○古本伸一郎君 古本伸一郎でございます。
民主党・
無所属クラブを代表し、
議題となりました
所得税法等の一部を改正する
法律案及び
平成十八年度における
財政運営のための
公債の
発行の
特例等に関する
法律案等三案に対し、
反対の立場から
討論を行うものであります。(
拍手)
政府は、
国民に
負担を求める前に、みずから切り詰めるべきであります。借金の返済
計画、絞り込んだ結果を、まずは人に物を頼む前に示すべきであります。礼儀を欠く頼み方では、
国民は納得をしません。
公債特例について申し上げます。
公約の三十兆円も忘却のかなたでありました。
増税財源や
特別会計の繰り入れによりまして帳じりを合わせたものの、これらは原価改善の成果ではありません。税は人の金、
無駄遣いも他人事、その
無駄遣いの舞台として、
特別会計と天下りがあります。
サラリーマンやパートの労働者に天下る先はありません。規制の網から漏れた公益法人への天下りは、本省の定員を上回る出向先を
確保し、五兆円を超える
補助金を持参して出向く官僚の数、二万人余りであります。財源となる
国民の血税を何と心得るのでしょうか。
財政再建を国家の大計とにらみ、みずからの問題として受けとめていない
皆様方の証左であります。
年金保険料の流用も看過ができません。
総理は、効率的な
予算の執行を図ると約束されました。昨年十二月、人件費や宿舎等は
国庫負担とする旨について、担当大臣にて覚書が交わされました。しかしながら、庁舎に二十二億、人件費に五十一億、来年度
予算に混在していることが判明いたしました。昨年から増加して、総額一千億を超える保険料の流用、認めるわけにはまいりません。
民主党は、
年金保険料の流用規定の削除など、修正案を
提出いたしましたが、残念ながら、
与党多数で否決されました。
与党の皆さんは、みずから納めた保険料と憂い判断をなさっているんでしょうか。
国民は、
年金保険料は納めても、庁舎や公用車の費用を納めた覚えは毛頭ありません。
次に、
所得税法等改正案に断固
反対の
理由を申し上げます。
大臣は、
定率減税の廃止について、
サラリーマン増税のそしりには当たらないとされました。
所得税は、
我が国の基幹税であります。その八割を占める十二兆円が勤労
所得であります。ガラス張りの源泉徴収がそのうち九兆であります。
所得税を専ら支えているのは
サラリーマンであります。これを
サラリーマン増税と言わずして、一体何と言うのでしょうか。(
拍手)
所得の捕捉率の問題もあります。
執行
責任者である大臣は、累次にわたる
国会答弁で、捕捉率を上げることは技術的に困難と吐露されておられます。国税職員は
減少、確定申告などの
調査対象は二千六百万件を超える中、職員の皆さんの
努力にもかかわらず、
調査できた件数はごくわずかであります。
保育園の保育料から
医療保険まで、保険料と給付金はすべて
所得で決まります。前提となる
所得の把握が職業によってまだら模様であっては、税の
負担に
格差が生じます。自己防衛のすべのない、パートも含めた源泉徴収の方々の心の叫びが皆さんには聞こえないんでしょうか。
公示
制度の廃止も大変問題であります。
脱税抑止の役割は終えたのでしょうか。欧米では第三者による通報
制度もありますが、
我が国では代替案なき廃止となり、残念ながら
課題を残しました。
昨年六月、
政府税調の石会長が、
増税の支え手として
サラリーマンに頑張ってもらうしかないと御
発言されました。その後、
与党は火消しに回り、
政府税調の考え方はとらないと、御丁寧にも選挙公約にも記されました。
その総選挙で、ガラス張りで
所得を捕捉されている
サラリーマンが
自由民主党と書いたわけであります。少なくとも、
自由民主党と書いた皆さん方に対し、今回の
増税について顔向けができるのでしょうか。
サラリーマンの味方は
民主党である、そう信じてくださった方々からは、少なくとも
増税しないでほしい、そうとさえ思うぐらいの話でございます。
政府税調では、減税廃止の判断に、三兆円
規模の減税を見合い財源なく行ってきたと
