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2006-02-22 第164回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年二月二十二日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月十五日     辞任         補欠選任      犬塚 直史君     木俣 佳丈君  二月二十一日     辞任         補欠選任      富岡由紀夫君     島田智哉子君      広野ただし君     白  眞勲君  二月二十二日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     小林 正夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         西田 吉宏君     理 事                 岸  信夫君                 山東 昭子君                 西銘順志郎君                 大塚 耕平君                 佐藤 雄平君                 澤  雄二君     委 員                 田村耕太郎君                 伊達 忠一君                 谷川 秀善君                 中川 雅治君                 二之湯 智君                 水落 敏栄君                 大石 正光君                 工藤堅太郎君                 郡司  彰君                 小林 正夫君                 島田智哉子君                 白  眞勲君                 前田 武志君                 加藤 修一君                 大門実紀史君    事務局側        第一特別調査室        長        三田 廣行君    参考人        一橋大学大学院        商学研究科教授  小川 英治君        東亜キャピタル        株式会社代表取        締役社長     津上 俊哉君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (「多極化時代における新たな日本外交」のう  ち、日本アジア外交東アジアにおける経済  戦略東アジア共同体構築への対応)について  )     ─────────────
  2. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) ただいまから国際問題に関する調査会開会をいたします。  委員異動について御報告をいたします。  昨日までに、犬塚直史君、広野ただし君及び富岡由紀夫君が委員辞任をされ、その補欠として木俣佳丈君、白眞勲君及び島田智哉子君選任されました。  また、本日、木俣佳丈君が委員辞任され、その補欠として小林正夫君が選任をされました。     ─────────────
  3. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査会調査テーマであります「多極化時代における新たな日本外交」のうち、日本アジア外交に関し、東アジアにおける経済戦略東アジア共同体構築への対応について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  なお、本日は、一橋大学大学院商学研究科教授小川英治参考人及び東亜キャピタル株式会社代表取締役社長津上俊哉参考人に御出席いただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本調査会では、日本アジア外交について重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、本日は、東アジアにおける経済戦略東アジア共同体構築への対応についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、小川参考人、津上参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いをいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、小川参考人から御意見をお述べいただきます。小川参考人。よろしくお願いします。
  4. 小川英治

