○高井美穂君
民主党の高井美穂です。本日
最後でございますので、どうぞよろしくお願いします。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表し、ただいま
議題となりました
就学前の子どもに関する
教育、
保育等の総合的な
提供の
推進に関する
法律案、いわゆる認定こども園
法案について質問をいたします。(
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季節は春です。今まさに、満開の桜の下を、小さな手を振りながら
子供たちが人生の新たなスタートを切ろうとしています。
本
会議場に御参集の先輩
議員、同僚
議員の
皆様に、子育て中の親の一人としてもお願いを申し上げます。
この中にはチルドレンと称される方もいらっしゃると伺っておりますが、汚れなく純真だった、本当に
子供だったときのことを思い出していただきたいのです。ちょっとした周りの
変化が心に大きな影響を与えるということが普通であったのではないでしょうか。
子供の目線に立って、この
法案をみずからのものとして慎重に御審議いただけますよう、心からお願いをいたします。(
拍手)
まず、今回の
法案を
提出された
政府が、幼児
教育や子育てに対してどのような理念をお持ちか、お尋ねいたします。
言うまでもなく、少子化は、経済面から社会の支え手が減るという損失だけでなく、文化面からも
日本の誇るべき物つくりの技術や伝統を引き継いでくれる人が少なくなっていくという大きな損失でもあります。また、大人が
子供というすばらしい人類の宝物に接する
機会が減り、弱者に対する優しい目線を持つことや、守ってあげねばならない人権の重みを体験で覚えるという
機会を失うことにつながる極めて残念なことであると思います。
子供政策への理念は家族政策への理念とも言えます。今回の
法案からは、先を見据えた理念が全く伝わってまいりません。
また、戦後標準化した、夫は仕事、妻は家事、子育てを行って豊かな家族
生活を目指すという性役割に基づく家族モデルを実現できる人が少なくなっている現在、今までの男性稼ぎ主型の
生活保障システムから脱却して、両立
支援型、つまり、ワーク・ライフ・バランス型の
生活保障システムに転換していくことが必要であります。そのためには、保育サービス、児童手当、育児休業、
高齢者介護サービスなど、家族を
支援する
制度を一層充実させねばなりません。
一九九八年以降七年連続で、年間の自殺者は三万人を超えております。そのうちの一万人は、四十代、五十代の男性であります。男性のみが家計を支えるために身を粉にして働くという男性稼ぎ主モデルに固執することは、男性にとっても不幸であるし、女性にとっても
労働力を生かせないという不幸であります。
多様なライフスタイルの中で、こども園は、一番に
子供たちのために、そして、若い世代の両親が
安心して社会に出るために、さらに、こども園で働く職員の皆さんが今までと同じように誇りと自信を持って仕事ができるような
制度にすべきだと考えます。
少子化・男女共同参画を担当されている猪口内閣府特命担当大臣に、目指すべき
生活保障システムについての見解を伺います。
政府部内の幼保一元化論議は、当初、総理大臣のリーダーシップの
もと、関係省庁の抵抗を抑えて政治決着させる予定だったはずです。今回のこども園は、いわゆる骨太
方針第三弾に突如として盛り込まれたわけですが、省の縦割り支配をそのまま残した政治的妥協の産物によるものであり、なぜこのような重要な問題をこうした形で拙速に取り扱おうとするのか理解できません。(
拍手)
また、昨年から実施してきたこども園型の総合施設モデル事業の最終
報告が取りまとめられる前にこうして
法案化され
提出されるのは、現場や当事者の意見を十分に盛り込んだものとは全く言えないと思います。今回、なぜこんなに急いで中途半端な形の
法案を出すのでしょうか。安倍官房長官にお尋ねをいたします。
こども園の目指すところ、並びに所管省庁について質問いたします。
現状の文部科学省所管の幼稚園、厚生
労働省所管の保育所がこども園として併存することは、まさに縦割り行政の弊害であり、利用者の利便軽視の典型であると言わざるを得ず、その弊害を
子供にまで及ぼしかねません。実際に利用する
子供や保護者の目線に立った場合、保育所か幼稚園かによって、同じところに通っているのに、入園基準や受けられるサービス、費用
負担の
あり方に差が生じるというのは理解しがたいことであります。
どこがどこの所管であるかは、
子供や親には全く関係のないことで、いつまでも文科省か厚労省かの管轄にこだわることこそ一番の問題であります。また、
政府が進めるスリムな
政府、重複を排除した行政、こういう
方針にも反するのではないでしょうか。
民主党はかねてから、子ども家庭省を
