○
委員長(
中島眞人君) それでは、これより
平成十六
年度決算外二件について討論に入ります。
お手元に配付してあります
平成十六
年度決算審査措置要求決議案及び
平成十六
年度決算議決案の案文につきましては、いずれも理事会において協議の結果、
意見が一致したものでございます。
それでは、警告の案文を朗読いたします。
内閣に対し、次のとおり警告する。
内閣は、適切な措置を講じ、その結果を本院に報告すべきである。
1
平成十六
年度に
中央省庁が実施した一件五百万円以上の工事の発注や、業務委託等の
契約に占める
随意契約の件数の割合が約七十パーセントと極めて高率になっており、中でも、
国土交通省所管の各建設協会などを始め
所管公益法人に発注した
契約には、
随意契約割合が百パーセント、あるいはそれに近い高率になっている例が少なからず見られ、さらに、これらの公益
法人に多数のOBが天下っていることは、
契約の公平性、競争性及び
透明性の確保に疑念を抱かせ、看過できない。また、IT
調達にあっては、
民間企業を相手とする
随意契約が金額の七割から八割を占めている
省庁もある。
政府は、
随意契約の
見直しに当たっては、相手方の官民を問わず
一般競争入札を
原則とし
例外的に
随意契約を認めている会計法の精神に照らして厳格な運用に努めるとともに、
所管公益法人等への業務委託の実施に当たっては、天下りの状況も含め積極的に
情報開示を行うなど、
国民の不信を招くことのないよう厳正に対処し、
公共調達の
適正化に努めるべきである。
2
独立行政法人において、従来の特殊
法人をも上回るような役員報酬を定めたり、職員給与が
平成十六
年度の対国家公務員ラスパイレス指数で事務・技術職員が一〇七・一、
研究職員が一〇三・二となっているなど、概して高い水準となっていることに加えて、
国立病院機構において、特定の業者に種々の業務を
随意契約により発注する一方で、旧国立病院から多くの天下りが行われている事実や、医薬基盤
研究所の承継勘定において、
政府出資金三百六億円の八十三パーセントに当たる二百五十四億円が繰越欠損金として計上され、国費の毀損が生じている事実等が見られることは、看過できない。
政府は、
独立行政法人の
運営の大部分が国からの
運営費交付金等により行われている実態にかんがみ、
原則一般競争入札の徹底及び
随意契約受注企業への天下りの抑制、
事業実施に当たって収益見込み等の一層厳格な審査による
政府出資金の欠損の最小化に努めるよう、
指導すべきである。
3
特別会計については、
歳出規模が純計額で前
年度を上回り二百二十五兆円余と
一般会計を大きく上回っており、依然として多くの
特別会計において、不要不急の
事業の実施や多額の積立金・資金、不用・剰余金を抱え、一部は引き続き増加傾向にあることは、看過できない。
政府は、各
特別会計の
事務事業の
見直しに加え、右の各種の
余剰資金の縮減、
一般会計への繰入れ・繰戻し、
事業の実態に即した適切な予算計上を行うなど、透明化のため、一層目に見える
改善に努めるべきである。
4 国が
公益法人等に
補助金等を交付して設置造成させている資金等について、本院からの
要請に基づき
会計検査院が
会計検査をした結果、
平成十六
年度末時点で設置されている百十六資金のうち、食品流通構造
改善対策債務保証
事業基金を始めとする三十三資金において、
事業実績が継続的に少ない状況となっている等の
問題点が
指摘され、その上、
平成十二
年度決算
検査報告でも
指摘をされながら依然として事態が好転していない資金があったことは、遺憾である。
政府は、これら三十三資金についてはもとより、
行政改革の一環として
見直しの
方針が示されている
公益法人等が行う政策金融類似業務も含めて、
事業を継続実施することの
必要性、ニーズに即した
事業内容及び利用条件、需要に応じた資金規模等の検討を行い、
事業の終了や資金の国庫返納も含めた所要の措置を積極的に講ずるとともに、今後の資金
事業の実施に当たっては、目標達成度を測るための
基準の設定やサンセット方式の導入など、定期的に
見直しを行う体制を整備すべきである。
5 防衛施設庁において、同庁幹部が特定の建設業者に業務を受注させるため、当該業者と共謀して他の業者に高い入札金額で入札させて公正な価格を害し、刑法の
競争入札妨害罪で逮捕されるに至ったことは、極めて遺憾である。また、同庁所管の公益
法人「防衛施設技術協会」に多数のOBがいったん再就職し、自衛隊法で営利企業等への再就職を規制している離職後二年間を経過した後、関連建設業界に次々と天下っている事実が明らかになったことは、看過できない。
政府は、防衛施設庁の官製談合のみならず、
日本道路公団や新東京国際空港公団が発注した工事における官製談合事件の摘発が相次ぎ、官製談合の排除の徹底が強く求められている現状を踏まえ、
一般競争入札の一層の拡大、公益
