリカですとか、今日お話し申し上げた国々の中で見ると相対的にそういう公的な支援のようなものが余り積極的でない国では、市場メカニズムの結果として、やはり優秀な人材を確保するという観点からこういった仕組みがかなり取り入れられてるという印象を持っています。  ただ、両国ともに特徴として、この何年かやはり他の先進国を上回るパフォーマンス、経済の良好な状況が続いたということもあろうかと思うんですけれど、小峰先生とちょっと同じ、その部分については同じ意見ということになりますが、やはりこれから労働力人口は不足していくという時代に入っていくということと、足下、景気がやはり長期の低迷状態から抜け出していくという両方の要因から、比較的これを促進するような要因というのは、従来なかった要因として増えてくるのではないかなというふうに考えております。  で、高齢者就業の問題について地方自治体などの具体的な事例をというようなお話がございましたが、この点については、ちょっと残念ながら私、具体的な事例を持ち合わせてはいないんですが、先ほど冒頭のプレゼンテーションでもお話しさせていただいたとおり、かなり北欧などでは地方自治体のレベルでも、やはり具体的な雇用の需給のマッチングのような機能を果たすような機能を強化したりというようなことで、積極的にこれにコミットしているという事例はあるようです。  恐らく高齢者の就業促進というと、やや、余りにかわいそうなくらいというところまでいってしまうとちょっと問題があろうかと思うんですが、ただ、その選択肢もやはり個人の選択にゆだねられるような仕組みが望ましいと思いますし、スウェーデンなどで年金と仕事のバランスを自ら選択できる仕組みになっているというようなことで、段階的な引退を奨励するというようなことが言われているわけなんですけれど、初めの段階では仕事を三日、残りは隠居生活というようなバランスで、元気なうちはそういった形で社会にも家庭にもコミットしていく、バランスを取っていくというようなことで選択肢が多様化して、自らの体力ですとか能力、意欲に応じたパスができることが望ましいのではないかと考えております。
  42. 下田敦子

    ○下田敦子君 ありがとうございました。
  43. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 下田さん、よろしいですか。  それでは、ほかに。  坂本さん、どうぞ。
  44. 坂本由紀子

    坂本由紀子君 自由民主党、坂本由紀子です。  私は、三人の先生方に、この少子化問題と企業の貢献の在り方について御意見を伺いたいと思います。  少子化が進む中で、男性を含めた働き方の見直しということが重要だというのはあらゆるところで言われておりますし、今日も御指摘があったかと思います。  ただ、個別の企業で見た場合には、より生産性を上げるとかいうようなことからすると、必ずしも長期にわたっての育児休業であるとか、あるいは働き盛りの男性職員に残業ゼロにするというようなことでは、そういう方向にはなかなか働いていかないわけであります。  これをいつまでも放置しておいていいかというと、やはりある程度効果のある政策を作らなくてはいけないのではないか。そのときに、規制緩和の時代ではありますが、法律をもって厳しくこういうところを規制するのがいいのか、あるいは企業に対しては財政面で多大な貢献をしていただくというような形で、そういう方策で何らかやっていただくとか、様々な在り方があると思うんですが、その点についての御意見を伺いたいと思います。  なお、先ほど下田先生がおっしゃった企業内託児所のようなものについては除外をして考えていただきたい。というのは、私は、こういうものについては本来、日本であれば公的な保育サービスが充実していれば個別の企業においてそのようなことをやらなくても済むわけでありまして、特に子供は地域で育つものであることからすると、親元の、親が働いているところに子供を連れてきて地域から隔離をするということは、子供成長からいくと必ずしも適切ではないと思っているものですから、専ら働く部分についての観点で絞って教えていただけたらと思います。
  45. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、お三人の先生にということですので、今度は、じゃ、伊藤参考人からでよろしいでしょうか。どうぞ。
  46. 伊藤さゆり

