○馬淵澄夫君
民主党の馬淵澄夫でございます。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
建築物の
安全性の
確保を図るための
建築基準法等の一部を
改正する
法律案について質問を行います。(
拍手)
さて、さきの千葉七区の補欠選挙では、我が党の
太田和美候補が劇的な勝利をおさめました。それは、小泉
構造改革と、その結果もたらされた格差拡大に
国民がノーを突きつけた瞬間でもありました。(
拍手)
小泉
構造改革は、重点七分野の一つとして都市再生を掲げて、容積率を緩和し、都心に
マンションを乱立させました。また、格差拡大
社会は、この国の安心と安全の暮らしを脅かし始めました。つまり、小泉
構造改革の影の部分であり、そして安心、安全に対する
国民の
信頼を足元から揺るがしたのが、それこそ、昨年十一月に
発覚した
耐震偽装問題だったのです。
期せずして、私は、この問題に深くかかわることになりました。すべては、昨年の十一月の二十四日、私の
国会事務所に突然届けられた二冊の
構造計算書から始まったのです。
耐震偽装のやみを暗示するこれらの資料をきっかけに、以降私は、
参考人質疑、一般
質疑、
証人喚問、集中
審議など、国土交通
委員会並びに予算
委員会にて合計十一回にわたって
耐震偽装問題の
質疑を行ってまいりました。
しかし、残念ながら、今もって
耐震偽装問題の真相は明らかになったとは言えません。庶民の夢であるマイホーム、これを失い、多重債務など将来の不安にさいなまれている
マンションの
被害者住民の
方々、
政府の支援を一切得ることができない
ホテルオーナー、さらには、非
姉歯物件の
耐震偽装が明るみになる中、果たしてうちは大丈夫なのかと心配している多くの
国民の不安と不信は、払拭されるどころかますます高まるばかりなのです。
一昨日、昨年十二月二十日の一斉家宅捜査から百二十七日目にして、八名の逮捕者が出ました。しかし、
関係者の逮捕で
事件は一件落着ではありません。
耐震偽装問題は、
事件化しても終わってはいない、何一つ解決せずに今も続いているのです。
私は、まずこのことを、
政府に対して、同僚
議員の諸氏に対して、そして
国民の皆様に対して強く申し上げたいのです、
関係者の逮捕によって、姉歯元
建築士を初めとする一部の者が起こした単なる
事件として片づけてはならないということを。冒頭、まず
大臣に、
耐震偽装問題を単なる
事件に終わらせないという強い御
決意をお聞かせいただきたいと思います。
私は、問題
発覚の当初より、犯人捜しをするだけでは本質的な解決にはつながらないということを再三申し上げてまいりました。一部の人間の悪質な
行為そのものは罰せられるべきものでありますが、一方で、
制度の本質的な欠陥にも目を向けなければなりません。イーホームズ、日本ERI等の
民間の
指定確認検査機関のみならず
特定行政庁でさえ、悪意を持って
偽装が行われれば見過ごしてしまうというのが現行の
確認検査制度なのであります。
本来であれば、
制度構築時にこのようなことも十分予見すべき
立場にありながら怠ってきた
行政の不作為の
責任は、相当に重いと断じざるを得ません。
制度構築に深くかかわってきた
国土交通省、
政府・与党の
責任は徹底的に追及されるべきであり、そのけじめをつけずして、この
国会での
制度改正論議を始めることは許されません。
国土交通省及び
政府・与党の
責任について、
大臣からいま一度明確な御答弁をいただきたいと思います。
私は、これまでの
委員会の
質疑でも、
指定確認検査機関を導入した
平成十年の
建築基準法の
改正時にさかのぼって
政府の
責任を追及してまいりました。当時の
建設委員会の
会議録をひもとくと、委員からの、
民間開放によって確認期間が短くなるのかという質問に対して、時の
住宅局長が、「格段にスピードが速くなる」とした上で、続けて次のように述べています。「
民間にお任せした場合には、確認対象
法令に合致しているか否かという、ただその一点を事務的、機械的に淡々とさばくというふうなことが
業務になります。」これは
偽装を見抜くことができなかった
指定確認検査機関の主張と全く同じものであります。悪意の者が
構造計算書の
偽装を行った場合には見抜くことができない
制度をつくってしまったという
責任は明確にしなければなりません。
現在の
確認検査制度では
偽装は見抜くことができない場合があることをお認めになった上で今回の
法案を
提出されるのか、この一点を端的に
大臣からお答えをいただきたいと思います。
私は、
参考人質疑の中で、
ホテルルートと呼ばれる
ビジネスホテルをめぐる
耐震偽装問題への総合経営研究所、総研の関与の
可能性を指摘してまいりました。そして、国土交通
委員会での
証人喚問では、総研が
平成設計に対して具体的に鉄筋量やくい本数を指示したメモを示し、総研内河所長に対して「指示じゃないですか。」と迫りました。総研内河所長は、自分は知らない、はっきりとわからないと答弁をされました。
確かに、指示性を明らかにするのは困難かもしれません。しかし、例えて言えば、会社の社長が、普通に行けば三十分かかるところを十五分で行ってくれと雇用関係にある運転手に言えば、それは暗にスピード
違反をしろ、つまり法を犯すことを教唆しているのと変わらないのではないでしょうか。そのあげくに
事故を起こしてしまっても、指示した者には
