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参考人(
小峰隆夫君)
法政大学の
小峰でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
スライドを使って
お話をさせていただきます。(資料映写)
私は特に
人口問題の
専門家というわけではございませんで、これまで一
エコノミストとして、主にマクロ的な観点から、
日本経済全体にかかわる諸問題について考えてまいりました。
人口につきましては、昨年たまたま総合研究開発機構、これはNIRAというふうによく呼ばれておりますが、こちらで
人口減少と総合国力という研究をいたしまして、そのプロジェクトをまとめたという経緯がございまして、本日、そのプロジェクトに基づいて、
少子化、
人口減少という問題を
日本の
経済社会全体との関係でどういうふうにとらえたらいいかということを
中心に
お話をしてみたいというふうに思います。
今日
お話しする内容ですけれども、大体三つ考えておりまして、今
お話しした総合国力と、
日本全体の力という観点で
人口減少をどう考えたらいいか、二番目に
人口減少にどうやって備えたらいいか、三番目にその
人口減少をどうやって防いだらいいかと、この三つについて
お話をしたいというふうに思います。
私の基本的なアイデアは、この図にありますように、最近、ここ数年ですね、
日本の
経済とか
社会を見てみますと、いろんな問題点というか、これまで現れなかったような異常値みたいなものが出ている。例えば、
少子化が進展している。それから、右の方に書いてありますが、
日本は対内直接
投資が非常に少ないということがある。それから、異常なISバランスというのがありますが、これは要するに、ISバランスというのは
貯蓄と
投資の関係を示しているんですが、大体、
家計が
貯蓄をして企業がそれを使って
投資をするというのが健全なバランスだということなんですが、
日本はここ数年、
家計も
貯蓄をしているんですけれども、企業も
家計並みに
貯蓄をしているという姿になっておりまして、残った
投資は
政府部門、これは
財政赤字なんですけれども、
財政赤字と
海外投資、これは経常収支の黒字になるんですけれども、そういうふうに流れているという、つまり、
国内で形成された
貯蓄が円滑に
国内で
投資されてないという姿になっているという、まあ幾つかの問題点が出てきているということなんですが。
こういった問題点はそれぞれもう強く認識されておりまして、
少子化についてはいろんな
少子化対策が取られている。それから、対内直接
投資についても、もっと対内直接
投資を増やそうではないかという
対策が取られている。それから、異常なISバランスについても、これはリスクマネーをもっと
供給しようということだと思いますけれども、金融の正常化という試みが取られているということですが、私が申し上げたいのは、こういったいろんな問題点というのは、それぞれが問題であることは事実なんですけれども、もっと大きな根本的な問題があるんじゃないかということです。
それが左に書いてある、
一つは総合国力の低下、つまり
日本全体の国の力、これは後でどういうものかというのをちょっと
お話ししますけれども、
日本全体の国の力が若干衰えてきている、又は将来もっと衰えるのではないかと多くの人が思っているということに
かなり大きな問題があるのではないかと。それから、これまで我々が維持してきた従来型のシステム、これは特に雇用との関係で大きなものが出てくると思いますけれども、これが変化してきた環境と不適合になっていると。そういったことが結果的に
少子化ですとか対内直接
投資が低いとか、そういった現象となって現れているのではないかというのが私の基本的なアイデアでありまして、したがって、
少子化をもし止めようというのであれば、
少子化を止めるための
対策というのももちろん必要である。
これは、
児童手当を多くするとか児童保険をつくるとかいろんな
考え方がありますけれども、それだけではなかなかうまくいかないのではないか。もっと根本的な、
日本全体の
経済力、力、そういったものを発揮していくようなことにならないとうまくいかないのではないかと。今、
香西さんの
お話にもありましたけれども、我々が
子供を持つというのは、我々が産んだ
子供が我々自身よりももっと豊かな
生活ができるであろうという展望が持てるときに安心して
子供を産めるということですから、
子供を持てというのではなくて、多くの人が安心して
子供を持てるような
経済とか
社会にしていくということがもっと重要なのではないかということでございます。
これが最近の合計特殊
出生率の表ですけれども、今、
香西さんも
お話しになりましたように、二〇〇二年を見ていただきますと、
アメリカが二・〇一ということで、