    参考人小川英治君) ただいま御紹介いただきました一橋大学小川です。よろしくお願いいたします。  東アジアにおける経済戦略東アジア共同体構築への対応というテーマで話をさせていただきますけれども、私の研究専門国際通貨専門としておりますので、通貨面から見て、この東アジアにおける経済戦略及び東アジア共同体構築への対応について意見を述べさせていただきたいと思っております。  お手元に私が御用意させていただきました一枚紙があるかと思いますが、そちらに沿って御説明をさせていただきますけれども。  まず最初に、一番下のところを見ていただきたいんですけれども、恐らくこの調査会では日本の取るべき戦略議論されているかと思うんですが、その議論の、どういう視点で、あるいはどういうことを考えたらいいかということを私、述べさせていただきますけれども、そのときに、ヨーロッパ一ついい参考になるかと思います。  それから、先ほど控室でお話を伺っていたんですけれども、既にヨーロッパの方に視察に行かれているということですので、恐らくヨーロッパ経験ということは皆様御存じかと思うんですが、そのときに、そのヨーロッパでは、今EUに入っている国がドイツイギリス中心にしてございます。その一方、通貨という観点でいきますと、EUの一部の国で、十二か国でユーロという共通通貨を使っています。で、その通貨を使っているのはドイツ中心とした十二か国ということです。  そうしますと、今ヨーロッパでは、この私のレジュメの下に書いていますように、ドイツのように、EUに入っていて、しかもユーロを使って、しかもユーロハードコアとしてそのほかの国を引っ張っている国、そういうドイツ。それと、ユーロは使っていないんだけれどもEUに入っている国、EUに入っているという意味は、自由貿易協定あるいは関税同盟を結んで、貿易の面ではほかのヨーロッパの国と一緒にやっているんだけれども通貨の面では一緒にはやっていないというイギリス。それから、同じヨーロッパでもスイスのようにEUに参加していないという、そういう国があります。で、日本は、このヨーロッパでいうドイツ型でいくのか、イギリス型でいくのか、あるいはスイス型でいくのかということをやはり考えていかなければいけないというふうに私、常々考えております。  そういうことで、私からは通貨の面に焦点を当ててお話をさせていただきますけれども、このドイツ型、イギリス型、スイス型、これどれを選ぶのかというのは、恐らくここにお集まりの皆様方が考える、あるいはいろいろ御議論いただくところになっていくかと思いますので、そういう意味でこの三つの選択肢というのは考えていただきたいというふうに思います。  それでは最初の、上の方から順番に私からの意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、東アジアにおいて特に通貨面で、通貨協力あるいは東アジア共同体の中で通貨議論をするときの一番の問題になったきっかけというのは一九九七年のアジア通貨危機です。  そのときにどういう反省があったかといいますと、ほとんどすべての国がドルペッグ制ドル自分の国の通貨を固定するという、そういう制度を取っていました。じゃ、そのドルに固定する、要するに自分の国の通貨ドルに安定化させるということがメリットになるケースというのは、アメリカとだけ貿易をしていればそのアメリカとの貿易が非常に安定化するということになります。しかし、東アジア国々は、アメリカだけではなくてヨーロッパとも貿易をしておりますし、あるいは域内貿易も盛んになっています。特に、東アジアの中で生産ネットワークができ上がりつつあります。  例えば、トヨタがタイに工場を造ると、で、その部品はフィリピンから持ってくる、あるいはインドネシアから持ってくるということで、いろんなところで分業して、そしてタイで組み立てるというようなことで、効率的に生産を行っているという状況にあるわけです。そういう中で、その通貨の問題を考えたときに、アメリカとの貿易だけを考えてドルに固定するというのはやはり間違いであるということがこの一九九七年のアジア通貨危機教訓だということです。  それからもう一つは、やはりその東アジアの中で、お互い通貨当局の中で健全な政策を行っているかどうかということを議論しようということで政策対話が始まっております。あるいは、更に進んで、お互いに監視し合うというサーベイランスも必要だという認識があって、その国内GDPとかインフレとか、そういう国内経済変数についてサーベイランス相互監視をするということも行われているわけです。そういうまず環境にあります。  それからもう一つは、貿易面においては、FTAそれから日本中心に行っているEPAが進展しているということがあります。ただ、まだ十分にFTAEPAが締結されておりませんが、これが将来的にほぼすべての国と東アジアの中でFTAEPAが結ばれていきますと関税がゼロになっていくという、そういう状況になります。  関税がゼロになっていったときには、貿易面において障害になるのは為替リスクあるいは為替交換取引費用というものが問題になってきます。皆さんヨーロッパに行かれたときに、ユーロを使っている十二か国を一つずつ回っていくと、もし手数料がそこで五%ずつ取られていけば、持っていったお金が半分以下になってしまうということがあるわけですが、今ユーロを使っている十二か国ではもうそこの交換コストがありませんので、交換コストが非常に節約できるという問題があるわけです。  ということで、今、日本あるいは韓国あるいは中国FTAEPAをそれぞれの立場から進めておりますが、それが進んでいった暁には、為替の問題というのは非常にクローズアップされてくるということがあります。  では、その東アジアにおいて、通貨の面で、為替相場制度の面でどういう状況にあるかということを簡単に説明させていただきたいと思います。  為替制度分類におきましては、IMFが分類をしております。その分類では、ここに、レジュメにありますように、変動為替相場制度から管理フロート制ドルペッグ制カレンシーボード制ということで、様々な為替相場制度東アジアで採用されています。  具体的には、日本韓国フィリピン変動為替相場制を採用しています。それから、管理フロート制を採用しているのはタイあるいはインドネシアなどです。それから、去年の七月二十一日に中国がそれまでのドルペッグ制から管理フロート制に移行しております。そういう意味で、去年の七月二十一日以降、中国管理フロート制分類になります。それから、マレーシアも、中国管理フロート制に移行した同じ日にドルペッグをやめて管理フロート制に移行しているということです。  そういう意味では、ドルペッグ制は今は形式上はないんですけれども、じゃ実際、中国あるいはマレーシアが真の意味での管理フロート制に移っているかといいますと、それほどドルとの為替レート動きは出ていないということで、実際には、このドルペッグ制管理フロート制の間ぐらいのところに中国マレーシアはいるかと思われます。  それから一方、カレンシーボード制、これは自国の金融政策を自由に行うことを捨てて外貨準備に合わせてその為替国内金融政策を行うという制度カレンシーボード制です。これは、香港それからブルネイがこれを採用しているということです。  今御説明さしていただきましたように、東アジアにおいて為替相場制度が、これほどいろいろな為替相場制度が存在しているということを皆さん気付いていただきたいと思います。  この結果、どういうことになるかといいますと、例えば、中国ドルに固定していると、一方、日本が自由に変動しているという状況において、円ドルレート動きますと、例えば円高ドル安になりますと、中国人民元ドルに固定していましたら人民元ドル一緒に安くなるという状況が起こるわけです。すなわち、円高ドル安が中国ドルペッグ制のために円高人民元安が起こるということになります。これは、円だけではなくて、韓国ウォンあるいはタイ・バーツあるいはシンガポール・ドル、これらも最近、日本円と同じように高めに動いています。そうしますと、人民元だけ安くなってほかの通貨が高くなるという状況がこの為替相場制度の違いから発生するということが起こっているわけです。  ということで、この東アジアにおいて様々な為替制度が採用しているということの問題点が指摘できるかと思います。  この(2)で為替相場政策実態ということで、今申し上げたように、例えば中国が去年の七月二十一日から、人民元通貨バスケット、すなわちドル、円、ユーロ、それから韓国ウォンなどのバスケットに対して、バスケットを参照しながら為替政策を行うということを発表いたしましたが、実態は九〇%以上、ドルにウエートを置いた為替政策を行っているというのが事実になっております。  そういうことで、三番目の中国為替相場制度の改革ということで、通貨バスケットを参照とした管理フロート制へ移行するということを七月二十一日に発表いたしましたが、実際はそうではないということをここで指摘させていただきたいと思います。それは、従来から中国ドルペッグ制を採用していたと、そこからより柔軟な為替政策に移行するかのように思われたわけですが、実際にはそれほど大きな変化は見られないということです。  中国為替相場政策の現実を実証分析データを使いながら分析をいたしますと、ドル人民元相関係数連動性は、一というのはもう全く同じように動いているというのがその連動性状況なんですが、それが若干下がって九割ぐらい同じような動きをしているという状況です。これは確かにその変化はあったということが見付けられているわけですが、しかし経済学的には非常に小さな変化、あるいはこの九〇%、ドルと連動しているというのは余りにもドルに連動し過ぎているんではないかということが言えます。  例えば、中国貿易をしている相手の国あるいは地域との、それからそれとのシェアを見ますと、直近二〇〇四年のデータで、中国日本貿易をしている、輸出プラス輸入の、貿易している量は大体中国において日本向けは一五%です。同じくアメリカ向けが一五%、それからヨーロッパ向けが一五%ということです。ですから、アメリカ向け輸出プラス輸入というのは一五%ほどしかないにもかかわらず、為替レート変動というのが、連動性というのがドルと九〇%もあるという非常に高い連動性が見られるということです。  これが、先ほど東アジア通貨をめぐる環境のところで、アジア通貨危機教訓のところでドルペッグ制度の弊害ということを申し上げましたが、中国はその問題をまだ抱えているということがあります。まず、それが三番目で言いたいことです。  それから四番目に、アメリカ経常収支赤字の問題をやはり考えておく必要があると思います。  今、通貨の面では、世界インバランス、不均衡の状態にあるというふうに言われております。皆さん御承知のように、アメリカではGDPに対して六%以上の経常収支赤字になってます。一九八五年、プラザ合意があったときに非常に大きな円高で調整したという一九八五年のときに、あのときアメリカ経常収支赤字GDP比で三%ほどしかありませんでした。今の半分ぐらいのところです。その半分のところでも、プラザ合意を行って、当時、一ドル二百四十円ぐらいから一ドル百二十円ぐらいまで円の価値を二倍にする、ドル価値を半分にするという、そういう対応をしたわけです。  そういう深刻な経験を我々したわけですが、そのときの水準に比べて今アメリカ経常収支赤字は非常に大きくなっているという状況にあるわけです。だけれども、それが余り問題にならないのは、今アメリカ経常収支赤字をファイナンスする、十分にファイナンスするだけの資金が流れ込んでいるということがあるわけです。  ただ、この資金が入ってこなくなったときにはドル安が発生する可能性があると。そのドル安が発生したときに、例えば日本あるいは韓国のように変動相場制を採用している国は、ドルが下がるのに対して円が高くなる、あるいは韓国ウォンが高くなるということが起こるわけですが、人民元ドルに固定してますのでドル一緒に下がってくるということが起こるわけです。すなわち、アメリカ経常収支赤字の問題が発生したときに、東アジアの中で様々な為替制度を採用しています、特に中国などは固定相場制を採用していると。そういう状況の中で、円高人民元安あるいは韓国ウォン高人民元安という、そういう問題が発生してくるということが起こってきます。  そういうことで、ドル安が今後起こってくる可能性が考えられますので、それをアジアでどう対応するかというところでは、それぞれの国でばらばらの動きが出てくる可能性があるということです。  ということで、五番目に指摘させていただきたいことは、為替相場制度選択において、今、協調できないという、協調の失敗が起こっているという問題があります。様々な為替相場制度が採用されているということで、域内為替相場が、例えば円・人民元レートあるいはウォン人民元レートが不安定になるというそういう状況、そういう問題が今起こっているんだということです。  ということで、この中国為替制度の問題、非常に大きな問題になりますし、それからその中国為替制度選択が、先ほどマレーシアが去年の七月二十一日に中国に合わせて為替制度を変えるという発表をしていると、そのこと自体、中国為替政策がほかのアジア国々に影響を及ぼしているということになるわけです。ということで、この東アジアにおいて様々な為替制度が採用されていて、それが為替域内為替レート不安定性を呼び、さらに、域内生産ネットワークが今築き上げられつつあるわけですが、そこに不安定要素を及ぼすという可能性があるわけです。  そういう状況の中、東アジアでは通貨協調を行おうということが議論され、実際行われております。幾つかのイニシアティブがあるんですが、特に通貨面においては、チェンマイタイチェンマイで締結されましたチェンマイ・イニシアティブというものがあります。これは、通貨危機になりましたら、通貨危機になったときにそれをどう管理するか、その危機をいかに小さくするかということで、通貨スワップ協定というものが結ばれております。金額的には五百八十五億ドル協定が結ばれています。これは、危機になった国に対して危機になってない国がお金を貸してあげますという協定です。  このチェンマイ・イニシアティブは、そういう意味では通貨危機になったらどう対応するかという、その通貨危機管理対応になるわけです。しかし、通貨危機になってからではいろいろな問題が発生してきます。ですから、通貨危機を予防するための方策が必要だということが議論されています。  その通貨危機を予防するためにはどうしたらいいか。それは、日ごろからお互い政策対話をしながら、あるいは相互監視をしながら、例えばまずい政策を、例えばインフレを非常に高くしているような国に対してはそれをやめなさいと、あるいは財政政策赤字を非常に大きくしているような国についてもそれは問題だという、そういう議論をすべきだということで、この通貨危機予防のためのサーベイランスチェンマイ・イニシアティブで取り上げられて、実際に行われています。  しかし、実際にこのサーベイランスで扱われているものは国内マクロ経済変数、例えばGDP、例えばインフレ率というものを対象にしております。しかし、通貨の問題といいますと、やはり為替相場為替相場が異常に高くなってるとか異常に低くなってるというところをやはりお互い議論するべきなわけですが、それが議論されていないということがあるわけです。  そこで、今、東アジア共通通貨単位をつくろうという議論が起こっております。マニラにありますアジア開発銀行でも、あちらでは、エイジアン・カレンシー・ユニット、アキューというふうに呼んで、ACUというふうに呼んで、共通通貨単位の導入を考えております。それから、ここにAMUと書いておりますのは、これは私が経済産業研究所の方でこの通貨単位を、アジア通貨単位をつくって、ホームページ上で週に一回データを更新して発表しているものなんですが、このエイジアン・マネタリー・ユニットというものを提案さしていただいております。  アジア開発銀行ACUアキューも、それから私がここで説明さしていただいているAMUも、アジア通貨加重平均値としてのアジア通貨単位というものです。これがどういう意味を持つか。要するに、アジア通貨加重平均値、ここから自分の国の通貨がどれほど離れていったかということを見ることによって、どこの国の通貨が非常に下がっているのか、あるいはどこの国の通貨が非常に高くなっているのかということがすぐ分かるということがあります。  ここに御用意すれば良かったんですけれども、ちょっと御用意できなかったんですけれども、経済産業研究所のホームページ見ていただきますとグラフがありまして、現在のところでいきますと韓国ウォンが非常に高くなっております。それから、フィリピン・ペソが非常に安くなっている。その二つの間は過去三年前の基準から見て三〇%ぐらい離れて、お互いに上へ行くのと下に行くのの間で三〇%ぐらい乖離しているということが起こっているわけです。そういうその通貨の、同じ東アジアの中でそういう乖離状況が起こっていて、しかもそれを一目瞭然で分かるこのAMUという単位を見ながら政策対話、あるいはサーベイランスをしていく必要があるだろうということです。  そういう意味で、この東アジア共通通貨単位というのが、このチェンマイ・イニシアティブの発展した形としてサーベイランスの中で乖離指標として議論されていくということを私自身望んでいるところです。これは、将来的にはヨーロッパにおけるECUユーロになりましたように、将来的にはその介入通貨に使われたり、あるいは民間で利用されたり、今アジアボンドイニシアティブというものが進められていて、その中で共通通貨バスケットアジアボンドを発行できないかという議論もあるわけですが、そこでこういう単位を使うということが考えられます。更に進んで、将来ユーロのようなアジアにおける共通通貨に発展していくという、そういう可能性も秘めているというふうに考えられます。  そういう動きがある中、では日本ではどういう対応をすべきかということがやはり問題になるかと思います。ヨーロッパの例を出さしていただきますと、ユーロが導入される前はヨーロッパEUの中でエキュー、ECUと、ユーロピアン・カレンシー・ユニットというものを使っていました。それは、ほかの例えばマルクとかフランとかありましたので単に通貨単位として存在していたわけですが、ただ、その通貨単位の計算は、先ほどAMUで説明させていただいたようにヨーロッパでもECUに参加している国の加重平均値ということで計算しておりました。当然その中にドイツマルクも入っておりますので、ドイツとしては自分ドイツイニシアティブを取って、ドイツは昔から第一次世界大戦の後のハイパーインフレ経験がありますので、通貨を安定させるということに非常に重きを置いていた国です。そのドイツがほかのインフレのことを余り考えない弱い通貨一緒になるのを嫌っているわけですが、ただ、一緒になったからには自分イニシアティブを取って、ECUあるいは将来のユーロを強い通貨にしていこうということで、ドイツイニシアティブを取って通貨統合に進んでいくということがあるわけです。  では、アジアでそういうイニシアティブを取れる国、それから安定した通貨価値を持った国、それから国際通貨として使われている通貨はどれかというと、今は円しかありません。そういう意味では、日本がそこでイニシアティブを取ってアジアにおける唯一の国際通貨としての円というものを、それを中心アジア共通通貨をつくっていくということが必要だと思います。これは日本にとってだけ必要というのではなくて、アジアにおける将来通貨危機が発生するのを予防するとか、あるいはアジア経済発展を考えていくということで必要かと思います。  ということで、その最後、東アジア通貨同盟に向けてということで、今チェンマイ・イニシアティブを発展させてサーベイランスを行うと、その中でサーベイランスの中で為替相場を見ていくべきだということを私自身主張させていただいているんですけれども、その中でAMUあるいはアジア開発銀行が言うACUというものをつくり出し、それを将来発展させていくということが考えられます。  さらに、その発展していく段階の中で、日本の役割はどういう役割を果たすべきかということが問題になるかと思います。  先ほど最初に私がドイツ型かイギリス型かスイス型かということを申し上げましたけれども、日本の取るべき道は、ドイツのように、アジアにおいて経済統合それからあるいは貿易の自由化、そういうところでイニシアティブを取っていくという中、通貨の面でもイニシアティブを取っていくのか、あるいはイギリスのように、経済統合のところには参加するんだけれども通貨については外にいるのか、あるいはスイスのように、全くそういうところには参加しないのかということがやはり問題になるかと思います。  私の個人的な意見としては、やはりアジア経済発展、これはどこの国が引っ張っていくか。もしかすると将来、中国が引っ張っていく可能性もあるかと思いますが、ただ、技術の面あるいはノウハウなど、あるいは政策の面のノウハウの面では日本が進んでおります。先ほど円が唯一の国際通貨と言いましたが、よく人民元がこれから国際通貨としてアジアで支配的になるんではないかという議論がありますが、今、中国では為替管理をして人民元を外国で使わせないようにしています。そういう状況ですから、人民元国際通貨になるということは当座はあり得ません。しかし、中国がある程度経済発展して、為替管理も撤廃するということになったときには、もしかすると人民元アジアにおいて支配的な地域通貨あるいは国際通貨になる可能性があるかと思いますが、現状では円が唯一、国際通貨ということになるわけです。ですから、そういう意味で、日本が主導権を持って、中国とあるいは韓国とあるいはASEANの国々協力しながら通貨協調あるいは通貨の、通貨政策のコーディネーションをしていく必要があるんではないかと思っております。  ということで、私の個人的な意見としては、ドイツ型の、ヨーロッパにおけるドイツ型の国として日本は進んでいくべきではないかというふうに考えております。  私からの意見は以上です。
  5. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) ありがとうございました。  次に、津上参考人から御意見をお述べいただきます。津上参考人
  6. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) 御紹介いただきました東亜キャピタルの津上でございます。本日はお招きいただきましてありがとうございます。  私、元々は経済産業省の役人上がりでございまして、この委員会室にも何度もお邪魔したことがあるんですが、大体定位置は壁際の席でございまして、ちょっとこちらのメーンテーブルに座ったのは初めてなものですからちょっと緊張しております。よろしくお願いいたします。  お手元にちょっとグラフなんかの入りました資料をお配りしてあると思いますので、これに従って御説明をさせていただこうと思いますが、最初に少し数字を、何というか、押さえていきたいというふうに思っております。日本にとって中国経済というものがどういうことになってきたのかという、この十年間ぐらいの変化をちょっと見たいということでございます。  まず、二ページでございますが、中国は最近ですと九%であるとか八%であるとかというふうな高い経済成長率をずっと続けております。この中国の数字が、統計数字がどこまで信用ができるのかという問題もなくはないわけでありますけれども、この大きな成長に伴って、外から見た中国経済のサイズというのが非常に急激に大きくなっているということがございます。  特に、昨年の十二月でございますが、中国が第一回の経済国勢調査といいますか、経済センサスですね、の結果を発表し、これに基づいて、もう既に発表済みの、何というか、既往の統計数字についても修正を行うということがございました。前々から中国GDP統計というのは、これはちょっと三次産業であるとか新しく生まれた新興の私営企業とかというところが全然捕捉できてないんではないかというふうな、何というか、疑問が国内からも寄せられておりましたものですから、そこを反映して、全国何百万人かの、何というか、調査員を動員して、経済事業者といいますか、事業所をもう一遍洗い直したわけでございます。そういうことの結果、果たしてやっぱり捕捉が弱かったということが実証された形になりまして、GDPが二〇〇四年の数字、既に発表してあった数字に比べて約一七%膨らむという修正結果が発表されたわけであります。  この数字を、ちょっと少しおかしいんですが、今の為替レート、最近の為替レートで比較をした場合に、中国GDPというのが約、日本の半分に達したのかなという気がしております。ちなみに、同じような数字を九〇年代の後半からプロットしたグラフがそこにございますが、九〇年代の後半の一時期、簡単に申し上げますとということで私などがよく使っておりました数字は、中国GDP日本の五分の一でございますという数字を使っておりました。今から三、四年前には、日本の三分の一でございますという数字を使いました。なんですが、これからは日本の半分ございますというふうに、何というか、言わなければいけない時代になったのかなと思います。  この上方修正と、もう一つ急激に二〇〇四年ぐらいに半分に近くなったという原因がございまして、それは円の為替レートが対人民元でこの一、二年の間に大分下落をしたということがございます。円は人民元に対しては少し下がったわけでございますが、この二つの要因から一挙に半分になったということでございます。  ちなみに、二〇〇五年の、去年の通年のGDPの数字というのが中国ではもう発表になっております。日本はまだ発表になっておりませんが、仮に日本が二%ぐらいは成長しておるというふうに仮定をして仮の計算をしてみますと、もうこれは明確に五〇%を超えております。そういう意味では、中国日本の半分の経済サイズの国になったという時代になったと思います。これはちょっと今まで私どもが予想しておりましたよりも速いペースで中国経済サイズは日本に追い付いてきている。今後を展望しますと、日本GDP中国に肩を並べられる時期というのは十五年から二十年ぐらい先かなというふうな予測を前しておりましたけれども、もう少し早いなと、十年ちょいぐらいで肩を並べられることになるかもしれないと、人民元為替レートの上昇が速ければ十年掛からないかもしれないというふうな感じがしてきております。  三ページをおめくりいただきたいと思いますが、こういう中国経済成長によりまして、日本貿易構造というものにも非常に大きな変化が生まれております。輸出と輸入を合計しました貿易総額で、おととし、二〇〇四年、中国アメリカを抜いて日本の最大の貿易相手になったというニュースがちょうど今から一年ぐらい前に大分新聞なんかでも大きく出たわけでございます。それを示しているのがその四つのグラフの左上のグラフでございます。二〇〇五年の数字ももう出ましたが、更に、何というか、アメリカとの格差を広げて第一位という貿易相手でございます。  それから、右上のグラフは、これは日本からの輸出を国別に見たものでございますけれども、貿易総額が大きいのは要するに中国からの輸入が大きいせいだという部分が結構あるわけでございますが、それだけではございません。輸出先としての中国も急激に拡大をしております。中国との貿易を論じますときに、いずれにしましても中国足す香港というのが正味の中国との貿易というのに近い数字でございますので、この中国プラス香港という数字を使ってよく議論をするわけでございます。  ただ、この中国プラス香港ではなく、大陸だけに絞った日本の通関統計の数字をその一番赤色の帯グラフで示しているわけでございますが、二〇〇〇年に、このグラフはドル表示でございますが、財務省の元々のその円表示の対中輸出額が三兆円ございました。これが二〇〇三年、わずか三年後に倍の六兆円になりました。昨二〇〇五年には八兆円というふうな形で増えております。  小さな国相手の貿易は大きなプラント輸出が一件あるとどんと何倍増みたいなことが起き得るわけでございますが、元々三兆ある根っこが三年で倍になったというのは恐らく日本貿易史上これまでなかった出来事だろうと思います。ちょうどこのころ日本はデフレスパイラルのがけっ縁に立っておるというふうなことで、大変苦しい時期でございましたけれども、まあ企業が苦しいリストラをして大分固定費が下がって減量経営ができたというところに売上げの増大をもたらしてくれたというのは、この対中輸出の激増だったわけであります。  今、日本の対中輸出額、これは中国プラス香港の合計額ということでいうと、対米輸出の八五%ぐらいまでの数字になってきております。向こう二、三年の間には輸出額ということでも日本の最大の輸出先ということになる可能性が高いのではないかなというふうに思っておりまして、まあ中国経済というものが日本経済に持つ意味というのはかくのごとく非常に大きくなっているということでございます。  四ページ、ごらんいただきますと、その貿易の内訳が財別に示してございますが、この中で申し上げたいことは、昔の日中貿易というのは原材料を中国から輸入して日本が製品を輸出するという典型的な垂直分業の輸出構造だったわけでありますが、最近はこれが随分変わってまいりました。日本から中国へも、中国から日本へも、お互いに資本財あるいは製品、こういうふうなものがどんどん伸びておるということでございます。そういう意味で、水平分業型の、何というか、貿易構造に急速に変わっているということでございますが、まあこれは取りも直さず、日本の多くの日系企業が現地に進出して国境をまたいだ親子間取引をしているというふうな意味で、まあ日中経済というのが更に深く有機的に結び付き始めたということの一つの表れかなと思います。  五ページをおめくりいただきたいと思います。  昨年、まあ反日デモがあったりとか、中国経済が非常に過熱してバブルっぽいというふうな、何というか、その見方が広がったりというふうなことで、まあ中国の時代は終わったと、これからはインドあるいはブラジル、ロシアの時代だというふうな、何というか、マスコミ論調がかなり台頭をした一時期がございました。  で、中国の時代は終わったというこの認識についてでございますが、九〇年代の後半、このころを思い出しますと、世界で一番コストの安い生産国としての中国生産を移してコスト削減を図ると、こういうふうな、何というか、まあ動機による対中投資みたいなものが非常に多かったわけでございますが、もう今日、中国は決して一番コストの安い生産国ではもうなくなっております。そういう観点からいうと、ローコスト生産をするための投資というふうな、そういう意味での中国の時代はもう終わったというのは、これは確かだと思います。  また、日本がこれだけ国際化して、その国際経済の中に参画していく中で、よく言われる例えで、一つのかごに卵を全部入れるなと、分散をしろと、リスクヘッジをしろという言い方がございますが、私もこの考えには賛同いたします。全部を中国に、何というか、投資をするというのは、これはリスクが高過ぎる、ある程度分散をした方がいいという気も私はいたします。なんですが、以上申し上げた上で申し上げるならば、その一足飛びにもう中国の時代ではないというふうに言うのは大きな誤りだと思います。それは、マーケットとしての中国という側面を忘れた議論だからであります。  このマーケットとしての中国というのを、まあ先ほどの日本の輸出額という観点から見てみますと、この右のグラフのようなことになります。  今の日本の外需というのは、このグラフからも明らかなように、アメリカ中国という東西両横綱によって支えられております。で、それに対して、ほかのインド、ブラジル、ロシア、あるいは最近人気が高いと言われるベトナムも含めてでありますが、ここへの輸出額というのは対中の輸出額の二十分の一以下であります。仮にこれらの右側に並んでいる国が今後その中国の例えば倍のスピードで成長する、あるいは日本の輸出額が中国向けの倍のスピードで成長するとしても、この一対二十以上という大きな差を埋めるのは一体何年掛かるんだろうかということを考えますと、やはりマーケットとしての中国というものは極めて重要でありまして、まあここからどれくらい日本が受益をしていけるのかというのが、やはり日本経済の盛衰をますます左右する重要な課題になるんではないかと思います。  以上、ちょっと数字を申し上げましたけれども、全体として申し上げたいことは、今その中国経済が台頭しているというのは、これはまあ中国国内では多々問題をはらんではいるのも事実でございますが、恐らく世界経済の中で一世紀に一つ起きるか起きないかというぐらい大きな出来事でございます。二十世紀には、まあその世紀の後半に日独の奇跡の復活みたいなものがありました。十九世紀の後半にはアメリカの台頭というのがありましたが、まあそれと同じぐらいのマグニチュードを持つ動きが今中国では起きていて、日本はその隣に位置するという立場にあります。  WTO加盟を中国が果たしたときにどこの国が一番得をするだろうかと世銀が九〇年代の後半に内部調査のレポートをまとめたことがございますが、まあこの中で最大の受益国は日本になるであろうというふうに予言をいたしたわけでありますが、先ほどのその三年で三兆円が六兆円になったというふうな、こういうふうなファクトを踏まえますと、世銀のレポートというのは正しかったのかなという気がしております。  六ページへ参りますが、じゃなぜこんなふうに急激に、何というか、日本中国からのその受益というのが大きくなっているかということでございますが、私は事実上の経済統合というのが日中間で音を立てて進んでいるせいであるというふうに考えております。  経済統合というと、FTA自由貿易協定というのが昨今、随分と論じられるようになっておりまして、日本は東南アジアとの関係ではまあかなりある意味では進んできたと言えるわけでございますが、この日中の自由貿易協定というのは余り論じられない話題でございます。  二つ理由があると思います。一つは、やっぱりこういう議論をするときには、二国間関係がまあ非常にいいムードであるというふうな必要がございますので、今はちょっと残念ながらなかなかそういうふうな将来の夢を語り合うという状況にないということがございますが、もう一つの理由は、これは日本中国お互いお互いにとって特大サイズの経済パートナーなもんですから、仮にこのFTAが実現すれば、メリットも特大でございますが、弱い産業が受ける痛みというふうなデメリットも特大であります。局所的に物すごく強い痛みを伴うような意思決定というのは、これはやはりどこの国でも政治的に難しいというふうな事情がありますので、なかなか政治の日程表にはこういうふうな日中FTAみたいなものは載ってこないと。ある意味でまあかなりちょっと仕方がない話でございますし、逆から言えば、日中FTAが仮に実現するということになれば、東アジア経済共同体みたいなものはもう百里のうちの八十里、九十里は来たも同然というぐらい大きなアチーブメントでございますから、それはそんな簡単には実現できぬだろうという気もするわけであります。  ただ、他方で、こういう条約を結び合うというふうなFTAがなくても、経済実体としては事実上の経済統合が物すごい勢いで進んでまいりました。先ほど見た数字は正にその結果としてあるわけでございますが、この事実上の経済統合もFTAと似たところがありまして、痛みもあればメリットもあると、そういうふうなものであろうと思いますが。  大きな違いは何かというと、FTAはこれは条約の締結ですから、結ばないと思えば結ばないで済むわけでありますが、事実上の経済統合は神様の見えざる手が勝手に進めるものでございますので、人間の力で止めようと思ってもなかなか止まりません。  そういうふうな中で、例えば労働集約型の国内産業がどんどん中国へ移転してしまうというのは、これは日本にとってはデメリットなわけでありますが、こういうデメリットがどんどん発現をしていってしまうということならば、そのメリット、デメリットの帳じり、これを赤字にしないと。経済の衰退を防ぐために日本がしなきゃいけないことは何かといえば、この事実上の経済統合から日本が得られるメリット、得べかりしメリットをもう極力たくさん取っていくということではないかというふうに思うわけでございます。  そういう観点からいいましたときに、私は個人的には現状日本が得ているこの統合による中国からのメリットというのは少な過ぎると思っております。ただ、その少ないという理由は、別に中国がけちだからとばかりは言えないわけでありまして、日本側が取ろうと思えば取れるんだけれども、自分で取りに行ってない、取る気になってないというふうな日本側に起因する部分も非常にあるんではないかなと思っております。  七ページにその辺りのことを少し述べてございますが、例えば、やろうと思えばできることとして、中国にも今非常にたくさんのお金持ちが出てまいりました。比率はまだ小さいですが、母数が十三億もいるものですから、富裕層というだけでも大変な人数になってまいりましたが、こういうお金持ちの中国人に、日本観光にもっと来てもらうということがございます。三、四年前にこれを言うと、外国人犯罪とかどう考えているんだというので随分非難を受けたものでございますが、最近は大分様子が変わってまいりまして、各地の、特に西日本の観光地、あるいは北海道なんかでは中国からのその観光誘致ミッションというふうなものをどんどん地域で出すようになってきております。  恐らく、今起きてることというのは、三、四十年ぐらい前にJALパックなどという観光商品ができて、日本人が団体で、何というか、欧米に観光旅行に行き始めたころ、あれとまあかなり似てるんだろうと思います。まあ、あのときにも、恐らく日本は、何というか、なかなか先進国のマナーや風俗になじめない、何かこう田舎っぺの観光客をやっておったんだと思いますが、その当時、欧米はお金を落としてくれる日本人観光客を、何というか、迎えるために、日本語のできる店員をそのお店に並べてというふうな努力をしたわけでございます。同じ時の巡りというのが今、日本中国の間に来てるんではないかなと思います。  あるいは、もっと微妙な問題としては、政府は外国から日本への直接投資を増加させようということをしておりますが、この中に、じゃ中国からの直接投資というのは入るのかという問題がございます。新しく工場を建ててくれるというふうな投資であればどこの自治体も大歓迎ということでございましょうけれども、多くの場合、対日直接投資は既存企業の買収という形でやってまいります。その方がよっぽどメリットがある。  ただ、それは、端的に言えば、買収されたら翌日からは中国人が社長になるということを意味するわけでございまして、それを受け入れる従業員ほか日本側のその心の準備というのはできているのかという問題がございます。これも、従来は、何というか、上司に抱こうと思ってなかったような人が急に上司になるというのは、仕える側にとっては非常に心の戸惑いを伴う話でございます。  ただ、この点についても今から二、三十年前、まあ企業買収ではなかったですが、日本の自動車メーカーが欧米に進出を始めたときに、現地のワーカーたちにはやっぱり同じような戸惑いがありました。黄色人種が我々のボスになるというような戸惑いであります。なんですが、そういう皮膚の色、あるいは民族の違いということがあるので、欧米諸国はそういう日本からの投資を歓迎しなかったかというと逆でありまして、元首まで繰り出して壮烈な誘致合戦を繰り広げたのは皆様御存じのとおりでございます。  それ以外にも、幾つかの例があるんですけれども、共通することは何かというと、今までそういうふうな相手として中国を我々は見てこなかったということによる若干その心の戸惑いといいますか、あるいはそこに、何というか、思いが至ってなかったと、考えたことがなかったというふうな、そういうふうな、何というか、心理的な対応の後れみたいなものが共通して日本中国の間にはあるんではないかと思います。  そういう目で見ると、これまでの日中経済関係というのは何でも日本人が主語、中国人は客体と、こういうふうな何というか関係でございましたが、そういうふうな時代が終わろうとしているんではないかと思います。  もっと目を外に広げると、欧米の先進国というのはどこを見ても自国経済を全部自国民でやろうなどという、そういう国柄の先進国というのはほかのどこを見てもないわけでございます。多くはやっぱり自国を場所として貸して、そこに外国人に来てもらって、雇用を創出してもらって税金払ってもらってというふうな、そういうふうな場所を提供するという、こういう部分が国によっては二割、三割。そういうふうな形でほかの先進国は経済を運営しております。  だとすると、日本だけ同じようなことをやらなくてやっていけるのかしらという気もするわけでございます。ウィンブルドンナイズという言葉をちょっと勝手に作りましたが、御案内のとおり、ウィンブルドンのテニス大会というのは、場所はイギリスですが、セミファイナル以降はイギリスの選手なんかだれも残ってないというふうな、そういうふうな状況をやゆした言葉でございますが、私は、現状の日本はちょっと余りにも島国的に偏り過ぎていると。もう少し重心をウィンブルドン化して移した方が、日本にとってもっと、何というか、利益のあるような、そういう明日が来るのではないかという気がいたします。  八ページへ参りますが、日本中国経済関係。中国が特にWTO加盟をしました。それから、中国経済レベルが相当上がってきて、前のようなもう目のくらむような経済格差が大分縮小してきたという中で、日本中国経済往来というのは随分と昔に比べてやりやすくなっております。貨物の移動、資金の移動、情報、技術の移動、こういうふうなものについて、もうそれほど、これがどうにもならないというふうな障害はなくなってまいりました。  ただ、一つだけ依然として深刻な問題として残っておりますのは人の移動でございます。しかも片側。日本から中国へ行くのは、もうノービザになりましたので全く何というか不便がなくなりましたが、中国から日本へ来るというのが依然として非常に大きな障害が残っております。それは、元々日本は島国だというふうなその文化の問題だけではなくて、まあ非常に世間が心配する外国人犯罪の問題というふうなことがあるものですから、そういうふうなことになっているわけでございますが。今のその出入国管理制度というのは、やはりこれまで見てまいりましたような日中の現状から見て非常に合わないものになってきているという気がいたします。  一方では、規制の必要のない、まあお金持ちみたいなところまで規制が、不必要な規制が依然として続いている中で、他方では不法な入国だとかそういうふうなことについては、やろうと思えば予算を付ければもっともっと何というか手が打てるというところがまだまだ残っておるんではないかなという気もするわけでありまして、ここら辺のめり張りをもっと付けていくということが必要だと思います。  こういう話になると、よく法務省であるとか外務省であるとか、そういう担当官庁が頭が固いのであるというふうなことが話題になるわけでありますが、私は担当官庁を批判しても問題の解決には何らならないと思います。  というのは、担当官庁は、問題が起きれば何やっているんだと批判されますが、苦労してこうやってめり張りを付けて入国者数を増やしても、現状ではだれも褒めてくれません。そういう減点主義の採点基準に遭えばどの人もみんな保守的になるというのは、これは仕方のないことであります。国民全体の意識改革が伴わないとこういう問題は解決しないということだと思いますが。  まあ、お金も随分持つようになってきた中国人に対して、昔と同様の、何というか、扱いをしていては失礼であるというふうな面もあるかもしれませんが、私は、この人の移動の制限をもっと緩和をしていくということの重要性というのは、日本の国益に照らしても非常に喫緊の課題だと思っております。経済的利益だけではなく、ほとんど日本のことをよく知らない中国人に、自分の目で現実の日本を見せてあげるという機会を増やすということは、これは非常に大きな意味があるというふうに思っております。  九ページに参りますが、経済面では、産業界は随分ともう日本中国の間で深い結び付きをするようになりましたが、実は、車の両輪に例えますと、もう一つタイヤであるところの金融、証券というふうなフィナンシャルな部分がこの産業界に、何というか、見合ったような形での発展を遂げられておりません。このことによってだれも得をしていないという状況がございます。  もちろん、金融が余り発達してないというのは、中国の規制があって日本の金融産業が思うようにやらせてもらえないという事情もございますけれども、まあそれだけではなく、どうも金融産業というか金融界にですね、中国でお客様にするのは日系企業だけという、まあ日本人村ビジネスみたいな、そういうふうな意識が非常に強いということも影響しているのかなというふうに思っております。この点でもう少し金融の方のタイヤが発達をしてくれば、多くのこれまでなかなか考えられなかったような新しい受益の姿というのが双方に生まれるのかなというふうに思っております。  それと、先ほど小川先生の方からお話がございましたが、日中の経済がもっと、何というか、ウイン・ウイン型に発展をしていくための非常に重要な課題は、双方の通貨というのが今よりももっと安定すると、予測可能になるということでございます。そういう観点からの通貨協調みたいなものも今後していかなきゃいけないことだと思います。  最後に、政冷経熱という言葉が随分と昨今語られることが多い日中関係でございますが、私は、政治が冷たくても、経済が例えば前年割れするみたいな形での後退をするということはなかなか考えにくいと思っております。短期的に、例えばインフルエンザが大流行して、まああのSARSのときみたいなことになるというふうな短期的なショックが加わると、まあちょっとその話は別でございますが、趨勢としては政治関係にかかわらず経済は更に前へ前へと進展をするだろうというふうに思いますが、じゃ今のままでいいじゃないかということになるかというと、やはりそこはそうではないのではないかなと思います。  今でも前へ進んではおりますけれども、得べかりし利益というふうな物差しから考えますと、これはもう莫大なものを失っているというふうに思います。注文が取れないのは別に新幹線だけではございません。多くの地方で地方政府が、日中関係が波立っているときには、外国製品を、外国設備を調達しようかというときに、日本はちょっとやめておこうというふうな形で、言わば君子危うきに近寄らず式で、結果的に日本製品が排斥されてしまうというふうなことがもう日常茶飯、全中国であちこち起きていることを考えますと、やっぱりこの政治関係がいいということはやっぱり経済にとっても非常に重要な問題だと思います。  ただ、公平のために申し上げますと、別にそういう状況というのはこの数年の間に起きたことではなくて、ある意味では戦後六十年たつもまだ、何というか、その歴史問題がお互いに清算できてないというこの半世紀がもたらしていることだと思います。  こういうふうな政治ががたがたするというふうな状況について、最後の十一ページでございますが、私は、数年前まではこの経済の急激な、何というか、緊密化によってお互いの関係がすごく良くなるんではないかという期待を持った時期がございましたが、ただいま現在で言いますと、ちょっと期待を下方修正して、そして腹をくくることにしました。向こう十年、二十年、日中関係というのはがたがたする可能性がかなりあるというふうに思っております。  昔は、一つの地域の中で一国と一国の経済的な地位が逆転するみたいなことが起きると、大体まあ十中八九は戦争になったものでございます。今は文明の世の中ですからそういう野蛮なことに直ちになるとは思いませんが、昔だったら戦争になってもおかしくないぐらい微妙な時期に東アジアが入ったということは言えるんではないかなと思うわけでございます。特に、その中でやはりお互いの国民がお互いの国に対してどういうふうなイメージ、感情を持つのかというふうなところは、これがなかなか人間の心理の問題なものですから調整が難しい、時間が掛かるということがございます。  今後の日中双方望まれることとして、日本側について言えば、やはり中国に対する古い固定観念みたいなものを捨てて、新しい現実に適応した、何というか、中国との付き合い方ということをもっと学ばなきゃいけない。端的に言えば、中国が台頭してくるという現実を、まあちょっと抜かれるのは人間だれしも嫌だけれども、そういうものとして受け入れるという覚悟が必要でしょうし、それを生かしていくというどん欲さも必要でしょうし、他方、GDPで抜かれたからといって中国からけおされる必要はないのだというふうな、何というか、心理の調整をする必要もあるだろうと思います。  中国に望みたいことは、今や自分世界じゅうの中でどれほど影響力のある重い存在になっているかということについての思いがまだ至っておりません。そういう観点からいえば、去年の反日デモなんかはもう典型でございますが、周りからどういう目で見られているという、そういうふうなことにもっともっと思いをいたして、大国としての度量ある振る舞いというようなものをもっと身に付けてもらわないといけない。  そういうふうな時間の掛かる心理の調整というものを両国はまだ抱えておると思います。ただ、この心理の調整を早く終了させることができればできるほど、両国の国益は増進すると思います。  そういう意味では、現役、我々生きているその今の世代の日本人としては、後代により繁栄した、より、何というか、周辺と友好関係を保つような日本を残すために、我々の世代で調整できるものは極力調整をしていくというふうなことを図っていくのが世代の責任ということではないかと思っております。  ちょっと時間を超過してしまいましたが、私は以上でございます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  7. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名をいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  できるだけ多くの委員の方々が質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は五分程度でお願いをいたします。  また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  水落敏栄君。
  8. 水落敏栄