説明をされました。ならば、今年一月から既に着手をしております
増税額一兆二千五百億、来年度を加えた三兆円
規模での
増税分について、この際、見合いで
国債発行を抑制されたらどうでしょうか。検討の足跡さえ残っておりません。
サラリーマンの悲哀を御存じでしょうか。
たばこ代を小遣い銭からやりくりする姿、健康を憂えたならば
思い切った税制もあるでしょう。しかし、目先の帳じり合わせのための、しわ寄せ感だけが残っております。晩酌のビール一杯を楽しみに毎日働く、しかも発泡酒しか飲めない。技術開発も水泡に帰す、後追い
増税。庶民の楽しみさえ奪うのでしょうか。(
拍手)
週末、家族とのささやかな外食、年収五百万円の御家庭では、消費性向は八割を超えております。可処分
所得の
減少が即購買力の低下につながる
増税と断じざるを得ません。
個人消費は底がたいとの
政府の見解、一体どこを見詰め、かじを切っておられるのでしょうか。
日本の御家庭では、新しいスーツを買いたくとも、
子供の洋服を先にと遠慮する人がいます。
子供と一緒に過ごしたくとも、塾代を稼ぐため、パートに出かける人がいます。その
子供が電気の消えた我が家に一人帰る姿を
思い浮かべて税制を考えておられるのでしょうか。(
拍手)
減税廃止による税収増は三兆円であります。この財源の使途は、
平成十七年及び十八年度の
予算・税制に係る
合意において、
与党政調会長にて取り交わされております。その中で、基礎
年金国庫負担への充当が約束されております。その額、既に二千億円を超えております。
年金保険料は給与引き落としであり、
サラリーマンは、
もとより未納や未加入はありません。未納や未加入のない
サラリーマンから
増税し、
政府の怠慢で焦げついた
年金財源に充てる。そこまで
国民から白紙委任を受けておられるのでしょうか。
年金未納の
理由を
社会保険庁が
調査しております。低中
所得層では、
経済的な
理由を第一に挙げておられます。払いたくとも、先立つものがないのが実態であります。今回の
増税は、
年金未納の自律的解決をも遠のける、負の連鎖に陥る失政と言わざるを得ません。
以上、
年金財源を見ても、
歳出歳入一体改革とは名ばかりで、取りやすいところから取り、その場をしのぐのか、あるいは自律的な回復を本気で図っていくのか、
政府の
方針が示されておりません。
定率減税を導入した際、
所得税の抜本
見直しを行うまでの間、
特例を定めると明記をされました。
どういうモデル世帯、
所得層に課税をしていくのか、目指す姿が示されませんでした。
我が国のモデル世帯は、夫婦と
子供二人の時代は終わったのでしょうか。
審議の
過程で大臣は、
子供たちは将来の税、
社会保険料の担い手でありますかとの問いかけに対し、応じてくださいました。
現在の人口を維持するのでしょうか、あるいは一億人でいいのか、国家の土台、担税者の与件が示されていません。今こそ、税制により国を変えるとの決意が
政治に求められているのではないでしょうか。(
拍手)
抜本
見直しと称し、人的控除の廃止だけが決まりました。
法人税、最高税率の引き下げは手つかずです。法人成りを認める一方で法人成りに
税金をかける、会社組織の選択を広くしながら産業育成を阻む、新たな懸念も生じました。
政府試算では、
増税の影響は五万社程度ともくろむものの、零細
事業者からは強い懸念の声が届いております。
金融
所得は、総合課税を視野に入れるのか
方針が示されぬまま、株式配当や譲渡益課税に関する特別減税も温存されました。
政府の言う消費が底がたい人とは、まずは株式を購入し、配当課税で恩典を受けて、高値で売り抜け譲渡益課税も優遇される、それが日本の消費の源泉なのでしょうか。
下流
社会という言葉が話題となりました。購買力の低下を懸念する内容、これまで一億総中流が日本の発展を支えました。旺盛な消費の主役は、ほかならない、今回の
増税が特に身にしみる人々であります。消費不況を回避するためにも、絶対に受け入れるわけにはまいりません。
現在、連合を初め全国の労働組合で企業側との労働条件交渉、いわゆる春闘が行われております。