アメリカだけ二を上回っているということで、
日本は、これは二〇〇二年ですけれども、最近は一・二九まで下がっておりますが、一・三二ということで非常に低いと。
ここで私が申し上げたいのは、レベルとして
日本の
出生率が低いということだけではなくて、下がっているということがより重要である。右側に八五年から二〇〇二年の変化幅を取っておりますけれども、主要国の中で
日本が一番ドラスチックに下がっているということですね。主要国の中で
日本だけ下がっているということは、
日本だけ何らかの特殊要因があるのではないかということをうかがわせるということであろうというふうに思います。
今申し上げました総合国力というのはそれでは何かということになりますけれども、これ、本日の主なテーマではありませんので簡単に御紹介するだけにとどめておきますけれども、今申し上げましたNIRA、総合研究開発機構で総合国力というものを考えたときに、国の総合的な力というのは何だろうかというのを考えて、大体三つぐらいの要素があるのではないかというふうに考えました。
ここではそれを市民
生活向上力、
経済価値創造力、国際
社会対応力というこの三つに分けておりますけれども、市民
生活向上力というのは国民の一人一人が豊かに暮らすことのできる
社会ということですし、
経済価値創造力というのは企業なり雇用者なりが
自分の能力を最大限に発揮して活力を発揮しやすいような
経済である。それから、国際
社会対応力というのは、
日本が国際的にふさわしい貢献をして、ある位置付けをもって尊重される国になるというようなことで、この三つがそろって初めて
日本の総合的な力が発揮できるのではないかという
考え方でございます。
この研究では、これをそれぞれ国際比較をしたり数値化をしたりアンケートをしたりということで様々に分析をしているんですけれども、ここではそれは主なテーマではございませんので省略いたしますけれども。
ただ、
一つ申し上げておきたいのは、この表をごらんいただきますと、
人口と総合国力、特に
経済規模なり一人
当たり所得とこの関係をどう考えたらいいかということでちょっと一点だけ申し上げておきたいと思います。
今ごらんいただいている表は、普通我々が見ていますドルベースで見た
経済規模と、左側が
経済規模、右側が一人
当たり国民所得なんですけれども、御承知のように左側の
経済規模を見ますと
日本は第二の
経済大国ということで、しかも圧倒的に、飛び抜けて第二位の
経済大国ということになっております。一人
当たり国民所得も
かなり高くて、ベストテンの七位に入っているということで、堂々たる豊かな国であるということになります。
ところが、この計算は
経済的には若干問題があるということでして、
エコノミストの間では若干問題があるということになるんですけれども、それは換算するときの為替レートを何を使うかということです。ここでは普通我々が見ている為替レート、一ドル百十円とかそういったものを使っているんですけれども。それでは、それは通貨の実力なのかというと、例えば百十円を一ドルに替え、じゃ
アメリカで一ドルを百十円に替えて
日本に持ってくると
アメリカと同じものが買えるかというと、買えないということですね、
日本の方が物価が高いですから。ということは、
日本の通貨価値は一ドル百十円よりは実力としては安いということですね。これを、購買力平価という
考え方があるんですけれども、これ、世界全部の国の購買力平価を計算するというのは非常に大変なんですけれども、世界銀行が毎年これを出しておりまして、それで計算をし直してみたというのが次の表でございます。
これを見ると大分イメージが変わってまいりまして、左側の
経済規模を見ますと、
日本はもう第二の
経済大国ではなくて中国に抜かれて第三位であると。しかも、中国の方がもう
かなり大きいということになります。したがって、実力ベース、通貨の実力ベースで見ると
日本は第三の
経済大国であるということですし、今度は左側の
経済規模を見ると、中国、インド、それからブラジル、ロシア、最近よくBRICsというふうに言われて、
人口規模の大きい新しく登場してきた国々をBRICsと言うんですけれども、それらの国々が軒並み入ってくるということですね。これは簡単に将来を展望してみますと、
日本は間違いなくインドにもやがて抜かれるであろうということですし、ブラジル、ロシアも
かなり人口規模が大きいですから、今後
成長してくれば
日本を抜いていくだろうということです。
これで言いたいことは、要するに、
経済規模で勝負はできないということですね。もう
人口の規模が全然違うわけですから。中国は
日本の十倍以上
人口があるわけですから、一人
当たり所得が
日本の十分の一になったら
経済規模は同じになるということですから、もうこれは簡単に抜かれてしまう。これは、ほかのインド、ブラジル、ロシアも同じであるということですので、
日本は