    ○水落敏栄君 自由民主党の水落でございます。  両先生には貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。  本日のテーマは、東アジアにおける経済戦略東アジア共同体構築への対応、こうしたテーマでございましたが、この東アジア共同体につきましては、本調査会において何回も先生方から御意見をいただいて、随分勉強してきたと思っておりますが、私の理解力がいま一つでございまして、何となく分かるんでありますけれども、もう大部分が理解ができていない、これが正直なところであります。  そこで、会長を始め委員の先生方には恐縮でありますけれども、初歩的なことからお伺いすることをお許しいただきたいと、このように思います。  まず、常識的に考えますと、東アジアというのは日本と朝鮮半島、それから中国、台湾にASEAN十か国を言うのだと思いますけれども、当初の共同体構想には北朝鮮と台湾は入っていないわけであります。もちろん、これらの国と地域はいずれも何らかの問題がありますので、入っていないことも理解ができます。  しかし、昨年十二月にマレーシアで開かれた第一回のサミットにはインド、オーストラリア、ニュージーランドが参加をしております。これらに加えて、いずれロシアとかアメリカも参加したいなどと言ってこないとも限らない、私はそう思っております。そういたしますと、共同体というのはお題目だけになってしまうんではないかな、こんな気がいたします。また、ASEANプラス3に台湾と香港を加えたASEANプラス3プラス2やインドのみを加えたASEANプラス3プラス1がよい、こういう識者もおるわけであります。  つきましては、共同体の領域について、両先生はどのような形が望ましいのか、御意見をお聞きしたいと思いますし、そして前回のサミットで申し上げたように、インド、オーストラリア、ニュージーランドが参加しましたけれども、当初の考えとは異なって、なぜそれらの国々が参加したのか、その要因はどこにあるのか、お聞かせいただければと思います。  二点目は、共同体の内容も、自由貿易協定、いわゆるFTAを結んで自由貿易圏にするというような経済的なものだけではなくて、安全保障も考えた政治的な枠組みを目指すべきだという考えもあると思います。  そういたしますと、経済的な枠組みにつきましては、アメリカ、オセアニアを包括したAPEC、アジア太平洋経済協力会議という枠組みが先行しておりますし、安全保障についてもロシアや北朝鮮を含めたARF、ASEAN地域フォーラムという枠組みがあって、あえて東アジア共同体を構築する必要性は薄いのではないかと、こう考えてしまうのでありますけれども、これも今まで勉強してきましたけれども、この辺がどうも私には引っ掛かるものがあるわけであります。端的に両先生から御意見をいただければと存じます。  三点目は、どの国が実際に共同体づくりを主導するかということであります。  私は、本来ならば日本中国がやらなければならないと思いますけれども、先ほど津上先生のお話の中にも出てきましたが、日中間には歴史問題があって、これを清算しなければ当面無理であろうと思います。そうした中で、共産党独裁を維持しながら、これまた津上先生のお話の中に出てきましたけれども、域内で随一の経済成長を続ける中国の国家意思は群を抜いて強いと思いますし、私は、中国のねらいがあくまでもアメリカを排除した共同体構想であって、アメリカ日本の良好な関係にくさびを打つ、分断することを中国は考えている、このように思っています。  したがって、現状であれば中国主導になるのではないかと危惧していますけれども、日本が主導するにはいかなる戦略を構築していかなければならないのか。小川先生は通貨同盟で円が主導すべきであるということもおっしゃいましたけれども、この点についても端的に両先生の御意見を伺いたい、このように存じます。  以上であります。
  9. 小川英治