創設し、将来的に幼稚園及び保育所の
制度や機能を統合し、子ども園に統一していくべきであると主張してきました。
今回の
法律案によるこども園について、
政府は将来的にどういう方向へ持っていこうとしているのか、その将来像について、
小坂文部科学大臣及び川崎
厚生労働大臣にお尋ねいたします。
法案では、こども園の所管は文部科学省と厚生
労働省の二つの省にまたがっています。つまり、こども園という一つの施設に対し、異なる二つの省が所管することになります。
責任の所在があいまいになるばかりか、利用者や施設サイドからも、担当窓口がわかりにくい、
たらい回しになるのではないかとの懸念があります。認定こども園の事務は
もとより、文部科学省の幼稚園関連事務、厚生
労働省の保育所関連事務についても、担当部局を一つの省庁で所管した方がいいと考えますが、いかがでしょうか。
民主党は、総合的に少子化、子育てを担当する子ども家庭省の設置を理想としていますが、それが無理なら、せめて内閣府に子ども家庭局を設置することを検討していただきたいのです。朝日新聞二〇〇三年六月十五日付朝刊によると、内閣府内部でも一時「こども庁」構想が浮上したと書いてありましたが、事実でしょうか。官房長官の見解を伺いたいと思います。
次に、認定施設の基準関係について質問いたします。
施設
整備等に関する各種規制の水準については、
平成十六年十二月二十四日、規制
改革・民間開放
推進会議の第一次答申で、現行の幼稚園及び保育所の緩い方の水準を原則とすべきとあります。今回の
法律案によると、幼保
連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型など、四つの形態の施設がこども園として認定されることになりますが、これらの施設における
教育、保育、子育て
支援の質の保証は担保できるのでしょうか。施設認定基準の
あり方及び施設の質について、文部科学大臣及び
厚生労働大臣の答弁を求めます。
子供を育て、
教育するこども園については、施設、つまり箱物以上に、実際に
子供と触れ合う職員の
あり方が重要であることは言うまでもありません。幼稚園教諭や保育士、さらにはカウンセラーなど専門家を含む人材を、だれがどのような
方針の
もとにつくっていくか、文部科学大臣及び
厚生労働大臣にお尋ねいたします。
次に、認定こども園の財政
措置、補助
制度についてお尋ねをいたします。
幼保
連携型については、幼稚園と保育所の補助の組み合わせとなっており、複雑化しています。また、今回
提出の
法律案で、地方裁量型の施設の補助については一般財源化されることとなりますが、
市町村の
財政力には歴然とした格差があるのが現状です。幼稚園機能と保育所機能をあわせ持った地方裁量型の施設への補助については、結果的に
地域間の格差を助長するものとなるのではないでしょうか。また、保護者の間の
負担の格差への配慮や働く親を持つ待機児童への配慮も必要ではないでしょうか。文部科学大臣、
厚生労働大臣の答弁を求めます。
次に、待機児童の問題について質問いたします。
厚生
労働省の「保育所の状況」、
平成十六年四月発表の分によると、保育園には現在百九十七万人の
乳幼児が通っていますが、待機児童については、二〇〇四年が二・四万人、二〇〇五年は二・三万人、依然として解消されていないのが現状です。
日本政府が一九九四年四月二十二日に批准している子どもの権利条約第十八条三項では、「締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の
提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを
確保するためのすべての適当な
措置をとる。」としていますが、
我が国にはその実行と進捗状況の
報告の義務があります。
政府はこの十二年間の進捗状況を国連にどのように
報告しているのでしょうか。
待機児童の解消に向けて、私は、この間の
政府の取り組みは全く十分ではなかったと思っています。待機児童解消や少子化
対策の一環として、今回の
法律案による効果はどの程度あるとお考えか、少子化・男女共同参画を担当されている猪口大臣の見解を伺います。
教育や保育の質を守りながら、将来的に一本化していく。つまり、文科省と厚労省の省益争いや幼稚園、保育所の既得権争いに翻弄されることなく、
子供にとってよい
環境を
提供するという
視点に立った条件
整備が必要であります。
場当たり的な
対策ではなくて、
子供といういとおしい守るべき存在への優しい視線を持って、
日本の未来を担う人間への投資を惜しむことなく、
政府として最低限の責務をきちんと果たしていただきたいということを申し上げて、私の質問といたします。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣小坂憲次君
登壇〕