○小沢鋭仁君 民主党の小沢鋭仁でございます。
私は、民主党・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
証券取引法等の一部を
改正する
法律案外一案について、小泉
総理及び与謝野大臣に質問を行います。(
拍手)
なお、民主党・
無所属クラブ提出の
証券取引委員会設置法案につきましては、同僚の鷲尾英一郎君が後ほど質問をさせていただきます。
小泉政権が誕生して約五年。それに先立つ数年間を含め、この間、
我が国の金融・
証券市場を取り巻く
環境は、極めて大きな変化の中にありました。金融ビッグバンとも称されるこの
改革は、国内で起こり得るもろもろの
事件、出来事、あるいは新商品への
対応という一面もありますが、
基本的には、
世界経済のボーダーレス化に伴う
環境の変化に対する
我が国市場の不可欠な
対応だったと私は思っています。
通信技術の進展により、今や金の流れは一瞬です。円やドルといった形を持った紙幣の束、すなわちキャッシュがジュラルミンのケースに入って行き交うのではなく、電磁的方法によって、一瞬のうちに利益の生じるところに流れていくのです。みずほ証券による大量発注ミスで一瞬にして二十億円を稼いだ青年の例は、まさにそのことを象徴する出来事でありました。
また、クリントン
時代に財務長官を務めていたルービン氏は、その回顧録の中で、国の発展のためには信用を高め、
海外からの安定的な資金を呼び込むことが重要だと述べています。グローバル化が進んだ今日において、
我が国の金融システムも当然のことながら変わらなければなりません。ただいま
議題となっている本
法案も、こうした文脈の中で
理解していくことが重要だと思います。
本日は、小泉
総理に出席をしていただいております。まず、そうした大きな金融システムの変化の中で、
我が国がどのような経済
社会を目指していくのかという点についてお尋ねをさせていただき、その後、
法案に即し、具体的な質問をさせていただきます。
まず、お金がお金を生むという
言葉があります。一方、額に汗して働くという
言葉もあります。株式
投資は、長期的には、多くの株主たちが資本を持ち寄り、会社を興し、経営し、
社会的貢献を果たしていくことになるわけですが、昨今盛んなデートレードと呼ばれるようなごくごく短期の
取引においては、それを行う
人々も
社会への貢献などという意識は持たないでしょうし、まさに金で金を稼ぐ行為だと言えましょう。
また、
ライブドア事件に象徴されるように、株式
市場を使ったいわば錬金術的な経営を求める
人々も少なくはありません。そして、さきの
選挙において、その堀江容疑者を、小泉
総理、武部
自民党幹事長、竹中大臣等、日ごろから
改革を声高に唱えている皆さんがそろって褒めたたえたのでありました。堀江容疑者自身も、小泉
改革が事業の推進に役立ったと語っています。
総理、
総理の唱える
改革は、金で金を稼ぐ、お金を持っている人がそのお金を使ってさらに金持ちになる、そういうことをやりやすくする
改革でしょうか。それは、格差をさらに拡大する可能性があると
考えます。それをよしとするのでしょうか。
国民は、単に格差の拡大に
不満を抱いているのではありません。
社会に何の貢献もなく、錬金術的やり方で生じる格差の拡大に怒っているのです。
額に汗して働くこととお金でお金を稼ぐことが併存する今日の経済
社会において、何を大切にして、どのような
社会を目指しているのか、
総理の御所見をお伺いいたします。(
拍手)
ちなみに、さきの代表選で選ばれた小沢一郎民主党代表は、その
演説の中で、一部の勝ち組だけが得をするのは自由でも公正でもない、民主党の目指すべき
社会は、黙々と働く人、努力する人、正直者が報われる公正な
社会であると述べていることを申し添えておきます。
求める
社会像ということでは、フランスの学者ミッシェル・アルベール氏が「
資本主義対
資本主義」という名著の中で、
資本主義といっても一様ではなく、大きく分けると、米国を筆頭とするアングロサクソン型と、ドイツ、フランスのようなライン型に分けることができると分析をしています。アングロサクソン型は短期の利益を重視するのに対し、ライン型は中長期の利益、さらには従業員や
地域の利益というものを大切にする
社会としています。
日本は、彼によれば、後者のライン型
資本主義に属するとされています。
金融システムのあるべき姿を
考えていく場合、この分析は極めて有益な示唆を与えてくれますが、
総理のこれまでの発言等を見ると、穏やかなライン型の
資本主義から、生き馬の目を抜くようなアメリカ型の経済
社会を目指しているように思えます。いかがでしょうか。
一方、さきに述べたように、
海外から資金を呼び込めるような金融システムを構築していくことも必要です。この点に関して、一月二十三日毎日新聞夕刊に載ったニューズウィーク
日本版副編集長ジェームズ・ワグナー氏の見解は、大変興味深いものでありました。端的にポイントのみを紹介すれば、
日本の商習慣では「許可されたことのみやっていい」という
考え方だが、米国は「禁じられたこと以外はやっていい」と
考えるというものです。
例えば、
ライブドアによるニッポン放送の株式取得の際行われた時間外
