○鳩山由紀夫君
民主党教育基本問題調査会長の鳩山由紀夫です。
民主党・
無所属クラブを代表して、
質問をいたします。(
拍手)
まず冒頭、先ほど御葬儀がございましたが、小泉首相初め
皆様方とともに、急逝されました松野頼三先生のみたまに対し、心から御冥福をお祈り申し上げます。
小泉
総理、あなたは、就任後の所信表明演説で、米百俵の
精神をこの演壇で
国民に向かって強調いたしました。当然、お忘れになっておられるわけはありません。あれから五年が
たちました。残念ながら、以来、私は、少なくともあなたの口から
教育についての真剣な
思いを聞いたことは一度もありません。昨今、目を覆いたくなるような事件が続発するなど、
社会の荒廃が進んでいます。だからこそ、人づくり、
教育改革が求められているのです。しかしながら、小泉
総理にはそういう認識があるとは全く思えないのであります。
その
理由の第一は、
教育基本法という国の根幹にかかわる重要
法案を、国会の終盤に突然
提出する姿勢です。このことこそが、あなたが
教育を軽んじている証左ではありませんか。
与党内で七十回議論したといいながら、中身が全く見えてきません。中教審の会長ですら、その議論の
経過を全く聞いていないとおっしゃっています。そして、
法案を見ても、本当に七十回も議論をしたのかと疑いたくなるような貧相な
内容です。
密室の中で、
自民党の主張する愛国心と公明党の主張する
宗教教育の中身をバーターしたということがあったとすれば、もってのほかで、全く
国民不在であり、強い憤りを禁じ得ません。
第二に、
教育基本法は
憲法の附属法でありますから、本来ならば、将来、新しい
憲法の中でうたわれる
教育の方針に沿って
改正されるのが筋です。かつて、急逝された後藤田正晴先生をお招きしたとき、
教育基本法は、歴史的にも
内容的にも、
憲法改正をしてから
改正するべきものであると述べられたことを、先生の私どもに与えてくださった遺言と信じております。
民主党では、歴史認識、来るべき文明、
時代にについて考察の末、私の持論でもありました学ぶ権利や
文化コミュニケーション権の充実を
憲法提言の中にも盛り込み、そうした議論と連動して、今回の
日本国
教育基本法案を要綱としてまとめました。しかし、
自民党の
憲法改正案を見ても、
教育に関する新たな
考え方は全く示されておりません。
教育についても、きちんとあるべき
憲法の議論を行った上で、
改正案を出し直すべきではありませんか。
第三に、そもそも
教育基本法の
改正は、文教政策の真髄をなす議論であります。衆議院には文部科学
委員会があるわけでありますから、ここで議論するのが当たり前ではありませんか。それを、時間がないからといって、数の力で強引に特別
委員会を設置すること自体、常任
委員会の否定であり、こうしたやり方は断じて許されるものではありません。本来ならば、まずは国会に
憲法調査会のような調査会を衆議院、参議院に設置して、広く
国民の議論を聞くことから始めるべきであります。
総理、あなたは施政方針演説の中で、
教育基本法について、
国民的な議論を踏まえて速やかな
改正を目指すと述べられました。あなたもおっしゃっているように、十分な審議を行い、
国民的な議論を巻き起こすことが急務であります。六十年ぶりの
改正を、会期が一カ月程度しか残されていない中で、今国会中に成立させることが本当に可能と
考えておられるのですか。もし本気で
考えておられるのだとしたら、
国民軽視も甚だしいと言わなければなりません。
小泉
総理、あなたの、公約を守ることなんて大したことではないなどといった軽佻浮薄な言葉や、刺客を放つなどといった行為こそ、子供
たちに悪影響を与えているのであります。
教育基本法を改めるよりも先に、為政者の軽さこそ改めるべきじゃありませんか。(
拍手)
小泉
総理、私ども
民主党は、一昨年以来、多くの
関係団体の方々とも議論をしながら、新しい
教育基本法の
制定に向けた作業を進めてまいりました。
日本の
教育を具体的に改善していくための大きな第一歩として、
民主党の総意として、
日本国
教育基本法案を近く国会に
提出することにしています。小泉
総理、我が党の案と、
政府の
改正案と、どちらが真剣に子供のことを
考えているのか、今の
教育現場が抱えている問題を本気で解決しようとしているのか、大いに議論しようじゃありませんか。
大変遺憾ながら、文部科学
委員会でも調査会でもなく、特別
委員会での審議になるわけでありますが、我々の
法案も含めてしっかりと議論していくことを約束してください。間違っても、今国会中に成立などとざれごとを言わずに、これから一年、二年かけて、まさに
国民を巻き込んだ議論を呼び起こして、これからの
時代にふさわしい
教育基本法をつくることを約束してください。
総理の見解を伺わせていただきます。
さて、私は、この
政府案を拝見して、まず感じたことは、
一体だれのための
教育であり、
教育基本法なのかということでありました。
実際には
憲法で、「すべて
国民は、
法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく
教育を受ける権利を有する。」と、
教育は
国民の権利とうたってはあります。しかしながら、現在、
我が国では、
格差問題が
深刻化し、
格差の世代間連鎖すら起こっているんです。人生のスタートラインにおける
格差までも放置していいと開き直る
総理は、世界広しといえども、小泉
総理、あなた一人しかいません。まさに、
格差問題解決のためにも、
教育基本法の中では、学ぶ権利が
国民にあることをしっかりと明記する必要があります。
政府案では、
教育の
目的、
目標の中で、
国民に上から強制的に押しつけるような項目の羅列がありますが、一番大事な学ぶ権利や
