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参考人(
山城完治君)
山城といいます。よろしく
お願いいたします。
今日、こういう場をいただきまして、本当にありがとうございます。
それで、私は
視覚障害、視覚
情報障害なんですけど、
視覚障害というのは当たり前のことが分からないというのがあるんですよね。それをまず言いたいと思うんですね。
視覚障害になって町を歩くときにいつも思うことは、自分が今どこにいるか分からない。自分はどこにいるのかな、駅のどこにいるのか。例えばここにいて、ここは全体の中の、この部屋のどこにいるのかというのが分からない。それから、どっち向いているか分からないというのがあるんですね。私は議員さんの方を向いているのかどうなのか、これが分からない。それから、歩くときにどう歩けばいいのかというのが分からないというのが
視覚障害。つまり、皆さんにとっては何でもないこと、当たり前の
情報がないというのが
視覚障害者なんですよね。
例えば
一つの、この
法律の例でいいますと、
法案が出ているみたいですけれども、出ていますけれども、点字の
法案がないわけですね。私
たちはその当事者であり、今度のその
法律のまあ主役の一角であると思うんですが、その私
たちがその
法律を読むことができない、点字が出てない。これは、こういうことはやっぱり改善していかなきゃいけないなというふうに思うんですね。
まあそういうこともありますので、私は、
法律の全体に触れるんではなくて、
視覚障害者の立場から、特に命やけが、安全にかかわることについてを
中心に
お話ししていきたいというふうに思います。
それで、まずここに
三つの不自由と
三つの遅れというのがあるんですが、
視覚障害者の
社会参加、そして平等な暮らしのために、私
たちは、
三つの不自由と
三つの遅れ、この克服が
課題だというふうに考えているわけです。
三つの不自由、これはまず歩行、
移動の不自由、読み書きなどの
情報入手と発信の不自由、それから就労の不自由です。
三つの遅れというのは、制度と技術開発、
障害を補うための制度と技術開発の遅れ、それから
視覚障害者に対する
理解と
啓発の遅れ、それから人権と民主主義の遅れというふうに私
たちは整理をしています。
これを一々説明していくと大変なことになりますので、まず簡単に、この
三つの不自由というのは、まあ病気の治療で言いますと、表治法というか症状療法ですね、対症療法、それから
三つの遅れというのは根本療法というふうに認識していただきたいなというふうに思います。これらをやっぱり解決していかなきゃいけないということが非常な私
たちにとっての
課題であり、
社会と
地域の
課題にもなるのかな。また、私
たちはそういうふうなことをやっぱり踏まえていきながらいろいろと行動もしていかなきゃいけないなというふうな思いです。
さて、この今度の
バリアフリー新法の中で、やっぱり歩行、
移動の問題にどうしても触れなきゃいけないわけですけれども、私
たちが町を歩くときに、ここに
四つのバリアのことを書いてありますけれども、「落ちる、ぶつかる、つまずく、迷う、見えぬ歩行の四難儀」というふうになっていますけれども、これは、唱えていただければ七・七・七・五になっているんですね。三・四・四・三・三・四・五というふうにちゃんと言いやすく私はしているつもりなんですけれども、ここの中で、これを私
たちはまず解決していかなきゃいけないというふうに思っています。
落ちる、これは痛いですよね、当たり前、けが、もう一番これは落ちるのは困る。ぶつかる、これもしょっちゅうです。つまずく、迷う。これは
視覚障害者が、全盲の者が歩くということは落ちることであり、ぶつかることであり、つまずくことであり、迷うことなんですね。これが今の
社会の現状だと。これを解決していくのがこの
バリアフリー新法のはずだと私
たちは確信をしているんですけれども、これを、
法律を読んでいると、なかなかそういうものになるのかなというのが見えてこないというのが正直な私の印象なんですね。
その中でとりわけ説明をしなきゃいけないのが、まず駅の
ホームからの転落の問題です。駅の
ホームは欄干のない橋である、全盲者の歩行は綱渡りというふうにしていますけれども、正にそのとおりなんですね。
今日、
視覚障害者の仲間も傍聴に来ていますけど、ここに来ている人はみんな駅から落ちている、
ホームから落ちています。まあおしなべて、おしなべて半数、弱視者も入れて半数、全盲者も入れれば三人に二人が落ちているわけですね。毎日歩く
視覚障害者はどうかというと、これはもう九割方落ちていますね。私
たちの仲間は落ちてない人を探すのが大変。まあ昔はこう言われていまして、仲間で話すと、おまえ
ホームから落ちたことあると言ったら、まだと。まだ一人前の盲人じゃないねと。まだそれが続いているということです。
具体的に言いますと、去年の十一月にも、私
たちの知り合い、仲間が二人落ちているんですね。ここに、対策のところに書いてある
可動式ホームさく、この可動式というのが大事なんですよ。
というのは、十一月に一人落ちている男の人は東急池上線で落ちているんですが、ここは
固定式の
ホームなんですね。この