法人への天下りの自粛など、抜本的に官製談合の再発防止策を講ずべきである。
6
日本郵政公社の複数の郵便局において、郵便料金の別納
制度等を悪用して、特定のダイレクトメール発送代行会社等に対して料金の不正値引きを繰り返し、多額の損失を発生させている事実が次々と明らかになったことは、極めて遺憾である。また、冊子小包の取扱いについて不適切な事例が見られることは、遺憾である。
政府は、これまでも郵便の別納
制度等をめぐる不正が生じてきたことを重く受け止め、
日本郵政公社に対して、法令順守の徹底、内部監査の更なる充実、この種事案の再発防止に向けた運用
改善の具体的取組を強く求めるべきである。
7
日本放送協会(NHK)において、近年、相次ぐ不祥事により
国民・視聴者の信頼を大きく失墜させ、受信料不払い急増など受信料
制度の根幹を揺るがしかねない事態を招いたことに加えて、今般、新たに職員の度重なる架空出張による公金横領が発覚し、再び
国民・視聴者の信頼を損ねたことは、極めて遺憾である。また、受信料支払いを法律で義務付けるとの
議論がある一方、NHK関連団体に多額の余剰金が積み上がっている事実は、看過できない。
政府は、NHKの度重なる不祥事を重く受け止め、NHKに対して、綱紀粛正、内部監査の更なる充実によるこの種事案の再発防止に向けた取組、及びNHK関連団体が保有する多額の余剰金の
見直しの検討を強く求め、
国民・視聴者の信頼回復に努めるべきである。
8 航空機を利用した出張に係る旅費について、税関や都道府県労働局では、実際には割引運賃の航空券を購入しているにもかかわらず、これより高額の航空賃を支払ったとする領収証を旅行業者等から受領するなどして、国費が過大に支給されるという事態が多年にわたり生じていたことは、誠に遺憾である。
政府は、各
府省等における出張に係る旅費の支払の際には、証明資料の確認を強化するなど、この種事案の再発防止に努めるとともに、公金等に対する意識の徹底のための取組を強化し、
国民の信頼回復に万全を期すべきである。
9
独立行政法人日本スポーツ振興センターが
運営するスポーツ振興くじ(いわゆる「toto」)については、売上実績が当初の目標を下回り、その
目的であるくじ収益からスポーツ振興
事業への助成も少額にとどまっている上に、くじの販売業務等の委託経費により生じた累積欠損金が多額に上り、また、
運営状況及び
財政状況が
財務諸表に適切に反映されていなかったことは、看過できない。
政府は、
独立行政法人日本スポーツ振興センターに対して、累積欠損金の解消に向けた現実的で
国民の理解を得られる対応を求め、その負担が
国民に及ぶことがないよう尽力するとともに、「toto」の
制度そのものの
在り方を再検討すべきである。
10 社会保険庁は、市町村から国への保険料収納事務移管後六割台に低下した
国民年金保険料の納付率を、
平成十九
年度に八割にすることを目標にその向上に努めているところであるが、大阪府内を始め各地の社会保険事務所等において、
国民年金保険料の未納者から保険料の免除あるいは猶予の申請がないにもかかわらず、不正に保険料の免除手続等が行われ、かつ、社会保険庁が累次にわたって内部調査を行った際には、複数の社会保険事務局から不正行為を隠蔽する虚偽報告が行われるなど、不正な免除手続の実態が次々と発覚したことは、極めて遺憾である。
政府は、未納者の増加の背景には
平成十四
年度の
制度変更及び不況等による多数の勤労者の厚生年金から
国民年金への移動があった事情も考慮し、高齢者の生活の基礎的部分を担う公的年金の保険料収納において、かかる事態が生じたことを重く受け止め、職員の意識
改革及び内部規律の遵守を徹底し、収納事務の適正な執行を図るとともに、
国民年金
制度に対する
国民の理解の向上に努め、未納者の実情を熟知する市町村との協力をさらに強めるなど、
国民年金保険料の納付向上及び減免
制度の周知徹底による真に納付不能な人の救済に一層努力すべきである。
11
厚生労働省において、広島労働局における不正経理を受け、全国の都道府県労働局に対し特定監査を行い兵庫労働局における旅費等の不正支出を発見したが、その後の警察の捜査により特定監査で判明した以外にも同労働局において多額の不正経理が行われていたこと等が明らかとなった。さらに、
会計検査院の
検査において、北海道労働局ほか五労働局においても、庁費、謝金、旅費等の不正支出や職員による国庫金の領得などの事態が見受けられたことは、極めて遺憾である。
政府は、特定監査において北海道労働局等における不正支出等を確認できなかったこと、並びに二年続けて都道府県労働局に係る警告を受けたことを重く受け止め、都道府県労働局に対する監査体制の一層の充実を図るとともに、会計経理の
適正化、倫理の徹底及び綱紀の粛正についての
指導監督に努めるべきである。
以上でございます。
速記を止めてください。
〔速記中止〕