教育権がだれにあるのかが明記されていない。この点についてどうお
考えでしょうか。
さらに、学ぶ権利は、
国民だけではなく、
日本に住むすべての人々にあるべきと
考えます。それが
社会の安定や向上にもつながります。
政府改正案の第四条で定める
教育の
機会も、「すべて
国民」ではなく、「何人も」に対して保障すべきものだと
思いますが、いかがですか。あわせてお答えを願います。
次に、いわゆる愛国心に関して伺います。
国を愛する心を、健全な形で、自然な結果として
国民が持つのは、至極当たり前の話です。自分の
家庭を愛し、故郷を愛し、祖国を愛する、そうした心が養われることによって、他者を慈しみ、
他国を
理解することもできるはずです。
グローバル化の
時代だからこそ、国を愛する心は必要なのです。しかしながら、それが強制的に押しつけられるものであっては決してなりません。
我々
民主党は、目指すべき
教育について、前文の中で、「
日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い、子孫に想いをいたし、
伝統、
文化、芸術を尊び、学術の振興に努め、
他国や他
文化を
理解し、新たな文明の創造を希求する」とうたいました。
涵養とは、自然に水がしみ込むように、徐々に養い育てるという意味であります。
日本のよき
伝統、豊かな
文化、
日本人が大切にしてきた自然観、先人
たちがどれほどの努力をし、困難を乗り越えて今日の
日本を築いてきたのかなどを学ぶことによって、自分が生まれ育った
日本に対して誇りを持つことができるのではないでしょうか。そういう
精神は、決して、国を愛せと一方的に押しつけるだけで育つものではありません。
この点について、
政府案では、子供に対する押しつけリストと言ってもいいような項目が
教育の
目標として並んでいます。その項目の最後に、「
我が国と
郷土を愛するとともに、
他国を尊重し、
国際社会の平和と
発展に寄与する
態度を養う」とあります。国を愛する
態度というのは、具体的にはどういう
態度なのですか。わかりやすい答弁を願います。国を愛するという心がなくとも、単に
態度だけを示せばよいということなんでしょうか。それとも、
態度の中には心も含まれるとおっしゃるのでしょうか。なぜ愛する心としなかったのかについてもお伺いをいたします。
さらには、
他国を尊重するとありますが、例えば、
我が国に対して拉致という許せない行為を犯している北朝鮮をも尊重しなければならないのでしょうか。明確にお答えを願います。また、
政府案のように、
教育の
目標の最後につけ足すのではなく、きちんと
基本法全体にかかる
基本として位置づけるべきではないでしょうか。
次に、
宗教教育について
お尋ねします。
私は、子供
たちが
宗教心あるいは倫理観を自然に学ぶことは非常に大切だと思っています。しかしながら、
現行基本法の特定の
宗教のための
宗教教育を禁止する
規定が拡大解釈をされて、
宗教心や倫理観の涵養までもが
教育の場から忌避されてきた嫌いがあります。子供が子供を、親が子を、あるいは子が親を傷つけたりあやめたりという事件が続発をし、
拝金主義が横行して、モラルというものが急速に
低下をしています。今こそ、命の大切さや生命に対する畏敬の念、人間の尊厳の大切さを認識し、
宗教的な感性を養うことが重要だと
考えます。多くの
自民党の皆さんも、私と同じような気持ちをお持ちなのではないでしょうか。
残念ながら、
政府案の中では、
宗教教育に関して、ほとんど
現行どおりの
内容です。公明党への配慮でそうせざるを得なかったとの報道もありますが、
教育が党利党略でゆがめられることがあっては断じてなりません。
宗教的情操
教育を充実させることは必要ないと
考えておられるのか、
総理、官房長官にお伺いします。特に安倍官房長官には、なぜ自説を曲げられたのかについても
説明願います。(
拍手)
次に、高等
教育についてお伺いいたします。
高等
教育に力を入れることは、国際的な
競争力をつけていく上でも重要であり、
現行法にない高等
教育の
規定を追加しなければなりません。
政府案では、第七条に、
大学に限って新設をされています。高等
教育には高専なども含まれておるのでありますが、あえて
大学に限定し、その他の高等
教育機関に全く触れていない
理由をお聞かせ願います。
また、
日本の高等
教育における家計の自己負担比率は約六割と、先進国中最も高くなっています。所得
格差が進む中で、高等
教育を受ける
機会の確保が重要です。
政府は、国際人権A規約の中の高等
教育段階無償化条項について、百五十一カ国中三カ国、マダガスカルとルワンダとともに、いまだに
日本は留保しています。国連への勧告も出ており、回答期限も六月末と迫っています。これを解除し、高等
教育の無償化に向けた奨学金
制度の抜本的拡充について大きくかじを切るために、今回の
教育基本法の議論を活用すべきだと
考えますが、いかがでしょうか。
また、少子化問題への解決を
考えた場合、
民主党案に盛り込んだ、
幼児期の子供に対する無償
教育の漸進的導入についていかがお
考えでしょうか。
私は、公
教育には責任を持ってしっかりと財政支出を行うべきだと
考えています。公
教育財政支出の対国内総生産比率は、初中等段階で二・八%、高等
教育段階で〇・五%となっています。いずれも先進国中最低レベルです。北欧諸国並みとまでは言いませんが、せめてアメリカ並みの、初中等
教育三・八%、高等
教育一・五%ぐらいには引き上げるべきだと
思います。
民主党案では、
教育振興計画の中で、公
教育費の確保、充実の
目標を盛り込んでいます。
政府案にはこうした観点は欠落をしています。小泉
総理、あなたは
教育に対して、財政支援も含めて責任を持つ覚悟がおありなのかどうか、お聞かせください。