取引について、当時の
伊藤金融担当大臣の発言と
自民党の与謝野政調
会長の間で、見解の相違があったと受けとめられました。一般論か個別論かという点はさておき、
市場は、
伊藤大臣は適法とし与謝野
会長はいわばグレーと言ったと受けとめたのです。この出来事によって、まさに
日本のマーケットは恣意的、裁量的に運営されていて、透明性に欠けると
海外の
投資家から受けとめられたのです。ワグナー氏は、さらに、「すき間を突いて業績を上げるのはビジネスの
基本。それ自体、悪いことでも何でもない。」と言っています。
このような意見は、これまでの
日本の商習慣とは異なる気がいたしますが、グローバル化した経済の中で
日本のマーケットが信用を得ていくためには、そうした意見を前提にシステムの透明化を図るべき
時代だと思います。特に、
日本のように行政
指導などという
言葉で象徴される裁量行政がまかり通った過去があるところでは、厳にそうした行為は慎み、徹底的に透明な
市場にしていくことが最重要だと
考えますが、
総理並びに与謝野大臣の答弁を求めます。(
拍手)
次に、
証券取引所のあり方についてであります。
ライブドア事件を初め、
東京証券取引所がたびたび
取引を停止する事態に追い込まれました。
証券取引所がみずからの判断で
取引停止を決めたのは前代未聞のことであり、主要国の
取引所でも異例の出来事で、東証の国際的な信用を失墜させたものと言わざるを得ません。
政府案において、自主
規制機能を
取引所から独立した法人が担うケース、同一法人内に
独立性の高い
自主規制委員会を置くケースも選択できる措置が盛り込まれております。しかし、
証券取引所の公的な性格を担保するためには、
取引所が公開会社となることの是非が議論されなくてはならないと
考えます。
民営化のメリットは資金調達にあると思われますが、一方、公開会社となれば、大阪
証券取引所のケースのように、特定の
個人、団体による買収という事態も当然予想されなければなりません。
また、公開会社でなくても資金調達をする方法はさまざま
考えられます。多くの
国民は、
取引所は公的機関で
民間会社だとは認識していません。それをさらに上場し、公開会社になることまで目指していくことが果たして必要かどうか、
総理の見解を求めたいと思います。
政府は、この
法案で、縦割り
規制から横断的な
規制に変え、
投資性の強い
金融商品・サービスにすき間のない
規制をかけるものと
説明していますが、関係省庁の抵抗に遭い、中途半端なものにとどまったとの印象を免れません。
投資家、消費者
保護の
対策も不十分なままだと受けとめています。例えば、商品先物、不動産特定共同事業は、本
法案の対象外となっています。なぜこのような骨抜きの
法案になったのか。
総理、
総理はこの
法案の取りまとめに際し、どのようなリーダーシップを発揮されたのですか。
その
総理のリーダーシップについて、おもしろいエピソードを聞きました。
総理の関心の度合いは、
説明を聞く際のいすへの腰かけ方でわかるというものです。例えば、三位一体
改革の話のときには深々と腰かけ、黙って
説明を聞く、道路公団問題のときには座り方がやや浅くなり、時折意見を言う、郵政問題の際には転がり落ちんばかりに身を乗り出して、身ぶり手ぶりでほとんど
自分でしゃべっているという話です。私にもその姿が目に浮かぶようです。
この金融システム
改革については、座り方はどうだったのでしょうか。結果としては不十分に終わっているのですが、省庁間の縦割りの弊害をどのように除去しようとされたか、
総理の取り組みについて御答弁ください。
最後に、
総理の最も関心の高い郵政問題と金融システム
改革の関係に言及し、私の意見を申し上げます。
郵政の特別
委員会で、私は
総理に、郵政問題は郵便事業も問題だが、本質的な問題は郵貯、簡保の金融問題で、
日本の金融
市場の将来設計図をきちんと描かぬままこの問題に突っ込むことは、極めて危険だと申し上げました。
金融問題としての郵政問題は金融システム全体のサブシステムであり、
世界の大きな変革の流れの中で、
日本の金融システム全体の将来図は、この
法案においても、いまだ全く描けていないのであります。
振り返ってみれば、この問題に限らず、小泉
政治は常にそうでありました。私から見た小泉
政治の特徴は、大枠は米国を模倣して何も
考えず追随し、金融システム全体の中のサブシステムである郵政とか、
日本外交全体で国益を
考えることなく靖国参拝問題を言い張るとか、
自分の
個人的関心にのみ一点集中してエネルギーを注ぎ、
改革だと言い張るものです。これでは多くの
国民は浮かばれず、路頭に迷うばかりであります。
一国の
総理のリーダーシップとして最も大事なことは、サブシステムに血眼になることではなく、システム全体の見取り図を描くことだと
考えます。
この分野について言えば、後戻りすることのできないグローバル化、情報化の中で、いかに
世界から信頼され、
国民からも安心、公正だと評価される金融システム全体の将来図を提示することであります。小泉
政治にはそうした問題意識が決定的に欠けているという点を指摘して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