経済力というのを考えたときに
経済規模で勝負するのでは、当然これは話にならないということです。
右側の一人
当たり所得を見ますと、これも実力ベースで見ますと、
日本はもうベストテンから外れてしまうということになっているということで、私はむしろこちらの方が大きな問題であると。つまり、実質的に見た所得水準はまだ低いというふうに言っていいのではないかということで、むしろ
経済規模を問うのではなくて、一人一人の
生活の質、所得の質というものを問うべきである、それが
日本の
経済力ではないかということではないかと思います。
この
調査では、その後、それを発揮するためにはハードなパワーではなくてソフトパワーだということで、特に人的資源、環境、技術、情報、こういったものに選択と集中をしていくべきだということになっていくんですけれども、これは本日の趣旨、本日のテーマとはちょっと離れますので省略をさせていただきます。
次に、
人口減少との関係ですけれども、以下二つのことを
お話ししたいんですけれども、
一つは
人口減少に伴う悪
影響をどう防いだらいいのか。これは、言わば
人口が減っても大丈夫なような
社会にしようということで、
人口減少と共存するという
考え方です。それからもう
一つは、
人口減少そのものにどうやって歯止めを掛けるかということなんですけれども、この二つはよく考えるとちょっと矛盾しているようにも見える。
つまり、
人口減少に歯止めを掛けられるのであれば、
人口減少の悪
影響がなくなるんだから、悪
影響を防ぐという必要性もなくなるのじゃないかということですから、この両方考える必要はないんじゃないかということなんですが、少なくとも今後三十年ぐらいを考えると両方考える必要がある。つまり、今すぐ
出生率が二に回復したとしても、実際に
人口が増え始めるのは二十年後、三十年後であるということですので、どう頑張っても
人口は必ず減るということですね。少なくとも今後二十年、三十年は絶対に減るということですので、減っても大丈夫なような
社会にするということは避けられないということです。
逆に、今、
出生率について
対策を取らないと、三十年後以降もまだ減り続けるということですから、このもし
人口減少を止めたいのであれば今すぐ
対策を取らなければいけないということになりますので、一見矛盾するようでありますけれども、この二つは同時に並行して行っていかなければいけないということだと思います。
この悪
影響との関係ですけれども、先ほど市民
生活向上力、
経済価値創造力、国際
社会対応力という三つで整理しましたので、ここでは
人口減少がそれぞれにどう
影響するかということを考えておりますが、詳しい説明は省略いたしますけれども、少なくとも、減らないよりは減るとやはり悪
影響があるということは、これは避け難いということだと思います。
真ん中の
経済価値創造力のところは、今、
香西さんからも
お話がありましたように、
経済的にもいろんな
マイナスの
影響があるということになります。
では、その点について簡単に御説明いたしますと、
人口の変化と
経済成長の関係では、今これ
香西さんから
お話がありましたので繰り返しませんけれども、特に
労働力とそれから
資本というところに大きな
影響が出てくる。それから、広い
意味の
経済社会制度ですとか
社会保障制度のようなものがうまくいかなくなってくるという点で、これも
経済的に
マイナスの
影響があるだろうということになります。
これに対してどうしたらいいのかということになりますけれども、オーソドックスな
対応策としては、
労働力人口が減ってしまうということについては、
女性それから
高齢者の
労働力率を上げてもっと
労働力市場に参入してもらう。それから、それでも足りなければ外国人
労働力を使う。それから、全体として
労働の質を高めていく。つまり、一人で二人分働くようになればいいということですね。
それから、
貯蓄率の低下に対しては、
国内に
貯蓄がないのであれば
海外から
投資してもらえばいいではないかということになって、
アメリカが今正にそういう状態になっているんですけれども。それから、
資本の効率を上げたり、それから
財政赤字を減らす。これ、
財政赤字というのは、せっかくの
国内の
貯蓄を
財政が食べてしまっているということですので、これを減らせということになります。
それから、
経済全体の効率化を果たすということで、これ、全要素
生産性と言われていますけれども、これは大体技術革新、研究開発というのが
中心なんですけれども、それ以外にもやはり
時代の変化に合わせて
制度改革を進めていくということも大変重要になるということだと思います。
というのが標準的な回答になるんですけれども、私自身は若干こういった回答については違和感を覚えておりまして、特に
労働力との関係なんですけれども、よくこれから
労働力人口が、
人口が減ると
労働力人口が足りなくなるので、