    参考人小川英治君) ただいまの水落委員の御質問に対してお答えしたいと思います。  まず、共同体の領域ということですけれども、やはり経済関係が、まず考えるべきは経済の結び付きだと思います。そういう意味で、経済の結び付きという意味では、今のそのASEANプラス3のASEANと日中韓というものの結び付きが強いというふうに認識しておりますので、そこがコアになると思います。そこに日本と台湾の間の経済関係も結び付き強いですが、それはまた政治的な問題がありますので、そこはまた私からちょっと申し上げるところではないんですけれども、まあ要するに経済的な結び付きの強いところがコアになるべきだというふうに考えております。  で、そのときに例えばインドを取り込むかどうか、あるいはオーストラリア、ニュージーランドをどうするかということについて、やはりこの東アジアの中で例えば経済的な結び付きが強いというときに、その生産ネットワーク、部品のやり取りをしているとか、あるいは貿易が活発に行われているというところで、インドがどれほど東アジアと結び付きが強いかというところが現状では問題になるかと思います。  ただ、将来見据えて、インドの経済発展ということで、インドをそこに入れてくるという将来的なところでは考えられるかと思うんですが、私自身の意見では、現状ではやはりコアになるべきはASEANと日中韓ということだと思います。それから、オーストラリアは、確かにASEANプラス3の中に入ってきたいというアプローチをオーストラリア政府しておりますので、それはオーストラリアの政府の考え方が、従来はヨーロッパとかアメリカを向いていたところ、やはりアジアとの結びを、強いということを認識して、そういうふうにオーストラリアの政府の対応が変わってきているのかと思います。  ただ、先ほども言いましたように、東アジア、いわゆる東アジアの中でどれほど経済の結び付きが強いか、そこに、オーストラリアとの関係がさらにどれほど強いのかという点では、それほど、そういえば、先ほどの生産ネットワークという観点で積極的にオーストラリアを入れるべきかということについては私は疑問を持っております。  それから、共同体の、例えばAPECとかそういうものとダブるんではないかという二番目の御質問かと思うんですが、ただ、例えばAPECなどは実質的に貿易の自由化とかあるいは通貨協調とかということでは余り機能していない会議だと思います。やはり実態のある、例えばヨーロッパにおけるEU、あるいはアメリカにおけるNAFTAのような、そういう実態のある貿易の自由化とかあるいは通貨協調とか、そういうことのできるコミュニティーという意味で、東アジア共同体というものが将来的に可能性を秘めているのではないかというふうに考えております。  それから、どの国が共同体を主導すべきかということで、私、先ほど通貨の面で日本が主導を取るべきだということを言いました。それは通貨の面だけじゃなくて、自由貿易協定などについてもやはり日本が主導権を取るべきだと思っております。  では、どういう形で主導権を取るべきかということで、例えば中国に比べて日本経済の面でいろいろ経験が豊富です。例えば、通貨の面でいいますと、一九七三年に変動相場制に移行するとか、あるいは一九七一年に円が高くなるのを抑えようとして、それが抑え切れずに例えばインフレになったとか、あるいは一九八五年にプラザ合意経験したとか、そういう、まだ中国がこれから、あるいは今経験しているところを日本は既に経験しているわけです。そういう経験は、例えば私の分野でいいますと、中国の政府系のシンクタンクであります中国社会科学院の研究者の方が私と共同研究をして、日本経験を教えてほしいということを言ってきて、一緒に共同研究しております。  そういう意味で、そういう日本経験あるいは日本の技術あるいは日本のノウハウを、こういうふうにやるともっと経済成長できると、あるいは、困難に対してはこういうふうに対応するべきだという議論をしながら、日本からアジア全体がいかに良くなっていくのかということを提案していくべきだと、そこが日本の主導権の取るべきところであり、あるいは、そういう形で主導権を取っていけるんではないかというふうに考えております。  以上です。
  10. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) お答えいたします。  地域にはいろんな重層的なフォーラムというのがあっていいと思うんですね。国連があり、WTOがありというふうな、こういう正に世界ベースのマルチラテラルなものもあれば、APECみたいな、まああれはちょっとリージョナルと言うには広がり過ぎた嫌いがありますが、そういう地域的なものもあれば、あるいは二国間というふうなものもあると。そういうふうな、何というか、協力とか対話の場が、まあ重層的にいろいろあるというのはいいことなんだろうと思います。  ただ、この東アジアということでいうと、その二国間とマルチラテラルはありますが、リージョナルというのが下手くそでなかなかつくれなかったというその長い歴史の中で、ようやく10プラス3というふうな形で、経済的にも非常に結び付きが強いこの東アジアというサイズでそのフォーラムをつくろうという動きがようやく生まれてきたわけだと思います。私は、それは必ずしも、何というか、リージョナルに、こう汎アジア主義みたいな排他的なものを目指すという意味ではありませんけれども、この東アジアがマルチのものとそれから二国間のもの以外に、この東アジアというリージョナルなものをやっぱり持つべきだと思います。逆に言うと、ないのは変だというふうに思っておりまして、そういう意味ではこの10プラス3以来、まあ何か、生まれてきたこの東アジアというその地域的な、何というか、サイズのこの発達の流れというのを私は大事にしていくべきではないかなというふうに思っておりまして、そういう意味では、この東アジアに属さない国をどんどんメンバーに入れるというのは、それはAPECをもう一遍活性化するというふうな形でとか、ほかの何というか経路を通じてやればいい話だというふうに思っております。  そこで、例えば今のその域外国がどんどん入ろうと、あるいは入れようとするという動きの中で個人的には、例えば新聞なんかでよくその報じられておりましたのは、日中のその覇権争いの中で中国を牽制するためにインドも巻き込もうとかというふうな、何というか、その思惑みたいなことが語られることがございましたが、私はそれは、何というか、そのフォーラムを間違えた物の考え方だというふうに思っております。それをやってしまえば、結論は、相変わらず東アジアは、東アジアサイズのフォーラムは何も持てない地域に終わるというだけだという気がしておりまして、損だというふうに思っておりますので、今の10プラス3はやはり10プラス3サイズで進めていくのが正しいと思っております。  他方、そのときに気を付けなきゃいけないことは、やっぱりアジアアジアだ的な、排他的なそのリージョナリズムに陥らないように気を付けなきゃいけないというのは、これは申すまでもありません。なぜならば、東アジア自分たちだけでは食っていくことのできない地域であります。アメリカという大きなお客さんあっての東アジアというふうな部分が非常に強いわけでございますから、その排他主義は自滅の道ということになると思いますので、そこは重々気を付けなきゃいけないのは当然でございます。  それともう一つ、その先生のお話の中では、香港、台湾というふうな地域への言及がございました。私は、この10プラス3と申しましたけれども、そこに香港と台湾が入っていないというのは、これはだれも得をしない、非常に遺憾な事態だというふうに思っております。これだけ大きな経済主体をこの10プラス3の中から置いていくと、置き去りにするというのは、これは本当にその地域として、まあ非常にもったいない話であります。何とかこういうふうな、そのメンバーも一緒に連れていくべきその東アジアフォーラムであるべきだと思っております。  それから二点目については、APECはAPECで再活性化したらいいということでございますが、ちょっと重複いたしますので少し省略をいたしまして、三点目の共同体づくりはだれがリーダーシップを取るのかということについてちょっと申し上げますと、私自身は、中国は、この一連のプロセスの中で日本をなるべく排除して自分がそのリーダーになるというふうには考えていないと思っております。  理由は、そうやって例えば日本をけ落とせば後に来るのは何かというと、おまえがいよいよその私の覇権に挑戦しようという、挑戦者の位置に付いたわけねというふうにアメリカからの風圧をもろに浴びるということは、もう明々白々、彼らは予測しておりますので、そういう風当たりのきつい場所に立たないと。少なくとも向こう十年、二十年はそういう風当たりのきつい場所に立てるほどの経済的な力、総合国力というものを中国はまだ持っていないというふうに考えているのではないかと私は思っておりまして、そういう意味では、中国アジアのシングルの覇者になるんだというふうな仮説は必ずしも必要ないんではないかなと思います。  そういう観点からいえば、やはり日本中国が共同リーダーシップを取っていくということが必要なわけでありますが、まああえて東洋的な謙譲の精神というものを加味するならば、そこで東南アジア、ASEAN諸国を、君らは、何というか、まあその準会員ぐらいのサイズだからというふうに軽く見ないで、ASEANも立てて、日本中国とそのASEANというふうな、だれが親分だというふうな、そういうリーダーシップ取り争いをしないような形での運営ということをやっぱりやっていくしかないのかなと思っております。  以上です。
  11. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) はい、どうもありがとうございます。  次に、前田武志君。
  12. 前田武志

    ○前田武志君 民主党・新緑風会の前田武志でございます。  小川先生、津上先生、それぞれの専門分野、しかも御体験、御経験を踏まえてのお話、非常に分かりやすく、かつ刺激に富むお話をしていただいてありがとうございました。  私どもは暮れに、西田会長を団長として、先ほど御紹介ありましたようにEU調査に行ってまいりました。東アジア共同体構想、これを勉強していくに当たって大いに参考にしようというわけで行ったんですが、結論的に言いますと、私個人の印象なんですが、EU、これは歴史的な、ずっとその長い歴史があり、いろんなその悲哀の中で今のこのEUを実現してきた。例えば、そのチェコにしろ、私どもが行ったチェコにしろ、ベルギーにしろ、やっとで大きなEUという一つのこの共同体、ファミリーの中に抱えられて、突然ある朝、何か今日、国境を越えて攻めてきたというようなそういう心配から解放されたというだけでも非常に大きな希望を持つに至ったというようなことを各地で聞いたわけですが、翻って日本の場合には、やっぱりこの島国、余りにも恵まれ過ぎてて、そういった必然性というか、まあもちろんその外との関係で日本の政治も基本的には大きく動いてきているわけですけれど、東アジア共同体という政治的な差し迫った必然性というものはなかなか感じにくいということは同僚議員の御指摘のとおりだろうと思います。  そこで、常々考えてて、今日のお話をお伺いしながら、合点がいくわけですが、やはりもう少しその必然性のあるところからアプローチし、そして必然性があるということは、両先生の御指摘のとおり、ここをしっかり、特にその日中を中心として経済的な非常に大きな問題が出てくる、そういうものを乗り越えていくこととして東アジアというものが互いに運命共同体として育てていくといいますか、そういう必然性が出てくるんだというお話、誠にもっともだと思うんですね。  通貨の問題がございました。それから、特にエネルギーの問題等については、たしか今までの勉強の中で聞いているのは、年間のエネルギー消費量、世界、石油換算で百億トンちょっとぐらいなんでしょうか、そのうちの相当のところがアメリカアメリカがどのくらいでしょうか、二十五、六、三十億トン近いんでしょうか。中国が十四、五億トン、日本がせいぜい五億トンというような、そういう中で、確かにこれは石油だけに限ってもかなりこう限界に近づいてるということになってくると、エネルギーを中心としての東アジアの何かフォーラム的なものが必要になってきて、それが10プラス3であったり、東アジア・サミットの大きな課題になってくるのかなという感じがいたします。  そんな私見を踏まえた上でお聞かせを願いたいと思うんですが、一つは、津上先生のこれを見てて、中国は最大の輸出先に近くなるというこの三ページの図面なんかを見ておりますと、二〇〇三年、四年、五年と、これはブルーが米国ですから、この米国と中国とを合わせた貿易量、特に輸出量なんというのは毎年上がってきているんですね。多分これが日本の景気を良くしていった大きな要因なんだろうと思うんですね。だから、いずれにしろ、日本、米国、中国経済構造がマクロに見てどうなっていくのかというのをまず御両人に聞きたいわけです。特に小川先生においては、そういう国際金融的なマクロの立場からどうやってこの経常収支赤字をファイナンスし、それがどうもアメリカの場合には多分縮小していかざるを得なくなるでしょうし、日本中国は、これだけの黒字、経常の黒字というのを、どういうふうに逆に黒字を縮小し国内消費を増やしていくようになるのか、まあ特に通商関係等を含めての面で津上先生にお聞きしたいと思います。  それから、そういう意味では、この通貨バスケットというのは非常に分かりやすく、御説明を聞いて、なるほどと、こう思ったわけですが、これは多分一義的には貿易貿易決済に外貨が必要になるというようなことでその通貨バスケットというものも必要になってくる。要するに、ちょっと専門家じゃないので余りよく分かりませんが、経済における貿易決済といいますかね、こういったものの割合といいますかね、貿易依存度といいますかね、そういった貿易依存度と通貨バスケットとの関係というものをもう少しお聞かせいただきたい。例えば、輸出入だけではなしに、先ほども御指摘にあったMアンドAであったり、あるいは投資、資産運用というようなことでも急激にそういう通貨共通のマーケットというのが出てくる可能性がある。そうすると、そこでまた互いに、何といいましたかな、共通バスケットみたいなのをまずはつくっていくぐらいの必然性が出てくるのではないかというふうに思います。  それから、この面で津上先生に、ちょっと私、今も触れたかと思いますが、中国も対日、対米の輸出というものの依存度が今非常に経済的には大きいんだろうと思うんですが、その先に国内消費というのが、国内消費型に転じていくような経済成長の軌道というものが想定できるのかどうか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。そういう意味では、日本の農業の話、中国の自動車の話が出ておりましたが、私はこういうのはもうそろそろ乗り越えれる時期に来てるんじゃないか。我々同僚議員は、それぞれ地盤、選挙地盤抱えていますから、どうしてもそういう問題に対しては消極的になりがちなんですが、どうやらそこはもう越え得る時期が来てるんではないかと思うんですが、両先生の御見解を聞かせていただきたいと思います。  それから、先ほど台湾、シンガポール等にも触れられましたが、中国、香港、台湾、シンガポール、あるいはベトナムやインドネシアの華僑ですね、そういうのも含めて華人経済圏ということをよく聞くんですが、通貨の上でこれは実態的にどういうような意味を持っているのかということを小川先生に、それから通商上のことについて津上先生にお聞かせをいただきたいと思います。そのときに、通商上と言いましたのは、かつて私も海外の体験では、その当時はもう日本の商社のあのネットワーク力と総合力と金融力というのはすごかったと思うんですが、今、一体、もう一つその商社の存在というのがどういう機能になっているのかというのもお聞かせをいただきたいと思います。  以上、いささか盛りだくさんの質問で恐縮でございました。
  13. 小川英治

