○高野
博師君 最初に、日中
関係について幾つか御質問したいと思いますが、
外務大臣の方に。
〔
委員長退席、理事浅野勝人君着席〕
私のテーマも戦略ということなんでありますが、同僚議員、同僚の議員から
指摘がありました点について私も大変関心を持っておりまして、この間の決算
委員会でも、
日本政府にそもそも戦略というのはないんじゃないかと、その戦略がない中でどうしてODAだけ戦略的な利用というのができるのかというようなことを聞いたかと思うんですが、
外務大臣はそのとおりだと、こうおっしゃったかと思いますが。
戦略という
意味には、長期的という
意味がある、包括的という
意味もある。そういう、したがって、戦略的パートナーというのは長期的な包括的なパートナーシップを結ぶというような
意味もあると、こう
理解をしております。
デザインという
言葉は、
中国語に訳しますと、確かに正に形とかあるいは形状とか、そういう正にデザイン以外に策略とか戦略という訳があると聞いたんですね。これは
外務省の
中国課に調べてもらったんですが、どうもないという話もあるんですが、
中国語はそういうとらえ方をしている。したがって、この国の形をどうするのか、この
地域の形はどうするのかという中に必ず戦略的な発想があると、こう言われておりまして、私、正にそこに関心があるんですが。
イギリスのトップリーダーはまず歴史を学ぶと、フランスのトップリーダーは哲学を学ぶ、アメリカは戦略だと言われている。
日本はどちらかというと法律しかやっていないと。したがって、歴史、哲学、戦略、そういう発想がなかなか
日本のトップリーダーにはできないと言われておりますが、総理をねらう
麻生大臣にはそういう発想で
外交をやっていただきたいなと思っております。
〔理事浅野勝人君退席、
委員長着席〕
日中
関係なんですが、靖国の問題については具体的な解決策もない、行き詰まっているという中で、私はこれは余り本質的な問題ではないというふうに認識をしておりまして、できるだけこの問題はトーンダウンすると、マスコミもあんまり騒がない方がいいんではないかと思っております。
そこで、日中
関係、日中
関係の問題を
一つの側面から見ると、これは東
アジアあるいは世界全体の中での日中間の
外交戦ではないかという切り口で見ることもできるのではないか。そういう一面からとらえれば、正に軍事力を使わない
外交政治の戦いだということではないかと思うんですが、日中
関係の本質的な問題は、これも前の
委員会で、決算
委員会で
指摘したように、謝罪と賠償にあるんではないかということも
指摘をしましたが、先方が
中国が靖国という問題を突き付けるんであれば、
日本は防戦一本だけでいいのかと。何を突き付けるのか、あるいは何を提言するのか、そういうことも当然考える必要があるんではないかと。
例えば、反日教育をやめなさいと、あるいは歴史的な事実をきちんと検証しましょうと、もうこれは何度も言っているかと思うんですが、盧溝橋
事件、本当はどうだったのか、南京
事件もどうだったのか、あるいは
中国側の大躍進、文化大革命、正に
先ほど出ました「マオ」という本の中に毛沢東は七千万人も殺しているというような話が出てくるわけです。僕もざっと読みました。すさまじい話が書いてあるんですが、それは歴史的な事実なのかどうかということもこれはきちんと検証したらどうかと。
それから、これまで
日本が何兆円というODAをやっているんですが、これは
中国の
国民はほとんど知らない。したがって、今までやったODAを全部、どんなプロジェクト、どのぐらい、何やったかというのを公表しなさいと、
中国国民に。そのぐらいのことを
日本は言ってもいいんじゃないかと思う。全くこれは言っていない。
国民から評価もされていない、あるいは
国民は知っていない、知らないというODAというのは、これは失敗という評価しかならないと思います。
そういうことも含め、あるいは人権とか民主とか自由とか、こういうカードをこちらも出すということをやってもいいんではないか。安保理改革についても
反対しないでくれよと。そういうことを突き付けながら、ある
意味で靖国問題に対応するというようなことをやってもいいんではないかと思うんですね。
そこで、これが日中の世界的な
外交戦であるならば、ありとあらゆる正に戦略、戦術を使って勝たなくちゃいけない。負ければどうなるかというと、
日本は世界的にこれは尊敬されない。
日本の存在感を減少させるということになるんだと思うんですね。
先ほど日英同盟の話が出ましたが、日英同盟もあって
日本は日露戦争に勝ったと。あの日露戦争に勝ったという歴史的な事実がいまだに
日本に対する大変高い評価になっている。いろんな国に行くとその話がいまだに出てくる。これは若干驚きでもあるんですが、これはもう事実なんですね。
戦争をやるわけにはいきませんが、それではこの
外交戦にどうしたらいいかというと、基本的には日中友好という、これは世界と
アジアの平和にとって重要だという基本的な認識はした上で、私は、軍事力を使わないソフトパワー、それでこの
外交戦に勝たなくちゃいけないんではないかと思うんです。
これはもう御存じのとおりに、ジョセフ・ナイ教授が唱えたソフトパワーでありますが、
日本的な価値あるいは文化、音楽、映画、アニメ、あるいは食文化も含めて、あるいは伝統、
日本独自の魅力というものを、これを表に出していく。あるいは
日本が持っている環境政策とか人権政策とか福祉政策とか、そういう政策的な魅力といいますか、あるいは政治的な理想、これは平和主義とかいろいろあると思うんですが、正に
日本独自のソフトパワー、これを使いながら平和
