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仁比聡平君 日本共産党の
仁比聡平でございます。
私は、小泉首相が郵政
選挙だと唱えて圧勝した昨年の総
選挙後の特別
国会で衆議院に
憲法特別
委員会の設置が強行され、当
憲法調査会も再開されるに当たって、
憲法改定
国民投票法制定の動きのねらいが
我が国を海外で戦争をする国につくり替える九条改憲を焦点とした改憲への地ならし、条件づくりにあることは明白であり、強く反対する立場を申し上げました。
参議院憲法調査会は、
日本国憲法について広範かつ総合的に
調査を行うことを目的とし、議案
提出権を持たない、つまり、あれこれの
結論を求めない、
調査任務に限定した
機関であることを改めて申し上げなければなりません。
憲法改定の
国民投票法制を審議するという衆議院
憲法特別
委員会とは全く
性格を異にするのであり、当
調査会の
調査が、
国民投票法ではなく
国民投票制度の
調査だといいながら、正に衆議院
憲法特別
委員会理事懇談会の
論点整理と
論点協議に呼応する形で
論点整理の上進められることは、
調査会本来の任務と
在り方に反して許されないということを改めて強く申し上げるものでございます。
したがって、我が党は、当
調査会の
論点整理に反対し、
論点整理案を
提出しなかったことを改めて明らかにしておきます。
昨年十二月二十日、自民、民主、公明各党の衆議院
憲法特別
委員会の責任者がこの
通常国会で
国民投票法案の成立を目指す旨の合意をして迎えた今
国会で、改憲のための
国民投票法案をめぐる動きが一気に加速をしています。
私は、今なぜ
国民投票法なのか、
論点整理の上で
調査を進めることがどのような政治的
意味を持つのかについて、同僚
委員お一人お一人にお訴えをしたいと思います。
まず、九十六条があるから、あるいは
手続法を定めるだけだから、さらには
国民投票法が
制定されていないのは
国会の怠慢だ、
立法不作為だといった
議論は、現実に改憲をスケジュールに入れ、その不可欠の
手続として
国民投票法制定を急ぎながら、そのねらいをごまかす改憲派の土俵に乗り、その論者の意図にかかわらず、
国民との
関係では政治的詭弁になるという点でございます。
既に、自民党は、昨年十一月に新
憲法草案を発表し、現実の改憲を政治スケジュールにのせております。それは、
憲法第二章の表題から戦争放棄をなくし、自衛隊を自衛軍として
憲法上明記し、その自衛軍は、自衛のために必要な限度での活動のみならず、国際協調の名の下に海外での活動を
憲法上の任務とするなど、九条、とりわけ九条二項の全面的改廃をねらうものであるとともに、構造改革をもっと推進するための首相のリーダーシップ、社会権や福祉の諸課題は国の責任を放棄して自治体にゆだね、社会保障の市場化でマーケットを止めどなく拡大し、住民負担による自主財源と受益者負担主義で住民にツケを回す地方
制度の改革、また九十六条の
改正要件緩和などを柱としています。
そしてそれは、
我が国の戦争
国家化、とりわけ海外での武力行使を可能にするための
憲法九条二項の削除、集団的自衛権の行使を強く求めるアメリカの対日要求と新自由主義に基づく構造改革と併せ、九条と九十六条に焦点を絞った改憲構想を示した昨年一月の日本経団連の「わが国の
基本問題を考える」など、財界の強い要求に支えられた極めて具体的な日程です。だからこそ、自民党の船田元
憲法調査会長は読売新聞二月九日
付けのインタビューで、「
憲法改正に向け、
通常国会で
国民投票法を成立させたうえで、政党間協議の入り口まで今年後半にはたどり着き、来年、本格的な協議に入りたい。」と言明しているのでございます。
このように、改憲に向け、
国民投票法案の上程と成立という出口を決め、衆議院
憲法特別
委員会では
論点整理と
論点協議が行われています。これに呼応して、当
調査会が各党の
主要論点に関するメモを出し合い、それに基づいて
調査を進めることは、
一つには、改憲そのものの準備ではないように見えながら、しかし改憲の準備に確実につながる、その
意味で改憲派にとって大変具合の良い課題であり、
二つ目には、改憲に不可欠な
手続を確実に整備をしながら、改憲
発議のための大連立と言われる多数派の形成を進めるものであり、三つには、その中で、将来行われる
国民投票を有利に進める
制度的手掛かりを確保することになるという政治的
意味を実際には持っているのでございまして、これと離れた抽象的又は中立的な
手続の
調査はあり得ないということを我々は深く自覚すべきであります。
まず改憲ありきというよこしまな動機に基づくからこそ、
憲法改正のためにはどうしても
国民投票が必要だから、言わば改憲
発議を
国民に追認させることができるよう、本来なら
国民主権の直接行使であるにもかかわらず、
国民投票と
国民投票運動に様々な