    参考人小川英治君) どうもありがとうございます。  私にいただきました御質問にお答えしていきたいと思います。  まず、日中とアメリカとの間でのいわゆるグローバルインバランス世界的な不均衡の問題ですけれども、問題は、アメリカ経常収支赤字と、それから日本中国経常収支の黒字だということなんですが、その原因が何かということで、私はアメリカの財政赤字の問題が大きいと考えております。アメリカの財政赤字になっている中、それをどうやってお金を調達するかというと、外国からお金を借りてくるということになります。そういう中でアメリカ経常収支赤字が発生していると。さらに、直近のところでは、今アメリカで住宅バブルが発生していて、家計の貯蓄がマイナスに、要するにお金を借りてどんどん住宅投資をしているという状況にあります。そういうことで、財政が赤字、家計も赤字という中、対外的には経常収支赤字になっていくと、言い換えると外国からお金を借りてくると、そういう状況になっています。そういう影響を受けて、日本中国で、その反対側というか、コインの裏表の関係で日本中国で黒字になっているということだと思います。  ただ、日本については、今まで景気が余り良くなかったために投資、企業の投資、設備投資が余り盛んでなかったと。ただ、今、これから随分消費も増えて、それから設備投資も増えておりますので、そういう意味では日本での経常収支の黒字というのは緩和されてくると思います。  それから、中国については、やはり貯蓄が多過ぎるというようなこともアメリカから指摘されておりますが、問題は、やはりドルに固定をしている、ドルと同じように通貨が低めに設定をされているというところが問題かと思っております。  それから、通貨バスケットについて、私、先ほど貿易面から通貨バスケットの説明をさせていただきましたけれども、例えば私がこの挙げています経済産業研究所に、ホームページに出ていますAMUと呼ばれるものは、これは貿易とそれからGDP両方換算して計算しています。やはり、経済力を表すものは、貿易量だけではなくてその国のGDPも関係しますので、その二つを使って考えています。それから、ヨーロッパユーロが導入される前のECUについても、やはりGDP貿易量でそれぞれの国の通貨のシェアを計算するということになっていました。  今、前田議員より御指摘のあった金融面あるいは資本の市場のことを通貨バスケットにおいて考えるべきではないかと。それは、私がこのAMUをいろんな場所で議論するときに指摘されていることです。やはり、金融の国際化が進んできますと、そういう意味で資本市場あるいは国際金融市場のポジション、位置付けが非常に重要になりますので、そういう意味では入れていくべきだと思います。  ただ、今もしここで東アジア共通通貨バスケットを考えるときにその金融市場の大きさを入れますと、日本が非常に大きいですので、そこでもう非常に大きな日本の位置付けのある、シェアのあるものになってしまう可能性があります。そういう意味で、そのアジア通貨イコールそのまま日本円というと、やはりこれをつくるに当たってほかの国のある程度の影響力も考えなければいけないということだと思いますので、現状では資本市場の大きさとか、そういうものをどういうふうに取り込んでいくかということを議論したり、あるいは入れるんだけれども、上限を設けて、ある国が非常に大きくなるというようなことにならないように上限を設けるというような議論も行われております。  それから、華人経済圏について、その通貨意味でどうかということなんですが、先ほど申し上げましたように、人民元中国の外では使えないように為替管理されております。皆様も中国に行かれたときに円を中国元、人民元に替えた範囲内でしかそれを元に戻せないという、そういう為替管理が行われておりますので、なかなか使いにくいところがあります。そういう意味で、華人経済圏で、じゃ人民元を積極的に使うかというと、実際には使えない状態にあると思います。  一つの例が、去年七月二十一日に中国政府がその為替制度を変更したときに香港がどうなるかと。香港は中国と結び付きが強いです。ですから、香港ドル人民元が安定している必要が香港政府にとっては非常に重要なわけですね。そのときに、人民元ドル変動し始めるといったときに、では今まで香港はドルと固定しておりますが、それをやめて人民元と固定する方に変えるかという問題が議論されて、あるいは香港の通貨当局でそれを考えているところであります。香港の通貨当局の見解は、今、中国人民元は外国で使うのには不便だと、為替管理があって通貨の、人民元交換性が非常に低いという理由から人民元を、人民元に対して香港ドルを固定するということは今のところはしないというふうに言っています。ですから、そこが非常に大きなポイントかと思います。  ただ、そういう意味人民元交換性がまだ低い、あるいは為替管理がまだ厳しく行われている、だから香港の通貨当局は香港ドル人民元に固定しないと言っているわけですが、それを裏返しますと、人民元が将来、為替管理を撤廃して交換性が高まってくれば、それは香港の通貨当局は幾らでも変える用意はあるということを意味しているかと思います。ですから、そういう意味で、華人経済圏で現状、人民元の役割どうかというと、そこは現状では余り意味が、人民元の意義は余りないとは思うんですが、ただ、将来的にそこは大きく変わる可能性のあるところかと思っております。  以上です。
  14. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) 日米中の今後の太平洋をまたいだ経済関係はどうなっていくのかということについてでございますけれども、日本の対米輸出が、先ほど、グラフを見ていただくと、むしろ、これは通貨表示方法にもよるんですけれども、微減しているような感じが見て取れるといえば取れるわけでございますが、もしこういうふうな微減傾向があるとしたら、従来だったら日本から輸出していたものを、生産を何というか中国へ移して、中国からアメリカへ輸出するというふうな何というか形のものが大分何というか最近は増えてきているので、カウントとしては中国の対米輸出になっているというような部分があるんじゃないかと思います。  中国側には、特にアメリカとの通商摩擦が非常に激化する中である種、被害者意識みたいなのもありまして、自分たちは日本韓国、台湾の製造業の対米輸出総代理店をやらされておると、なものだからカウントとしては自分のところが増えてしまっているんだみたいな、何というか、ある種、被害者意識みたいなものもあるくらいでございますが、起きていることを実態として見ると何かというと、要は、東アジア経済、特に輸出性向の強い、製造業が比較的強い日本中国、それから韓国、台湾、ここら辺の経済というのはみんな、オン・ザ・セイム・ボートといいますか、同じ船の上に乗っておるんだということなんだろうと思うんですね。  先ほど、アジアが排他的になっちゃいけないのはなぜかということで、要するに最大のお客さんは外にいるからだということを申し上げましたが、そういう意味では日本中国も米国経済にかなりの部分依存をしているという実態を踏まえていかなきゃいけないわけでございますが、そのアメリカ経済が、今、小川先生のお話にもあったように、かなりいろんな不均衡が拡大してきて、これがそのまま続くとはどうも考えにくいと、やがて調整、反動というのが来るのではないかというふうに見る人が多い中で、同じボートの上に乗った日本中国はそれに対してどう備えるんだろうかということをやっぱり考えなきゃいけない時期に来ているんだろうと思うんですね。  恐らく起きることの一つとして、その調整が始まればドルドル安というのが始まるわけでありますが、今の中国人民元管理というのを前提として、これが余り変わってないとすると、ドル安が始まったときに人民元が連れ安をすると。そこの部分は全然何というか調整が働かないということになってしまいますし、域内では人民元だけが一方的に域内で切り下げたみたいなことになるわけでございますから、これはまた大変な混乱を呼ぶということになろうかと思います。  そういう意味では、やっぱり中国に、小川先生からもお話のあったような、何というか、アジア通貨協調という観点からもうちょっと歩みを急いでもらうというふうな備えをしておく必要があるんだろうなと思います。それは周りが迷惑するから早うしてくれというだけではなく、中国は一方で今のレート維持をする中でもうぶくぶくと膨れ上がる外貨準備というふうな格好で不均衡を言わば、何というか、分担してしょっておる部分がございますが、これはまた中国の国益に照らして余り賢いこととは思えない部分がありますんで、自国の国益のためにも早くそこら辺を急いでくれというふうな政策協調が必要なのではないかなと思います。  二点目の、通貨バスケット的な世界貿易あるいは投資。ビジネスについてはもうすべからく言えることは、要するに企業は商売をしていく上で将来を予測しないとうまくビジネスができないということであります。で、為替レートというのは国際的なビジネスの世界でもう根幹的な何というか前提条件でございますんで、ここが大きく変動するというのではもうどうにもならないところがある。それはもう過去の何度も何度も起きた円高の中で日本の産業界がどれだけ苦しんだかということを思い起こせば明々白々でございます。そういう意味で、企業家にもっと予測可能性を与える、その企業家の予測を乱さないような通貨体制というものを是非築いていってもらいたいものだと思っております。  中国の今後の経済成長のスタイルがどうなるんだろうかというお話がございました。  二〇〇五年、中国貿易黒字が結局一千億ドルを突破する形で終わったわけでありますが、先生のお話にございました内需主導型の経済成長、あるいはもっと国内需要の中でも消費を何というか中心にした経済成長を遂げなきゃいけないというのは、これは正に中国政府自身が二〇〇六年の経済運営の最重要課題というふうにしているところでございます。外需にもうこれ以上依存することはできないという意識はひしひしと持っておりますし、あるいは国内需要の中でも投資ではなくて消費だという意識というのも非常に強うございます。  というのは、過去数年間、製造業の設備投資みたいなところに大変なお金を使ってしまったおかげで、それぞれの業界で過剰設備、過剰生産、そういうことで苦しんでまた不良債権がまた増えてしまってみたいな、そういう問題がもう山ほど起きてしまいましたので、製造業の設備投資というよりも、むしろそれ以外の分野、特に消費の振興ということが必要だという意識が非常に強うございます。  それと同時に、ちょっと本題からは離れると思いますが、そういうふうな消費振興という格好にちょっとでも近づくために最近中国が一生懸命やろうとしていることの一つは、富の分配をもう少し均等にすることはできないかということでございます。金持ちから税金をたくさん取るというところはなかなかやれておらないんですけれども、これまで全然できなかったことをちょっとずつ始めたという点として注目されるのは、生活保護手当だとか、あるいは失業手当であるとか、あるいは老齢年金であるとか、社会のどちらかというと恵まれない階層の人たちに今まではお金がなかったもんですからほとんどそういう手当みたいなものを、何というか、実のある形で分配ができなかったのを、最近政府は、随分とある意味では税収が増えてまいりましたので、特に所得の低い貧しい地域向けに中央財政からの配分というふうな格好で、そういうふうなところの力を入れております。  こういうふうな対策が前へ進むのが早いか、それとも富の不均衡みたいな、そういう不均衡の激化が早いか、もうこれは時間との競争みたいなところがございますので、そういうふうな政策を取り始めたということだけで安心するわけにはいかないんですけれども、そういう努力を見守っていきたいと思っております。  それから、もう一つ注目されることとして、これまではむしろそれはコストになってしまうから、コスト高になってしまうからみたいなことでなかなかやろうとしておらなかった環境対策だとか省エネ対策だとか、こういうところにも大分お金が回り始めた、あるいはもっと回さなきゃいけないという意識が非常に強くなってきているというのも歓迎すべき動きでありまして、そうだと、お金はそういうところに使ってくれというふうに言いたいところであります。  総体として、うまいことそういうふうに内需主導型の経済成長軌道に乗れるかどうかはちょっともう少し様子を見ないと判断ができませんけれども、かじはそっちの方に切っていますんで、うまく向きが変わることを期待したいと思っております。  それから、華人経済圏というお話がございました。それとの兼ね合いで日本の商社というお話もございましたが、ちょっと取り留めもない話になって恐縮でございますが、先ほど世銀のレポートの中で、国として中国のWTO加盟から一番受益したのは多分日本だという話がございましたが、これは国として見るとそうだということでございますが、経済プレーヤーとして一番受益したのはだれかというと、恐らく海外にいた華僑なんだろうと思います。台湾にせよ東南アジアにせよ、この人たちが、香港にせよ、この人たちが一番そういう意味では中国経済的な台頭のその恩恵を一番強く受けた人たちというふうに言っていいと思います。  それに対するに、日本はどうかというと、九七年から始まったアジア経済危機というのがやっぱり日本アジアとの結び付きというその観点から見ると非常に大きなダメージであったというふうに思います。金融とか証券は、九七年以降、アジアとの取引、これまで築いてきたアジアとのパイプみたいなものをリストラの中で相当大なたを振るって整理せざるを得ない、国内撤退といいますか、そっちの方向でのリストラを随分せざるを得ない状況に追い込まれてしまいまして、せっかく築いてきた華人とのパイプみたいなものも随分そこで断絶してしまったというような部分が遺憾ながらあると思います。  その中で、もう一遍ちょっと幕間が変わって出直そうというのが多分去年から今年ぐらいにかけてのときなんだろうと思うんですね。この間に、取引相手の、取引相手の華僑の人たちというのは、十年前に比べて、みんながそうだとは言いませんけれども、大きくなるところは十年前に比べて更に物すごく大きくなって金持ちになっております。付き合う相手としても大分何というかサイズが大きく、グレードが上に行ってしまったというようなところが日本から見るとありますけれども、そういう人たちともう一遍、何というか、取引関係の再構築みたいなことをしていかなきゃいけないというのが今なのかなと思います。華僑と組んで大陸で、何というか、いろんな投資をするというふうな動きというのは今商社の人たち、これは商社だけではなくメーカーもあるいは銀行も、日本経済界すべてがそうだと思いますが、そういうふうな形での動きを強めようというのが一つの流れとして間違いなくあると思います。  それと、商社の情報力というふうな観点で華僑とのビジネス以外の一つ注目すべきその動きを申し上げますと、中国もこれから海外に、何というか、輸出をしていかなきゃいけないと。対米だけではなくて、もっと新しい新興マーケットを中国としても、何というか、育成して輸出先をもっと多様化、分散しなきゃいけないというふうな必要が一つあると思います。  それと同時に、中国お金のない国ではなくなってきたものですから、これからは海外に投資をするような時代になってきているという中で、国によってはもう現地の華人のネットワークみたいなものが十分あるんで、日本の手をかりるには及びませんということなんですけれども、別の国の場合には日本の総合商社のそのネットワークが、国際ネットワークを中国に使ってもらえるという場面が出てきておると思います。言ってみれば、中国と第三国の間の貿易なり投資なりを仲介するというふうな動きでございますが、これも今の商社の持っている資源、リソースを中国という舞台で生かす一つの技なのかなというふうに思いますので、そういうものがもっと成功するといいなと思っております。  ちょっと取り留めもございませんが、以上でございます。
  15. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) どうもありがとうございました。  次に、加藤修一君。
  16. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  二十数年前の本をつい先日読んでいたんですけれども、これは「二十世紀の意味」というケネス・ボールディング、新書版でありますけれども、それには人類の前途には落とし穴が四つあるということで、第一点は戦争、そういった意味では不戦の制度化ができるかどうかという話だと思います。二点目は発展途上国の経済的離陸の困難性が考えられる、三点目は人口増加、四点目はエントロピーの拡大ということでありますから、物質やエネルギーは枯渇するという、そういう落とし穴があるという話でありました。  中国の国際市場における行動あるいは再生エネルギーへの意欲的な挑戦を見るにつけて、エントロピーの拡大という点については非常に意識させられているわけなんですけれども、先ほど津上参考人からは、地域にパワーシフトが起きれば戦争になるのが前世紀までは普通であったということで、東アジアは微妙な不安定期に入ったと、あるいは心理の調整にまだ十年、二十年掛かると、この過渡期に武力衝突等の大事を起こさないように日中関係を運営することが極めて重要であるということで、非常に大事な視点だなという思いで聞いておりました。  東アジア共同体の形成に向けては、私は基本的な要因としてやはり不戦の制度化をどう作るかということも大事なところだなと思っております。既に東南アジアについては、核の視点では東南アジア非核地帯条約が締結されているわけでありまして、ただ、まだまだアメリカを始め附属議定書に署名していないと、そういった意味では実効性がまだこれからだなという、そういうふうに言われているところもございます。  また、東アジア・サミットの参加に当たって東南アジア友好協力条約の加盟が求められて署名をしておりますが、そこで日中韓、インドとかニュージーランド、オーストラリア、まあ署名しているわけでありますけれども、東南アジア友好協力条約の内容は、一つは、簡単に申し上げますけれども、紛争の平和的手段による解決と、あるいは武力による威嚇又は武力の行使の放棄などを原則として、先ほど申し上げましたように、それぞれサインをしていると。  まだまだ不戦の制度化ということについてはこれからでありますけれども、やはり不断の努力は欠かせないわけでありますけれども、不戦の制度化についてお考えがあれば津上参考人にちょっとお尋ねをしたいと思います。  それから、一九五〇年のEUのシューマン宣言によりますと、こういうふうに書かれてございます。有名な文章でありますけれども、ヨーロッパは一日にして成らず、また単一の構想によって成り立つものではない、事実上の結束をまず生み出そうという具体的な実績を積み上げることによって築かれるものだと、で、石炭と鉄鋼の生産を共同管理することにより、ヨーロッパの連邦化に向けた第一歩となる経済発展の共通基盤が築かれるはずであり、中略いたしますけれども、共同生産性が確立されることにより、最終的にはすべての参加国に同一条件で工業生産の基本要素を提供することになる強力な生産単位が設立されることで、参加国の経済統合に向けた正真正銘の基盤が築かれることになると、まあこういうふうに宣言がされているわけなんですけれども、それでお二人に質問になるわけでありますけれども、EUだからということで独自性があるというわけじゃなくて、私は、ある意味での普遍性というのは今言った宣言の中にはあるように思っておりまして、まあそういった意味では東アジア共同体の形成につきまして、いかなる入り方、いかなる取組の仕方がスタートとして適切なのかどうなのかと、その辺のところについてお伺いをしたいと思います。  それから、まあ入り方の一つとしては、今日のテーマの中にも出ておりますけれども、FTAとかEPA、あるいはPPPというのがあるわけでありますけれども、経済に私は非常にアクセントが強いなと。この展開は方向性としては良いと私自身もとらえておりますが、しかし他方で、先ほど津上参考人からも話がございましたように、環境破壊とかエネルギーの関係とか、いわゆる環境保全への取組が薄いんではないかなと。ただ、PPPの場合は、パブリック・プライベート・パートナーシップでありますから、環境分野を含む機会は当然あるわけでありますけれども、やはり私は環境へ意識的に積極的にシフトをすべきであると、それをビルトインした経済発展とか経済的な統合性を考えていくことが大事であると、そうでなければ東アジア地域どころか地球がもたないと。まあこれが言うまでもなく、いわゆる持続可能な開発の意味であるというふうにとらえているわけであります。  それで、最近、EUで化学物質の規制でRoHSとかREACH、そういったものを出して、また今年の二月には国際社会が国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ、それを二〇二〇年目指してしっかりと化学物質の国際的規制を進めていこうという話にはなっております。また、京都議定書の関係とか、二〇一三年以降のポスト京都の関係、まあそういった意味では国際的な環境的な面での圧力が加わってくる、あるいはそのほかにテロの関係とか感染症の関係、災害、海賊問題、そういった意味では、それらはやはり共通の脅威だというふうにとらえることができると思います。  これは、やはり共通と言った以上は一国の問題ではないわけでありまして、多国間で共同で立ち向かう、そういうものである、共同作業をしなければいけない。で、その中でやはり私は、信頼の醸成の可能性が徐々であるわけでありますけれども拡大していく方向性というのは、そういうふうにとらえるのは私は自然じゃないかなと思っております。  そこでお二人に質問ということになるわけでありますけれども、経済的な統合とか発展ということを考えていく場合には、先ほどシューマンの宣言を話しましたけれども、全く私は時代背景が違ってきていると思っております。そういった意味では、その環境共同体的な、まあ環境を少しアクセントを置いたという、そういう意味合いでありますけれども、そういうところから先進的に取り組んでいくことが大事かなと、そんなふうに考えておりまして、こういう点についてどのような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。  今日は大変にありがとうございます。
  17. 小川英治

