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参考人(
西郷真理子君) 皆さんこんにちは。御
紹介いただきました
西郷でございます。
私は、
建築家で
まちづくりの
コンサルをやっているものでございます。本日、このような席で
お話しさせていただくのは大変緊張しておりまして、うまく
お話しできないかもしれませんけれ
ども、これまで活動してきたことを
お話しさせていただいて、御
参考にしていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私は、
学生時代に歴史的な
町並みに
大変興味を持ちまして、そういうところを訪れたわけです。そういう町を訪れたときに大変感じましたのが、やはりその町が、
町並みが美しくて居心地が良くて住んでいる
人たちが笑顔がいいというところは、町の
共同の
社会というんでしょうか、
コミュニティーというんでしょうか、そういったものがとてもよく根付いているというのをとても感じたんです。それで、やはりそういう
コミュニティーという町の
共同の
社会のようなものがきちんと機能することがとても大切だということを感じたわけです。それで、その
コミュニティーというのはある種の助け合いの
社会であり、
日本独特の協力の
仕組みがあって、豊かさを感じる
社会であり、安心、安全ではないかと思ったわけなんです。
それで、その
コミュニティーによる自立的な
開発とか
再生とかいうことをテーマに
仕事にしたいということで、現在は
中心市街地活性化とか
商店街の
仕事をしているということでございます。私がお手伝いをしました歴史的な
町並みの
川越、長浜、現在は、歴史的な町ではあるんですけれ
ども本格的な
市街地再
開発事業に取り組んでいる
高松の丸亀町というところを
参考に
お話をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
お手元に
資料をお配りいたしましたので、この
内容で
お話をしたいと思います。
まず第一には、
都市には
中心が必要であるということですね。やはり町の中に
中心があって、その
中心行くと、
市民が
誇りに思うような場所でしょうか、
市民が
誇りに思い集まることのできる
中心が不可欠であるというようなことを書いたわけなんですけれ
ども。
私
たちが例えば
海外旅行に行ったときに、ある
ヨーロッパの
地方都市に行って、
真ん中におしゃれな
広場があって、教会があり、そこに
シティーホールというんですか、市役所があったりしまして、とてもいい雰囲気なんですよね。小さな
地方都市でも、小さな劇場があって演劇をやっているとか、その
広場ではお茶を飲んだり、おしゃれなブティックがあって、その町でしか取れない、取れないというか加工できないような、例えば
銀細工の店があったりということで、大変町が魅力的でそこにみんなが行きたくなるようなものがあるというのを感じるわけなんですね。ですから、そういう
意味でやはり
都市にはきちんとした
中心があるべきであるというふうに思うわけなんです。
それを例えば
日本で考えると、
ヨーロッパの場合は
地方都市がとても魅力的であるということで、いろんな小さな町、五万人、十万人ぐらいの町でもとても魅力的なんですけれ
ども、
日本の場合ですと何で
地方都市が魅力にならないのかなというふうに感じているわけなんですけれ
ども。例えば、
四国の
高松の
中心部というのは、
資料の六ページに
高松の
資料がありまして、古い地図があるんですけれ
ども、海から向かってお城がありまして、そのお城から真っすぐ伸びた、一応
台地状の一番いい尾根上の道に
商店主の
人たちを配置しまして、商都として発展させましょうというようなことを四百年前に当時のお殿様が、
都市計画ですね、決めたわけなんですけれ
ども、現在はその
商店街が大変弱ってきてしまっているということで、それは本日の
議論になっているような
郊外店の出店なんですけれ
ども、同時に、要するに
郊外の
住宅地で空き家が出てきているということがやはり出てまいりまして、
四国新聞の連載の中でもそういうことが明確になってきているわけなんですね。
郊外の町も衰退して
真ん中も衰退するというようなことが始まってくると、町を支えていたその
コミュニティーそのものが衰退してきてしまっているんじゃないかということで、先ほど申し上げた、
日本の持っていたいい町の
仕組みというものがうまくいかなくなってくる。そういった
意味で、
都市にはとにかく
中心をつくっていくことが必要であるということがあるわけです。
次に、じゃその