責任はないと言えるのでしょうか。
まさにこれは、川上から川下に、
立場の強い者が弱い者へと無理を強いながら
責任を押しつけていき、その結果、全く過失のない者が知らない間にそのしわ寄せを押しつけられてしまうという、無
責任、
責任回避の
構造そのものではないでしょうか。この無
責任構造をたださずしてどうして改革と言えるのか。第三者による
構造計算書の
チェックや
罰則強化といった小手先の改革では、根本的な問題解決にはつながりません。
大臣の御所見を伺います。
私は、
建設業界の抱える根本的な問題に踏み込んだ改革こそが
国民が求めるものであると考えています。そこでポイントとなるのは、
設計、
施工の分離であります。
我が国では、みずから
設計し、のみを振るい、かんなをかける大工の棟梁に代表されるように、
施工者が
設計、
施工一貫で請け負う伝統がありました。しかし、明治時代に入り西洋
建築が日本にも導入される中で、次第に
設計、
施工の分離が推進され、
建築家が
施工を
指導監督する監理の役を担うようになりました。ところが、
我が国では、
設計、
施工一貫の伝統が強いために、単独の
設計行為にお金をかけるという意識が薄い、そういう中で
建設会社は、
設計部門で人材を抱え、一貫で請け負うという現在のスタイルをつくっていきました。
今回の
法改正の中にも
建築士法の
改正が含まれておりますが、
建築の専門家を
資格として位置づける
建築士法は、昭和二十五年、第七回
国会において
議員立法によって行われたものであります。
提出者を代表して
委員会での
提案理由を
説明されたのは、当時二期目の若かりし日の田中角栄元総理であります。
当時の
会議録を見ますと、
提案理由の中で、「
建築の
設計は
建築士に、工事の実施は
建築業者にと、おのおの
責任の所在を明確にすることにより、相互に不正、過失の防止をはかることができます。」と、
設計と
施工の分離の建前が述べられております。しかし、このときも既に、
委員会では、
設計、
施工がより明確に分離されなければ材料のごまかしや不正工事が発生する、こうしたおそれがあることが指摘されていました。私は、
設計、
施工の分離の明確化にまで踏み込まなければ抜本的な改革は行えないと考えますが、
大臣の御所見を伺います。
また、私は、金融
機関の
責任ということについても考えなければならないと思っております。多くの方は、
マンションを購入するに当たって銀行等から
住宅ローンを借りています。現在、
偽装マンションの
被害者救済については建てかえの検討が進められていますが、現実には、二重ローンの負担に耐えることができないという悲痛な叫びを耳にします。
欧米では、貸し手の
責任が明確で、貸し手が担保価値を厳格に評価します。しかし、
我が国では、不動産の財産価値は土地本位で、
建物については数年たつとほとんど価値が認められることはありません。欧米に行きますと、古い
住宅が大切にされています。手を加えることによって長期の資産としての
住宅の価値を維持し、それが正当に評価される仕組みが
我が国においても必要と考えますが、
大臣の御所見を伺います。
もう一つ、
耐震偽装に絡んだ大きな論点がございます。一連の
耐震偽装発覚の中で、伊藤公介元国土庁長官による口きき疑惑が問題となりました。小泉総理と同じ派閥に属し、総理の三度にわたる総裁選挙を支えてこられた伊藤元長官は、自民党の
住宅土地調査会長を務め、ヒューザーの小嶋社長を初めとする業者や国交省の天下り先の法人から政治献金を受け、ともに海外視察にまで出かけられる間柄でもありました。次から次へと明るみに出てくるこうした政官業の癒着の
構造をたださない限り、
政府が幾ら
再発防止に向けた
取り組みを行うと言っても
国民は決して信用はいたしません。
大臣の御所見を伺います。(
拍手)
以上、指摘をしてきましたように、今回の
政府案は
耐震偽装問題を受けた
法改正としては余りに安易で本質を見据えないものであり、
マンションの
居住者、
ホテルの
利用者といった
国民の側に立ったものとは到底言うことができません。
それに対して、我が党の
法律案は、
居住者、
利用者、
購入者の
立場に立ち、
保険加入、危険情報公表の
促進、
建築確認における
行政の
責任の明確化、
建築士の
独立性の
確保の三点において
政府案より実効性のある改革案となっていると思います。今挙げた三点について、それぞれ、
政府案との違いを
提出者にお伺いいたします。
最後に、私の地元奈良にはたくさんの古い木造
建築があります。法隆寺、薬師寺を手がけた伝説の宮大工棟梁、西岡常一さんの言葉を御紹介したいと思います。西岡さんは、家は、管理さえよければ、手入れをすれば三百年もつとおっしゃっておられます。
我が国にはかつて、わざと誇りを持つたくみが建てた三百年間住める家があったんです。それが現在ではどうでしょう。地震で倒壊する危険のある
マンションにおびえながら住むことを余儀なくされている人
たち、あるいは欠陥だらけの
住宅を買わされた人
たち。
耐震偽装問題を機に、私
たちにとって住まいとは何なのか、
社会資本としての、国土創造の手だてとしての
建築とは何なのかをもう一度真剣に考え、
制度を抜本的に見直す必要に迫られていることを再度申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣北側一雄君
登壇〕