    参考人小川英治君) ただいまの御質問、まず東アジア共同体にいかにそれを設立していく方向へ持っていくのかということで、ロベール・シューマンの例を出されていると思うんですが、当時は石炭、鉄鋼が問題でしたから、そこから始まって、で、しかもその石炭、鉄鋼の当事者というのはドイツ、フランスということだったと思います。  じゃ、現代で何が問題かといいますと、やはり私、先ほどから何回か言葉を出しております生産ネットワークというのが東アジアででき上がっているというのがまず一つ重要なポイントかと思います。  それは、自動車を組み立てるにしても、部品をいろんな国から持ってきて、例えばタイで組み立てるとか、あるいは重要な部分は日本で作って、で、中国に持ってって作るとか、そういう意味東アジアの中でもう工場が、一つの工場に東アジアの中でなっているというところで、じゃ、そこでそれを効率的に進めていくためにはどうしたらいいかということで、恐らく東アジアにおける自由貿易協定とかあるいはその経済の面における共同体ということがあるかと思います。  あともう一つは、今日、私が通貨面ということで説明させていただいたのは、アジア通貨危機を我々は経験したと。で、日本は直接的には経験してませんが、ただ隣国の人たちにお金を貸してあげるとか、そういう形で協力するという形でアジア通貨危機経験しているわけです。ですから、そこから通貨面ではどうしたらいいかという議論が起こっているということだと思いますので、実はもうどういう入り方をしたらいいのかというよりは、そこにもう、入るところにはもう来ていて、それをいかに今度進めていくのかというところが今問題になっているのかと思います。  それから、環境の問題で、環境共同体をつくったらどうかということなんですが、私自身、日本、シンガポールのEPAをつくるところでスタディーグループのメンバーで入ってシンガポールと議論したことがあります。  そのときに、FTAと違って、EPAというのは二国間の共同の内容を盛り込もうということです。で、当時は、通貨危機とかそういう、あるいは投資とかあるいは人材育成とか、そういうところが問題でしたので、そういうところに力点を置いたEPA日本、シンガポールの間でできたと思うんですが、ただ、例えば京都議定書とかその環境の問題が今クローズアップされておりますので、そういう意味で、FTAではなくて、日本の外交戦略EPAを主張していくというのは、そういう意味で、その環境問題においても二国間協力をしていくという中で、そのFTAと、FTAというか、純粋な貿易の面でのFTAと組み合わせるというのがEPAの発想だと思いますので、だから、そういう意味では、今御指摘あったその環境共同体ということも十分入れ込むことができるのかなと私は理解しております。  以上です。
  18. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) 不戦の制度化を日中の間で考えられるかということでございますが、まあある意味ではもうその平和友好条約というのを締結済みで、戦争状態はもう、何というか、終結をさせたという以上に、まあ今後、例えば平和と友好を目指してというふうなその枠組みは今でもあるといえばあるわけでございます。その上に更に、何というか、不戦というものの誓いを立てるということについてということでございますが、ちょっと私はその構想が何というか非常に壮大過ぎて、ちょっといま一つイマジネーションがそこまで追い付かない感じがしておりますが、もうちょっと足下で、形而下の部分で何というかやらなきゃいけないなと思うことを逆にちょっと列記してみますと、軍拡競争とかみたいなことを地域の中で起こしてはならないというのはやっぱり非常にあると思うんですね。  中国は今、軍事費を毎年、何というか、かなりの大幅な伸びをさせておると。特に台湾に向けてというところを物すごく近代化しようとしている、あるいは外洋性の海軍をつくろうとしている云々というふうなことが言われております。  私自身は、そういうふうな中国に対する見方にイエス・アンド・ノーの部分がありまして、確かに台湾向けとかあるいは資源に絡む部分とかいうところについてはちょっとこれはやり過ぎと、周りからどういうふうに見られるかという意識をもっと強く持つべきだという気がする意味でイエスでございますが、他方、ノーという部分は何かというと、伸びているのは軍事費だけじゃないんですね。中国の今、中央、地方の租税収入というのは物すごい勢いで伸びています。九九年に日本円に換算して中央、地方で十四兆円ぐらいの税収だったのが、これが二〇〇三年には倍になりました。で、三十兆円弱になりました。で、二〇〇五年にはこれが三兆元ですから、四十五兆円近くになっております。  ちょっと信じられないほどの何というか税収の伸びがあるわけでございまして、そういう意味では、ほかの費目も含めて全部が物すごい勢いで伸びている中のワン・オブ・ゼムとして、まあプロラタよりはむしろ低いかもしれませんみたいなところに軍事費というのもあるというふうな状況でございますので、年率何%で伸びているというところだけを見て、何というか、言うのはちょっとかわいそうな部分もあるという気もしております。  なんですが、やっぱりさっき申し上げたように、周りからもっと、何というか、どう見られているかに意を用いる国になるべきだという観点から見れば、この軍拡みたいなことで周辺の猜疑心をあおるようなことを中国が殊更に、何というか、もっと戒めるべきだというふうに思っております。  それと同時に、やっぱり日ごろ中国と付き合っていて痛感することは、これはお互いさまでございますが、相互理解とか相互信頼というふうなものが非常に何というかレベルが低い状態にとどまっているということでございます。  先ほど観光客の話をいたしましたが、日本では観光というと物見遊山みたいな、何というか、遊び的にとらえる部分が大きいように思いますが、国際的に見ると、あるいは伝統的に見ると、観光というのはこれは勉学のためにすることだったはずなんですね。そういう観点からいうと、我々もそうですけれども、海外に行ったときに先入観みたいなものはいったん取り払って、まあ真っ更なキャンバスでその国を見てみるみたいな、そういうふうないい機会を提供するのが観光だと思うんですが、中国日本観光というのは正にそういう部分があります。ずっとメディアから、国内メディアから、何というか、仕入れていた日本に関する情報とは全く違う国だったというふうな、非常に新鮮な思いで、こんな国だとは思わなかったというふうな思いを持って帰る人が非常に多いわけでございます。  そういう意味を含めて、草の根型、国民に何というか主体を置いたような、そういう相互理解というのは、これはちょっと息の長い話にはなりますが、一番何というか核心の部分にかかわる話としてその信頼醸成のためにやっぱりやっていかなきゃいけないなと思います。  またそれから、やっぱり不戦ということはもちろん大事なんですけれども、不戦の前にやっぱりもう一遍和解ということをしなきゃいけないのかなと、日本中国の間では、と思います。和解で一番大事なことは何かというと、中国のことわざで、拍手は片方の手ではできないということわざがありますけれども、日本だけの何というか努力で和解ができるわけではないと。中国が許すということも、何というか、相々まって和解ということが成立するわけであります。  そういう観点から見ると、日本がどうだこうだという片面的な、片側通行の問題ではなく、やっぱり日本中国の間で共通のこの問題をどう処理するのかということを何というか考えなきゃいけないのかなと思います。  それは同時に、東アジアの、日中以外の国に対して日中がリーダー的な国として果たさなきゃいけない責任でもあるのかなと。周りの国はみんな、何というか、日中のけんかを見るたんびに、ああ、アジアの一体化への道は遠いと言ってため息をついている部分が非常にあるわけであります。そういう点も、何というか、頭に刻んで、域内リーダー国同士としてこの問題をどうするのかというふうに考えることも必要かなと思います。  共同体づくりとしてどういうアプローチがいいんだろうかということでございますが、私は、やっぱり一番核心のところに来るのは、両国民間の相互理解、相互信頼、お互いにもうちょっと分かり合って好きになり合うということと同時に和解と。やっぱり一番大事なことはこれだと思いますが、いきなりこれを取り上げてもうまくいきませんので、いかにそういうところへつなげていくかという意味では、やっぱり事実の積み上げ的なアプローチというのは非常に大事だなと思います。  そういう観点からいえば、経済先行、あるいはいろんなFTAみたいな、何というか、大物よりも、それこそ観光ビザの緩和措置みたいな小物でもいいですから、積み上げていくというふうなアプローチ。あとそれから、日中の間ではやっぱり当面非常にまだまだ難しい不安定な時期が続きますから、殊更に事柄を何というか政治化しないと。非政治的なアプローチで物事を進めていくということが大事かなというふうに思っております。  環境共同体的な形で共通課題への取組ということを強化していくべきだというお話については、全く賛同いたします。  特に、環境問題というのについては、先ほども申しましたが、中国自身がこれはもう人ごとではないと。外様に言われて、何というか、仕方なくやる話じゃなくて、もう自分たちの子供、孫の健康がこれはもう大変なことになるという非常に切迫した意識を持ち、かつ、そのために投じられるお金も何がしかできてきたというふうな状況にはあるんですけれども、こういうふうな分野というのは何よりも、何というか、お互いに共同作業をするということのメリットが明々白々な分野だと思います。  そういう観点で一つ注目されるのは、気候変動条約のいろんな枠組みの中でCDMという、排出権取引という、何というか、メカニズムを導入しようという動きがずっと前からあるわけでございますが、あに図らんや、一番それを必要とするはずの中国がこのCDMみたいな動きになかなか乗ってこないと。何でなんだという話があったわけであります。  私から見ると、中国はこのCDMを余りに大事に感じ過ぎて、これは本当に、何というか、決定的な決め手であるみたいな形で重視し過ぎて、結局、自縄自縛で動けなくなっちゃったみたいな、例えば取引条件というのは損なのか得なのかみたいなですね、それでちょっと自縄自縛に陥ったところがありますが、いろんな双方の関係者の努力の中でようやくこのCDMを、何というか、中国でも枠組みとして使えるところまで来つつあるのかなという気がいたします。  そうであれば、日本中国の間でこういうCDMを活用したような、例えば省エネ対策であるとか、あるいは風力だ何だというふうな再生可能エネルギーの開発促進だとかいろんな、何というか、そういうふうな環境のための投資についての国際協力がこういう経済メカニズムを通じてより促進されるという格好になるといいなと思いますし、そういうふうな格好で双方の協力を進めていくために共同体的なアジェンダとしてこういうものを重視していくということは必要でありますし、非常に意義が高いというふうに思っております。  それ以外の共通課題、疫病対策等々についても同じようなことかなと思っております。  以上です。
  19. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) どうもありがとうございます。  大門実紀史君。
  20. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。  貴重な御意見ありがとうございます。  まず、小川先生にお伺いいたしますけれども、何で東アジアなんだという話がよく出るわけですけど、今日の先生御指摘のとおり、私はやっぱり東アジア共同体というのは、あの九七年の通貨危機が、その前からも構想ありましたが、非常に強くあれがあってから志向されてきたと。ですから、ASEANの国にとっては、あのときのドルペッグのこと、あるいはアメリカの金融、投機マネーにやられたんじゃないかとか、あるいはその後のIMFプログラムに対する反発とかいろいろありますので、やっぱり東アジアと、APECではないというのが脈々とあって来てるんだというふうに思います。  その点で、今日、先生から御提案されたアジア共通通貨の問題なんですけれども、私もそうなってもらいたいといいますか、円がイニシアを取ってそういうものができれば非常にいいんではないかと思うし、期待をするわけですが、そうはいってもなかなか実現には難しいものがあるんではないかと考えます。いずれにせよ、ロバート・マンデルさんなんかは、二十年後にはドルユーロアジア通貨だというふうな見通しもありますので、方向はそういう方向になるんでしょうけれども、円がイニシアを取ってそうなるかどうかというところはまだまだ難しい問題が幾つかあるんではないかと思います。例えば、今現在で人民元が切り上げられたりフロートになったら、恐らく台湾ドルとか韓国ウォン貿易関係からいきますと人民元に連動していく方向になったりするのが今の現実だと思いますし、なかなかそう簡単には円がとならないと思います。おっしゃるとおり、人民元は今すぐどうこうなるような通貨ではありませんけれども。  そういう点で、円がイニシアを取って、そういう共通通貨の、バスケットにしろ何にしろ、イニシアを取っていくために具体的に何がもっと必要なのかと。先ほどございましたチェンマイ・イニシアティブもいざというときの為替資金お互い融通し合うというスワップですけれども、それだけをやっていけばなるのか。あるいは、アジア債券市場もありますけれども、あれはまあアジアの貯蓄をアジアに投資しようというわけですけれども、その枠組みだけやっていくだけで、その延長に円がイニシアを取ってそういうものになるのかと。ただ、インフラだけは、金融市場という点でいけばもう日本しかありませんから、インフラでは日本だと思うんですけれども、もう一つ、円がイニシアを取っていく上でこれから何が必要なのかという点を補足的にお伺いしたいと思います。私も期待する方向でお伺いをしたいと思います。  津上参考人の方は、私、東亜キャピタル株式会社ってありましたんで、これはあれですか、何か投資コンサルか何かされている、そういうんじゃないんですか。
  21. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) 日中専門の投資ファンドの運用をしております。
  22. 大門実紀史