    参考人伊藤さゆり君) 企業の貢献の在り方というのは、私も非常に悩ましい問題だなと思います。  先ほど、実際になかなかワークシェアリングが理想どおりに日本で機能しない要因ということで、例えばコスト削減というような効果が明確であればこれは手を付けやすい、特に経済環境が余り良くなかったということもあるんですけれど、手を付けやすいわけですけれど、モチベーションが上がってそれで生産性が向上してという辺りになってしまうと非常に漠としたもので、逆にコスト削減に絞り込んでいった企業と競争力の格差が付いてしまうリスクもあるということだと思うんですね。  そういうことでいえば、やはり職場環境の改善に積極的に取り組んだ企業に対してのある程度のインセンティブを供与するというようなことはあってしかるべきなのかなとは思うんですが、ただ、これの在り方も、余りやり過ぎてしまうと、今度、市場のメカニズムを損ねてしまうということにもなりかねませんので、非常にバランスの取り方というのが難しいなというのが率直な私の思っているところです。
  47. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) 私もこれは非常に難しい問題だと思いますが、ある意味で企業の社会的責任論というのとちょっと似ている面があって、環境問題であるとか社会的な問題について企業はどれぐらい貢献すべきかというのとちょっと似ているところがあると思いますね。  女性の子育て支援というようなことについて企業がどれぐらい考えるべきかということですが、これも、市場原理主義者は、企業はとにかく競争に勝って利益を最大化するということが重要なのであって、もちろん法律に違反してはいけませんけれども、その範囲で、基本的にはそれが企業の一番大きな役割であるということなんですが、それは一つのすっきりした考え方ではありますが、まあ一般的には、企業は社会的な存在でもあるのであるから、利益の追求に反しない範囲で環境なり社会問題についてもひとしく配慮をしていくというのが企業経営の在り方だというのが社会的責任論になっておりますので、基本的には子育て支援についても同じような考え方が成立する。強制するのではないけれども、一つ社会的責任として、企業がそういった面に自主的に力を尽くしていただくのは大変結構なことではないかということだと思いますが。  これは非常に常識的な答えになってしまうんですが、私は個人的には、やはりそこは相当難しいと思います。よく、結局は環境に配慮した企業が収益的にも立派な収益を上げられるんですよとか、女性に配慮した企業が生産性も高くなって収益も増えるんですよというふうに言うんですけれども、そういうことは当の企業が一番よく分かっているわけですから、他人が言わなくたってその企業が最大限の努力をするはずだということなので、なかなか悩ましい問題であると思いますが。  基本的な流れとしては、社会的なそういった、これは環境についてもそうなんですけれども、私はかつて環境省の前の環境庁の時代に、発足した当時、環境庁で働いていたことがあるんですけれども、そのころは開発と環境というのはどちらを取るかという議論が非常に大きくて、環境に配慮しつつ開発を進めるという議論が非常に多かったんですけれども、環境が重要だ重要だというふうに言い続けているうちに、環境が重要だというのはもうこれは当たり前だと、そんなこと言われなくても分かっていますというふうにみんなが思うようになったということですから、言い続けるというのも非常に重要だというふうに思います。  企業は、子育てというのは個人だけではなくて社会全体で子育てをするんだということがもしこれからの社会的な大きな流れであるというふうに考えるのであれば、それを言い続けるということによって社会的な雰囲気ができてきて、そういった点に積極的に貢献する企業がファッショナブルな企業であるというふうに認識されて、優秀な人材がそちらに集まるようになるという流れが生まれるのではないかというふうに思います。
  48. 香西泰