中心の
再生はだれが行うのかといった場合に、いろいろ
関係者がたくさんいらっしゃる中で、
行政機関なり企業もあるとは思うんですけれ
ども、私はやはりそこの町に住んでいる
人たちが、
コミュニティーが
中心になって
再生することが必要であるというふうに考えておりまして、そのためのポイントとして三点ほど挙げております。
まず一点目ですね。町の
イメージを共有して美しい
町並みをつくる必要があるんじゃないかということです。
先ほど
鶴岡市の
市長さんもおっしゃっていたように、町の
人たちは
自分たちの町に対してある
一定の
イメージを持っているんですね。それは長く長く培っておられまして、例えば
川越というところが四ページ目にあるんですけれ
ども、ここでは
日本の歴史的な
都市と同じで、
四間のところに
商業があり、
四間のところに
住宅があり、八間から十二間の間に中庭があるというようなゾーニングをもう長い間行ってきたわけです。
ところが、これは別に何か決まっている
制度ではありませんので、細長い敷地に対してようかんのような
建物を造ると
反対側が
駐車場になったりして歯抜けになっていくというような悪い
土地利用が始まってきたときに、町の
人たちが
町づくり規範という
ルールを作りまして、この元々持っていた町の
ルールを
自分たちの
ルールであるというようなことをきちんと作ったわけです。それで、
町並み委員会をつくりまして、
町づくり規範を運用するというようなことをやっているわけです。これは、これを基に
川越市は
伝統的建造物の
保存地区というのを指定したわけですけれ
ども、この基準の基にもなっているということです。
あるいは
高松では、やはり先ほどのページを開けていただきまして、六ページ目ですけれ
ども、今回、
市街地再
開発事業に取り組んでいるA街区というところがあるんですけれ
ども、これは
都市再生特別地区の特区の手続を取りまして、これまでの斜線型の規定から、ここに書いてありますように、
建物の壁面を決めていくというようなものを住民が提案をしまして決定を受けたわけでございます。現在はこれを丸亀町全体の街区で展開していくようなデザインコードを立案しておりまして、それを生かす地区計画を準備中ということでございます。
町の
イメージを共有して美しい
町並みをつくっていくような
仕組みづくりが大切ではないかというのが一点目でございます。
次に、ではその場合だれが進めるかということなんですけれ
ども、それは正に
コミュニティー自身が主体となる。
コミュニティーの主体ってどういうことかというのなんですけれ
ども、アメリカのダウンタウン
再生では比較的この辺りがすごく進んでいまして、ここに書いてありますような
コミュニティーに根差したディベロッパー、CDCとかCBDとか言われておりますけれ
ども、そういったものが二十年も活動をしていて実績が多いということですね。これにはBIDと言われているような特別課税地区とか、そういういろいろな
制度が複合してやっているんだとは思うんですけれ
ども、それにしてもこういう
コミュニティーディベロッパーが活動して町の
再生を行っていると。
じゃ、
日本ではどうかということなんですけれ
ども、
日本は
伝統的にやはり町を運営していくような
仕組みってあったわけで、それをうまく生かして、例えば長浜では、最近とても有名になっておりますけれ
ども、黒壁株式会社が
市民ディベロッパーとして活躍をしているということで、五ページ目にその写真を、
資料を載せましたけれ
ども、黒壁が空き地や空き
店舗を買ったり借りたりしながら展開していって、そこには様々な組織がそれと同時にできてきて
事業が成功している。
例えば
高松ではエリアマネジメントを行うために本格的な
まちづくり会社を、もうできておりますけれ
ども、それでマネジメントプログラムを展開していきましょうということでございます。その
資料は七ページをごらんいただきたいと思います。
まちづくりはプロセスで考えるということで、最初は余り、大きな組織だけだったのが、だんだんだんだん小さなNPOなんかができてきて町が
活性化してくるということが言えると思います。
その中でも特に大切な、
市民が
中心となって成立するディベロッパー、
まちづくり会社ということで、それが成立する構造というのを七ページ目の方に整理をいたしました。初動期に企業やあるいは大きな組織は手を出さないようなところに投資をしまして、それをちゃんとリターンをします。その
仕組みの中でこの
事業が成り立っていくというようなことを行っているわけですね。
これは、例えば
川越ではその昔はお助け長屋というのがありまして、メーンストリートで失敗した