女性、
高齢者にもっと働いてもらいましょうという計算が出てくるんですけれども、二つの点で私は若干違和感があると。
一つは、
経済が大変だから
女性とか
高齢者にもっと働いてくださいという発想がちょっと逆転して、本末転倒ではないかという感じがします。じゃ、
経済が大変でなければ
女性やお年寄りは働かなくていいんですねということになりますし、じゃ、働きたくない人も
経済が大変だから無理して働かせるんですかということにもなりますし、これは発想が逆転しているのではないか。つまり、
経済のために人がいるのではなくて、人のために
経済があるわけですから、
経済が大変だからもっと働いてくださいというのはちょっと本末転倒ではないかという感じがいたします。
それからもう
一つは、実際にそれはどういう状態なのかというと、
人口が減って
労働力人口が足りなくて困ったという状態は、言わば人手が足りなくて大変だということですから、
失業率はゼロだということですね。働きたい人は全部働いているはずだということなんですが、ところが、これはもう既に
労働力人口はとっくに減っているということですね。
労働力人口が減っているのに現実に何が起きているかというと、一番足りないはずの若年層で
失業率が一番高いということになっている。
つまり、私は、
人口が減って人が足りなくなりますというのを心配する前に、今働きたくても働く場がない人が一杯いるわけですから、その
人たちに働く場を提供するという方がまず最初にすべきことであるということで、それでも足りなくなったときにもっと真剣に心配すればいいということではないかというのが私の
考え方でございます。
それから、もう
一つの
人口減少に対してどう
対応したらいいのかという点については、これはやはりいろんな
対応策が山のように考えられておりますけれども、これは基本的になぜ
人口が減っているのかと、
少子化が進んでいるのかという
理由をきちんと整理する必要があるということだと思います。
これの
理由もいろいろありますので詳しくは省略いたしますけれども、私自身が一番重要だと考えておりますのは、やはり
女性の機会費用、つまり
女性が子育てをするときに何かをあきらめなければいけない、そのあきらめるものがだんだん大きくなってきているという点が重要であるということです。
ここにお示ししたグラフは、
女性の機会費用が実際にどれぐらいになるのかというのを、これは昨年の国民
生活白書で計算しているものがあるんですけれども、上にあるラインが働く
女性の所得ラインで、この面積が生涯所得になるんですけれども、例えば
出産のために一時勤めを休んでもう一回働きに出る、又はもう退職してしまって次に働きに出るときはパートに出るといったようないろんな
ケースを考えて、この青いラインが
育児に伴って所得をあきらめなければいけない部分だということになります。
私が言いたいのは、
日本の場合にはこの青い部分が非常に大きくなる傾向があるということですね。
というのは、
一つは、これは次の
日本型雇用慣行との関係で大変重要な問題になると思うんですけれども、
日本の場合にはどうしても新卒で採用して長期雇用であると。企業にふさわしい人材として長期的な観点からトレーニングをしていくという観点になっておりますので、なかなか、企業にフィットした人材になるということで、特定の職務、ジョブにフィットした人材にはなかなかならない。つまり、プロフェッショナルな人材がなかなか育ちにくいということになります。
そうすると、企業にフィットしているわけですから、企業から離れてしまうということは非常に大きなコストになるということですね。したがって、
女性がある企業に職を得てキャリアを進んでいく場合に、そのキャリアをあきらめるということは非常に大きなコストを払うことになるということになります。これがもし雇用が流動化していて、プロフェッショナルな人材として育てられていて、いったん企業から出ても別の企業にまた同じような条件で採用されるということが容易であるということであれば、その機会費用は非常に小さくなるということです。
それから、
日本の場合には正社員とパートの賃金格差が
先進国の中で一番大きいということがありますので、
女性の場合どうしても子育てが終わってもう一回勤めに出るときに、時間の自由のあるパートにということですけれども、そうすると、非常に所得が下がってしまうということになります。これも、もし同一
労働同一賃金になっていて、同じような職務をしているのであれば正社員でもパートでも給料が同じということになっていれば、
女性の機会費用はずっと小さくなるということになります。
それから、下の方に書いてありますように、
日本の場合にはどうしても長期雇用を前提としておりますので、
仕事が忙しいときには同じ
労働者数で同じ
仕事を、より多くの
仕事をこなさなければいけないということで、どうしても残業が大きくなる、つまり時間で