外交戦略というものを使う必要があるんではないか。正に、その中でODAの戦略的な利用というのもあるんだと思うんです。
中国との
関係でいうと、できるだけ多くの
外交カードを持つ必要があろうと思います。それは
先ほど出ました、正にインドがそうだと思います。インド人が一番好きな国は
日本だと、こう言われている。世界最大の民主国家だと。
大臣もさっき
指摘されました。このインドの
関係を
一つの
外交カードとして使うということは当然考える必要があろうと思いますし、パキスタンと
中国の
関係は非常にいいと。したがって、パキスタンも、イランとアフガニスタンとインドと
中国に国境を接している地政学的に非常に重要な国でありますが、このパキスタンとの
関係を強化する中で、パキスタンというカード、これも使えると思うんですね。そういう発想を持って経済協力なり投資なりODAなりをやったらどうかというふうに思っております。
台湾との
関係で、
大臣が国という発言をして若干物議を醸し出されましたが、慎重に発言されながら、しかし大胆に発言してもらいたいなと思っております。台湾、国でないのかというと、国として認めている国家は世界には二十五か国あるわけですね。中南米には十二か国あるんです。特に中米八か国、七か国。
そこで、例えば去年の八月に
日本で中米サミットをやっているんです、七か国の。その七か国は台湾との
関係が非常に緊密なんです。しかし、
中国はこれを切り崩そうということで、物すごい今必死になってやっているわけです。しかし、簡単に切り崩せない。しかし、この中米七か国は
日本との
関係が非常にいいわけです。したがって、これも対中カードとして十分この国との
関係、この
地域との
関係を強化するというのは
意味があるんではないかと思うんですが、そういう発想があって中米サミットをやったのかというと、必ずしもそうではない。そこに僕は、正に戦略的な発想というのはないんではないかと思うんですね。
中国はエネルギー・資源
外交をやっていますので、例えばベネズエラ、チャベス大統領の
関係、これもベネズエラからの石油の原油輸入は全体の二〇%にも上っている。これ相当な
関係を強化している。ボリビアもベネズエラも、左翼というか、どちらかというと反米政権ができている。こういう国に対して武器の輸出もしている。こういう
関係をやりながら
外交をやっている。
中南米は基本的に親日的なんですが、
日本の存在感は今薄れている。僕は二年に一遍は必ず行っているんです、中南米。大体肌で感じますが、ブラジル、これも例えば
中国はどうしているか。毎年百人以上の国
会議員を招待しているんですね。時々来るのは、そのついでに
日本にちょっと寄ると。
日本は数名しか呼んでいない。これは圧倒的な差があるわけです。
中国のブラジルにいる大使は、ナショナルデーのパーティーに呼んだ人の前で一億円も掛けて花火をやったと。みんなびっくり仰天こいたと。それが若干ひんしゅくも買っているようでありますが、とにかくやり方は相当これはもうアグレッシブにやっている。
日本はどうかと。日系百五十万人もいながら、それほど昔と、二、三十年前と余り変わっていない
関係。しかし、今はその日系人、ちょうど
日本が移住した二十五、六万人の数が
日本に今いるわけですね。今二十七万人と言われているんですが、その人たちは必ずしも幸せに暮らしているわけではない。
日本側の教育あるいは福祉政策等の問題があって、受入れの体制ができていない。これも、この南米の大国、
日本の二十何倍もある国との
関係をもっと、正に戦略的パートナーとして
日本側に引き付けると。これは移住者を含めて、血が通っている兄弟国ですから、もっとこれは
日本は手を打てると思うんですね。そういう
意味での
日本は非常に弱い。
アフリカも同じように
中国は相当の勢いで入っている。三年前に在京のガボンの大使が、
日本の国
会議員はだれも会ってくれないといって僕のところに来たのでお会いしたんですが、石油があります、
日本はなぜ関心を持たないんだと、こう言ってきたんです。そうしたら、しばらくしたら胡錦濤が行っているんです。アルジェリアとガボンにまで行っている。そういう、正に物すごい勢いで入り込んでいる。
したがって、これとまた別に、去年の二月にケニアのナイロビで国連の環境計画の
会議がありました、UNEPの
会議がありました。そこに出まして、しかし
中国の副首相が来て、そのUNEPの会合とは別にアフリカの諸国みんな呼んで会合をやっているんですね。このやり方も相当なものです。
アフリカばかり、中央
アジアもそうです。私も七、八年前に行きました、八年、九年前。ウズベキスタン、カザフスタン。これはもう
中国も韓国もロシアも、あの膨大な石油資源をねらって入っているわけです。
日本は全く存在感がないという
状況の中で、対中央
アジア外交もやるべきじゃないかと。ここでも言った記憶がありますが、依然として変わっていないということであります。
オーストラリアの話も出ました。正に価値観を
共有していると。
日本と
アジア大洋州の中では戦争をしていない唯一の国でもある。そういう
意味では戦略的パートナーシップになり得る国であります。そこはこれからやるんだと思いますが、いずれにしても、
日本の地位というのが
中国に取って代わられていると、世界的に見て。僕は個人的には大変危惧をしております。それはそれ、そういう生き方もあるんじゃないかと言われればそうなんですが、それでいいのかということなんですね。
この辺の、今ちょっと一方的に述べましたが、
大臣はどういうふうに感じられるのか、御
意見を
伺いたいと思います。