規制を掛ける。日弁連からも、いわゆる与党案に対する厳しい批判と反対の
意見、
運動が広がっているとおりでございます。
ならば、改憲派の本音どおり、本当に改憲に向けた準備として
国民投票制度の
論点整理と
調査を進めてよいのでしょうか。
三月二十日の琉球新報は、「
国民投票法案 問題の本質を見失うな」との社説を掲げました。ここでは、
国民投票法案をめぐる与野党協議は
投票権者の
年齢が大きな争点となってきた、
原則二十歳以上とする与党に対し、
民主党が十八歳以上と譲らず対立していると紹介した上でこう述べています。
「
憲法改正論議は、いつから
投票権年齢の話にすり替わったのだろうか。現行
憲法は「戦争放棄」と「戦力不保持」をうたい、比類なき平和
憲法として位置
付ける
国民は少なくない。見直す理由が見当たらないとの指摘もある中で、論議を深めることなく、
改正に向けた準備だけが着々と進んでいる。そんな印象が否めない。 これでは何のための
国会か、ということになる。平和
憲法を変えるとすれば、その理由を、政治家は分かりやすく
国民に説明することから始めるべきであろう。
憲法改正への機運が
国民に熟したとはとても思えない状況下で、
国会論議を深めることもなく、
改正への
手続きを急ぐことは許されない。
投票権年齢の問題などに目を向けさせる手法も姑息と言わざるを得ず、そんなことで
国家の将来が決まってしまっていいのかと思う。」。この厳しい指摘に
委員の皆さんはどのようにお答えになるでしょうか。私は正に正鵠を得た指摘であろうかと思います。
一方で、解釈改憲によるぐずぐずの状態を直して立憲主義を再建するためには、
憲法をきちんと
改正して自衛隊については認めないといけないという有力な
議論がございます。そのための
国民投票法が必要だという
議論になるのかもしれません。
ですが、私は、
憲法の本来の要求から解釈改憲によって乖離させられた現実に
憲法の側を合わせることが本当に立憲主義なのかという疑問とともに、解釈改憲によってはどうしても乗り越えられない
限界は依然として非常に大きく、その
意味で、九条二項の歯止めを取り払おう、解釈改憲を打破して明文改憲を行おうという強い衝動が九条改憲派にあり、そこに今日の改憲問題の中心的焦点があることを正面から見なければならないと思います。その方向で改憲がなされればどうなるか。その結果は、自衛隊の現状を
憲法で追認することにはとどまらない重大なものとなります。
小泉首相は、戦争をするために
憲法を
改正するわけじゃない、なぜ九条を変えれば戦争することになるのか分からないと語気を荒げてみせ、自衛隊の認知のみが九条改憲の
意味であるかのように言います。
しかし、九条二項の歯止めとしての意義について、九〇年十月二十二日の内閣
法制局答弁によっても、九条二項を改廃するなら、第一に海外での武力行使、第二に集団的自衛権の行使、第三に国連が組織する武力行使、すべてへの
参加が
憲法上可能になります。
さらに、交戦権の否認という
憲法原則を改廃すれば、交戦国が有する種々の権利、すなわち相手国兵力の殺傷及び破壊、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、中立国船舶の臨検、敵性船舶の拿捕など、政府
自身、
憲法上禁じられるとしてきた行動が解禁されます。別の角度でいえば、今の九条明文改憲をめぐる焦点は、自衛隊が違憲であるか合憲であるかではなく、集団的自衛権も含めて自衛隊の武力行使目的での海外派兵を正当化する点にあるということです。
在日米軍再編の中で進められている日米の軍事一体化、アメリカの世界戦略の中に更に深く組み込まれようとしている日米同盟と自衛隊の現実を直視すべきであります。
昨年十二月十三日、額賀防衛庁長官が、例えば嘉手納飛行場の訓練を何機、何回移転するといった具体的な案がないと地元に説明する上でも不十分と問うた会談の中で、ローレス・アメリカ国防副次官はこう答えました。日本側は沖縄の負担軽減と言うが、アメリカ側は訓練減少自体が目的とは考えていない、自衛隊との共同訓練や相互運用性の向上がまず目的だ、日米同盟の能力強化が重要なねらいであると、こう言っています。
自治体ぐるみの反対にもかかわらず、岩国でも沖縄でも、政府はアメリカ言いなりに強硬姿勢を強めています。それは、平和と安全の代価だと言い、日米同盟の軍事一体化で同盟能力を高めることを最優先にしているからにほかなりません。そして、これは九条改憲と表裏一体であり、先取りであります。だからこそ、改憲日程を具体的スケジュールとし、
国民投票法について今
国会で成立させるなど、出口を決めて
論点整理を進めようというのではないでしょうか。
私は、そのような
調査の
在り方に強く反対し、改憲のための
国民投票法制定反対の大きく広がる声を院内外で受け止めて、奮闘する決意でございます。
ありがとうございました。