    大門実紀史君 私、理事懇で、一度民間の企業の方の話も聞くべきではないかという提案をしたもんですから、経済産業省のレクみたいなんじゃなくて、民間の、東亜キャピタルとしてどう考えておられるかとか、民間企業が今どう考えておるかというふうなところでもうちょっと少し聞かしてもらえればと思うんですけれども。例えば、東アジア共同体ができれば、できた方が民間の、まあ投資ファンドでも結構ですけれども、民間の投資も含めて期待をしているのかどうか、それとも共同体は関係なくやっていくんで十分なのかどうか、その辺の、民間企業が、あるいは民間投資マネーがこの共同体構想にどう思っているかということで分かることあれば教えていただきたいと思います。  以上です。
  23. 小川英治

    参考人小川英治君) 円がどうやってイニシアティブを取っていくかという御質問なんですが、私の報告の趣旨は、日本がいかにイニシアティブを取っていくかということと、それとアジア共通通貨バスケットの中で円がどれほど重要な位置を占めるかという二つありました。今の御質問、二つのことを聞かれているというふうに私、理解いたしましたので、分けて説明させていただきます。  まず、円がアジア共通通貨バスケットの中でイニシアティブを取る、あるいは高い地位を築くというまず意味は、日本経済のパフォーマンスが良いというのが大前提で、その下で東アジア経済を引っ張っていくということです。ですから、その大前提のところで日本の円が弱い通貨になってしまったんであればそこの大前提が崩れますので、まず日本経済あるいは日本の景気が良いパフォーマンスを残しているということがまず第一の重要な要件だと思います。  それからもう一つは、じゃアジア全体、東アジア通貨をつくったときに、あるいは共通通貨バスケットをつくったときに、日本政策にみんな付いていくような条件をつくると。今ヨーロッパでそうなんですけれども、ユーロに入れる国は経済の収れん条件があって、インフレが低いとか、あるいは金利が低くなっているという条件がかなった、そういう条件を満たした国だけユーロを導入できるということになっています。  ですから、まず大前提で日本経済が良いと。で、その下で日本中心とした経済パフォーマンスのいい国に付いてこれる国でそういう通貨同盟、通貨バスケットをつくるとか、あるいはサーべイランスの場所で、場で余り経済パフォーマンスが良くない国に対していろいろ忠告したりサジェスチョンをして経済パフォーマンスを良くしていくということで日本の円のイニシアティブを、あるいは日本のポジション、円のポジションを高めていくということが必要だと思います。  それからもう一つ、こういう、通貨の話だけではないと思うんですが、日本がそういう円の地位を高めていくというときに、今のようなルールを作って、みんなでこれをやろうということを日本から言わないと駄目なわけですね。もし日本がそこに参加せず、もう弱い通貨も高い通貨も関係なく、みんなで交ぜて、東アジア全体で弱い経済になってもいいというようなシステムをつくってしまったら、それは駄目なわけですね。ですから、そういう東アジア全体で効率的で強い経済をつくっていくということを日本から提案していくということが必要だと思います。  ただ、一つ通貨政策協調するということの裏腹で、各国の金融政策の自由度が落ちてくるという問題があります。そういう意味で、日本の中でも金融政策担当している機関はそういうところを嫌う可能性もあるんですけれども、ただ、日本が主導権を取って、そして日本金融政策に合わせた金融政策を各国が追随していくという状況、そういうシステムあるいはルールを築き上げていけば、日本が主導権を取った上で円が中心、あるいは日本金融政策を担当している機関が自分たちのやりたいというか健全な金融政策を遂行できる状況があると思います。そういう意味で、イニシアティブを取っていかなければいけないということです。  以上です。
  24. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) 民間企業としてこの東アジア共同体みたいなものについてどういうふうに思うのかというお尋ねでございますが、先ほど冒頭の御説明の中で、日中という舞台ではございますけれども、車の両輪に例えると、製造業とかインダストリーと呼ばれるような領域については物すごくもう立派なタイヤを履くようになっているのに、金融とか証券とかいう方は非常に何というか貧弱なタイヤのままになっていて、この不均衡はだれも得をしていないという世界だということを申し上げました。  私、今のような投資会社という観点から見ると、正に、何というか、何でこんな何もできてない状態なんでしょうというところを半歩でも一歩でも進められないかなというふうな思いで今の会社をつくったわけでございます。これだけ日本中国の間に製造業の密接なネットワークがあるときに、そこにもっとかかわって、何というか、いろんなビジネスのできない状態の金融、証券というのは本当に機会の逸失という意味でもったいないと思うんですね。あるいは、金融業がいろんな金融サービスを提供できる、情報を提供できるというふうな機能が強化されれば、製造業が中国でやれる技にももっと幅と深みが出てくるはずでございます。  そういうふうな観点から、特に今一番立ち後れている金融、証券、こういうふうなところでもうちょっと何かできないかなという観点から見ますと、アジア共同体というのは正にできると有り難いということでございますし、そのためにはやっぱりその制度に、何というか、先行する事実みたいなところの積み上げもやっぱり必要だと思ってまして、そういうようなところで何がしかでもやれればなと思っております。  もう少し例を挙げますと、去年、御案内のように、日本の株式市場というのは、人によると一世紀の間に世界で何回も起きないというぐらいの大幅な、何というか、株価上昇を経験をしたわけでありますが、このことを隣国中国お金持ちの人たちで知っている人が実に少ないと。ましてや、おれもそこでもうけたという人たちはもっと少ないという、非常に、何というか、奇怪な現象があります。なぜかというと、中国人は、ビジネスをやっている人でも、日本経済はもう終わったと、あるいは没落したというふうな先入観があって、最近の日本経済の回復みたいなところについての、何というか、その情報の入手が物すごく後れていました。元々、ある種ばかの壁みたいなものがあるものですから、そういうふうな情報が頭に入りにくいというふうなこともありましたし、更に言えば、やっぱり、何というか、先ほど、中国人が主語になるような経済が、経済行動が日本国内という舞台で起きるかどうかということを申しましたが、そういうふうな中国ビジネスマンみたいな人たちが日本にもっと来て、おっ、これはすごいということで日本株に投資をするというふうな、そういうふうな人の行き来みたいなものが今は余りないということも一つの原因なんだと思います。  こういうこともその金融、証券のタイヤがもうちょっと立派になれば起きなくなるんじゃないかなというふうに思いますし、私の仕事の関係でいうと、最近ようやくその中国企業の中で海外に上場したいと、だけれども、その海外の上場場所として、今までみたいに香港とかアメリカのナスダックだけじゃなくて、実は日本というのが穴場なんではないかというふうに思う企業というのが増えてきております。考えてみたら隣じゃないかと。で、その隣の資金量、流動性というのが世界で一番高いんではないかというふうな観点からの再評価であります。  そういうふうな目を向けてくれたからといって、直ちに、何というか、物事が起きるというほど世の中は簡単ではないと思いますが、これもまた日本中国の間で非常に発達の後れている金融、証券の、何というか、そのタイヤが立派になるための一つの工程だと思うんですね。そういうふうな形で、金融も含めたアジア共同体というふうなものの積み上げが、何というか、進んでいったらなというのが私の願いでございます。  それとの関係で申しますと、今、私のビジネスでいうと、一つの大きな悩みは何かというと、中国の資本市場というのもまだ十分に開放されていなくてまだまだ規制が多いという問題があります。ただ、中国の側にしてみれば、資本市場を十分に開放していくためにはいろんな何というか条件があると。その中の条件の一つって、やっぱり何というか通貨が安定するということだと思うんですね。人民元レートが乱高下したりなんかされると困ると、そこら辺は大丈夫なのかというふうな彼らの不安があるわけでありますが、そういうところについてアジア通貨協調みたいなものが進めば、少し心安んじて、その資本市場開放のペースもスピードアップをしていくことができるというふうな、そういう因果関係もあろうかと思います。そういう観点からいえば、その共同体はその通貨も含めた形でのれんがの積み上げが大事だなというふうに思っております。
  25. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) ありがとうございます。  以上で各会派一人一巡をいたしましたので、これより、午後四時ごろまでを目途に自由に質疑を行っていただきます。  質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。──はい、分かりました。  それでは、中川雅治君。
  26. 中川雅治

    ○中川雅治君 ありがとうございます。自由民主党の中川雅治でございます。  まず、小川参考人にお聞きしたいと思います。  EUとそれから東アジア、これはかなり状況が違っているんではないかなと思います。ヨーロッパにおきましては、EUの萌芽期でありました一九五七年に発足したいわゆるEECのときですね、対域外共通関税を設ける取組であります関税同盟を結ぶことが目指されまして、一九六八年には既に実際に関税同盟が締結されていたわけであります。  東アジア地域におきましては、まだその関税同盟を締結する以前の段階であります域内自由貿易圏すら達成されていないというのが実情だと思うわけであります。しかしまた、今後仮に自由貿易圏が東アジア地域において形成されたとしましても政治統合は難しいというふうに思いますが、現在のような、現在のEUのような市場統合あるいは通貨統合ということも視野に入れた経済統合を目指した場合に、地域内での経済の発展段階に非常に差が大きいと思うんですね。  例えば、一人当たりのGDPで見た場合に、日本は約三万六千ドルでございますけれども、ASEANプラス日中韓の中で一番低いミャンマーの一人当たりのGDPは約百八十ドルということでありまして、日本との差は約二百倍にも及ぶわけであります。また、多様な政治体制が併存するということでありまして、例えば共産党政権である中国、ベトナム、それから軍事政権のミャンマーなどが存在することなどを考えますと、EUにおける経済統合の取組と東アジア地域の今後の経済統合に向けた動きをパラレルに考えていくというのはなかなか難しいというふうに思います。  先ほどから小川参考人お話で、日本の取るべき道としてドイツ型かイギリス型かスイス型かということがあって、ドイツ型というようなお話もあるわけでございますけれども、なかなかこう、そこのところはEUの実情と東アジア実態はかなり違うと思いますが、そういう大きな相違を念頭に置きつつも、やはりEUの統合に向けた動きというものが東アジア経済統合を進めていく上で大いに参考になると思います。  そんなことで、EUの統合の歴史から東アジアの学ぶべき教訓というものがあれば教えていただきたいというふうに思います。  それから、二番目でございますが、ASEANプラス3の枠組みの中の地域協力の中でも、チェンマイ・イニシアチブやアジア債券市場育成イニシアチブといった地域金融協力の取組が進んでいるわけであります。  先ほどからお話ありますように、一九九七年のアジア通貨危機を契機にしたものだというふうに思いますが、チェンマイ・イニシアチブによる、言わば外貨を融通し合うことによって東アジア地域の通貨スワップ網の構築をしていくという、これは大変大きな意味があったわけでございますが、もう一つ東アジアの貯蓄を長期的な視点で同地域の投資に向かわせることを目的としたアジア債券市場育成イニシアチブというのがありまして、これはアジア通貨危機の再来を防ぐ上で非常に有効な対策となっていると考えるわけでございますが、この推進を図るには今後どのような取組が必要であるというふうにお考えかということが二点目でございます。  それからもう一つ、先ほどから東アジア共通通貨単位ということで先生のAMUお話がございます。一方で、同じようなことかもしれませんが、アジア開発銀行アジア共通通貨単位アキューですね、ACUの公表を今検討しているというふうに聞いているわけでございますが、何といいますか、その違いといいますか、これがちょっとよく分からない。  それから、アジア開発銀行も本当にどこまで考えているのかということだと思うんですね。アジア共通通貨単位域内為替動向をモニターするためのベンチマークとして活用する、あるいは将来はアジア共通通貨単位を計算単位として債券を発行するというようなことが考えられているということなんですが、その行き着くところはどこまで考えているのかなということ、今の段階で見通しがあればお聞かせいただきたいと思います。  以上でございます。
  27. 小川英治

    参考人小川英治君) まず、EUの統合の歴史から東アジアは何を学ぶべきかという御質問ですけれども、EUの統合は、よく深化と拡大の歴史だというふうに言われております。その深化と拡大の歴史という意味は、まずできるところから、あるいは、先ほどから御議論ありますが、必要性のあるところからやっていって、しかも地域も、最初から今のEU二十五か国でスタートするというのではなくて、最初は六か国からスタートしているわけですけれども、そこから拡大していくという、そういう歴史を持っているわけですね。  で、それは非常にヨーロッパ東アジア状況違うという御指摘はそのとおりなんですが、ただ、そういうそのプロセス、いわゆる多段階方式、あるいはその何段階、その状態が違うものが併存している、例えばEUに入っている国と入っていない国、あるいはEUの中でもユーロを入れている国、入れていない国という、そういう中で着実に進んできたということは、東アジアのその戦略というかアプローチの仕方として参考になるかと思います。  それで、今その東アジア共同体の中で貿易面では例えばすべて締結したとしても、例えば通貨の面ではそこに入れる国だけ入っていきましょうと、あるいは先に貿易は先行して通貨は数年後からいきましょうとか、あるいは貿易よりも実態面では直接投資とかそちらの方が進んでいますから、投資協定の方から先に進んで、その後FTAに行って、そして通貨同盟と、それを必要な国からやっていくという、そういう多段階方式というのが、それは普遍的にアジアにとっても必要な、あるいは重要なアプローチだと思います。  ですから、そういうところは参考に、そういうそのアプローチの仕方ですね、を参考になるのかなと思っております。  それから、アジア債券市場のイニシアティブの問題ですけれども、これどのように推進していくべきかということで、アジア債券市場イニシアティブにおいては、インフラを整えるということで、財務省のASEANプラス3のところで議論をしたわけですね。それから、一方で、中央銀行のグループでは、ファンドをつくって、アジア通貨建ての債券のファンドをつくって、むしろそのファンドの方から、投資家の方から、投資家の方に近い方から進めていくということをやっていて、それはある程度進んできていると思います。中にはまだ、決済をどうするかとか、そういうところ、まだこれからのところがあるんですが、今ここに来て問題になっているのは、民間の投資家あるいは機関投資家にそのアジア通貨建ての債券とかあるいはアジアの債券をいかに買ってもらうかと、投資してもらうかということが問題かと思います。  で、一つは、機関投資家とか投資家がそこに関心を持つということが必要ですし、それからもう一つは、各国が資本規制とか為替管理をやっておりますので、事実上それがやりにくい状況にあります。そこを、例えば資本規制を急に開くと、投機家、例えばヘッジファンドとかが攻撃してきて通貨危機になる可能性もありますので、そこは徐々に開いていくということで、いかにその投資家、機関投資家にアジア債券を購入してもらうかと、投資してもらうかというところが今考えなければいけない、あるいは今非常に喫緊で取り組んでいる問題だと思います。  それから、私がここで提案しているAMUとそれからADBのACUとの違いなんですが、まだそのADBの方から詳細というか、具体的にどういうものにするかというものが出てきていませんので、発表されておりませんので、具体的にどう違うのかというのは細かいところで分からないんですが、基本的には、私がここで言っているAMUアジア開銀のACUアジア通貨バスケットと、加重平均値という意味で同じものだと思います。  ただ、そのウエートの、どういう、例えばGDPとか貿易量とか、あるいは金融市場とか、そういうものでどのようにウエート付けしていくかというところ、それから通貨の構成は恐らくそのADBもASEANプラス3の十三か国だと思うんですけれども、そこの通貨構成の中身とかウエートの仕方はまだ発表されておりませんので、そこは私の提案とは違ってくるかと思いますが、そこら辺は私にはちょっと分からないところです。  それから、サーベイランスのベンチマークとか計算単位ということでADBがどこまで考えているかというのは、ちょっとそこも、ちょっと私自身ADBから情報を取っているわけではないので、そこはちょっと分かりませんので、ここでは差し控えさせていただきます。  以上です。
  28. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) それじゃ、白眞勲君。
  29. 白眞勲