    参考人香西泰君) 大体同じことになると思いますが、子育てというか、子供を産むこと自体についても子育てはいろんなやり方があるというふうに、ある程度多様化さしていくという形でしょうし、家族の形もいろいろになっていくと。それと、企業と個人の間の契約で雇用なら雇用が決まっていくわけですから、そうすると、企業の方もいろんな働き方があるし、いろんな対応の仕方があると、こういうふうにやっぱり流れているのが今の姿であって、そういう形の中で自然にいいものが残っていくということが取りあえずは現実的なのではないかと。一見望ましいように思われることでも、まあ法律になるとどうしても一律に適用するということが非常に大事になってしまうわけですから、そうすると、やはりしゃくし定規になりかねないという、そういう懸念はあるわけですね。  そうすると、小峰さんの言う社会的責任というのはどういうふうにして担保できるかということですが、これはやっぱりそういう観点で人々の企業批評が行われるということが必要になってくると思うんですね。ですから、やっぱり就職の条件を出すときに、うちはこういう形で家族的な、家族に対して配慮していますとか、そういったようなことが雇用の先を選択するときの条件になっていくというようなふうに、社会的にそういうことが行われるようになる、自然にそういうふうに競争の中で行われていくということになると、まあ選択の自由もあるし、社会的な流れの方向に沿った方へ全体が動いていくという、その二つが両立できるのではないか。  法律というのは、やはり最低限これは絶対やらなければいけないという義務を課すわけですので、国民に対して余りにもたくさん課すということは生活の選択の幅が、やはり縮める、法律で予想しなかったようなことまで規制してしまう可能性があるのではないかと、そういうふうに、まあ私も市場主義に染まっているせいかもしれませんが、そういうふうに考えています。
  49. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) よろしいですか、坂本さん。  それじゃ、森ゆうこさん。
  50. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 民主党の森ゆうこでございます。今日は、三人の先生方、大変ありがとうございます。  私も、坂本委員の質問とも関連性があるんですけれども、ワーク・ライフ・バランスというものをより望ましい方向にしていくために企業はいかに努力すべきか、そしてまた、我々は立法府で何をなすべきかという観点で質問させていただきたいんですけれども。  経済活性化を図り、そして国際競争力をいかに高めるかということは非常に重要なことですし、それと同時に社会の安定性も保っていく、これを両立させなければいけないということだろうと思うんですけれども、この数年やられてきたことは、労働市場という面でいいますと規制緩和ですね。例えば派遣労働の製造業への解禁等々もございまして、我々はこの数年間の、言わば一連の雇用の流動化という政策について、結果として何が起こったかということも少し検証しなければならないのではないかと思っております。  実際には大変、改めて私が言うまでもないんですけれども、若い人たちの雇用が非常に不安定になっているという状況がございますので、そしてその若年者の雇用の不安定が、また結婚できない、将来が見通せないので結婚できない、したがって子供も産めないという、こういう状況もつくり出しているというところがあると思うんですね。  それで、ワークシェアリングというお話なんですけれども、これは数年前から話題になりつつ、なかなか日本型のよりよいワークシェアリングというのが実現できないでいるんですけれども、結局、こういうものを導入したときに企業が生産性を向上できるか、結果、国際競争力を保てるか、又は国際競争力を向上できるかということについて企業に対する説得力がないといいますか、そういうのが一番問題だと思うんですね。  で、私は、均等待遇等も実現しながら企業内の所得の再配分をやっぱり行って、均等待遇を実現しながら国際競争力はより高めていけるように企業を誘導していくべきではないかと思っているんですが、それぞれ先生方、それぞれのお立場でどのようにこの点についてお考えになるのか、是非御意見をお伺いしたいと思います。  私は、保育環境という点でいえば、日本は、先ほどいろんな例が出ましたスウェーデン等々ヨーロッパ諸国と比べますと、むしろ保育環境は整っているんであって、問題は労働時間だと思うんですね、労働時間。ですから、労働時間を本当に男女ともにもっと少なくしてワーク・ライフ・バランスが保てるようにしていくということが一番大事なのではないかという立場からの質問でございますので、よろしくお願いいたします。
  51. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) それでは、小峰参考人からでよろしいでしょうか。お願いします。
  52. 小峰隆夫

    参考人小峰隆夫君) 私は二つ申し上げたいと思いますけれども、何回も申し上げておりますように、私はエコノミストですので、エコノミスト労働時間の問題を答えを出せと言われると必ず残業の割増しを増やせばいいという答えが出てくるんですけれども、つまり、企業が残業をさせるとペイしない、又はより大きなコストを払わないと残業させられないということにすれば、それは、まあそれだけのコストを払っても残業させるというのはそれはそれで選択の問題なんですけれども、少なくとも今までほどは安易な残業はなくなるはずだというのがエコノミストの答えなんですが、そういう答えをするとすぐに、いや、そうはいっても現にサービス残業みたいなのがあってそんなにうまくいくはずがないという答えが出てきますが、要はそういう、企業が残業時間を、長時間労働をさせる、又は長期休暇を取りにくいということが企業にとって損になるようなインセンティブを付けるというのが一番利くのではないかというのが私の考え方です。  それから二番目は、これは余り経済学的ではないんですけれども、結構やってみればできるんじゃないかという点もある。つまり、みんな今までの働き方がそういう長時間労働を前提とした働き方、企業組織、意思決定の仕組みになっているので何となくそのやり方から抜けられないんですが、思い切って残業ゼロを前提とした働き方に変えれば、それはそれで結構できそうな気もするということです。  ですから、それは、じゃそれをどうやってやるんだということですが、それには恐らくいろんなこれまでの慣行ですとかそういったものが関係しているのでそんな簡単にはいかないとは思うんですが、これも、長い目で見て、社会的に長時間労働しているだけで何のために労働をしているんですかと、肝心のその労働の成果を生活に生かして、それを質の良い生活として実現するというところが長時間労働の中で欠けていては何にもならないではないですかということが現在よりもより強い社会常識になっていけば働き方も随分変わっていくのではないかなというふうに思います。
  53. 香西泰