仕事の繁閑を調整するということになって、そうするとどうしても残業時間が長くなると。
これも
日本の場合には主要国の中で残業時間が一番長いということがありますので、そうすると、男女共同参画とはいえ、家事については男性が共同参画するというのが非常に難しくなると、
女性にどうしてもより多くの
負担が残ってしまうということになります。さらに、共同参画したくても男性の方がいないという、単身赴任でいないということさえあるわけですから、なかなか家事の共同参画というのができないと。これも国際比較をしますと、
日本の場合、男性の家事への、家事に割く時間は
先進国の中で一番短いということがありますので、こういったことを考えると、
日本の雇用の
在り方というのが男女共同参画という大きな
時代の変化とフィットしていないということですね。従来型の長期雇用、年功賃金というものが、
女性が男性と同じように参画してくるという流れと合っていない。
その合っていないということが真の病なのであって、その結果が
女性の
子供を持つことの機会費用が大きくなって
少子化になるということですから、
少子化が本当の病気なのではなくて、雇用のシステムが
時代の変化と合わないというのが本当の病気であるというのが私の
考え方です。
例えて言えば、風邪を引いて熱が出たというときに、これは風邪を治さなければ熱は引かないと。熱冷ましだけ飲めばいいかというと、それも飲まなければいけないんでしょうけれども、本当に病気を治そうと思えば病気
そのものを治さなければいけないということですから、
少子化の場合にも、単に
少子化を止めればいいということで
少子化に焦点を当てた
対策を取るということも必要ですけれども、そのより根源にある働き方を見直すということをもっと考える必要があるというふうに思います。
最後に、総合国力という観点から
少子化について二点だけ申し上げておきたいと思いますが、
一つは、やはり迂遠なようではありますけれども、将来に明るい展望が描けるような健全なマクロ
経済というのがやはりどうしても基本だということで、その基本はさらに人の力というのが重要だということで、これ現在、総合研究開発機構の方で先ほどの研究の続編みたいなのをやっているんですけれども、その一部だけ御紹介しますと、これは、将来働く上で必要な能力や環境を向上させるための努力をしていないという人に対して、なぜしないんですかというのを聞いた答えなんですけれども、これ年代別になっておりまして、各グラフの左側が二十代なんですけれども、年代によって
理由が
かなり違う。二十代の人は、そういうことをするきっかけがないとか、それから努力できる環境がないとか、やり方が分からないという答えが非常に多い。そもそも努力しても報われないという、つまりあきらめている人というのはほとんどいないということですね。ですから、これは、若い層にそういった能力向上の機会をもっと与えるということをやっていけばもっと向上する余地が
かなり大きいのではないかということをうかがわせるということです。
それから最後に、
少子化への
対応として、基本的に重要なのは、私が先ほど申し上げたように、雇用というのが非常に重要だと思うんですけれども、基本はやはり働く人々の立場に立った質の高い雇用というのを実現するということが
少子化対策の王道だというふうに思います。その中身は、もう既にいろんなところで指摘されておりますけれども、これまでは男性の新卒の正社員というのがコアの
労働力であるという
考え方だったんですけれども、これからはそういった単一のモデルで企業の
労働というのを、雇用環境を設計するのではなくて、多様な働き手、
子供を持っている人、持っていない人、これから持とうとする人、男性、
女性、
日本人、外国人、お年寄り、若い人、いろんな多様な方々がそれぞれの能力を発揮できるような雇用システムというのを考えていく必要がある。
それから、
社会への参画だけではなくて、家事への男性の共同参画というのも必要ですから、これはやはり
労働時間ですね、
労働時間をもっと見直して、まあこれ、ワーク・ライフ・バランスということが言われていますけれども、ワーク・ライフ・バランスを考え直す必要がある。
それから、やり直しができる雇用、教育システムということで、これは、いったん企業に入ってしまうと一生の運命が決まってしまうということではなくて、もしこの企業は
自分にフィットしないということがあればいつでも再挑戦ができるような仕組みというのが必要だと。
それから、基本的には、男女間、正社員、パートといったようなものが同じような
仕事をしているのであれば同じ賃金ということで格差を是正していくということが、まあこれは因果関係が
かなり離れてはくるんですけれども、基本的にはこういったことを是正していくのが
少子化対策の王道ではないかというのが私の
考え方でございます。
どうもありがとうございました。