    白眞勲君 民主党・新緑風会の白眞勲でございます。お二人の参考人、非常に関心のあることを本当に分かりやすく説明してくださいまして、大変ありがとうございました。  まず、小川参考人にお聞きしたいんですけれども、私も何かこういう共通通貨って必要なんだろうなということは感じておりまして、実は私も今はこういう議員をやっているわけでございますけれども、その前、民間企業にいたときにやっぱり、ある韓国系の企業にいたせいでしょうか、いつもこの為替レートにはもうほとほと辟易していたわけでございまして、まず、何だ、銀行で何とかチャージ何とかチャージって何でこんなに一杯取られるんだというのもあるし、それから一度は、あれは何でしたっけね、急に円がじゃんじゃんじゃんじゃん上がったことがあるんですよ。その最中に大きな買物を実は韓国で、ウォンでじゃない、円で買ってひどい目に遭ったことがありまして、結局、こちら側のメーカーさんには何だ、天災だと、これは天災だということで、契約書による天災条項を利用して何とかしのいだと、お互いに痛み分けをしたことがあるぐらいなもので、こういう共通通貨でこういう形にすることによって、その為替のリスクというものをなくすということだけでも各日本企業のみならず、アジアに置く企業というのは相当な分量のその消耗がなくなるんじゃないのかななんていうふうにも感じているわけでございます。そういった面では、早くこういうのをやってよねというのがあるわけですが。  先ほど申し上げました銀行のこの送金手数料とか、そういったものもやっぱりまず第一段階としてそこから、やっぱりそういう何とか手数料というのを低くすることをまず話し合って通貨の移動をどんどんさせることも必要なんじゃないのかなと思います。  私のところでも、本当にささいなお金を送るのにも、場合によってはたしか六千円ぐらい取られるんですよね、あの送金手数料が。そうすると、一万円送って六千円取られちゃったらとんでもない話になっちゃうわけでして、結局まとめて送るよねという話になってしまうと。そういったこともあるんで、まずその銀行の段階が一つあるんじゃないかなというのがあるんですけれども。  もう一つは、やっぱり九七年の東南アジアの、今何度も出てきている例の通貨危機の関係でいうと、金大中大統領が当時、あれはソロスさんでしたっけ、と実際に会って話をしたりとか、そういう投機マネーとかヘッジファンドとかそういう攻撃なんじゃないかとか、いや、これはアメリカの陰謀だとか、いろいろな、何かありとあらゆるうわさがあるわけでして、今も韓国通貨ウォンが日に日に強くなってきているというのも一つの政治的な動きではないんだろうかという部分があるわけだと思うんです、そういうふうに言われている部分もある。  そういう中で、このアジア通貨同盟をすると、結局その中で、一つには、もちろんその国内の政治の安定性というのも非常に重要だと思いますけれども、もう一つは、やはりそういういろいろな攻撃と言っていいのかどうか分かりませんが、そういったものからのどうやって守っていくかということも一つの大きなポイントになるんではないんだろうかというふうに思うんですが、その辺についての御見解もお聞きしたい。  それからもう一つは、やはり決済銀行は先生の言うAMUの場合にも何か必要なのかなというのもあるんですが、その辺についてもお聞きしたいということでございます。  それと、津上参考人にお聞きしたいんですけれども、私も、観光交流というものも私も大賛成でございます。ともかく、やっぱりまず行ってみることと、行ってみてもらうと、来てもらうということは非常に重要だと思うんですけれども、ジャルパックの例を出されましたけれども、ジャルパックの場合には、日本人の習性と言っちゃなんでございますけれども、行ったら必ず帰ってくるというところがあるんですが、外国の方の場合には行ってもなかなか、そのまま居着いちゃうという人もいるらしくて、その辺で、この文書にも書いてあるように、問題のない中国人の来日機会を増やすというのも、なかなかこれも、何というんでしょうね、どういうふうにしていくかという工夫がやはり必要になってくるんじゃないかなというふうに思うわけですけれども。  人の移動を促進することは、それは物の移動であり、技術の移動であり、いろいろな移動が促進されるとは思いますけれども、私は、一つにはやはり文化交流というのもすることによって、人の移動よりもまずは、例えば中国との関係でいうなら、もっと文化で、日本のいろいろな漫画とかそういったものも含めて、どんどん交流の機会を進めていくという方向性から徐々に進めていく方法もあるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、その辺についての先生の御意見を聞きたいと思っております。  以上です。
  30. 小川英治

    参考人小川英治君) まず、銀行の送金手数料については、これはやっぱり私自身高過ぎるとは思うんですが、ただこれはまたちょっと別の話題になるかと思うので、銀行の産業の寡占とか、あるいはその規制とか、あるいは競争政策をどうするかという話なので、そこはちょっと差し控えさせていただきます。  それから、私自身、おととい、昨日、韓国行ってたんですけれども、空港で一円が七・九ウォンで、ひところより二〇%ぐらいウォン高で、交換しようと思ったんですが、ちゅうちょして交換しないで、手持ちのウォンだけで過ごしてきて帰ってきたんですけれども、やはりそういう意味通貨が、ここ数か月でウォン非常に高くなっているわけですね。それは二〇%高くなっているというのは、これはやはり異常なことです。ただ、韓国日本でもそうなんですが、今、日本韓国、両方とも当局、通貨当局は介入全くしない状況になっています。それが逆に為替相場をそういうふうに大きく変動させているということにあるかと思います。ですから、そういう意味で、ある程度動き始めたらどっか上限下限を決めてお互いの国で介入し合うという、そういう制度を例えば日本韓国の間で結んでおくと、私がおととい経験したようなウォン交換するのをちゅうちょするというようなことはなくなってくるのかなと思います。  あと、それからもう一つ、投機家からの攻撃に対してどう守るかということで、現状、チェンマイ・イニシアティブでは、危機になったときに、危機になったことを認識して、調査して、その上でしかもIMFがそこにお金を貸すという条件の下でチェンマイ・イニシアティブは動くという、そういう意味で機動性のない状態にあります。それを控えるためには、例えば東アジアの中である程度ファンドをつくって、そこで危機になったらそこからお金を貸してあげるという、機動性の高いものにしていくというのが投機からの攻撃を守ることになっています。しかも、たくさんファンドがあるということになると投機家も攻撃しにくくなるわけですね。ですから、そういう意味でそういうものをつくっていくということが必要だと思います。  それから決済については、先ほど話題にありましたアジア債券市場イニシアティブで、そちらの方で決済についての、インフラの整備ということも議論されておりますので、そちらの方が進んでくるかと思います。  以上です。
  31. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) 文化交流みたいなもの大事じゃないかというお話で、全くそのとおりだと思います。  私も必ずしも全部をよく知りませんけれども、そういう目で眺めてみると、政府のやっているようなもの以外に非常に多くのNGO、NPOみたいな形での日中交流というのに携わっておられる方々が一杯おられるわけでありまして、こういうふうなものを、何というか、更に進めていけるといいなという気がいたしますが、今後は向こうからもこっちへ来るというふうな双方向化で、何というか、やれるといいなと思います。  また、それから、今この二年間ぐらいで随分と進展を見てきた交流の仕方として、中国人に対する団体観光ビザの発給という制度があるわけであります。これはまあ徐々に徐々に、何というか、ビザの発給に浴せる中国の地域なんかも拡大をしていくという形で進んできたわけでありますが、これは私は比較的うまくいっている例かなと思います。  もちろん、そういうふうな、何というか、その団体観光の枠組みを使ってこっちへ来たらどろんしちゃってという人が皆無ではありませんけれども、事故率みたいなパーセンテージを国際的な、何というか、相場観に照らすと非常に事故率低く運用ができている部類なのかなというふうに思っておりまして、その背景には恐らく、そういう事故を起こしてしまうともうしばらくの間、何というか、対日観光業務に従事できなくなってしまうというふうな、ある種、制裁措置みたいなものがあって、中国側の旅行社も、何というか、相当神経を使ってツアーの組成に当たっているというふうな、そういう運用が多分その背景にあるんだろうと思いますが、こういうふうな形で一歩一歩、何というか、拡大をしていけるといいのかなというふうに思います。  あと、それから、比較的管理しやすく事故も起きにくくという、しかもすごく効果が、何というか、期待できるという交流類型としては、中国人の学生生徒の対日修学旅行というジャンルがあるのかなと思います。非常に感受性の強いティーンエージャーの時代に、何というか、日本を見るというふうな機会があるというのは、これは非常にいいことだと思います。中国も、子供たちをそういうふうな海外修学旅行に出せるぐらいのお金のある階層というのも、もちろん全部ではありませんけれども、そういう人たちも出てまいったということですので、そういうふうなところも力を入れていけたらいいのかなと思います。  他方、冒頭説明の中で申し上げましためり張りという観点からいうと、もっと取れる、何というか、不法行為の取締りみたいなところでやれることもやるということとの抱き合わせであるべきだと思います。  そういう観点で思い起こしますのは、非常に世間を震撼させた福岡の一家皆殺し事件という中国人犯罪が起きたわけでありますが、中国へ逃げた犯人たちがほどなく中国国内で現地公安に拘束をされたということがございました。多分、日中の警察の連係プレーみたいなものがその背景にあってのことだろうというふうに思います。  聞くところによると、東京の中国の大使館にも公安からの、何というか、アタッシェが駐在するようになったというふうな変化もあるように聞いておりますけれども、こういうふうな、何というか、連係プレーによって本国へ逃げ帰っても無駄だということになったというのは、これは悪いことする人間にとっては非常に大きなゲームのルールの変更だったと思うんですね。以前は何をしても逃げてしまえばもうこっちのもんというゲームだったのが、逃げると今度は日本の警察よりもはるかに怖い中国の公安が待っているというそのルールの変更が起きたというのは、これは非常に大きかったと思うんですね。  こういう連係プレーが功を奏するということであれば、もっとそれを強化することはできないのかという気がいたしますし、あるいは法務省であるとか、外務省のビザの査証部門だとか、そういうふうなところでももう少し予算を付けて、何というか、いろんな情報化を進めればもっと効果的な取締りができるような領域というのはまだまだ残っていると思いますので、そういうふうな部門にも、何というか、対策強化をしながらやっていくというふうなことができたらいいんじゃないかなと思います。
  32. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) 澤雄二君。
  33. 澤雄二

    ○澤雄二君 今日はどうも両参考人ありがとうございます。  手短にお二人に質問をいたします。  十年後に中国GDP日本と並ぶ可能性があるというお話もございましたが、それにしても中国経済成長は本当にいつまで続くの、どれぐらいのレベルで続くんだろうかという疑問は残ります。そのことを考える要件はたくさんあると思うんですが、その中で、先ほども話が出ましたけれども、エネルギーと環境問題について伺います。  この問題について中国政府が本気になって取り組んでいるというのは津上参考人言われたとおりであります。先週、ある政府関係者とお話をしましたときに、実は去年から資源とエネルギーを前年並みに抑えるという目標を立てたということをおっしゃっていました。そんなことをしたら経済成長は止まるじゃないですかと言ったら、それは生産性を向上させることによってカバーしようと思っているんだと。その事実、確認していませんが、そうおっしゃっていました。  だから、かなり本気で取り組むんだろうなと思っていますけれども、このエネルギーと環境問題は今後中国経済成長にどれぐらいの影響を与えるかというふうなことをお二人に、一言ずつで構いませんので、お聞かせいただきたいなというふうに思います。
  34. 小川英治

    参考人小川英治君) 私自身の専門からはちょっと離れておりますのでとても難しい問題なんですが、今、生産性を高めて対応するっていうことですが、確かに中国では生産性、非常に高くなっております。日本でも、日本にとってその京都議定書がとても大変だったのは、生産性を上げてエネルギー節約的な産業に転換した後に議定書ができたのが大変だったわけですね。ですから、そういう意味中国がそういう生産性を改善して、今しつつありますから、そういうところで対応できれば、まあ経済成長の低下というのはそれほどないのかなというふうに、もう私としては素人としての意見です。  以上です。
  35. 津上俊哉

    参考人(津上俊哉君) 例えば、省エネルギーという観点から中国を見ますと、日本はぞうきんを絞り切ってもう一滴も残らないぐらい省エネを進めた産業領域みたいなところがあるわけでありますが、これとの対比でいうと、中国のぞうきんはまだじゃぶじゃぶにぬれております。本当によくこんなに無駄遣いするなというぐらいエネルギーを浪費している部分がございますので、こういうところでしっかりと省エネ対策、省エネ投資をする、あるいは省エネだけじゃなくて脱硫投資をするというふうなことをしていけば、エネルギーの利用を抑制しながら経済成長をしていくということはあながち難しくはないのかなと思います。多分、その経済計画もそういう方向で、エネルギー節約というのを相当重視して今作っていると思います。  それと、恐らく今までは、そういう環境対策投資みたいなものは売上げ増大につながらないコスト要因でしかなかった。そういうふうな経済マインドで中国は動いてきたんだと思いますが、ここへ来て、何というか、環境の保全だとか国民の健康というふうな、必ずしもGDPにカウントしにくいような、そういうふうなものも価値なんだと、そういうものも保全して伸ばしていかなきゃいけないという頭がようやく芽生えてきたように思います。  そういう観点から見れば、必ずしもコスト要因ではなく、売上げとは言いませんけれども、ウエルフェアの、増大のための投資だというふうな位置付けになると思いますので、是非その方向でやってもらいたいと思っております。
  36. 澤雄二

    ○澤雄二君 ありがとうございました。
  37. 西田吉宏

    会長西田吉宏君) どうもありがとうございました。  予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  小川参考人及び津上参考人におかれましては、長時間にわたりまして大変貴重な御意見をお述べをいただきまして、おかげさまで大変有意義な調査をすることができました。厚くお礼申し上げる次第であります。  今後、お二方のますますの御活躍を御祈念申し上げたいと思う次第であります。本日のお礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会をいたします。    午後四時五分散会