固定式の
ホームさくというのが危険でして、さくって付くと大体人が減るという策、対策なんですね。さくと言うと人が減るという対策。それで、
固定式は、これはくしの歯が欠けているように空いていますから、ここから
視覚障害者は落ちるんですね。池上線では、私の知る限り、四人ほどの仲間が落ちているんですね。こういうことからしても
可動式ホームさくというのは絶対必要です。
それからもう
一つ。そうはいっても、
可動式ホームさく、そう簡単に付かないよというふうになりますよね。そうすると、やっぱり、まあ言えば可動式じゃないところは落ちて当たり前なんです。そうなると、落ちるということになると救わなきゃならないですよね。そこにやっぱり人が要るんですね。
これは私の経験をちょっと
お話ししますけど、もう十数年前に私の目の前で
ホームから落ちた人がいたんですね。私もこういういろんな運動をやっているから、いやあと思ったけど、飛び降りて、まあ二人で上げようと思ったんですね。そうすると、上がらないんですよ、百二十センチ、百三十センチですね。いやあ、一回降ろして、どうしようかなと思って電車の向こう側を見て、来ないかなと思いながら、そうしたらもう一人降りてきたんですね。三人いたら上がったんです。ここで分かった、三人いりゃ上がるんだなということが分かりました。
それともう
一つは、
駅員さんがちゃんと電車を止めてくれる、そうしたらやっぱり私
たちも安心して、私
たちもじゃないけど、安心してそういうことができるわけですよね。そういうことを強く感じました。だから、やっぱり
ホーム要員必要なんですよね。だけど、実際は減っている。実際、私がその
現場のときにも
駅員さんはいませんでした。そういうことが状況だということなんですね。
次に、音響式信号機の問題です。
これも私
たちにとって非常に危ないところの
一つなんですけど、この信号があることによって、
視覚障害者は、まず横断
歩道があるんだな、それから今青信号なんだな、それから渡る方向がある程度、ある程度分かる。逆を言いますと、それも分からないで渡っているんですよね。それが
視覚障害者、とりわけ全盲の実態なんです。ここに対策、音の出る信号機を付けてほしいということが書いてあります。
私言っておかなきゃいけない。私の子供が生まれたときに、ちょっと出生届けに行こうと思って感じたことがあるんですよね。それは、私ちょっと見えるんです、〇・〇一ぐらいなんですけど。そうすると、信号見えなくて、車が同じ方向に渡ったんで、私もああ青かなと思って渡ったんですね。そうしたら、向こうへ行ったら人が立っているじゃないですか。ああ、しまったな、信号無視やっちゃったなと思ったんですね。でも、ちょっと何となく分からない、何となく不満が残ったんですね。考えてみたら、いや待てよ、おれ、信号無視してなかったな、そうすると、無視しているのは信号の方だなということに気が付いたんですね。つまり、
視覚障害者の存在、それでやっぱり渡らなきゃいけないということを行政の方がきちっと認識してない。まあ言葉はきついけど、無視しているということがあるんですね。それを私は強く思いました。
それから、私もう
一つ、子供と一緒に渡ったときに、ここは信号が青のとき渡るんだよと言ったときに、私はずっと待っていたんですね。そうしたら、ずっと、何か向こうに赤いのが見えたから赤信号だと思ったら、五分ぐらいたっても変わらないんでおかしいなと思ったら、子供が、お父さん、ここ信号ないよって笑ったんですけど、つまり信号が見にくくなっているんですね。それから、周りが赤い電気なんか一杯ありまして信号が分からないという状況が生まれてきています。
それからもう
一つは、これは将来的に
是非エスコートゾーンという横断
歩道の点字ブロックというのも
是非付けていくように、そうしたら安心して渡れていくなというふうに思っています。
最後に、私はまちづくりのことを考えるときに、まちづくりってやっぱり民主主義であり、
社会参加を進めるものなんだな、その到達点なんだなというのをよく思います。
一つだけ言わせていただきますと、
交通バリアフリー法で
エスカレーターができましたけれども、この
エスカレーターに点字ブロックで
誘導しない仕組みを国はつくっているんですね。そうするとどうなるかというと、階段のないところ、
エスカレーターだけのところには点字ブロックの
誘導がなくなってしまうんですね。点字ブロックは道ですから、私
たちにとって道がなくなるという状況が生まれています。今、町を歩く者にとって
エスカレーターはなくてはならないものですね。これを
是非視覚障害者にも使えるようにしていただきたいということを思います。
私は、今回の
法律で、後の方に
要望を一杯書いてあります。しかし、私
たちにとって、じゃどうなのかという辺りが非常に見えてこないということを思います。それは、この法の中に羅針盤というんですかね、羅針盤としての権利規定の問題、それから予算措置が、エネルギーがどうなるかという予算措置の問題等々がやっぱりあると思います。その辺を
是非議論していただいて、私
たちの安全な歩行
移動を
確保するような、そういう
法律に一歩でも前進させていただきたいというふうに思います。
どうもありがとうございました。