人たちがお助け長屋でもう一度チャレンジするというようなことも行われているということでのこの
まちづくり会社の構造というのは、
日本の元々持っていたものであるというふうに思います。
三点目といたしましては、
事業スキームを工夫するということでございまして、土地問題というのは大変大きな問題でございますので、土地費を顕在化させないということで、
地方都市においては特に
一定の
活性化、
再生をしようと思うと土地の問題等が出てくるわけですね。
その土地を、丸亀町では土地の所有と利用を分離いたしました
市街地再
開発事業のスキームを立案いたしました。土地の所有はそのままですので、
まちづくり会社が
建物を所有して全体のマネジメントをやっていくということでございます。権利調整の難しさを住民が自ら主役になることによって克服する工夫をしております。
このような住民、
市民の
人たちが前提となってこの
コミュニティーを
再生しようということをやるためには、大きな二つの前提条件があるかと思います。
三ページ目ですね。それは、今回法案にかかっておりますコンパクトシティーが実現されないと、やはりこれができないということですね。コンパクトシティーの実現ということはもうたくさん
議論されているわけなんですけれ
ども、
基本的にはやはり町の中に集合して住むというのは特に高齢者とか女性の
人たちにとって大変便利であって、先ほど
お話がありましたように、車を使って移動していくというのはやはり弱者にとっては大変不便ですので、そういった
意味で高齢者、女性にも大変必要ですし、それから子供の教育にも必要だということもありますし、それから中小企業は集積することで効果を上げることができるわけですから、町の中に集積することでよりパワーを上げることができると。
それから、
環境問題とかいろいろありますけれ
ども、とにかく限られた資源を
一定地域に集中させて魅力的な町をつくることができれば、本当に豊かな
都市生活が実現できるというふうに思います。
郊外に
大型店がどんどん出てきてしまいますと、
中心部の中小
商業者が幾ら頑張っても太刀打ちできないというので、もう
高松でも
店舗数で〇・五%のところが売上げで二〇%持っておりまして、それが
郊外の二種
住宅にいるということでございますので、こういったことを是非コントロールをして、
まちづくりをしなくてはいけないのではないかというふうに思っております。
第二点目といたしましては、じゃ、それを行っていくために、やはり初動期に公的支援を求めながら資金が
地域循環をする
仕組みが必要ではないかということでございます。
いろいろな
都市開発事業を行うためには
一定の支援があるわけですけれ
ども、
コミュニティーが
中心になることによりまして、こういった支援の
事業を行うことができます。その結果として、
基本的に補助金は税収で返ってくるということと、実は
地域のお金を
地域で投資をするということをやりたい、やるべきであるという動きはたくさんありますので、例えば
高松でも
地域の
人たちがファンドをつくり、それを再
開発の中で投資をしていくというような
仕組みもできてきております。
あるいは、中小企業が連携することによりまして、地場で取れた食材は地場で消費をするという
仕組みが構築されつつあるわけですけれ
ども、これらはすべて
地域循環の
仕組みでございまして、サステーナブルな考え方なわけです。ですので、
基本的な
地域循環の
仕組みをどのようにつくっていくか、つくり上げるかということでございます。初動期の公的支援が効果的に活用され、その効果が
市民のために戻ってくるということでございます。
今回の新しい法律に関しましては、
都市計画の持っている用途
地域の考え方をきちんと行うと、それから
地域の意思決定による手続を行うということで、是非成立することを期待したいと思います。
先ほど来言っておりますように、
日本には
伝統的に
市民が助け合って生活をしていくというものが長くあったと思うんですね。ただいま勝ち組、負け組という
議論もありますけれ
ども、やはり負け組ということではなく、その残りの八割、七割の
人たちが助け合って協力し合いながら生活をしていくということが大切で、例えばビル・ゲイツが成功したとしても、やっぱり幸せを感じるのは
仕事が終わったときのビール一杯を仲間と飲むということだろうと思うんですね。
ですから、そういう幸せな世界ができるようにするにはやはり
都市の生活がきちんとできなくてはいけない。
都市計画はそれをきちんとしていくための大きな手段だというふうに思いますので、是非法案の成立を期待したいと思います。
ありがとうございました。