    参考人香西泰君) 労働が流動化したということについての評価がいろいろ難しいと私も思います。これは事実に即して検証しなければいけませんが、私の段階では、今日のところは、考え方の問題なんですけれども、流動化の反対は固定化なんですね。  それで、安定というのと固定というのは違うということを、これは為替レートの問題についてミルトン・フリードマンという学者が言ったことですが、固定平価が安定的だとは言えないんだと、変動相場の方が細かい揺れはあるけれども、むしろ安定しているので、平価を固定していれば、ある時点で大きく変更しなければいけない、かえって通貨危機が大きくなると、こういうことを言っておりました。それは、事実、為替レートについてはそちらの方が意見が多数を占めましたので現在は変動相場になっていると、そういうことではないかと私思うんですが。  労働市場についてもある程度同じことがありまして、例えば若い人の就職がうまくいかないのは、ある意味で余り首が切れないといいますか、終身雇用ですからへばり付いている、そういう人が余り多いと、それはなかなか新しい労働力が就職できない。また、雇用を絶対に動かさないようにしようとすれば、逆に企業倒産が増えたり失業が増えたりするということもあって、本当の意味の安定にはならないんじゃないかと。そういうことはむしろ考え方としては一応考えておくべきことではないかというふうに思います。  例えば、パートタイマーというのに対して日本では非常に悪いと、こういうイメージがあるんですが、先ほどの伊藤さんの話でもそうだったと私は思うんですけれども、今まで失業していた人がむしろパートタイマーにでもなったらその方がいいんじゃないかというのが、ある意味で就業率を中心に物を考えるという、ヨーロッパではむしろどちらかといえば積極的な評価を受けている面もあるわけですね。なぜヨーロッパではそれが積極的に評価されて日本ではそうでないのかといったようなことについて、我々はもっと勉強する必要があるとは思いますけれども。  一概に、何というか、このパートタイマーが増えたような状態を悪いところだけあったというふうには必ずしも言えない。それによって、日本労働市場が流動化したことによって失業率、これは小峰さんの資料にもありますが、失業率を見ると、ある意味では日本アメリカ以下に低いわけですから、この程度ではですね。世界的にいって先進国の中では非常に低い失業率で、あれだけの何というか停滞を乗り切れたということは、やはり労働市場が流動化したから安定したということもあり得ると、そういうふうなことも考えるべきではないだろうか。  ワークライフの選択ということについては、いろんな選択の可能性があるよということを個人個人に示していくということが一番大事なことではないのかなと、そういうふうに考えております。
  54. 伊藤さゆり

    参考人伊藤さゆり君) 日本ですと、九〇年代以降の経済環境ということもあるんだと思うんですが、ある意味の就業形態の多様化というのが、非常に過剰雇用の削減とか人件費の固定費化をいかに変動費化していくかというような問題の取組と軌を一にして進んできたというようなこともあって、やはり非正規雇用の拡大というところに直結している部分があると思うんですが、本来、ワークシェアリングというのは必ずしもそこだけの問題ではなくて、ある意味では、今日御紹介したヨーロッパの例では、雇用の維持あるいは強化という部分で余り積極的な評価というのは最終的には出ていない部分もあって、逆に選択肢の多様化プラス仕事と、ワーク・ライフ・バランスを実現するというところで積極的に評価されているという部分があると思うんですね。  一つ、非正規雇用の問題については、これが不安定であるというようなところの一つの要因は待遇の問題にあると思いますので、これを均等化していくということは一つの取組でしょうし、それから今、割と日本の中で雇用の弾力化というようなところで余り焦点を当てられない部分が、やはり正社員の勤務の形態を多様化していくというような部分だと思います。  具体的には、勤務時間を短くした短時間正社員というんでしょうか、そういうものですとか、あるいは在宅勤務という制度をより広く取り入れていくといったようなことも非常にワーク・ライフ・バランスの確立という上では好ましい制度ですし、実際、社会生産、労働生産性本部ですか、こういったところでの調査結果でも、こういったものに対する需要の存在というのはやはり確認されておりますので、この就業形態の多様化の部分、あくまでも正規雇用、非正規雇用というところだけで論じるのではなくて、より多様な選択肢、幅というようなところも考えてみることもひとつ選択すべき、推進すべき点ではないかなと考えております。
  55. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) 森さん、よろしいですか。
  56. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 はい。
  57. 清水嘉与子

    会長(清水嘉与子君) ほかに御発言ございますでしょうか。  もし御発言がなければ、以上で参考人に対する質疑を終了したいと存じます。  参考人の方々には、大変長時間、本当に貴重な有意義な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  次回は来る二月二十二日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会